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Application Note 1-014 Page 1 Spectre 互換モードにおける SmartSpice シミュレーション はじめに SmartSpice は、スタンドアロンまたは Cadence 社 Analog Artist の環境下において Spectre 互換モードで実行できます。スタン ドアロンで実行する場合、コマンドラインを使用し、インタラク ティブ・モード、バッチ・モード、またはサイレント・バッチモード で実行可能です。Analog Artist の環境下では、既存の Analog Artist メニューを用いて SmartSpice プロセスをバッチ・モードで 実行できます。 本稿では、ユーザが Analog Artist 環境における Spectre シミュ レーションに精通されていることを前提とし、Spectre シミュレー ションの実行とは異なる特別な Analog Artist および SmartSpice の 機能を中心に説明します。過渡解析を例に挙げて説明しますが、 SmartSpice では AC 解析および DC 解析もサポートしています。 設定 環境設定は、スタンドアロン・モードおよび Analog Artist モード において共通です。 .cdsenv ファイルへの追加: spectre.envOpts controlMode string “batch” spectre.envOpts simOutputFormat string “psfbin” - プロット・フォーマットを PSF バイナリに設定 .cshrc ファイルへの追加: setenv PSF_WRITE_CHUNKS_MODE_ON true – 2GB 以上の Cadence PSF 出力ファイルをバイナリ・データ・フォーマットに 設定 setenv SMARTSPICE_V 3.11.12.C – 3.11.12.C など SmartSpice の従来のバージョンを実行 SmartSpice.ini ファイルへの追加: Set viewer=smartview – デフォルト・モードとして出力データを SmartSpice 波形ファイル (.raw)へ書き込むことを指定(それ以 外の場合、Cadence PSF 形式を使用) スタンドアロン・モード SmartSpice は、入力ファイルとして Spectre ネットリストを用い てスタンドアロン・モードで実行できます。バッチ・モードで Spectre 互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。 Smartspice –V 3.11.12.C –spectre –b input.scs –o outputfile.out –r rawfile.raw –P n ここで、input.scs は Spectre 入力ファイル、outputfile.out SmartSpice 出力ファイル、rawfile.raw は SmartSpice 波形ファ イル、n はマルチスレッドのプラットフォームで要求されるプロ セッサ数です。set viewer=smartview が SmartSpice.ini ファイ ルで指定された場合、–r rawfile.raw は省略可能です。 サイレント・バッチモードは、長距離ネットワークで実行し、画像 によってシミュレーション速度が遅くなる場合に使用します。コ マンドラインは次のとおりです。 Smartspice –V 3.11.12.C –spectre –sb input.scs –o outputfile.out –r rawfile.raw –P n インタラクティブ・モードは、バッチ・モード(インタラクティブ・ モードより高速)で実行する前のネットリストのデバッグに有用 です。 Smartspice -V 3.11.12.C –spectre input.scs –P n Analog Artist 環境下での実行 環境設定 [Setup]→[Environment]→[userCmdLineOption] ダイアログの [Virtuoso Analog Design Environment]でコマンドを設定します。 次のコマンド・スイッチを使用してバッチ・モードで SmartSpice を実行します。 -smart SmartSpice の実行を有効にする -format psfbin Cadence バイナリ PSF プロット・フォー マットを有効にする +mt=n n はマルチスレッド用プロセッサ数

1-014 spectre ja - SILVACOSpectre互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。 Smartspice

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Page 1: 1-014 spectre ja - SILVACOSpectre互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。 Smartspice

Application Note 1-014 Page 1

Spectre 互換モードにおける SmartSpice シミュレーション

はじめに

SmartSpice は、スタンドアロンまたは Cadence 社 Analog Artist

の環境下において Spectre 互換モードで実行できます。スタン

ドアロンで実行する場合、コマンドラインを使用し、インタラク

ティブ・モード、バッチ・モード、またはサイレント・バッチモード

で実行可能です。Analog Artist の環境下では、既存の Analog

Artist メニューを用いて SmartSpice プロセスをバッチ・モードで

実行できます。

本稿では、ユーザが Analog Artist 環境における Spectre シミュ

レーションに精通されていることを前提とし、Spectre シミュレー

ションの実行とは異なる特別なAnalog ArtistおよびSmartSpiceの

機能を中心に説明します。過渡解析を例に挙げて説明しますが、

SmartSpice では AC 解析および DC 解析もサポートしています。

設定

環境設定は、スタンドアロン・モードおよび Analog Artist モード

において共通です。

.cdsenv ファイルへの追加:

spectre.envOpts controlMode string “batch”

spectre.envOpts simOutputFormat string “psfbin”

- プロット・フォーマットを PSF バイナリに設定

.cshrc ファイルへの追加:

setenv PSF_WRITE_CHUNKS_MODE_ON true – 2GB 以上の

Cadence PSF 出力ファイルをバイナリ・データ・フォーマットに

設定

setenv SMARTSPICE_V 3.11.12.C – 3.11.12.C など SmartSpice

の従来のバージョンを実行

SmartSpice.ini ファイルへの追加:

Set viewer=smartview – デフォルト・モードとして出力データを

SmartSpice 波形ファイル (.raw)へ書き込むことを指定(それ以

外の場合、Cadence PSF 形式を使用)

スタンドアロン・モード

SmartSpice は、入力ファイルとして Spectre ネットリストを用い

てスタンドアロン・モードで実行できます。バッチ・モードで

Spectre 互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため

の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。

Smartspice –V 3.11.12.C –spectre –b input.scs –o

outputfile.out –r rawfile.raw –P n

ここで、input.scs は Spectre 入力ファイル、outputfile.out は

SmartSpice 出力ファイル、rawfile.raw は SmartSpice 波形ファ

イル、n はマルチスレッドのプラットフォームで要求されるプロ

セッサ数です。set viewer=smartview が SmartSpice.ini ファイ

ルで指定された場合、–r rawfile.raw は省略可能です。

サイレント・バッチモードは、長距離ネットワークで実行し、画像

によってシミュレーション速度が遅くなる場合に使用します。コ

マンドラインは次のとおりです。

Smartspice –V 3.11.12.C –spectre –sb input.scs –o

outputfile.out –r rawfile.raw –P n

インタラクティブ・モードは、バッチ・モード(インタラクティブ・

モードより高速)で実行する前のネットリストのデバッグに有用

です。

Smartspice -V 3.11.12.C –spectre input.scs –P n

Analog Artist 環境下での実行

環境設定

[Setup]→[Environment]→[userCmdLineOption]ダイアログの

[Virtuoso Analog Design Environment]でコマンドを設定します。

次のコマンド・スイッチを使用してバッチ・モードで SmartSpice

を実行します。

• -smart SmartSpice の実行を有効にする

• -format psfbin Cadence バイナリ PSF プロット・フォー

マットを有効にする

• +mt=n n はマルチスレッド用プロセッサ数

Page 2: 1-014 spectre ja - SILVACOSpectre互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。 Smartspice

Page 2 Application Note 1-014

図 1. [Environment Options]ダイアログ

• 例: -smart –format psfbin +mt=3

この例では、3 つのプロセッサを使用してバッチ・モードで

SmartSpiceを実行します。結果は、PSFバイナリ形式で保

存されます。

図 1 に、[Environment Options]ダイアログを示します。

インクルード・ファイル

一部のシミュレーションでは、Cadence 社 Spectre と同等でなく

ても SmartSpice シンタックスを入力デッキに含む必要がありま

す。SmartSpice シンタックスを含んだインクルード・ファイルを

Spectre input.scs ファイルに追加します。インクルード・ファイ

ルを追加するには、[Simulation Files Setup]ダイアログの

[Definition Files] コ マ ン ド ボ ッ ク ス ( [Setup]→[Simulation

Files]→[Definition Files])に指定します。

図 2 は[Simulation File Setup]ダイアログを、図 3 はインクルー

ド・ファイル例を示しています。

図 2. [Simulation Files Setup]ダイアログ

図 3. インクルード・ファイル例

図 4. [Choosing Analyses]ダイアログ

Transient Options

[Additional Parameters]ダイアログで SmartSpice 過渡オプショ

ンを設定できます。[Additional Parameters]ダイアログを開くに

は 、 [Analyses]→[Choose]→[Tran]→[Options]→[Additional

Parameters]を選択します。最も重要なパラメータは、tranop で

す (このパラメータの詳細については、『SmartSpice ユーザー

ズ・マニュアル』を参照)。[Choosing Analyses]ダイアログと

[Transient Options]ダイアログについては、図 4 と図 5 を参照

してください。

Simulator Options

[Simulator Options]ダイアログの[Other Options]の[Additional

arguments]フィールドに SmartSpice 固有パラメータを設定でき

ま す 。 [Simulator Options] ダ イ ア ロ グ を 開 く に は 、

[Simulation]→[Options]→[Analog]→[Simulator Option-]を選

択します。これらのパラメータは、SmartSpice .options パラメー

タとして解釈されます。また、これらのパラメータは、図3に示し

たように、SmartSpice インクルード・ファイルの一部として追加

できます。追加可能な役立つSmartSpice .optionsパラメータの

一部を次に示します(図 6 参照)。

• Acct=2 SmartSpice 統計情報出力機能

• Fast バイパス・モードの使用

• Rawpts データを psf または raw ファイルに書

き込むために必要なオプション

• Expert=777 非収束ノードの詳細情報

• Expert=779 BSIM3v3 警告メッセージの表示設定

Page 3: 1-014 spectre ja - SILVACOSpectre互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。 Smartspice

Application Note 1-014 Page 3

図 5. [Transient Options]ダイアログ

Simulation Netlist and Run

[Simulation]→[Netlist and Run]メニューを使用することで、

Spectre シミュレーションと同様にネットリストを生成し、シミュ

レーションを実行できます。出力ログ(spectre.out ファイル)に

は、Smartspice.out ファイルが含まれます。このファイルには、

SmartSpice シミュレーションのすべての出力ソースとネットリス

ト情報が含まれます。

図 6. [Simulator Options]ダイアログ

出力結果は、AWD または Wavescan のいずれかを使用して、

Spectre と同様に表示できます。シミュレーションの最後に、プ

ロットされた信号の結果が自動生成されます。その他の保存さ

れた信号は、Results Browser または Direct Plot を使用して、

確認することができます。

Page 4: 1-014 spectre ja - SILVACOSpectre互換モードを使用してスタンドアロンで実行するため の一般的なコマンドラインは、次のとおりです。 Smartspice

Page 4 Application Note 1-014

ネ ッ ト リ ス ト ・ フ ァ イ ル は 、 Spectre と 同 様 に 、

/simulation/cellview/spectre/schematic/netlist ディレクトリに格納

されています。input.scs ファイルおよび input.scs.in ファイルもこの

ディレクトリに格納されています。Verilog ファイルは、/netlist ディ

レクトリの直下の SimucadVLG というサブディレクトリでコンパイル

されます。Verilog モデルは、ソースファイルが変更されない限り、

一度コンパイルするだけです。

プロット・ファイルは、Spectre シミュレーション用として

/simulation/cellview/spectre/schematic/psf ディレクトリに格

納されています。過渡、DC、AC 出力は、バイナリ形式でサ

ポートされています。

set viewer=smartview が SmartSpice.ini ファイルに追加される

と、input.scs.in ファイルが格納されている/simulation/cellview

/spectre/schematic/netlist ディレクトリに input.scs.raw ファイ

ルが書き込まれます。ただし、Cadence 出力は生成されませ

ん。

シミュレーション・ネットリストのデバッグ

シミュレーションを開始せず、CDS.log および spectre.out ファイ

ルに十分な情報が含まれていない場合、インタラクティブ・

モードで SmartSpice GUI から入力ネットリストを取得すると有

用です。入力ネットリストは、次のディレクトリに用意されていま

す。

/simulation/cellview/spectre/schematic/netlist/input.scs.in

input.scs.in ファイルは、input.scs ファイルの SmartSpice バー

ジョンであり、いくつかの SmartSpice シンタックスが psf プロッ

ト用に最後に追加されています。このファイルは、SmartSpice

スタンドアロン・モードで実行できます。

[File]メニューからデッキを開くと、[Output]ページまたは

[Messages]ウィンドウにエラー・メッセージが表示されます。

[Decks]タブで適切なデッキを選択し、右クリックして[View

Listing]→[Physical]を選択することで、Spectre シンタックスを

SmartSpice シンタックスに変換できます。これにより、Spectre

シンタックスから変換された SmartSpice シンタックスを含む

SmartSpice 物理デッキを作成できます。