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ブッダのめがね full

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大学卒業後、新卒で勤めだした彼女は静かな時間が好きでした。

大学の空き時間やバイトに向�かう道中、イヤホンで音楽を聴きながら本を読む。

雑踏で耳にする音は煩雑に思え、「ちゃんと一人になる時間」を作ることで自分と向�き合っていました。

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会社に勤めるようになってからそんな時間は取れなくなっていきました。通勤時間は会社で求められる資格の勉強にあてる。仕事を覚えていくことに必死で、帰りはうたた寝を繰り返しながら帰路につく。

休日には友達からの誘いもあって、一人になる時間がない。

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夜、一人になると仕事のことで頭が一杯になってしまうのでさっさと布団を被って目を閉じる。

耳を塞ぐ。

話の合わない上司。やったことの無い仕事。憩いになるはずの人間関係。

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""私は上手くやってきたはず""

""なのにこのモヤモヤしたものは何?""

""決して不幸なんかじゃない""

""ただ満たされていないだけ""

""それだけ・・・?""

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一日が、一週間が、一ヶ月が過ぎていく。

もう何ヶ月も好きな音楽も聴いていない。

本を読もうにも集中力が続かない。話が頭に入�らない。

そんな時たまたま目にした、

「ブッダのめがね」というイベント。

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最近暖かくなってきたし、たまには身体を動かそう。散歩程度、小旅行気分で電車に乗った。

流れていく景色。なにも考えず應典院へ向�かう。

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入�り口にあるロウソクに火を灯し、厳かであって柔らかな、独特の空間に足を踏み入�れました。

そこにはあるのは言葉。

壁中にたくさんの言葉が展示されていました。

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たった一言で終わるもの。

短く文になっているもの。

対になっているように感じられるもの。

そのたくさんの言葉に圧倒され、言葉をなくしてしまいました。

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周�りを見渡してみると、静かに言葉の前に佇んでいる。

""言葉と向�き合う""

そんな表現が頭に浮かんできた彼女も、自分の世界に入�り込み、言葉と向�き合いました。

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真面目な彼女は、ブッダの言葉を理解しようと思っていました。

しかし、その言葉を味わうだけで十分なのではないか。

この言葉の受け取り方は、自分が受け取りたいように受け取れば良いのではないか。

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そう思い始めた途端、

壁に飾�られた「言葉」が

彼女の「何か」に引っかかりました。

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今までの自分。

本当はしたかった仕事。

長く連絡を取っていない両親。

最近の生活。

これからの未来。

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それらたくさんの風景や思いが胸に溢れてきました。

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私は何に悩んでいたのだろう。忙しい。余裕がない。不安。

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なぜ一度立ち止まってみようと思わなかったのだろう。

言い訳はいくらでも出来た。

「厳しい時代になった」と言われて育った世代の彼女。

堅実に「転ばない人生」を目指して生きてきた。

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だけど、転ばないことでいつしか「何かを感じる」「思いを馳せる」という感覚が失われていっていたのかもしれない。

仕方ない。気にしない。

大人になるとはこういうことだ。

自分の中に閉じ込めてきた思いが顔をのぞかせることを、どこかで怖がっていたのかもしれない。

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偉人、と言って差し支えのないひと。

ブッダの言葉を見ているとブッダも、もしかしたら同じ悩みを抱えていたのではないだろうかと感じた。

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そう考えると

“知らなかった”“遠かった”

ブッダの存在が、身近に思えた。

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耳を塞ぐことだけが、手段じゃない

""私は、私でいいんだ""

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ふと我に帰ると、時間だけが3300分過ぎていた。

小さく息を吐き、振り返るとまだ日の出ている休日の午後。

いつもなら室内にいて、暗くなるまで外に出ない時間。

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軽くなった足取りで外に出てみると、景色が少し変わっていた。

電車に乗っている人、街を歩いている人、信号の前で立ち止まっている人

いつもと見え方が違う。

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ひとり一人違う顔を持ち、違う表情をしていること。

聞こえてくる話し声が煩わしくないこと。

そんな当たり前なことに気づいた。

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「帰り道に本屋に寄ろう。」「電車の中で好きな音楽を聴こう。」

もう一度、私らしい物語を紡いでいこう。