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2018 年 11 月 30 日 報告書 実施期間 2017 年 10 月 1 日~2018 年 2 月 28 日 駆動用モータ磁石からの レアアース回収技術開発 早稲田大学創造理工学部環境資源工学科 山口勉功 日産自動車株式会社 材料技術部 小川 和宏、大村 正志、小金沢 泰一

報告書 駆動用モータ磁石からの レアアース回収技術開発 - …...22.7 4.8 2.8 0.3 17.2 1.6 N.D. 0.03 3.9 29.7 N.D. N.D. Bal. (17) 熔解試験で得られたRE

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2018年 11月 30日

報告書

実施期間 2017年 10月 1日~2018年 2月 28日

駆動用モータ磁石からの

レアアース回収技術開発

早稲田大学創造理工学部環境資源工学科

山口勉功

日産自動車株式会社 材料技術部

小川 和宏、大村 正志、小金沢 泰一

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概要

名称

駆動用モータ磁石からのレアアース回収技術開発

実施期間

2017年 10月 1日~2018年 2月 28日

開発/調査 代表者

早稲田大学創造理工学部環境資源工学科 山口勉功

実施者

早稲田大学創造理工学部環境資源工学科 山口勉功

日産自動車株式会社 材料技術部 小川 和宏、大村 正志、小金沢 泰一

目的

使用済みの EV車両のモータのネオジム磁石から、効率的にレアアースを回収

するリサイクル技術の開発を行う

実施内容

EV モータのローターおよび磁石に酸化ホウ素をフラックスとする加熱処理を

施しレアアースを分離し、また傾注によりレアアース含有スラグ相とレアース

を含まない溶鉄相を分離することが可能か評価した。

成果

EV モータのローターに銑鉄とフラックスを加えた、熔融物は RExOy-B2O3系ス

ラグ相と熔融 Fe-C相の二相に分離し、傾注により RExOy-B2O3系スラグ相と熔融

Fe-C 相に分けることが可能であった。スラグ相に対して、シュウ酸塩沈殿を用

いた湿式法を適用することで、レアアース酸化物の合計の濃度が 99.92mass%の

高純度レアアース酸化物を回収することができた。(詳細 技術報告書参照)

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1.研究課題

駆動用モータ磁石からのレアアース回収技術開発:廃磁石の成分分離に関する研究

2.研究目的

今後、環境対応車であるHEV/EVの増加が見込まれる。その中で、モータにはレアアース(Nd、

Pr、Dy、Tb)等希少金属を使用したネオジム磁石が含有されており、天然資源に乏しい我が国に

おいて、レアアースの回収とリサイクルが重要となる。そこで今回、使用済みの EV 車両のモータ

のネオジム磁石からのレアアースの効率的な回収技術開発に取り組んだ。具体的には、EV モー

タのローターおよび磁石に酸化ホウ素をフラックスとする加熱処理を施し、EV モータのローターと

磁石からレアアースを分離、回収するうえで、今年度は本学が現有する 100kg 溶解炉を用い、処

理の大型化を図ると共に、傾注により、レアアース含有スラグ相とレアースを含まない溶鉄相を分

離することが可能か評価した。

3.研究内容

EV モータのローターないしはネオジム磁石単体に酸化ホウ素をフラックスとする溶融加熱法に

よりレアアースを回収するために、次の実験を行った。

1)EVモータのローターの熔融と傾注によるレアアース含有スラグ相と溶鉄相の分離・回収

2)ネオジム磁石単体の熔融と傾注によるレアアース含有スラグ相と溶鉄相の分離・回収

図1 Nd2O3-B2O3系状態図 図 2 Fe-C系状態図

4.実験および結果

4-1 酸化ホウ素をフラックスとする溶融加熱法の原理

図1に Nd2O3-B2O3系状態図を示す。重量比で Nd2O3-B2O3が1:1の 50mass%Nd2O3-50mass%

B2O3の組成は 1150℃以上で L2 融体として熔融することが分かる。また、図 2 には Fe-C 系状態

図を示す。鉄の融点は1535℃と高温であるが、4.3mass%の炭素を含む鉄は、1153℃以上で熔融

することが分かる。これらの現象を利用して、炭素飽和下で Fe-Nd-B 系ネオジム磁石と酸化ホウ

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素、B2O3を熔融することで、Fe-Nd-B 系ネオジム磁石の主成分の鉄を Fe-C 系融体に、レアアー

スのネオジムを Nd2O3-B2O3 系の酸化物融体(スラグ)として、溶融状態で図3のような2つの液相

に分離する。これらの液相は傾注により、Nd2O3-B2O3系スラグ相と熔融 Fe-C 合金を分けて回収

する。

図3 ネオジム磁石を炭素ルツボで B2O3フラックスと共に熔融し、傾注により各相を分離する様子

Nd2O3-B2O3 系スラグは酸性水溶液で浸出して水溶液とした後、シュウ酸塩として水溶液から沈

殿させることで、高純度の Nd2O3として回収する。

4-2 EVモータのローターの熔融試験

EVモータのローターに含有される Nd、Pr、Dy、Tbのレアアースと同量の B2O3フラックスを添加

し、ローターからレアアースを酸化物相へ分離、回収し、また、傾注により Nd2O3-B2O3 系スラグ相

と Fe-C相を分けることが可能か調べた。

試験は鉄100kgを溶解可能な高周波誘導炉を用いた。溶解原料を表1に示す。はじめにEVモ

ータのローター2個と銑鉄、加炭材を入れ、1500℃に昇温して融解した後、Fe2O3 を添加し、レアア

ースを酸化した後、B2O3 フラックスを添加し、炭素棒で撹拌した。その後、15分保持し、傾注によ

り炉内から RExOy-B2O3系スラグ(RE:Nd、Pr、Dy、Tb)と Fe-C 相をそれぞれ取り出し、空冷した。

図4に熔融試験の概略図を示す。また、 溶融処理の作業の様子を図5に示す。

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表1 溶解原料(kg)

ローターコア 30.5(2個)

銑鉄 20

加炭剤 0.76

Fe2O

3 1.3 (関東鹿 1級)

B2O

3

1.3*

(磁石中の REE と同量) (和光)

* ローター1個に含まれる磁石 1.89kg、磁石中のレアアース(REE)濃度 32%として計算

図4 熔融処理の概略

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試験に使用した EVモータのローター

傾動した100kg溶解炉

カーボンコート剤ファインヒッターを

炉内耐火物にスプレー

銑鉄 20kgを炉内に設置

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熔融試験においてもアルミナ製の耐火物との反応が著しく、耐火物の溶損が見られた。

耐火物の溶損を防ぐためには、

①炭素ルツボを使用する。

②炭素系のスタンプ材を用いる。

など、耐火物への炭素コーティングを行う必要がある。

ローター2個+銑鉄+加炭剤を溶解開始

溶湯の温度測定

溶湯温度 1519℃

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Fe2O3を添加して、磁石中のレアアースを酸化

B2O3フラックスの添加

RExOy-B2O3系スラグ相と熔融 Fe-C相の温度測定

1500℃程度で 15分保持

傾注作業開始

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傾注による Nd2O3-B2O3系スラグ相の抜出し

回収された RExOy-B2O3系スラグ相

次いで、傾注による熔融 Fe-C相の抜出し

回収された Fe-C合金相

図5 EVモータのローターの溶融処理の作業

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表2に回収された Fe-C 相の分析結果を示す。表に示されるように溶鉄中には、レアアースは

ほとんど含まれていないことが分かり、磁石中のレアアースはスラグ相に移行したものと考えられ

る。今、レアアース成分を除いたローター成分、銑鉄、加炭剤、Fe2O3が全て Fe-C相になったと仮

定した場合、Fe-C相は 48kg程度になる。この Fe-C相中に含有されるレアアースは 9.7g となる。

処理した磁石中のレアアースは 1.2kg 程度であるため、溶鉄中への損失は 0.8%程度、スラグへ

の移行率は 99.2%程度となる。

表2 ICP-OESによる Fe-C系合金の分析結果(mass%)

表3には回収された RExOy-B2O3 系スラグ相の分析結果を示す。表に示されるように、回収され

たスラグ中のレアアース酸化物の濃度は 30.8mass%で、B2O3濃度は 17mass%程度であった。ま

た、このスラグには、30mass%程度の Al2O3と 17mass%程度の SiO2が含まれている。Al2O3は耐

火物由来であり、カーボンコート剤を塗布したものの、コート剤が薄いためにその下地の耐火物が

反応し、溶解したものと考える。また、SiO2 も耐火物とローターの電磁鋼板から由来するものと考

えられる。これらの耐火物の溶損は、炉体を損傷する他、生成するスラグ量が増加すると共にス

ラグ中のレアアース濃度が低下するため、今後の課題となる。カーボンコート剤で無く、カーボン

ルツボやカーボン系のスタンプ材の適用を検討したい。

表3 ICP-OESによる RExOy-B2O3系スラグ相の分析結果(mass%)

Nd2O3 Pr2O3 Dy2O3 Tb2O3 B2O3 FeO NiO Cr2O3 MnO Al2O3 Cu2O ZnO SiO2

RExOy-

B2O3 slag 22.7 4.8 2.8 0.3 17.2 1.6 N.D. 0.03 3.9 29.7 N.D. N.D.

Bal.

(17)

熔解試験で得られた RExOy-B2O3 系スラグから、湿式法によるシュウ酸塩沈殿を用いて高純度

のレアアース酸化物の回収を試みた。湿式法のレアアース回収フローを図6に示す。

Nd Pr Dy Tb B Ni Cr Mn Al Cu Zn Fe+C+Si

Fe-C

alloy 0.009 <0.001 0.002 0.008 0.035 0.016 0.207 0.249 0.099 0.000 0.112 Bal.

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図6 シュウ酸塩沈殿によるレアアース回収フロー

熔解試験で得られた RExOy-B2O3系スラグから、湿式法によるシュウ酸塩沈殿を用いて回収され

た高純度のレアアース酸化物を図 7に示す。また、表4に ICP-OESによるレアアース酸化物の分

析結果を掲げる。

図 7 回収されたレアアース酸化物

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表4 ICP-OESによる分析結果(mass%)

Nd2O3 Pr2O3 Dy2O3 Tb2O3 B2O3 Fe2O3 NiO Cr2O3 MnO Al2O3 Cu2O ZnO

RExOy 75.1 14.8 9.1 0.9 0.015 0.029 0.005 0.009 0.019 N.D. N.D. 0.004

ICP-OES による分析によるレアアース酸化物以外の不純物の濃度は 0.08mass%程度であり、

各種レアアース酸化物の濃度の合計は 99.92mass%程度であった。このことから、熔解試験で得

られた RExOy-B2O3 系スラグに対して、湿式法によるシュウ酸塩沈殿を用いることにより高純度の

レアアース酸化物を回収可能であることが確認できた。

4-3 ネオジム磁石単体の熔融試験

前述したように、ネオジム磁石を含有する EVモータのローターから高純度のレアアース酸化物

を回収することができることが分かった。次いで、レアアースと同量の B2O3 フラックスを添加し、ネ

オジム磁石単体からレアアースを酸化物相へ分離、回収し、また、傾注により Nd2O3-B2O3 系スラ

グ相と Fe-C相を分けることが可能か調べた。

試験は鉄100kg を溶解可能な高周波誘導炉を用いた。溶解原料を表 5 に示す。磁石と銑鉄、

加炭材を入れ、1500℃に昇温して融解した後、Fe2O3 を添加し、レアアースを酸化した後、B2O3 フ

ラックスを添加し、炭素棒で撹拌した。その後、傾注により炉内から RExOy-B2O3系スラグ(RE: Nd、

Pr、Dy、Tb)とFe-C相をそれぞれ取り出すことを試みた。熔融試験の概略は、先に示した図4と同

様である。

表 5 溶解原料(kg)

磁石 22.1

銑鉄 21.4

加炭剤 0.62

Fe2O

3 10.8 (関東鹿 1級)

B2O

3

7.8*

(磁石中の REE と同量) (和光)

* 磁石中のレアアース(REE)濃度 32%として計算

溶融処理の作業の様子を図8に示す。1522℃で磁石と銑鉄が熔融した後、酸化剤の Fe2O3 を

投入、B2O3 のフラックスを添加したところ、溶湯が泡立ちはじめ、炉から溢れそうになったため、緊

急に溶湯を傾注することとした。粘性の低いスラグが傾注されたが、熔融 Fe-C合金が見当たらな

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かった。また、溶湯を全て炉から取り出したところ、炉内に固体状の物質の存在が確認された。固

体状の物質を治具で掻き出すと、火花を発して酸化反応を示した。このことから未熔融の磁石とも

想像される。磁石単体の熔融試験では、RExOy-B2O3系スラグ相と熔融 Fe-C 相に分離することが

できなかった。この理由としては、磁石単体の場合、ローターに比べて処理重量当たりのレアアー

ス量が多く、酸化に時間を有することが考えられる。また、レアアース量が多いため、単位処理量

当たりの発熱量も多く、図9に示すように耐火物の損傷を招くこととなった。

カーボンコート剤ファインヒッターを

炉内耐火物にスプレーした後、

磁石+銑鉄+加炭剤を入れ加熱開始

熔融状態を確認

温度は 1522℃程度

Fe2O3を添加して、磁石中のレアアースを酸化

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炉入り口付近に未熔融物を確認

未熔融物を溶かすため、B2O3フラックスを投入

湯が泡立ちはじめ、予定の投入量の半分以下

3kgで投入中止

溶湯が泡立ち、溢れそうになるため、緊急に傾注、出湯

粘性は低いスラグが傾注された。

しかしながら、熔融 Fe-C合金が見当たらない。

炉内に固体状の物質を確認。

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炉内から固体状物質を掻き出すと、

火花を発して酸化。未反応の磁石かもしれない。

固形の未熔融物を確認

図8 磁石単体の溶融処理の作業の様子

図9 耐火物の溶損の状況

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5 まとめ

100kg 溶解炉を用い、処理の大型化を図ると共に、傾注により、レアアース含有スラグ相とレア

ースを含まない溶鉄相を分離することが可能か調べる目的で、使用済みの EV モータのローター

および磁石に酸化ホウ素をフラックスとする加熱処理の試験を行った。その結果は、次の様にま

とめられる。

1) EVモータのローター2個、30.5kgに銑鉄とフラックスを合計して 50kg程度を約 1500℃で熔融

した。熔融物は RExOy-B2O3系スラグ相と熔融 Fe-C 相の二相に分離し、傾注により RExOy-

B2O3系スラグ相と熔融 Fe-C相に分けることが可能であった。

2) EV モータのローターから回収された RExOy-B2O3 系スラグ相に対して、シュウ酸塩沈殿を用

いた湿式法を適用することで、レアアース酸化物の合計の濃度が 99.92mass%の高純度レア

アース酸化物を回収することができた。

3) ネオジム磁石単体 22kg と銑鉄とフラックスを合計して 60kg程度を約 1500℃で熔融したが、

RExOy-B2O3系スラグ相と熔融 Fe-C相の二相に分離することができなかった。また、炉内に

は未溶解の磁石が確認された。ローターに比べて処理重量当たりのレアアース量が多く、酸

化に時間を有するため、RExOy-B2O3系スラグ相が生成せずに、未溶解の磁石を残したま

ま、Fe2O3-RExOy-B2O3系スラグが生成したと考える。

4) いずれの熔融試験においても耐火物との反応が著しく、耐火物の溶損を防ぐためには、炭素

ルツボの使用または炭素系のスタンプ材を用い、耐火物への炭素のコーティングを厚くする

必要がある。

5) FY18は、スラグ相へ移行するレアアース濃度を維持するフラックスの最適種/量の探査、ル

ツボの改良、大型スケール化の課題の探索 を計画している。