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電気保安規制について 平成29年3月28日 経済産業省電力安全課 資料5

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電気保安規制について

平成29年3月28日

経済産業省電力安全課

資料5

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1.信頼性重視保全について

(今年度調査事業内容の共有)

2.電気保安の高度化サイクルについて

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信頼性重視保全(RCM:Reliability-Centered Maintenance)とは

欧米で多く導入されている最適な保全プログラムを策定するための体系的な評価手法

機器の故障がもたらす安全上の影響、運転上の影響、劣化メカニズム・原因などに応じて、適切な保全プログラムを策定 (重要な故障モードの摘出(FMEAの実施など)、故障原因に対応するための保全作業の同定(ロジックツリー解析))

→過度な保守によるコスト増を避けるため、設備の状況に応じて保守を行う信頼性重視保全への転換が行われている

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信頼度目標

信頼度

時間

この間隔を適切に把握し、 計画外停止を防止し、定期点検等の頻度を合理化 この期間を適切に把握することで

定期点検等の頻度を合理化

運転継続に 必要な信頼度

信頼度目標´ 経験等を通じた目標値の変更

信頼性を重視した保全による保全プログラム見直しのイメージ

補修・取替等による 信頼度の回復

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欧米の火力発電におけるRCM

電力自由化と再生可能エネルギーの導入支援

– 火力発電の市場の縮小 → 電力価格の低下

– ベース、ミドル、ピークといった発電プラントの役割の喪失

→ 落札できた時間帯に確実に発電できることが必要

– 規制緩和 → 柔軟な保守計画の採用が可能

– 安全性、効率性(コスト削減)、柔軟性を確保する高品質な保守が必要

→ これらを達成するためのツールとして、RCMに期待

RCMの活用

– 教科書通りのRCMの活用は、実用的ではない(労力とコストがかかり過ぎる)

– 簡略化が必須 → 個社がそれぞれカスタマイズした様々な簡略化手法が採用される

独LEAG社:RCMを積極活用している石炭火力発電所の保守のビジョン

“Be benchmark for maintenance services in terms of Safety, Costs and Quality !”

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詳細は、「平成28年度電気施設保安制度等検討調査(信頼性重視保全によるスマートな保安の確保に関する調査・検討)報告書」を年度末を目途に経済産業省HPに掲載する予定ですので、ご参照下さい。

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(参考)RCMの経緯

– 1960年代、米国の航空業界で開発。

– 1980年代、米国EPRI(電力研究所)が原子力適用研究 →「有効性」は実証されるが、コストと労力がかかりすぎ、実用的でない。

– 1990年代、EPRIは簡略化RCM(SRCM)を開発 → 原子力発電で活用拡大

– 同時に、EPRIはPMテンプレートを用いたPMBD(Preventive Maintenance Basis Database:予防保全基盤データベース)を構築

– 2000年代、PMBDを保守の最適化のツールとして、火力発電等へ拡大

– 欧州でも、電力自由化の下、火力発電でのRCM導入が進みつつある

– 石油・天然ガスプラント、化学工場など大規模施設でも導入されている

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Reliability-Centered Maintenance(信頼性重視保全)

最適な保全プログラムを策定するための体系的な評価手法 機器の故障がもたらす安全上の影響、運転上の影響、劣化メカニズム・原因などに応じて、適切な保全プログラムを策定

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ドイツ:LEAG社

ドイツ東部最大の電力会社。4ヶ所の炭鉱(褐炭)に併設する石炭火力発電所を所有

自社で開発した“Pragmatic RCM”を採用

– 独自のRCM簡略化を実施

– 手間のかかるFMEAを実施せず、ワークショップ形式で機器の重要度を評価・分類

– 故障の起こりやすさの評価でVGB(業界団体)のKISSYデータベース(VGBメンバー間で共有される運転経験情報データベース)を利用

– 保全タスクは、SAP(設備管理用ソフトウェア)で管理している保全履歴をベースに、ワークショップ形式で検討

自社経験と推奨基準を元に、年間保守費用とリスクのバランスで、保守を最適化

保守プログラムは定期的(2、3年ごと)に見直し

最適化により10%程度のコスト削減を達成

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保守活動とコストの比較概念図(LEAG社提供資料)

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フィンランド:FORTUM社

北欧諸国、バルト諸国、ポーランド、ロシア北西部を主なサービス対象地域とした発電と熱供給事業に加え、発電・熱供給に関するエンジニアリングやコンサルティングサービスも提供

自社の原子力発電所に適用したRCM手法を、火力向けに独自で簡略化

電力自由化に加え、ベテラン保守技術者の減少などを背景に、保守高度化の必要性から、ReMaint(RCM実施用ソフトウェア)を開発

→ コンサルティング含めRCMサービスを提供

設備管理用ソフトウェアは、IBMのMAXIMOを採用し、全プラントを同じフォーマットで管理

発電所の計画・建設・運転保守・アセットマネジメントまで一貫した管理サービス(ReMaintも販売)を提供

7 保全の最適化検討プロセス(ReMaint)(FORTUM社提供)

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米国:First Energy社 10社の電力会社を参加に持ち、発電と送電事業を有する。総設備容量17,000MW

(石炭56%、原子力24%、天然ガス8%、水力・Renewable 11%、石油1%)

15年前からRCMに取り組む。2011年、他社との大規模合併を機に全社統一の保守管理手法確立を目指すため、RCMを活用

INPO(原子力発電運転協会)のAP-913(原子力向けRCM)をベースに火力向け簡略化手法を自社開発

– クリティカリテイ評価(チェックリスト方式)

– 必要なリソース低減を目指した手法(MTA:Maintenance Task Analysis)を開発

– 独自の保守テンプレート(MBT:Maintenance Basis Template)を開発

– EPRIのPMBDも参考情報として採用

保守管理情報は、SAP (設備管理用ソフトウェア)で管理 重要度分類の結果: クリティカル(A)は4%、非クリティカル(B)は23%、RTF(Run-to-Failure:壊れるまで放置)(c)は73%

34種類のテンプレート作成 → コスト低減と信頼性の向上 全社一貫した保守管理・モニタリングシステムの確立

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米国:LG&E社 LG&E(Louisville Gas and Electric Company)社は、ケンタッキー州の電力会社で5つの火力発電所を所有。13基

の石炭火力と1基のガスコンバインド、1基の水力、1基の太陽光。総設備容量は7,997MW

2015年末、RCM実施を決定

– 経験豊富なエンジニアの退職の増加

– 各サイトで異なる予防保全を実施 → 全社統一へ

EPRIのSRCM(簡略化RCM手法)及びPMBD(Preventive Maintenance Basis Database:予防保全基盤データベース)を採用。EPRIの支援を受けながら実施

保守管理ソフトは、IBM MAXIMOを利用

2段階の作業ステップ

– 第一段階:重要度評価

• クリティカル、非クリティカル、RTF(run-to-failure)の3つに分類後、さらに5段階に分類

– 第二段階:PM(Preventive Maintenance:予防保全)レビュー

• MAXIMOに登録済みのPMタスクとPMBDを比較・検討

• 検討結果に基づき、現状の保全の変更(追加・削除・修正)を実施

計画

– 2016年、5つの火力発電所の回転機器に対して実施

– 2017年に電気機器、2018年は計装機器に対して実施予定

運転保守データを経営情報などと一貫して管理できるようシステムの統合を目指す

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1.信頼性重視保全について (今年度調査事業内容の共有)

2.電気保安高度化のサイクルについて

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○ 電気保安規制の目的は、「電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ること」。

○ 具体的には、電気事業法第39条第2項(事業用電気工作物)の技術基準の要件として掲げられている以下4点を達成することが主な目的。

ⅰ) 人体への危害、物件の損傷の防止 (公害の防止を含む)

ⅱ) 他の電気的設備等の機能に対する電気的・磁気的な障害の防止

ⅲ) 事業用電気工作物の損壊による一般送配電事業の電気供給に対する著しい支障の防止

ⅳ) 一般送配電事業の用に供される事業用電気工作物の損壊による当該一般送配電事業の電気供給に対する著しい支障の防止

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電気事業法の保安規制とは

電力の安定供給、公共の安全確保、環境保全のために技術基準を定め、基準維持のための規制を実施

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国内の様々な環境変化による電気保安の課題

電力システム改革、固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策への対応等により、大型電源は新規プレーヤーの参入や価格競争等様々な環境変化に晒されている

更に、将来に渡って以下の懸念・課題が存在

– 人口減少による技術者の減少・高齢化

– 電力需要の減少による発電所の減少

– 発電設備の高経年化の進展

– 発電所減により、技術者の経験の場・保全プログラム検討に必要なデータを採取する場が少なくなる

国内で保安を確保しながら電源を維持するためには、将来の様々な事業環境の変化に備え、合理化を行いながら、一定の保安レベルを維持しつつ、PDCAを回すことが必要。

このため、電力会社が早期に保安高度化のサイクルを効率的に回す仕組みを導入していくことが必要ではないか。

なお、電力会社が海外展開する場合にも国内へのフィードバックが期待される。

発電所減

技術者減

少ない人数で少ない発電所を管理 →データや人員の総量は減少し、 保安維持・向上に懸念

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保安高度化のサイクルを効果的に回す制度の将来イメージ

国内保安規制と海外制度を整合化し、国内で高い評価を得た(規制上のインセンティブを受けた)者が国外でも“活躍”し、その知見・資源を国内へ還元し、更なる高度化へとつなげる

電気事業法の保安規制

海外の保安規制 電源入札要件 保険・金融の評価指標

基準・制度の整合化 (ISO、ガイドライン)

「高度な保安力」を持つ事業者は、規制上のインセンティブ等により優位な立場に

国内外の基準を整合させることで、資源の融通が容易に

国内の「高度な保安力」が国外でも評価されることで優位な立場になることが必要

国内と類似のルールとなれば資源の融通が容易に

国外の知見を国内へ還元

国内で更なる高度化を行い、 国外でも活かせる強みに