16
????? 19 アメリカの対中国反ダンピング措置 鉄鋼業の事例 陳 友駿 はじめに アメリカの対中国貿易赤字は 1997 年の 497 億ドルから 2005 年の 2,016 億ドルへと 5 倍の 増加をみた。現在では中国はアメリカの最大の貿易赤字相手国となっており、2005 年のア メリカの対中国貿易赤字額はアメリカの対世界貿易赤字の 26% にも達しているUSDOC, 2007。このような 1990 年代半ば以降のアメリカの対中国輸入の急増に対して、アメリカ の輸入競合産業を中心に不満が高まっている。そこで関連業界は、対中国輸入の増加に対 して、アメリカ通商法のエスケープ条項201 条)による緊急輸入制限、また反ダンピング 法や相殺関税法といった不公正貿易法に訴えて、中国からの輸入を抑制しようとしてきた 1) もっとも多く用いられた反ダンピング法についてみれば、1980 年から 2004 年までの 25 年間にアメリカ商務省は世界からの輸入に対して、総計 1,046 件の反ダンピング調査を 行ったが、そのうち 455 件にはアメリカ国際貿易委員会USITC: U.S. International Trade Commissionの損害認定を経て、最終的に反ダンピング税の賦課命令が下されたUSGAO, 2006: 12) 。この反ダンピング提訴のうち、対中国案件数は 110 (反ダンピング提訴総件数の 11%であった。そしてアメリカが最終的に反ダンピング関税の賦課命令を発動した件数 455 件であり、そのうち中国に対する発動件数は 68 (反ダンピング関税賦課総件数の 15%に達した。これは単一国としては、アメリカ貿易相手国の中でいずれも最多件数の 記録であるUSGAO, 2006: 13。そして 2004 年末の時点で、対中国反ダンピング関税賦課 命令のうち廃止されたのは 13 件であり、残りの 55 件は依然として反ダンピング関税が賦 課されていたのである。 1980 年代に激化した日米貿易摩擦の発端の多くは、対日貿易赤字の増加とそれに対する ダンピング提訴(反ダンピング法)や緊急輸入制限201 条)といったアメリカの通商法を 利用した対応であったが、これと同じように、アメリカの対中国反ダンピング提訴は米中 貿易摩擦の火種となっている 3) 。さらに、中国自身も 1997 3 月に反ダンピング条例を創 設し、すでに 2006 年に 48 件の提訴を行っている 4) 。こうした中国側の動きは、米中貿易 摩擦をいっそう激化させている。 本稿は、米中貿易摩擦のきっかけのひとつとなったアメリカの対中国反ダンピング提訴 の実績を分析し、特に反ダンピング措置が多用されている鉄鋼産業について、アメリカの

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????? 19

アメリカの対中国反ダンピング措置鉄鋼業の事例

陳 友駿

はじめに

アメリカの対中国貿易赤字は 1997年の 497億ドルから 2005年の 2,016億ドルへと 5倍の

増加をみた。現在では中国はアメリカの最大の貿易赤字相手国となっており、2005年のア

メリカの対中国貿易赤字額はアメリカの対世界貿易赤字の 26%にも達している(USDOC,

2007)。このような 1990年代半ば以降のアメリカの対中国輸入の急増に対して、アメリカ

の輸入競合産業を中心に不満が高まっている。そこで関連業界は、対中国輸入の増加に対

して、アメリカ通商法のエスケープ条項(201条)による緊急輸入制限、また反ダンピング

法や相殺関税法といった不公正貿易法に訴えて、中国からの輸入を抑制しようとしてきた1)。

もっとも多く用いられた反ダンピング法についてみれば、1980年から 2004年までの 25

年間にアメリカ商務省は世界からの輸入に対して、総計 1,046件の反ダンピング調査を

行ったが、そのうち 455件にはアメリカ国際貿易委員会(USITC: U.S. International Trade

Commission)の損害認定を経て、最終的に反ダンピング税の賦課命令が下された(USGAO,

2006: 1)2)。この反ダンピング提訴のうち、対中国案件数は 110件(反ダンピング提訴総件数の

11%)であった。そしてアメリカが最終的に反ダンピング関税の賦課命令を発動した件数

は 455件であり、そのうち中国に対する発動件数は 68件(反ダンピング関税賦課総件数の

15%)に達した。これは単一国としては、アメリカ貿易相手国の中でいずれも最多件数の

記録である(USGAO, 2006: 13)。そして 2004年末の時点で、対中国反ダンピング関税賦課

命令のうち廃止されたのは 13件であり、残りの 55件は依然として反ダンピング関税が賦

課されていたのである。

1980年代に激化した日米貿易摩擦の発端の多くは、対日貿易赤字の増加とそれに対する

ダンピング提訴(反ダンピング法)や緊急輸入制限(201条)といったアメリカの通商法を

利用した対応であったが、これと同じように、アメリカの対中国反ダンピング提訴は米中

貿易摩擦の火種となっている3)。さらに、中国自身も 1997年 3月に反ダンピング条例を創

設し、すでに 2006年に 48件の提訴を行っている4)。こうした中国側の動きは、米中貿易

摩擦をいっそう激化させている。

本稿は、米中貿易摩擦のきっかけのひとつとなったアメリカの対中国反ダンピング提訴

の実績を分析し、特に反ダンピング措置が多用されている鉄鋼産業について、アメリカの

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20 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

反ダンピング措置の背景とその米中両国の鉄鋼業に対するインパクトを検討しようとする

ものである。本稿のこのテーマに係わるこれまでの研究を一瞥すれば、アメリカの世界全

体に対する反ダンピング措置を対象とした研究は多いものの5)、対中国鉄鋼反ダンピング

提訴の実績を取り上げた分析はほとんどない。ここで注意を要するのは、アメリカの通商

法では中国を「非市場経済国」として定義しており、アメリカの中国に対する反ダンピン

グ措置の手続きは特殊だということである。したがって本研究では、米中鉄鋼貿易摩擦の

分析を通じて米中貿易摩擦の特殊性を明らかにする。

本稿の構成は以下のとおりである。第 1節では、米中貿易の発展と米中貿易不均衡を省

察する。第 2節では、アメリカの対中国反ダンピング措置の「特別運用」の特徴と実績と

を分析する。アメリカは中国を「非市場経済国」とみなしており、反ダンピング措置につ

いても特別な運用をしている。そして第 3節では、アメリカの反ダンピング措置が最も多

く適用されてきた鉄鋼業について、その背景と効果、そして米中両国の鉄鋼業に対するイ

ンパクトを検討する。

Ⅰ 米中貿易の発展と米中貿易不均衡の拡大

中国は 1979年に改革開放政策に着手して以来、めざましい経済成長を遂げてきた。

2001年の世界貿易機関(WTO: World Trade Organization)加盟後、中国の貿易額は急速な伸び

を示している。2004年、中国の貿易額は 1兆 1,547億ドルに達したが、輸入額は 5,614億

ドルで前年比 36%の増加、他方輸出額は 5,934億ドルで前年比 35%の増加であり、貿易額

ではすでに日本を抜いて世界第 3位の貿易大国になっている(WTO, 2006: 1)。

米中貿易額もまた 1995年から急増しており、1995年から 2004年の期間、アメリカの対

中国輸出は年平均 13%の増加率であり、中国以外の他国向けの輸出増加率 2%に比べると、

格段の違いがあった(USGAO, 2005: 9)。しかし同時に、絶対額としてはアメリカの中国向

けの輸出額は、他国に対するそれと比べると依然として少ないことも事実である。2004年

では、アメリカのカナダへの輸出は 1,640億ドル、メキシコへの輸出は 930億ドルであっ

たのに対して、対中国輸出は 330億ドルであり、これはアメリカの財輸出総額の 4%に過

ぎなかった(USGAO, 2005: 7)。一方、中国側からみると 2005年にはアメリカは中国の第 4

位の輸出相手国となった。

米中両国の貿易は増加したにもかかわらず、中国の輸入においてアメリカからの輸入

シェアは著しく低下し、過去の 10年間で 1995年の 12%から 2004年には 9%まで下がった

(USGAO, 2005: 3)。この結果、米中間貿易に巨大な不均衡が生じた。この米中貿易不均衡は、

中国の対アメリカ輸出の急増とアメリカの対中国輸出の相対的に低い増加から生じている

が、後者の構造的な要因として、アメリカでは以下の諸点が指摘されている(USGAO,

2004: 4)。

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アメリカの対中国反ダンピング措置 21

第 1に、中国はアジア諸国からの原材料、部品などの 1次産品の輸入を増やし、それら

を国内で加工・組み立ててアメリカに輸出するが、アメリカから原材料・部品を輸入する

のではない。

第 2に、中国が石油などの資源産品の輸入を増加させているが、この資源関連輸入のう

ちアメリカからの輸入は少ない。

第 3に、マクロ経済の面では、中国人民元の人為的に過小評価されたレート、不透明な

競争構造などもアメリカの輸出に不利な影響を与えている。

このような要因のため、中国からアメリカへの輸出増加率に比べアメリカからの中国向

け輸出増加率は相対的に低かった。その結果、1990年代後半からアメリカの対中国貿易赤

字は急増した。そして、米中貿易不均衡の拡大は、アメリカ側の輸入競合産業を中心にし

て、中国からの輸入急増に対する不満を募らせ、中国からの輸入品に対して反ダンピング

法による提訴を行うようになった。次節では、アメリカの中国に対する反ダンピング提訴

の特別措置と提訴の実績について分析し、反ダンピング提訴頻発の意味を考察する。

Ⅱ アメリカの対中国反ダンピング法の特別運用とその実績

1. 「非市場経済国」中国への特別運用

アメリカの反ダンピング法によれば、ある外国の商品(merchandise)がアメリカにおいて

「公正価額」(fair value)よりも低い価格で販売され、それによってアメリカの産業が実質的

な損害を被る場合は、ダンピング販売が行われたとされ、反ダンピング税が賦課されるこ

とになる(1930年関税法 731条)。ダンピングの事実認定は商務省が 2回にわたって行う。商

務省は、「公正価額」よりも低い価格で販売されたかどうかを調査するが、同調査に当たっ

て商務省は、「米国価格」(USP: United States Price)と「外国市場価額」(FMV: Foreign Market

Value)との比較を行い、「米国価格」の方が低い場合には、その差額をダンピング・マージ

ンとし(商務省規則 353条 2項(f))、これに等しい反ダンピング税を賦課する(福島、1993: 3)。

このダンピング・マージンの賦課に至るまでには、もうひとつの機関が関与する6)。す

なわち、アメリカ国際貿易委員会が、提訴した産業なり企業の損害の事実認定を 2回にわ

たって行う。2回とも損害認定で肯定的な決定(クロ)であり、かつ商務省によるダンピ

ング認定が 2回とも肯定的な決定(クロ)であれば、つまり 4つのクロでもって、ダンピ

ングによる実質的な損害が存在すると判断されるのである。国際貿易委員会は、政府から

は独立した準司法機関であり、6人の委員がいるが、各委員は自分の立場および見解を持

ち、各委員の見解も異なる。なお国際貿易委員会の決定は、アメリカ裁判所もしくは北米

自由貿易協定(NAFTA: North American Free Trade Agreement)およびWTOに基づく紛争解決パ

ネルに控訴され、そこで審査されることもありうる(Mastel, 1998: 10)。

1980年代から 90年代にかけて、国際貿易委員会の損害認定において否認のケースが多

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22 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

くなったため、議会では国際貿易委員会に対する不満が高まった。そこで国際貿易委員会

を解体し、商務省において不公正価額と実質損害の事実認定の両方を行うようにすべきだ

との声が大きくなった。ヨーロッパでは、これら両認定はひとつの機関により行われてい

る、というのである(USGAO, 2005: 10)。

アメリカの反ダンピング措置の実施に当たっては、異なる 2つの機関が関与するが、そ

れを中国に対して行う場合には特別扱いとなっている。すなわち、1981年からアメリカは

中国を「非市場経済(NME: nonmarket economy)」の国として扱っているのである。「非市場

経済国」とは、生産における政府のコントロールや労使間交渉による賃金の決定水準、多

国籍企業や外資に対する規制、通貨交換性の制限、などを行っている国である(日本貿易

振興機構、2004: 3)。

こうして中国はアメリカによって、「非市場経済国」として分類されている。したがっ

て、ダンピング・マージンの算定に当たって、中国の「国内市場価格」は適用できないこ

とになる。そこでダンピング・マージンの算定に当たって、中国に対し商務省は以下のよ

うな特別措置を講じた。第 1に、「非市場経済国」における価額は商品の公正価額を反映

する信頼性を欠くので、その国からの輸出価格情報を利用するのではなく、ダンピング・

マージンの算定に適応的な基準を提供する「代替国」(Surrogate Country)の価額情報を利用

する。

第 2に、「非市場経済国」の産業は、当該産業の生産および価格決定に関して、政府の

関与が実質上存在しないこと、および当該産業において市場判断に沿って行動するような

個人もしくは集団による所有形態が一般的であることなどを証明すれば、「市場経済型産

業」として認定されるとしたのである。ただしこの場合でも、このような商務省の特別措

置に従って必要な情報を提供しない企業に対しては、商務省は「1国規模税率(Country-Wide

Rate)」7)を適用し、これによりダンピング・マージンが賦課されることになる(USGAO,

2006: 3)。

「非市場経済国」である中国に対する反ダンピング措置については、反ダンピング・マー

ジンは、他の市場経済国のそれを大きく上回る。USGAO(2006)によると、1980年から

2004年までの期間に商務省が賦課した同一の輸入品向けの反ダンピング税率は、市場経済

国向けの賦課税率より平均 20%も上回った。その主たる原因は、ダンピング・マージンの

算定に当たって「1国規模税率」が適用されたからであった。「1国規模税率」は、個別的

に算定されたダンピング・マージンよりもかなり高かったのである(USGAO, 2006: 4)。

2. 反ダンピング措置の実績分析

(1)反ダンピング提訴の件数と品目

まず、中国に対してどのような国が反ダンピング提訴をしているかについてみてみよう

(表 1)。対中国反ダンピング関税賦課の発動件数からいえば、インド、EC(EC: European

Community)、アメリカなどによるものが多いが、対中国反ダンピング関税賦課件数の割合

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アメリカの対中国反ダンピング措置 23

からいえば、トルコ、ペルー、メキシコ、アルゼンチンなどの途上国が多い。これは中国

の輸出産品と他の途上国の産品との間に厳しい競合関係が存在することを意味している。

次に、アメリカの対中国反ダンピング調査件数に絞って、その推移を見てみよう。アメ

リカの世界各国に対する反ダンピング提訴件数は 2000年以降急増し、2001年には 77件と

いうそれまでの最多件数を記録した8)。そのうち中国に対しては、1980年から 2004年まで

の期間に、反ダンピング提訴件数は合計 111回に達した。なかでも 1990年代以降、提訴が

多発し、1994年には 11件と最多となった。その後、いったん減少するものの、2000年以

降は再び多発期となっている。

そこで問題となるのは、アメリカの対中国反ダンピング提訴は、アメリカの中国からの

輸入の増加とともに増えてきたのかどうかという点である。表 2によれば、アメリカの財

輸入に占める中国からの財輸入の割合は年々増加しており、2005年には 14%に達した。

そして、アメリカの対中国反ダンピング提訴の比較値は、ほとんどの年において 2倍ほど

となっており、中国からの輸入量の割合に比べて高く、輸入の増加率以上に反ダンピング

提訴を行っていることが判明する。

さて、アメリカの対中国反ダンピング提訴は、所定の手続きを経て、損害およびダンピ

ングの認定において最終的に「クロ」(肯定的認定)となった場合には、対象財の輸入に対

して反ダンピング関税が賦課される。ここで前述したように 1980年から 2004年までの期

間に、反ダンピング提訴件数は合計 111回あったが、最終的にどの程度の反ダンピング関

税率が賦課されたのかについてみてみると以下の通りである。総計 111件のうち約 3分の

1は、最終的に反ダンピング関税の賦課には至らなかった。反面で最終的に反ダンピング

関税が賦課された件数のうち 70%は付加された関税率が 50%以上という非常に高い関税

賦課率となっている9)。

表 1 対中国反ダンピング関税賦課件数と割合(1995年 1月 1日~ 2006年 6月 30日)

発動国 件数 割合(%) 対中国措置割合の順位

トルコ 41 38.7 1ペルー 18 29.0 2メキシコ 20 22.5 3アルゼンチン 47 22.5 3インド 94 21.0 5韓国 16 19.5 6EC 65 18.8 7アメリカ 61 16.7 8ブラジル 17 13.6 9南アフリカ 26 13.1 10カナダ 18 13.0 11オーストラリア 24 12.8 12世界総計 500 17.0

(注)割合=対中国反ダンピング関税賦課件数/各国の反ダンピング関税賦課総数(出所)世界貿易機関反ダンピング統計(http://www.wto.org/english/tratop_e/adp_e/adp_stattab3_e.xls、

2008年 5月 11日最終アクセス)より筆者作成。

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24 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

次に、アメリカの反ダンピング提訴がいかなる品目を対象としているのかについてみて

みよう。1990~ 2006年の期間の提訴件数のトップは、鉄鋼関連製品(HSコード 72、73)で

あり、合計 23件に達した。ついで有機化学品(HSコード 29など)、無機化学品(HSコード

28)などとなっている(表 3を参照)10)。次節では、アメリカの鉄鋼業界による中国からの

鉄鋼製品輸入に対する反ダンピング提訴について詳細に分析する。

(2)反ダンピング措置の効果分析

既述のように中国からの輸入増加に対して、アメリカの輸入競合業界は反ダンピング提

訴を行ったが、ここではその結果、中国からアメリカへの輸出が数量ベースと金額ベース

とでそれぞれどのように変化したのかについてみてみよう。この分析によって、反ダンピ

ング提訴の貿易効果を知ることができる。

データ・ベースの関係で 2000年から 2003年までのデータに基づいて、品目ごとの輸出

の数量と金額の変化を分類すると表 4のとおりである。この変化とは、反ダンピング提訴

が行われる前の 1年と反ダンピング提訴後の 1年を始点と終点にした 2時点のデータの比

較である。これによれば、反ダンピング提訴後の 1年で、輸出の数量および金額の双方が

減少したのが 44品目と最多であり、次いで輸出量および輸出金額の双方が増加した品目

は 22品種であった。反ダンピング提訴は短期的にはその対象品目の中国からアメリカへ

の輸出を、数量および金額の双方において減少させる傾向がある。特に鉄鋼(HSコード

72)および鉄鋼製品(HSコード 73)の品目では、対米輸出の数量と金額の双方で合計 27件

の減少をみた。

これまでの研究でも明らかなように、アメリカが反ダンピング法や相殺関税法などの不

公正貿易法に基づいて提訴する場合、①提訴された側が反証するためには大きなコストを

要する、②商務省のダンピング認定で「クロ」決定が出れば、輸入業者はダンピング・マー

ジン相当の保証金を財務省に預託しなければならず、事実上輸入価格の上昇になるなどの

理由で提訴自体が「貿易抑制効果」をもたらす(中本、1999: 45–46)11)。アメリカの対中国

表2 アメリカの対中国輸入割合に対する対中国反ダンピング提訴件数の割合の比較値(1995~2005年)

年 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

対中国提訴案件数の割合(%) 14.3 28.6 0.0 2.8 15.2 15.6 10.4 25.7 27.8 22.2 26.7中国からの財輸入の割合(%) 5.9 6.3 7.0 7.5 7.7 8.0 8.7 10.4 11.7 12.9 14.1

比 較 値 2.4 4.5 0.0 0.4 2.0 2.0 1.2 2.5 2.4 1.7 1.9

(注)(1)対中国反ダンピング提訴件数の割合=対中国提訴案件数/提訴案件総数(2)中国からの輸入財の割合=中国からの財輸入/アメリカの総輸入比較値=(1)/(2)

(出所)財輸入データはUSITC, Interactive Tariff and Trade Data Web(http://dataweb.usitc.gov/scripts/user_set.asp、2008年 5月 11日最終アクセス)より、アメリカ反ダンピング提訴件数(1995~ 2003年)は(http://ia.ita.doc.gov/stats/ad-1980-2003.html、2008年 5月 11日最終アクセス)より、2004~2006年データは、アメリカ国際貿易管理局(ITA)(http://ia.ita.doc.gov/stats/inv-initiations-2000-cur-rent.html、2008年 5月 11日最終アクセス)より、対中国反ダンピング提訴件数はWorld Bank、Global Antidumping Database(http://people.brandeis.edu/~cbown/global_ad/、2008年 5月 11日最終アクセス)より、筆者作成。

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アメリカの対中国反ダンピング措置 25

鉄鋼品反ダンピング提訴においても、まさに同じような結果がみられるのである。

以上から明らかなように、アメリカの対中国反ダンピング提訴は、主に鉄鋼および鉄鋼

製品、有機・無機化学品を対象に行われ、その提訴の結果、実際にこれらの財はいずれも

金額、数量の双方で対米輸出が減少した。こうしてアメリカの業界の対中国反ダンピング

提訴は、アメリカの鉄鋼および鉄鋼製品、有機化学品の業界に対して輸入抑制と国内市場

保護の効果をもたらした。

Ⅲ 鉄鋼業におけるアメリカの反ダンピング措置の背景とそのインパクト

本節ではアメリカの対中国反ダンピング提訴件数が最も多かった鉄鋼・鉄鋼製品に対す

る反ダンピング措置の背景を分析するとともに、その反ダンピング措置が中国鉄鋼業に及

表 3 アメリカ反ダンピング提訴数ランキング(1990~ 2006年)

順 位 HSコード(2桁) 品     目 反ダンピング提訴数

1 29 有機化学品 152 73 鉄鋼製品 133 72 鉄鋼 10

3 28無機化学品および貴金属、希土類金属、放射性元素または同位元素の無機または有機の化合物

10

5 87 鉄道用および軌道用以外の車両並びにその部分品および附属品

7

6 48 紙および板紙並びに製紙用パルプ、紙または板紙の製品

5

6 39 プラスチックおよびその製品 5

6 81 その他の卑金属およびサーメット並びにこれらの製品

5

9 94

家具、寝具、マットレスサポート、クッションその他これらに類する詰物をした物品並びにランプその他の照明器具(他の類に該当するものを除く。)およびイルミネーションサイン、発光ネームプレートその他これらに類する物品並びにプレハブ建築物

4

9 84 原子炉、ボイラーおよび機械類並びにこれらの部分品

4

9 32

なめしエキス、染色エキス、タンニンおよびその誘導体、染料、顔料その他の着色料、ペイント、ワニス、パテその他のマスチック並びにインキ

4

9 96 雑品 4

(出所)1990~ 1999年のデータはWorld Bank, Global Antidumping Database統計(http://people.brandeis.edu/~cbown/global_ad/、2008年 5月 11日最終アクセス)より、2000~ 2006年のデータはアメリカ国際貿易管理局(ITA)統計(http://ia.ita.doc.gov/stats/iastats1.html、2008年 5月 11日最終アクセス)より筆者作成。

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26 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

ぼしたインパクトについて論及する。まず、1990年代後半から 2000年代半ばにおけるア

メリカ鉄鋼業界の全般的な動向を確認する。それは一言で言えば、アメリカ鉄鋼業の「苦

境」ともいうべき状態であった。

1. アメリカ鉄鋼業の苦境と輸入増加に対する保護主義的対応

アメリカ鉄鋼業はすでに 1960年代から外国からの輸入急増に対して、エスケープ条項

(201条)や反ダンピング法、あるいは 1974年通商法 301条に訴えて、輸入制限と保護を求

めてきた。この意味で、佐藤(1987)が言うように、アメリカ鉄鋼業は国際競争力回復の

ために「自助努力」をする必要があったにもかかわらず、そのような努力を怠った「悪い

見本」にほかならなかった(佐藤、1987: 163)。そうしたアメリカ鉄鋼業界の体質は現在に

至るまで改善されていない。以下では 1990年代後半以降のアメリカ鉄鋼業の動向と反ダ

ンピング提訴の動きについてみてみたい。

まず、1996年から 2005年までの間に、世界の鉄鋼生産に占めるアメリカのシェアは、

銑鉄においても鉄鋼においても一貫してそのシェアを低下させており、国際競争力の低下

が顕著な産業のひとつとなっている。その対極にあるのが中国の鉄鋼業であり、同期間に

表 4 対中国反ダンピング提訴対象の品目別の対米輸出の数量および金額の増減(2000~ 2003年)

金額  数量 減  少 増  加

減 少

HS72 25品目

HS73 1品目

HS81 3品目HS85 3品目HS04 2品目HS28 2品目HS29 2品目HS73 2品目HS27 1品目HS32 1品目HS39 1品目HS48 1品目HS87 1品目

増 加HS70 1品目HS94 2品目

HS73 6品目HS85 4品目HS94 4品目HS72 2品目HS87 2品目HS39 1品目HS48 1品目HS70 1品目HS81 1品目

(注)HSコード(2桁)は、表 3に同じ。(出所)Global Trade Atlas, [Columbia]: Global Trade Information Services(2006年

12月 1日、ジェトロ大阪ビジネスライブラリーにてアクセス)

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アメリカの対中国反ダンピング措置 27

銑鉄生産では世界シェアは 20.7%から 42.1%に、また粗鋼生産でも 13.5%から 30.9%にそ

れぞれ上昇した12)。この結果、鉄鋼生産高で 1975年には第 2位を占めていたUSスチール

は 2003年には 9位に転落し、1975年に 12位の Republic Steelと 19位であった Jones &

Laughlinとの合弁企業である LTVが辛うじて 2003年において 18位に残るのみとなり、4

位であったベスレヘム・スチールは上位 20位外に転落した(左近司、2004a: 926–928)。アメ

リカ鉄鋼業の地位低下とは対照的に、中国の鉄鋼企業は世界上位 20位に進出した。2003

年には、中国の鞍山鋼鉄、宝山鋼鉄がそれぞれ 6位、18位を占めている(左近司、2004a:

926–928)。

アメリカ鉄鋼業の国際競争力低下は表 5によっても確認できる。1996~ 2005年の期間、

アメリカ鉄鋼製品の輸出は 4百万メトリックトン以上増加したが、輸入はほぼ 1千万メト

リックトンの増加であった。また輸入浸透率はほぼ 20%で推移していたが、2003年には

14.6%に低下した。前年比で 5ポイントも低下したのは、後掲の表 6が示すように 2002年

3月から 2003年 12月までブッシュ政権が鉄鋼製品の緊急輸入制限法を実施したからにほ

かならなかった。まさに法的措置によって輸入を抑制したのであった。

法的措置による鉄鋼の輸入抑制の歴史は古い。日米間でもすでに 1968年の「鉄鋼輸入

割当法案」、1977年のUSスチールによる日本製輸入鋼材に対する反ダンピング提訴、

1982年 12月の日本の鉄鋼輸出に対するアメリカの鉄鋼業界の 1974年通商法 301条による

提訴、1984年のベスレヘム・スチールおよび全米鉄鋼労組(USW)による国際貿易委員会

に対する 1974年通商法 201条に基づく緊急輸入制限の申請など、いくつかのケースがあっ

た。日本製鉄鋼材の輸入に対する法的保護対応のいずれもが、日本側の対米鉄鋼輸出の自

主規制という形で決着した13)。このような法的保護を強めるために 1970年代初めには、連

邦議会の超党派で鉄鋼業界および鉄鋼業界の雇用の安定化を目的として鉄鋼議員連盟

(Congressional Steel Caucus)が結成された。2007年時点でも 107名の議員を擁し、活発な立

法活動や政治活動を展開している14)。

既存の通商法または通商法の変更によって国内鉄鋼業を保護しようとする動きは、1990

表 5 アメリカと中国の粗鋼製品貿易(1996~ 2005年)(単位:千メトリックトン)

1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年

米国

輸出 5,452 3,842 5,969 5,795 6,751 6,279 6,179 8,296 8,432 9,953輸入 33,460 35,871 47,682 42,871 45,297 36,864 40,221 31,018 46,636 42,640貿易収支 –28,008 –32,029 –41,713 –37,076 –38,546 –30,585 –34,042 –22,722 –38,204 –32,687輸入浸透率(%) 16.2 16.9 21.4 19.4 19.7 18.1 19.4 14.6 19.6 19.7

中国

輸出 11,974 15,729 9,471 9,062 16,512 10,016 9,305 11,982 25,659 33,097輸入 16,528 13,854 13,208 17,224 21,167 26,936 31,408 45,736 36,203 28,884貿易収支 –4,554 1,875 –3,737 –8,162 –4,655 –16,920 –22,103 –33,754 –10,544 4,213輸入浸透率(%) 14.7 11.6 10.0 12.6 15.3 15.8 15.3 17.7 12.1 8.3

(注)輸入浸透率=輸入/国内見掛消費(%)粗鋼製品とは、銑鉄・フェロアロイ・鋼塊半製品・圧延鋼材・線材 2次製品・鋳鉄管を指す。

(出所)日本鉄鋼連盟(2006)および IISI(2007)より筆者計算、作成。

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28 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

表 6 中国からの鉄鋼輸入に対する反ダンピングをめぐる措置(1998~ 2005年)

年 月 関 連 事 件

1998年10月 アメリカ下院はクリントン大統領に中国や日本など 10ヶ国からの鉄鋼製品に

対して一年間の緊急輸入差し止めを実施するよう求める決議案を可決

12月 アーロン・アメリカ商務次官は中国や日本などの熱延鋼板のダンピングの疑いを批判

1999年 6月

アメリカの主要鉄鋼メーカーと労組が中国、日本、ロシア、ブラジルなど11ヶ国・地域の冷延鋼板をダンピング(不当廉売)しているとしてDOCとITCに提訴DOCが中国、日本、ロシア、ブラジルなど 11ヶ国・地域の冷延鋼板のダンピング調査を開始

2000年

2月 クリントン大統領が一部鉄鋼製品の緊急輸入制限(Safeguard)を発動

3月DOCが中国、インドなどの 4ヶ国に対し、鉄鋼製のより線、ロープなどのダンピング調査を開始

7月DOCが中国や日本をはじめ、11ヶ国の鉄又は非合金鋼のその他の棒のダンピング調査を開始

10月 反ダンピング関税収入を被害企業に分配する「バード修正法」が成立

12月鉄鋼大手 LTVが連邦破産法 11条の適用を申請DOCが中国をはじめ、11ヶ国の鉄又は非合金鋼のフラットロール製品のダンピング調査を開始

2001年

6月ブッシュ大統領が鉄鋼製品の緊急輸入制限発動に向けた調査開始を指示DOCが中国やドイツをはじめ、8ヶ国の鉄又は非合金鋼の形鋼製品のダンピング調査を開始

7月 DOCが中国をはじめ、5ヶ国の鉄鋼製の溶接管のダンピング調査を開始

9月DOCが中国製などの鉄又は非合金鋼のその他の棒の反ダンピング税賦課命令を発令

10月鉄鋼大手ベスレヘム・スチールが連邦破産法 11条の適用を申請DOCが中国や日本をはじめ、20ヶ国の冷延鋼板製品のダンピング調査およびセーフガード(緊急輸入制限)調査を開始

11月DOCが中国製などの鉄又は非合金鋼のフラットロール製品の反ダンピング税賦課命令を発令

12月ITCが緊急輸入制限の発動を勧告、経済協力開発機構が国際協調減産で合意、USスチールなど高炉数社が政府支援の条件付きで統合検討DOCが中国製などのフェロバナジウムのダンピング調査を開始

2002年3月

ブッシュ大統領が鉄鋼製品の緊急輸入制限の発動を決定DOCが中国製の鉄鋼製の管用継手のダンピング調査を開始

5月 DOCが中国製の鉄鋼製品のダンピング調査を開始11月 DOCが中国製の鉄鋼製の管用継手のダンピング調査を開始

2003年

1月 DOCが中国製などのフェロバナジウムの反ダンピング税賦課命令を発令4月 DOCが中国製の鉄鋼製の非可鍛管用継手の反ダンピング税賦課命令を発令6月 DOCが中国製の鉄鋼製品の反ダンピング税賦課命令を発令

12月ブッシュ大統領が鉄鋼製品の緊急輸入制限の撤廃を決定DOCが中国製の鉄鋼製の可鍛管用継手の反ダンピング税賦課命令を発令

2004年 3月 DOCが中国製とロシア製のマグネシウムの反ダンピング調査を開始

2005年2月 DOCが中国製とロシア製のマグネシウムのダンピングを認定4月 DOCが中国製とロシア製のマグネシウムの反ダンピング税賦課命令を発令

12月 DOCが中国、トルコ、ドイツ製の炭素合金鋼棒の反ダンピング調査を開始

(注)DOC(アメリカ商務省、U.S. Department of Commerce)、ITC(アメリカ国際貿易委員会、U.S. International Trade Commission)。

(出所)『日本経済新聞』(1998~ 2006年版)、および ITAの反ダンピング措置のデータ(http://ia.ita.doc.gov/stats/iastats1.html、2008年 5月 11日最終アクセス)より筆者作成。

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アメリカの対中国反ダンピング措置 29

年代末にはさらに強まった。1999年 2月 25日には貿易問題を扱う下院歳入委員会で鉄鋼

輸入増加をめぐって公聴会が開催された。1997年の通貨危機からの脱却を輸出指向に求め

たアジア、東ヨーロッパ、ロシア、南米からの鉄鋼の対米輸出ドライブによって、1998年

には輸入鋼材が急増した。その結果、「鉄鋼危機」が生じたとして、全米鉄鋼労働組合は

この公聴会において、国内鉄鋼業の衰退は国家安全保障問題であると主張した15)。また米

通商代表部(USTR)は、すでに日本などからの鉄鋼輸入が減少しなければ制裁に動く指針

を示していたし、議会でも輸入制限などを目指す法案の提出準備が進んでいた(『日本経済

新聞』、1999年 1月 22日)。また 2000年 10月 18日に、上院は輸入鉄鋼に対する反ダンピン

グ関税や相殺関税の税収を国庫に入れる代わりに国内メーカーに分配する内容の法案

(バード修正法)を可決し、続いて下院も同法を可決した。当時分配総額は年間 3,900万ド

ルに達すると言われた(『日本経済新聞』、2000年 10月 19日)。これとは別に、約 200人の下

院議員が大統領に鉄鋼の緊急輸入制限を求める決議案を共同提出した(『日本経済新聞』、

2000年 10月 19日)。議会における「鉄鋼危機」へのこれらの保護主義的圧力を受けて、ブッ

シュ大統領は 2001年 6月に緊急輸入制限実施のための被害調査を国際貿易委員会に指示

し、それが前述の 2002年 3月の緊急輸入制限の実施に繋がった。

アメリカの鉄鋼業の苦境を前にして、アメリカ政府もまた鉄鋼産業に対する側面支援を

行った。そのなかで対中国鉄鋼反ダンピング措置を中心にまとめたものが表 6である。一

瞥して明らかなように、1998年以来、毎年反ダンピング措置が講じられている。それが中

国の鉄鋼製品の対米輸出を抑制する結果となったことは、前節で述べたとおりである。こ

こで重要なことは、反ダンピング措置は 1995年に成立したWTO協定によってむしろ増加

したという点である。WTO協定により、従来アメリカ政府が輸入相手国に対して迫って

きた「自主的輸出規制」や2国間協定による対米輸出規制策は禁止されたからである(松下、

2001: 42–45)。そのことがかえって反ダンピング提訴を再び活発にしたのである。アメリカ

鉄鋼メーカーにとっては、反ダンピング提訴は時間をかけて経営改善努力を行うことに比

べると、はるかに容易な手段であり、また収益改善への即効性が強い。したがってまたア

メリカ鉄鋼業は、法的措置による保護への依存を一段と高めたのであった(千葉、2004:

134–135)。

とくに 2003年には 4種類の鉄鋼製品に反ダンピング税が賦課されたが、その結果、2004

年から鉄鋼製品の対米輸出価格は急騰した。その価格上昇幅は中国国内の鋼材価格の上昇

幅をかなり上回るものであった。たとえば、2005年の圧中板(普通鋼)の国内販売単価(米

ドル/トン)は 2003年比でむしろ 79ドル低下したが、同期間に対米輸出単価は 302ドルの

上昇であった。また熱延広幅帯鋼(普通鋼)では、国内販売単価が 44ドルの低下であった

のに対し、対米輸出単価は 113ドルの上昇であった。さらに溶鍛接鋼管でも同期間の国内

販売単価は 34.5ドルの上昇であったのに対し、アメリカ向け輸出単価は 203ドルも上昇し

た16)。これらの対米輸出価格の上昇は、既述の分析でも明らかなように反ダンピング税賦

課の結果である。

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30 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

2. 中国鉄鋼業へのインパクト

前述のように、1990年代後半以降、アメリカ鉄鋼業界および政府が対中国反ダンピング

措置を多用した結果、米中鉄鋼貿易摩擦が発生した。そして貿易摩擦を避けるために中国

の鉄鋼業はアメリカ以外の新たな市場開拓を志向しており、中国の鉄鋼輸出に占める対米

輸出シェアは 1998年の 11%から 2005年には 7%にまで低下した。一方、対韓国輸出シェ

アは、同期間に 16%から 25%にまで急増した17)。こうした輸出市場の変化に加えて、中

国の鉄鋼輸入が増加している。それは高度成長のもとで、インフラ整備や自動車生産など

の拡大により鉄鋼需要が高まり、鉄鋼の国産規模を拡張してもなお鉄鋼不足が生じている

からである。1996年から 2005年までの期間に中国の粗鋼生産高は 3倍以上増加し、世界

生産に占めるそのシェアは 13%から 31%にまで急上昇した。にもかかわらず、中国国内

の粗鋼見掛消費量もこの期間に 3倍以上も増大したため、輸入依存率は高まった。それは

1999年の 12.6%から 2003年には 17.7%にまで上昇した18)。

米中貿易摩擦においては、中国鉄鋼業界はアメリカの反ダンピング措置に対して自ら積

極的に調査に応じることはなく政府に交渉を委ねてきた。というのは、中国の企業がアメ

リカの反ダンピング提訴に応じて書類作成をするのには、高額の費用と多くの時間がかか

るからである。したがって、自らは生産増強と品質の高度化を目指しながら、中国政府が

アメリカ政府に対して反ダンピング措置に対して異議を主張するという関係が続いてき

た。しかし、中国鉄鋼業はアメリカの反ダンピング措置に対して反ダンピング調査への積

極的な対応を行うとともに、鉄鋼貿易摩擦の激化を回避して鉄鋼製品輸出を抑制し、低価

格による競争ではなく高品質化が必要だとする意見も出てきている19)。

そして現在、中国の鉄鋼企業が取り組んでいるのは、棒鋼などの低付加価値製品の輸出

拡大と自動車用薄板鋼のような高付加価値製品の輸入増加の不均衡を解消するため、国際

的な提携を通じた高品質化戦略の展開である。例えば 2003年 7月 28日、中国鉄鋼最大手

の上海宝鋼集団公司は、鉄鋼世界最大手のルクセンブルグ系のアルセロールと自動車用鋼

板加工およびステンレス生産プロジェクトに関する合意文書に調印した。これによってア

ルセロールは安定的に中国市場に参入できるようになり、他方では上海宝鋼集団公司に

とっても優れた技術を導入し、高技術製品化を促進するといった利点があった20)。また、

国内鉄鋼業界では鉄鋼業再編が進んでおり、2001年 3月には中国上海宝山鋼鉄(当時世界 9

位)、首都鋼鉄(同 24位)、武漢鋼鉄(同 25位)の鉄鋼大手 3社が戦略提携を結んだ。資材

の共同購買、新製品の共同開発などが中心であった。さらに 2001年には、遼寧省の鞍山

鋼鉄、本渓鋼鉄など鉄鋼 4社の合併が進んだ。こうした中国鉄鋼業界による外国の先進技

術の導入や国内鉄鋼業界の再編・合併は、製品の高品質化をもたらし、低価格輸出をめ

ぐって行われてきた外国の反ダンピング措置への対応能力を高めるものと考えられる。

一方中国政府としても、鉄鋼製品の輸出急増が輸入国側の反ダンピング提訴を誘発し、

貿易摩擦を惹起していることに対して政策的対応を展開している。これらの政策は、中国

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アメリカの対中国反ダンピング措置 31

の鉄鋼製品の輸出を抑制しようとするものである。例えば、2007年 4月 9日に、中国財政

部は、「一部分の鉄鋼製品の輸出増値税還付率の引き下げ」の決定を発布した(中華人民共

和国財政部・国家税務総局、2007a)。その中で、HSコード 72に属する特殊鋼材、ステンレス

鋼板および冷延製品など計 76品目に関わる輸出増値税の還付率を一斉に 5%にまで引き下

げる決定をし、2007年 4月 15日から施行した(中華人民共和国財政部・国家税務総局、

2007a)。さらに、2007年 6月 19日に、中国財政部は「2,268品目の輸出品の増値税還付率

の引き下げ」の決定を発令したが、その対象品目のなかには数多くの鉄鋼製品が含まれて

いる(中華人民共和国財政部・国家税務総局、2007b)。こうした増値税の還付率の引き下げだ

けではなく、直接的な輸出規制も導入された。すなわち 2007年 4月 30日に中国商務部・

海関総署は、2007年 5月 20日より熱延コイル、厚板など主要鋼材 83品目の輸出許可証制

度を導入すると発表したのである(中華人民共和国商務部・海関総署、2007)。

おわりに

アメリカの対中国鉄鋼反ダンピング措置の分析結果から、以下の諸点が導出される。

第 1に、反ダンピング法は元来不当廉売という不公正貿易に対して制裁を行うための通

商法であるが、アメリカ鉄鋼業界による対中国鉄鋼反ダンピング措置の場合には、中国か

らの鉄鋼輸入に直面したアメリカ鉄鋼業の保護を目的に多用されている。ダンピングがあ

るから反ダンピング法に訴えるのではなく、輸入抑制のために反ダンピング法を乱用して

いるのである(Mastel, 1998: 5)。とくに鉄鋼業は、アメリカの国際的地位の凋落と中国の国

際的地位の上昇が顕著な業界であり、このためアメリカでは鉄鋼業界は国家安全保障上重

要産業だと主張し、反ダンピング措置に訴えやすいという事情がある(Bekker, 2006: 32)。

またWTOの成立によって、かつての日米貿易摩擦の解決策として多用された「自主的

輸出規制」や 2国間で貿易量制限が禁止されたので、かえって反ダンピング法による法的

保護が広がっているのである。

第 2に、対中国反ダンピング調査結果がクロになる確率が高い背景には、アメリカ通商

法において中国は「非市場経済国」として位置づけられており、ダンピング判定に当たっ

ては中国の輸出価格ではなくインドなどの第 3国の輸出価格を基準とするという特別の事

情がある。これは明らかにダンピング判定において中国側を不利にしている。

第 3に、アメリカ鉄鋼業の反ダンピング措置においては、業界のロビイングによって、

議会や行政府が一体となって国内鉄鋼業界の保護を支持したのとは対照的に、中国の場合

には個別企業や業界として対応するのではなく、中国政府に対応を委ねてきたというのも

米中貿易摩擦の特徴である。従来の貿易摩擦の解決は最終的に政府間交渉によって決着に

いたるケースが多かったが、WTO体制の下では通商法による解決が求められるので、中

国企業もその対応を政府に委ねるのではなく、個別企業として反ダンピング調査に積極的

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32 アジア研究 Vol. 54, No. 3, July 2008

に対応する必要がある。それは企業の主体性を高め、アメリカの対中国「非市場経済国」

規定の廃止に繋がることが見込まれるからである。

第 4に、アメリカの対中国鉄鋼反ダンピング措置は、中国鉄鋼製品の対米輸出価格の上

昇をもたらし、この点では中国鉄鋼製品の価格競争力の低下となった。また鉄鋼企業は高

付加価値製品や高技術製品への指向を実現するために外国企業との国際提携を図ってい

る。さらに中国政府としても、反ダンピング提訴の対象となるような低価格鉄鋼製品の輸

出急増を抑制する政策を展開し、米中貿易摩擦の鎮静化を図っている。

(注)1) アメリカの通商法と通商行政については、中本悟(1999)第 1章と第 2章を参照。2) 反ダンピング法(ダンピング防止法)では、商務省によるダンピングの事実認定と国際貿易委員会による損害認定の両方の認定をそれぞれ 2回ともクリアしないと、反ダンピング措置を実施することはできない。

3) 貿易摩擦とは、「国際的な政治問題となった国際貿易関係」(中本、1999: 210)にほかならないが、米中間の貿易不均衡もまた様々なルートを通じて政治問題化され、米中貿易摩擦を惹起している。

4) 中国反ダンピング提訴件数は、中華人民共和国商務省「中国貿易救済情報統計」(http://www.cacs.gov.cn/DefaultWebApp/caseSearch.jsp、2008年 5月 11日最終アクセス)による。

5) たとえば、Mastel(1998)、Bekker(2006)、Prusa(2001)など。6) 反ダンピング法および相殺関税法という不公正貿易法の概要、並びにこれら 2つの通商法の実施過程については、中本(1999)、第 1章が詳しい。

7) ここで「1国規模税率」は、当該国において「市場経済型産業」として認定された企業以外を対象として、すべてこの反ダンピング賦課税率でダンピング税を徴収することを指す。

8) USDOC, ITA, Import Administration, Antidumping and Countervailing Duty Statistics(http://ia.ita.doc.gov/stats/iastats1.html、2008年 5月 11日最終アクセス)の統計による。

9) USDOC(アメリカ商務省)のデータによれば、1980~ 2004年の間の対中国反ダンピング関税賦課の税率分布は以下のとおりである。関税賦課なしの件数は 35件(総件数に占める割合は 31.5%)であり、税率 0 ~ 10%は 4件(3.6%)、10 ~ 50%は 13件(11.7%)、50 ~ 100%は 21件(18.9%)、100 ~ 150%は 20件(18.0%)、150~ 200%は 10件(9.0%)、200%以上は 8件(7.2%)、となっている(http://ia.ita.doc.gov/stats/iastats1.htmlに 2008年 5月 11日最終アクセス、筆者算定)。

10) 1987~ 2003年の間の世界の反ダンピング提訴の品目別分析を行ったBekker(2006)によると、反ダンピング提訴は基礎金属(約 30%)、化学品(約 19%)、プラスチックおよびゴム(10%)と機械および電子製品(11%)の 4つの品目に集中していた。表 3によれば、アメリカの対中国反ダンピング提訴の対象品も同じである。

11) Prusa(2001)によると、反ダンピング措置が輸入量と販売価格に大きな影響を与え、反ダンピング提訴の「肯定的認定」は、反ダンピング税が課される初めの 3年間において、その課税対象財の輸入量をほぼ 70%減少させる。この Prusaの研究は、世界全体の反ダンピング措置を対象とした研究である。

12) IISI(国際鉄鋼協会)の統計によると、1996年には世界の銑鉄生産および粗鋼生産はそれぞれ 517,448千メトリックトンと 750,024千メトリックトンであり、2005年にはそれぞれ 785,464千メトリックトンと1,132,152千メトリックトンに増加した。一方、アメリカの銑鉄生産および粗鋼生産はそれぞれ 49,428千メトリックトン(世界総生産の 9.6%)と 95,535千メトリックトン(12.7%)であり、2005年にはそれぞれ 37,222千メトリックトン(4.7%)と 94,897千メトリックトン(8.4%)に、絶対的にもシェアにおいても減少した。日本鉄鋼連盟(2006)および IISI(2007)より計算。

13) 1960年代以降の日米鉄鋼貿易摩擦については、松尾(1992)を参照。14) 2007年 3月 10日には、中国を念頭に、これまで相殺関税法の対象に「非市場経済国」が入っていなかったことを批判して、相殺関税法は「非市場経済国」も対象とする法案(H.R.1216)をアメリカ連邦下院歳入委員会に提出した(Morrison & Labonte, 2007: 6)。

15) この公聴会については、米連邦議会下院歳入委員会貿易小委員会の 1999年 2月 25日の記録(http://waysandmeans.house.gov/hearings.asp?formmode=archive&hearing=214、2008年 5月 11日最終アクセス)を参照。

16) 輸出単価は各年の平均単価。国内販売単価は、年末単価(全国 18地区鋼材市場の平均値、増値税 17%込み)。データは中国税関総署、「世界金属導報」、「供求与価格」、「中国物資価格信息」などより計算。デー

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アメリカの対中国反ダンピング措置 33

タの入手にあたっては左近司忠政氏に協力していただいた。記して感謝する。17) 日本鉄鋼連盟(2006)、210ページより計算。18) IISI(国際鉄鋼協会)の統計によると、1996年には中国の銑鉄生産および粗鋼生産はそれぞれ 107,210(世界総生産の 20.1%)千メトリックトンと 101,237(12.7%)千メトリックトンであり、2005年にはそれぞれ 330,405(42.1%)千メトリックトンと 349,362(30.9%)千メトリックトンに増加し、絶対的なシェアにおいても増加した。日本鉄鋼連盟(2006)および IISI(2007)より計算。

19) たとえば、姜(1999)、侯(2006)など。20) 「鉄鋼世界最大手アルセロールが宝鋼と提携」『人民網日本語版』2003年 7月 29日(http://j.peopledaily.

com.cn/2003/07/29/jp20030729_31058.html、2008年 5月 11日最終アクセス)参照。

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(ちん・ゆうしゅん 大阪市立大学大学院 E-mail: [email protected]