6
1. 下水道施設から排出される温室効果ガスは,図- に示すように,2009 年度で約 670 万 t-CO 2 である。 ポンプ,水処理のばっ気用ブロワなど電力使用由来 が一番多く,処理場とポンプ場を合わせると約 60% を占めている。次いで,下水汚泥焼却炉の燃焼過程 で発生する一酸化二窒素(以後 N 2 O という)由来の 温室効果ガスが約 20%と高い割合を占めている。こ れは,N 2 O の温暖化係数が 310 と高いため,濃度が ppm オーダーでも影響が大きいためである。また, N 2 O は,無毒であるが安定しており,長期にわたり環 境に影響を及ぼすため,下水汚泥焼却炉からの N 2 O 削減が必要である。 N 2 O 削減対策は,従来炉の 800℃の燃焼温度に対し 850℃の高温焼却で対策しているが,さらに削減余地が あること,高温にするための補助燃料増加が課題であ る。 このような背景により,本研究では,下水汚泥焼却 炉からの温室効果ガス,特に N 2 O を削減し,同時に補助 燃料増加も抑制する N 2 O削減技術について整理・調査す ることを目的とし,技術資料としてまとめた。 対象は,下水汚泥焼却炉で主流の気泡式流動炉, 循環式流動炉,階段式ストーカ炉とし,導入効果の 評価として,炉内温度分布,炉内温度と N 2 O 排出量 原単位の関係,運転時の補助燃料と電力を含めた温 室効果ガス排出量について検討し,他に省エネ効果 の試算を行った。 電力 (処理場) 54% 電力 (ポンプ場) 6% 燃料 6% 水処理 (CH 4 4% 水処理 (N 2 O) 10% 汚泥焼却 (N 2 O) 20% その他 0% 合計 約670万t- CO 2 (2009年度) 図-1 下水道からの温室効果ガス排出量 2. 本研究は,水 ing(株),(株)クボタ,(株)神鋼環 境ソリューション,(株)タクマおよび(財)下水道新 技術推進機構の計5者が共同で実施した。 3. 本研究は,①N 2 O 削減技術の整理,②導入効果につ いて調査を行い,成果を技術資料として取りまとめ た。 下水汚泥焼却炉は,表-1に示す形式の炉が採用 されている。気泡式流動炉は,下水汚泥焼却炉の約 60%を占めている。循環式流動炉はそれに続き約 25%を占めている。多段焼却炉は,新規採用がほと んどない。そのため,気泡式流動炉,循環式流動炉, 最新汚泥焼却炉のN O削減に 関する共同研究 -49- 2011 年度 下水道新技術研究所年報

【 本 文 】最新汚泥焼却炉の N 2O排出量に関する共同研究...4.2 導入効果 N2Oは高温で熱分解されるため炉内最高温度が重 要である。二段燃焼法では熱分解(ガス化)の温度

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Page 1: 【 本 文 】最新汚泥焼却炉の N 2O排出量に関する共同研究...4.2 導入効果 N2Oは高温で熱分解されるため炉内最高温度が重 要である。二段燃焼法では熱分解(ガス化)の温度

1.����

下水道施設から排出される温室効果ガスは,図-

1に示すように,2009年度で約670万t-CO2である。

ポンプ,水処理のばっ気用ブロワなど電力使用由来

が一番多く,処理場とポンプ場を合わせると約 60%

を占めている。次いで,下水汚泥焼却炉の燃焼過程

で発生する一酸化二窒素(以後 N2O という)由来の

温室効果ガスが約 20%と高い割合を占めている。こ

れは,N2O の温暖化係数が 310 と高いため,濃度が

ppm オーダーでも影響が大きいためである。また,

N2O は,無毒であるが安定しており,長期にわたり環

境に影響を及ぼすため,下水汚泥焼却炉からの N2O

削減が必要である。

N2O 削減対策は,従来炉の 800℃の燃焼温度に対し

850℃の高温焼却で対策しているが,さらに削減余地が

あること,高温にするための補助燃料増加が課題であ

る。

このような背景により,本研究では,下水汚泥焼却

炉からの温室効果ガス,特にN2Oを削減し,同時に補助

燃料増加も抑制するN2O削減技術について整理・調査す

ることを目的とし,技術資料としてまとめた。

対象は,下水汚泥焼却炉で主流の気泡式流動炉,

循環式流動炉,階段式ストーカ炉とし,導入効果の

評価として,炉内温度分布,炉内温度と N2O 排出量

原単位の関係,運転時の補助燃料と電力を含めた温

室効果ガス排出量について検討し,他に省エネ効果

の試算を行った。

電力

(処理場)54%

電 力

(ポンプ場)

6%

燃 料

6%

水処理

(CH4)

4%

水処理

(N2O)10%

汚泥焼却

(N2O)

20%

その他

0%

合計

約670万t-CO2

(2009年度)

図-1 下水道からの温室効果ガス排出量

2.����

本研究は,水 ing(株),(株)クボタ,(株)神鋼環

境ソリューション,(株)タクマおよび(財)下水道新

技術推進機構の計5者が共同で実施した。

3.����

本研究は,①N2O 削減技術の整理,②導入効果につ

いて調査を行い,成果を技術資料として取りまとめ

た。

下水汚泥焼却炉は,表-1に示す形式の炉が採用

されている。気泡式流動炉は,下水汚泥焼却炉の約

60%を占めている。循環式流動炉はそれに続き約

25%を占めている。多段焼却炉は,新規採用がほと

んどない。そのため,気泡式流動炉,循環式流動炉,

最新汚泥焼却炉のN2O削減に

関する共同研究

-49-

2011 年度 下水道新技術研究所年報

Page 2: 【 本 文 】最新汚泥焼却炉の N 2O排出量に関する共同研究...4.2 導入効果 N2Oは高温で熱分解されるため炉内最高温度が重 要である。二段燃焼法では熱分解(ガス化)の温度

階段式焼却炉(ストーカ炉)を対象として調査を行

った。

表-1 下水汚泥焼却炉の形式別基数

炉の形式 基数

気泡流動炉 163

循環流動炉 70

多段焼却炉 17

階段式焼却炉 10

溶融炉 34

その他焼却炉 19

合 計 313(平成21年度版下水道統計より)

4.����

4.1 N2O 削減技術

気泡式流動炉と循環式流動炉の N2O 削減技術は,

一次空気で有機物の熱分解(ガス化)を促進し,二

次空気により高温域を形成して N2O を高温で熱分解

する二段燃焼法である。一次空気を低空気比で供給

するため熱分解(ガス化)温度が低くなりNO,N2Oの抑

制効果も期待できる。また,可燃性の熱分解ガスが

増加するため後段の二次空気で燃焼するときの燃料

となり,補助燃料の増加が抑えられる。

階段式ストーカ炉は,脱水汚泥を乾燥してから焼

却することで炉内温度を高くし N2O を高温で熱分解

する技術である。

4.1.1 気泡式流動炉

図-2に気泡式流動炉の概要を示す。従来炉は燃

焼空気を砂層下部から全量供給している。砂層で流

動砂が流動し脱水汚泥と混合し,脱水汚泥の乾燥,

熱分解(ガス化),部分燃焼が行われる。さらに,フ

リーボード部で完全燃焼する。

二段燃焼法では,燃焼空気を分割し一次空気とし

て砂層下部,二次空気としてフリーボード部へ供給

する。砂層部の燃焼空気量が減るため,砂層部の流

動性確保に留意する必要がある。

脱水汚泥

補助燃料

二次空気一次空気

������

��

図-2 気泡式流動炉

4.1.2 循環式流動炉

図-3に循環式流動炉の概要を示す。従来炉は循

環式流動炉のライザー下部に燃焼空気を全量供給し

ている。流動砂が,ライザーとサイクロン間を循環

しており,脱水汚泥は流動砂と混合しながら,乾燥,

熱分解(ガス化),燃焼する。サイクロンで排ガス・

焼却灰と流動砂が分離する。

二段燃焼法では,二次燃焼室を設け,燃焼空気を

分割し一次空気としてライザー下部,二次空気とし

て二次燃焼室に供給する。気泡式流動炉と比較する

と流動砂の温度を維持しやすいため,一次空気の空

気比を低くすることが出来る。

脱水汚泥

補助燃料

二次空気

一次空気

ループシール

排ガス

ライザ|

二次燃焼室

図-3 循環式流動炉

4.1.3 階段式ストーカ炉

図-4に階段式ストーカ炉の概要を示す。含水率

約 80%の脱水汚泥を約 40%まで乾燥した乾燥汚泥

を焼却する。乾燥汚泥は,ストーカ上を乾燥段から

燃焼段へ進みながら燃焼する。含水率が小さいため,

炉内温度が高くなり,N2O を高温で熱分解する。

脱水汚泥を乾燥する熱源は、排ガスより廃熱ボイ

ラで熱回収し,蒸気を乾燥機へ供給している。炉本

体だけでなく乾燥機を含めた焼却システムとして

N2O を削減している。

二次空気

一次空気

乾燥汚泥

補助燃料

�����蒸気

乾燥機へ

図-4 階段式ストーカ炉

2011 年度 下水道新技術研究所年報

-50- -51-

2011 年度 下水道新技術研究所年報

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4.2 導入効果

N2O は高温で熱分解されるため炉内最高温度が重

要である。二段燃焼法では熱分解(ガス化)の温度

も重要であるため,炉内温度分布について調査した。

N2O 削減効果は,N2O 排出原単位を使って検討した。

また,N2O 削減技術には,補助燃料の抑制と両立する

ことが求められているため,焼却運転時の温室効果

ガス発生源である,①排ガス中の N2O,②補助燃料,

③電力を含めた設備全体の温室効果ガス排出量で検

討した。補助燃料については,さらに,省エネ効果

を試算した。

調査では,表-2に示す実設備のデータを使用し

た。補助燃料と電力の使用量は、炉の規模が大きい

ほど処理量当たりの使用量が少なくなる傾向がある。

そのため,実設備データでの評価には炉の規模によ

る違いを考慮する必要がある。

表-2 データ収集した実設備の仕様

気泡式流動炉A社

気泡式流動炉B社

気泡式流動炉C社

循環式流動炉C社

階段式ストーカ

炉 D社

定格処理量 35t/日 50t/日 150t/日 145t/日 60t/日

含水率(炉供給時)

77% 77% 72% 77% 40%

可燃分 87% 85% 68% 79% 58%

窒素含有率5.6

wt%-dry3.9

wt%-dry5.5

wt%-dry4.3

wt%-dry3.6

wt%-dry

その他 高分子系 高分子系 高分子系 高分子系 石灰系汚泥

4.2.1 炉内温度分布

下水汚泥の焼却は,乾燥,有機物の熱分解(ガス

化),燃焼とプロセスが進むが,各プロセスの温度や

滞留時間によって状態が変化する。熱分解(ガス化)

で発生する HCN と NH3は,共に N2O へ転換したり,NO

を還元するが,その割合は違う。例えば,熱分解(ガ

ス化)温度が低いほど HCN より NH3が多く発生し N2O

発生量が減る傾向がある。また,燃焼プロセスでの

N2O の熱分解は,同じ温度の場合に滞留時間が長いほ

ど N2O の分解が進む。

各炉の炉内温度分布を気泡式流動炉は一次空気入

口から炉の出口までの距離をベースにし相対的な距

離で各温度を示す。循環式流動炉は一次空気入口か

ら二次燃焼室出口までの距離をベースに各温度を示

す。階段式ストーカ炉は,一次空気を供給するスト

ーカ乾燥段から廃熱ボイラ出口までの距離をベース

に各温度を示す。

気泡式流動炉の温度分布例を図-5に示す。従来

炉は,砂層部から温度が上昇し,フリーボード上部

が最高温度となる。それに対し,二段燃焼法を適用

すると,砂層部の温度が低くなりフリーボードで高

温域が出来るため温度差が大きくなる。また,二次

空気の供給により,最高温度の位置がフリーボード

上部から下部方向へ下がる。この時,高温域が広く

なる効果もあり,N2O の熱分解が促進される。

なお,C社の場合は,一部脱水汚泥を乾燥している

ため,投入汚泥の含水率が低くA社,B社と比較する

と砂層部の温度が高くなっている。

700 750 800 850 900 950 1000

��

��

��

����

��

��

���]

���� �℃]

A社

B社

C社

������

��

���

図-5 気泡式流動炉の炉内温度分布例

循環式流動炉の温度分布例を図-6に示す。二段

燃焼法で一次空気を供給するライザーでの熱分解

(ガス化)と二次空気を供給する二次燃焼室の高温

域でのN2Oの熱分解の二つの温度帯に分かれている。

それぞれの温度帯の滞留時間が長く取れるため運転

が安定する。また,流動砂の循環により,ライザー

部の温度維持が容易であるため気泡式流動炉と比較

すると一次空気の空気比を低く運転できる。

700 750 800 850 900 950 1000

��

���

��

���

��

��

���]

���� �℃]

�����

��

��

��

���

����

図-6 循環式流動炉の炉内温度分布例

階段式ストーカ炉の温度分布を図-7に示す。ス

トーカから炉出口,ボイラ入口の二次燃焼部までが

燃焼領域であり,それ以降の廃熱ボイラ部が熱回収

領域である。

乾燥汚泥を供給しているため,温度上昇が早い。

また,炉内最高温度が,気泡式流動炉,循環式流動

炉より高くなっている。

-51-

2011 年度 下水道新技術研究所年報

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200 300 400 500 600 700 800 900 1000

ストー

カ�

���

��

��

��

炉�温� �℃]

炉��

炉�

��燃焼

ストーカ

�����

��

図-7 階段式ストーカ炉の炉内温度分布例

4.2.2 N2O 排出量原単位

排出量原単位は,炉供給汚泥あたりの N2O 排出量

を示す“N2O 排出係数”や供給汚泥中の窒素が N2O と

なる割合を示す“N2O 変換率”がある。N2O 排出係数

は,省令「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガ

ス排出量の算定に関する省令」で使われ一般的であ

る。N2O 変換率は,下水汚泥の含水率の影響を受けな

い特徴がある。

N2O 削減は,主に高温の熱分解によるので,炉内温

度と排出量原単位の関係でまとめた。図-8に実設

備でのN2O排出係数と炉内最高温度との関係を示す。

省令で示された従来型流動焼却炉の 800℃燃焼と

850℃燃焼の N2O 排出係数は,黒丸で示し点線で結ん

でいる。

全体として 880℃程度までは,炉内最高温度と N2O

排出係数は負の相関があり,それ以上の温度では,

N2O 排出係数は非常に小さくなっている。

各炉の N2O 排出係数は,いずれも省令の 850℃燃焼

時より小さい値となり,燃焼温度の高温化により N2O

削減ができている。

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

800 850 900 950 1000

N2O排

���

����N2O�������

炉��高温���]

省令(高分子系,流動床炉)

気泡式流動炉 A社

気泡式流動炉 B社

気泡式流動炉 C社

循環式流動炉 C社

階段式ストーカ炉 D社

図-8 炉内最高温度と N2O 排出係数

4.2.3 温室効果ガス排出量

図-9に従来型気泡流動炉の温室効果ガス排出量

の例を示す。排ガス中の N2O は,省令の数値を使っ

た。補助燃料と電力は,設備規模や下水汚泥性状に

より,変化するため,処理量 100t/日,表-3に示

す汚泥性状と仮定し試算した。

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

800℃ 850℃

温�

��

ガス排��

[t-C

O2/

wet

-t]

補助燃料由来

電力由来

排ガスN2O由来

通常燃焼 高温燃焼

図-9 気泡式流動炉の温室効果ガス排出量

表-3 下水汚泥の試算条件

含水率 78%

可燃分 74%

発熱量(高位) 17 500kJ/kg-ds

図-10に表-2に示した実設備の温室効果ガス

排出量を示す。排ガス中の N2O 由来の温室効果ガス

は,図-9と比較すると大幅に減少している。高温

域での N2O の熱分解の効果が現れている。設備規模

や汚泥性状による影響を考慮する必要があるが,補

助燃料と電力を含めた全体の温室効果ガス排出量で

見ても減少している。

0.00

0.10

0.20

0.30

0.40

875℃ 878℃ 873℃ 902℃ 950℃温�

��

ガス

排�

����O

2������]

炉��高温��℃]

補助燃料由来

電力由来

排ガスN2O由来

気泡 �社

������階段式

������

循環式

���2��

気泡 �社

������

気泡 �社

������

図-10 実設備の温室効果ガス排出量

4.2.4 省エネ効果

N2O 削減技術を適用したときの補助燃料使用量の

抑制について検討を行った。補助燃料使用量は,炉

の規模や汚泥性状の影響を無くすため,炉の規模を

100 t/日,表-3に示す汚泥性状,他の条件を同じ

として試算した。

表-4に気泡式流動炉の試算結果を示す。気泡式

流動炉では 850℃の高温焼却と比較した。炉内温度

分布の違いから,A社とB社の気泡式流動炉は,炉

出口温度を低くできることから補助燃料の使用量を

2011 年度 下水道新技術研究所年報

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2011 年度 下水道新技術研究所年報

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試算した。C社気泡式流動炉は同じ炉出口温度

850℃とし砂層温度の違いから補助燃料使用量を試

算した。

試算により補助燃料削減効果が4~8%ある結果

となった。

表-4 気泡式流動炉の省エネ試算

気泡式流動炉A社

気泡式流動炉B社

気泡式流動炉C社

比較方法 ・高温焼却(850℃)と同等のN2O削減効果を二段燃焼法で行った場合の補助燃料削減効果を試算した。

・炉内温度分布の違いにより,A社,B社は炉出口温度,C社は砂層温度を下げる運転とする。

比較条件炉出口850℃に対し二段燃焼法では10℃下げて運転

炉出口850℃に対し二段燃焼法では7℃下げて運転

炉出口は850℃で同一とし,砂層温度820℃に対して50℃下げて運転

省エネ効果 約8%削減6.6

L/h削減(A重油)

約6%削減5.1

L/h削減(A重油)

約4%削減4.0

Nm3/h削減(都市ガス)

表-5に循環式流動炉の試算結果を示す。N2O 削減

技術を適用しない運転をすることが出来ないため,

循環式流動炉では,二次燃焼室出口温度が 850℃の

時の炉内最高温度になるように従来型の循環式流動

炉の炉出口温度を高くした場合を試算し比較した。

試算により補助燃料削減効果が 21%ある結果と

なった。

表-5 循環式流動炉の省エネ試算

循環式流動炉C社

比較方法 ・二段燃焼適用時に高温焼却と同じ炉出口850℃とした場合と同じN2O削減が得られるまで,従来方式の炉出口温度を高くした場合の補助燃料使用量を比較した。

比較条件 ・二段燃焼適用時に炉出口850℃とし,従来方式では炉出口890℃として運転。

省エネ効果 約21%削減22Nm3/h削減(都市ガス)

表-6に階段式ストーカ炉の試算結果を示す。階

段式ストーカ炉は,N2O 削減技術を適用しない運転を

することが出来ないため,仮定した条件での補助燃

料使用量を試算した。また,廃熱ボイラがあるため,

追加設備なしで熱回収が可能であるため,汚泥性状

を変化したときの余剰蒸気発生量を試算した。

表-6 階段式ストーカ炉の省エネ試算

階段式ストーカ炉 D社

検討方法 ・二段燃焼法を適用しないため補助燃料使用量を試算した。ゼロとなった場合は,余剰蒸気による熱回収をおこない発電可能量を試算した。

省エネ効果 ・試算条件の汚泥性状では,廃熱ボイラからの蒸気と乾燥蒸気がバランスし補助燃料がゼロとなる。

・含水率が低下し可燃分が増加すると余剰蒸気を有効利用できる。余剰蒸気2000kg/hで約74kW発電可能

補助燃料の使用量は,試算条件でゼロとなった。

図-11に汚泥性状を変化させたときの余剰蒸気発

生量の試算結果を示す。含水率が小さくなり,可燃

分が多くなるほど余剰蒸気量が増える。余剰蒸気の

発生量が 1000kg/h 以上あれば,市販のスチーム発電

機で発電可能である。

図-11 階段式ストーカ炉での熱回収

5.����

本研究の成果を「汚泥焼却炉からのN2O削減に

関する技術資料」として取りまとめた。

技術資料には,今まで述べた成果の他に①N2O 発生

源,生成機構,既存の削減技術についての文献等の

調査結果②削減技術適用時の焼却炉の運転方法(制

御方法)③システム設計上の基本事項についても示

している。

技術資料の構成は以下のとおりである。

第1章 総 則

第1節 目 的

第2節 適用範囲

第3節 背 景

第4節 用語の定義

第2章 技術の概要と特徴

第1節 N2O 発生について

第2節 炉形式の説明と従来技術

第3節 N2O 削減技術

第3章 導入効果

第1節 N2O 排出量原単位

第2節 副次的な導入効果

第4章 システム設計上の基本事項

第1節 設計方法

第2節 設計上の留意点

資料編

1. 実験プラントでの N2O 削減試験

2. 技術紹介

3. 問い合わせ先

-53-

2011 年度 下水道新技術研究所年報

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6.���

本研究により最新の下水汚泥焼却炉のN2O削減技

術は,850℃の高温燃焼以上に削減することが可能で

あることを確認できた。焼却運転全体の温室効果ガ

ス排出量で見ても十分な削減効果が確認できた。

N2O 削減技術を既設炉や新設炉へ導入するに当た

っては,導入先のニーズがあり,コスト,維持管理,

適用可能な技術の制約等広範囲の検討が必要である。

そのため,本研究では,炉形式毎の技術の優劣を比

較することは目的としておらず,それぞれの炉で N2O

削減対策を検討し実施されることを期待している。

「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」

では,N2O削減技術適用について流動床炉の高温焼却

以外に,N2Oの削減分を温室効果ガス排出量に反映さ

せる方法がオーソライズされておらず,各事業者が

実測等して自ら確認する必要がある。

N2O排出量の算定にN2O排出係数と燃焼温度を関連付

ける等,N2O 削減効果が温室効果ガス排出量の算出に

反映されるように,更にデータを蓄積して行きたい。

●この研究を行ったのは ●この研究に関するお問い合わせは

資源循環研究部長 石田 貴 資源循環研究部長 石田 貴

資源循環研究部副部長 落 修一 資源循環研究部副部長 落 修一

資源循環研究部総括主任研究員 長沢 英和 資源循環研究部総括主任研究員 長沢 英和

資源循環研究部研究員 阿部 真由美 資源循環研究部研究員 小川 裕正

【03-5228-6541】

2011 年度 下水道新技術研究所年報

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