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国別障害関連情報 カンボジア王国 平成 14 3 (平成 21 3 月更新) 国際協力機構 国別障害関連情報については、現地で入手可能な情報をもとに取りまとめたものであり、デ ータ類の信憑性について JICA は責任を負わないものとする。

国別障害関連情報 カンボジア王国 Labor Organization JCIA Japan Cambodia Interactive Association JICA International Cooperation Agency Japanese JS-C Jesus Service, Cambodia

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国別障害関連情報

カンボジア王国

平成 14 年 3 月

(平成 21 年 3 月更新)

国際協力機構

国別障害関連情報については、現地で入手可能な情報をもとに取りまとめたものであり、デ

ータ類の信憑性について JICA は責任を負わないものとする。

目次

図表一覧 ······················································································································ⅱ

略語一覧 ······················································································································ⅱ

1.基礎指標

1-1 一般指標 ··············································································································· 1

1-2 障害関連指標(各種統計) ··············································································· 3

2.障害者の定義・種別と関連統計調査

2-1 障害者の定義・種別 ··························································································· 6

2-2 統計調査 ··············································································································· 8

3.障害関連政策

3-1 障害関連行政組織と役割 ··················································································· 9

3-2 障害関連法律・国際条約 ················································································· 13

3-3 障害関連国家計画・分野別政策······································································ 15

4.障害関連サービス

4-1 社会保障・福祉 ································································································· 25

4-2 保健医療 ············································································································· 26

4-3 教育 ····················································································································· 29

4-4 雇用・就業・職業訓練/教育·········································································· 31

5.障害者関連支援組織の活動

5-1 現地支援組織と活動 ························································································· 34

5-2 国際機関・他政府援助組織等の援助実績······················································ 34

[添付資料]

資料1現地支援団体リスト

資料2参考資料リスト

i

図表一覧

図 1 障害種別障害者の割合 ·························································································· 3

図 2 年齢別障害者数······································································································ 3

図 3 地域別障害者数······································································································ 4

図 4 原因別障害者の割合:男性 ·················································································· 5

図 5 原因別障害者の割合:女性 ·················································································· 5

図 6 中央行政組織図······································································································ 9

図 7 障害関連機関相関図 ···························································································· 10

図 8 地方政府行政組織図 ···························································································· 12

略語一覧

AARJ Association for Aid and Relief, Japan, Cambodia

ADD Action on Disability and Development

AFSC American Friend Service Committee

CBR Community Based Rehabilitation

CDPO Cambodia Disabled People’s Organization

CIOMAL Comite International de l’Ordre de Malte pour l’Assistance aux Lépreaux

CSES Cambodia Socio Economic Survey

CWARS Cambodian War Amputees Rehabilitation Society

CWDP Community Work with Disabled People

DAC Disability Action Council

EFA Education for All

FAO Food and Agriculture Organization

GDP Gross Domestic Product

GNP Gross National Product

HI Handicap International

ICRC International Committee of the Red Cross

ILO International Labor Organization

JCIA Japan Cambodia Interactive Association

JICA Japanese International Cooperation Agency

JS-C Jesus Service, Cambodia

MOEYS Ministry of Education, Youth and Sports

MOH Ministry of Health

MOP Ministry of Planning

MOSALVY Ministry of Social Affairs, Labor, Vocational Training and Youth

Rehabilitation

ii

iii

NGOs Non Governmental Organizations

NIS National Institute of Statistics

P&O Prosthetics and Orthotics

PHC Primary Health Care

SSC Social Services Cambodia

UCC United Cambodian Community Development Foundation

UNDP United Nation Development Program

UNESCO United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization

USAID United States Agency for International Development

VI Veterans International

WHO World Health Organization

国別障害関連情報カンボジア

1

1. 基礎指標

1-1. 一般指標

セクター別政府支出

保健医療 (対GDP比)1 6.0% 2006 年 教育 (対GDP比)2 1.6% 2006 年 社会福祉 (対公共支出) N/A

軍事・防衛(対GDP比)3 1% 2007 年

人口1

総人口 1.41 千万人 2006 年 女性人口比率 51.5%4 1999 年 都市人口比率 20.0% 2006 年 平均寿命(全体) 62.0 才 2006 年 男性 59.0 才 2006 年 女性 65.0 才 2006 年

医療 1

医療従事者数 医師 1 人あたりの人口 6,935 人 2000 年

看護師・助産師 1 人あたり

の人口 1,276 人 2000 年

1 WHO World Health Statistics 2008 2 UNESCO Institute for Statistics Global Education Digest 2008 3 World Bank World Development Indicators 2008 4 World Bank. World Development Indicators 2001

国別障害関連情報カンボジア

2

教育 5

教育制度 初等教育年数 6 年 2006 年 義務教育年数 9 年 2006 年 成人識字率 男 85.5% 2006 年

女 66.7% 2006 年 就学率

初等教育(純就学率) 全体 89% 2006 年 男 91% 2006 年 女 87% 2006 年 初等教育(総就学率) 全体 119% 2006 年 男 124% 2006 年 女 115% 2006 年 中等教育(純就学率) 全体 31% 2006 年 男 33% 2006 年 女 28% 2006 年 中等教育(総就学率) 全体 42% 2006 年 男 46% 2006 年 女 38% 2006 年 高等教育(総就学率) 全体 5% 2006 年 男 7% 2006 年 女 4% 2006 年

5 UNESCO Institute for Statistics, Global Education Digest 2008

国別障害関連情報カンボジア

3

1-2. 障害関連指標(各種統計)

障害種別統計

図1. 障害種別障害者の割合

知的・精神障害7.4%

重複障害2.8%

麻痺4.0%

その他16.0%

変形10.9%

言語・聴覚障害0.7% 言語障害

2.0%

聴覚障害4.3%

視覚障害11.5%

身体障害(一本以上の手足)

22.1%

切断(1本以上の手足)

18.2%

出典: Ministry of Planning/National Institute of Statistics. The Report on Socio-Economic Survey of Cambodia

1999

年齢別統計

図2. 年齢別障害者数

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

人数

0-45-9

10-1415-19

20-2425-29

30-3435-39

40-4445-49

50-5455-59

60-6465-69

70-7475-79

80-8485 以

上年齢

カンボディア 男性 カンボディア 女性

出典: Ministry of Planning/National Institute of Statistics. The Report on Socio-Economic

Survey of Cambodia 1996

国別障害関連情報カンボジア

4

障害者数に関する信頼できるデータは入手不可能であるが、障害者の概数は 16 万

9058 人(1999 年)であり、その内の訳 21%は子どもであるとされている6。子どもの

障害としては、ポリオによる障害、視覚・聴覚障害、脳性小児麻痺、知的障害が多い。

地域別統計

図3. 地域別障害者数

0

50,000

100,000

150,000

200,000

バンティアイミンチェイ州/地

バッタンバン州/地

カンポン・トム州/地

プノンペン

プーサット州/地

ラッタナキリ州/地

シェムレアップ州/地

スバイリエン州/地

他の都市

他の地方

出典: Ministry of Planning/National Institute of Statistics. The Report on Socio-Economic Survey of

Cambodia 1996

障害原因別統計

1997 年の障害の原因別統計によると、都市および農村ともに疾病が障害の最大の原

因となっている。ただし、プノンペン(Phnom Penh)では先天的原因による障害が最

も多くなっている。また、障害の原因の内、地雷の爆発による障害の割合はプノンペ

ン、プノンペン以外の都市、地方においてそれぞれ 6.7%、10.7%、7.8%となってい

る。また、戦争や紛争による障害の割合は高く、同様にそれぞれ 11.6%、16.4%、12.3%

となっている。

6 Ministry of Planning/National Institute of Statistics. The Report on Socio-Economic Survey of

Cambodia 1999

国別障害関連情報カンボジア

5

図4. 原因別障害者の割合:男性

疾病27.1%

先天性19.8%

戦争又は紛争18.3%

事故13.7%

地雷の爆発11.5%

不明5.2%

その他4.4%

図5. 原因別障害者の割合:女性

戦争又は紛争2.3%

不明5.7%

疾病35.2%

地雷の爆発1.7%

事故11.7%

先天性33.9%

その他9.5%

出典: Cambodia Socio-Economic Survey (CSES), 1997, NIS, MOP

国別障害関連情報カンボジア

6

2. 障害者の定義・種別と関連統計調査

2-1. 障害者の定義・種別

現在、法律制定作業部会により作成されている「障害者の権利」に関する法案の第

2 条では、「障害者」を「身体の器官や能力を喪失している、または重度の精神障害を

持つ人」と定義し、具体的には手足の喪失や四肢麻痺、視覚障害、聴覚障害や精神障

害等、社会活動の参加に極度の影響を与える状態にある人を指している。障害者は保

健省により発行される障害者手帳を持つことを義務付けられている。また、障害の分

類と程度は、政府の通達により決定される。7

戦傷者に関しては、政府により定められた障害の分類と重度があったが、障害の一

般的な分類は、2000 年 3~6 月に行われた「カンボジアの障害者の状況に関する社会・

経済・行動的予備調査」8によって初めて以下のように分類された。

1. 視覚障害

2. 聴覚障害

3. 言語障害

4. 運動障害

5. 身体障害

6. 精神障害

7. 知的障害

8. 発作

上記 8 分類は公式の分類ではない。しかし現在、世界保健機関(WHO)と共に障害

者分類・定義の修正の努力がなされている。

カンボジアの歴史は、広い世代に渡り、様々な障害を持った多くの人々を生み出し

てきた。教育施設や保健サービス、社会サービス等は崩壊し、障害者の圧倒的なニー

ズに対応するには財政および人的資源が不足している。また、リハビリテーションサ

ービスを受けられる障害者は限られており、特に障害を持った女性や子供にはほとん

ど行き届いていない。政府の長期目標は、統合・参加・分権型のサービス提供に基づい

7 「障害者の権利」に関する法案 第一条第二項 2000 年 8 2000 年 12 月『カンボジアの障害者の状況に関する社会・経済・行動的予備調査』

国別障害関連情報カンボジア

7

た、障害の予防およびリハビリテーションのための国家政策の立案、実行、管理であ

る。また、短期目標は、障害者が尊厳を持って生活し、地域に融合することができる

ように、できるだけ多くの障害者が適切なサービスや支援を受けられる保障をするこ

とである。

登録

カンボジアでは障害者の普遍的な登録システムは存在していない。

障害者に対する一般概念

カンボジア人の 85%以上は上座部仏教を信仰しており、人々はカルマ(善行をつめ

ば良いことが訪れ、悪行を行えば悪いことが訪れるという概念)を信じている。上座

部仏教の理論や教えでは障害はまさに人々が前世にて犯した悪行の結果であると考え

られている。一方で人々は弱者に対して慈悲を持つことを教えられており、また前世

の行いとは別に他人に対して善行をつめば、幸運が自分に訪れるとの信仰もある。そ

れゆえ、大抵のカンボジア人は障害を持った貧しい人々や物乞いに対して寄付や施し

を与えることを好む。しかし、長期化した内戦や国土の荒廃によるコミュニティー精

神の崩壊により、その様な人々の思いやりや支援の精神は失われつつある。上記の仏

教の概念は障害者を支えるには良いシステムのように見えるが、その他のアプローチ

がもっと上手に障害者が社会的平等のために立ち上がらせられるし、あらゆる意思決

定に参画するためには、障害者のエンパワーメントを助けるためにかなり注意を払わ

ねばならない。

障害の認識

障害者の機会平等と社会活動への参画を制限している主要な要因は、障害者が社会

の完全な構成員として機能しないという認識や慣例が存在し、障害者の能力が認知さ

れていないことにある。障害者は社会・経済的な面から排斥、差別されており、資源へ

のアクセスも限られている。障害者自身は、これらの差別により完全で平等な社会参

画が制限されていることを意識している。また、差別根絶のための民間部門や地域の

動員や、国家開発プログラムに障害者を含めることに関する大衆意識や大衆教育キャ

ンペーンは行われていない。

現在、障害の認識に関するプログラムについて、障害活動評議会により研究が行わ

れている。その目的は、いくつかの団体により行われている障害の認識に関する既存

の活動を評価し、理想と現実との格差を確認し、障害の認識を高めるプログラムの包

国別障害関連情報カンボジア

8

括的な国家戦略計画を組織的に作成することにある。

2-2. 統計調査

国勢調査

【タイトル】 国勢調査

【最新版発行年】 1998 年

【障害関連項目】

この国勢調査は全国レベルの住民の社会・経済的状況に関する状況の把握を目的とし

て行われたが、障害者に関するデータは最低限しか集められていない。その内容に関

しては、障害に関する国勢調査と分けられておらず、障害者の登録システムも存在し

ていない。

その他の統計

【タイトル】 カンボジア社会・経済調査

【最新版発行年】 1999 年 計画省

【障害関連項目】

障害種別、障害の原因別の全国統計を出している。各年で定義や統計の取り方に相違

がある。

国別障害関連情報カンボジア

9

3. 障害関連政策 3-1. 障害関連行政

図 6. 中央行政組織図

中央政府行政

内閣 首相

【中央政府行政組織図】

教育・青年・ スポーツ省

職業訓練・青年リ

ハビリテーション

社会福祉・労働・

保健省 女性・ 退役軍人省

地方開発省

出典: The Phnom Penh Post. Cambodia:

教育・青年・ スポーツ省 長官

保健省 長官

社会福祉部

州オフィス

社会福祉・労働・ 職業訓練・青年リハ

ビリテーション省

リハビリ テーション部

児童福祉部

身体リハビリ

テーション局

障害児 サービス局

CBR 局

障害者のため

の職業訓練局

職業訓練 センター

州リハビリ テーション

ワーク ショップ

障害者のため

の職業斡旋局

社会福祉・労働・ 職業訓練・青年リハビリテ

ーション省 長官

ノンフォーマル 教育部

中等教育部

教育・青年・ スポーツ省

学校保健部

特殊教育 オフィス

保育園・小学校 教育部

州オフィス

技術 長官 技術 長官

伝染病管理部

予防薬部

国立センタ-国立病院

技術訓練センター

州保健オフィス

家族開発部

保健部

退役軍人開発部

女性・ 退役軍人省州

オフィス

地方ヘルスケア

地方水供給部

地方経済開発部

州オフィス

地方開発省

November 12-25, 1999

国別障害関連情報カンボジア

10

【障害関連担当機関】

【機関名】 【概要】

社会問題・退役軍人・

青年リハビリテーショ

ン省

リハビリテーション局が障害者関連の担当局であり、6つの

課とユニットからなる。身体障害リハビリテーション課、障

害者職業訓練課、地域における障害者のための活動課、職業

斡旋課、リハビリテーションセンターと作業所、障害者職業

訓練センターである。

教育・青年・スポーツ省 「万人のための教育(EFA: Education for All)の原理に基づく

障害児も含めたインクルーシブ教育を導入する。初等教育局

がインクルーシブ教育を担当している。初等教育局には特別

教育課があり、この特別教育課が特別なニーズを持つ障害児

に対するプログラムを担当している。

保健省 感染対策局、予防医学局などがあり、予防医学局には、災害

支援・環境保健課、口腔保健課、非感染症対策課があり、非

感染症対策課のもとに、傷害・障害予防係と医療リハビリテ

ーション係がある。

【国内調整委員会の設置状況】あり

【委員会名称】 障害活動評議会(DAC: Disability Action Council)

【行動課題と実施状況】

障害活動評議会は社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省の管轄下で、関連

省庁および関連 NGO の代表、そして障害者の福祉向上に携わっている個人から成る

半官半民の国家レベルの調整機関として、1997 年に設立された。政府機関や NGO と

の協働作業により障害者政策や計画の策定を準備する機関である。

障害活動評議会 事務局 事務局長

管理 技術 サポート サポート スタッフ スタッフ

障害活動評議会 執行部会 社会問題・退役軍人・青年リハビリ

テーション省、保健省、教育・青年・

スポーツ省、NGOs 障害データベース W.G。

立法化 W.G.

障害児委員会

女性障害者委員会

持続性委員会

訓練委員会

地域に根ざしたワーカー訓練 W.G.

医療リハビリテーション W.G.

アドバイザリー

委員会

財政管理委員会

顧問/コンサルタント

職業訓練/職業斡旋/ 所得創出 委員会 障害者と共に活動する

コミュニティー・ワーク委員会 身体的リハビリテーション

委員会

障害意識 W.G。 図 7. 障害関連機関相関図

国別障害関連情報カンボジア

11

W.G.: Working Group

出典: MOSALVY. Prakas

No. 308. Cambodia: 1999

車椅子 委員会 P & O 委員会

理学療法 委員会

年 設立/経緯 実施計画

1995 1. タスク・フォースを形成する

ことに関する社会問題・退役

軍人・青年リハビリテーショ

ン省と NGO の合意。

1. 現状の評価。

2. 指針となる基準の作成。

3. 主要問題に関する情報の分析および確認。

4. 主要問題に優先順位付け。

5. 優先問題に関する勧告および計画の策定。

6. 政府および NGO へのタスク・フォースのリポート提出。

1997 1. 関連省庁および関連 NGO の

代表、そして障害者の福祉向

上に携わっている個人から

成る半官半民の国家レベル

の調整機関、「障害活動評議

会」の設立

2. 障害活動評議会の活動は、障

害者の福祉に影響を与える

全ての問題に関する政府や

政策決定者への専門的アド

バイスおよびリハビリテー

ション、障害者の機会平等お

よび予防に関する包括的な

国家レベルの方策の持続的

発展を促進するために障害

問題に関して国家レベルで

協議する場の提供である。

1. ビジョン:

個人および社会が「障害者は全てのカンボジア国民と同

じ権利と義務を持っている」と認識する。障害者が自分

達の能力に基づき差別のない生活をおくるために、社会

に参加する機会を平等に与えられる。

2. 使命:

障害者に必要なサービスおよび他人同様に社会で平等に

雇用機会や生活の質を享受する権利を保証、調整する。

3. 役割:

障害やリハビリテーション分野の人のための国家計画を

策定、実施、モニタリング、評価する様、政府、国家機

関、国際機関、ビジネス・宗教・ローカルコミュニティー

を動員する。また、障害活動評議会は、障害分野の発展

を達成するための方法に関する協議を行い、合意が得ら

れるフォーラムを提供する。

1998 1. USAID/Leahy 戦争被害者基

金からの資金提供と社会問

題・退役軍人・青年リハビリ

テーション省によるオフィ

ス・スペース、電気、水道の

供給により、障害活動評議会

事務局が設置され、1999 年

10 月 26 日付省庁宣言のも

と、正式に機能している。

1. 障害およびリハビリテーション分野のための行動プログ

ラムを準備する。

2. 委員会やワーキング・グループの協力を得たプロジェク

トの優先順位付け、目標および選定を行い、アドバイス

を行う。

3. 活動の調整、技術指導および必要な指示の提供の再検討

に関し、障害に関連する省庁、機関、NGO および援助機

関との連絡を保つ。

4. 必要である目標内の他の機能および障害活動評議会の機

能を実施する。

国別障害関連情報カンボジア

12

年 設立/経緯 実施計画

1999 1. 国家活動計画の第一草案の

策定:障害およびリハビリテ

ーション分野のためのカン

ボジア行動計画。

1. サービスやプログラムの組織的な調整を確立する。

2. 主要分野に優先順位をつける。

3. サービスがより多くの障害者に提供される。

4. サービスの重複を避け、ギャップを認識する。

5. 適切なサービスが提供されていない障害の分野へのサ

ービスを向上させ、確立する。

6. カンボジア内外からの将来の支援を計画する。

7. 合理的な予算配分を実施する。

8. 人的および財政的資源の適切な活用を導く。

9. 人的資源のギャップを認識する。

10. 包括的なモニタリング、評価およびレポート・システム

を確立する。

11. プログラムやサービスのインパクトを調査する。

12. プログラムの技術的・財政的持続性を確実なものとす

る。

* 包括的・持続的なリハビリテーションおよび地雷被害者を含めた障害者向けの社会・

経済再統合プログラム・サービスは、関係省庁や NGO、ビジネス分野、宗教界、障

害者を含めた協同パートナーシップにより保障されている。

地方政府行政

【地方政府行政組織】 図 8. 地方政府行政組織図

関係省庁

社会福祉・労働・

職業訓練・青年リハビリテーション省 州事務所

教育・青年・スポーツ省 州事務所

地方開発省州事務所

保健省州事務所

女性・退役軍人省 州事務所

県/村教育・青年・スポーツ省 (183地区)

現地公立学校

州リハビリテーションセンター

(16ヶ所)

職業訓練センター

(8ヶ所)

コミュニティーワーカー

多数の小学校群

県/ 村社会福祉・労働・

職業訓練省 事務所

女性・退役軍人省 県事務所

地方開発省県事務所

州病院 (23ヶ所)

地方訓練センター

(4ヶ所)

業務実施地区

(183ヶ所)

ヘルスセンター

(116 ヶ所)

リファーラル病院

(42ヶ所 )

地方・州政府

(24州/

中央直轄市 )

国別障害関連情報カンボジア

13

出典: 1. MOSALVY. Report on Work Result of the Year 2000 and the Future Objectives.

Cambodia: 2001

2. MOH. Health Situation Analysis 1998 and Future Direction for Health Development 1999-2003.

Cambodia: 1999

3. MOEYS. Education in Cambodia. Cambodia: 1999

4. National Task Force. The Situation of Disabled Person in Cambodia. Cambodia: 1996

【障害関連担当機関】

【機関名】 【概要】

地方・州政府 一般的な運営は地方・州政府を通して行われる。

3-2. 障害関連法律・国際条約

障害関連法律

【法律名】 カンボジア王国憲法

【施行年】 1993 年(1999 年に修正)

【概要】

憲法は第 3 章にてカンボジア国民の権利と責任を、第 6 章にてカンボジア国民の教育、

文化、社会福祉を規定している。

【法律名】 労働法

【施行年】 1997 年 1 月 10 日

【概要】

労働法は雇用主と被雇用者の間の契約合意に関して定めており、この中には障害者も

含まれる。

【法律名】 制令 NS/RKM/0295/16

【施行年】 1995 年 2 月 25 日

【概要】

カンボジアの全ての地雷と不発弾除去の活動を管理、運営、調整するカンボジア地雷

活動センターの設立を規定している。

【法律名】 障害者の権利保護及び促進法案(Draft Law on the Protection and

the Promotion of the Rights of Persons with Disabilities)

【施行年】 法案(法案作成は 2008 年 1 月)

国別障害関連情報カンボジア

14

【概要】

障害者の権利保護と促進を目的とした法律案。14 章まであり、リハビリテーション・

予防といった医療関係事項から、生計、公共施設へのアクセス、教育、雇用と職業訓

練、就業のインセンティヴ、政治参加(投票及び被投票権)など多岐に亘り、違反に

対する罰則規定もある。

原案は、2002 年に「障害者権利法案(Draft Law on Rights of People with Disabilities)」

として DAC により作成され、省庁大臣評議会(Council of Ministers)に提出されたが

採択されず、修正後に 2006 年末までの採択を期して再度提出されたが、採択されなか

った。DAC は、社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省と協同で当法案を新

案として 2008 年 1 月に作成したが、その後の進展は不明。

国際条約

【条約名】 職業リハビリテーション及び雇用条約(障害者)(Vocational Rehabilitation and

Employment (Disabled Persons) Convention)

【発効年】 1985 年(国連採択は 1983 年)

【目的】 障害者の職業リハビリテーション及び雇用の促進に関する国際条約

【批准・署名の状況】 未批准

【概要】

「条約加盟国は、障害者の職業リハビリテーションと雇用に関し、国家政策を策定し、施行し、定期的

に見直しを行う。その政策は、全ての種類の障害者が適切な職業リハビリテーションの方法を受けられる

ようにし、開かれた労働市場においてに障害者の雇用機会を促進することを目的とする」など、障害者が

平等に職業リハビリテーションを受けられるようにするよう規定している。

【条約名】 障害者権利条約(Convention on the Right of Persons with Disabilities)

【発効年】 2008 年(国連採択は 2006 年)

【目的】 障害者の人権と尊厳を促進し、保護する

国別障害関連情報カンボジア

15

【批准・署名の状況】 2007 年 10 月に条約及び選択議定書に署名

【概要】

障害者権利条約は、50 条からなる条約と 18 条からなる選択議定書で構成されている。条約の第 3 条に、

条約の原則が以下のように記されている。9

a.固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む)及び人の自立に対する尊重

b.非差別(無差別)

c.社会への完全且つ効果的な参加及びインクルージョン

d.差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容

e.機会の平等(均等)

f.アクセシビリティ

g.男女の平等

h.障害のある子供の発達しつつある能力の尊重、及び障害のある子供がそのアイデンティティを保持

する権利の尊重

尚、選択議定書は、障害者権利条約に関する委員会に関して規定している。

3-3. 障害関連国家計画・分野別政策

国家計画

【計画名】 第 1 次 5 ヶ年社会・経済開発計画

【施行年】 1996 年~2000 年

【障害関連施策の内容】

1. 障害およびリハビリテーション分野において、社会サービス提供に関する統合

的・参加的・分権的アプローチに基づいた障害予防およびリハビリテーション促

進に関する政府の方針を示す。

2. 政府が最優先とする目標は、できるだけ多くの障害者が尊厳を持って生き、社会

活動に参画できるように適切なサービスや支援を行うことである。10

3. 政策・戦略の立案に貢献するために障害者の状況分析を行う。

4. 職業訓練プログラムの実施やモニタリング・評価システムの開発および、障害に

関する知識の普及により、障害予防につながる大衆意識や大衆教育プログラムを

実施する。

【計画名】 カンボジア アクション・プラン

【施行年】 不明

9 「川島聡=長瀬修 仮訳(2008 年 5 月 30 日付)」より 10First 5 Year Socio-Economic Development Plan (1996-2000), Ministry of Planning, 1996, p.34

国別障害関連情報カンボジア

16

【障害関連施策の内容】

主な目的は障害者福祉の方向付け、障害やリハビリテーション分野の概要把握、障害

者分野への投資促進である。アクション・プランは、各組織がカンボジアの障害者の

ニーズに対応するために個別のプログラムやプロジェクトを実施する際に、より柔軟

に対応できるよう以下の方針を掲げている。

1. サービスやプログラムの組織的整合性を確立する。

2. 重点分野のプロジェクトを優先する。

3. 障害者が利用できるサービスをより広範囲の障害者に提供する。

4. サービス間の質の格差を把握する。

5. 現在、様々な種類の障害に適切に対応していないサービスを改善する。

6. カンボジア内外からの将来の支援を計画する。

7. サービスの重複を避ける。

8. 合理的な予算配分を行う。

9. 人的・財政的資源の適切な利用および人的資源の格差を把握する。

10. 包括的なモニタリング・評価システムを確立する。

11. プログラムおよびサービスのインパクトを評価する。

12. プログラムおよびサービスの技術的・財政的持続性を確保する。

【計画名】 社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省行動計画

2004-2008

【施行年】 2004-2008 年

【障害関連施策の内容】

重点課題の一つとして「障害とリハビリテーション」が挙げられ、以下の8つが、具

体的な推進項目として挙げられている。

1. 障害者権利法の制定を推進する

2. 障害者のための政策を実施する

3. リハビリテーションセンターの強化

4. 職業訓練の実施、雇用の促進

5. 障害者のコミュニティ開発戦略の策定

6. 障害者のスポーツを推進する

7. 障害者の日の行事を行う

8. 障害者活動評議会(DAC)の強化

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分野別政策

1)保健医療

【関連施策名】 準制令 No. 37 号:プライマリー・ヘルス・ケア(PHC)に関する

省庁横断的委員会の設立

【施行年】 1995 年 4 月~

【施策の目的/概要】

1. PHC に関する国家政策の立案および実施を支援する。

2. PHC の問題の理解および PHC に関する国家政策実施を支援する。具体的には

a. PHC に関する国家政策を通して保健を促進する。

b. カンボジアでの PHC の情報および保健や地域開発に影響を与える要因を把握す

る。

c. カンボジアの人々の保健および福祉に影響を与える要因分析のための概念的フレ

ームワークを確立する。

3. カンボジアの PHC 政策は国際的に認知されている PHC の原理に基づいている。こ

れらはカンボジアにおける全ての PHC の活動にとって本質的な特徴であり、活動

を実施する際に、全ての機関および活動の参加者は政府の政策に関する以下の 5

つの原則に従う。

a. 障害者の普遍的なアクセシビリティーおよびニーズの充足

b. 保健および開発における地域の参加

c. 保健に関するセクターを超えた活動

d. 適正技術およびコストパフォーマンス

e. 持続発展性、モニタリングおよび評価

【関連施策名】 視覚障害予防のための国家サブ委員会

【施行年】 1994 年 12 月

【施策の目的/概要】

国家計画:2005 年までに視覚障害を 0.5%までに減らすために提供される眼科ケアサ

ービスを目的とした眼科ケアの開発。(1995 年~2001 年)

1. 人的資源開発、施設、資源、財源の導入、マネージメント、白内障やトラコーマ、

ビタミン A の不足など風土病の特別なコントロール。

2. 国家計画の第 2 フェーズ。(1997 年~2001 年)

3. 眼科医や眼科の看護婦(士)の訓練、眼科医および眼科の看護婦(士)の海外訓

練、州でのプライマリー・アイケア・ワーカーの訓練および検眼技術者の訓練。

4. 眼科ケア・サービス、現場活動および白内障治療プログラムを支援するためのガ

イドラインおよび規約の整備。

【関連施策名】 保健省によるポリオ根絶ユニット(WHO の支援有り)

【施行年】 1994 年~

【施策の目的/概要】

ポリオによる障害を予防するためのカンボジア乳児へのポリオワクチンの投与

国別障害関連情報カンボジア

18

【関連施策名】 障害啓発モジュール

【施行年】 2000 年~

【施策の目的/概要】

保健省の協力のもと、障害に対する認識に関連するモジュールが開発された。このモ

ジュールの主要な目的は人々が障害への早期介入および治療のためのリファーラル機

能を強化するため、障害の認識を高め、促進することである。

【関連施策名】 宣言 No. 10 PRKNN. 女性・退役軍人省およびリハビリテーショ

ンの組織的構造の社会的活動

【施行年】 1992 年 1 月

【施策の目的/概要】

1. リハビリテーション制度の定義。

2. リハビリテーション制度の役割、責任および組織的構造。

3. 国立地域リハビリテーション・センターの役割、責任、組織的構造およびフレーム

ワーク。

4. 地域のリハビリテーション・センター。

5. 地域センターの一部ではない地方・州の身体的補助ワークショップ。

【関連施策名】 障害活動評議会身体的リハビリテーション委員会(政府と NGO

の共同)

【施行年】 1997 年~

【施策の目的/概要】

委員会の目標は効率的かつ効果的に障害を持った退役軍人や地雷の被害者も含めた障

害者に対し、身体的リハビリテーション・サービスを提供することである。具体的な目

標は以下のとおり。

1. 身体的リハビリテーションにおける共通の目標と目的を設定する。

2. サービスの重複を避ける。

3. 情報や経験、成功例を共有する。

4. 問題や格差、提案を認識し、より良いサービスを提供する。

【関連施策名】 ハンディキャップ・インターナショナルの支援を受けているパラ

テトラ・リハビリテーション・センター(Para-Tetra Rehabilitation

Center)(バッタンバン州)の設立に関する宣言(Prakas)

【施行年】 1994 年 1 月 25 日

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19

【施策の目的/概要】

1. 地雷の被害者を含め、脊椎に損傷のある患者へのリハビリテーション・サービスの

提供。

2. 医療ケアや理学療法、作業療法の提供。

3. 器具、社会的統合およびスポーツの提供。

4. 技術や管理、通信や予算に関するスタッフ・トレーニングにおける社会問題・退役

軍人・青年リハビリテーション省への支援。

【関連施策名】 国立リハビリテーション・センター[キエン・クレアン(Kien

Khleang)、プノンペン]

【施行年】 1998 年

【施策の目的/概要】

1. CIOMAL (Comite International de l'Ordre de Malte pour l'Assistance aux Lépreaux) によ

り支援されているハンセン病を持った障害者への外科的リハビリテーション。

2. ローズ(ROSE)により支援されている目および顔に障害を持つ人々への外科的リ

ハビリテーション。

3. VI (Veterans International) により支援されている身体的リハビリテーション・サー

ビスおよび車椅子の生産・流通。

4. 難民を助ける会により支援されている職業訓練。

5. 難民を助ける会により支援されている車椅子の生産および流通。

【関連施策名】 プノンペン国立理学療法センターの設立に関する社会問題・退役

軍人・青年リハビリテーション省宣言 No. 175

【施行年】 2000 年 5 月 12 日

【施策の目的/概要】

1. 器具および財務資源の管理

2. 年次計画および行動計画の策定

3. 障害者のリファーラル(照会)のための関連施設とのネットワーキング

4. 障害者に対する理学療法の提供

5. 障害者を病院や他のセンターに照会するための命令の発行

6. 利用可能なサービスのための障害者へのアドバイスやカウンセリングの提供、モニ

タリングおよびフォローアップ

【関連施策名】 国際赤十字委員会( ICRC: International Committee of the Red

Cross)ボエウン・トラベク(Boeung Trabek)の支援による部品工場

設立に関する社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省

宣言 No. 757

【施行年】 2000 年 5 月 12 日

国別障害関連情報カンボジア

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【施策の目的/概要】

工場は社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省、リハビリテーション部の直

接の管理・経営下にある。カンボジア全土の障害者に十分な P&O (Prosthetics and

Orthotics) を生産することを目的とし、全てのリハビリテーション・ワークショップや

センターに供給するための補そう具部品生産に関する計画立案、調整、実施、モニタ

リングおよび評価を行う。

【関連施策名】 社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省、リハビリテー

ション部、CBR 局

【施行年】 1998 年

【施策の目的/概要】

CBR 活動全体の責任を持つ。

【関連施策名】 障害者と共に行うコミュニティーワーク(関係省庁と NGO の連

携により実施)

【施行年】 1993 年~

【施策の目的/概要】

1. 自助グループの形成および社会・経済的支援

2. 地域に根ざした社会・経済リハビリテーション

3. リハビリテーション・センター、地域、主な NGO との連携

4. リファーラル、フォローアップおよび緊急補助金

5. 自助グループの連帯の形成

6. カウンセリング、アドボカシー、リファーラル

7. 意識化、情報およびアドボカシー

8. コミュニティー教育

9. リーダーシップ訓練コース

10. 依頼人や家族とのリハビリテーション作業、子供のフォローアップ、技術的支援、

リファーラル

11. 聴覚障害児のためのパイロット・プロジェクト

12. 訪問およびフォローアップ・プログラム

13. 外科のリファーラル

14. 障害者のサービスへのアクセスの促進

15. 健康や衛生、所得創出や自家菜園、貸付けやカウンセリングなど特別なニーズを持

った老人への支援

16. 特別なニーズを持つ子供、ポリオ、地雷犠牲者、湾曲足、脳性麻痺への在宅ケア

17. 教育やヘルスケアなどへのアクセスの提供

2)教育

【関連施策名】 障害者のための教育プログラム

【施行年】 1993 年~

国別障害関連情報カンボジア

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【施策の目的/概要】

1. プログラムは主に NGO により実施され、障害児に焦点が置かれている。

2. プログラムは主にプノンペンおよび他の都市エリアに集中しており、現在、身体障

害および知覚障害を持った障害児だけに提供されている。

3. 全ての特殊学校は、最終的には統合教育を主流にすることを目指している。

【関連施策名】 特殊教育オフィス

【施行年】 2000 年 1 月~

【施策の目的/概要】

障害児、女子、少数民族、およびストリート・チルドレン等の弱者グループへの教育機

会を設ける。

【関連施策名】 カンボジア障害児の特殊ニーズを満たすための教育機会を設け

るプロジェクト

【施行年】 1999 年 9 月~

【施策の目的/概要】

本プロジェクトは教育・青年・スポーツ省の協力のもと、障害活動評議会により調整さ

れており、政策策定および意識の向上に焦点を置いている。

【関連施策名】 教育セクター支援プログラム 2004-2006(EESP)

【施行年】 2004 年~2006 年

【施策の目的/概要】

教育省の政策の一つ。インクルーシブ教育を入れるように明記され、この施策が策定

されたことにより、省内での推進の根拠も得られ、資金を受けられれば全国に拡大し

ていく意向である。

インクルーシブ教育は、州実施委員会が各州で形成され、郡教育事務所、クラスター、

州社会問題局、NGO などが実施している。教師がインクルーシブ教育の教授法につい

て DAC の研修を受けて実施している。省内にはインクルーシブ教育運営委員会があ

る。

3)労働・雇用・職業リハビリテーション

【関連施策名】 障害者のリハビリテーション・職業訓練・職業斡旋の主要ガイド

ラインに関する内閣決議 No 181/SSR

【施行年】 1990 年

【施策の目的/概要】

障害者を対象とする職業/技術訓練や就業の機会の提供、貸付けに関する優先権および

減税などの税制面におけるインセンティブを提供する。

【関連施策名】 内閣決議 No 181/SSR および No 02/PRNN の実施のための省庁

の布告

国別障害関連情報カンボジア

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【施行年】 1991 年

【施策の目的/概要】

州リハビリテーション・センター、職業訓練センターの設立および障害者への就業機会

の提供。

【関連施策名】 国立障害者センターの設立に関する省庁の決議

No757/MOSALVA

【施行年】 1997 年

【施策の目的/概要】

障害者を対象とする職業斡旋およびリファーラル・サービスに関するデータの作成、

および障害者のためのケータリング・サービスの提供。

【関連施策名】 国立障害者センターの設立に関する社会問題・退役軍人・青年リ

ハビリテーション省

宣言 No. 757

【施行年】 1997 年 5 月 10 日

【施策の目的/概要】

国立障害者センターの主要な業務はリハビリテーション・サービスの提供および、障害

者が尊厳を持って生活し、社会活動に完全に参加できることを目指した障害者への雇

用機会の提供を通して経済状況を改善することである。

【関連施策名】 社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省、リハビリテー

ション部、職業訓練局(カンボジア全土で職業訓練センター8 ヶ

所)

【施行年】 1998 年

【施策の目的/概要】

職業訓練局は社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省リハビリテーション部

の傘下にある局であり、その業務内容は以下の通りである。

1. 全国に 8 ヶ所ある職業・技術訓練センターを運営、調整、連絡を行う。

2. 政府機関に就職した技術訓練プログラムの卒業生の、データ/統計を集めて進捗レ

ポートを作成する。

3. 職業訓練センターの材料や器具の輸入/輸出を促進する。

4)その他の関連政策

【関連施策名】 1. 制令 NS/RKM/0295/16

2. 制令

【施行年】 1. 1995 年 2 月

2. 2000 年 9 月

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【施策の目的/概要】

1. カンボジアにおける地雷および不発弾に関する全活動の運営、管理、調整に責任を

持つ、「カンボジア地雷活動センター」の設立。

2. 以下の主要な役割を担うカンボジア地雷活動および被害者支援機構の設立。

a. 地雷除去および不発弾処理活動の運営

b. カンボジア地雷被害者への支援

【関連施策名】 カンボジアの武器規制のための政府努力11

【施行年】 1. 1992 年 1 月

2. 1995 年 7 月

3. 1996 年 7 月

4. 1998 年 10 月

5. 1999 年 4 月

【施策の目的/概要】

1. 規則に反する武器保有および制服着用に関する法律は、許可なしの爆発物・弾薬・

武器の製造・保持・販売に対し、1 年~5 年の投獄を科す。

2. 非合法の武器および爆発物の管理に関する副制令 62 号は、武器および爆発物の許

可発行の責任を国防省と内務省に分けている。また、副制令 62 号は武器を保持で

きる軍や政府の職員の階級やレベルを特定している。

3. 内務省は役人や警察、市民の武器・爆発物許可を取り消す制令を出す。

4. 国防省は兵士が非合法に所有している武器を返還するように、直接命令を下してい

る。プノンペンで兵士が任務外で武器を携帯し、命令なしに武器を使用することを

禁じている。

5. 内務省は、全ての武器および爆発物の輸入・生産・購入・流通・販売および使用に関す

る運営および管理の副制令 38 号を発行する。

【関連施策名】 公務員のための退職年金および障害体制に関する副制令

No 059/ANK/BK

【施行年】 1997 年

【施策の目的/概要】

障害者年金の最低および最高金額は純給与額の 50%~65%となっている。最高金額は

仕事中の事故による障害に適用される。また、年金金額の計算は年功序列制度に基づ

いている。

【関連施策名】 ハンディ・スポーツの日の制定に関する内閣決議 No 15/SSR

【施行年】 1995 年

【施策の目的/概要】

障害に対する認識を向上させ、障害者の能力に注目することを目的として設けられた

ハンディ・スポーツの日に関する省庁横断的委員会の設立。

11 2001 年 2 月 19 日月曜日『The Cambodia Daily』

国別障害関連情報カンボジア

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【関連施策名】 カンボジア・パラリンピック委員会の設立に関する副制令

No 70/ANK/BK

【施行年】 1997 年

【施策の目的/概要】

国家および国際レベルでスポーツ活動やイベントを組織する。

【関連施策名】 公務員、国家警察、年金受給者および障害を持った公務員の補助

的給与に関する副制令 No 028/ANK/BK

【施行年】 1999 年

【施策の目的/概要】

公務員、軍隊、国家警察、年金受給者、障害を持った公務員の純給与の 30%の増加に

関する認可(1999 年 5 月発効)。

国別障害関連情報カンボジア

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4. 障害関連サービス

4-1. 社会保障・福祉

カンボジアでは、公務員対象の年金制度が存在する。貧困者や障害者に対する現金

給付の制度はなく、公的扶助は行われない。社会的サービス実施については国際 NGO

が社会省と覚書(MOU)を交わして特定された地域に入り込む形で行われている。

現在、障害者手帳が作られているが、退役軍人者用と一般公務員用のみである。重

度の障害者は退役軍人で毎月7万リエルから 20 万リエルを受給し、一般公務員は、3

万リエルから12万リエルを受給している。一般市民の障害者に対しては特に社会保

障制度はない。障害者権利法の草案には障害者が障害者手帳を持つように義務付けら

れている。

1997 年には国立障害者センターが設立され、センターが提供するサービスを通して

障害者の社会活動への参加が促進されている。国際障害者の日(12月8日)が主な

国家レベルで行う広報活動の日である。また、国際女性の日(3月8日)、国際子ども

の日(6月1日)、国際視覚障害者の日(9月4日)、国際人権の日(12 月 10 日)にも同

じような障害者理解のための活動が行われている。これらの主だった行事は、社会問

題省を中心に NGO の ADD、HI-B、OEB、DDSP、CWARS、LMDS などが参加し、協

力して行っている。2004 年の障害者年では特にハンディキャップを持つものとしてで

はなく、障害者の個人の能力を積極的にアピールすること、また、女性と子どもの障

害についての意識化を進め、また参加を促進することが目的として DAC の会議によ

り定められた。障害者の意識と能力の向上に向けて、政府はスポーツ活動を推進して

いる。毎年、ハンディ・スポーツの日(Handy-Sports Day)のスポーツ活動を通して障

害者は能力を発揮し、これは障害者の雇用の促進にも間接的に貢献している。

カンボジアにおいて最も社会的立場の弱いグループの一つである障害者は、教育、

技術・職業訓練、職業斡旋、所得創出の機会、そして他の利用可能な社会サービスへ

のアクセスが限られている。結果として、多数の障害者が極度の貧困状態にあると言

っても過言ではない(カンボジアにおける「貧困」の定義に関しては、巻末の用語説

明を参照)。所得創出は障害者の尊厳や自信の確立に寄与するだけでなく、貧困削減や

地域開発に直接関係がある。カンボジアの建設物の環境は障害者にとって障害となっ

ている場合が多い。病院や学校、大多数の公共建築物の出入り口は障害者がアクセス

できないものとなっている。段差、トイレ、ドアの補助レール、平らでない歩道、段

国別障害関連情報カンボジア

26

差のある排水口など、改善が必要な設備上の問題点として挙げられる。「DAC 戦略計

画 2002 年から 2005 年またそれ以後」には、障害者、高齢者、政府関係者、専門家、

民間企業代表者からなるアクセシビリティに関するタスクフォースを作り、カンボジ

ア王国建築大学中心にガイドラインと建築基準を作るようにしている。現在、建築許

可の責任の所在は明確にされていない。また、障害に関する法律は未だ草案の段階に

ある。そのため、現時点でアクセシビリティに関する実施およびモニタリングを担当

する政府機関は特定されていない。

4-2. 保健医療

カンボジアにおける障害の予防には、プライマリー・ヘルス・ケア(PHC: Primary

Health Care)の促進や衛生の改善、十分な栄養、ワクチンの投与、地雷・不発弾に関す

る意識向上、武器の削減など様々な要素が絡んでいる。1999 年に計画省により実施さ

れた「カンボジア社会・経済調査」によると、疾病が障害の最大の原因であり、遺伝子

変異などの先天的原因は 2 番目の原因となっている。また、障害者人口の 10.8%が地

雷の爆発により障害を負っており、約 10 人に 1 人以上は戦争や紛争を原因とする障害

者である。地雷や戦争・紛争による障害者のうち男性の割合は女性の 3 倍以上である。

また、昨今では交通事故による障害の数が特にプノンペンにおいて増加しており、交

通法の施行の不徹底や急速かつ管理できない程の車やバイクの数の増加に起因してい

る。車のシートベルトやバイクのヘルメットの着用義務に関する法律は未だ施行され

ていない。さらに、障害の発見や早期療育が不適切であり、特に農村部において遅れ

ている。これは資源や障害に関する認識の欠如、地域レベルでの教育レベルの低さや

絶対的貧困に起因している。

カンボジアでは、医療リハビリテーションは保健省と社会問題・退役軍人・青年リ

ハビリテーション省という二省庁の共同責任のもとで行われている。保健省の医療リ

ハビリテーション係では医療リハビリテーションを行う病院やセンターに研修を実

施している。しかし、業務指示は不明確であり、二省庁間の調整および協調は不十分

である。そのため、医療リハビリテーションに関する特別委員会が 2000 年中頃に設

立された。障害を負った場合のリファーラル経路として、病院における治療や手術の

後、社会での生活能力を高めるために、リハビリテーション・ワークショップまたは

リハビリテーション・サービス・センターに照会される。国内の 7 州に障害者リハビリ

国別障害関連情報カンボジア

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テーションセンターがあり、3つの国際NGOが運営に携わっている12。これらリハビ

リテーションセンターの利用者の障害原因は、地雷被害と小児麻痺・ポリオの後遺症

が多くを占める。

包括的なリハビリテーション・サービスの提供は、施設におけるリハビリテーショ

ンに加えて、地域に根ざしたサービスやリハビリテーションとの連携を必要とする。

医療リハビリテーションにおける活動のニーズは以下通りである。

a. 疾病・トラウマの早期発見および治療により障害の程度を最小限に留める。

b. カンボジアの特定のニーズに基づいた適切な薬およびリハビリテーション・

サービスを提供する。

c. リハビリテーション・サービスを PHC やコミュニティー・サービスに組み入れ

る。

d. 健康に関する専門家およびコミュニティー・ワーカーを訓練する。

また、医療リハビリテーションに従事する医者や看護師、理学療法士およびその他

の保健に関する専門家は、リハビリテーションに関して適切な訓練を受けていない。

意思伝達手段および補そう具はカンボジアでは利用可能であり、義肢装具および車椅

子、三輪車の部品が国内で生産されている。

社会問題省リハビリテーション局に CWD(Community Work with Disabled)課があり、

コミュニティにおける障害者のための活動を取り扱っており、ここが CBR の担当とれ

ている。しかし、ここでは若干の NGO が行っており活動の情報が得られるのみであ

る。保健省予防医学局は、医学的な観点から CBR を管轄している。医療を重視した

CBR の展開を重視しており、障害者のサーベイランス制度の確立、各レベルにおける

専門的人材の雇用と訓練を行うことを目指している。CBR 展開のための保健ワーカー

とコミュニティボランティアのための基礎的な医療訓練を実施し、障害の予防のため

の意識啓発を進めることを展望として掲げている。2002 年には障害予防と医療リハビ

リテーションによる CBR プロジェクトの計画を立てたが、予算の制約もあり、実施に

は至らなかったとされている。CBR を計画・実施している NGO も多くあるが、具体

的な成果については、まだどれも開始されてまもなく、モニタリングは行われていな

い場合が多い。

12運営に携わる 3 団体は、イギリス系の Cambodian Trust、フランス系の HI (Handicap International)、アメ

リカ赤十字である。和泉徹彦『ケーススタディ:カンボジアの社会保障制度』による。

国別障害関連情報カンボジア

28

カンボジアでは、「障害者と共に行うコミュニティー・ワーク(CWDP: Community

Work with Disabled People)」が多くの障害者や障害児のリハビリテーションのアプロ

ーチとして適用されている。「障害者と共に行うコミュニティー・ワーク」の中心的な

要素は以下の 6 つである。

1. 個人・家族・地域レベルで障害問題に関する意識を高める。

2. 障害者の自尊心および能力を高める。

3. 地域における障害者の参加を促す。

4. 雇用の機会を拡大する。

5. 障害者と政府および NGO の協力関係を構築する。

6. 家族および地域の支援を提供する。

「障害者と共に行うコミュニティー・ワーク」という言葉は上記アプローチを単純

明快に表すために選ばれた。この用語は「地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)」

の概念を包含しており、CBR を取り巻く概念的な難しさを和らげている。しかし、「障

害者と共に行うコミュニティー・ワーク」はサービスのアクセシビリティにおいてかつ

ては問題があり、不安定な政情によりプログラムが広い範囲を網羅することは不可能

であったが、現在はこの問題は改善されつつある。一方で、以下の問題は未だに解決

されていない。

1. 安全性:地雷、強盗、誘拐

2. 輸送機関:舗装されていない道路、天気の状況、車輌の不足

3. 現地当局との調整の欠如、透明性の欠如、汚職など

ポル・ポト時代に知識人が駆逐されたことによって、医師、看護婦などの専門職は

不足している。現在、医師法は定められておらず、医師免許の位置付けや養成制度は

不明確な状況にある。13以下に、障害関連専門家の養成体制を纏める。

【職種名】 【養成制度・機関】 【資格制度】

CBR 管理者 国立障害者センター 資格なし

CBR ボランティア 国立障害者センター 資格なし

地域に根ざしたワーカー 社会問題・退役軍人・青年リハ

ビリテーション省、女性・退役軍

人省、地方開発省、保健省、ハ

ンディキャップ・インターナシ

ョナル、カンボジア・トラスト、

資格なし

13和泉徹彦『ケーススタディ:カンボジアの社会保障制度』による。

国別障害関連情報カンボジア

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カンボジア障害者団体、国立障

害者センター、アメリカ赤十字、

VI、 ADD (Action on Disability

and Development)、およびその他

の団体による研修

眼科医 タケオ(Takeo)眼科病院 政府により資格を与え

られる

眼科の看護師 タケオ眼科病院 政府により資格を与え

られる

保健省内にある医療ケアのため

の技術学校

政府発行の免許 理学療法士

医療単科大学(TSMC,Technical

School of Medical College)に理

学療法のコースがある。

3年間の教育課程を修

了後、第2次理学療法

士の学位が与えられる

義肢装具 カンボジア P&O 学校

3年課程

政府により資格を与え

られる、または P&O

の国際学会により認定

される

精神科医 保健省 海外機関により与えら

れる修士号

心理学者 プノンペン大学 政府により与えられる

学士号

心理学教師 教育学部 政府により与えられる

手話 盲学校、Krousar Thmey またはカ

ンボジア障害者団体

資格なし

ソーシャル・ワーカー 基本的なソーシャル・サービス

訓練学校

資格なし

4-3. 教育

教育は人権であり、基本的ニーズでもある。しかし、カンボジアにおける教育は過

去の政治・社会・経済的混乱の影響を受けてきた。クメール・ルージュの時代 (1975-79

年)には教育システムはほぼ完全に崩壊したが、ここ 10 年で戦争と混乱から大きく回

復している。それにもかかわらず、一般教育システムの資源が限られているため、教

育を受けるべき者の多くが教育を受ける機会から疎外されており、これは特に農村で

顕著である。また、教育の不備により障害児や障害者の多くは読み書きができず、低

い技術しか身につけておらず、雇用機会の低下へと繋がっている。

国別障害関連情報カンボジア

30

「万人に教育を」(EFA: Education for All)を背景に障害者向けにインクルーシブ

教育の拡大を進めている。カンボジア政府は、教育分野の政策的重点項目として 2010

年を目処に9年間の基礎教育への平等のアクセスの確保と質の向上を掲げている。障

害者向けの公的な奨学金はなく、一部の国際NGO14が行っているのみである。

障害児を含め、「万人のための教育」を促進するための努力がなされているが、障害

を持った大人への教育の機会は限られている。教育制度においては、障害者の教員と

しての役割も制限されている。教育・青年・スポーツ省長官の評議会の決定 No. 1356

SRC/NN /1995、同 223 SRC/NN/1997、同 872 SRC/NN/1997、同 835 SRC/NN/1998 およ

び同 39 SRC/NN/1999 によると、教育・青年・スポーツ省によって課される高等教育の

学生や公立保育園・小学校の教員の採用基準では、「採用は、明らかな経歴を持ち、健

康で障害のないカンボジア国民の男性か女性でなければならない」と規定されている。

2005年現在、インクルーシブ教育は9州における 12のクラスターで行われており、

DAC、UNESCO、UNICEF、教育省、社会問題省、その他の NGOsの連携協力により

実施されている。政策的裏づけがこれまでなかったインクルーシブ教育であるが「教

育セクター支援プログラム 2001 年-2005 年で初めてインクルーシブ教育が教育関係

者の責務であるとされた。インクルーシブ教育の実施の困難な点は、教師もインクル

ーシブ教育を受け入れない、親も子どもも学校に行かせない、コミュニティの理解が

必要であることなどが挙げられる。教師の遠隔地手当ての支給制度はあるが、インク

ルーシブ教育などの障害児対する教師へのインセンティブは特にない。教育省は、下

部組織を巻き込み、トレーニングを行い、両親に対するマニュアルや教材、教師のた

めの教材を開発している。また、毎年、プノンペンで PTA ワークショップを開き、コ

ミューン評議会、教師、親を招いてインクルーシブ教育を含む教育課題と動向につい

て話し合いと討議が行われている。コンポンチャム州の教員養成校は、近くに国際

NGO が運営する視覚障害児の学校と聴覚障害児の学校があるため、関心を持つ教員や

手話や点字を教えることができるようになっており、インクルーシブ教育関連担当者

がトレーニングを受けている。

カンボジアには、特殊教育の公立校は1校もない。NGO の支援を受けた私立学校が、

視覚障害児、聴覚障害児のための特殊学校を運営している。2004 年 UNICEF の支援に

より、困難な子どもの調査を行い、障害児も調査の対象となっている。特別なニーズ

14 World Vision-Cambodia が行っている障害者向け自己啓発コース(Personal Development Course)

に参加している者が条件を満たせば、私立の大学や高校などの費用を負担してもらえる制度をもつ NGO

もある。

国別障害関連情報カンボジア

31

に対する政策を策定するための国家ステアリング委員会が 2004 年に設立されている。

NGO のクルーサータマイ、ろう開発計画(DDP)、DAC、教育省で構成されるカン

ボジア語手話開発委員会がある。その本部作業委員会は、プノンペン郊外のクルーサ

ータマイのろう学校内に設けられている。聴覚障害児のための学校やインクルーシブ

教育のパイロット校は教育省の教科書を使用しており、教育に必要な具体的な専門用

語の手話の開発が求められており、毎年 1600 から 2000 の新しい手話が開発されてい

る。新しく開発された手話は、コンピューター内に記憶され、これらは教師に対する

手話研修や手話の教習本として印刷されている。

4-4. 雇用・就業・職業訓練/教育

内閣決議 No 181/SSR は、障害者のサービスおよび雇用の促進に関する政府の戦略

および政策であり、公告 No 02/PRNN により実施されている。これらの文書に基づき、

州のリハビリテーション・センターおよび職業/技術訓練センターが設立され、国営銀

行を含めた関係省庁は障害者の雇用を促進するための協力を要請されている。

カンボジアでは、オートバイ修理、自転車修理、テレビ・ラジオなどの電気機器修

理、ミシンによる縫製などのコースが通常職業訓練として行われている。障害者職業

訓練センターは、国際NGOにより運営されており、地雷・不発弾や交通事故などによ

る障害者やポリオなどの障害者がセンターに来て、一定期間の訓練を受けている。支

援する国際NGOの方針により異なるが、訓練後、自営業開始のための道具、機材を供

与されたり、事業計画書を提出すれば、US$50 ドルが無償で与えられたりする。地

元に戻ってから開業して生計を得ている事例は 30%ほどであるとされる。15

世界復興基金と国際労働機関(ILO)の支援のもと、民間部門はビジネス諮問委員

会が開始した。国立障害者センター、職業訓練センター、UNDP などを巻き込みなが

ら計画が立てられた。ビジネス諮問委員会は、職業訓練、就労アドバイス、カウンセ

リング、就労斡旋を行っている。企業は、OJT として障害者を 3 ヶ月受け入れ、この

間障害者は世界復興基金と ILO の雇用者から俸給をもらい、雇用者は、世界復興基金

に能力評価を送るシステムがある。現在、米国タバコ会社、カルテックスカンボジア、

モデテル、Degital Divide Data などが企業会員となり、障害者の雇用をしている。また、

15 難民を助ける会の修了生の追跡調査結果による情報

国別障害関連情報カンボジア

32

プロジェクトの一環として国立障害者センターの雇用情報サービスが障害者雇用に関

するデータと就労先情報サービスを持ち、1998 年から 2005 年までに 500 人の就労の

促進をしている。

障害者のための農村開発および所得創出プロジェクトは、障害活動評議会により実

施されてきた。それらのプロジェクトの目的は、所得創出に関する格差や障害者の潜

在的可能性を把握する調査を実施することにより、農村部の障害者の就業機会を促進

することである。社会問題・退役軍人・青年リハビリテーション省の協力のもと、ILO

の障害資源チームは障害者がアクセス可能な職場に関する活動を実施し、貸付け案も

含めた障害者のための職業斡旋を促進し、障害を持った訓練卒業生に手当や補助金を

給付している。フォローアップやモニタリング、カウンセリングや障害者の自信回復

のための活動も実施されている。

カンボジアには技術訓練学校/センターがプノンペンに 3 ヶ所、カンダール(Kandal)

州に1ヶ所、カンポット(Kampot)に1ヶ所、バッタンバン(Battambang)に1ヶ所、

プーサット(Pursat)に 1 ヶ所、カンポンソム(Kampong Thom)に1ヶ所の合計 8 ヶ

所にある。これらのセンターはワールド・ビジョン、マリーノル(Maryknoll)、AIR-J、

BUCK、JS-C (Jesus Service, Cambodia)、JCIA (Japan Cambodia Interactive Association)、

CWARS (Cambodian War Amputees Rehabilitation Society) および他団体の共同の支援を

受けて運営されている。これまで、3,493 名の障害者訓練生が様々な技術訓練を受け、

内 1,751 名の卒業生が現在就職し、各々の村で自営業を営んでいる。しかし、障害者

の雇用を促進する特定のインセンティブ、雇用割当て制度、法律がないため、これら

サービスは障害者のニーズを満たしておらず、訓練後の職業斡旋は保障されていない。

技術訓練、所得創出プログラム、職業斡旋は障害者の職業リハビリテーションの重

要な要素である。カンボジアでは障害者の多くは貧困の問題を抱えており、障害者が

自分自身および家族のために収入を獲得するようになることが最優先とされている。

障害者の収入向上に向けた訓練や雇用に関して、以下のプログラムがある。

1. 職業訓練(読み書き、基本的計算能力および小規模ビジネスマネージメント)

2. 訓練の提供者や雇用主への照会サービス

3. 地元市場向けの手工芸品の生産および生産工場や独立生産グループを通した

輸出

特に職業訓練プログラムにおいては、訓練センターを卒業した者へのフォローアッ

国別障害関連情報カンボジア

33

プの重要性が増してきている。フォローアップは卒業生の職場への定期的な訪問とい

う形をとり、訪問時には事業立上げ時の準備や、時には貸付けや補助金の提供を含む。

現在、障害者は訓練や雇用機会において以下の様な制限に直面している。

1. 自営業は金融機関へのアクセスを必要とするが、貧困にあえぐ障害者は特に

融資を受けることが難しい。

2. 障害者はしばしば雇用において差別を受け、障害者の能力に対する信頼性は

非常に低い。

3. 労働市場は制限が多く、被雇用者は条件を満たしているから雇用されるので

はなく、信頼や個人的なつながりに基づいて雇用される場合が多い。

4. 被雇用者の給料は低く、求職者の最低限の希望やニーズすら満たされないこ

とが多い。

5. 多くの障害者は、経済活動の機会が限られる農村に生活している。

6. 小規模事業の促進は人々が起業家精神を持ち合わせていることを前提とする

が、全ての障害者が持っているわけではない。

国別障害関連情報カンボジア

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5. 障害者関連支援組織の活動

5-1. 現地支援組織と活動

現在、カンボジア国内には約 300 のローカル NGO が存在している。政府の権威が

強くないカンボジアにおいて、多くの資金や人材を抱える NGO は大規模な活動を運

営している。社会福祉省は社会サービスを実施する予算、ノウハウに欠けるため、社会

福祉活動の 90%を NGO が担っている。

主要な自助団体としてはカンボジア障害者団体(CDPO)が挙げられる。CDPO は 1994

年にカンボジア全 21 州の内、13 州から 100 人の障害者が参加して結成された。障害

者の権利を守るための法律制定の働きかけ等国家レベルでの活動から、職業斡旋や訓

練等の障害者へのサービス提供まで、幅広い活動を行っている。

主要な支援団体としては障害活動評議会(DAC)を挙げることができる。障害活動評

議会は 1997 年に設立された、関連省庁、関連 NGO の代表、および障害者の福祉向上

に携わっている個人から構成される団体である。DAC の活動の目的は、(1)障害者の

福祉に影響を与える全ての問題に関する政府や政策決定者への専門的アドバイス、お

よび(2)リハビリテーション、障害者の機会平等、および予防に関する包括的な国家

レベルの方策についての協議の場の提供である。

なお、政府機関に関しては 3-1 障害関連行政組織と役割を参照。

5-2. 国際機関・他政府援助組織等の援助実績

1)国際機関・他政府援助組織の援助実績

国連による支援は、93 年の総選挙以降、特に積極的に行われている。現在、国際連合食料

農業機関(FAO)により農村部の障害者支援が計画されている。具体的には村レベルの食料加

工研修や農村部の障害者の能力開発ワークショップなどが検討されている。また、多くの国

際NGOもカンボジア国内で重要な役割を果たしており、日本のNGOも約 30 団体が活

動を行っている。2000 年現在、カンボジアでは社会福祉省に協力する海外支援団体は、

Rose Charity、ICRC、CWARS、AFSC、World Vision、JICA、AARJ、ADD、UCC (United

Cambodian Community Development Foundation)、Mary Knollである16。

16和泉徹彦『ケーススタディ:カンボジアの社会保障制度』

国別障害関連情報カンボジア

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2)日本の援助実績

JICA はカンボジアにおいて、障害者向けの継続的な身体的・精神的な介護と自立のた

めの支援を行っている。具体的には社会福祉省へのアドバイザー型専門家(社会福祉

行政アドバイザー)の派遣、関連の研修などにより政府の能力を強化すると共に、障

害者リハビリテーション支援においてハンディキャップ・インターナショナル(HI)

へ財政支援を行っている。社会的弱者配慮のソーシャル・ワーカー育成を行うカンボ

ジアソーシャルワーク(SSC)は、1998 年より JICA の開発福祉支援の対象となって

いる。

国別障害関連情報カンボジア

36

【添付資料】

資料1 現地支援団体リスト

Annex 参照

資料2 参考資料リスト

この報告書は、主にローカルコンサルタントによる調査報告書に基づいている。

ローカルコンサルタント調査報告書:

Disability Action Council. Country Profile: Study on Persons with Disabilities (Cambodia). Cambodia:

2001.

その他の資料:

JICA Cambodia’s Demining and Support for People with Disabilities.

Retrieved February 15, 2002,from http://www.jica.org.kh/Demining%20and%20Support

%20for%20Mine%20Victims.htm

障害保健福祉研究情報システム「障害問題作業部会 第二回部会(バンコク、2001 年 5

月 10 日-12 日)での発表内容」[引用 2002 年 2 月 15 日、http://www.dinf.org/

doc/twg/jpn/contact/fao.html]

石本由美「カンボジアの障害者当事者団体CDPOの多岐にわたる活動」[引用 2002 年 2

月 15 日、http://www.din.or.jp/~yukin/108.html]

WHO’s History of Health for All. Retrieved February 18, 2002, from http://www.who.

int/archives/hfa/history.htm

WHO’s WHO 50th-Milestones. Retrieved February 18, 2002, from http://www.who.

int/archives/who50/en/milestones.htm

和泉徹彦『ケーススタディ:カンボジアの社会保障制度』[引用 2002 年 2 月 25 日、

http://www.ne.jp/asahi/lab.izumit/study/cambodia2001.html]

Draft Law on Disabilities 2008

Cambodian Budget 2009