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1 支援環境開発論(精神保健福祉論Ⅲ)12 就労支援の新しい方向性 ~IPS援助付き雇用プログラムへの注目~ 精神保健福祉学分野 大島 きょうの到達目標 精神障害をもつ人たちの就労ニーズ雇用の現状につ いて理解し、説明できる 障害をもつ人一般に対する就労支援の現状と、精神障 害をもつ人たちへの適用状況を理解し、説明できる 新しい就労支援プログラムであるIPS援助付き雇用の特 徴と意義、効果を理解し、説明できる 就労後訓練アプローチ(place-train approach)登場の背 景を理解し、説明できる

07支援環境開発論12 就労支援 Jun29.2007ioshima.com/old/shienkankyo12_jun29.2007.pdf1 支援環境開発論(精神保健福祉論Ⅲ)12 就労支援の新しい方向性

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1

支援環境開発論(精神保健福祉論Ⅲ)12就労支援の新しい方向性

~IPS援助付き雇用プログラムへの注目~

精神保健福祉学分野 大島 巌

きょうの到達目標

精神障害をもつ人たちの就労ニーズと雇用の現状につ

いて理解し、説明できる

障害をもつ人一般に対する就労支援の現状と、精神障

害をもつ人たちへの適用状況を理解し、説明できる

新しい就労支援プログラムであるIPS援助付き雇用の特

徴と意義、効果を理解し、説明できる

就労後訓練アプローチ(place-train approach)登場の背

景を理解し、説明できる

2

精神保健福祉において、就労支援に焦点を当てなければならない理由

大部分の精神障害をもつ人たちは、働きたいと思っている

多くの社会において、働くことは成人として当たり前の役割と考えられている

精神障害をもつ多くの人たちが、自分たちのリカバリーにとって、仕事が不可欠な要素と報告している

現在の仕事

2

76

6

4

8

5

2

69

6

2

9

11

0 20 40 60 80

無回答等

仕事はしていない

農林・自営業

職親企業

会社(パート、その他)

会社(常勤・会社役員)

統合失調症 全精神障害

n=7635 , 2 003年精神障害者社会復帰サービス ニ ーズ等調査、通院患者調査

3

障害をもつ人たちの雇用労働者(従業員5人以上の事業所に勤務)

平成15年度障害者雇用実態調査、厚労省、2004

精神障害をもつ人たち: 13,000人

(0.5%) (2,500,000人中)

知的障害をもつ人たち:114,000人(24.8%)(459,000人中)

身体障害をもつ人たち:369,000人(11.4%)(3,245,000人中)

精神障害をもつ人たちの構成割合:2.6%

障害者の雇用者数

1.3万人 (2.6%)

精神障害者

11.4万人 (23.0%)

知的障害者

36.9万人 (74.4%)

身体障害者

49.6万人

0.2万人(0.7%)

精神障害者

4.4万人(15.5%)

知的障害者

23.8万人(83.8%)

身体障害者

28.4万人

50.0 (0.5%)

精神障害者

2,932.0 (32.2%)

知的障害者

6,127.0 (67.3%)

身体障害者

9,109.0

(1)5人以上規模企業(平成15年度障害者雇用実態調査)

(2)56人以上規模企業(平成18年障害者雇用状況報告)

(3)特例子会社(平成18年障害者雇用状況報告)

(注)重度障害者をダブルカウントした人数となっている。

(注)重度障害者をダブルカウントした人数となっている。

(厚生労働省、2007.6)

4

精神障害者の就労の希望

33

5

3

27

33

13

14

6

32

35

0 20 40 60

無回答・わからない

働きたくない

できれば働きたくない

できれば働きたい

ぜひ働きたい

全国社会復帰活動参加者本人調査(1986) 全国社会復帰活動参加者本人調査(1992)

39.2

60.8

40.6

59.4

64.5

35.5

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

身体障害者 知的障害者 精神障害者

授産施設を出て企業で働きたいか働きたいとは思わない

働きたい

28.1%

71.9%

29.4%

70.6%

67.2%

32.8%

0.0%

10.0%

20.0%

30.0%

40.0%

50.0%

60.0%

70.0%

80.0%

90.0%

100.0%

身体障害者 知的障害者 精神障害者

家族の一般就労への移行についての考え方消極的

積極的

社会就労センター調べ(平成12年)

一般就労への本人と家族の希望等一般就労への本人と家族の希望等

5

障害者の職業紹介状況(障害種類別)

( 38.4)317( 44.5)6,739( 12.7)11,441( 6.9)25,490(13.1)43,98718年度

( 23.8)229( 29.9)4,665( 11.6)10,154( 3.7)23,834( 8.4)38,88217年度

( 40.2)185( 44.1)3,592( 10.3)9,102( 4.5)22,992( 9.1)35,87116年度

( 45.1)132( 31.9)2,493( 13.5)8,249( 15.2)22,011( 16.0)32,88515年度

( 21.3)91( 16.0)1,890( 2.8)7,269( 4.4)19,104( 4.7)28,35414年度

(△15.7)75( 0.9)1,629(△4.7)7,069(△4.9)18,299(△4.5)27,07213年度

その他精神障害者知的障害者身体障害者障害者計

就職件数

( 18.2)895( 34.2)18,918( 6.4)21,607(△0.4)62,217( 6.2)103,63718年度

( 65.6)757( 34.7)14,095( 7.2)20,316(△1.3)62,458( 4.8)97,62617年度

( 8.6)457( 34.2)10,467( 7.7)18,953( 1.4)63,305( 5.6)93,18216年度

( 36.7)421( 24.0)7,799( 6.6)17,602(△0.7)62,450( 2.6)88,27215年度

( 15.8)308( 16.8)6,289( 0.9)16,511( 2.2)62,888( 2.9)85,99614年度

(△2.6)266( 12.1)5,386( 8.0)16,357( 7.2)61,548( 7.7)83,55713年度

その他精神障害者知的障害者身体障害者障害者計

新規求職申込件数

※ ( )内は前年度比(差)新規求職申込件数及び就職件数は年度(期間)内の累計

(単位:人)

重い精神障害をもつ人たちの一般雇用におけるギャップ

日米ともに.....

・仕事がしたい人: 60%~70%・現在、一般就労している人: <15%

6

図 仕事についての自信

38%

28%

31%

16%

33%

37%

31%

29%

24%

28%

32%

47%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

同じペースを維持して働く

他の人と同じペースで働く

日曜・祭日をのぞき毎日働く

1日8時間働く

自信がある どちらともいえない 自信はない 無回答

(N=1994, 全国の小規模作業所通所者, 1997)

図 仕事が可能な条件

7%

5%

37%

7%

10%

6%

6%

10%

13%

0% 10% 20% 30% 40%

無回答

その他

休みや通院時間が自由な制度

職業訓練校などでの訓練

スタッフがサポートする制度

ジョブ・コーチ (指導員)

グループでの就労

週20-30時間の短時間就労

週10-20時間の短時間就労

%(N=1798, 全国の小規模作業所通所者, 1997)

7

短時間雇用:週20時間以上30時間未満

平成15年障害者雇用実態調査

さまざまな就労の形態

一般就労 [最低賃金など労働関連法規の適用]

一般企業

⇒法定雇用率制度(民間1.8%)を適用する場合

(精神障害者も、2006年度より適用)

重度障害者多数雇用事業所、特例子会社

福祉的就労福祉工場⇒就労継続支援A [最低賃金など労働関連法規の適用]

授産施設⇒就労継続支援B、就労移行支援など

小規模作業所

在宅就労自営(農林・商工)

内職

8

障害者雇用施策(主なもの:障害者雇用率制度を除く)

職業指導・職業紹介公共職業安定所(ハローワーク):障害者の求職登録、職業指導、職業斡旋計画の策定、求人の受理開拓、職業紹介、就職後の指導

障害者職業センター障害者就業・生活支援センター(全国135箇所)

職業訓練・職業能力開発国等で行う職業訓練:障害者職業訓練校、職業準備訓練

民間が行う能力開発訓練職場適応訓練等職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援障害者試行雇用(トライアル雇用)事業

精神保健福祉法の事業:社会適応訓練事業

障害者の雇用を支援するための施策

1 「トライアル雇用」による障害者雇用のきっかけづくり

(障害者試行雇用事業)

障害者に関する知識や雇用経験がない事業所に対し、障害者を試行的に雇

用する機会を付与し、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進め

る事業。

※19年度 8,000人 (18年度 6,000人)

3 就業面と生活面における一体的な支援

(障害者就業・生活支援センター事業)

障害者の職業生活における自立を図るため、身近な地域におい

て雇用、保健、福祉、教育等の地域の関係機関のネットワークを

形成し、就業面と生活面にわたる一体的な支援を行う事業。*主な支援内容

①就業支援…就業に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)、求職活動、職場定着支援など障害特性を踏まえた雇用管理に関する助言

②生活支援…生活習慣形成、健康管理等の日常生活の自己管理に関する助言住居、年金、余暇活動など生活設計に関する助言など

※19年度 135センター (18年度 110センター)

4 障害者の態様に応じた多様な委託訓練企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等の地域の

多様な委託訓練先を開拓し、様々な障害の態様に応じた公共職業訓

練を実施。※19年度 6,600人 (18年度 6,300人)

5 関係機関の「チーム支援」による、福祉的就労から一般雇用への移行の促進 (地域障害者就労支援事業)

就職を希望する障害者に対し、ハローワークを中心に福祉等の関係者からなる「障害者就労支援チーム」による、就職の準備段階から職場定着まで

の一貫した支援を実施。

6 福祉施設・特別支援学校における、企業ノウハウを活用した就労支援の促進 (障害者就労支援基盤整備事業)

障害者雇用に実績のある企業のノウハウを活用したセミナーを実施する等により、福祉施設の職員、特別支援学校の生徒、保護者及び教職員の一般

雇用についての理解の促進、雇用支援策に関する理解・ノウハウの向上を図る。

2 職場適応援助者 (ジョブコーチ)による支援知的障害者や精神障害者など職場での適応に課題を有する障害者に対し

て、職場適応援助者(ジョブコーチ)を事業所に派遣し、きめ細かな人的

支援を行うことにより、職場での課題を改善し、職場定着を図る。

*主な支援内容○障害者向け…職場内コミュニケーション、作業遂行力の向上支援など

○事業主向け…職務内容の設定、指導方法に関する助言など

※ジョブコーチ配置数 842人 (19年3月現在)

障害者の雇用の促進を図るため、障害者雇用率制度に基づく事業主への雇用率達成指導や、障害特性等に応じたきめ細かな職業相談・職業紹介の実施に加え、次のような雇用支援策を実施することにより、障害者本人や障害者を雇用する事業主を支援する。

(厚生労働省、2007.6)

9

★支援期間:標準は2~4ヶ月で、最長8ヶ月ジョブコーチによる支援は永続的行うものでなく、職場適応上の課題が改善され、職

場内での上司や同僚からの支援が適切に行われるようになった段階で終了する

(厚生労働省、2006)

障害者就業・生活支援センター

就職を希望されている障害のある方、あるいは在職中の障害のある方が抱える課題に応じて、雇用及び福祉の関係機関との連携の下、就業支援担当者と生活支援担当者が協力して、就業面及び生活面の一体的な支援を実施します。

業務の内容

就業及びそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある方に対し、センター窓口での相談や職場・家庭訪問等を実施します。

<就業面での支援>

○ 就業に関する相談支援

・ 就職に向けた準備支援(職業準備訓練、

職場実習のあっせん)

・ 就職活動の支援

・ 職場定着に向けた支援

○ 障害のある方それぞれの障害特性を踏

まえた雇用管理についての事業所に対す

る助言

○ 関係機関との連絡調整

<生活面での支援>

○ 日常生活・地域生活に関する助言

・ 生活習慣の形成、健康管理、金銭管理

等の日常生活の自己管理に関する助言

・ 住居、年金、余暇活動など地域生活、

生活設計に関する助言

○ 関係機関との連絡調整

設置箇所数

平成18年度 110センター→ 19年度 135センター

雇用と福祉のネットワーク

障害のある方

相談

地域障害者

職業センター

専門的支援の依頼

生活支援(生活支援担当者1名)

就業支援(就業支援担当者2名)

ハローワーク

事業主

職場適応支援

求職活動支援

障害福祉サービス事業者等

特別支援学校連携

保健所保健サービスの

利用調整

福祉事務所福祉サービスの

利用調整

医療機関

医療面の相談

就労移行支援事業対象者の

送り出し

就職後の継続支援

○ 関係機関と

の連絡調整

○ 日常生活・

地域生活に関

する助言

○ 就業に関す

る相談支援

○ 障害特性を踏

まえた雇用管理

に関する助言

○ 関係機関と

の連絡調整

自立・安定した職業生活の実現

技術的支援

(厚生労働省、2007.6)

10

(厚生労働省、2006)

IPS援助付き雇用とは

IPS (Individual Placement and Support)とは、就労支援スペシャリスト(ES)を中心とする多職種チームによって、

・就労支援のみならず生活支援・臨床的支援が統合的・継続的に提供される、

・ケースマネジメント的な個別就労支援アプローチ

利用者の好みや選択によって、就労支援を必要とするすべての精神障害をもつ人たちに、

・事前に職業準備訓練を提供することなく、

・たとえ短時間や限られた期間の仕事であっても、できるだけ速やかに一般就労の機会を提供する

・経験的な方法で標準化された科学的根拠に基づく援助付き雇用モデル

11

個別職業紹介とサポート(IPS)の原則

利用資格は利用者の選択に基づく

IPSは精神保健臨床サービスと一体的に提供

あくまでも、一般雇用が目標

迅速な求職活動(開始後1ヶ月以内)

個別化された求職活動

継続的なフォローアップ(継続・同行支援)

従来の臨床家の視点

担当クライアントは、

準備ができていない

やる気がない

調子が悪い(ストレスに弱い)薬物・アルコールを使用している

単に働くことができない

12

働くことはストレスが多過ぎる?

・何と比べて?

・Joe Marrone:働くことはストレスが多いと感じるの

なら、失業を試してはどうか。

従来の精神保健機関でみられる一般的な考え方

我々のクライアントは働きたいと思っていない/一般就労できない

クライアントは、障害年金などの給付金等を失うので、働くことを恐れている

事業主が彼らを雇用しない

不況

13

図 精神保健援助チームとIPSユニット、職業リハビリテーション部門との関係

ES

Ns

リーダー

ICo

ES

ES

CM

CM

MD

CMCM

CM

リーダーES: 就労支援スペシャリストICo: IPSコーディネータ

(IPSスーパーバイザー、雇用コーディネータとも呼ぶ)CM:ケースマネジャーリーダー:援助チームリーダーMD: 援助チーム精神科医Ns: 援助チーム看護師

CM

CM

州政府職業リハビリテーション(VR)部門

職業リハビリテーション(VR)カウンセラー

精神保健機関等(地域精神保健センター等)

精神保健援助チーム(ACT等)

精神保健援助チーム

IPSユニット

(大島、2004.10.17)

IPS無作為化比較試験研究における一般就労率の比較

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

96 NH (IPS)

94 NY (SE)

04 CA(IPS)

04 IL(IPS)

04 CT(IPS)

04 SC (IPS)

99 DC(IPS)

95 IN(SE)

00 NY (SE)

04 QUE(IPS)

97 CA(SE)

02 MD (IPS)

Supported Employment Control Control 2

14

IPSに関する比較研究のまとめ

全12研究において、IPS群はコントロール群よりも一般就労率がきわめて高い

全12研究において、一時期でも一般就労をした利用者の割合の平均:

59%:IPS援助付き雇用

21%:コントロール群

(effect size =.83)

15

成果に対する楽観主義成果に対する期待は、必ずしも高くない成果

たとえ短時間や限られた期間の仕事でも、たとえ短時間や限られた期間の仕事でも、一般就労に向けて迅速な求職活動を行う一般就労に向けて迅速な求職活動を行う

一般就労前に段階的な訓練プログラムが必要

一般就労が目標一般就労が目標一般就労は過剰な期待を強いるためストレス

源となる一般就労への見方

速やかに統合された地域環境に移行し、市民として成人役割を持つように支援

保護的な職業プログラム、段階的な就労支援

世の主流である仕事・労働への参加精神障害をもつ人たちに状態の安定をもたらす援助の目標

リカバリーモデル脆弱性ストレスモデル依拠するモデル

IPSモデル従来型モデル

表 IPSモデルと従来型モデルの目標や視点の違い

利用者の好みや選択に応じて個別化された求職活動を行う、意思決定への利用者参加

協力事業主などで同種類の仕事を優協力事業主などで同種類の仕事を優先して紹介する先して紹介する

個別性

統合された職場環境での一般就労の実現事前の職業前訓練、保護的な環境で

の職業経験

プレイス-トレイン(就労して訓練)アプローチ

トレイン-プレイス(訓練後に就労)アプローチ

職業訓練

利用者本人の働く意思や好み、選択を尊重して評価する

一般就労する上で問題となる点を特定する

一般就労した後に、随時の継続的職業アセスメント

広範な職業前アセスメントアセスメント

除外規準はない(希望すれば全て対象)物質乱用や暴力的行動がある、最低限の知的機能がない、基本的な生活

習慣が身についてない、など

対象者の除外規準

IPSモデル従来型モデル

表 IPSモデルと従来型モデルの目標や視点の違い(2)

16

重い精神障害をもつ人たちに必要な援助: 援助理念

リカバリー

ストレングスモデル

「まずは住居を」「まずは仕事を」

「まずは教育を」アプローチ⇒速やかに統合された地域環境に移行し、市民と

して成人役割を持てるよう援助することを重視

※IPS援助付き雇用はこれらの理念を、具体的に実 現するプログラム

援助付き雇用の類型

段階的アプローチ(訓練後就労モデル; “train-place” model)

技能訓練や福祉的作業所

試行的就労プログラム

職場適応の就労

エンクレーブ(一般社員と異なる場所(飛び地)での就労)

精神保健事業団体が経営する企業での就労、など

⇒従来型モデル

就労後訓練アプローチ(“place-train” model)

「個別職業紹介とサポート」(IPS; Individual Placement and Support)プログラム

⇒1980年代後半以降に登場

17

就労後訓練アプローチ登場の背景

「訓練」の効率性:

将来就く仕事のために必要な、社会生活技能を含む特定の技能は、その仕事が決まってから練習する方が効率的

「訓練」環境の魅力:

多くの職業前訓練や職場適応訓練の場は、退屈で挑戦のしがいがなく非現実的であることが多い

就労後訓練アプローチの効果:

IPS援助付き雇用がたいへん優秀な成果を納めたのに対して、就労前訓練アプローチの成果は明確でない

どこでIPS援助付き雇用を実施するか?

アメリカでは、

現在の支援サービスにIPSを加える(たとえばACTや他のケー

スマネジメント、住居サービス、精神科医療サービスなど)

通所リハビリテーションサービスなどのプログラムを転換する

(デイケアなど)

日本でどうするか?

IPSの追加:ACT、地域生活支援センター、訪問看護、小規模

作業所、デイケアなど

IPSへの転換:デイケア、小規模作業所・授産施設(就労移行

支援の活用)など

18

図 精神保健援助チームとIPSユニット、職業リハビリテーション部門との関係

ES

Ns

リーダー

ICo

ES

ES

CM

CM

MD

CMCM

CM

リーダーES: 就労支援スペシャリストICo: IPSコーディネータ

(IPSスーパーバイザー、雇用コーディネータとも呼ぶ)CM:ケースマネジャーリーダー:援助チームリーダーMD: 援助チーム精神科医Ns: 援助チーム看護師

CM

CM

州政府職業リハビリテーション(VR)部門

職業リハビリテーション(VR)カウンセラー

精神保健機関等(地域精神保健センター等)

精神保健援助チーム(ACT等)

精神保健援助チーム

IPSユニット

(大島、2004.10.17)

ベッカー&ドレイク著(大島、松為、伊藤監訳)精神障害をもつ人たちのワーキングライフ. 金剛出版、2004年刊