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ホウ化金属に関する研究第一報 気相析出法によるホウ化アルミニウムの生成
石 川 俊 美
目緒1
ホウ化アルミニウムの研究についてはすでに多くの報告があり,現在までにその存在が知られ
ているのはAIB2,AIBlo,α一AIB12,β一AIB12および7-AIB12の5種類である。これらのホウ化アル
ミニウムの合成はAIB21)一11),AIBlolo)一12),α一AIB128)・11)一15),β一AIB1210)皿12)・16),7-AIB1211)・17)につ
いてそれぞれ報告されている。これらの報告によるとホウ化アルミニウムはいずれもAIとBの
熔融反応かまたは焼結反応,あるいはAlとB203とをつかったアルミノテルミット反応によっ
て合成されている。しかしこれらの方法によってえられるホウ化アルミニウムには原料や容器か
ら不純物が混入しやすい。Hofmannら21はAIB2を熔融法でつくり,そのX線的研究を行なった
が,そのAIB2中にはCが混入していた。Lihlら5)はAlとNa3BO3またはB203との反応に
よってかなりAl203を混入したものができるといい,AIB2とAIB12とをAl,B203,Sおよび
KC103をつかってアルミノテルミット反応でつくったが,A1203が最終生成物中に微量混入し
ていた。Felten6}はAlとBとを化学量論的割合に混ぜ,グラファイト管に入れてから透明な熔
融シリカ管に置ぎ,数時間Heを流して後,真空にして電気炉中で一晩中800。Cで加熱して
AIB2をつくったが,少量のALグラファイト,B4Cが混入していた。またMatkovichら11,は
高純度のA1とBとをBNルツボ中に入れ,1700。Cで1~3時問熔融してα・AIB12をつく
ったが・0,2%以下のCが混入していたことを認めている。したがってこれらの方法では高純度
のホウ化アルミニウムはえられにくい。そこで著者はでぎるだけ高純度のホウ化アルミニウムを
うることを目的として気相析出法によるホウ化アルミニウムの生成を行なった。
気相析出法は融点の高い金属,窒化金属,炭化金属およびホウ化金属が比較的低温で,気圏や
容器からの汚染なしにそのまま加工できる密な形でえられることにその特徴がある。この気相析
出法でホウ化金属をはじめてつくったのはMoers18)である。彼はTiC14,HfCl4,VCl4および
ZrC14のいずれかとBBr3,H2の混合気相からそれぞれホウ化金属をつくった。つづいてWalt-
her19)がこの方法をつかってホウ化金属をつくった。またCampbe11ら20)はTiCl4,HfCl4,VCl4
およびZrCl4のいずれかとBCl3,H2の混合気相からそれぞれホウ化金属をつくった。さらに
Gannonら21)がTiCI4,BCl3およびH2の混合気相からTiB2をつくり,ごく最近ではGebhardt
ら羽)がTiB2,ZrB2,HfB2を気相析出法で生成している。しかしいまだホウ化アルミニウムを
気相析出法でつくったという報告はないので著者はその点に着目した。以下その実験結果を報告
する。
一(1)一
研 究 紀 要 第2号
H 試料の調製
この気相析出法によってつくられるホウ化アルミニウムの純度はAIBr3,BBr3およびH2の
純度によって左右されるので,試料の調製に際しては十分にその点に留意し之。
AIBr3Al板(99.99%:三菱化成工業)を細かくチップにし, まずアセトンで洗浄してから
乾燥し,つぎに62V特級HClで洗浄し,水洗後,110。Cで2時間乾燥した。このチップをあ
らかじめ61V特級HClで洗浄,水洗,乾燥したガラス綿を敷いた反応フラスコ中に入れ,コ
ンデンサー,受器,Br2槽をとりつけ,乾燥N2で空気を置換し,ひきつづき乾燥N2を通じな
がらAlチップ上.にBr2(特級=守随商店)を滴加してAIBr3を作製し⑳,白色のAIBr3を
えた。使用に先立ち乾燥N2中で蒸留精製してアンプルに採取した。
BBr3 市販のBBr3(KBF4+AIBr3→AIF3+BBr3+KFの反応でつくったもの=小宗化学)
を使用に先立って数回蒸留精製し,留分90。8。Cのものをアンプルに採取した。
H2市販のH2をDeoxo(Engelhard Industries,K,K),CaCl2,KOHおよびMg(ClO4)2
と順次通過させて脱水,乾燥・精製した(露点一44QC)。
7イラメント直径0.25mmのTa線(Ta99.9%,FeO.03%max,CO.03%max:Fapsteel
Metailurgical Company)をアセトンで洗浄してから110。Cで乾燥した。気相析出法を行な
うに先立ち電極にとりつけ,H2気流中で電流を通じながら1000。Cで30分間熱し,Ta線上の
揮発性物質はなるべく飛散せしめ,Ta線の表面を十分に還元しておいた。
φ
}
皿 実験装置およぴ操作
使用した実験装置は第1図に示したものである。装置全体は硬質ガラス(柴田F)でつくられ,
反応室Dには電極(Cu線をNiメッキ)がピセインでとりつけられ,フィラメントEはこの電
極の頭部にネジで固定されている。 フィラメントにはTaがもっともよい結果を示すことが知
られているので,直径0.25mmのTa線を用いた。反応室は反応終了後,すばやく析出物をと
り出し,フィラメントがとりかえられるようにすり合わせにしてある。反応室のすり合わせ部分
には反応中に温度が上らないようにゴム管を巻き,冷却水を流しておく。また電極の下端も水で
冷却しておく。実験を始めるに先立ちまず装置の全コックをコックFを除いて閉め,真空ポンプ
に連結し,装置全体を真空にしてからコヅクFを閉める。つぎに精製H2を流しつつコックHを
開け,フィラメソトを1000。Cで30分間熱する。っづいてAIBr3とBBr3を容器BおよびBノ
に充填する。H2の流量は流量計AおよびA!で一定ならしめる。この場合H2はキャリヤー
ガスとしてまた還元剤として作用する。H2の流量はそれほど反応に.影響を与えないようである
が,あまりに過量になるとTa線が水素化して脆くなるので200~250ml/minとした。容器B
中のAIBr3と容器B/中のBBr3は恒温槽で温められ,H2の流速のゆるいときはAIBr3やBBr3
の気相中の濃度は温度を調節することにょって変えることができる。このようにして発生した
AIBr3とBBr3の蒸気はH2で運ばれるが,この両方の蒸気がよく混合するようにガラスの小
球をつめてあるCを通って反応室へ導かれる。またこの際AIBr3容器とBBr3容器から反応室
一(2)一
ホゥ化金属に関する研究 (石川)
B A
H DG F C
HF
E
A
平面図
B
E DA,バ
G一一Ω
7-
側面図
第1図実験装置B,Bノ
第 1 表
実験 番 号
フィラヌント温度 (。C)
AIBr3容器(。C)
AIBr3蒸気圧 (mmHg)BBr3容 器 (OC)
BBr3蒸気圧(mmHg)
H2流量(mJ/min)
析田時謙訓Albr3:Bbr3
10
1000
150.7
40
412111
…Ol・・001・…
150.7「150。71150.7
40 40 40
15 18
1000 1000
19 20
1000,100Q
.15③7「15α71皿317α3
4。・4・18・18・
21
1000
170.3
80
28.7 28.7 28.7 45.1
8。18。 8。1、6。h6。1、6。
2・1・ 121・21・「2・1・ 2・・!2・1・
250
22
900
150.7
45・1 45・128・728・7128・7-
80 80 80
・・2,監墨墨撃1黒200 1
200 1
4[6 8 4 6
200 1
8 4 6 8
40
23
900
150。7
40
45.1 28。7
160
200 1
250
1:4
8
80
24
900
170.3
80
28.7
80
200 =200
1 1250 250
1:2
4
1:1
4
までのガラス管にはニクロム線を巻いて加熱し,蒸気の凝結を防止しておく。AIBr3とBBr3
の混合気体が反応室に入り,H2の流れと両気体の濃度が操作に必要な状態に調節されたならば,
フィラメントに電流を通して加熱する。フィラメントの温度はホウ化アルミニウムの生成にもっ
とも影響を与えるので,数回の実験を行なった結果,Ta線の耐久度とホウ化アルミニウムの生
成とを考慮して1000。C(または900。C)にした。フ,イラメントの温度は光高温計で測定した。
一(3)一
研 究 紀 要 第2号
この方法では±10。Cの誤差が生ずることが知られている。反応が進むとホウ化アルミニウムが
フィラメント上に析出する。析出量を考慮して析出時間を4時間,6時間および8時間とした。
未反応のAIBr3とBBr3はトラップGで捕捉される。実験終了後,Ta線上に析出したホウ化
アルミニウムについてその色,化学薬品に対する性質を調べた。またデバイシェラー法によるX
線回折,反射法による電子回折も行なった。さらに一部のホウ化アルミニウムをTa線と一緒に
リゴラックで固めた後,断面を高速鏡面仕上機でまず研磨し,つづいてCr203の微粉をラシャ布
面においた上でよく研磨した。研磨してから村上試薬〔K3Fe(CN)6:NaOH:H20=1:1:10〕
あるいは混酸(conc.HNO3:conc.HF:H20=3:2:4)でエッチングして金属顕微鏡観察およ
び電子顕微鏡観察を行なった。第1表にホウ化アルミニウムの生成条件を示す。
N 実験結果および考察
析出したホウ化アルミニウムの化学分析は微量なため行なうことができなかった。ホウ化アル
ミニウムのうちAIB2の色についてはHampe14)は赤銅色,Hofmannら2)は黄銅かっ色, Fel-
ten6)はかっ灰色であると述べているが,著者のえたNo.11,No.12およびNo.22は灰色で金
属光沢があり,他の生成条件でつくったホウ化アルミニウムは灰かっ色をしていて,金属光沢は
なかった。化学薬品に対してはどの生成条件でつくったホウ化アルミニウムもみなconc.HNO3
conc.HC1には侵きれず,KOH水溶液とHFにわずかに侵されることがわかった。これは
AIB2についてのHampe141の報告とよく一致する。また多くのエッチング液をつかってエッチ
ングを行なった結果,大部分のものは村上試薬または混酸でエッチングされた。 しかし生成条
件がフィラメント温度:1000。C,AIBr3;BBrF1:4で,析出時間のそれぞれちがう:No・14
(析出時間:4hrs),No15(同:6hrs)およびNo.18(同:8hrs)のエッチングの程度を比較し
た結果,No,14は村上試薬,混酸のいずれにもエッチングされなかった。No.15は村上試薬で
エッチングされ,No.18は村上試薬ではエッチングされなかったが,混酸ではエッチングされ
た。このようにこれらの生成条件でつくったホウ化アルミニウムの薬品に対する腐蝕性が析出時
間によって相違するのは,少なくともこれらの条件において結晶の構造やその結晶粒子の成長が
時間とともに変化することを意味する。
X線回折 AIBr3とBBr3のモル比のちがうNo・1L No45・No・21およびTa線につい
てCuKα線使用のデバイシェラー法でX線回折を行なった。 第2図にそれらの回折図形を示
す。照射時間が8時間であるためフィラメントWからの回折線も現われている。TaおよびWの
回折線を考慮してNo.11(フィラメント温度:10000C,AIBr3:BBr3=1:2,析出時間:6hrs)
の回折線から面間隔4を計算し,その強度を調べ,ASTMカードと比較し,さらに格子定数・σ
cを計算した結果,AIB2の構造にほぼ一致した。したがってNo.11ではAIB2が生成したと
考えられる。このことはAIB2が950。C以上ではAlとα一AIB12とに分解するというSereb-
ryanskiiら9)の報告や980QC以上でAlとβ一AIB12とに分解するというBecher7)の報告と矛
盾し, 10000C(±10。C)ではAIB2の分解は起らな)・ことを意味する。No.15(フィラメン
ト温度:10000C,AIBr3:BBr3=1:4,析出時間:6hrs)については45本の回折線が観察さ
ズ
一(4)一
ホウ化金属に関する研究 (石川)
Ta
}
No.11 (フィラメント温度:1000。C,AIBr3;
BBr呂=1:2,析出時間:6hrs)
No.15 (フィラメント温度:1000。C,AIBr3:
BBr3=1:4,析出時間:6hrs)
No.21 (フィラメント温度:1000。C,AIBr3:
BBr3=1:1,左斤出時間:8hrs)
第2図デバイシェラー法によるx線圓折図形 (カメラ半径:5.75cm,照射時間18hrs)
第2表ホウ化アルミニウムの格子定数
No.11 σ=2.982A ‘_3.331A
No.15
α=10.156A 6_14.03gA (α一AIB、2として計算)
σ=11.892A 卜12.6goA ‘=10.212A (β一AIB、2として計算)
No.21 σ=3.084A 6_3.437A
AIB26) 召_3.oogA ‘_3.262A
α一AIB1224) 4=10.16A 。_14.283A
β一AIB1224) σ_12.34A み_12.631A 6_10.161A
γ一AIB1217) α=16.56A み_17.53A 。_10.16A
AIBlo12),25) 4_8.881A ゐ=9。100A 。=5.6goA
、
れ,それらを解析した結果,AIB2,AIBlo,7-AIB12のいずれでもないことがわかった。格子
定数σ,oを計算した結果からはα一AIB12の構造に,また格子定数α,わ,‘を計算した結果か
らはβ一AIB12の構造にかない近いことがわかった。したがってNo。15についてはα一AIB12や
β・AIB12が単独には生成せず,あるいはこの両者が共存するのではないかとも考えられる。No・
21(フィラメント温度=1000・C,AIBr3=BBr3=1:1,析出時閲=8hrs)については格子定数
α,oの計算力1らNo.15とは明らかにちがった構造をもっていることがわかった。またAIB2
の格子定数と比較すると2~5%の差異がある。しかしAlの回折線が認められないことやB
のAlに対する比率が過大でないことを考えればA1とBがそれぞれ単独で存在することはあり
えないから,AIB2のほかに何らかの形のホウ化アルミニウムができていることは間違いなV・・
これらについてはNo.15とともにさらに多量の析出物をえて解明していきたい。
電子回折 No.11,No,12,No.15,No.18夕No。19,No.21,No、22およびTa線について
一(5)一
研究紀要 第2号
亀
{r
第3図 No.11の反射図形
フィラメント温度:1000。C
AIBr巳:BBr3コ112析出時間:6hrs
第4図 No.12の反射図形
フィラメント温度:
ABr3:BBr3=1:2季斤出匪寺間:8hrs
10000C
第5図 No.15の反射図形
フィラメント温度:1000。C
AIBr31BBr3コ1:4析出時間二6hrs
第6図 No.18の反射図形
フィラメント温度:1000。C
ABr3二BBr3=114析出時闇:8hrs
/
第7図 No.19の反射図形
フィラメント温度;10000C
AIBr3:BBr3=111析出時間:4hrs
第8図 No.21の反射図形
フィラメント温度=10000C
AIBr3:BBr:F1二1析出時問:8hrs
(6)
ホウ化金属に関する研究 (石川)
β
」
第9図 No.22の反射図形
フィラメント温度:900。C
AIBr3:BBr3=114析出時間:8hrs
第10図 Taの反射図形温度:1000。C
加熱時間:8hrs
第3表 主なる面間隔4とその強度 {”ε=”θ7yε置■0π9
3=Sず■0”9”z=吻θ4彪”z伽’召郷露フ
No.11
“4”
3.286A
2.698
2.102
1.740
1.586
1.405
1.235
1.132
讐で饗7卿
No.19
亀
“4”
2.628A
2.054
1.555
1.443
1.025
度ss解吻解
強
No.12
“4” 強度3.151A 欝
2.058 s
1.724 翅
1.398 ”z
1.229 s
1.125 勉
No.21
“4”
2,424A
2.024
1.673
1.461
1.312
1.047
鍍ε彫吻翅卿吻
No.15
“4”
2.716A
2.413
2.009
1.653
1.400
1,372
1.212
0.847
度卿ε翅翅卿窺吻形
強
No.22
“4”
2,472A
2.121
1.553
1.334
1.256
1.097
1.009
0.904
度s
ム虫”形3s翅吻卿吻
No.18
“4” 強度2.43gA ”ε
2。137 卿
1.562 3
1.322 3
1.113 吻
1.014 勉
0.910 形
Ta
“4”
4.070A
3.037
2.109
1.985
1.929
1.801
1.739
1.703
撃卿髪霧劣
、
電子回折装置(日本電子製)をつかって反射回折を行なった。それらの反射図形を第3図一第10
図に示す。また反射図形から求めたこれらホウ化アルミニウムの主なる面間隔4とその強度を
第3表に示す。その結果,No.11とNo.12は面間隔4の値もその強度も大体一致した。また
No.15,No.18およびNo.22を比較して解析すると,No.15とNo.18とは明らかに・ちがっ
た面間隔4と強度を示しているが,No.18とNo.22は面間隔4の値も強度も大体一致した。
一(7)一
研究紀要 第2号
さらに両者の1ズ射図形から900。Cから1000。Cに昇温するにしたがって結晶粒子が大きく成長
していることがわかった。No.19とNo.21においては面問隔4の値もその強度も大体一致し
た。したがってAIBr3:BBr3-1:2および1:1の場合には生成したホウ化アルミニウムの組
成または結晶構造は時間によって変化することはなかったが,AIBr3・:BBr3ロ1:4の場合には
その組成または結晶構造が時間によって変化することがわかった。 この電子回折の結果から
AIBr3とBBr3のモル比とフィラメントの温度がホウ化アルミニウムの組成やその結晶構造に
影響を与えることがわかった。
金属顕微鏡および電子顕微鏡観察 No.10, No.23およびNo.24の場合にはTa線にはホ
ウ化アルミニウムはほとんど析出しなかったが,他の生成条件のときには析出がみられた。析出
層の厚きはそれぞれNo.12とNo.21では5~6μ,No.22では6~9μ,No.15では8~9佑
No.18では8~25μであって,析出量はAIBr3とBBr3の供給量の増加,析出時間の増加に比
例することがわかった。それらの代表的な写真を第11図一第13図に示す。中心がTaでその周囲
の層が析出したホウ化アルミニウムである。第12図(No、15)をみるとホウ化アルミニウム層が研
磯
も
第11図 No.12 ×200
フィラメント温度11000。C
AIBr31BBJ3=1:1析出時閻:8hrs
第12図 No.15 ×200
フィラメント温度:1000。C
AIBr3:BBr3=1:4析出時閻:6hrs
第13図 No.18 ×200
フィラメント温度:1000。C
AIBr3:BBr3=1二4析出時間:8hrs
海餐鷺養翻
β
ノ
第14図 No.18 x800 第15図 No.18 ×800
一(8)一
ホウ化金属に関する研究 (石川)
灘黙
諦 ー .㎜ 嚢
饗、
、矧緯、 、- 辮鞭岬
懸撒鰯
第16図 No.18 ×4000
第1ワ図 No.22 ×2000
フィラメント温度:9000C AIBr3=BBr3=114 析出時間:8hrs
第18図 No.15 ×2000
フィラメント温度:1000。C
AIBr3:BBr3=114 析出時間:6hrs
も^、
磨中にはがれているが,他の生成条件のものも多くは同様にはがれやすく,粘着性がないことが
観察された。またTa線をR2気流中で8時間1000。Cで加熱し,研磨した結果,Ta線の表面
が脆化してけずれることがわかった。このことを考慮に入れても第13図(No.18)ではホウ化アル
ミニウムはTaと明らかに合金をつくっているように思われるので,さらに拡大した第14図と第
15図を観察した。しかし,ホウ化アルミニウムの結晶が多方向に成長していることが確認された
だけで,Taとの閲に合金層が存在するか否かは確認できなかった。そこでさらに拡大した電子
顕微鏡写真の第16図を観察した結果,ホウ化アルミニゥムとTaとが相互拡散して固溶体をつく
っていることが推測された。つぎに第17図(No.22)でもホウ化アルミニウムが研磨中にTa線か
らはがれてはいるが,わずかながら合金層または中間層の形成がみられ,また第18図(No.15)に
おいてもTaとの間に相互に拡散が生じて合金層または中間層の形成が認められた。
一(9)一
研 究 紀 要 第2号
V 結 目
気相析出法によってホウ化アルミニウムの生成を行なった結果をまとめると,
(1) 生成したホウ化アルミニウムは灰色または灰かっ色で,conc.HNO3,conc.HClには
侵されず,KOH水溶液,HFにわずかに侵された。
(2) デバイシェラー法によってX線回折を行なった結果,フィラメント温度:10000q
AIBr3:BBr3=1:2,析出時間:6hrsの生成条件のときAIB2の生成が認められた。
(3)AIB2は1000。C(±10。C)では分解しなかった。
(4) 反射法によって電子回折を行なった結果,フィラメント温度:1000。C,AIBr3:BBr3
=1:1および1:2の生成条件の場合には,生成したホウ化アルミニウムの結晶構造は時間の
経過によって変ることはなかった。しかしモル比1:4の生成条件のときには時間の経過は結晶
構造に変化を与えることがわかった。このことはエッチング液に対する腐蝕性からも推測され
た。
(5) ホウ化アルミニウムの析出量は析出時間,AIBr3とBBr3の供給量およびモル比に比
例して増加し,、その結晶構造は特殊の場合をのぞけば主としてフィラメ『ソトの温度, AIBr3と
BBr3の供給量およびモル比に影響きれた。
(6)AIBr3:BBr3のモル比が増すとホウ化アルミニウムはTaと相互拡散をおこして合金
層または中問層を形成した。
本研究を行なうにあたり,終始懇切な御助言と御指導を賜わった本学文理学部自然科学研究所
長土方倹三教授に感謝いたします。またX線回折については本学文理学部物理学科宇野良清教授
ならびに雪野健助手,電子回折については本学文理学部物理学科石原信一講師,日本電子株式会
社昭島製作所岩田博氏ならびに井部克彦氏の方々の御援助をいただきました。ここに謝意を表し
ます。また実験に協力してくれた本学文理学部化学科学生岩崎英邦君に感謝する。
本研究の第一報は予察的に行なったもので,今後さらに多量の生成物および単結晶をえ,それ
らについて精密化学分析を行ない,あわせてその性質を検討していきたいと思っている。
参 考 文 献
1234567
H・F・nk,Z肋079・〃セ粥・Ch翻.,142,269(1925)
W、Hofmann and WJaeniche,Z.P勿磁.Ch臨,31,214(1936)M・Hansen,D87且%ノわ砿伽Z臨3≠oガ1卿67襯9召”,∫κ」伽3S力吻9θ7,B67伽,1936
R・Kiessling,!1伽Ch召吻.5‘4忽,4,209(1950)
E Lihl and P.Jenitschek,Z.ハ4εま‘zJ饒麗㌶4e,44,414 (1953)
EJ・Felten,匹z4吻.Ch卿.Soo.,78,5977(1956)H・」・Becher・Z/1πoプg・∠4〃gθ”z・Chθ”z・,308,13(1961)
一(10)一
ホウ化金属に関する研究 (石
.小西孝子,日本化学会第16年会発表(1963)
卑,Zh・S加ぬムKh加・,2,748(1961)〔Chθ郷・茄轟 難 難 “∞
阿肱58V〔肌1・RWG刑K工KEL凡工L工α
G.S.Zhdanov,Oo々」.∠4肋4.ハr側々SSSR,141,884(1961
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20(1956)〕
(1908);43,297(1910)
116,134(1961)
343(1931)
43
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