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16 24 10 12 https://art-kan.jimdo.com/ 67 m o v e m e n t 「絵を描くときは一応下書きをしますが、絵の具を撒いた後に、手でペタペタし たり、ふき取ったり、削ったりしているうちに見えてくるものがある。そういう ものを形として拾っていったりします――」。 変化することを良しとする坂本さんの画風は一般的には“抽象画”と言われる ジャンルだが、じっと見ているとどこか安心感を覚える。さりげなく取り込まれ た『丸』や『四角』といった形が、作品を引き締めているためだろうか。坂本さ んの描く『丸』は、完全型とも言えるほど美しく整っている。「時のらせん階段を 輪切りにしてみたら、どんな風景だろう。そんなことも考えながら描いています」 と話す。 坂本さんは 1960 年、横山町(現在の千代田町)に生まれ、実家は『鳥留』と いう精肉店を営んでいた。県立前橋高校在学中には井田淳一氏(故人)に師事し、 群馬大学教育学部美術専攻に進学する。卒業後、市内の中学校で美術の非常勤講 師を1年間務めた後、実家の精肉店を継ぎ画家としても活動し始めた。原点とな るのは前橋の風景や、人との関わり、まちの時間軸、等だ。現在も群馬県美術会 理事や前橋市民展の運営委員として前橋・群馬の美術界を牽引している他、県内 の中学・高校で非常勤講師を務めながら若い芽を育てている。2 月にアーツ前橋 で開催された展覧会、「前橋の美術2017」でも実行委員を務めた。 坂本さんにとって絵とは?の問いに、「毎日の歯磨きや洗顔と同じように、生活 になくてはならないもの。ライフワークといいますか、離れられないものですね」 「無意識に描いた絵の中に、観る人が意外なものを発見してくれたりする。無意識 の中の意識に出会うことが、自分でも面白くて活動を続けています」と話す。 祭り大好き人間。「かつて商店街には濃密なコミュニティがあった。美術も、祭 りも、その日、その場所だけで盛り上がるのではなく、非日常から日常へ波及さ せていきたい。それこそがまちの本当の活性化になるから」。美術家のフィルター を通した目からまちづくりを見つめる。生まれ育った前橋に対する、温かいまな ざしがそこにはあった。 時流を描く、 前橋に根ざした表現者 画家 坂本 敏さん 「創造回帰 - 時に刻まれた記憶 -」(2014 年) 「対岸から見た親水公園」(2011年) 「時の空」(1999年) 湖畔の記憶(2016 年) 〈Profile〉 1960 年、前橋市横山町(現在の千代田町)に生まれる。群 馬大学教育学部美術専攻卒業後、画家として活動を始め 82 年 から群馬青年美術展、モダンアート協会展、県展等に出品。 86 年群馬青年美術展奨励賞、93 年モダンアート協会展優秀 賞・安田火災美術財団奨励賞受賞。91 年、第 25 回現代美術 選抜展(文化庁)に出品。主な展覧会に、アヴァンギャルデ ィア東京展(93年、銀座井上画廊)、クロスセッション「断面」 展(95年、高崎市民ギャラリー)、がんばろう神戸展(96年、 高崎市)、CAF展(97年、2002年埼玉県立美術館)、こころ みの(2016 年、ノイエス朝日)、前橋の美術 2017(アーツ 前橋)など。昨年、第 67 回群馬県展において最高位の山﨑種 二記念特別賞を受賞した(作品名『創造回帰ーいつか見た風景 ー』)。群馬県美術会理事、前橋美術会理事、前橋市民展運営委員。 「創造回帰いつか見た風景」(2016年)

時流を描く、 前橋に根ざした表現者 画家 坂本 敏さん...16 ﹁坂本敏作品展﹂ 開催のお知らせ これまでの坂本さんの作品を展 会期す。示する展覧会を次の通り開催しま

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Page 1: 時流を描く、 前橋に根ざした表現者 画家 坂本 敏さん...16 ﹁坂本敏作品展﹂ 開催のお知らせ これまでの坂本さんの作品を展 会期す。示する展覧会を次の通り開催しま

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■﹁坂本敏作品展﹂

 

開催のお知らせ

 

これまでの坂本さんの作品を展

示する展覧会を次の通り開催しま

す。

●会期

 

2017年6月24日(土)

     

~7月2日(日)

     

※火曜日は、休廊

●開館時間

 

午前10時~午後6時

●会場

 

ギャラリーあーとかん

 (前橋市上新田町680ー

12)

◎お問合せ

 

☎027ー

896ー

1317

◎URL

 

https://art-kan.jimdo.com

/

■坂本さんの作品が、

 

山﨑種二記念特別賞を

 

受賞しました

 

第67回群馬県美術展覧会におい

て、坂本敏さんの作品「創造回帰ー

いつか見た風景ー

」、が最高の栄誉

である山﨑種二記念特別賞を受賞

しました。

movement

 「絵を描くときは一応下書きをしますが、絵の具を撒いた後に、手でペタペタしたり、ふき取ったり、削ったりしているうちに見えてくるものがある。そういうものを形として拾っていったりします――」。 変化することを良しとする坂本さんの画風は一般的には“抽象画”と言われるジャンルだが、じっと見ているとどこか安心感を覚える。さりげなく取り込まれた『丸』や『四角』といった形が、作品を引き締めているためだろうか。坂本さんの描く『丸』は、完全型とも言えるほど美しく整っている。「時のらせん階段を輪切りにしてみたら、どんな風景だろう。そんなことも考えながら描いています」と話す。 坂本さんは1960年、横山町(現在の千代田町)に生まれ、実家は『鳥留』という精肉店を営んでいた。県立前橋高校在学中には井田淳一氏(故人)に師事し、群馬大学教育学部美術専攻に進学する。卒業後、市内の中学校で美術の非常勤講師を1年間務めた後、実家の精肉店を継ぎ画家としても活動し始めた。原点となるのは前橋の風景や、人との関わり、まちの時間軸、等だ。現在も群馬県美術会理事や前橋市民展の運営委員として前橋・群馬の美術界を牽引している他、県内の中学・高校で非常勤講師を務めながら若い芽を育てている。2月にアーツ前橋で開催された展覧会、「前橋の美術2017」でも実行委員を務めた。 坂本さんにとって絵とは?の問いに、「毎日の歯磨きや洗顔と同じように、生活になくてはならないもの。ライフワークといいますか、離れられないものですね」「無意識に描いた絵の中に、観る人が意外なものを発見してくれたりする。無意識の中の意識に出会うことが、自分でも面白くて活動を続けています」と話す。 祭り大好き人間。「かつて商店街には濃密なコミュニティがあった。美術も、祭りも、その日、その場所だけで盛り上がるのではなく、非日常から日常へ波及させていきたい。それこそがまちの本当の活性化になるから」。美術家のフィルターを通した目からまちづくりを見つめる。生まれ育った前橋に対する、温かいまなざしがそこにはあった。

時流を描く、前橋に根ざした表現者

画家 坂本 敏さん

「創造回帰 - 時に刻まれた記憶 -」(2014 年)

「対岸から見た親水公園」(2011 年)

「時の空」(1999 年)

湖畔の記憶(2016 年)

〈Profile〉1960 年、前橋市横山町(現在の千代田町)に生まれる。群馬大学教育学部美術専攻卒業後、画家として活動を始め 82 年から群馬青年美術展、モダンアート協会展、県展等に出品。86 年群馬青年美術展奨励賞、93 年モダンアート協会展優秀賞・安田火災美術財団奨励賞受賞。91 年、第 25 回現代美術選抜展(文化庁)に出品。主な展覧会に、アヴァンギャルディア東京展(93 年、銀座井上画廊)、クロスセッション「断面」展(95 年、高崎市民ギャラリー)、がんばろう神戸展(96 年、高崎市)、CAF 展(97 年、2002 年埼玉県立美術館)、こころみの(2016 年、ノイエス朝日)、前橋の美術 2017(アーツ前橋)など。昨年、第 67 回群馬県展において最高位の山﨑種二記念特別賞を受賞した(作品名『創造回帰ーいつか見た風景ー』)。群馬県美術会理事、前橋美術会理事、前橋市民展運営委員。

「創造回帰ーいつか見た風景ー」(2016 年)