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くじけない人ひ と
の話は な し
おしゃかさまの物も の
語がたり
より(ジャータカ 第 124 話)
アルボムッレ・スマナサーラ 監修藤ふ じ
本も と
竜りゅう
子こ
再さ い
話わ
笛ふ え
岡お か
法の り
子こ
絵え
サ ン ガ
くるひも くるひも
ひとつぶの あめも ふりませんでした。
3
むかしむかし
ヒマラヤの ふもとで
ひどいひでりが つづきました。
2
このひでりでひとびとは のみものにも たべものにもとても くろうしていました。
54
でも いってきの みずも ありません。
どこもかしこも からからでした。
7
ひとりの わかものが
かれたかわの そばを あるいていました。
かわには どうぶつたちが たくさん やってきて
みんな みずを さがしていました。
「みずは どこに あるのだろう」
6
ほんのすこし いろの
ちがうところが ありました。
わかものは そこを ほりました。
9
ずうっと あるいていくと
ひあがったいけの そこに
8
11
ほって ほってほりました。ほって ほって ほりすすむとみずが ちょっぴり しみだしました。
10
ほって ほってほりすすむととうとう みずが わきでてきました。
13
もっと もっと ほりました。
12
「よし。あれを つくろう。みんな。まってて」
15
「ああ でも
これでは おまえたちは
のめないね」
あなは ふかくて
どうぶつたちには
とどきません。
14
そのきを けずります。けずって けずってひとつの おけを つくりました。
17
わかものは はしっていっていっぽんの きを きりました。
16
「さあ。みずだよ!」
なんども なんども
くみました。
どうぶつたちは おいしい みずを
のみました。
わかものは みずを くみます。
くんで くんで
くみました。
1918
わかものは くんで くんで くみました。やすむことなくどんどん。
21
つぎから つぎへとどうぶつたちは あつまります。くんでも くんでもどうぶつたちの れつは つづきます。
20
でも くむことは やめません。
つかれても くみました。
なにもかも わすれて くみました。
どうぶつたちは
みずを くんでくれる わかものを
じっと みていました。23
わかものは おなかが ぺこぺこでした。
だって ずっと みずを
くんでいるので
たべものを さがしにいけないのです。
22
ぼくらの ともだちをこんどは ぼくらがたすけるんだ。
ぼくらに
できることは
なにかな?
わたしに
できることは
なんだろ?
25
このひとは ぼくらの ともだちだよ。こんなに ぼくらのことをしんぱいしてくれるんだもの。
おなかが すいて きっと ふらふらだよ。
きっと たおれそうにつかれているよ。
わたしたちも
このひとに
なにか
してあげたい。
24
そうだ!
2726
「それがいい! それがいい!」「そうしましょう!」
29
「ぼくらが みずを のみにくるとき
なにか たべものを もってくるんだ。
ぼくらだから さがせるものが
きっと なにか あるはずだよ。
ひとり ひとり
じぶんの ちからで さがせるものを
もってくることに しようよ!」
28
ゾウはながいはなを
つかってパンのきの
みをとりました。
31
どうぶつたちはみんな それぞれじぶんが もっている ちからを つかってくだものを さがしました。
サルはたかいところに なっている
マンゴーの みを もぎました。
30
リスはくるみをさがしてきました。
33
ヤマイヌは しげみに もぐりこんでノバラの みをくわえてきました。
32
ながい ながい どうぶつたちの れつ。
どんどん どんどん やってきます。
くだものは ずんずん たまります。
35
みつけた くだものを もって
どうぶつたちは みずを のみにいきました。
くだものを おいて
みずを のんで かえります。
34
37
おおきな おおきな くだものの やまが できました。
おおぜいの ひとたちが いっぱい たべても だいじょうぶ。
36
にんげんも
どうぶつたちも
ひでりに まけず
それどころか
みんな
なかよく げんきに
にこにこと くらしました。39
まいにち まいにち
ひでりが おわるまで
こんなふうに つづきました。
38
くじけないこころの おおきなちからが
みんなの しあわせを つくったのじゃよ」
41
むらの おさが はなします。
「やさしいこころの わかものは
けっして くじけなかった。
どうぶつたちは しあわせになり
わたしたちにも
こんな ひでりの なかなのに
たくさんの たべものが あった。
40
43
「いきることは どりょくで みのるかしこいひとなら くじけないちえあるひとは おちこまない
ごらんよこのしあわせを
くじけないこころが つくったこのしあわせを」
42
そして みんなが わすれないよう
ひとつの うたを つくりました。
人じん
生せい
には次つぎ
々つぎ
と困こん
難なん
なことが起お
こります。
しかし、くじけず、努ど
力りょく
することで、
のりこえることができます。
困こん
難なん
を、幸しあわ
せに変か
えることができます。
44
くじけない人ひ と
の話は な し
おしゃかさまの物
も の
語が た り
より(ジャータカ 第 124 話) 2011 年 8 月 1 日 第 1 刷発行
監修 アルボムッレ・スマナサーラ再話 藤本 竜子 絵 笛岡 法子
発行者 島影 透発行所 株式会社サンガ 〒 101 - 0052 東京都千代田区神田小川町 3 - 28 電 話 03(6273)2181 FAX 03(6273)2182 ホームページ http://www.samgha.co.jp/ 郵便振替 02230 - 0 - 49885(株)サンガ
印刷・製本 倉敷印刷株式会社
©Alubomulle Sumanasara, Ryuko Fujimoto, Noriko Fueoka 2011. Printed and Bounded in JapanISBN978-4-904507-92-6 C8715
落丁・乱丁本はお取り替え致します。
[監修]
アルボムッレ・スマナサーラ(Alubomulle Sumanasara)スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老。1945 年 4 月、スリランカ生まれ。13 歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとったのち、1980 年に国費留学生として来日。駒澤大学大学院博士課程で道元の思想を研究。現在は(宗)日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道と瞑想指導に従事。メディア出演や全国での講演活動をつづけている。著書に『自分を変える気づきの瞑想法』『ブッダの実践心理学─アビダンマ講義シリーズ』(藤本晃氏との共著)『怒らないこと』『怒らないこと2』『13 歳へ』(以上、サンガ)、『心がスーッとなるブッダの言葉』(成美堂出版)、『ブッダが教えた本当のやさしさ』(宝島社)など多数ある。日本テーラワーダ仏教協会 http://www.j-theravada.net/
[再話]
藤本 竜子 (ふじもと・りゅうこ)1960 年、京都府生まれ。関西学院大学文学部教育学科卒業。大谷大学大学院仏教学専攻修士課程修了。山口県下松市・浄土真宗誓教寺坊守。
[絵]
笛岡 法子 (ふえおか・のりこ)1989 年、京都府生まれ。京都府与謝郡・曹洞宗宝泉寺にて育つ。現在、京都精華大学デザイン学部ビジュアルデザイン学科イラストレーションコース在学中。