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横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授 平塚 和之 特異的阻害剤を用いた新規なルシフェラーゼアッセイ - レポーターアッセイ系の革新 - 2017622日 JST新技術説明会

05 横浜国立大学 平塚和之 - JSTPlant biotechnol. 28, 423-426, 2011 Ogura R, Matsuo N, Wako N, Tanaka T, Ono S, Hiratsuka K, Multi-color luciferases as reporters for monitoring

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  • 横浜国立大学 大学院環境情報研究院

    教授 平塚 和之

    特異的阻害剤を用いた新規なルシフェラーゼアッセイ- レポーターアッセイ系の革新 -

    2017年6月22日 JST新技術説明会

  • 発光レポーターアッセイとは?

    ・・・遺伝子の活性状態を「可視化・定量」する方法

    レポータータンパク質の検出により転写調節領域の活性を測定

    ルシフェラーゼレポーターアッセイ

    レポーター遺伝子アッセイ

    ・・・ホタルの生物発光現象を利用したアッセイ

    転写調節領域転写調節領域 レポーター遺伝子レポーター遺伝子

    転写・翻訳

    レポータータンパク質

    転写調節領域転写調節領域 ルシフェラーゼ遺伝子ルシフェラーゼ遺伝子

    ルシフェラーゼルシフェラーゼ

    転写・翻訳

    ルシフェリンルシフェリン

    発光

    ATPATPMg2+Mg2+

    O2O2

    遺伝子発現,遺伝子調節,細胞応答等に関する研究に貢献

    ルシフェラーゼ(発光酵素)とルシフェリン(発光基質)が反応

    生物発光

    創薬等への応用

    発光レポーターは高感度・低侵襲!

  • デュアルルシフェラーゼアッセイ

    試料中で2つの異なるルシフェラーゼを同時に発現させ、発光活性としてそれぞれの活性を測定するシステム

    デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ(DLRA)

    細胞抽出液

    ウミシイタケルシフェラーゼ

    ホタルルシフェラーゼ

    第1試薬 第2試薬

    ウミシイタケルシフェラーゼ

    ホタルルシフェラーゼ

    ウミシイタケルシフェラーゼ

    ホタルルシフェラーゼ

    デュアルカラールシフェラーゼアッセイ(DCLA)

    Lum

    ines

    cenc

    e le

    vel

    Wavelength (nm)

    緑色発光ルシフェラーゼ

    赤色発光ルシフェラーゼ゙

    450 500 550 600 650 700

    2種類の異なるルシフェラーゼに由来する発光活性を計測することで、

    「内部標準」を用いた高精度なレポーターアッセイが可能

    2種類の異なるルシフェラーゼに由来する発光活性を計測することで、

    「内部標準」を用いた高精度なレポーターアッセイが可能

  • デュアルルシフェラーゼアッセイ

    試料中で2つの異なるルシフェラーゼを同時に発現させ、発光活性としてそれぞれの活性を測定するシステム

    デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ(DLRA)

    細胞抽出液

    ウミシイタケルシフェラーゼ

    ホタルルシフェラーゼ

    第1試薬 第2試薬

    ウミシイタケルシフェラーゼ

    ホタルルシフェラーゼ

    ウミシイタケルシフェラーゼ

    ホタルルシフェラーゼ

    DLRAは標準的な遺伝子発現定量方法として広く普及DLRAは標準的な遺伝子発現定量方法として広く普及

    ルシフェリンとセレンテラジンという異なる発光基質を用いており、生きたままの組織・細胞に応用するのは困難

    ルシフェリンとセレンテラジンという異なる発光基質を用いており、生きたままの組織・細胞に応用するのは困難

    問題点

  • 赤/緑の発光量比による

    高精度な遺伝子発現計測が可能

    赤/緑の発光量比による

    高精度な遺伝子発現計測が可能

    波長

    相対発光度

    各レポーター発光の発光取得域

    高感度CCDカメラ

    フィルター切り替えによる選択的な発光検出

    個体・組織・細胞

    基質添加(D-Luciferin)

    Green : test

    CBR

    Test promoter CBG

    35S

    Red : internal control

    デュアルカラールシフェラーゼアッセイ

    遺伝子銃によるプラスミド導入

  • デュアルカラールシフェラーゼアッセイ

    試料中で2つの異なるルシフェラーゼを同時に発現させ、発光活性としてそれぞれの活性を測定するシステム

    デュアルカラールシフェラーゼアッセイ(DCLA)

    Lum

    ines

    cenc

    e le

    vel

    Wavelength (nm)

    緑色発光ルシフェラーゼ

    赤色発光ルシフェラーゼ゙

    450 500 550 600 650 700

    ・フィルターを用いる必要があるので、感度は大幅に低下する

    ・重複した波長帯を有するルシフェラーゼには適応困難

    ・フィルターを用いる必要があるので、感度は大幅に低下する

    ・重複した波長帯を有するルシフェラーゼには適応困難

    問題点

    D-ルシフェリンを基質とする非破壊的に生細胞を用いた観察が可能D-ルシフェリンを基質とする非破壊的に生細胞を用いた観察が可能

  • ルシフェラーゼ阻害剤の探索

    ルシフェラーゼの特異的発光活性阻害活性を有する薬剤処理で、

    デュアルルシフェラーゼアッセイを実施出来ないか?

    色調特異的な阻害剤が得られれば様々な用途もありそうだ.

    化合物ライブラリーをスクリーニングし、候補化合物を選抜する

    化合物ライブラリーと多穴プレート、各種ルシフェラーゼを用いた大量スクリーニングを実施

    化合物ライブラリーと多穴プレート、各種ルシフェラーゼを用いた大量スクリーニングを実施

  • 市販の各種化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを実施

    ホタルルシフェラーゼ(黄緑色)、緑色発光型、赤色発光型のいずれかに対して明瞭な発光活性阻害を示す化合物を20種類選抜

    ルシフェラーゼ選択性を示す4種類の化合物について詳しく検証

    新規ルシフェラーゼ阻害剤の探索

  • 市販の7つのレポーター遺伝子についてタンパク質を合成(Luc2/F-Luc/CBR/CBG/SLR/SLO/SLG)

    ルシフェラーゼ活性に対する影響

    化合物Xが遺伝子発現のどのレベルに作用しているのかを特定するために、in vitro翻訳系で合成したルシフェラーゼタンパク質に対する化合物Xの影響を検証

    *SLR・・・鉄道虫由来の赤色発光ルシフェラーゼ遺伝子*SL0・・・イリオモテボタル由来の橙色発光ルシフェラーゼ遺伝子*SLG・・・イリオモテボタル由来の緑色発光ルシフェラーゼ遺伝子

    ⇒ルシフェラーゼタンパクの種類に依存した、選択的阻害活性を示す

    ⇓ 化合物処理前の発光量と処理後の発光量を比較

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    Luc2 Fluc CBR CBG SLR SLO SLG

    afte

    r/be

    fore

  • 新規レポーターアッセイの実証例1光誘導性プロモーターであるCAB1プロモーターを用いて、化合物Xを使用した阻害アッセイによって各レポーターの発光が分離可能であるかを検証

    35S CBR

    35S CBGor

    35S CBR

    CAB1 CBG

    遺伝子銃を用いて共導入

    ホウレンソウ成熟葉

    細胞抽出液

    CBGCBR

    発光量を定量

    +化合物X

    明所or暗所に保管

    35S CBR

    35S CBG

    35S CBR

    35S CBG

    35S CBR

    CAB1 CBG

    35S CBR

    CAB1 CBG

  • 新規レポーターアッセイの実証例1

    35S CBR

    35S CBG

    35S CBR

    CAB1 CBG

    35S CBR

    CAB1 CBG

    35S CBR

    35S CBG

    フィルター使用時と同様の暗条件下の光合成関連遺伝子CAB1プロモーターの活性抑制を検出

    阻害剤を利用した新規レポーターアッセイの有効性を検証

  • 新規ルシフェラーゼ阻害剤の探索

    市販の各種化合物ライブラリーを用いてスクリーニングを実施

    ホタルルシフェラーゼ(黄緑色)、緑色発光型、赤色発光型のいずれかに対して50%以上の発光活性阻害率を示す化合物を20種類選抜

    化合物-3は赤色発光型(CBR)のみを特異的に阻害する

  • 新規レポーターアッセイの実証例2

    DCLAでは発光の分離が難しい黄緑色(Fluc)と緑色(CBG)の組合せにおいても、新規レポーターアッセイ系で発光の分離が可能か検証

    -20

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    400 450 500 550 600 650 700 750 800

    波長(nm)

    Fluc

    CBR

    CBG

    各ルシフェラーゼの発光スペクトル

    阻害剤を用いたデュアルルシフェラーゼアッセイが実施可能FlucとCBGおよびCBRとの活性分離も可能

    実証例1と同様の実験系を用いてFlucを用いた場合を検証

    FlucはCBG、CBRと発光波長の重なりが大きいため、フィルターを介した発光の分離が困難

  • まとめ・進捗状況

    まとめと今後の展望

    • 本研究では,ルシフェラーゼタンパクの種類に依存した選択的阻害活性を示す化合物を用いて,1種類の基質のみの添加で光学フィルター

    透過も不要な,新規デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ系を構

    築した.

    • このレポーターアッセイは,既存技術では実施困難であった黄緑色(ホタルルシフェラーゼ)と緑色(CBG)または赤色(CBR)の二つの発光レ

    ポーターを用いたアッセイにおいて特に有用であることが示された.

    • in vivoアッセイ系についても検討中.

    まとめ

  • 今後の展望

    • 内部標準を用いた簡便で高感度・高精度な発光活性検出・定量系への応用.

    • 新規な生物発光利用方法(色調制御等)への応用展開.

    • 各種検査試薬等への応用.

    • より優れた特性を示す化合物を探索する.

    今後の展望と期待、共同研究等について

  • 本研究に関連した発表済み学術論文

    Ogura R, Matsuo N, Hiratsuka K, Bioluminescence spectra of click beetle luciferases in higher plant cells. Plant biotechnol. 28, 423-426, 2011

    Ogura R, Matsuo N, Wako N, Tanaka T, Ono S, Hiratsuka K, Multi-color luciferases as reporters for monitoring transient gene expression in higher plants. Plant Biotechnol. 22, 151-155, 2005

    本研究に関連した出願済み特許

    特願2014-154192「光識別方法,物質の検出方法,レポーターアッセイ方法,キット,ルシフェリンールシフェラーゼ反応阻害剤,ルシフェリンールシフェラーゼ反応阻害方法及び装置」発明者:平塚和之,小倉里江子,大澤友紀子,伊藤早紀出願日:平成26年7月29日

    特願2017-39903「阻害剤、阻害方法、光識別方法、物質の検出方法、レポーターアッセイ方法及びキット」 平塚和之,小倉里江子,伊藤早紀出願日:平成29年3月2日

  • 産学連携等

    2006〜2010年度 経済産業省「高効率物質生産に寄与する多重遺伝子発現と転写翻訳系改変に関する研究開発 」

    2011〜2015年度 経済産業省「エネルギー使用合理化技術開発等委託費(密閉型植物工場を活用した遺伝子組換え植物ものづくり実証研究開発)」

    2012年度 A-STEP FSステージ探索タイプ「次世代型植物活性化剤および抵抗性誘導剤のハイスループット探索法の付加価値創造 」

    2016年度〜 NEDO「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発/植物の生産性制御に係る共通基盤技術開発/遺伝子発現制御および栽培環境制御の融合による代謝化合物高生産基盤技術開発」

    2014年8月〜 「横浜バイオテクノロジー(株)」にCTOとして参画

    その他、民間企業との共同研究、受託研究

  • • 横浜国立大学• 産学連携推進部門• 知的財産マネージャー 向 弘明• TEL: 045-339-4452• FAX: 045-339-4457• e-mail: [email protected]

    お問い合わせ先