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注意・集中のコントロールが 弱い子への支援・2012 ADHDASDを中心に Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

注意・集中のコントロールが 弱い子への支援・2012nagasawa/2172012.pdf– WISC-Ⅳ、アセスメントの結果から Niigata Univ. -Nagasawa Labo. 教育の体制

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注意・集中のコントロールが 弱い子への支援・2012

ADHD、ASDを中心に

Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

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注意とは、集中とは

• 注意 – 同時に存在する認知や思考の対象のうちの一つに意識の焦点を合わせ、明瞭にとらえること(James,1890)

• 集中 – 注意を維持し続けること

注意・集中は、学習する上で、必要不可欠な行為 Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

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PASS理論

• 人間の認知機能は,プランニング・注意・同時処理・継次処理の4つの重要な過程に基づいており,これらが個人の知識基盤を変化させると考えています。 これらの認知処理過程は相互に関係しあうとともに,過去の経験や知識とも密接に関連しているとされています。

• (福岡教育大学中山先生のHPより引用)

DN-CAS (心理アセスメント)

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学習の困難さと認知の問題 注意

(Attention) 見通し (Planning) 振り返り

(Self-management)

理解に必要な知識 (Knowledge)

読み書き計算 (Literacy)

理解能力 (Comprehension)

知的能力 (Intelligence)

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意欲 心理的安定

特性の把握:WISC-Ⅳ、DN-CAS

自己管理の指導 認知特性への配慮

学習支援

特別な支援

LDへの特別な支援

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内容

1. 特別支援教育の基本的な考え方 – 自己管理、UDL

2. 特性に応じた支援 – ADHD(注意欠陥多動性障害)の場合 – ASD(自閉症スペクトラム障害)の場合 – WISC-Ⅳ、アセスメントの結果から

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教育の体制

チームアプローチ、保護者連携、個別計画

特別支援教育のイメージ

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共通する対応

自己決定と自己肯定感の育成 学習のユニバーサルデザイン、スクールスタンダード、段階的な対応

特別な対応

合理的配慮 障害特性に応じた指導

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自己決定を支援するカリキュラム

自己管理

自己解決

自己主張

自己理解 自分の特性や能力を知る

自分を客観視する 自分にあった進路をきめる

生活の自己管理 学習の自己管理 自己評価

問題への気づきと解決の意志 解決方法を知り、実行する 結果をふり返り評価する

自分の気持ちや意思を、ことばで (社会的に受け入れられる表現で)

相手に伝える してほしいことを訴える

7

自己肯定感

自己管理、自己解決を支える注意・集中

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学習のユニバーサルデザイン

1. 誰もがわかる授業 – 多様な提示方法の提供

2. 学習活動への主体的な参加 – 多様な表現方法の使用

3. 自己解決・自己評価 – 主体的な学びの保障

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誰もが学びに参加できるための理念と方法 http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/nagasawahomepage2-2.html

教師 → 子ども

子ども → 教師

子ども自身で

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2.特性に応じた支援

ASD、ADHDへの対応の基本

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(1)ADHDの場合

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ADHDの特性

• 心理特性等 – 時間の概念の弱さ、自己管理、プランニングの弱さ

– 協調運動機能の弱さ、感情コントロールの悪さ、モチベーション、持続力の弱さ

• WISC-Ⅳの特徴 – WMI(ワーキングメモリー)の弱さ – CPI(認知習熟度指標)の弱さ

認知機能の問題 ←→ 行動抑制の障害

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ADHDのウリは?

• 創造性の高さ

• 人助けが好き、行動力がある

• 変化に敏感

• 意外にも・・・

芸術活動、ユニークな意見、発想力の豊かさを評価する

人の役に立つことで自己肯定感を育てる

緊急時に思わぬ力を発揮することも

おっとりしている、好きなことに抜群の集中、正義感が強い

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ADHDの対応に使われる技法

• 不注意・注意欠陥 – 興味・関心、集中できる工夫、視覚的手がかり

• 多動性 – 望ましい行動を教える、ほめる – スケジュール表

• 衝動性 – 自己評価:目標設定→振り返り→ほめる – トークンシステムとタイムアウト

叱るより、特性にあった技法を積極的に取り入れる

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対応の原則 • 子どもの行動の善し悪しをすぐに言う

• 自分の状態や結果が常に分かるような工夫(カードの提示)

• 常に一貫した態度で接する

「そのすわりかたはいいね!」

大人は同じ対応を

なぜそうなったかを考えさせる 色に応じたごほうびを

即時対応、視覚化、一貫性

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約束:手をあげてから話す

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注意・集中を支援する

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(1)自己監視を教える セルフモニタリング

• 話し合って約束をきめる

• 実行したかどうか、記録する

• できたことを評価する

約束「授業中、先生の話を聞く」にします!

チェックリストを用い、記録することを教える 記録することが行動抑制になります

「ちゃんと話を聞いているね!」と継続的にほめる

自分で行動を監視(モニタリング)→行動抑制 約束を守る → ほめてもらえる → 自己肯定感

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自己監視のチェックリスト 月 日

時間帯 教科

10分 20分 30分 45分

国語

算数

社会

目標:先生の話を聞く

約束通りできたかどうか、自分自身でふり返る 自分で監視することで、行動抑制(自己コントロール)できるようになる

18 Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

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自己監視:応用 • 契約書

– 選択内容:高頻度で生起する行動 – 注意、集中していることを強化する – 守れないことを想定する

– スモールステップで

約束を契約書に仕立て、実行したら具体的に評価

カードで自己認識と敗者復活

最初は短い期間で実施。徐々に期間を延ばす

ゲーム感覚で、無理なく実施できる訓練を

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(2)活動を分割+自己監視

• 1単位時間の運用を工夫する – 説明を聞く→読む→書く→話し合う→発表する – 指導形態:一斉、グループ、ペア、個人 – 教科:複数の教科を15分単位で実施

• 自己監視の導入 – 目標確認と実施→モニタリング – 事前に自己監視のリハーサルを

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「集中できる時間は限られている」という前提で

通級指導教室

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対応(3)他行動分化強化

• 望ましい行動

• 悪くない行動

• 問題行動 – してほしくない行動 – 許しがたい行動

強化(大) ほめことば

強化(小) 悪くない状態を認める

消去 無視、ルールを繰り返し言う

教育的な罰 活動の制限、タイムアウト

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• 活動に取り組んでいる

• 逸脱していない

• 問題行動 – 逸脱行動 – 許しがたい行動

強化(大) ほめことば

強化(小) 悪くない状態を認める 定期的に強化する(例)

消去 ルールを繰り返し言う

教育的な罰 活動の制限、タイムアウト

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(参考)行動分析による対応

• 現在

• これから

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集中していない 条件 対応

反応

集中している

状況を変える

事前の対応

対応を変える

ほめる認める

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1000ポイント:ゲームソフト 500ポイント:カラオケボックス3時間 100ポイント:カード10パック 50ポイント:カード3パック

10ポイント:おやつ

学習に取り組もう

10分間集中した:1ポイント 先生の話を聞いていた:2ポイント

先生の指示に従わない:-1ポイント

約束を具体的に 価値のないシールやスタンプ

ポイントを集めてものと交換 ごほうびに差をつけること

自己コントロールへの強化子

与えるときには、もらえた理由を認識させること

(4)トークンシステム

ポイントを与え、ごほうびと交換するシステム (計画的に実行すれば、かならず効果があります)

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(5):タイムアウト(教育的な罰) • 警告 → 別室(静かで安全な部屋) • まず、落ち着かせる • 約束、簡単な課題(漢字の書き取りなど)

すぐに復帰を! 説教しない!

快適な環境に置かない

警告、別室でクールダウン。事前の説明責任を果たす Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

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(2)ASDの場合

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ASDの特性 • 重要なポイント

– 目に見えないものの理解が困難 – 自分を守る心のバリアが弱い – 状況の理解が困難 – 不安感が強い – 精神年齢が幼い – 記憶が良すぎる

• WISC-Ⅳの特徴 – GAI(一般知的能力指標)>FSIQ(全検査IQ) – PSI(処理速度指標)が低い – WMIとFSIQに差がある

注意・集中力の問題

↓ 実行機能(EF)不全

プランニング、見通しの困難さ

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ASP(アスペルガー障害)のウリは?

• 正義感が強い、まじめ

• 論理的思考、理数系に強さを発揮

• 記憶力が抜群

• パソコンなど、機器関係に強さを発揮

主張の正当性を評価し、対応の仕方を教える

特性にあった進路、活動を勧める

学習や趣味に生かす。みんなの前で評価する

問題行動や困難差への対応を考える前に、 発達障害のプラスの面を評価すること

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(1)プランニングを支援する

• スケジュール表を活用する • 絵に描いて説明する

– 絵カード、4コマ漫画 • 文章にして教える

– ソーシャルストーリー • 話を図に整理して考えさせる

– 認知行動療法

子どもの実態(認知特性)にあわせ、 子どもが使いやすい視覚支援の実施を

先の見通しが見える状態にする ↓

活動に集中できる

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規則正しい生活支援のスケジュール表

絵カードや写真カードで見通しを持たせる

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支度手順カード

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学習スケジュール表 学習活動 学習内容 評価

1.音読 ・教科書を音読する (ひらがなシートの使用)

2.読みとり ・ノートに主人公のせりふを書く (主人公のせりふに印を付ける)

3.漢字の書取り

・教科書○頁の漢字をノートに書く

はじめに配布

学習の見通しがわかり、結果が確認できる表

うまく行くための手がかり

10:20までに終えること 時間管理の意識

事例

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自己評価をビジュアルに

目標

今の自分 Niigata Univ.-Nagasawa Labo.

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(2)何事もシンプルに(注意・集中)

• 環境の整備、設定

• 課題の始まりと終わりがわかるように

• 結果に対して素早く対応

• 成功には賞賛、ご褒美を

活動に必要な物だけを置くこと

がんばって最後まで → 「5枚貼りましょう」

「それでいいんだよ」「違います。○○だよ」

設定も課題も対応もシンプルに

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(3)環境の構造化(見通し)

着替え (畳)

言語指導 (個室)

制作活動

遊具 ロッカー

教師のスペース 教師用机

本棚

テレビ 勉強するとこと

絵を描くところ

ことばの勉強

着替え 体育が ある

構造化:ひとつの場所でひとつの活動だけ

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通級指導教室の 構造化

佐々木(2008)

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(4)自己選択支援(見通し)

注意する

教師に報告する

服 装 の 乱 れ を 見 つ け た

逆ギレされる

自分は安全

本人の意見と、通常の選択の結果を比べ、 どうするかを今一度考えてもらう

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(5)文脈理解の工夫(見通し)

• 活動の流れを図に表す • 予想されるトラブルを未然に防ぐための約束を書く

• 苦手な活動は事前練習する(リハーサル)

活動 約束

更衣室で着替える 整列する 器械体操

入り口から一番遠いところで着替える

私語に気づいても注意しない 最初から教師に援助を求める

体 育

構造化された環境で 教師との一対一の学習

問題が起きる前に活動の流れを提示し、リハーサルを

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検査結果から得られる工夫

WISC-ⅣとDN-CAS

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WISC-Ⅳで算出される能力 • 全IQ(FSIQ):総合的な能力 • 言語理解指標(VCI):言語理解、知識、概念化 • 知覚推理指標(PRI)

• ワーキングメモリー指標(WMI)

• 処理速度指標(PSI):複数の情報を処理する能力

全検査IQと4つの指標 PRI、WMIが新たな指標

視覚的な問題解決,情報処理能力

新たな情報を記憶,短期記憶に保持、処理する能力

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WMとPS(説明)

• WM – 意識を覚醒させて情報を積極的に維持し、これに対して何らかの操作または処理を行い、結果を生み出す能力

– 習得度と学習に関係する • PS

– 知的能力、読みの成績や発達、認知的リソースの保持による推理、高次の流動性課題に向けたWMの効率的利用と関連

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ADHD

• LD+ADHD:FSIQ=88 – S:絵の完成、積木、理解(9~10) – W:算数、語音整列、符号(8)

• ADHD:FSIQ=98 – 処理速度と他の指標との差が大きい – 符号と算数の差が大きい – S:絵の完成、絵の概念、理解、類似(10) – W:絵の抹消、算数、符号(8~9) – GAI>FSIQ

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三嶋・長澤(2012)

• 小学生7名の平均

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FSIQ VCI PRI WMI PSI GAI CPI

平均 95.9 103 95.4 89.3 91.6 100.1 90.3

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ASD

• ASD(自閉性障害):FSIQ=76 – S:積木、行列推理、絵の概念(7) – W:理解、記号探し、符号(4~5)

• アスペルガー障害:FSIQ=99 – S:語彙、知識、絵の完成(12) – W:記号探し、符号(7) – GAI>FSIQ – 処理速度が低い – WMIとFSIQに差がある

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先行研究より

• Oliveras-Rentas(2012)Aut,42(5) – 行列類推、類似(+);理解(-) – PSIの弱さ、コミュニケーション能力との相関

• 三嶋・長澤(2012) – アスペルガー障害7名の平均

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FSIQ VCI PRI WMI PSI GAI CPI

平均 83 91.3 87.9 83.9 84 89 81.9

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(参考)発達障害とWMの特性

• WM:きわめて短時間の間に情報を記憶したり操作したりする能力

• 特性 – 言語障害:言語性短期・WMの弱さ – DCD:選択性の視空間短期・WMの弱さ – ADHD:言語と視空間領域のWMの弱さ – AS:言語性短期記憶の弱さ

• Alloway(2009)LD,42(4)

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WMIの弱さへの対応

• 課題と手順が記憶できるように支援 • 簡潔な指示、要点を絞って示す、スモールステップ、メモを活用

• 自己解決できる方略を教える(訓練) • 集中できる環境構成 • 日課表の活用 • 記憶負荷がかからない工夫

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Prifitera, et al.(2008)

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PSIの弱さへの対応

• 活動に十分な時間を与える • 課題の量より質を重視する • 課題やテストにおける時間延長を認める • 板書を補う、板書に代わる方法 • 集中できる教室環境 • ICTの活用

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Prifitera, et al.(2008)

合理的配慮

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DN-CASから得られる認知処理過程

実施 DN-CAS (心理アセスメント)

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主にADHD

主にASD

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集中するための工夫

• 集中して取り組む方略を教える • 自己監視、自己教示法の導入 • 計画的に休憩をとる • 学校や家庭での成功体験を保障する • 落ち着かせるためのセルフトークを教える • 集中して取り組める量の課題を与える • 子どもがすぐに理解できるよう指示を簡単に • 集中していないことに気づくための合図

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プランニングをのばす工夫

• プランや方略を使うことを教える • プランニングの重要性について話し合う • 自分自身の方略を考え出し、使い、評価するよう促す

• アイデアや方略をことばにするように促す • 自己監視を使う

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(参考)自己解決法の基本 気持ちの受容

Sympathize

問題の客観的認識 See

目標の自己選択 Self-Determination and Supports

自己監視・評価 Self-monitoring and evaluation

自己肯定感と 目標のステップアップ Self-esteem and Step up

話をよく聞き、気持ちを受け止める

現状の認識 解決への意欲

できそうな目標をいくつか提案 無理なくできる目標の自己選択

支援内容の決定

実行したかどうかの確認 できることを認識する

実行

次の課題を認識し、目標をきめる (短期目標、長期目標)

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参考文献 • Flanagan & Kaufman(2009) Essentials of WISC-Ⅳ Assessment 2nd edition.Wiley.

• Naglieri & Pickering (2003) DN-CASによる子どもの学習支援。前川他訳、日本文化科学社。

• Prifitera, et al.(2008) WISC-Ⅳ Clinical Assessment and Intervention. Academic Press.

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まとめ • 知的障害

– 興味関心、できることから始める • 学習障害

– 認知特性に応じた支援 • ADHD

– 自己管理の仕方を教える • ASD

– 活動の見通しが持てるようにする、プランニングへの支援

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長澤研究室

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