17
1 ブラジル連邦共和国 Federative Republic of BrazilⅠ 監督機関等 1 通信省 Ministry of Cience, tecnology, inovation and Communications Tel. / Fax 55 61 2033 7500 URL http://www.mcti.gov.br/ 所在地 Esplanada dos Ministérios, Bloco E CEP 70067-900 / Brasília - DF 幹 部 Gilberto Kassab(大臣/Minister所掌事務 電気通信に関する基本政策の策定を行い、電気通信庁(Anatel)の活動を介して 電気通信の発展を図る。 2 電気通信庁(AnatelBrazilian Telecommunication Agency Tel. / Fax 55 61 312 2000 55 61 312 2201 URL http://www.anatel.gov.br/ 所在地 SAS Quadra 6 - Bloco H, 10 andar, Brasília DF, 70313-900, BRAZIL 幹 部 João Batista de Rezende(長官/President所掌事務 1997 年一般電気通信法(1997 General Telecommunications Law)」(法律第 9.472 号)に基づき、1997 11 月に設立された独立規制機関である。通信省が策 定する電気通信事業の基本政策に基づき、電気通信に関する以下の管理・監視業務 を所掌し、活動状況を通信省及び国会に報告する義務を有する。 ・周波数及び衛星軌道の管理 ・電気通信事業者間の紛争処理 ・許認可により事業者間の競争を促進 ・消費者保護 ・料金規制の策定 ・電気通信サービスの開始/廃止勧告

ブラジル連邦共和国 - soumu.go.jp · 1 ブラジル連邦共和国 (Federative Republic of Brazil) 通 信 Ⅰ 監督機関等 1 通信省 Ministry of Cience, tecnology,

  • Upload
    vodien

  • View
    232

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

1

ブラジル連邦共和国 (Federative Republic of Brazil)

通 信

Ⅰ 監督機関等

1 通信省

Ministry of Cience, tecnology, inovation and Communications

Tel. / Fax +55 61 2033 7500

URL http://www.mcti.gov.br/

所在地 Esplanada dos Ministérios, Bloco E

CEP 70067-900 / Brasília - DF

幹 部 Gilberto Kassab(大臣/Minister)

所掌事務

電気通信に関する基本政策の策定を行い、電気通信庁(Anatel)の活動を介して

電気通信の発展を図る。

2 電気通信庁(Anatel)

Brazilian Telecommunication Agency

Tel. / Fax +55 61 312 2000 +55 61 312 2201

URL http://www.anatel.gov.br/

所在地 SAS Quadra 6 - Bloco H, 10 andar, Brasília DF, 70313-900,

BRAZIL

幹 部 João Batista de Rezende(長官/President)

所掌事務

「1997年一般電気通信法(1997 General Telecommunications Law)」(法律第

9.472 号)に基づき、1997 年 11 月に設立された独立規制機関である。通信省が策

定する電気通信事業の基本政策に基づき、電気通信に関する以下の管理・監視業務

を所掌し、活動状況を通信省及び国会に報告する義務を有する。

・周波数及び衛星軌道の管理

・電気通信事業者間の紛争処理

・許認可により事業者間の競争を促進

・消費者保護

・料金規制の策定

・電気通信サービスの開始/廃止勧告

2

・電気通信産業の経済的規制

Ⅱ 法令

1 1997年一般電気通信法(1997 General Telecommunications Law、法

律第 9.472号)

同法により、それまで通信省に与えられていた事業免許・許可等の権限のほとん

どが Anatelに移管された。旧国営通信事業者テレブラス(Telebras)の民営化や、

競争的市場を創出するための諸条件を定めており、電気通信に関する基本法令とな

っている。主な内容は以下のとおりである。

・テレブラスの民営化

・独立規制機関 Anatel の創設

・事業免許、企業統廃合等、通信事業体の構成に関する Anatelの関与

2008年 11月には一部法改正が行われ、固定通信事業者が他地域の固定通信事業

免許を保有することが認められるようになった。これにより 2009年 1月に、Oiに

よるブラジル・テレコム(Brasil Telecom)の買収が達成された。

2 1996年最小限法(1996 Minimum Law)

テレブラスの民営化に先駆け、1996 年 7 月、移動通信事業、衛星事業及び付加

価値事業の自由化を規制した法律が制定された。テレブラスから移動通信事業を分

離すること、移動通信事業を 10 の営業地域に分割すること、移動通信事業への外

資比率を 49%に制限(1999年に外資比率制限は廃止)することが規定された。

3 インターネット憲法(Marco Civil da Internet)

2014年 4月、ジルマ・ルセフ大統領は、インターネットの中立性や表現の自由、

個人情報の保護などを規定した「インターネット憲法(Marco Civil da Internet)」

に署名した。同法では、インターネットの中立性に関して、電気通信事業者による

ユーザへの料金に応じた差別化を禁止するとともに、特定のコンテンツ事業者への

有償優遇措置を禁じた。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

(1)概要

Anatel が電気通信事業者に付与する許認可の形態には、免許(concession)、許

可(permit)、認可(authorization)という 3種類がある。

「免許」は、市内電話、長距離電話、国際電話、xDSL、WLL、データ通信、移

動通信、ケーブルテレビ、固定衛星、移動衛星等の特定の事業者に対して付与され、

ユニバーサル・サービスの実施に関する義務を課す。

「許可」は、電気通信市場に新規参入を果たした競争事業者(通称ミラーカンパ

3

ニー)に対して付与され、ユニバーサル・サービスの実施義務は課さないものの、

サービスの品質に関する義務を課す。

「認可」については、サービスに応じて様々な種類のものが存在し、Anatelがど

の電気通信サービスにとって認可が必要であるかを決定する。認可が不要とされる

サービス分野も存在するが、事業者がサービスを開始する際は、Anatel に通知する

必要がある。

(2)外資規制

1999 年 7 月に、電気通信分野での外資規制は撤廃された。現在、スペイン資本

のテレフォニカ(Telefónica)、メキシコ資本のアメリカ・モビル(America Movil)

及びテルメックス(Telmex)、テレコム・イタリア(Telecom Italia)等が進出して

いる。一方、基本電気通信サービス免許は、国内法に基づき設立されたブラジル法

人(議決権付き株式の過半数を所有)にのみ付与される(政令第 2.617 号)。

2 競争促進政策

(1)民営化及び自由化

1998年 4月に、「一般免許計画(1998 General Concession Plan:PGO)」(法律

第 2.532号)が発布され、固定通信市場の自由化に向けての具体的な内容が規定さ

れた。これを受けて Anatel は、それまで通信市場を独占していたテレブラスを市

内電話 3社、移動通信 8社、国際・国内長距離通信 1社に分割再編した。

一方、政府は固定通信市場の民営化に際して、全国を三つの営業地域に分割し、

各営業地域に旧テレブラス系の事業資産を引き継ぐ 1 社(concessionaire)に事業

免許を付与した。RegionⅠ(北東/東部)の事業免許を Telemar(現在は社名を

Oi に変更)、RegionⅡ(南部/中西部)の事業免許をブラジル・テレコム(Brasil

Telecom、2009 年に Oi が買収)、RegionⅢ(大サンパウロ都市圏)の事業免許を

Telesp(テレフォニカ傘下)に付与した。同時に、国際・国内長距離電話事業免許

をエンブラテル(Embratel、アメリカ・モビル傘下)に付与した。

1999年には、競争入札が行われ、各営業地域の競争事業者に対し新免許が付与さ

れ、旧テレブラス系事業者と競争事業者による競争体制が確立された。2001 年 12

月には、旧テレブラス系事業者に対し新規参入事業者との相互接続が義務付けられ、

これにより固定通信市場が完全自由化された。

(2)移動体通信市場の再編

1998 年にテレブラスが分割民営化され、8 社の A バンド移動体通信事業者が設

立された。全国を 10 の営業地域に分割し、各営業地域を周波数帯ごとに A~E バ

ンドに分類し、Aバンドと Bバンドを 850MHz帯を使用する移動通信サービスに、

Dバンドと Eバンドを GSM(1.8GHz帯)サービスに分類した。

2006年 12月、Anatel は 2G周波数(800MHz帯、900MHz帯、1.8GHz帯)の

オークションを行い、Vivo、Oi等が免許を落札した。2007年 12月には、3G周波

4

数(1.9GHz及び 2.1GHz帯)のオークションを実施し、Vivo、TIMブラジル(TIM

Brasil)、クラロ(Claro)、Oi、Algar Telecom(旧 CTBC)等が推定総額 53億 BRL

で落札した。2011年 12月には、前回のオークションで落札されなかった 800MHz

及び 1.8GHz帯の周波数オークションを実施し、TIMブラジル、Oi、Sercomtelが

1.8GHz 帯、クラロが 800MHz 帯の周波数を落札した。落札総額は推定 2億 3,750

万 BRLだった。

2012 年 6 月、Anatel は、4G 周波数(2.5GHz 帯及び 450MHz 帯)のオークシ

ョンを実施した。2.5GHz帯(全国バンド)のオークションでは Oi、クラロ、Vivo、

TIMブラジルが周波数を落札し、落札総額は推定 27億 BRLとなった。また、ルー

ラル地域の電話サービス及びブロードバンド・アクセス普及支援のために割り当て

られた450MHz帯については、入札者がいなかったため、入札条件に基づき、2.5GHz

帯を落札した事業者がネットワーク構築義務を負うことになった。このほかに新規

参入事業者として、有料放送事業者のスカイ・ブラジル(Sky Brasil)と ON Telecom

(旧 Sunrise Telecommunicacoes)が地域限定の 2.5GHz帯免許を落札した。2014

年 9 月には、700MHz 帯周波数オークションが実施され、Vivo、TIM ブラジル、

クラロ、Alger Telecom が周波数を落札し、落札総額が 58億 5,000 万 BRLとなっ

た(電波/Ⅱ-2の項参照)。

3 情報通信基盤整備政策

(1)ユニバーサル・サービス

1998 年 5 月、基礎的電気通信サービスの提供を義務付ける「ユニバーサル・サ

ービス化目標プログラム」(General Program for Universalization Goals:PGMU)

が制定された。このプログラムは、元来、固定電話を提供する旧テレブラス系事業

者に対するユニバーサル・サービスの達成目標を規定したものである。現在のプロ

グラム(PGMU Ⅲ:2011年 6月 30日策定、大統領令第 7.512号)は、2011年か

ら 2015 年の目標を規定したものとなっており、ルーラル地域における学校や公衆

衛生所、警察署、原住民居住地などに対する通信基盤の整備、100~300 人の集落

への公衆電話の設置義務、300人以上の集落に対する加入電話の提供義務、人口1,000

人当たり 6 台の公衆電話の設置義務等を規定している。2014 年 6 月に Anatel は、

2016年から 2020年までのユニバーサル・サービス化目標プログラム(PGMU Ⅳ)

のあり方について協議を開始した。

(2)通信関連基金(Fust/Fistel/Funttel)の設立

現在、三つの基金が存在する。ユニバーサル・サービス基金(Fund for Universal

ization of Telecommunications Services:Fust)は、基礎的電気通信サービスを

確保するため、そのコストの一部を支援することを目的とした基金であり、通信事

業者は月間の営業総収入の 1%を負担することとなっている。Fustへの拠出総額は

2001~2014年までの累計で 180億 BRLにのぼる。

5

通信監査基金(Telecommunications Supervision Fund:Fistel)は、連邦政府

が、主に電波利用にかかわる監査を実施するための費用、また、当該監査を効率的

に実施するための技術開発費用に充てられている。電波免許発行時に徴収する手数

料等により基金を維持している。1997~2014年までに累計で約670億BRLがFistel

に拠出された。

通信技術開発基金(Telecommunications Technology Development Fund:

Funttel)は、技術イノベーションの振興、人材開発等に用いられている。通信事業

者は電気通信サービスの月間収入の 0.5%を負担する。Funttelの 2001~2014年ま

での累計総額は 50億 BRLである。

(3)国家ブロードバンド計画(National Broadband Plan:PNBL)

政府は、ブロードバンドによる地域経済の発展を目的に、2010 年 5 月に「国家

ブロードバンド計画(PNBL:政令第7.175号)」を策定した。ブラジル全土で512kbps

程度(後に 1Mbpsに上方修正された)のブロードバンドを 35BRL 以下で提供する

ことにより、2014年までに 4,000万世帯まで普及させる目標を掲げた。また、教育・

研究機関、病院、図書館、テレセンターなどの公共施設及び政府・自治体にブロー

ドバンド・ネットワークを整備し、公共及び行政サービスの充実を図るとした。PNBL

の総投資額は、2014年までに推定 750億 BRL超とされた。

政府は PNBLの目的として、以下の項目を挙げた。

・ブロードバンド基盤の整備による新市場及び雇用の創出

・経済及び社会開発の加速、電子政府サービスの利用拡大

・デジタル・インクルージョンの実現

また、具体的行動計画として以下を挙げた。

・国が保有する光ファイバ網を活用

・民間企業に対する投資インセンティブの一環として減税措置を実施

・ケーブルテレビ事業者などによる固定及び無線ブロードバンド事業への新規参

入を支援

・450MHz帯、2.5GHz帯、3.5GHz帯のオークションを実施

また、政府は PNBLの実現を更に加速させるため、休眠状態にあったテレブラス

を再起させた。同社は、国や電力会社が保有する光ファイバ網、また国庫補助を受

け自ら構築した光ファイバ網を利用して全国にバックホールを整備し、このバック

ホールを中小規模の ISPに卸売することにより、ブロードバンド・サービスの普及

促進を図っている。

Oi、Vivo、Algar Telecom、Sercomtelの大手通信事業者 4社は 2011 年に PNBL

へ参画する契約を通信省と締結しており、政府はこの契約に基づきサービス料金見

直しを毎年実施し、補助金給付は行わないとしている。

ブロードバンドの更なる普及・発展のため、政府は 2012 年 9 月、国産スマート

6

フォンに対する税制上の優遇措置を講じることを決定し、これまで国産スマートフ

ォンに課せられていた 9.25%の社会統合基金(Social Integration Program:PIS)

及び社会保険融資負担金(Contribution for Social Security Financing:Cofins)

を免除することとした。

2013年 3月には、国内の情報通信ネットワーク整備にかかる約 160~180億BRL

規模の投資を前倒しさせる目的で、通信省は「国家ブロードバンド計画税制特別制

度(Regime Special Tax National Broadband Program:REPNBL)」を制定した。

同制度では、情報通信事業者に対し、工業製品税(Industrial Products Tax:IPI)、

PIS/公務員厚生年金(Civil Service Asset Formation Program:Pasep)及び

Cofinsを免除することとした。免税が適用される条件として、国内の基礎生産プロ

セス及び国産技術を利用する製品及び部品を使用する最低割合を満たすこと及びネ

ットワーク整備が遅れている地域への投資義務が課される。免税措置は通信省の承

認が得られた計画にかかわる 2016 年 12 月 31 日までの財とサービスの調達に適用

される。

2014年 8月、ルセフ大統領は「ブロードバンド・フォー・オール(Broadband for

all)」プロジェクトを発表した。2019 年までに全国 5,570 の自治体の約 90%を光

ファイバ網で結び、平均 25Mbpsの高速インターネット・サービスを提供するとの

目標を掲げた。

2016 年 5 月、通信省は「ブロードバンド・フォー・オール」を引き継ぐ形で、

2016年 5月 11日付政令 8776号に基づき、正式に PNBLの後継プログラムである

「ブラジル・スマート」(Brazil Smart)を開始した。同プログラムでは、2019年

までに、20億 BRLを投資して、70%の自治体、人口にして 95%が光ファイバ網に

アクセスできる環境を構築するとともに、「My Smarter School」として、教育水準

の低い学校を中心に全国 3万校を平均 78Mbpsのインターネット接続環境を導入す

る計画も掲げている。ブラジルの厳しい経済状況を勘案し、いくつかの目標設定は

見直されたものの、2014 年の「ブロードバンド・フォー・オール」で掲げた平均速

度 25Mbpsという目標は据え置かれた。なお、同プログラムの財源の一部は、2015

年 12月に実施された 1.8GHz帯、1.9GHz帯及び 2.5GHz帯の周波数オークション

の収益から充てられる予定となっている。

計画の実現にあたり、ブラジルと欧州、アフリカ、米国を結ぶ 6本の海底ケーブ

ルの敷設と静止衛星 2基の新規導入計画についても明らかにした。

また、「ブラジル・スマート」は 5Gの研究開発の推進にも焦点を当てており、通

信技術開発基金(Funttel)から最大 6億 BRLを投資するとしている。

同月、ルセフ大統領の弾劾によるテメル大統領への政権交代を受けて、通信省は

科学技術省に統合され、通信行政は科学技術通信省が担当することとなった。

2017年 1月、科学技術通信省は新たなブロードバンド整備計画を検討している。

7

(4)基盤シェアリング

2015年 4月、移動通信の基地局設置及び共用に関する法律(通称「アンテナ法」)

が成立した。同法は、事業者に対して、都市部における基地局の重複を避けること

を義務付け、設備投資を増やしサービスエリア拡大・サービス品質の向上に取り組

み、ネットワークの余剰容量を共用することを求めている。

(5)公衆電話ボックスの利活用

Anatelは 2013年 8月、公衆電話の利活用として、公衆電話ボックスに無線 LAN

機能を搭載することの検討を開始した。ブラジルでも移動電話の普及で、公衆電話

の利用者は減り続けており、Anatel は国内に 100 万台ある公衆電話ボックスを、

2016年までに 60万台に削減し、そのうちの半分を公共無線LANとして活用する。

4 ICT 政策

情報公開法(Freedom of Information Law)施行

2011年 11月、ルセフ大統領は上下両院で可決されていた「情報公開法(Freedom

of Information Law)」に署名し、同法は 5月 10日に施行された。同法は、ブラジ

ルの立法、行政、司法など国家レベルから市町村レベルに至るすべての公的機関の

情報公開を義務付け、その手順を規定している。

同法では情報を「極秘」、「秘密」、「取扱注意」、「制限なし」までの 4段階に分類

し、このうち「極秘」情報については最大で 50 年間非開示とした。また市民らに

よる情報入手を保障するために公的機関が順守すべき手順や、情報を入手するため

の手続、手続の案内などを行う専門部局の設置などを規定している。

Ⅳ 関連技術の動向

基準認証制度

無線機器の基準認証は、「電気通信機器の基準認証及び適合証明にかかわる規則(附

則)」(決定第 242/2000 号)に基づき、Anatelが所掌している。Anatel は、基準認

証証明機関(Designated Certification Organization:OCD)を指定し、検査及び

証明書の発行などの業務を委託している。OCDは 2016年 8月現在 12団体である。

輸入される機器も、OCD の証明を受ける必要がある。認証の申請はブラジル籍の

代理人又は代表者に限られる。また、OCD は認証を受けた製品の市場での適合性

の監視も担当し、サンプリング調査等を実施する。

Anatelは認証機器を以下の 3種類に分類し、認証された機器には Anatelマーク

が付される;カテゴリーⅠ:電気通信端末機器、カテゴリーⅡ:無線通信機器、カ

テゴリーⅢ:その他通信装置。また、Anatel は 2002年に規則を変更して、認証の

ための試験は、ブラジルでの試験が不可能な機器を除いて、ブラジル国内の認定試

験機関が実施する必要があるとの条件を付している。

承認を受けた機器の情報は Anatelのウェブサイト上で公開される。

8

Ⅴ 事業の現状

1 固定電話

ブラジルでは従来の加入電話網(PSTN)に加え、VoIPや FWAによる音声通話

サービスが提供されているが、ここ数年では移動通信サービスが急速な拡大を続け

たこともあり、固定電話の加入者数は減少傾向にある。固定電話の普及率は、連邦

区がある中西部、サンパウロとリオデジャネイロ市のある南東部、工業化が進んで

いる南部地域は 20~30%を超えているのに対し、他地域と比べて貧困率が高い北部

と北東地域は 10%以下の低水準にとどまっている。

固定電話市場は近年、大型合併・吸収が繰り返され、現在では Oi(2008年 4月、

ブラジル・テレコムを買収)、テレフォニカ・ブラジル(2014年 8月、Global Village

Telecom(GVT)を買収)、クラロ(2014年 12月、メキシコのアメリカ・モビルが

ブラジル子会社クラロ、エンブラテル、NET Servicos を統合)の大手 3 社の寡占

状態にあり、3社のシェアは拮抗している。2015年 9月現在、各社の加入者シェア

は Oiが約 35%、テレフォニカ・ブラジルが 34%、クラロが約 26%となっている。

このほかに Algar Telecom(旧 CTBC)、TIM ブラジル、Sercomtel 等が固定電話

サービスを提供している。

2016 年 6 月、Oi はリオデジャネイロ州の裁判所に、同社及び子会社 6 社の会社

更生手続きの適用を申請した。負債総額は 654 億 BRL となり、ブラジルにおける

過去最大の破綻となった。顧客向けサービスの提供は継続される。

2 移動体通信

移動体通信市場は、2014年に普及率が約139%に達し、飽和市場になりつつある。

徐々にプリペイドの比率が減少しているが、それでもまだ約 75%がプリペイド加入

者である。また移動電話加入者の 2Gから 3Gへの移行、更に LTEサービスがスタ

ートした 2013年からは 4Gへの乗換需要が高まっており、成長の余地はまだある。

Anatel の最新データ(2015 年 8 月現在)によると、約 2 億 8,000 万超の移動電話

加入者のうち、GSMが約 29%(8,385万)、W-CDMAが約 60%(1億 6,230万)、

LTEが約 6%(1,654万)を占めた。

ブラジルの移動体通信事業者(MNO)は、テレフォニカ系の Vivo、TIMブラジ

ル、クラロ、Oiの大手 4社と、市場シェアが 1%にも満たない小規模事業者の Algar

Telecom、ネクステル・ブラジル(Nextel Brasil)、Sercomtelの 3社がいる。2015

年 8月現在、各事業者の加入者シェアは Vivoが約 29%(8,143万)、TIMブラジル

が約 26%(7,388 万)、クラロが約 25%(約 7,120 万)、Oi が約 18%(5,004 万)

となっている。

仮想移動体通信事業者(MVNO)は、Porto Seguro Conecta、ボーダフォン・ブ

ラジル(Vodafone Brasil 、旧 Datora Mobile)、Terapar等が既にサービスを提供

しており、これに加えてバージン・モバイルがメキシコ、コロンビア、チリに続い

9

てブラジルのMVNO市場にも参入を計画している。

3 インターネット

ブラジルでは 2015 年 8 月に固定ブロードバンドの加入者数が 2,522 万を超え、

世帯普及率が 38%に達した。PNBLに基づく取組みやコンピュータ/スマートフォ

ン/タブレット等の価格低下、モバイル・インターネット・サービスの普及拡大等

が寄与したものと考えられる。しかし、ブロードバンド回線の地域格差は依然とし

て存在しており、北部と北東部の固定ブロードバンドの世帯普及率が 17%程度にと

どまっているのに対し、中西部と南東部、南部の世帯普及率はそれぞれ39.7%、51.7%、

43.8%と高数値を確保している。

固定ブロードバンド回線の主流は xDSL とケーブルモデムだが、xDSL の成長が

鈍化する一方で、中間層の拡大を背景に有料放送やインターネット配信サービスに

加入するユーザが増えており、ケーブルモデムと光ファイバ(FTTx)がシェアを

伸ばしている。2015年 8月現在、加入者シェアは xDSLが 53.0%(1,337万)、ケ

ーブルモデムが 32.1%(811万)、FTTxが 4.7%(118万)となっている。

ISPは、ケーブルテレビ最大手 NETセルビソス(NET Servicos)とエンブラテ

ルを傘下に持つクラロ、2014年8月にフランスのメディア大手ビベンディ(Vivendi)

から傘下の GVTを買収したテレフォニカ・ブラジル、Oiの大手 3社による寡占状

態にある。

2015 年 8 月現在、各事業者のシェアはクラロ(HFC/xDSL/FTTx/WiMAX)が

31.6%、テレフォニカ・ブラジル(HFC/xDSL/FTTx)が 29%、Oi(xDSL/FTTx)

が 25.5%となっている。これ以外に、Algar Telecom と TIM ブラジルが光サービ

ス提供に注力しているのに加え、有料放送事業者のスカイ・ブラジルと ON Telecom

が 2012 年 6 月の 4Gオークションで取得した 2.5GHz 帯を利用した TD-LTE サー

ビスを提供開始した。

Ⅵ 運営体

1 Oi

Tel. / Fax +55 21 3131 2918 +55 21 3131 1144

URL http://ri.oi.com.br/ http://www.oi.com.br

幹 部 Marco Norci Schroeder(会長/CEO)

概要

リオデジャネイロに本社を置く総合通信事業者である。市内電話及び長距離電話

に加え、移動体通信、データ通信も提供する。

総合通信事業者としての地位を強化すべく、2007 年 2 月より全サービスについ

て「Oi」のブランド名を冠することとした。2008 年 9 月には衛星放送免許を取得

10

し、2009年 1月にブラジル・テレコムの買収を完了している。

2016 年 6 月、Oi はリオデジャネイロ州の裁判所に、同社及び子会社 6 社の会社

更生手続きの適用を申請した。2016年 11月には、AT&T傘下の有料放送事業者 Sky

Brasil との合併に向けて、AT&Tと協議を行っていることが明らかになった。

2015年末の加入者数は、固定電話・ブロードバンド・有料放送:約 1,630万、移

動電話:約 4,586万、売上高総額は 274億 BRL であった。

2 テレフォニカ・ブラジル/Vivo(旧 Telesp)

Telefónica Brazil (Vivo)

Tel. +55 11 3549 7200

URL http://www.vivo.com.br http://www.vivofibra.com.br

幹 部 Antonio Carlos Valente da Silva(会長/Chairman)

概要

1998 年にサンパウロで固定電話事業者として出発した Telesp が、スペインのテ

レフォニカその他で編成されたコンソーシアムにより買収され、市内・長距離電話

及び国際長距離電話を提供していた。2006 年 1 月にテレフォニカ・ブラジルは固

定線免許の更新により、有効期間が 2025 年 12 月 31 日まで 20 年間延長された。

2012年 4月にテレフォニカ・ブラジルは移動体通信事業を Vivoブランドに統一し

た。また、テレフォニカ・ブラジルは、再編の一環としてサンパウロを除く提供エ

リアにおいて固定電話サービス免許を移動体通信子会社 Vivo へ移譲することを

Anatelに申請していたが、2011年 8月 に承認された。これを受け、テレフォニカ・

ブラジルは固定電話サービスをサンパウロ州の街で続ける一方、Vivoは固定電話サ

ービスをサンパウロ以外のブラジル全土で展開することが可能となった。

テレフォニカは欧州ではテレコム・イタリアの経営権を取得しており、ブラジル

では Vivoと TIMブラジルを合わせると、テレフォニカが移動体通信市場の 50%を

超えることになり、公平な競争が阻害される懸念があるとして、規制当局の調査を

受けていた。2009 年 6 月、Anatel は、テレコム・イタリアとテレフォニカによる

移動体通信事業の分離の維持を命じる規則を制定した。同規則には、Anatelが両社

の独立性を監督するために毎年訪問調査を実施するという規定が含まれた。またテ

レフォニカとテレコム・イタリアの役員が相互の国内移動体通信事業の役員になる

ことを禁止した。

2015年 6月末の Vivoの固定電話の加入者数は、固定電話:約 1,074 万、移動電

話:約 8,265 万、インターネット:約 393 万、有料放送:約 77 万で、売上高総額

は 112億 EURであった。

11

放 送

Ⅰ 監督機関等

1 通信省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

2 電気通信庁(Anatel)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

Ⅱ 法令

「1962年ブラジル通信法」(法律第 4.117号)及び「有料テレビ法」(法律第 12.485

号)が放送に関する一般規則を定めている。

2011年 9月に、1995年成立の「ケーブルテレビ法」(法律第 8.977 号)に替わる

新たな「有料テレビ法」が成立した。これにより、通信事業者はケーブルテレビや

衛星放送などの有料放送事業に参入できるようになったほか、外資の参入も認めら

れることとなった。なお、有料放送事業者は 2002 年 1 月以降、通信市場への参入

が認められている。

また新法は、放送内容について、午後 6 時から 10 時までのゴールデンタイムの

うち最低週 3時間半は国内製作の番組を放送しなければならないとしており、その

うち半分以上は放送事業者以外の制作とすることが定められるなど、大手放送事業

者の寡占解消を図る性格も持つ。

Ⅲ 政策動向

1 免許制度

外資規制

地上テレビ・ラジオ放送への外資の参入は 2002 年まで禁止されていたが、2002

年 5月、政府は、国内に現地法人を持つ事業者が 30%を上限に放送事業者の株式を

保有することを認める決定を下した。ただし、「1962 年ブラジル通信法」に基づき

放送事業の代表者、編成責任者はブラジル国籍を有する者に限定される。

なお、これまでケーブルテレビ事業への外資の出資比率は上限が 49%に制限され

ていたが、2011年 9月成立の「有料テレビ法」で上限が撤廃された。

2 地上デジタル放送

ブラジル政府は、2006 年 6 月、日本の ISDB-T 方式に基づくブラジル地上デジ

タルテレビ方式(SBTVD-T)に移行することを定めた大統領令を発布した。その

概要は以下のとおりとなっている。

・デジタル放送サービスを許可された事業者には、デジタル放送用のチャンネル

が付与される。

12

・アナログ方式からデジタル方式への移行期間は、大統領令公布日より 10 年間

とした。

・移行期間が過ぎた後は、アナログ放送用チャンネルを返却する。

・2013 年 7 月 1 日以降、デジタル放送の免許のみが許可され、アナログ放送の

免許は許可されない。

2014 年 7 月、通信省は地上テレビ放送移行に伴うアナログ放送終了計画を正式

に決定した。それによると、ブラジルでは 2016 年から 3 年間でデジタル移行を完

了する。アナログ放送停止は、2016 年 4 月に首都ブラジリアを皮切りに、サンパ

ウロ州、ミナスジェライス州、ゴイアス州、リオデジャネイロ州の州都などで実施

され、2018年 11月まで全国各地で継続的に実施される。なお、これに先立ち、ア

ナログ放送の試験停波を 2015年 11月にゴイアス州リオヴェルデ市で実施する。全

ての自治体における最終的な移行完了は 2023 年と設定されている。

Ⅳ 事業の現状

1 ラジオ

2014 年 7 月現在、放送免許を受けているのは、AM 局が 1,681 系統、FM 局が

2,115 系統、短波局が 138 系統、コミュニティ向け FM局が 4,611 系統となってい

る。主な事業者は、公共放送機関 Empresa Brasil de Comunicação(EBC)が運営

する Rádio Nacional、Rádio Globo、Jovem Panなどである。

2013年11月、ジルマ大統領がAM局のFM局への移行に関する法案に署名した。

デジタル放送の移行に伴い、現在地上放送に使用されている 76-88MHz 帯が 2018

年までに FM局に割り当てられる。これにより、FM局に割り当てられていた帯域

(現在 87.9-107.9MHz)が 76-107.9MHzに拡大することになる。

2 テレビ

全国放送は、Rede Globo、Rede Record、SBTなど商業放送事業者 5社と、公共

放送機関 EBC 傘下の TV Brasil が実施している。サンパウロ州営の TV Cultura

やリオデジャネイロ州営の TV Educativeなど、州単位あるいは都市単位で放送し

ている公営テレビ局も多い。

地上デジタル放送については、2007 年 4 月に通信省が最初の地上デジタル放送

業者として、サンパウロを拠点とする Rede Globo、SBT、Rede Bandeirantes、

Rede Recordなど 10社に許可を与えた。2007 年 12月には、Rede Globoがサンパ

ウロで地上デジタル放送を開始した。

3 衛星放送

衛星放送はこの数年の間に新規参入が相次ぎ、クラロ、スカイ・ブラジル、Oi、

Vivo、GVT、Algar、Nossa TVなど 10社以上が放送免許を受けて DTHサービス

を提供している。ブラジルのメディア・コングロマリットの Rede Globo と米国の

13

ディレク TV(DirecTV)の合弁会社(ディレク TVが 93%、Globoが 3%出資)で

あるスカイ・ブラジルは有料放送では国内 2 位で、2015 年 8 月現在、シェアは有

料放送全体の 28.6%(加入世帯数 561万)を占めている。ブラジルでは通常、有料

放送の決済にクレジットカードが必要となるが、予め料金をチャージしておくトッ

プアップ方式による支払方法が新規加入者獲得に貢献するとして期待されており、

クラロ、スカイ・ブラジル、Oiが導入実験を行っている。

4 ケーブルテレビ

ブラジルでは無料の地上放送が圧倒的シェアを誇っていたが、近年の経済成長に

よって国民の所得が増加したのに伴い、有料放送やインターネット配信サービスな

どに加入する世帯が増えている。

Anatel によると、2016 年 3 月末現在、有料放送の加入世帯数は約 1,895 万であ

り、世帯加入率は 28.45%となった。プラットフォーム別では、DTHが 1,090万(全

体の 57.0%)、ケーブルテレビが 780 万(同 41.4%)、FTTH が 17 万(同 0.5%)

だった。

ケーブルテレビ最大手は America Movil (Claro and Net)で、加入世帯数は 2016

年 3 月末時点で全有料放送加入世帯の 52.0%の 980 万を占めている。このほかに、

AT&T (Sky)の加入世帯数は 530万(全体の 28.2%)、Telefonica (Vivo)は 180万(同

9.4%)となっている。

Ⅴ 運営体

1 Rede Globo

Tel. / Fax +55 21 2540 2000 +55 21 2294 2092

URL http://redeglobo.globo.com/

幹 部 Roberto Irineu Marinho(社長/General Director)

概要

メディア・グループの Globo Organizationsが所有する地上テレビ放送事業者で

ある。番組制作はテレノベラ(メロドラマに類似した連続ドラマ)が中心で、メキ

シコの Televisaに次ぐ制作本数を誇っている。中南米をはじめ、世界各国の放送事

業者に番組販売を行っている。

2 ブラジル・テレビ・システム(SBT)

Tel. / Fax +55 11 3687 4572 +55 11 3601 0360

URL http://www.sbt.com.br/

幹 部 Guilherme Stoliar(社長/President)

概要

業界第 2位の地上テレビ放送事業者である。

14

電 波

Ⅰ 監督機関等

1 監督機関

(1)通信省

(通信/Ⅰ-1の項参照)

(2)電気通信庁(Anatel)

(通信/Ⅰ-2の項参照)

所掌事務

「1997年一般電気通信法」に基づき、通信省が策定する電気通信事業の基本政策

の下に、周波数及び無線局を含む電気通信に関する管理・監視業務を所掌し、活動

状況を通信省及び国会に報告する。

2 標準化機関

ブラジル規格協会(ABNT)

Brazilian National Standards Organization

Tel. São Paulo +55 11 3017 3630

URL http://www.abnt.org.br/

所在地 São Paulo: Rua Conselheiro Nebias, 1.131 – Campos Eliseos -SP -

01203-002 São Paulo, SP, BRAZIL

幹 部 Ricardo Rodrigues Fragoso(事務局長/Diretor General)

所掌事務

1940年に設立された。ブラジルを代表する標準化機関として国際的に認められた

民間非営利団体であり、国際標準化機構(International Organiztion for Standari

zation:ISO)、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:

IEC)、アメリカ標準化委員会(COPANT)、メルコスール標準化団体(AMN)、国

際試験所認定協力機構(ILAC)などの標準化業務を所掌している。

Ⅱ 電波監理政策の動向

1 電波監理政策の概要

Anatelが独立規制機関として、「1997年一般電気通信法」に則った電波監理を実

施している。周波数分配は ITUの国際第2地域に対する分配に基づき行われている。

Anatelは通信用及び放送用の周波数を管理する。

2008年に通信省と Anatel が共同で作成した電気通信政策の長期戦略計画である

「一般規制計画(General Regulatory Plan:PGR)」では、社会的・経済的発展と

地域間の不均衡の是正のために、特にルーラル地域でのブロードバンドの普及が中

心的な課題として取り上げられている。その実現のために、電波監理の分野では、

15

無線ブロードバンド用周波数の確保及び周波数の効率的な利用の促進が方策として

挙げられている。具体的には、2.5GHz 帯の分配、3.5GHz 帯の利用目的の整備、

450-470MHz帯の利用等が早急に実施されるべきであるとしている。

2 無線局免許制度

無線周波数の使用認可に関する規定は、「1997 年一般電気通信法」第 163~169

条に定められている。主な無線業務における免許付与は、セルラー及び PCS は比

較審査又はオークション、ブロードバンドはオークション、放送(ラジオ、テレビ)

は比較審査、衛星システムは先願方式で実施される。周波数リースの可能性につい

ては現在検討中である。免許不要局については、「無線通信と制限された放射機器に

関する規則」(決議第 365/2004 号)に規定されており、2.4GHz 帯の WLAN 等が

認められている。本決議は、第 506/2008 号に改訂され、対象となる機器・周波数

が追加されている。

周波数割当は周波数分配表に基づき、分野ごとに手順が定められている。

・排他的軍事目的利用の無線周波数帯の割当ては、軍と Anatelが共同で実施。

・Anatelの入札募集に対しては、オークション又は比較審査を実施。

・事業者からの割当申請に対しては、Anatel が審査を実施。

周波数の譲渡は認められていない。例外的に、電気通信サービス免許と同時の場

合には、Anatel の承認を受けて、譲渡ができる。

移動体通信用の周波数として800MHz、900MHz及び1.8GHz帯が2006年と2007

年にオークションにかけられた。また、3G 用の 1.9/2.1GHz 帯のオークションも

2007年末に実施されている。落札した 5社には 15年間の 3G免許が与えられ、同

一期間の更新が可能。免許人には 2 年以内に人口 50 万人以上のすべての都市、4

年以内に人口 20 万人以上の都市をカバーする等のネットワーク構築義務が課せら

れた。また、3Gサービスの一層の拡大のためにAnatelは2010年12月に1.9/2.1GHz

帯の全国免許(H バンド)を含む 44 の免許を対象にオークションを実施した。オ

ークションの規則として、新規参入事業者に対して優先権を与えている。2010年 8

月には、主に LTEを想定した次世代通信のための 2.5GHz帯再編計画が発表され、

2012 年までに 120MHz 幅が移動体通信用にオークションにかけられることとなっ

た。2011 年 12 月に 1.8GHz 帯と 800MHz 帯のオークションが実施され、2012 年

6 月には、2.5GHz 帯と 450MHz 帯のオークションが実施された。広大な国土を持

つブラジルでは、ルーラル地域へのブロードバンド普及が大きな課題となっている。

そこで Anatel は、PGRに従って、長距離の伝搬特性を持つ 450-470MHz帯を 3G

の音声及びデータ通信向けに分配することでデジタル・ディバイドの解消を目指す

ことを 2010年に発表していた。

2014年 9月 30日に終了した 700MHz帯オークションは、落札総額が 58億 5,000

万 BRLと、ブラジル政府が当初見積もっていた 77億 BRLを 35%も下回る結果と

16

なった。落札事業者は以下の 4 社で、ブラジル第 4 位の事業者である Oi は、オー

クションに参加しなかった。

700MHz帯オークションでの落札事業者

事業者 ロット番号 周波数帯 落札額(百万 BRL)

クラロ 1 738-748/793-803MHz 1,947.2

TIM 2 718-728/773-783MHz 1,947

モビスター 3 728-738/783-793MHz 1,928

Algar 5 708-718/763-773MHz 29.6

出所:Anatel

オークションにかけられたロット数は合計六つであったが、そのうちの二つのロ

ット(ロット 4 及び 6)が売れ残った。ロット 1~3 は全国免許、ロット 4 はロッ

ト 5 と 6 を除いた全国免許、ロット 5 はブラジル南部の 4 州にまたがる 87 の自治

体を含む地域免許、ロット6はパラナ州の二つの自治体(Londrina及びTamarana)

を含む地域免許となっている。

ブラジルの 700MHz 帯のバンドプランは、APT 700 のバンドプランを部分的に

変更したもので、2×10MHz単位の周波数ブロックとなっている。なお、700MHz

低帯域の 2×5MHz(703-708/758-763MHz)は、公共安全(Public Protection and

Disaster Relief:PPDR)向けに既に割り当てられている。

700MHz帯の落札者は、地上デジタルテレビ放送との間の有害な干渉の軽減措置

にかかわる費用に加えて、テレビチャンネルの再編にかかわる費用も負担しなけれ

ばならない。これらの費用は、全国免許事業者の場合は 9 億 300 万 BRL、地域免

許事業者の場合は 2,950 万 BRL となっている。また、Anatel によると、ロット 4

とロット 6 の落札者が負担するはずであった費用の 8 億 8,900 万 BRL を負担する

用意があると述べている。

700MHz 帯オークションは、当初、2014 年春に実施される予定であったが、同

年 9月まで延期された経緯がある。その理由は、ブラジル国家会計当局(Brazilian

Court of Accounts:TCU)が、干渉軽減措置や最低落札価格などの一連の問題に対

する適切な説明が Anatel からなされるまで、オークション手続に入ることを禁じ

ていたためであった。最終的に、2014年 8月末に Anatelからの説明を受けて、TCU

は 2014年 9月末のオークション実施を認めた。

2015年 12月、Anatelは、ブロードバンドの普及等に向けた政府の財源確保の目

的で、1.8GHz帯、1.9GHz帯及び 2.5GHz帯に残された帯域に対するオークション

を実施した。落札総額は 7億 6270万 BRLとなり、主な事業者別では、Nextel Brasil

17

が 4億 5,500万 BRL、Telefonica Brasil (Vivo)が 1億 8,545万 BRL、Claroが 6,186

万 BRL となっている。加えて自治体単位のロット C のオークションにおいては、

324の事業者が参加し、落札総額は 8,990万 BRLとなった。

3 電波利用料制度

電波利用料制度は、「無線周波数使用の使用権による公共費用の徴収規則(決定第

387/2004 号)」に規定されている。通信、衛星及び放送分野で電波を利用する場合、

電波利用料の支払い義務がある。免許を取得した初年度のみの周波数利用料(Public

Price for the Right of Use of Radio Frequency:PPDUR)と毎年の電波監理経費

が賦課される。通信衛星の利用に当たっては、衛星利用料(public price for the right

to exploit satellite:PPDES)が PPDURに代わって課せられる。ただし、防衛及

び民間航空を目的とした利用や政府機関が利用するときは、周波数利用料が免除さ

れる。

4 電波の安全性に関する基準

Anatelは 2002年の「決定 303号」によって電磁界曝露にかかわる規制を行って

きたが、2009年 5月にはWHOのガイドラインに基づく「法令 11.934」を定めて、

人体の電磁界曝露に関する制限値として国際非電離放射線防護委員会

(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection:ICNIRP)の

値を正式に採用した。また、同法は Anatel に対して、電磁界レベルの監視と制限

値の順守を執行する権限を与えている。

Ⅲ 周波数分配状況

周波数分配表(2015年版)を掲載している URLは以下の通りである。

・http://www.anatel.gov.br/Portal/verificaDocumentos/documento.asp?numero

Publicacao=325099&pub=original&filtro=1&documentoPath=325099.pdf

・http://www.anatel.gov.br/Portal/verificaDocumentos/documento.asp?numero

Publicacao=325100&pub=principal&filtro=1&documentoPath=325100.pdf