12
光合成とは? 我々人類を含めほぼ全ての生命は、太陽の光エネルギーの恩恵を受けている。その太陽 エネルギーを生物が使えるエネルギーに変換する反応が光合成である。光合成 photosynthesis)は、バクテリアから高等植物に至る幅広い生物群によって行われており、地 球上の生命を支える重要な化学プロセスである。 このプロセスは明反応と暗反応の二つからなり、明反応では色素分子が光を吸収するこ とで始まる。 1-1 明反応では光エネルギーを受けて H2O を酸化し、ATP NADPH を生成する。一方、 暗反応ではこの ATP NADPH を使って、二酸化炭素から糖などの有機化合物を作る。 1-2 高等植物の光合成の場。細胞内の葉緑体と呼ばれる小器官で光合成が行われる。明反応では チラコイド膜で、暗反応はストロマで進行する。 (バクテリアでは、チラコイド膜の代わりに細胞内膜が同じ役割を果たす。)

光合成 とは - 筑波大学kobayashi_lab/research.pdf光合成色素 光化学過程 に関与 する 色素 を光合成色素 と呼び、光合成色素 は、クロロフィル

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  • 光合成とは?我々人類を含めほぼ全ての生命は、太陽の光エネルギーの恩恵を受けている。その太陽

    エネルギーを生物が使えるエネルギーに変換する反応が光合成である。光合成

    photosynthesis)は、バクテリアから高等植物に至る幅広い生物群によって行われており、地

    球上の生命を支える重要な化学プロセスである。

    このプロセスは明反応と暗反応の二つからなり、明反応では色素分子が光を吸収するこ

    とで始まる。

    図 1-1 明反応では光エネルギーを受けて H2O を酸化し、ATP と NADPH を生成する。一方、

    暗反応ではこの ATP と NADPH を使って、二酸化炭素から糖などの有機化合物を作る。

    図 1-2 高等植物の光合成の場。細胞内の葉緑体と呼ばれる小器官で光合成が行われる。明反応では

    チラコイド膜で、暗反応はストロマで進行する。

    (バクテリアでは、チラコイド膜の代わりに細胞内膜が同じ役割を果たす。)

  • 光合成色素光化学過程に関与する色素を光合成色素と呼び、光合成色素は、クロロフィルを中心に

    多くの種類がある。光合成の明反応は光合成色素によって高効率で光エネルギー伝達や電

    子伝達を行うことが出来る。なお、色素の大部分は光吸収および反応中心へのエネルギー

    伝達をするアンテナ色素として機能している。

    クロロフィルは、人間の血液の色素ヘモグロビンと非常に似た構造をしている。血液は中

    心金属として Fe や Cu があり、また、深海の生物には中心金属を含んでいない白い血液を

    持つものもいる。しかし、光合成色素クロロフィルの中心金属はどれも Mg である。

    クロロフィル

    Mg

    Fe

    ヘム

    Cu

    ヘモシアニン

    5

    N N

    N N

    H3C

    CH3

    OH2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    13 2

    2 6

    9

    1 1

    1 417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ17 1

    172

    CH3C

    OH

    5

    N N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2CH3

    CH2CO

    O C20H39

    13 1

    Mg201

    3

    15

    1 8

    1 0

    13

    8

    1 32

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ17 1

    17 2

    COHCCH

    H

    H5

    N N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    13 2

    2 6

    9

    1 1

    1 417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ17 1

    172

    CCH

    H

    HCH3

    5

    N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    HH3C

    HCH2

    COO

    1 31

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    1313 2

    2

    11

    141 7

    12

    4

    1 9

    1 6

    ⅢⅣ

    Ⅴ1 71

    1 72

    C20

    H3 9

    NCH2

    CH386

    9

    7Ⅱ

    CH3H

    8182

    OH CH3C O

    H

    HCO

    O CH3

    5

    N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    HH3C

    HCH2

    COO

    1 31

    Mg201

    3

    1 5

    1 8

    10

    13132

    2

    11

    141712

    4

    19

    16

    ⅢⅣ

    Ⅴ1 71

    17 2

    NC

    CH3

    8

    6

    9

    7Ⅱ

    CH3H

    8182

    H

    C20H39

    COO CH3

    H

    COH

    5

    N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    HH3C

    HCH2

    COO

    1 31

    Mg201

    3

    1 5

    1 8

    10

    13132

    2

    11

    141712

    4

    19

    16

    ⅢⅣ

    Ⅴ1 71

    17 2

    NC

    CH 3

    8

    6

    9

    7Ⅱ

    CH3H

    8182

    H

    C15H25

    COO CH3

    H

    CCH

    H

    H

    Newton 別冊 地球大解剖 教育社 (1998)より イカの血は青い!

    自由研究ハンドブック 仮説社 P.77

  • Zn クロロフィルの発見クロロフィルは酸に弱いため、酸性の場所ではすぐに Mg が脱離してしまう。しかし、近

    年、pH3でも光合成をしている生物が発見された。そこで、その生物の色素を分析したと

    ころ、中心金属が Mg ではなく、Zn であるクロロフィルを初めて発見した。

    “What do you mean ‘extreme’? We love it here!”

    ・Acidic hot spring ・Waste water of mine

    STECH JUNE 1996 [VOL 14]

    Zn-BChl a を含む A. rubrum の発見

    A. rubrum

    5

    N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    HH3C

    HCH2

    COO

    131

    20

    1

    3

    15

    18

    10

    13132

    2

    11

    141712

    4

    19

    16

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    NCH2

    CH386

    9

    7Ⅱ

    CH3H

    8182

    CH3C O

    H

    C20H39

    H COO CH3

    5

    N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    HH3C

    HCH2

    COO

    131

    20

    1

    3

    15

    18

    10

    13132

    2

    11

    141712

    4

    19

    16

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    N

    CH2CH38

    6

    9

    7Ⅱ

    CH3H

    8182

    CH3C O

    H

    C20H39

    H COO CH3

    Acidiphilium rubrum

    Mg

    Zn

    0.5μm

    Acidphilium rubrum

    pH 3~4

    Strong Acid!!

  • Mg は酸に弱いが、Zn は酸に強い!Cu の入ったクロロフィルは安定なため、

    食品などの着色に利用されている。

    クロロフィルのジ

    ジエチルエーテル中でのクロロフィルの色。Zn クロロフィルの色は何とピンク!

    Chl a Chl b Phe a BChl a Zn-BChl a

    ④Mg は酸に弱い

  • Chl d で光合成を行う Acaryochloris marina

    Acaryochloris marina の発見

    Acaryochloris marina(A.marina)は1996年にパラオ諸島で発見された。

    従来の高等植物やシアノバクテリアはクロロフィル a(Chl a)を用いて光合成をおこなって

    いるが、発見された A.marina はクロロフィル d(Chl d)で光合成を行っていた。

    我々は、A.marina の色素を精密分析することで、光合成の反応経路を解明しようと研究し

    ている。

    A.marina の生活環境

    A.marina はホヤの中でほかのシアノバクテリアと共生している。ほかのシアノバクテリア

    は Chl a の光を吸収してしまうため、A.marina はその光より長波長の光を吸収しようと Chl d

    を持つようになったと考えられている。

    0.3μm 0.3μm0.3μm 0.3μm

    Miyashita, H. et al. (1996) NATURE, 383, 402

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3OH

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3OH

    Chl d

    CH3CH O

    CH O

    Chl a

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH35

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3CC H

    H

    H

    CH3

    1996年 宮下氏ら パラオ諸島の海岸

    群生ホヤ中より採取

    C h l d に よ る 酸 素 発 生 型 光 合 成

    パラオパラオ

    ホヤの切片像群生ホヤ

    写真・イラスト 提供 宮下氏

    Miyashita, H. et al. (1996) Nature,383, 402

  • Acaryochloris.sp の発見

    近年、A.marina と同様に Chl d で光合成を行うシアノバクテリアが日本でも発見された。

    これらも、A.marina と同じ光化学系を持っていると考えられている。

    村上ら「遺伝」2004 年 7 月号(58 巻 4 号)

    Wavelength / nm400 500 600 700

    A. marina

    aaaaa a

    aa a a

    a a

    a

    aaaa

    a

    d d dd

    aa

    他のシアノ

    バクテリア

    Chl a

    Chl d

  • Chl d の生合成経路の研究

    A.marina は Chl d で光合成を行っているが、どのようにして Chl d を持つようになったの

    かは、まだわかっていない。

    我々は、酵素を用いての色素変換の研究で、偶然、パパインが Chl a → Chl d 変換する

    ことを発見した。この結果は、A.marina の Chl d 生合成経路の研究の一助になると期待できる。

    A.marina の化学進化

    Copyright © Thierry MOREAU 1996-2004 INSERM U618 Université François Rabelais

    2bis, Bd TonnelléF-37032 TOURS Cedex FRANCE

    http://delphi.phys.univ-tours.fr/Prolysis/

    EC 3.-.-.- 加水分解酵素EC 3.4.-.- ペプチド結合を触媒EC 3.4.22.- チオールプロテアーーゼEC 3.4.22.2 パパイン

    パパイヤ由来分子量約 23,000

    Carica papaya Photo by Napraforgo

    http://www1.plala.or.jp/Napraforgo/picts/

    食品や化粧品に利用

    パパイン

    Chl a

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH35

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3CC H

    H

    H

    CH35

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3OH

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3OH

    Chl d

    CH3CH O

    パパイン

    含水アセトン中

    > <

    生物進化

    A. marina

    パパイン

    パパイヤ

    化学進化

  • BChl g を主要色素とするヘリオバクテリア

    1981 年、Indiana 大学の Biology 学科の建物前の土から BChl g を主要色素とするヘリオバ

    クテリオが発見され、1983 年に Gest と Favinger によって Heliobacterium chlorum として発

    表された。

    発表されているヘリオバクテリア

    Heliobacillus mobilis Heliobacterium fasciatum Heliobacterium modesticaldum

    Beer-Romero and Gest(1987) FEMS Microbiol. Lett., 41, 109-114.

    Ormerod et al. (1996) Arch Microbiol, 165, 226-234.

    Kimble et al. (1995) Arch Microbiol, 163, 259-267.

    生息地‥熱帯水田土壌 生息地‥熱帯水田土壌生息地‥温泉

    火山土壌至適生存温度‥38~42℃ 至適生存温度‥37~40℃ 至適生存温度‥50~52℃

    至適pH‥6.5~7 至適pH‥6.5~7 至適pH‥6~7

    M.T. Madigan, “Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology”, 2nd ed., vol.1, p.625, Springer, New York (2001)

    このヘリオバクテリオの反応中心は、高等植物の 2 つの反応中心のうち、系Ⅰ型反応中

    心との極めて高い類似性が指摘されている。また、興味深いことに BChl g の 7 位の水素が

    81位に転移すれば Chl aFに変身する。我々は BChl g が Chl a に化学進化し、酸素発生型光

    合成の誕生に至ったのではないかと考えている。

    400 500 600 700 800 9000

    0.5

    0.4

    0.3

    0.2

    0.1

    Abs

    orba

    nce

    Wavelength / nm

    BChl gChl aF

    M. Kobayashi et al.Analytica Chimica Acta 365 (1998) 199-203

    BChl g→Chl aFの吸収スペクトル変化

    《へリオバクテリアの仲間達》

    BChl g Chl aF

    異性化

    in acetone at –log[HCl] = 4.4

    BChl g→Chl aFの異性化

    5

    N N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    CCH2CO

    O C15H25

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3

    CH

    CH381

    82H

    CCH

    H

    H5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH

    C

    CH3

    CH2CO

    O C15H25

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH 3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3H

    81

    82

  • 始原的な酸素発生型光合成生物の進化

    高等植物は、光合成細菌を祖先とし、シアノバクテリアを経由して高等植物へ進化した

    と考えられている。近年スイスのマッターホルンで見つかった Gloeobacter violaceus は、細胞内膜中で酸素発生型光合成を行う大変ユニークな原核植物である。

    真核生物のもと

    高等植物などAcaryochloris

    プロテオ細菌

    Gloeobacter シアノバクテリア

    ミトコンドリア

    葉緑体

    生命誕生

    動物や菌類

    古細菌

    細菌

    ミトコンドリア

    Heliobacteria

    2004年5月19日 朝日新聞より改変

    スイス・マッターホルン山

    http://www.geocities.jp/hh2873y/

    G. violaceus の精密色素分析から、光化学系Ⅰの二次電子受容体(A1)はメナキノン(MQ-4)であることを明らかにした。クロロフィルおよびキノンの化学進化から、Heliobacteria →G. violaceus →シアノバクテリアと生物進化したと推定される。

    Gloeobacter violaceus の光化学系

    光合成細菌

    チラコイド膜中に光化学系

    酸素発生型光合成非酸素発生型光合成

    細胞膜

    光化学系

    チラコイド膜

    ストロマ側

    細胞膜

    光化学系

    シアノバクテリアG. violaceus

    細胞膜細胞壁

    細胞膜ストロマ

    細胞壁

    細胞膜中に光化学系

    細胞膜

    細胞壁

    チラコイド膜

    光化学系

    クロロフィルとキノンから見た系 I 型反応中心の進化

    シアノバクテリアなど

    (Chl a’/a)

    MQ -4Fe-S

    Chl a

    MQ -4Chl a

    e-

    e-

    e-

    (Chl a’/a)

    PhQ

    Fe-S

    Chl a

    PhQ

    Chl ae-

    e-

    e-

    (Chl d’/ )

    PhQ

    Fe-S

    Chl a

    PhQ

    e-

    e-

    e-

    A. marina

    dChl d

    G. violaceus

    (BChl g’) 2

    Fe-S

    OH-Chl aFe-

    e-

    e- アンテナBChl g

    OH-Chl aF

    MQ MQ

    Heliobacteria

    非酸素発生型光合成 酸素発生型光合成

    O

    OH

    n

    CH3

    3

    O

    OH

    CH3

    MQ PhQ

    Gloeobacter violaceus PCC 7421

    Rippka et al. (1974) Arch. Microbiol. 100, 424

    Thin section of a single cell of strain 7421.CW cell wall ;CMcytoplasmic membrane; CL cortical cytoplasmic layer of electrondense material ; C cyanophycin granule ; P polyphosphate granule; PC paracrystalline body.48750×

    BChl g → Chl a → Chl d への化学進化

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH

    C

    CH3

    CH2CO

    O C15H25

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH 3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH35

    N N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    CCH2CO

    O C15H25

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3

    BChl g Chl aF

    H

    81

    82

    異性化

    CH

    CH381

    82H

    5

    N N

    N N

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    CCH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    7

    12

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3

    CH

    CH381

    82H

    化学進化

    Chl d

    CH O

    CCH

    H

    H

  • ガンの光治療(山梨医科大学と共同研究)

    ガンの光治療とは?

    光治療(Photodynamic Therapy, PDT)とは、光感受性色素の有する腫瘍組織への特異的な集

    積性と光の励起エネルギーによる殺細胞効果を利用したユニークな治療法である。PDT は

    旧来のレーザー治療による光凝固や蒸散などの物理的な破壊作用とは異なり、正常組織に

    大きな障害を与えることなく、病変部位のみを選択的に治療することが可能な新しい治療

    法である。

    光治療用の色素

    光治療用色素としては、現在、フォトフリンなどの色素が用いられている。しかし、非常

    に高価で、副作用も強いため、我々は非常に似た骨格を持つクロロフィルに着目し利用で

    きないかと考え、研究を始めた。

    2 ~ 3 日後

    ガン組織を酸化破壊

    ガン細胞

    気管支鏡

    光感受性色素を

    静脈注射する

    ガンガン

    レーザーを当てる

    長所

    ・選択的に破壊

    ・肉体的負担の軽減

    長所

    ・選択的に破壊

    ・肉体的負担の軽減

    短所

    ・副作用(光過敏症)

    ・高価な治療費

    短所

    ・副作用(光過敏症)

    ・高価な治療費

    光治療

    Hematoporphyrin Derivative(HpD) Chlorophyll a

    ブタの血液由来

    混合物

    高価

    21万円 / 75 mg

    40万円 / 回

    植物由来

    高純度

    安価

    1万円 / 50 mg

    パセリ

    5

    N N

    N N

    C

    H3C

    CH3

    O

    H2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O C20H39

    131

    Mg201

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3

    NH N

    N HN

    CHOH

    H3C

    CH3

    (H2C)2

    H3C

    CHCH3

    HOOC

    CH3

    H3C

    (CH2)2COOH

    OH

    NH N

    N HN

    CHOH

    H3C

    CH3

    (H2C)2

    H3C

    CHCH3

    HOOC

    CH3

    H3C

    (CH2)2COOH

    OH

    光治療用色素

  • クロロフィルの効果

    治療用色素として使用されているヘマトポルフィリンは細胞膜を攻撃するため効果は低

    いが、クロロフィルから生成したフェーフォーバイドは核やミトコンドリアを攻撃するこ

    とができる。

    口腔粘膜細胞の核、ミトコンドリア、リソソームに取り込まれた

    クロロフィルが強く赤い蛍光を発している。

    Na-Phde a

    リソゾーム

    ミトコンドリア

    MW=609

    5

    NH N

    N HN

    C

    H3C

    CH3

    OH2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O H

    131

    20

    1

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH35

    NH N

    N HN

    C

    H3C

    CH3

    OH2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2C

    5

    NH N

    N HN

    C

    H3C

    CH3

    OH2C

    H

    H

    H3C

    H

    C

    CH2

    C

    CH3

    CH2CO

    O H

    131

    20

    1

    3

    15

    18

    10

    13

    8

    132

    2 6

    9

    11

    1417

    H

    H

    7

    12

    H

    O

    4

    O

    19

    CH3

    16

    Ⅰ Ⅱ

    ⅢⅣ

    Ⅴ171

    172

    CH3

    Pheophorbide a

    NH N

    N HN

    CHOH

    H3C

    CH3

    (H2C)2

    H3C

    CH(OH)CH3

    HOOC

    CH3H3C

    (CH2)2COOH

    MW=599

    Hematoporphyrin IX

    光治療におけるフェオフォーバイドの作用位置は?

    空気下の水 :250μM

    細胞内 :0.1μM

    ((溶存O2濃度 ))

    空気下の水 :250μM

    細胞内 :0.1μM

    ((溶存O2濃度 ))

    “Membranes and their Cellular Funvtions“J.B.Finean,R.Coleman & R.H.Michell(1978)

    Na-Phde a

  • ガン組織に蓄積されたクロロフィル

    クロロフィルに可視光を照射すると赤い蛍光を発するため、ガン細胞の位置を特定するこ

    とができる。

    クロロフィルをねずみの体内に注射

    することで、全身に色素が回り、正常

    な組織は色素を排出するためガン組

    織のみにクロロフィルが蓄積する。

    がん細胞に取り込まれた Na-Phde a による蛍光

    位相写真 蛍光写真

    Na-Phde a 浸漬時間=40 μg/mL 浸漬時間=30 分 浸漬温度=37 ℃