7
2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕 汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の 安全対策に関する研究 下水汚泥の有効利用が進むにつれ,下水汚泥から発 生する可燃性ガスに起因する事故の発生が顕在化して いる。下水汚泥は発熱量が高く,その燃料的価値も高 いが,自己発熱や粉塵爆発等の可能性があり,その取 り扱いには十分な注意が必要である。 しかし,その危険性に対する認識は一般化されてお らず,事故防止対策も整理されていないのが現状であ る。 本研究は,下水汚泥の有効利用を促進させるために, 下水汚泥を処理・有効利用する際に問題となる下水汚 泥由来の可燃性ガス等に対する対策や取り扱い方法を 明確にし,技術資料として取りまとめることを目的と する。 本研究は,(財)下水道新技術推進機構, (株)荏原製作所,川崎重工業(株),(株)クボタ, 三機工業(株),(株)神鋼環境ソリューション, 住友重機械工業(株),大同特殊鋼(株),(株)タクマ, 中外炉工業(株),月島機械(株),巴工業(株), 日本ガイシ(株),三井造船(株), 三菱重工環境エンジニアリング(株)の 15 者で実施 した。 3.1 適用範囲 本研究は,汚泥処理設備と関連する工程を対象に行 う。 ① 脱水汚泥の搬送および貯留 ② 脱水汚泥の乾燥,炭化,焼却,溶融 ③ 乾燥汚泥,炭化製品の搬送および貯留設備 ④ 送受泥設備 3.2 危険性の概要 汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の危険性を以下の とおり整理した。 3.2.1 汚泥由来の可燃性ガスの危険性 ① 腐敗ガス 汚泥輸送配管や汚泥貯留槽等で汚泥が密閉状態 となる環境で,夏場の高温条件が重なってメタン を含む腐敗ガスが発生する。 図-1は汚泥を密閉容器に充填し,35℃の恒温 槽に入れてガス発生実験を行った結果を示す。新 鮮な汚泥1kg-wet からは実験開始1日目で約3 ~4リットルのガスが発生した。(その後は徐々に減 少) 3研究内容 2研究体制 1研究目的 -201-

【 本 文 】汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の安全対策に ......2002/03/20  · 2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕 -104- 汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-104-

汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の

安全対策に関する研究

下水汚泥の有効利用が進むにつれ,下水汚泥から発

生する可燃性ガスに起因する事故の発生が顕在化して

いる。下水汚泥は発熱量が高く,その燃料的価値も高

いが,自己発熱や粉塵爆発等の可能性があり,その取

り扱いには十分な注意が必要である。

しかし,その危険性に対する認識は一般化されてお

らず,事故防止対策も整理されていないのが現状であ

る。

本研究は,下水汚泥の有効利用を促進させるために,

下水汚泥を処理・有効利用する際に問題となる下水汚

泥由来の可燃性ガス等に対する対策や取り扱い方法を

明確にし,技術資料として取りまとめることを目的と

する。

本研究は,(財)下水道新技術推進機構,

(株)荏原製作所,川崎重工業(株),(株)クボタ,

三機工業(株),(株)神鋼環境ソリューション,

住友重機械工業(株),大同特殊鋼(株),(株)タクマ,

中外炉工業(株),月島機械(株),巴工業(株),

日本ガイシ(株),三井造船(株),

三菱重工環境エンジニアリング(株)の 15 者で実施

した。

3.1 適用範囲

本研究は,汚泥処理設備と関連する工程を対象に行

う。

① 脱水汚泥の搬送および貯留

② 脱水汚泥の乾燥,炭化,焼却,溶融

③ 乾燥汚泥,炭化製品の搬送および貯留設備

④ 送受泥設備

3.2 危険性の概要

汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の危険性を以下の

とおり整理した。

3.2.1 汚泥由来の可燃性ガスの危険性

① 腐敗ガス

汚泥輸送配管や汚泥貯留槽等で汚泥が密閉状態

となる環境で,夏場の高温条件が重なってメタン

を含む腐敗ガスが発生する。

図-1は汚泥を密閉容器に充填し,35℃の恒温

槽に入れてガス発生実験を行った結果を示す。新

鮮な汚泥1kg-wet からは実験開始1日目で約3

~4リットルのガスが発生した。(その後は徐々に減

少)

3. 研究内容

2. 研究体制

1. 研究目的

-201-

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-105-

図2-2 ガス発生量の経時変化

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

0 10 20 30 40day

mL/kg-wet

A 新鮮

A 腐敗

B 新鮮

B 腐敗

C 新鮮

D 新鮮

ml/kg-wet

day

図-1 ガス発生量の経時変化

3.2.2 汚泥製品の危険性

① 炭化製品

精錬度3以上で貯留槽での自己発熱の危険性が

高くなる。

② 乾燥汚泥

水分が高い場合,長期保管によりコンポスト化

が進み発熱する可能性がある。水分が低く微粉末

状態となると粉塵爆発の可能性が高くなる。

3.3 トラブル事例

3.3.1 調査対象

トラブル事例の傾向把握を目的として,乾燥,焼却,

溶融,汚泥管路輸送受入のある自治体(対象処理場数:

206箇所)及びメーカー14社に対してアンケート調査を

行った。その調査結果のうち,処理場158箇所(回答率

76.7%)よりの51件及びメーカー14社よりの49件の中

から,重複事例を除いた88件を有効回答数とした。

3.3.2 トラブル事例概要

図-2に汚泥処理におけるトラブル事例マップを示

す。トラブルとして,圧力異常上昇,爆発,くすぶり,

発火,温度異常上昇等が発生しているが,これらの事

例を大きくまとめると,

① 汚泥由来の可燃性ガスのトラブル事例

② 汚泥製品のトラブル事例

に分類される。

3.3.3 トラブル事例の傾向

(1) トラブル発生件数

トラブル発生件数の年別推移を図-3に示す。

年間 大6件,平均的には1~2件のトラブルが

電気集塵機

脱水汚泥

貯留ホッパ

炭化製品

貯留ホッパ

脱臭塔

乾燥汚泥

貯留ホッパ

炭化炉

臭気ライン 配管圧送

乾燥機

自己発熱・燻り 13件

粉塵爆発 6件

腐敗ガス爆発 1件

腐敗ガス爆発 7件

自己発熱・燻り 3件

粉塵爆発 1件

乾留ガス噴出 1件

タール発生 1件

密閉部圧力上昇による

破損・噴き出し 13件

活性炭発熱・燻り 1 件

脱水機

焼却炉

溶融炉

未燃ガス爆発 3 件

付着/堆積物の

発熱・燻り 2 件

発熱・燻り 9 件

脱水汚泥

定量フィーダ

P

P P

P

熱交換器

※2

※2

貯留汚泥から腐敗ガ

ス発生 12件

配管内汚泥から腐敗ガ

ス発生 24件

※1

※1

汚泥の摩擦発熱 2件

腐敗ガス爆発 11件

未燃ガス爆発 6件

濃縮設備 腐敗ガス爆発 1件

硫化水素ガス発生 1件

図-2 汚泥処理におけるトラブル事例マップ

-202-

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-106-

確認されている。発生件数は近年やや増加傾向に

あるが,その原因として,脱水汚泥の配管圧送方

式が普及し,圧送配管内の汚泥から発生した腐敗

ガスに起因するトラブルが増加していることが挙

げられる。

(2) トラブル発生までの設備稼働年数

トラブル発生までの設備稼動年数について整理

したものを図-4に示す。稼動年数1年以内での

発生件数が際立って多く,全体の60%を占める。

これは,設計上の不具合や運転操作・維持管理の習

熟不足が要因となり,設備稼働開始直後に初期ト

ラブルとして顕在化するためと考えられる。

(3) 設備稼動時のトラブル発生タイミング

設備稼動時におけるトラブル発生タイミングに

ついて図-5に示す。正常運転時,起動時,停止

時,乾燥汚泥等保管時,と各々の段階においてト

ラブルが発生している。

設備別に見ると,焼却設備のトラブルはほとん

どが起動工程中に発生している。これは,焼却設

0

1

2

3

4

5

6

7

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

トラ

ブル

件数

(件

)

図-3 トラブル件数の推移

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24

トラブル発生までの稼動年数 (年以内)

トラ

ブル

件数

(件

)

図-4 トラブル発生までの稼動年数

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

正常運転時 待機運転中 正常起動

工程 故障停電後,

起動工程 定修後,

起動工程

正常停止

工程 緊急停止

工程 停止中 乾燥汚泥等

保管中

トラブル発生件数 (

件)

貯留・搬送

乾燥

炭化

焼却

溶融

図-5 設備稼動時におけるトラブル発生タイミング

-203-

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-107-

備の停止中に発生した腐敗ガスや未燃ガスが,再

起動時にバーナや電気集塵機のスパーク等を火種

としてガス爆発を起こす事例が多いためである。

一方,貯留・搬送設備に関わるトラブルは設備

停止中に多い。設備停止中は汚泥が長期間滞留す

るため,汚泥の腐敗が進行しやすく,圧力上昇に

よる密閉部分の機器破損等のトラブルが増加する

ためと考えられる。

また,乾燥設備に関わるトラブルは,正常運転

中が多いが,その他にも起動・停止,乾燥汚泥保管

時の各タイミングで発生している。

3.3.4 汚泥由来の可燃性ガスのトラブル事例

汚泥由来の可燃性ガスのトラブル事例として主なも

のは以下のとおりである。

① 焼却設備の炉内圧力異常上昇

② 排ガス処理での爆発

③ 溶融炉設備での圧力異常上昇(ガス爆発)

④ 汚泥取り扱い密閉部分の圧力上昇による破損

⑤ 炉燃焼空気ラインでのガス爆発

3.3.5 汚泥製品のトラブル事例

汚泥製品のトラブル事例として主なものは以下のと

おりである。

⑥ 乾燥機内での汚泥発火

⑦ ホッパ内での乾燥汚泥,炭化製品の自己発熱

⑧ 乾燥汚泥の粉塵爆発

3.4 要因分析

3.4.1 要因分析手法

トラブルの要因を分析する手法には,以下のものが

ある。

ツリー分析手法

① FTA

一つの故障事象を分析限界まで追跡し,種々の

一次的,二次的原因を可視化するトップダウン分

析手法である。

② ETA

基本事象が起きたという前提で,次に起こる事

象に対策を講じ,トップ事象に至らないようにす

る危機管理手法である。

定性的分析手法

③ FMEA

設計や工程における潜在的な欠点(故障モード)

を見出し,問題点を事前に明確にし,システムや

プラントにおける故障の影響度を評価する手法で

炉内に可燃性物質が存在

炉内に可燃性ガスが流入

汚泥供給ラインから流入

汚泥焼却設備の炉内圧力異常上昇

残留汚泥の滞留

汚泥プレ循環の実施

配管内水置換の実施

汚泥供給配管内にガス発生源が存在

誘引ファンによるプレパージ・CO濃度計による監視

ガス抜き装置の設置

圧力計の設置

エアー作動の遮断弁の設置

炉内で可燃性ガスが発生して滞留

燃焼空気ラインから流入

炉内にガス発生源が存在

炉内が高温状態

プレパージの結果が確認できない

停電により遮断弁が正常に動作しない

支燃性ガスの存在

火種の存在

与件と考える

与件と考える炉内のガス抜きが不十分

与件と考える

プレパージの時間が不十分

ケーキ供給配管内のガス抜きが不十分

炉燃焼空気ラインでのガス爆発FTA参照

炉起動時のプレパージ不十分

ケーキ投入ラインに遮断弁がない

ガス抜き状態が確認できない

設備停止中に炉内に汚泥が流入

ガス抜き装置がない

ANDゲート ORゲート事象 対策記号説明

図-6 汚泥焼却設備の炉内圧力異常上昇に関するFTA図

-204-

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-108-

ある。

④ HAZOP

化学プラントの安全性評価方法で,化学反応に

伴う潜在的な危険性を網羅的に摘出し,評価する

ことができる手法である。

3.4.2 要因分析

①のFTAは分かりやすい理論構造で,視覚的な解釈

がし易い。事故等に至る経緯や原因を明確にし,対策

を立案することが容易であり,ここではFTAの考え方

を用いる。

3.4.3 FTA図の作成および結果

トラブル事例から発生件数が も多い①汚泥焼却設

備の炉内圧力異常上昇のケースのFTAを図-6に示す。

3.5 安全対策

3.5.1 焼却設備の炉内圧力異常上昇

焼却設備のトラブル事例についての対策例の一部を

示す。

・汚泥プレ循環の実施

・ガス抜き装置の設置

・圧力計の設置

(1) 汚泥プレ循環の実施

脱水汚泥配管において,脱水汚泥の搬送を開始

(遮断弁開)する前に配管内のガス抜きのため,

配管内の脱水汚泥をプレ循環させる例を図-7に

示す。

脱 臭

P

脱水汚泥圧送ポンプ

焼却炉 他

遮断弁

汚泥循環弁

汚泥循環ライン

分岐は遮断弁に近い位置とする

脱水汚泥ホッパ

図-7 汚泥のプレ循環例

現状,脱水汚泥配管の圧力逃がしラインが設置

されているケースがあるが,この場合は配管径が

100A~150Aと細くなっている。汚泥循環の場合

は,循環ラインの圧力損失を少なくしなければ脱

水汚泥ホッパ等へ汚泥を戻すことができないため,

汚泥循環ラインの配管径は圧力逃がしラインの場

合より大きくなる。配管径は汚泥循環量から配管

圧損を考慮して決定する。遮断弁が閉の時は汚泥

循環弁を全開とし,配管内の圧抜き弁として機能

させるが,遮断弁を開とする前に汚泥圧送ポンプ

を一定時間運転(プレ循環)し,配管内の汚泥の

入れ替えを行うことで配管内のガス抜きを実施す

る。

プレ循環は汚泥圧送ポンプ吐出から分岐までの

間の脱水汚泥が,汚泥循環ライン側に移動可能な

時間実施する。

(2) ガス抜き装置の設置

脱水汚泥配管において,遮断弁の上流側直近に

配管内のガスを系外に抜き出すガス抜き装置を設

置する例を図-8に示す。汚泥圧送ポンプ停止中

は,ガス抜き装置から常にガスが抜けるよう,ガ

ス抜き装置側の弁は全開とし,汚泥圧送ポンプ運

転時は全閉とする。

(3) 圧力計の設置

脱水汚泥配管において,遮断弁の上流側直近

に圧力計を設置し,配管内の圧力を監視する例

を図-9に示す。配管内の圧力が高い場合に脱

水汚泥の配管搬送を開始すれば後段側に,配管

内の汚泥およびガスが一気に吹き出すことが考

えられる。圧力計により危険性の有無を判断し,

圧力が高い場合は,安全に配管内圧力を下げる対

応を実施する。

P

脱水汚泥圧送ポンプ

焼却炉 他

遮断弁

洗浄水

ガス抜き装置

ガス抜き弁

図-8 ガス抜き装置の設置例

P

脱水汚泥圧送ポンプ

焼却炉 他

遮断弁

PG

(プレ循環やガス抜き装置)

圧力計(警報接点付)

図-9 圧力計の設置例

-205-

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-109-

3.5.2 ホッパ内での乾燥汚泥,炭化製品の自己発熱

ホッパ内のトラブル事例についての対策例の一部を

示す。

・ホッパ内温度の常時監視,温度上昇時に窒素パー

ジ実施

・貯留物のプレ冷却

(1) ホッパ内温度の常時監視,温度上昇時に窒素パ

ージ実施

乾燥汚泥,炭化品等をホッパに貯留する場合,

貯留物の自己発熱によるトラブル防止対策として,

ホッパ内温度を常時監視し,温度上昇時には窒素

パージを実施する(図-10)。

(2) 貯留物のプレ冷却

乾燥汚泥,炭化品等をホッパに貯留する際の搬

送ラインにおいて,貯留物をプレ冷却することで

自己発熱から発火のトラブルの危険性を減少させ

る。

具体的には搬送ラインのコンベヤを水冷ジャケ

ット付とし,間接的に水冷する方法が採用されて

いる。

TIA

窒素ボンベ

貯留ホッパ

乾燥汚泥,炭化品

搬出

図-10 窒素パージ例

3.6 トラブル対応

3.6.1 予防保全

以下の項目について,基本的手順を示した。

・日常点検 ・定期点検 ・運転教育

・災害訓練 ・緊急連絡体制の整備

特に設備稼働後間もない時期は,トラブル事例の傾

向からもわかるように,設計上の不具合や運転操作,

維持管理の習熟不足を要因とするトラブルの発生が多

いため,十分な運転教育を必要とする。

また,万が一のトラブル発生に備え,トラブル発生

時における連絡・活動が円滑に行えるよう,関係者に

対する災害訓練が重要である。

3.6.2 トラブル発生時の処置

万一トラブルが発生した場合,被害や災害の拡大を

回避するために講じるべき処置を整理し,以下の優先

順位で示した。

① 関係労働者の避難,被災者の救護

② 施設の緊急停止

③ 燃料や原料供給源の停止

④ 安全設備の稼働

【本 編】

第1章 総則

第1節 目的

第2節 適用範囲

第3節 用語の定義

第2章 汚泥由来の可燃性ガスと汚泥製品の危険性

概要

第1節 汚泥由来の可燃性ガスの危険性

第2節 汚泥製品の危険性

第3章 トラブル事例

第1節 トラブル事例概要

第2節 トラブル事例の傾向

第3節 汚泥由来の可燃性ガスのトラブル事例

第4節 汚泥製品のトラブル事例

第4章 要因分析

第1節 要因分析

第2節 FTA(フォルトツリー分析)

第5章 安全対策

第1節 安全対策

第2節 安全対策実施例

第6章 トラブル対応

第1節 予防保全

第2節 トラブル発生時の処置

【資料編】

1. 危険性評価

2. アンケート結果

3. 関連法令

4. 問い合わせ先

4. マニュアル構成

-206-

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2005年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕

-110-

本研究において,汚泥由来の可燃性ガスや汚泥製品

の危険性を整理し,アンケート調査により過去のトラ

ブル事例を明らかにしたうえで,それぞれの要因を分

析し,安全対策や留意事項をまとめることができた。

また,日頃の予防保全やトラブルが発生した場合の処

置についても,整理することができた。

本研究における成果は,「汚泥由来の可燃性ガスと汚

泥製品の安全対策に関する技術資料」として取りまと

めている。今後,本書の適切な利用が図られ,安全な

作業環境のもと,下水汚泥の有効利用が促進すること

を願う次第である。

●この研究を行ったのは

研究第二部長 松浦 將行

研究第二部総括主任研究員 桐原 隆

研究第二部主任研究員 関 一

研究第二部研究員 吉野 大輔

●この研究に対するお問い合わせは

研究第二部長 松浦 將行

研究第二部総括主任研究員 目黒 享

研究第二部総括主任研究員 関 一

研究第二部主任研究員 長岡 英明

5. まとめ

-207-