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- 109 - 両生類 カスミサンショウウオ Hynobius nebulosus (Temminck et Schlegel) 岡山県:絶滅危惧Ⅰ類 環境省:絶滅危惧Ⅱ類 サンショウウオ目 サンショウウオ科 撮影:山田 勝 選定理由 県内に広く分布するが、非常に不安定な環境下に生息する。農業 従事者の高齢化・後継者不足等による山際の水田・畑地の耕作放棄、 圃場整備等による水場の消失と、乾燥化により産卵場所を失い、急 速に個体数を減らしている。 存続を脅かす要因 林相変化、池沼開発、用水路改修、ダム建設、土地造成、圃場整 備、業者・マニア採取、側溝転落、水質汚濁、農薬汚染、産地局限 分布状況 丘陵地や山地の池沼周辺の林床に生息する。日本固有種で、本州 の鈴鹿山脈以西に広く分布する。岡山県では全域に分布するが、産 地は局所的で個体数も少ない。 生息情報 小型の止水性サンショウウオで、全長 70 ~ 110mm 前後。体側 に灰色の地衣状斑紋や尾の上下両縁に淡黄褐色の条をもつ個体が多 い。1 ~ 4 月ころ山際の池や沼、田溝、畑の溝などの浅い止水中で 産卵する。卵は 1 対のバナナ状あるいはコイル状の透明な卵のうに 包まれ、枯れ枝や石などに付着させる。約1か月でふ化した幼生は 外鰓とバランサーを持つ。約 3 か月で変態し、上陸する。 文献番号 5,11,12 (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝) ブチサンショウウオ Hynobius naevius (Temminck et Schlegel) 岡山県:絶滅危惧Ⅱ類 環境省:準絶滅危惧 サンショウウオ目 サンショウウオ科 撮影:山田 勝 選定理由 山間渓流以外にも中部の里地に近接した小渓流などに生息があ り、開発等により人知れず絶滅する可能性がある。 存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、道路工事 (林道工事)、土地造成、水質汚濁、産地局限 分布状況 山地の渓流付近に生息する。日本固有種で、鈴鹿山脈以西の本 州・四国・九州に分布する。岡山県では主に中北部の標高の高い山 地の渓流付近に分布するが、生息地は飛び地的で、個体数も限られ る。 ヒダサンショウウオとは、幼生の区別が難しく、新見地方では両種 の幼生をカクと混称する。 生息情報 小型の流水性サンショウウオで、全長 100 ~ 130mm 前後。背面 は紫がかった暗褐色で、地衣状斑紋がある。上顎中央の歯列は浅い V字形。山地の渓流近くで生活し、小動物を捕獲する。4 ~ 5 月こ ろ流水中の石の裏や渓流の倒木の下などに 1 対の透明なバナナ状の 卵のうを産み付ける。 文献番号 5,11,12 (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

カスミサンショウウオ - pref.okayama.jp · -112- 両生類 ニホンヒキガエル Bufo japonicus japonicus Temminck et Schlegel 岡山県:絶滅危惧Ⅱ類 環境省:該当なし

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両生類

カスミサンショウウオ

Hynobius nebulosus (Temminck et Schlegel)

岡山県:絶滅危惧Ⅰ類

環境省:絶滅危惧Ⅱ類

サンショウウオ目

サンショウウオ科

撮影:山田 勝

選定理由 県内に広く分布するが、非常に不安定な環境下に生息する。農業従事者の高齢化・後継者不足等による山際の水田・畑地の耕作放棄、圃場整備等による水場の消失と、乾燥化により産卵場所を失い、急速に個体数を減らしている。

存続を脅かす要因 林相変化、池沼開発、用水路改修、ダム建設、土地造成、圃場整備、業者・マニア採取、側溝転落、水質汚濁、農薬汚染、産地局限

分布状況 丘陵地や山地の池沼周辺の林床に生息する。日本固有種で、本州の鈴鹿山脈以西に広く分布する。岡山県では全域に分布するが、産地は局所的で個体数も少ない。

生息情報 小型の止水性サンショウウオで、全長 70 ~ 110mm前後。体側に灰色の地衣状斑紋や尾の上下両縁に淡黄褐色の条をもつ個体が多い。1~ 4 月ころ山際の池や沼、田溝、畑の溝などの浅い止水中で産卵する。卵は 1対のバナナ状あるいはコイル状の透明な卵のうに包まれ、枯れ枝や石などに付着させる。約1か月でふ化した幼生は外鰓とバランサーを持つ。約 3か月で変態し、上陸する。

文献番号 5,11,12� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

ブチサンショウウオ

Hynobius naevius (Temminck et Schlegel)

岡山県:絶滅危惧Ⅱ類

環境省:準絶滅危惧

サンショウウオ目

サンショウウオ科

撮影:山田 勝

選定理由 山間渓流以外にも中部の里地に近接した小渓流などに生息があり、開発等により人知れず絶滅する可能性がある。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、道路工事(林道工事)、土地造成、水質汚濁、産地局限

分布状況 山地の渓流付近に生息する。日本固有種で、鈴鹿山脈以西の本州・四国・九州に分布する。岡山県では主に中北部の標高の高い山地の渓流付近に分布するが、生息地は飛び地的で、個体数も限られる。ヒダサンショウウオとは、幼生の区別が難しく、新見地方では両種の幼生をカクと混称する。

生息情報 小型の流水性サンショウウオで、全長 100 ~ 130mm前後。背面は紫がかった暗褐色で、地衣状斑紋がある。上顎中央の歯列は浅いV字形。山地の渓流近くで生活し、小動物を捕獲する。4~ 5 月ころ流水中の石の裏や渓流の倒木の下などに 1対の透明なバナナ状の卵のうを産み付ける。

文献番号 5,11,12� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

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両生類

ヒダサンショウウオ

Hynobius kimurae Dunn

岡山県:準絶滅危惧

環境省:準絶滅危惧

サンショウウオ目

サンショウウオ科

撮影:山田 勝

選定理由 岡山県内では県北部の山間渓流に限って比較的広く生息が確認されているが、生息地は局所的で、個体数も少なく、河川開発・林道工事などで消失する可能性が高い。

存続を脅かす要因 森林伐採、�林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、道路工事(林道工事)、水質汚濁、産地局限

分布状況 山地の渓流付近に生息する。日本固有種で、関東地方以西の本州に分布する。岡山県では北部の標高の高い山地の渓流付近に分布が限られている。ブチサンショウウオとは、幼生の区別が難しく、新見地方では両種の幼生をカクと混称する。今のところJR姫新線以南での確認例はない。

生息情報 小型の流水性サンショウウオで、全長 80 ~ 150mm前後。背面は褐色で、橙黄色の地衣状斑紋がある。腹面は淡色で斑紋がない。上顎中央の歯列は深いU字形。山地の渓流近くで生活し、小動物を捕食する。4月ころ流水中の石の裏などに 1対の透明なバナナ状の卵のうを産み付ける。幼生の爪は黒い。

文献番号 5,11,12� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

ハコネサンショウウオ

Onychodactylus japonicus (Houttuyn)

岡山県:準絶滅危惧

環境省:該当なし

サンショウウオ目

サンショウウオ科

撮影:山田 勝

選定理由 県境付近の高標高域の渓流に限って生息する。県内での生息地は限定され、森林伐採、河川開発・林道工事等により絶滅する可能性が高い。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、道路工事(林道工事)、水質汚濁、産地局限

分布状況 山地の渓流付近に生息する。日本固有種で、本州と四国に分布する。岡山県では北部の標高の高い山地の渓流付近に分布が限られる。生息地は極めて少なく、岡山県内での卵の発見例はまだない。

生息情報 小型の流水性サンショウウオで、全長 100 ~ 190mm前後。尾長は頭胴長より長い。背面は紫褐色で、背面中央に朱黄色あるいは褐色の帯がある。腹面は淡色。肺を持たず、皮膚呼吸をする。山地の渓流近くで生活し、小動物を捕食する。5月ころ湧水中の石の裏などに 1対の半透明の棍棒状の卵のうを産み付ける。幼生は爪が黒く、四肢に膜ひれがある。幼生のまま越冬し、3年目に成体となる。大きな幼生は 100mmを超える。

文献番号 5,11,12� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

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両生類

オオサンショウウオ

Andrias japonicus (Temminck)

岡山県:絶滅危惧Ⅰ類

環境省:絶滅危惧Ⅱ類

サンショウウオ目

オオサンショウウオ科

撮影:伊藤�邦夫

選定理由 多くの山地渓流へ設置された堰堤などにより、いやおうなく移動を制限され、生息地が消失し、個体数の減少が著しい。

存続を脅かす要因 河川開発、川相変化、ダム建設、道路工事(林道工事)、狩猟影響(密漁影響)、水質汚濁、産地局限

分布状況 日本固有種で、岐阜県以西の本州・九州の大分県に分布する。岡山県では北部の河川や用水などに生息する。河川や用水路の改修やダム建設などによって生息場所や産卵場所が破壊され、個体数が減少している。食用目的の密漁がある。

生息情報 全長 1mを超える世界最大級の両生類。背面は茶褐色、暗褐色の不規則な斑紋がある。眼は小さい。頭から背に多数のイボがある。尾は短く、全長の 1/3。河川の上流部に生息。産卵は 8~ 9月ころ、雄は川岸の水中の穴を占有し、雌を待つ。卵は黄白色、透明な卵のうに包まれて数珠つなぎになっている。魚、サワガニなどを捕食する。

特記事項 文化財保護法による特別天然記念物に指定されている。 種の保存法による国際希少野生動植物に指定されている。

文献番号 5,6,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

アカハライモリ

Cynops pyrrhogaster (Boie)

岡山県:準絶滅危惧

環境省:準絶滅危惧

サンショウウオ目

イモリ科

撮影:山崎�法子

選定理由 全県下で確認されているが、田溝のコンクリート化などにより特に県南部の山間地での減少が著しい。

存続を脅かす要因 池沼開発、河川開発、用水路改修、圃場整備、水質汚濁、農薬汚染

分布状況 池や川、田溝など止水域あるいは緩流域に生息する。日本固有種で、本州・四国・九州に分布する。岡山県では南部の平野部を除き全域に分布する。中北部には普通だが、南部の山間部などでは少なくなりつつある。

生息情報 全長 80 ~ 130mm前後。背面は黒褐色、腹面は赤色あるいは橙色で、黒褐色の不規則な斑紋がある。体表には多数の小さなイボがある。 背中線上には頭部後端から尾に至る隆条がある。繁殖行動は 4月ころ始まる。雄は精包(精子塊)を落とし、雌はそれを体内の貯精のうに保存し、4月末~ 5月中旬ころ卵を受精させて産卵する(体内受精だが、交尾をしない)。卵は 1個ずつ水中の草などに産み付ける。カスミサンショウウオの幼生と似ているが、側線器があることで区別できる。

文献番号 5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

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両生類

ニホンヒキガエル

Bufo japonicus japonicus Temminck et Schlegel

岡山県:絶滅危惧Ⅱ類

環境省:該当なし

カエル目

ヒキガエル科

撮影:山田 勝

選定理由 県内には広く分布するが、森林伐採や土地造成、河川開発などの影響を受け、個体数を減らしている。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、池沼開発、河川開発、湿地開発、土地造成、圃場整備、水質汚濁

分布状況 日本固有種で、本州・四国・九州などに分布する。岡山県では全域に分布するが、中南部で個体数が減少している。

生息情報 大型のカエルで、体長 70 ~ 150mm前後。体色は基本的には褐色であるが、黄色がかったもの、赤みの強いものなど変異が多い。皮膚には大小の隆起があり(繁殖期には滑らかになる)、耳線からは白い液を分泌することがある。平地から山地の林床で生活し、主に夜間に行動し、小動物を捕食する。2~ 3 月ころ池や沼、田溝などの浅い止水中で産卵する。卵は直径約 2mmで、長さ数mにも及ぶ透明な紐状の卵のうに包まれている。

特記事項 岡山県自然保護条例により自然環境保全地域(鯉ヶ窪地域)で保護すべき種に指定。

文献番号 4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

タゴガエル

Rana tagoi tagoi Okada

岡山県:留意

環境省:該当なし

カエル目

アカガエル科

撮影:山田 勝

選定理由 山間小渓流に生息があるが、河川開発等により人知れず絶滅する可能性がある。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、湿地開発、道路工事(林道工事)

分布状況 山地の渓流付近に生息する。日本固有種で、本州・四国・九州に分布する。岡山県では中北部に分布し、標高 500mを超える山地にもいるが、個体数は多くない。

生息情報 小型のカエルで、体長 40 ~ 50mm前後。背面は赤褐色で、吻端から目の後方にかけて黒い帯状の斑紋がある。腹面は大小の黒色の斑紋があり、汚れた感じがする。繁殖期のオスは体側の皮膚が伸びて膜状になる。山地の渓流近くで生活し、小動物を捕食する。3~ 4月ころ、直接日の当たらない穴の奥や石の下などに、直径 3~4mmの卵を 60 ~ 100 個ほど卵塊として産み付ける。

特記事項 岡山県自然保護条例により自然環境保全地域(鯉ヶ窪地域)で保護すべき種に指定。

文献番号 4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

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両生類

ナガレタゴガエル

Rana sakuraii Matsui et Matsui

岡山県:絶滅危惧Ⅰ類

環境省:該当なし

カエル目

アカガエル科

撮影:山田 勝

選定理由 岡山県内では 2007 年 11 月に苫田郡鏡野町で生息が初めて確認された。県内における生息地はわずかで、個体数も非常に少なく、林道工事などでまたたく間に消失する危険性が高い。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、道路工事(林道工事)、水質汚濁、産地局限

分布状況 日本固有種で、近畿・中部・関東・北陸の各地方の山間部の森林に分布する。岡山県内における生息地は県北部にわずか数か所と局所的である。

生息情報 体長 38 ~ 60mm前後。後肢のみずかきは非常に発達している。繁殖期間中は皮膚がたるみ、木の葉状になる。雌雄とも秋に水中に入り、越冬と繁殖は水の中で行われる。雌は渓流中の岩や石の下に100 個前後の白い卵を卵塊として産み付ける。非繁殖期は森林の中で過ごすが、詳しい生態は不明である。

文献番号 4,5,11,13� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

トノサマガエル

Rana nigromaculata Hallowell

岡山県:留意

環境省:該当なし

カエル目

アカガエル科

撮影:伊藤�邦夫

選定理由 農業形態の変化により、繁殖時期に主な産卵場所である水田や田溝に導水がないことなどから、本種の繁殖パターンとのズレが生じるなど、繁殖の機会を失いつつある。

存続を脅かす要因 池沼開発、河川開発、土地造成、圃場整備、水質汚濁、その他(水田耕作変化(春季直播、夏季中干し、冬期耕起))

分布状況 国内では、本州・四国・九州など、国外では中国北部・朝鮮半島に分布する。岡山県では全域に分布するが、特に南部の平野部で激減している。

生息情報 体長 60 ~ 90mm前後の中型のカエルで、雌のほうが大きい。雄の背面は黄緑色で、黄色の背中線がある。雌の背面は灰白色で、同色の背中線と 1対の体側線があり、不規則な黒色の斑紋がある。腹面は乳白色で、斑紋がない。水田や河川、池などで生活し、小動物を捕食する。4~ 6 月ころ水田や水たまりに多数が集合して産卵する。卵は直径約 1.5 ~ 2mmで、1,000 ~ 3,000 個を卵塊として産み付ける。約 2週間でふ化し、2~ 3か月で変態する。

文献番号 4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

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両生類

ナゴヤダルマガエル(ダルマガエル)

Rana porosa brevipoda Ito

岡山県:絶滅危惧Ⅰ類

環境省:絶滅危惧ⅠB類

カエル目

アカガエル科

撮影:山田 勝

選定理由 圃場整備による乾田化や土地造成などにより個体群の細分化がすすみ、急速にその生息地を失い個体数・生息地ともに激減している。

存続を脅かす要因 用水路改修、湿地開発、土地造成、圃場整備、側溝転落、水質汚濁、農薬汚染、個体群の細分化、その他(水田耕作変化(春季直播、夏季中干し、冬季耕起))

分布状況 低湿地に生息する。岡山種族は、本州の山陽・近畿・東海地方と四国の香川県・愛媛県に分布する。岡山県では主に南部に局所的に分布するが、勝田郡や久米郡にも生息がある。

生息情報 体長 40 ~ 60mm前後の中型のカエルで、一見トノサマガエルに似ているが、四肢が短く、ずんぐりした体型。背面は背中線がなく、棍棒状の隆起を持ち、黒色の丸く孤立した斑紋がある。体色には変異があり、茶褐色のほか、黄緑色、赤褐色、黒褐色で一部黄緑色の個体などがいる。湿地、湿田、田溝などで生活し、小動物を捕食する。6~ 7月ころ浅い止水中に直径約 1.5mmの卵を数個ずつ小さな卵塊として多数産む。

文献番号 1,4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

シュレーゲルアオガエル

Rhacophorus schlegelii (Gunther)

岡山県:留意

環境省:該当なし

カエル目

アオガエル科

撮影:山崎�法子

選定理由 土地造成、圃場整備、湿地開発などにより個体数が減少している。

存続を脅かす要因 池沼開発、湿地開発、土地造成、圃場整備、水質汚濁、農薬汚染

分布状況 日本固有種で、本州・四国・九州に分布する。岡山県では主に中北部に分布し、南部では少ない。

生息情報 中型の樹上性のカエルで、体長は雄が約 35mm、雌が大きく約50mm。背面は黄緑色で、まれに黄色の小斑点をもつ個体もある。皮膚の表面は顆粒状。下顎や体側などに暗褐色の小斑点がある。平地から山地の湿地や水田で生活し、主に昆虫やクモなどを捕食する。指先には吸盤が発達し、普段は草や木の上にいる。5~ 6 月ころ水際の土の中や、背丈の低い草の中などに白い泡状の卵のうを作り、直径約 2mmの卵約 300 ~ 600 個を産む。幼生は卵のうを溶かす酵素を出し、流れ出して水中生活を始める。同様の卵のうを樹上に産み付けるモリアオガエルが有名であるが、産卵習性としては本種がより特異といえる。

文献番号 4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

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両生類

モリアオガエル

Rhacophorus arboreus (Okada et Kawano)

岡山県:絶滅危惧Ⅱ類

環境省:該当なし

カエル目

アオガエル科

撮影:山田 勝

選定理由 岡山県南部ではまれで、森林伐採、湿地開発などにより個体数が減少している。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、池沼開発、湿地開発、圃場整備、水質汚濁、農薬汚染、個体群の細分化

分布状況 日本固有種で、本州・四国・九州に分布する。岡山県では主に中・北部の標高 200m~ 500mの山林に生息している。

生息情報 やや大型の樹上性のカエルで、体長 50 ~ 90mm前後。雌は雄より大きい。体色は変異が大きく、背面の基色は緑色から暗緑色まであり、黒色または茶褐色の不規則な斑紋のある個体が多い。指先には吸盤が発達し、普段は木の上にいて、主に昆虫やクモなどを捕食する。6~ 7 月ころ池や湿地などに雄、雌が多数集合し、樹上に登り、水面上に伸びた枝先に直径約 150mm前後の白い泡状の卵のうを作り、直径約 2~ 3mmの卵 150 ~ 200 個を産む。卵のうはやがて表面が乾燥して褐色に変わる。幼生は卵のうを溶かす酵素を出し、落下して水中生活に入る。約 2か月で変態し、樹上生活を始める。

文献番号 4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)

カジカガエル

Buergeria buergeri (Temminck et Schlegel)

岡山県:準絶滅危惧

環境省:該当なし

カエル目

アオガエル科

撮影:伊藤�邦夫

選定理由 河川開発、水質汚濁の影響を強く受けるなど、生息地は減少傾向にある。

存続を脅かす要因 森林伐採、林相変化、河川開発、川相変化、ダム建設、水質汚濁、産地局限

分布状況 渓流付近に生息する。日本固有種で、本州・四国・九州に分布するが、近年個体数が減少している。岡山県では吉井川・旭川・高梁川各水系の、主に上中流域に生息するが、個体数は減少している。

生息情報 中型のカエルで、体長 30 ~ 70mm前後。雌は雄より大きい。背面は暗褐色で不規則な黒色の斑紋があり、皮膚には多数の小さな隆起がある。指先には大きな吸盤がある。雄は渓流の岩や転石の上で美しい声で鳴く。6~ 7月ころ水中の石の裏に直径約 2.5mmの卵約500 個を卵塊として産み付ける。幼生は口が大きく、水中の石の表面に吸い付き、生えている藻類を食べる。

特記事項 文化財保護法により、真庭市湯原温泉の生息地が、天然記念物に指定されている。

文献番号 4,5,11� (伊藤邦夫、江田伸司、山田 勝)