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平成 30 年 11 月 広島県商工会議所連合会 平成 30 年7月豪雨災害からの復旧・復興と 地域中小・小規模企業の活力強化に関する決議 広島商工会議所

平成 中小・小規模企業と地域の成長実現に 30 年7月豪雨災害からの復旧・復興と 地域中小・小規模 … · ④ものづくりにおけるIoT活用の推進

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平成 30年 11月

広島県商工会議所連合会

中小・小規模企業と地域の成長実現に

関する決議

平成 30年7月豪雨災害からの復旧・復興と

地域中小・小規模企業の活力強化に関する決議

広 島 商 工 会 議 所

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要 望

わが国経済は、個人消費の動きが未だ力強さを欠くものの、世界経済の改善を受けて生

産やインバウンドを含めた観光需要が底堅く推移するなど、総じて緩やかな回復基調が続

いている。

しかしながら、当地域においては、平成 30年7月豪雨により、多くの人的被害と家屋・

工場・店舗等の建築物あるいは社会インフラなどの物的損害が発生し、地域社会・経済に

多大な被害をもたらしている。

広島県商工会議所連合会では、広島県が策定した「平成 30年7月豪雨災害からの復旧・

復興プラン」が円滑に進捗するよう、共に力を尽くして参りたい。

また、併せて、地域経済の回復に向け、引き続き中小・小規模企業の活力強化と地域活

性化を推進する政策の実現を求め、以下の事項について要望する。

Ⅰ.平成 30年7月豪雨災害からの復旧・復興に向けた支援

1.広島県が 2018 年9月に策定した「平成 30 年7月豪雨災害からの復旧・復興プラン」

が円滑に進捗するよう、国をはじめ関係諸機関において最大限の支援をお願いしたい。

2.補助金制度について

①中小・小規模事業者は災害からの復旧に手一杯で複雑な手続きに注力できないので、

補助金申請の手続き・書類をできる限り簡素化していただきたい。

②中小企業グループ補助金において、土砂の撤去費用や崩壊した法面の修復費用を補助

対象に加えていただきたい。

③水に浸かった原材料、製品・商品の損害に対するパッケージとしての支援制度を創設

していただきたい。

④工業用水の断水による損害に対するパッケージとしての支援制度を創設していただき

たい。

⑤経営資源に乏しい中小・小規模事業者がBCPを策定するための補助金制度を創設し

ていただきたい。

3.社会基盤の復旧・復興および今後の安心・安全対策について

①JR芸備線を早期に復旧していただきたい。

②沼田川および支流域において、河川の氾濫に備え、市街地のポンプ場の数を増やすと

ともに、ポンプの機能強化(水排出容量の拡大・電源喪失時も踏まえた稼働時間の増

大)を図っていただきたい。また、現在行われている沼田川の雑木の伐採、川底の土

砂の撤去を早期に完遂していただきたい。

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③山陽自動車道が一時通行止めとなったことを踏まえ、災害時の代替ルートの確保とい

う観点から、広島高速5号線、国道2号東広島・安芸バイパス、道照交差点立体化、

東広島・呉自動車道阿賀IC立体化、広島熊野道路と黒瀬IC間を結ぶ県道矢野安浦

線の整備を早急にお願いしたい。

4.観光について

①風評被害を払拭するため、観光情報の発信について支援協力していただきたい。

②外国人観光客が災害に遭遇した場合の安全対策等について検討をお願いしたい。

Ⅱ.中小・小規模企業の活力強化に向けた支援

1.小規模事業者のチャレンジを後押しする支援の拡充・強化

地域の小規模事業者は売上減少・コスト高、IT化等による構造変化、人口減少、人手

不足、経営層の高齢化、後継者不足等の様々な課題に直面している。これらの課題克服に

向けた生産性向上の取り組みや新製品・新サービスの開発、販路開拓等へのチャレンジを

後押しする、以下の支援が必要である。

(1)小規模事業者に対する支援体制の抜本的強化

◎①国の新たな政策への対応などにより、商工会議所の経営指導員等(補助対象職員)の

役割や業務量が増加するとともに、支援の質も高度化している。また近年では、被災

地への経営指導員等の応援派遣により事業の早期再開を支援するなどセーフティ機能

も果たしている。経営改善普及事業を中核とする経営支援の質的・量的向上、地域に

おける連携支援のコーディネート力の発揮に向けた、商工会議所経営支援体制の抜本

的強化が必要

(イ)都道府県の小規模企業関係予算(経営改善普及事業費)の確保・拡充を図るため、

小規模基本法および改正小規模支援法への規定化の検討

(ロ)経営改善普及事業費の拡充のために増額した地方交付税収入は、経営改善普及事業

の拡充に充てることを担保する仕組みの構築

(ハ)経営指導員等の役割・業務量増加に対応した体制強化に向けた、地方交付税(商工

行政費)の拡充

②都道府県・市町の小規模企業振興対策の充実強化に向けた国による協調支援、都道府

県・市町と商工会議所との連携推進の制度化

③「小規模事業者支援推進事業(伴走型補助金)」の継続・拡充

④経営指導員をOJT指導する「スーパーバイザー事業」の継続・拡充

(2)販路開拓・設備投資等への後押しおよび「小規模企業振興基本計画」の見直し

◎①新事業展開等を促す販路開拓・設備投資等への後押し

(イ)小規模事業者の販路開拓等を強力に支援する「小規模事業者持続化補助金」の継続・

拡充

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(ロ)「地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト」の継続実施

(ハ)「ものづくり等補助金(ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金)」の

継続実施

②小規模事業者を取り巻く環境変化に対応した「小規模企業振興基本計画」の見直し

(イ)人手不足・働き方改革等に対応するための「生産性向上」や「IT等を活用した経

営の『省力化・効率化』」の重点施策への追加等

(3)小規模事業者の金融を支えるマル経融資の拡充等

◎①「マル経融資(小規模事業者経営改善資金)」は、経営指導員が6ヵ月間の経営指導を

行った後に推薦する顧客密着型の金融であり、無担保・無保証でありながら過去5年

間の事故率は減少するなど、事業性評価融資の先駆けとも言うべき優良施策である。

引き続き、小規模事業者のニーズを十分に踏まえて対応されたい

(イ)マル経融資の予算枠の規模拡大(適用利率の上昇抑制)

(ロ)現在講じられている特例措置の延長・恒久化

・融資金額:1,000 万円 → 2,000 万円

・融資期間:運転資金5年 → 7年、設備資金7年 → 10年

・据置期間:運転資金6ヵ月 → 1年、設備資金6ヵ月 → 2年

◎②サービス業のうち「情報サービス業等」については、従業員基準(5人以下)を緩和

し「従業員5人超 20 人以下」の事業者へ融資対象を拡大

③「小規模事業者経営発達支援資金」の一層の活用促進および恒久化

2.IT・IoT等の導入・活用と「FinTech社会」への対応促進

(1)生産性向上や人手不足対策等に資するIT・IoT等の導入・活用促進

①中小企業のIT・IoT・AI等活用支援の継続

②低価格で導入しやすい「クラウドサービス等ITツール」の中小企業・小規模事業者

への普及・浸透

◎③「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」の継続、拡充に向けた

見直し(補助率の引き上げ等)

④ものづくりにおけるIoT活用の推進

(イ)企業規模に見合う身の丈IoT、ロボット・RPA、AI等の導入を支援するイン

ストラクターの養成と、中小企業へのインストラクター派遣を行う「スマートもの

づくり応援隊」の継続

(2)中小企業の「FinTech社会」への対応促進

①生産性向上や新たな若者需要・インバウンド需要の取込みが期待される「キャッシュ

レス決済」について、中小企業・小規模事業者への普及に向け、以下をはじめとする

課題解決が必要

(イ)決済利用料の負担低減

(ロ)決済端末代の負担軽減

(ハ)売掛金入金までのタイムラグの短期化

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(ニ)キャッシュレス決済の利便性の啓発、ITリテラシーの向上、セキュリティ不安の

解消

②金融EDIの推進にあたっては、中小企業・小規模事業者への周知徹底が不可欠であ

り、行政・金融機関・関係機関の連携による十分な周知・対応や活用事例の共有など

取組みの推進

3.中小企業の取引適正化、官公需受注機会の確保

◎①発注企業の働き方改革によって下請等中小企業に対して皺寄せが生じないよう、取引

適正化対策の強化

(イ)下請けGメンによるヒアリング等を通じた実態把握の継続

(ロ)公正取引委員会と中小企業庁との連携による下請法等に基づく取締まり強化

(ハ)消費税率引上げや働き方改革関連法等により増加が予想される中小企業の仕入れ

コストや人件費等について、販売価格への適正な転嫁をフォローアップ

②「未来志向型の取引慣行に向けて(世耕プラン)」を踏まえ、以下を引き続き実施され

たい

(イ)取引条件改善の実態調査とフォローアップの継続実施

(ロ)中小企業同士においても現金支払いで取引が行われるよう継続フォロー

(ハ)親事業者と下請等事業者の連携・協力にかかるベストプラクティスの更なる充実

③中小企業・小規模事業者に対する官公需受注機会の確保

(イ)官公需における国等の行政機関が率先した新商品・新サービスの調達や、商品認定

などを行う「トライアル発注制度」の推進

(ロ)地方自治体において中小企業・小規模事業者からの優先的な調達や適正な価格での

発注促進

4.人手不足・働き方改革関連法への対応・支援策の拡充

商工会議所が本年4月に実施した調査では、65%の企業が「人手不足」を訴えており、

人口減少による人手不足問題はかつてないほどの危機に直面している。人手不足解消のた

めには、女性・高齢者・外国人材など多様な人材の活躍推進と、働き方改革による生産性

向上を図り、魅力ある職場環境の整備を一層推進していく必要がある。ついては、以下の

とおり、人手不足の解消に向けた各種支援策を拡充するとともに、中小企業・小規模事業

者が働き方改革関連法に円滑に対応できるよう強力に支援されたい。

(1)人手不足の解消に向けた支援策の拡充

①女性・高齢者・外国人材などの多様な人材の確保および定着、人材の育成や能力開発

に向けた支援策の充実

②生産性向上や省力化・効率化を図るため、IT投資など設備投資等に対する助成制度

の拡充

◎③中小企業に限りインターンシップで得た学生情報を、学生が自ら希望する場合におい

ては採用活動に活用できるようにすること

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(2)働き方改革関連法への対応・支援策の拡充

◎①働き方改革関連法や関連支援策等の円滑な施行に向けた丁寧な周知と情報提供の強化

②専門家の無料派遣や窓口相談体制の更なる拡充等により、十分な相談支援体制を構築

し、個々の企業の実情に応じたきめ細やかな支援の実施

◎③同一労働同一賃金の定義を明確にしたガイドラインや業種ごとの手引書の速やかな作

成・周知

◎④時間外労働の上限規定に抵触した中小企業に対する助言・指導にあたっての配慮規定

(中小企業の労働時間の動向、人材確保の状況、取引の実態等を踏まえた助言・指導

等)の実効性確保

5.「経営者保証ガイドライン」に沿った融資の推進

(1)民間金融機関における個人保証や担保に依存しない融資の一層の推進

①新規融資に占める経営者保証に依存しない融資割合について、民間金融機関の活用実

績(16.3%、2018年6月金融庁公表・件数ベース)が、政府系金融機関の活用実績(34%、

2018年6月中小企業庁公表・同)を上回るよう、民間金融機関において「経営者保証

に関するガイドライン」に沿った融資の一層の推進

②金融検査マニュアル廃止の方向を踏まえ、担保や個人保証に依存せず、「事業性評価」

を活用した融資制度の拡大など中小企業・小規模事業者に寄り添った金融支援の推進

(2)信用保証協会における個人保証や担保に依存しない運用の推進・徹底

①信用保証協会が保証を行う場合には、保証の条件として個人保証や担保を求めること

なく、信用保証協会が保証を行う運用の推進

②『経営者保証に関する対応』(2018年4月中小企業庁公表)に盛り込まれた、「事業

承継時、旧・新経営者の両方から経営者保証をとることは基本的に行わないものとす

る運用」の徹底

(3)政府系金融機関による中小企業の経営課題に寄り添った付加価値の高い融資の推進

①商工組合中央金庫による、民間金融機関だけではリスクが高く対応しにくい中小企業・

小規模事業者の経営ニーズへの対応と、民間金融機関との信頼関係に基づく連携・協

業の一層の推進

(イ)事業性の判断が難しくリスクの高い事業や創業等への支援

(ロ)不動産などの担保や個人保証に依存せず、「事業性評価」を活用した融資制度の拡

大など中小企業・小規模事業者に寄り添った金融支援の推進

(ハ)リスクの高い海外進出および新事業進出支援、事業再編を見据えたM&A

②日本政策金融公庫による政策金融の的確な実施

(イ)民間金融機関を牽引する、「開業率 10%台」実現に向けた創業支援

(ロ)マル経融資等を通じた民間金融機関だけでは対応困難な小規模事業者支援

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6.イノベーションを創出する知的財産(知財)活用による生産性向上

◎①改正特許法に盛り込まれた「中小企業の特許料金の一律半減制度」の活用を促すため、

全国津々浦々において本制度はもとより、特許取得の経営上のメリットを分かりやす

く周知啓発する説明会を継続的に開催されたい

②取引先から、自社の技術やノウハウなど知財を不当に吸い上げる行為について、独占

禁止法(優越的地位の濫用)のガイドラインを拡充して断固たる措置を講じられたい

(イ)公正取引委員会の「下請法に関する調査」等での実態調査の実施

(ロ)不当な行為を行う企業に対する企業名の公表等

③商標権は中小企業にとって取り組みやすく、近年その権利取得件数は伸びている。一

方で商標権取得までの審査期間が延びており、ブランドの育成・保護および早期権利

化のため、商標出願にかかる審査体制を強化されたい

7.エネルギー・環境政策の推進

◎①安全性の確保を前提とした原子力発電所の早期運転再開

②賦課金負担が急増しているFIT制度の根本的な見直しを含めたあり方の検討

③経費削減や生産性向上など中小企業・小規模事業者が抱える経営課題の解決と省エネ

ルギー推進の同時達成への支援

④照明や空調など整備の省エネ化により温室効果ガス排出削減効果が見込める業務用施

設等におけるZEB・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル/ハウス)化の取り

組みに対する支援強化

8.自由貿易体制の堅持、広域経済連携協定の推進、海外展開支援の強化

①自由貿易体制の堅持と広域経済連携協定の推進

(イ)「日EU経済連携協定(EPA)」の早期発効

(ロ)「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」や「日中韓自由貿易協定(FTA)」

など質の高い広域経済連携協定の早期締結

(ハ)大筋合意に至った「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定」については、早期

発効に向けた各国との連携

②中小企業の海外展開を後押しすべく支援体制を強化するとともに、インフラや安全対

策など国際ビジネスを取り巻く環境整備の促進

③日EU経済連携協定(EPA)や環太平洋パートナーシップ(TPP)協定における

「自己証明制度」等に中小企業が十分に対応できるような総合的な相談窓口の設置

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Ⅲ.地方創生を実現するための地域潜在力の強化

1.中堅・中小企業の魅力発信事業の推進と経営力強化

(1)地方での定住を促す中堅・中小企業の魅力発信事業の推進

①優れた技術・サービスや知的財産、国際性等を有する地域の中堅・中小企業を行政機

関・政府系金融機関等が認定・顕彰することで、魅力を内外へ積極的に情報発信され

たい。また、経営面でのメリットを享受できる環境を整備されたい

◎②地方移住を促進するための政策的なてこ入れ(UIJターン対策の抜本的拡充)

(イ)若者の地方企業での就業体験(地方創生インターンシップ)推進のための地域企業

情報の発信強化やインターンシップ実施にかかる費用負担等の軽減

(ロ)中小企業・小規模事業者の採用活動に伴う費用負担等の軽減

(2)地域経済の中核となる中堅・中小企業の経営力強化

①地域未来投資促進法に基づいて「地域経済牽引事業計画」を策定した中堅・中小企業

への支援措置の更なる充実

② 中堅企業に対する研究開発等の支援

(イ)中小企業等経営強化法の認定を受けた中堅企業に対する重点支援

2.「開業率 10%台」実現に向けた創業の促進と円滑な事業承継

(1)「開業率 10%台」実現に向けた創業支援の拡充

◎①「創業スクール事業」の再予算化、および「創業補助金」「創業支援事業者補助金」

の維持・拡充。創業補助金については、公募期間の延長、公募回数の増加(もしくは

随時募集化)等、制度の柔軟化

◎②中小企業支援機関等の創業支援を受けた創業者に対し、創業後5年間の社会保険料の

事業主負担分や法人税の減免措置の創設

③「創業支援事業者補助金」における創業機運醸成事業の拡充(創業を果たした事業者

に対する顕彰や活躍紹介などのフォローアップを通じた地域全体での創業機運の醸成

等)

④大学等での「起業」に関するカリキュラムの創設・実施支援(挑戦するマインド等の

育成)やモデルとなる起業家との接点を増やす起業家コミュニティの推進

(2)「大事業承継時代」への強力な対応

◎①抜本拡充された事業承継税制の普及・啓発、制度利用の促進

②「事業承継ネットワーク」の全国展開と、今後 10年間程度の事業承継の集中実施期

間中の継続

◎③事業承継に精通する税務・法務の専門家の発掘・育成・見える化の推進

◎④「事業引継ぎ支援センター」「中小企業再生支援協議会」の機能強化(予算の拡充、

金融機関・支援機関との連携強化)

◎⑤「事業承継補助金」の継続・拡充(後継者の右腕となる幹部育成のための教育費用を

対象化)

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⑥「従業員等承継」に焦点を当てたガイドラインの拡充

3.インバウンド観光振興を活かして“Made in Japan”の輸出振興

(1)観光立国のさらなる前進

①インバウンド観光客が円滑に移動するための、各地域における交通事業者と観光地が

連携した地域交通システムの構築に対する支援

②産業観光を含めたMICE誘致等に対する支援

③モーニングタイム・ナイトタイムといった、多様な時間帯に楽しめる観光資源の掘り

起こしとコンテンツの充実に対する支援

④観光関連産業のIT・IoT活用による共同調達・予約システム等の業務効率化に対

する支援

⑤Wi-Fi、トイレの洋式化、多言語対応、キャッシュレス対応など受入れ環境の整

備に対する支援の拡充

⑥企業のサービス品質を見える化する「おもてなし規格認証制度」の普及・啓発

⑦インバウンドをはじめとする旅行者の危機管理対応の確立に向けた指導および支援

⑧民泊制度の適正な運用に向けた取り組みの強化

⑨インバウンド観光客が日本で「Made in Japan」製品に触れ、帰国後、継続的に購入

してもらうための仕組みづくりの推進

⑩JAPANブランド育成支援事業の拡充と日本食品海外プロモーションセンター活動

の充実

(2)スポーツ振興等による地方への交流人口の増加

①2019年ラグビーワールドカップ、東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会

等の国際イベントを活用した誘客の取組促進

②スポーツ大会等の開催やプロスポーツ等を通じた地域の交流人口拡大とまちづくり促

進、スポーツ合宿の誘致や受入施設・整備への充実支援

4.地域経済の基盤であるまちづくり・社会資本整備の推進

(1)地方創生の基盤となる「まち」の再生・活性化

①空き地・空き店舗等の利活用促進に向けた助成と制度の見直し

(イ)老朽店舗の解体・修復や更地化を希望する所有者への解体費用等の助成制度の拡充

(ロ)商店街活性化促進事業の円滑な推進

・まちづくりの関連施策のガイドラインの周知など、空き店舗の所有者等に利活用

を促すための計画策定、指導・助言・勧告等の手続きに関する地方公共団体等へ

の支援

・住居実態が無い建築物を固定資産税の住宅用地特例の対象外とすることの適切な

実施に向けた地方公共団体等への指導(通知内容の運用徹底)

(ハ)民間専門人材の活用等による地籍調査の推進

(ニ)登記制度等の活用促進による土地・建物の所有者情報の明確化

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・住民基本台帳法施行令に基づく被相続人の住所証明書類(住民票、戸籍の附票

等)保存期間を閉鎖戸籍の保存期間と同等の 150年間へ延長

・相続財産管理人制度や不在者財産管理人制度を活用する際の予納金への公的負担

制度の創設

(ホ)空き地・空き店舗を活用した交流施設の整備やリノベーション事業等を支援する

「民間まちづくり活動促進事業」の拡充、古民家等の小規模な建築物を商業施設な

ど他用途に円滑に転用等するための建築規制の合理化

②まちづくり会社等の事業推進主体への支援の拡充

(イ)不動産管理や建築、法務、金融、商業経営、エリアマネジメントなど多様な分野の

専門的な知見を有するOB人材等を組織化した人材データベースと派遣制度の構

(ロ)事業推進組織であるまちづくり会社の活動基盤の強化(民間まちづくり活動促進・

普及啓発事業や地域・まちなか商業活性化支援事業等の拡充)

(2)「高度化事業(高度化資金)」の更なる拡充

高度経済成長期に国の高度化事業として進出が相次いだ「工業団地」「商業団地」等

の集団化団地は、現在も県内の産業基盤を支え、地域経済の重要な役割を担っている。

近年、施設の老朽化や耐震・省エネ等の環境変化への対応の遅れ等が課題となっている

ため、各都道府県の事情等により迅速な対応が困難な場合には国による融資を可能とす

る等、地域ニーズに応じたリニューアル等について検討し、当事業が円滑かつ確実に運

用されるよう制度の拡充を講じられたい。

(3)ストック効果を重視した社会資本整備の加速、地域公共交通の維持・再生

◎①高規格幹線道路のミッシングリンク解消や客船用港湾の整備促進など、ストック効果

が大きい社会資本整備の促進

②地域鉄道や路線バス、コミュニティバス等の利便性向上に資する「地域公共交通活性

化・再生法」等に基づく支援の着実な実施

◎③大規模災害時に、安全・安心の確保を担う代替性を備えた道路網や鉄道網等の早期か

つ着実な整備

④地域経済の防災・復興支援拠点機能を担う商工会議所会館など、地域中核施設の整備

に対する支援

⑤西広島バイパス都心部延伸事業の早期再開・早期全線供用について

一般国道2号西広島バイパスは、広島市と廿日市市を結び、沿線地域の開発と経済

の発展に大きく寄与する重要な広域幹線道路である。特に、西広島バイパス都心部延

伸事業は、廿日市市・大竹市・岩国市などの西部方面から広島市の都心部へ向かう交通

の渋滞緩和や沿道環境の改善、さらには広島市の中枢性向上に資する重要な事業であ

る。

この事業は、平成 15年に全体 4.2kmのうち 1.9kmが供用開始されているが、残り

の 2.3kmについては未整備となっている。このため、西広島バイパスの庚午出口等で

は、現在も県内屈指の渋滞が続いており、高架道路の延伸による渋滞緩和、所要時間

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の短縮が、物流の効率化、広域観光の促進、都心の活性化、公共交通機関の利便性向

上などにもたらす効果は多大なものがあると期待されている。

平成 29年には、広島広域都市圏の産業、経済、文化及び観光の一層の活性化を図

るために必要不可欠である本事業の早期再開の実現に向け、地元経済団体・企業等に

より「西広島バイパス都心部延伸事業促進協議会」を設立し、地元自治体と連携を図

りながら、延伸事業の早期再開、早期全線供用に向け、官民一体となった取り組みが

進められている。

さらに、平成 30年6月、中国地方整備局長などに対して、沿道の町内会や社会福

祉協議会など 57の地域団体から、高架道路の早期全線開通を求める要望書が提出さ

れるとともに、広島市議会定例会において、本事業の早期全線供用を求める決議がな

されるなど、事業の早期再開への期待の声は、地域全体の大きなうねりとして一層高

まっている。

西広島バイパス都心部延伸事業の早期再開、早期全線供用について、格別のご配慮

を賜りたい。

◎⑥広島空港へのアクセスの向上について

山陽自動車道は、広島市など、県内主要都市から広島空港までの主要ルートの一つ

であり、空港利用者の多くが利用している。

しかしながら、広島空港までのアクセス時間は、山陽自動車道における事故や渋

滞、気象などに大きく影響を受けており、同ルートの利用に不安を抱く者は少なくな

い。

本ルートの円滑な交通は、多くの空港利用者の利便を増進するとともに、空港利用

者数の増大へとつながるものと考える。

広島市など、県内主要都市から広島空港までのアクセス性向上に資する、山陽自動

車道の円滑な交通について、必要な措置を講じられたい。

特に、再開発が進む広島駅周辺地区と広島空港を自動車専用道路で直結すること

で、高速性・定時性の確保につながる広島高速5号線をはじめ、広島空港へのアクセ

ス向上に資する国道2号東広島・安芸バイパス、道照交差点立体化、東広島・呉自動車

道阿賀IC立体化についての整備促進、並びに広島熊野道路と黒瀬IC間を結ぶ県道

矢野安浦線の整備促進(広島空港リムジンバスが通過できる環境整備)、また事故・渋

滞発生時における道路利用者への速やかな情報提供(道路情報掲示板の拡充等)につ

いて特段のご配慮を賜りたい。(再掲)

5.地域資源等を活用した事業の創出・育成への支援

①地域資源を活用した新商品・新サービスの開発から販路開拓・地域ブランド化までの

一貫した支援の継続

(イ)地域力活用新事業∞全国展開プロジェクト(再掲)

(ロ)ふるさと名物応援事業(JAPANブランド育成支援事業、ふるさと名物支援事業

等)

(ハ)広域型販路開拓環境整備事業

②地域ブランドの構築・確立・浸透に向けた支援の継続

(イ)「地域団体商標制度」の活用促進(特許料減免と同様の制度導入、同減免制度への

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商工会議所の対象化)

(ロ)「地理的表示保護制度」の拡充(農産品の範囲拡大、伝統的工芸品および地域の工

業製品への対象拡大)

Ⅳ.中小企業の新たな挑戦を後押しし、成長を促す税制の実現

1.「生産性革命」実現に向けた税制措置の拡充

◎(1)中小企業向け設備投資減税の延長・拡充

国は、2017年~2020年までの3年間を「生産性革命・集中投資期間」として、大胆な

税制、予算、規制改革等の施策を総動員するとしており、中小企業の設備投資減税(中

小企業経営強化税制、中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税

制)は、引き続き措置すべきである。

とりわけ、中小企業経営強化税制の即時償却措置は継続が必要であり、併せて、新た

な需要に対応するための工場増設、働き方改革に資する事務所や福利厚生施設の整備に

必要な建物等、車両運搬具を対象設備に追加するなど、設備投資を一層加速させるため

の必要な拡充を行うべきである。また、対象設備に中古設備を加えるべきである。

また、商業・サービス業・農林水産業活性化税制については、中小企業者等の設備投

資を引き続き促進すべく、必要な見直しを行ったうえで延長すべきである。

なお、中小企業経営強化税制の適用を受けるためには、事業年度内に国から「経営力

向上計画」の認定を受ける必要があるが、中小企業の場合、決算の結果を踏まえ設備投

資を判断するケースが多く、計画申請等が間に合わない可能性があるため、計画の簡素

化や計画記載例(書き方のポイント)の充実等、事業者の利便性を向上すべきである。

(2)中小企業の経営の実態を踏まえた減価償却資産における定率法の適用対象の拡大等

中小企業の場合、多くは金融機関からの借り入れによって資金調達を行っており、建

物等の定額法による償却において設備投資後初期の償却限度額の縮小は、手元キャッシ

ュの減少による資金繰りの悪化に直結し、設備投資の抑制にもつながりかねない。中小

企業の資金繰り等経営の実態を踏まえ、建物や建物附属設備等について定率法を適用可

能とする等、償却方法の見直しが必要である。

また、耐用年数が企業の設備投資サイクルに適合していないとの声も多く、減価償却

資産の耐用年数の見直しが必要である。

◎(3)中小法人の軽減税率は税率 15%を維持したうえで延長すべき

中小法人の 800万円以下の所得に係る軽減税率は、本則 19%から 15%へ引下げられ

ている中で、本税制措置の平成 28年度の適用件数は約 84万件に上るなど、中小企業の

財政基盤を支えている税制である。

仮に、本税制措置が延長されない場合、中小企業からは、資金繰りの悪化により設備

投資や従業員の賃上げに影響を及ぼしかねないとの声が多く寄せられている。本税制措

置は、税率 15%を維持したうえで適用期限を延長すべきである。

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2.中小・中堅企業のイノベーション・新事業展開を後押しする税制措置の拡充

(1)中小・中堅企業の新事業展開を後押しする研究開発税制の延長・拡充

わが国が国際競争を勝ち抜くためには研究開発投資への後押しが極めて重要であり、

研究開発税制は制度全体として恒久化し、予見可能性のある安定した制度とすべきであ

る。また、中小企業では、一人の人員が研究開発とともに他の業務を兼務することが多

いが、研究開発税制の対象となる人件費は、専門的知識を持って試験開発の業務に「専

ら」従事することが求められており、使い勝手が悪く、税制が活用されない原因になっ

ている。中小企業の場合は、試験研究費の対象となる人件費を、プロジェクト期間にお

ける業務状況の簡単な記録から概算比率で計上可能とするなど、大胆に運用面を改善す

べきである。

◎(2)創業後5年間の法人税・社会保険料の減免措置

創業後5年程度は事業活動が不安定で経営基盤が安定しない企業が多い。中小企業の

スタートアップ時の経営基盤を強化し、企業の拡大・発展を強力に後押しするため、中

小企業支援機関等の創業支援を受けた創業者に対して、創業後5年間の法人税免税、社

会保険料の減免措置や創業後5年以内に生じた欠損金の繰越控除期間の無期限化を講じ

るべきである。

(3)法人版エンジェル税制(ベンチャー投資促進税制)の延長・拡充

現在、中小・中堅企業が新たな事業分野に進出する際、M&Aを活用するケースが増

加しており、平成 29年度税制改正において要件が緩和されたベンチャー投資促進税制

は、地方創生に資することから延長すべきである。

また、現行のベンチャー投資促進税制は、ファンドを通じた間接的な投資に限定され

ているが、中小・中堅企業がベンチャー企業に直接投資をすることで、ベンチャー企業

の持つ新たな技術・ノウハウが中小・中堅企業に波及し、従来事業の活性化・新事業展

開に寄与することが期待されることから、ベンチャー企業へ直接投資した場合にも税制

優遇措置を講じるべきである。

3.消費税率引き上げに伴う課題

◎(1)消費税率の確実な引上げに向け、国民の理解を得るための最大限の広報が必要

商工会議所は予てから、持続可能な社会保障制度の確立や少子化対策の充実・強化の

ため、消費税率 10%への引上げが必要であると主張してきた。

2019年 10月の税率引上げが確実に実施できるよう、社会保障財源としての消費税率

引上げに対する国民の理解を得るため、最大限の広報を行うべきである。もとより、社

会保障給付の重点化・効率化に向けた取り組みは、一層加速させるべきである。

◎(2)「消費税還元セールの解禁」に反対

商工会議所が消費税率 10%までの引上げを容認しているのは、中小企業が円滑に価

格転嫁できる環境整備を大前提としている。引き続き、消費税転嫁対策特別措置法に基

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づき、実効性の高い転嫁対策を強力に推進すべきであり、「消費税還元セールの解禁」

等、転嫁対策の後退に繋がる同法の改正は不要である。

消費税率引上げに伴う需要変動の平準化対策の検討に際しては、中小企業の円滑な価

格転嫁対策との両立が大前提である。

◎(3)多様な価格表示方法を認めるべき

価格の総額表示は、消費者に対して値上げした印象を強く与え、消費税の転嫁が困難

になるケースがあることから、時限的に外税表示の選択を可能とする措置の恒久化を強

く求める。

加えて、軽減税率の導入によって価格が「一物二価」となる商品を扱う事業者は、消

費者に対する価格のわかりやすさ、売上への影響、同業他社の動向等を勘案しながら、

軽減税率に対応した価格表示を検討することになる。国が軽減税率実施に伴う価格表示

の考え方を示す際には、事業者が自社にあった価格表示を選択できるよう、総額表示に

偏ることなく、外税表示も含めた具体例を示すべきである。

◎(4)軽減税率制度の導入はゼロベースで見直すべき

商工会議所は、予てから軽減税率制度は社会保障財源を毀損すること、中小企業に過

度な事務負担を強いることから導入すべきではなく、単一税率を維持すべきであり、ま

た、低所得者対策は真に必要な者に対して、所得に応じたきめ細やかな給付措置で対応

すべきと主張してきた。軽減税率制度の導入は、事業者からは依然として反対する声が

根強く上がっており、ゼロベースで見直すべきである。

◎(5)適格請求書等保存方式(インボイス制度)は廃止を含め慎重に検討すべき

適格請求書等保存方式(インボイス制度)は、全ての事業者に対して、経理・納税方

法の変更を強いるもので広範な影響を及ぼすとともに、500万者を超える免税事業者が

取引から排除されるおそれがある。インボイス制度の導入にあたっては、軽減税率制度

の導入後十分な期間を設け、廃止を含め慎重に検討すべきである。

また、免税事業者に対しては、消費税率 10%へ引上げ後、インボイス制度の導入前

に、価格転嫁支援や課税選択を促す施策の展開が必要である。そのうえで、免税事業者

の課税選択の動向、価格転嫁、取引排除等の実態を徹底的に調査・検証すべきである。

4.事業承継の円滑化に向けた税制措置

(1)事業承継税制の利用促進に向けた事務手続き・提出書類の改善

事業承継税制の適用を受けるためには、申請段階のみならず、納税猶予の適用を受け

ている間も数多くの書類を継続的に提出する必要があり、税制の適用を躊躇する要因と

なっている。事業承継税制の利用促進に向け、提出書類の簡素化や書類提出の不備等に

対する宥恕規定の運用の明確化など改善を図るべきである。

◎(2)取引相場のない株式の評価方法の見直し

取引相場のない株式の評価方法は、純資産価額方式のような企業の清算を前提とした

評価方法に替えて、事業の継続を前提として、配当還元方式の適用拡大を図るべきであ

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る。なお、当面の改善点として、地価高騰による資産評価の上昇から株価が想定外に高

く評価されてしまうので、会社保有の土地について評価減を認めるべきである。

(3)分散株式の集中化のための税制措置

安定的な事業継続を確保する観点から、分散した株式の集中化を図る場合には、特例

的評価方式(配当還元方式)での買い取りを認めるとともに、発行会社が自社株式を買

い取る場合の譲渡株主(個人)のみなし配当課税および譲渡者から残存株主へのみなし

贈与課税の適用停止等を講じる必要がある。

(4)担保提供している個人の事業用資産の評価方法の見直し

中小企業においては、経営者が事業資金の借り入れのために個人資産を担保提供して

いる場合が多く存在するが、法人経営のために提供した個人資産は債権者の承諾なしに

は処分できず、資産価値としては大きな制約を受けている。

担保提供した個人資産は事業用資産に準ずるものとして扱い、担保付き個人資産の評

価額の一定割合を減額する特例の創設等、相続税の評価方法の見直しを検討すべきであ

る。

5.中小企業の経営基盤の強化に資する税制措置

(1)中小企業基本法を念頭においた税法の基準の拡大

税法上の中小法人の範囲は、法人税法において資本金1億円以下とされており、中小

企業基本法上の中小企業の中には、支援対象にならない企業が存在することから、税法

上の中小企業の基準について、資本金3億円以下まで拡大すべきである。

(2)中小企業向けの租税特別措置の中堅企業への適用拡大

地域経済を牽引する中堅企業(資本金3億円超 10億円以下)の成長を後押しするた

め、中小企業向けの租税特別措置を適用拡大すべきである。

◎(3)中小企業の経営基盤を阻害する税制措置への反対

①外形標準課税の中小企業への適用拡大には反対

②中小企業の欠損金繰越控除の制限には反対

③中小企業への留保金課税の適用拡大には反対、同族会社の留保金課税は廃止

④減価償却制度の定額法への統一は中小企業に多大な影響を及ぼすため反対。また、中

小企業の設備投資の実態を踏まえ、償却期間の見直しが必要

(4)企業の前向きな設備投資を阻害する償却資産に係る固定資産税の廃止

償却資産に係る固定資産税は、企業の前向きな設備投資を阻害するものであり、また、

国際的にも稀な税制であることから廃止すべきである。

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6.その他の税制

◎(1)自動車関係諸税の簡素化・負担軽減

欧米諸国と比べ複雑・過重な負担を課している自動車関係緒税については、平成 29年

度税制改正大綱において、「保有課税の総合的な見直し」が明記されており、簡素化・負

担軽減を実現すべきである。

とりわけ、国際的にも過重な自動車税の「税率引下げ」や、課税根拠を喪失している

自動車重量税の「当分の間税率」は早急に廃止すべきである。

また、期限切れとなるエコカー減税、グリーン化特例は延長すべきである。

(2)地方法人二税に過度に依存しない安定した地方財源の確保

地方自治体の税収は、景気による税収変動や偏在性の大きい地方法人二税が 16.9%を

占めているため、地方法人二税に過度に依存しない地方税体系の構築が必要である。ま

た、地方税源の偏在是正の検討にあたっては、都市と地方の財政状況等に留意し、実効

性のある措置を検討すべきである。

(3)所得控除制度の見直しに関する考え方

現行の所得控除制度(基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除)は、累進税率の下で

は高所得世帯ほど税負担が軽減されており、多くの子育て層が含まれる低所得世帯(年

収 300~400万円)には税負担の軽減効果が小さい。

このため、所得控除制度の見直しにあたっては、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別

控除を一本化し、所得額によらず税負担の軽減額が一定となる税額控除制度に移行すべ

きである。

◎(4)商工会議所等に対する寄附等の全額損金算入

大規模な地震や水害等による災害が発生した際、商工会議所は、被災事業者の事業再

開に向けた経営指導員の応援派遣、販路回復のための商談会の開催、義援金の募集等、

全国 515 商工会議所のネットワークを生かし、被災地の復旧・復興支援に取り組んでい

る。東日本大震災からの復旧・復興に向けた取り組みにおいても、商工会議所が実施す

る復旧・復興事業に係る寄附金は指定寄附金とされ、地域の実情に即して復旧・復興に

極めて効果的に活用された。今後も大規模な災害の発生が予測されている中で、災害が

生じた際の早期の地域経済社会の復旧・復興事業など商工会議所等の公益目的事業への

寄附金は、指定寄附金制度等の活用により全額損金算入できるようにすべきである。

以 上

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平成 30 年 11月 日

広 島 県 商 工 会 議 所 連 合 会

広 島 商 工 会 議 所 会 頭 深 山 英 樹

尾 道 商 工 会 議 所 会 頭 福 井 弘

呉 商 工 会 議 所 会 頭 神 津 善三朗

福 山 商 工 会 議 所 会 頭 林 克 士

三 原 商 工 会 議 所 会 頭 三 好 康 莊

府 中 商 工 会 議 所 会 頭 北 川 祐 治

三 次 商 工 会 議 所 会 頭 細 川 喜一郎

庄 原 商 工 会 議 所 会 頭 佐々木 満

大 竹 商 工 会 議 所 会 頭 望 戸 清 彦

竹 原 商 工 会 議 所 会 頭 山 本 靜 司

因 島 商 工 会 議 所 会 頭 村 上 祐 司

東広島商工会議所 会 頭 木 原 和 由

廿日市商工会議所 会 頭 細 川 匡

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【事務局】

広島県商工会議所連合会

〒730-8510 広島県広島市中区基町 5-44

(広島商工会議所 会員部内 担当:伊木、寺西)

電 話(082)222-6631

F A X(082)222-6664