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Business Chance 2008.9 6 退卓説 伊藤 彰 社長 日本サブウェイ 辿見事なV字回復を果たした企業がある。世界最大のサンドイッチチェーン「SUB WAY」の国内展開を手掛ける日本サブウェイ(東京都港区)だ。96年の150店を ピークに店舗数は減少を続け93店まで落ち込んでいた。この悪い流れを断ち切 ったのが、03年から社長を務めている伊藤彰氏だ。代表就任以来、5年連続で 店舗数は増加。現在156店までを拡大に成功しており、その勢いは増すばかりだ。 5年連続で店舗増加中! 「日本サブウェイ」V字回復の秘密とは

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Business Chance 2008.9   6

リーの信用力も手伝い、九五年に

は一五〇店に達した。しかし翌

九六年以降は退会が相次ぐことに

なった。理由は明白で「本部が掲

げたモデル店ほとんど儲からな

い」ためだった。一人また一人と

加盟オーナーが去っていった。

 

伊藤社長は、苦境の始まりであ

る九八年に日本サブウェイに入社

した。そもそも伊藤氏は明治大学

を卒業後サントリーに入社。営業

職を経験後、八六年から海外事業

部・レストランサントリーへ出向

していた。メキシコやスペインな

ど一二年間の海外勤務生活を送っ

てきた。世界の外食事情に精通す

るとして、サブウェイ建て直しの

スタッフとして白羽の矢を立てら

れたのであった。

「日本は地代・人件費高い」

店舗小型化で利益確保狙う

「サブウェイの国内展開に関する

第一印象は『ビジネスモデルの完

成度は高いがローカライズに問題

があるだろう』という感想です。

しかし何より商品力が良いのが魅

力でしたね」

 

入社したばかりの伊藤氏は、早

速加盟店の現場を回り始めた。本

部が掲げていた収益モデルと実情

高論卓説

伊藤 彰社長日本サブウェイ

内に一八〇店という目標が

ありますから、今は目標達

成に向けて全力投球ですよ」

 

伊藤社長が行った改革の

中身を見ていく前に、その

背景を理解せねばなるまい。

 

米国に本社を構えるサン

ドイッチチェーン「SUB

WAY」は、世界八六カ国

で約三万店を展開。一日平

均五店舗が世界のどこかで

出店している成長著しい企

業だ。創業者フレッド・デ

ルーカ氏は一九六五年、大

学進学の費用を稼ごうと小

さなサンドイッチ屋をスタ

ート。十分な資金も無かっ

たため、限られたスペース

と人でサンドイッチを作る

方法として、対面式の生産・

販売スタイルを確立させ

た。それが原点となり、全

米各地でFC店を成功させ

ていったのである。その後

は瞬く間に世界へ広がって

いった。

 

日本ではサントリーがマ

スターフランチャイズ契約

〇三年・九三店

〇四年・九五店

〇五年・一〇七店

〇六年・一二五店

〇七年・一四三店

 

伊藤彰社長が就任して

以来、日本サブウェイの

店舗数は拡大の一途を辿

っている。その勢いは今

年も衰えず、半期終了時

点で一五六店に達した。

九二年の国内FC展開以

来、最高の成績を叩き出

見事なV字回復を果たした企業がある。世界最大のサンドイッチチェーン「SUBWAY」の国内展開を手掛ける日本サブウェイ(東京都港区)だ。96年の150店をピークに店舗数は減少を続け93店まで落ち込んでいた。この悪い流れを断ち切ったのが、03年から社長を務めている伊藤彰氏だ。代表就任以来、5年連続で店舗数は増加。現在156店までを拡大に成功しており、その勢いは増すばかりだ。

5年連続で店舗増加中!「日本サブウェイ」V字回復の秘密とは

しているにも関わらず、伊藤社長

は満足していない。

「満足度?八〇点です。半期での

目標は一六〇店でしたからね。年

を取り付け、一〇〇%出資の子会

社である日本サブウェイを設立。

九二年からFCを開始。世界での

実績とバックについているサント

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の乖離―。その原因の一つは急拡

大の秘策としてFC開始初期から

導入されていた『地域代理店』の

存在があった。日本サブウェイの

下に地域ごとに代理店があり、そ

れぞれの組織が地域の加盟店を管

理していく方式を採用していた。

「第一号が上手くいっていたため、

結果的に地域代理店に管理を任せ

っきりになっていたのですが、そ

の管理基準が統一されずにいたの

です」

 

これでは不採算店の原因究明す

らできない。早速、取り組んだの

は店舗パッケージの見直しだった。

全店共通の業務運営マニュアルが

あれば、成功モデルの普及も図り

やすいからだ。いかに利益を生み

出せるオペレーションにしていく

か、それが課題だった。そこで役

立ったのが、一二年の海外勤務経

験だ。

「例えば国が変われば、食材原価

も人件費も変わります。日本は、

地代家賃と人件費が世界と比較し

ても高い。それに見合うオペレー

ションを考えた場合、小規模店舗

での効率性を追求するのが、ひと

つの解決策ではないかと考えまし

た。アメリカ本社との約束上、業

務オペレーションには手を加えら

れないことになっていたのです。

しかし、再建のためにやっている

ことなので、理解を得ようと何度

も米国本社に足を運びました」

 

コミュニケーションも密にし、

情報交換のスピードと量を上げ本

社との意見調整を行ってきた。

カウンター越しに、来店客のオー

ダーを受け付けながら商品を作っ

ていくのがサブウェイ独自の調理

工程。対応人数が採算を大きく左

右する。まず伊藤氏は一人当たり

の生産個数を一定にする作戦を打

ち出し、一時間で二〇個を生産で

きるようにスタッフをトレーニン

グした。

「一人当たりの生産個数を定めれ

ば、時間帯での需要予測から適正

人数が割り出せます。これで店舗

ごとのコストコントロールが容易

になりました」

 

結果として、店舗は小型化してい

った。売り上げは小さくなること

もあったが、利益確保が容易。こ

れが退店を出さない原動力である。

 

この改革が奏功し、既存加盟店

オーナーたちの複数店出店が増え

始めたのである。V字回復への基

礎はこれで固まった。一旦は中止

していたFC募集も再開し新規オ

ーナーも集まってきたのであった。

説卓論高

家電量販店、大学、コンビニ…

異業種とのジョイント出店加速

 

それだけでは不十分だとばかり

に、伊藤氏はこれまでまったく関

わりの無かった異業種分野との連

携も深めていった。携帯電話ショ

ップ、自動車販売店、大学キャン

パス、病院、サービスエリアなど

だ。最近では、家電量販店やスポ

ーツ量販店の一角にも出店を計画

している。

「路面店ではない立地を『ノン・

トラディショナル』と我々は言っ

ています。元々、海外のサブウェ

イでは実績のある出店形式ですか

ら、国内での可能性は十分にある

と見ています。コンビニに関して

は、実は三年前からアプローチを

かけてきました。現在、ファミリ

ーマートとジョイントして実験店

企業データ

1億円資本金

1991年

会社名

所在地

設 立

日本サブウェイ東京都港区

いとうあきら1982年、明治大学卒業後サントリーに入社。営業職経験後、八六年から海外事業部に転籍。レストランサントリーでメキシコやスペインなどで12年間に渡り飲食事業の最前線を経験。98年4月から日本サブウェイに出向。2003年10月に社長就任。健康法は早朝のランニング。現在はトライアスロンにも挑戦中。

 

コラボレーションを実現してい

くために、「お呼びが掛かる」ブ

ランドでなくてはならない、と伊

藤氏は力説する。

「現在は『野菜のサブウェイ』を前

面に出しています。我々の強みは

女性客を中心にリピート率も高い

こと。野菜をふんだんに用いてい

る点が人気要因でもあります。健

康志向も追い風ですし、環境事業

などにも注力していきたいですね」

 

サブウェイは店舗こそ小さなビ

ジネスだが、その内容充実へのこ

だわりは人一倍強い。最近、伊藤

社長は関東近郊の農村を駆け回っ

ているという。契約農業法人から

の直接仕入れを開始したい思惑が

あるからだ。店舗小型化とブラン

ドコンセプトの明確化でV字回復

を果たした今、同氏は次なる目標

を見据えている。

をスタートさせて

います」

 

コンビニは通常

四〇〜六〇坪だ

が、七〇〜八〇坪

の物件が出てきた

時に共同出店する

ことで機会損失も

減らせる上、利用

客の回遊効果も期

待できるという。