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ひと目惚れ花図鑑

吉谷桂子さんの

広告美術デザイナーを経て渡英。７年間のイギリス滞在経験を生かし、帰国後はガーデニングの仕事に取り組む。六本木の東京ミッドタウン「ボタニカ」、神奈川「箱根サン＝テグジュペリ　星の王子さまミュージアム」のガーデンなどを手掛ける。また、かねてからの夢であったファッションデザインでも、2014年３月にオリジナルブランドの「Shade」を立ち上げ、東京・原宿にショップをオープン。お気に入りの花や葉をモチーフにしたオリジナルのプリント生地やレース生地を使い、吉谷さん自らデザインした服や小物、また、庭作業しやすいオリジナルデザインの服などが人気を集めている。※ 「Shade」の詳細情報は下記ホームページをご参照ください。http://shadeyoshiya.com/

vol .15

プロヴァンスのラベンダー畑で感じた幸福感が忘れられない

吉よし

谷や

桂け い

子こ

撮影・北島明（sputnik）

プロヴァンスのラベンダー街道の畑にて。畑のオーナー夫人に「好きなだけ摘んでいいわよ」と夢のようなお言葉をいただき有頂天に。この中に佇んでいるだけで上機嫌＆ナチュラルハイになる。

　

香りよく、見た目よく、鎮静作用もあって三拍子が揃う、ハ

ーブの真骨頂ともいえるのがラベンダーです。さまざまな品種

がありますが、イングリッシュガーデンでは、最も精油分が強

いとされる、いわゆるイングリッシュラベンダーが人気です。

耐寒性があり、茎がしっかりピンと空に向かって立ち上がる姿

が美しいので、庭の景色に欠かせないアクセントにもなってく

れます。

　

ラベンダーは自然のトランキライザー（精神安定剤）として

知られ、イギリスではアロマセラピーの代表的なエッセンスと

して、精油が薬局などで簡単に手に入りますが、自分で育てて

いれば、日常的に花や葉を指で軽く揉みほぐし、手軽に香りを

嗅ぐこともできます。私のとっておきの楽しみ方は、花後剪定

で刈りとった枝を乾燥させたものに火を灯し、虫よけも兼ねて

お線香のように利用することです。

　

ほかにこんな植物はないと思うほど、私にとってラベンダー

は特別な存在です。そんなラベンダー好きが高じて、イギリス

のラベンダー畑だけでなく、フランスはプロヴァンスのラベン

ダー街道にも通いました。その最盛期は７月上旬。ラベンダー

街道のあるボークリューズ山脈の一帯には、ラベンダーのさわ

やかな香りが充満しています。そこにいる誰も彼もが穏やかに

見えるのは、きっとこの空気のせい。肌までふっくらさせるよ

うな自然のエステみたいな風に当たり、「身も心も最高に幸せ」

と叫びたい毎日でした。思い出すたび、また行きたくてうずう

ずしてしまうのですが、そう簡単にプロヴァンスには行けない

ので、自宅で水はけや風通しのコントロールの楽な植木鉢で育

てています。イングリッシュラベンダーは、高温多湿に弱く、

日本の気候では生育が難しいとされてきましたが、日本の気候

にあった品種が出回るようになり助かっています。

ラベンダーLavender別名：クンイソウ（薫衣草）

学　名： Lavandula

属　科：シソ科原産地：地中海沿岸花　期：４～10月（品種によって異なる）

草　丈： 40～ 100 ㎝

30 2016.03 ◀◀◀ここでご紹介のラベンダーの一部はp.57で販売。0 2016 03 ◀◀◀ここでご紹介のラベンダ の 部はp 57で販

栽培管理のコツpointpoint

日当たりと風通し、水はけのよい土が絶対条件。肥料は春先と秋に緩効性肥料を少量与えます。多肥を嫌うのでやりすぎに注意。収穫の絶好のタイミングは、４割ほど花が開花したころ。天気のいい乾燥した日の午前中に刈りとり、最低３日間は風通しのよい所で乾燥させます。その際に切り戻しもします。イングリッシュラベンダーの場合、全体の３分の２ほど刈りとり、内部の細い枝や枯れ葉も取り除きます。園芸用として出回るのはコモンラベンダーとも呼ばれるイングリッシュラベンダー、イングリッシュラベンダーとスパイクラベンダーの交雑種のラバンディン、フレンチラベンダーとも呼ばれるストエカスラベンダーなどです。最も香りがよいのは、イングリッシュラベンダーといわれていますが、これを最初にイギリスにもたらしたのは、紀元前のローマ人で、名前の由来であるラテン語の「ラバレ」という言葉は「洗う」という意味だそう。

イングリッシュラベンダーの代表種‘ヒドコート’は、まさにその名の由来であるコッツウォルズのヒドコートガーデンで撮影。1950年以前にこの庭で見出された古い品種は現在でも人気。

イギリスで最も美しいバラ園といわれるモティスフォントアビーガーデンにて。バラ園の境界にイングリッシュラベンダーが使われている。

イギリスのコッツウォルズ地方のラベンダー畑。さまざまな品種のラベンダーを一堂に見ることができる。ここもラベンダーの香りでいっぱい！

イングリッシュラベンダーの一種で、横張性でまとまった草姿に育つ。耐寒性、耐暑性が強いので育てやすい。英国ブルームス社の「ブルームスコレクション」アイテム。花期は５～７月、草丈は30～50㎝。

‘ブルークッション’エレガントな桃色が印象的なストエカス系の品種。コンパクトなマウンド状の株姿にまとまり、花つきがとてもよい。花期は春、草丈は50～70㎝。

‘ザ プリンセス’

ウサギの耳のような苞ほう

葉よう

がかわいいフレンチラベンダーの精油は虫よけ、消毒に使用される。枝がやわらかく雨が多いと株が乱れるのが難点。