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書か
いた人ひと
/執筆者しっぴつしゃ
:田畑た は た
サンドーム光恵み つ え
てつだってくれた人ひと
/執筆協力者しっぴつきょうりょくしゃ
: 西尾佐知子に し お さ ち こ
写真しゃしん
を提 供ていきょう
してくれた人ひと
:東京都とうきょうと
の前川史郎まえかわしろう
さん
(前川まえかわ
さんは、ニュージーランドにいらっしゃった時とき
、このお 話はなし
の
モデルになった犬いぬ
の写真しゃしん
や、風景ふうけい
の写真しゃしん
を撮と
られました。)
夏美な つ み
とルーク、
そして Kiri
夏美な つ み
のお父とう
さんは、ニュージーランド人じん
です。でも、夏美な つ み
は、日本に ほ ん
で生う
まれまし
た。お母かあ
さんが日本人にほんじん
で、夏美な つ み
が生う
まれた時とき
は、お父とう
さんとお母かあ
さんは日本に ほ ん
に住す
ん
でいたからです。
夏美な つ み
が 1歳さい
3ヶか
月げつ
の時とき
、三人さんにん
は、お父さんの故郷ふるさと
ニュージーランドに帰かえ
って来き
まし
た。お父とう
さんとお母かあ
さんが、ニュージーランドの方ほう
が、自然し ぜ ん
が多おお
いし、教育きょういく
も厳きび
し
くないので、夏美な つ み
にとってはいい国くに
だと考かんが
えたからです。
三人さんにん
は、首都し ゅ と
のウエリントンから、車くるま
で 40分ぷん
の所ところ
にあるプクルアベイという町まち
に、小ちい
さな家いえ
を買か
って住す
み始はじ
めました。
隣となり
の家いえ
の裏うら
は、牧場ぼくじょう
でした。羊ひつじ
がたくさんいて、牛うし
も何頭なんとう
かいました。そし
て、隣となり
の人ひと
は乗馬じょうば
が好す
きで、馬うま
も 6頭とう
飼か
っていました。
となりの牧 場ぼくじょう
の 羊ひつじ
たち
日本に ほ ん
で育そだ
った夏美な つ み
にとって、家いえ
のすぐ近ちか
くに牧場ぼくじょう
があるのは、とても珍めずら
しかっ
たようです。夏美な つ み
は、まだ小ちい
さかったのですが、週末しゅうまつ
には、お父とう
さんと一緒いっしょ
に小ちい
さ
な長靴ながぐつ
をはいて、よく隣となり
の牧場ぼくじょう
にハイキングに行い
きました。
牧場ぼくじょう
の一番高いちばんたか
い所ところ
からは、300度ど
ぐらい、ぐるーっと海かい
が見渡み わ た
せます。お天気て ん き
のいい日ひ
などは、とても綺麗き れ い
です。海うみ
は真ま
っ青さお
で、東ひがし
の方ほう
にはカピチ島とう
という島しま
が
よく見み
えます。このカピチ島とう
は、ニュージーランドにしかいない珍めずら
しい鳥とり
が、大切たいせつ
に保護ほ ご
されている重要じゅうよう
な島しま
です。この島しま
には、許可き ょ か
を取と
った船ふね
しか行い
くことができ
ません。
夏美な つ み
は、動物どうぶつ
のいっぱいいる牧場ぼくじょう
、綺麗き れ い
な海うみ
、たくさんの緑みどり
に囲かこ
まれて、ニュ
ージーランドの生活せいかつ
を満喫まんきつ
していました。
隣となり
の牧場ぼくじょう
から見み
えるきれいな海うみ
左ひだり
の方ほう
にカピチ島とう
が見み
える。
夏美な つ み
のおじさんも、小ちい
さな牧場ぼくじょう
に住す
んでいました。とても小ちい
さな牧場ぼくじょう
ですか
ら、あまりお金かね
はもうかりません。でも、羊ひつじ
も、牛うし
も、にわとりもいます。夏美な つ み
が
三歳さんさい
くらいの時とき
、お父とう
さんとお母かあ
さんは、初はじ
めて夏美な つ み
をおじさんの牧場ぼくじょう
に連つ
れて行い
ってくれました。
動物どうぶつ
が好す
きな夏美な つ み
は、一目ひ と め
でおじさんの牧場ぼくじょう
に恋こい
をしてしまいました。
「おうちに帰かえ
りたくない。」お休やす
みを終お
えて帰かえ
る日ひ
、夏美な つ み
はそう言い
って、ずっと
泣な
いていました。
それから、クリスマス、イースターなどの長なが
いお休やす
みの時とき
は、いつもおじさんの
牧場ぼくじょう
に遊あそ
びに行い
くようになりました。
ある年とし
、夏美な つ み
とお父とう
さんだけが、牧場ぼくじょう
に遊あそ
びに行い
きました。そこで、夏美な つ み
は、と
てもショックな話はなし
を聞き
いてしまいました。
おじさんと、おじさんの奥おく
さんが、こう話はな
していたのです。
「Kiri は、全然役ぜんぜんやく
にたたないから、銃じゅう
で撃う
ち殺ころ
して、川かわ
に捨す
ててしまおうか。」
「そうだな、可哀想かわいそう
だけど、仕事し ご と
をしない犬いぬ
をおいておく訳わけ
にはいかないから
な。」
「!!!」夏美な つ み
は、信しん
じられませんでした。とてもショックでした。
Kiri というのは、とても可愛か わ い
いファーム・ドッグです。おじさんの牧場ぼくじょう
には、5
匹ひき
のファーム・ドッグがいましたが、夏美な つ み
の一番いちばん
のお気き
に入い
りは、Kiri だったのです。
ファーム・ドッグというのは、牧場ぼくじょう
で色々いろいろ
な
仕事し ご と
を手伝て つ だ
う犬いぬ
のことです。牧場ぼくじょう
の多おお
いニュー
ジーランドでは、約やく
20万匹まんぴき
のファーム・ドッグ
が働はたら
いています。ファーム・ドッグはとても頭あたま
のいい犬いぬ
で、色々いろいろ
なことができます。
羊ひつじ
を一ひと
つのパドック(牧場ぼくじょう
の一区画いちくかく
)から、別べつ
のパドックに移動い ど う
させる時とき
、フ
ァーム・ドッグは、羊ひつじ
が逃に
げないように、全部ぜ ん ぶ
の羊ひつじ
をグループにして移動い ど う
させる
ことができます。
実じつ
は、羊ひつじ
はとても怖こわ
がりで頭あたま
が悪わる
いです。移動い ど う
の時とき
なども、どうしていいかわ
からないので、すぐに逃に
げようとします。一匹いっぴき
が逃に
げると、頭あたま
の悪わる
い羊ひつじ
は、何なに
も
考かんが
えずにその逃に
げていく羊ひつじ
について行い
こうとします。
頭あたま
の悪わる
い何十匹なんじゅっぴき
もの羊ひつじ
を、人ひと
だけで移動い ど う
させることは出来で き
ません。だから、フ
ァーム・ドッグは、ニュージーランドの牧場ぼくじょう
にはなくてはならない存在そんざい
なのです。
でも、ファーム・ドッグの中なか
にも、よく仕事し ご と
ができる犬いぬ
と、できない犬いぬ
がいま
す。ファーム・ドッグは、牧場ぼくじょう
を経営けいえい
している家いえ
の人ひと
にとっては、ペットではあり
ません。ビジネスの道具ど う ぐ
です。仕事し ご と
のできない犬いぬ
も、ごはんは食た
べます。だから、
仕事し ご と
のできない犬いぬ
には、無駄む だ
なお金かね
がかかるのです。
とてもおとなしい
Kiri
夏美な つ み
のおじさんの牧場ぼくじょう
は、あまりお金持か ね も
ちではありません。だから、仕事し ご と
のでき
ないファーム・ドッグはおいておけないのです。
仕事しごと
をするファーム・ドッグ
Labelled for reuse image: https://bit.ly/2rVrgoe
Copyright of image (Author): Scot Campbell
Kiri は、頭あたま
のいいお父とう
さん犬いぬ
とお母かあ
さん犬いぬ
から生う
まれました。頭あたま
のいい犬いぬ
で
す。本当ほんとう
なら、牧場ぼくじょう
の仕事し ご と
も上手じょうず
にできるはずです。でも、Kiri は、赤あか
ちゃん犬いぬ
だ
った時とき
、とてもいじわるな人ひと
たちに育そだ
てられました。その人ひと
たちは、Kiri にちゃん
と牧場ぼくじょう
の仕事し ご と
を教おし
えず、すぐに大おお
きな声こえ
でどなったり、蹴け
ったりしていたそうで
す。
それを見み
た夏美な つ み
のおじさんは、Kiri が可哀想かわいそう
で、そのいじわるな人ひと
たちから Kiri
を買か
い取と
ったのです。でも、ファーム・ドッグは、生う
まれてすぐにしっかりと牧場ぼくじょう
の仕事し ご と
を教おし
えてもらわなければ、いいファーム・ドッグにはなれません。Kiri が
夏美な つ み
のおじさんの牧場ぼくじょう
に来き
た時とき
は、もう 2歳近さいちか
くになっていました。だから、Kiri
に牧場ぼくじょう
の仕事し ご と
を教おし
えるのは、遅おそ
すぎたのです。
夏美な つ み
がおじさんの牧場ぼくじょう
に遊あそ
びに行い
き始はじ
めた頃ころ
、Kiri には、「耳みみ
なし」というあだ
名な
がついていました。「何なに
を言い
っても、言い
うとおりに仕事し ご と
が出来ない、こっちの言い
う事こと
を聞き
く耳みみ
がない。」という意味い み
のあだ名な
です。
Kiri の名前な ま え
の意味い み
は、日本語に ほ ん ご
の「霧きり
(Mist)」から来ています。Kiri の毛け
の色いろ
が、まるで霧きり
のような淡あわ
い綺麗き れ い
な白しろ
と灰色はいいろ
だったので、最初さいしょ
は「Mist」という名前な ま え
にしようと話はな
していたそうです。でも、夏美な つ み
のおじさんが、英語え い ご
ではなく、夏美な つ み
の
お母かあ
さんに Mist を日本語に ほ ん ご
にしてもらって、わざと日本語に ほ ん ご
の名前な ま え
にしました。
Kiri は、朝あさ
の霧きり
のように、ふわーとした感かん
じのとてもやさしい犬いぬ
でした。
Kiri は、Eye Dog という種類しゅるい
の犬いぬ
で、目め
で羊ひつじ
を怖こわ
がらせて仕事し ご と
をするファー
ム・ドッグでした。だから、あまり吠ほ
えません。とても静しず
かで、大おお
きな綺麗き れ い
な目め
で
じっと周まわ
りを見み
ています。
やさしくて、綺麗き れ い
で、大人お と な
しい Kiri のことを、夏美な つ み
は一番好いちばんず
きだったのです。
『私わたし
の大好だ い ず
きな Kiri が、おじさんに殺ころ
されて、川かわ
に捨す
てられる!!!』
夏美な つ み
は、大急おおいそ
ぎでお父とう
さんのところに行い
って、この話はなし
をしました。そして、「お
父とう
さん、Kiri をおうちに連つ
れて帰かえ
ってあげようよ。Kiri を助たす
けてあげようよ!」
夏美な つ み
のお父とう
さんも、犬いぬ
が大好だ い す
きです。でも、お父とう
さんは、「う~~~~~ん」と
とても困こま
った様子よ う す
です。「でも、うちは、お母かあ
さんが。。。」
実じつ
は、夏美な つ み
のお母かあ
さんは、動物どうぶつ
がとても苦手に が て
だったのです。だから、「ペットは
絶対ぜったい
ダメ!」といつも言い
っていました。
それでも、夏美な つ み
とお父とう
さんは、おじさんに、「ちゃんとお母かあ
さんを説得せっとく
して、Kiri
を迎むか
えに来く
るから、それまで Kiri を殺ころ
さないで」と頼たの
み込こ
んで、牧場ぼくじょう
から家いえ
に帰かえ
り
ました。
さあ、家いえ
に帰かえ
った夏美な つ み
は必死ひ っ し
です。ちょっと怖こわ
いけれど、思おも
い切き
ってお母かあ
さんに
お願ねが
いしました。
「お母かあ
さん。。。」
「何なに
?」
「おじさんの牧場ぼくじょう
の Kiri って、綺麗き れ い
だと思おも
わない?」
「ああ、あの犬いぬ
。あの犬いぬ
は、あんまり吠ほ
えないし、他ほか
の犬いぬ
よりましね。」
「ね、そうだよね。大人お と な
しいよね。可愛か わ い
いよね。だから、死し
んだら、かわいそう
だよね。」
「あの犬いぬ
、病気びょうき
なの?」
「ううん、違ちが
うの。おじさんが、『Kiri は仕事ができないから、銃じゅう
で撃う
って、川かわ
に捨す
てる』って。」
「え、ほんと。それ、すごいかわいそうじゃない。残酷ざんこく
すぎる。」
「だからね、。。。」
「ちょっと!!! もしかしたら、あの犬いぬ
をうちで飼か
うつもり?」
「おねが~~~~~い!おねがい、おねがい、おねがい!」
夏美な つ み
のお母かあ
さんは、かなり犬いぬ
が苦手に が て
でした。でも、夏美な つ み
とお父とう
さんが必死ひ っ し
に頼たの
む
ので、仕方し か た
なく Kiri を自分じ ぶ ん
たちの家いえ
に引ひ
き取と
ることにしました。「ファーム・ドッ
グは家いえ
の中なか
に入い
れなくてもいい」、と言い
われたので、「それなら、Kiri をうちで飼か
うのを許ゆる
してあげるわ。」と OK してくれたのです。
Kiri は、おじさんのトラックに乗の
って、犬小屋い ぬ ご や
と一緒いっしょ
に夏美な つ み
の家いえ
にやってきまし
た。
ずっと牧場ぼくじょう
しかない田舎い な か
に住す
んでいた犬いぬ
だったので、町まち
に来き
た最初さいしょ
の頃ころ
、Kiri
は、何なん
でも怖こわ
がっていました。たくさんの人ひと
がいるし、たくさんの車くるま
も走はし
っている
し、犬いぬ
にも色々いろいろ
な種類しゅるい
の犬いぬ
がいます。
家いえ
の近ちか
くには、学校がっこう
もあって、子こ
どもたちの大おお
きな声こえ
が聞き
こえてくるし。いつも
怖こわ
いので、Kiri のしっぽは、元気げ ん き
なく下した
に向む
かってたら~んと垂た
れていました。そ
れを見み
て、夏美な つ み
とお父さんは、Kiri が可哀想かわいそう
で、毎日一生懸命まいにちいっしょうけんめい
散歩さ ん ぽ
に連つ
れて行い
って
やさしく世話せ わ
をしました。
犬いぬ
があんまり好す
きじゃないお母さんも、Kiri のことをもう一人ひ と り
の子こ
どもと思おも
っ
て、晩ばん
ごはんをあげたり、臭くさ
くなってきたら体からだ
をシャンプーしてあげたりしまし
た。
Kiri は、少すこ
しずつ町まち
の生活せいかつ
に慣な
れ、元気げ ん き
になっていきました。
でも、Kiri が最後さ い ご
まで好す
きになれなかったことが一ひと
つあります。それは、イギリ
スから伝つた
わるニュージーランドの変へん
なお祝いわ
いです。
そのお祝いわ
いは、「ガイ・ファークス(Guy・Fawkes)の夜よる
」です。ガイ・フォー
クスというのは人ひと
の名前な ま え
です。この人ひと
は、仲間な か ま
と一緒いっしょ
に、1605年ねん
にイギリスの王様おうさま
ジェームズ一世いっせい
を殺ころ
そうとした人ひと
です。でも、爆弾ばくだん
をいっぱい用意よ う い
して、準備じゅんび
して
いたのですが、計画けいかく
を実行じっこう
する前まえ
に警察けいさつ
につかまってしまいました。
変へん
な話はなし
ですが、イギリスからニュージーランドに移住いじゅう
してきた人々ひとびと
は、11月がつ
5いつ
日か
に、このイギリスで起お
きた「昔むかし
の失敗しっぱい
したテロ」をお祝いわ
いするという習慣しゅうかん
を始はじ
めました。そして、11月がつ
5いつ
日頃か ご ろ
だけ、「花火は な び
をあげていい日ひ
」にしようと決き
めたの
です。ガイ・フォークスたちが爆弾ばくだん
を使つか
ってお城しろ
を爆破ば く は
しようとしていたから、
それにちなんで、「花火は な び
」をあげる日ひ
にしたんでしょうか???
そんな訳わけ
で、今いま
でもニュージーランドでは、11月がつ
5いつ
日頃か ご ろ
になると、沢山たくさん
の家いえ
で
花火は な び
をします。そんな夜よる
は、あちこちから「ボーン、ボーン」と大おお
きな花火は な び
の音おと
が
何時間なんじかん
も聞き
こえてきます。
Kiri は、この「ガイ・フォークスの夜よる
」をとても怖こわ
がりました。もともと、Kiri
はすごい怖こわ
がり屋や
さんでした。それに、犬いぬ
は人間にんげん
の 7倍ばい
の鋭するど
さで音おと
を聞き
けるので、
きっと、花火は な び
の音おと
は、Kiri の耳みみ
にはものすごい音おと
に聞き
こえたのでしょう。
町まち
に来き
て、最初さいしょ
の年とし
のガイ・フォークスの夜よる
、花火は な び
の音おと
が聞き
こえ始はじ
めた時とき
、Kiri
は、あんまり怖こわ
いのでどこかにいなくなってしまいました。夏美な つ み
とお母かあ
さんは、Kiri
のことを何時間なんじかん
も探さが
さなければなりませんでした。
2年目ね ん め
からは、ガイ・フォークスの夜よる
だけ、Kiri は家いえ
の中なか
に入はい
っていいことになり
ました。花火は な び
の音おと
を聞き
いて、ブルブル震ふる
えている Kiri に、夏美な つ み
は毛布も う ふ
をかけてあげ
て、ずっと横よこ
に一緒いっしょ
に座すわ
ってあげました。
夏美な つ み
が 5歳さい
になった時とき
、夏美な つ み
の 弟おとうと
のルークが生う
まれました。ルークが生う
まれて
から、夏美な つ み
はルークの方ほう
が可愛か わ い
いので、あまり Kiri と遊あそ
ばなくなってしまいまし
た。だから、お父とう
さんが Kiri の一番いちばん
の友とも
だちになりました。
ガイフォークスの仮面かめん
のイメージ
Labelled for reuse image: https://bit.ly/2GxzZ4x
Copyright of image (Author) : Vectorportal
夏美な つ み
は中学校ちゅうがっこう
、高校こうこう
とあがるにつれて、友とも
だちと遊あそ
んだり、勉強べんきょう
やスポーツを
したり、忙いそが
しくなっていき、どんどん Kiri と遊あそ
ばなくなりました。
でも、夏美な つ み
に代か
わって、 弟おとうと
のルークが大おお
きくなるにつれて、Kiri の親友しんゆう
になっ
ていきました。Kiri はとても優やさ
しい犬いぬ
だったので、わんぱくなルークが、Kiri の
背中せ な か
に乗の
ったりしても、いやな顔かお
をしませんでした。ルークと Kiri は、家いえ
の庭にわ
で、
よく一日中一緒いちにちじゅういっしょ
に遊あそ
んでいたものです。
Kiri には、とても面白おもしろ
い趣味し ゅ み
がありました。「隣となり
の家いえ
のにわとりを見張み は
ること」
です。夏美な つ み
とルークの家いえ
の庭にわ
と隣となり
の家いえ
の庭にわ
の間あいだ
には、塀へい
がありますが、少すこ
し隙間す き ま
があります。そこから、隣となり
の家いえ
の庭にわ
を見み
ることができます。隣となり
の家いえ
は、にわとり
を 3羽飼わ か
っていました。
Kiri は元々もともと
Eye Dog で、羊ひつじ
をじっと見張み は
る犬いぬ
だったので、夏美な つ み
の家いえ
に来き
た日ひ
か
ら、毎日欠まいにちか
かさず、塀へい
の横よこ
に座すわ
って、隣となり
の家いえ
のにわとりを「見張み は
っていました。」
夏美な つ み
の家いえ
に遊あそ
びに来き
た人ひと
はみんな、塀へい
の横よこ
に座すわ
って、隣となり
の家いえ
のにわとりを「見張み は
っ
ている」Kiri のことを、とても面白おもしろ
いと思おも
ったようです。
夏美な つ み
が大学だいがく
に入学にゅうがく
し、ルークも高校こうこう
に入学にゅうがく
する年とし
、一家い っ か
は首都し ゅ と
のウエリントン
の中心ちゅうしん
に引ひ
っ越こ
しました。二人ふ た り
の学校がっこう
に通かよ
うのに、便利べ ん り
だからです。もちろん、
Kiri のために、庭にわ
のある家いえ
を買か
いました。
ルークはもう 15歳さい
になっていたのですが、Kiri のことをとても可愛か わ い
がっていまし
た。散歩さ ん ぽ
に連つ
れて行い
くのも、犬小屋い ぬ ご や
をそうじするのも、ルークの仕事し ご と
でした。
ある日ひ
、お母かあ
さんが言い
いました。「ねえ、Kiri のお腹なか
、はれてない?」
みんなが見み
てみると、Kiri のお腹なか
の一箇所いちかしょ
がかなりはれています。すぐにお父とう
さ
んがお医者い し ゃ
さんに連つ
れて行い
きました。
Kiri の体からだ
には、3 つの癌がん
があることがわかりました。もう 15歳さい
でしたし、すご
いおばあちゃんなので、いつ死し
んでも仕方し か た
がないので手術しゅじゅつ
はしませんでした。
お医者い し ゃ
さんは、「食た
べ物もの
を食た
べられなくなったら、可哀想かわいそう
なので、安楽死あんらくし
させま
しょう。」と言い
いました。
最後さ い ご
の一いっ
ヶか
月げつ
、Kiri はとても痛いた
かったんだと思おも
います。大好だ い ず
きなルークの後うしろ
を、
歩ある
いてついていくのですが、しっかり歩ある
けないのです。それでも、一生懸命いっしょうけんめい
ルーク
の後うしろ
を歩ある
いていたのが、皆みな
の心こころ
に残のこ
っています。
ルークは、「Kiri はまだまだ大丈夫だいじょうぶ
。元気げ ん き
だよ。ごはんもちゃんと食た
べてるよ。
絶対ぜったい
、安楽死あんらくし
なんかさせない!」と言い
っていました。
でも、ある日ひ
、お父とう
さんに、「Kiri をお医者い し ゃ
さんに連つ
れて行い
って、安楽死あんらくし
させて
あげて。」と言い
ったのは、ルークでした。
「昨日き の う
から、もうずっと犬小屋い ぬ ご や
から出で
てこない。ごはんも食た
べてない。きっとす
ごくつらいんだ。もう可哀想かわいそう
だよ。」
Kiri がお医者い し ゃ
さんに行い
く日ひ
の朝あさ
、夏美な つ み
とルークは、学校がっこう
に行い
く前まえ
、長なが
い間あいだ
、Kiri
に「大好だ い ず
きだよ。本当ほんとう
に、今いま
までありがとう。大好だ い ず
きだよ。」と繰く
り返かえ
し話はな
しかけ
ていました。
あれから 12年ねん
が経た
ちました。夏美な つ み
はも
うすぐ 30歳さい
になります。仕事し ご と
は弁護士べ ん ご し
で
すが、今いま
は少すこ
しお休やす
みしています。どうし
てかって?
夏美な つ み
はもうお母かあ
さんになっているからで
す。夏美な つ み
の娘むすめ
は、今年こ と し
2歳さい
です。「はな」という名前な ま え
です。
今いま
、季節き せ つ
はクリスマス。ニュージーランドは夏なつ
で、一年いちねん
で一番いちばん
いい季節き せ つ
です。
夏美な つ み
とだんなさんのつばささんは、はなちゃんを夏美な つ み
のおじさんの牧場ぼくじょう
に連つ
れて行い
こうと思おも
いました。はなちゃんにとって、初はじ
めて行く牧場ぼくじょう
です。
車くるま
を 5時間走じかんはし
らせ、やっと牧場ぼくじょう
に着つ
きました。はなちゃんは、たくさんの動物どうぶつ
を見み
てワクワクしています。
おじさんが、夏美な つ み
に言い
いました。「夏美な つ み
、ちょっといいもの見み
せてやろう。」
おじさんは、夏美な つ み
たちをファーム・ドッグのいるパドックへ連つ
れて行い
きました。
ファーム・ドッグは昔むかし
のように、5匹ひき
いました。その一番後いちばんうし
ろのファーム・ドッ
グを見た夏美な つ み
は、自分じ ぶ ん
の目め
が信しん
じられませんでした。
「Kiri!!! Kiri だ!、ママ、パパ、Kiri だよ!」
夏美な つ み
が叫さけ
ぶ前まえ
に、その犬いぬ
を見み
て、「Kiri」と呼よ
んだのは、娘むすめ
のはなちゃんでし
た。いつも Kiri の写真しゃしん
を見み
ていたからです。
おじさんは、説明せつめい
してくれました。
「こいつは、Kiri のひ孫まご
だよ。Sky って言い
うんだ。そっくりだろう?Kiri と一緒いっしょ
で、とっても大人お と な
しい、やさしいやつだよ。」
クリスマスのお休やす
みを終お
えて、夏美な つ み
とつばささん、そして、はなちゃんが町まち
へ帰かえ
る日ひ
です。はなちゃんは、大声おおごえ
でこういいました。
「ママ、ママ、Sky をはなのおうちに連つ
れて帰かえ
っていい?」
夏美な つ み
は、振ふ
り返かえ
って、おじさんの顔かお
を見み
ました。おじさんは、ウインクして、
「連つ
れて帰かえ
ってやるといいよ。ルークもびっくりするぞ。」
こうして、Kiri にそっくりな Sky が、夏美な つ み
とルークの住す
むウエリントンにやっ
て来き
ました。Sky を見み
た時とき
のルークの驚おどろ
きようは言い
うまでもありません。とても嬉うれ
しそうでした。
昔むかし
プロシアの王様おうさま
フレデリク大王だいおう
が、「犬いぬ
は人間にんげん
の一番いちばん
の親友しんゆう
」と言い
ったそうで
す。
夏美な つ み
とルークの人生じんせい
も、Kiri という親友しんゆう
がいたことで、何倍なんばい
も素晴す ば
らしいものに
なりました。ありがとう、Kiri!
さあ、これからは、夏美な つ み
の娘むすめ
のはなちゃんが、Sky から沢山たくさん
の幸しあわ
せをもらうの
でしょうね。
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