20
等級 地域 階数 必要壁長さ(cm) 1 8×12=96 96m × 33 cm/m 2 3,168 2 8×10=80 80m × 21 cm/m 2 1,680 多雪地 1 係数なし (100cm) 2 係数なし 80 96 80 96 80 96 80 96 80 96 80 96 80 96 80 96 ×(1.3+0.07/ 16 }×1.0×96 2 )×1.0×80 =80 =96 =80 =96 =80 50 ×(1.3+0.07/ 一般地 多雪地 (100cm) 1 30 ×(1.3+0.07/ + 20 係数 一般地 )×1.0×96 )×1.0×80 2 )×1.0×80 1 1 1 一般地 }×1.0×96 )×1.0×80 69 ×(0.4+0.6× )×1.0×96 69 ×(0.4+0.6× 多雪地 (100cm) 2 2 床面積(m 5,011 2,768 6,547 =96 =80 =96 =80 =96 4,540 58 ×(0.4+0.6× 25 ×(1.3+0.07/ 58 ×(0.4+0.6× 41 5,962 3,322 7,882 5,536 付録1.建築基準法と品確法との相異点(耐力壁量等) 耐力壁量に関して住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法と呼ぶ)では、等 1は建築基準法レベルとされている。木造の2階建て建築物を例として等級の違い即 ち基準法と品確法において両者の考え方、規準作成のプロセスの違いを比較する。 1. 地震力について 品確法の耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)では、地震力として極めて稀に発生す る地震力において構造躯体が倒壊、崩壊等しないこととしている。そして等級につい ては、等級1 (基準法レベル)を1.00として等級21.25、等級31.50倍した地震力を設 定している。外力の倍率を見ると等級と地震外力は直線的に比例している様に見える が、以下に述べる理由により必要壁長さは必ずしも直線的に比例していない。 建物条件:平面寸法(18m×12m28m×10m重い屋根、Z=1、多雪地100cm 1 等級別の必要壁長さ(地震力)の例 1 等級別の必要壁長さ(地震力)計算例 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000 等級1 等級2 等級3 一般地 1階 一般地 2階 多雪地 1階 多雪地 2階 (cm)

1. 地震力について - 日本建築学会1.1 建物重量 モデルプランとして1階(8m×12m)、2階(8m×10m)で重い屋根材で葺いた2階建 住宅の重量を比較する(表2

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等級 地域 階数 必要壁長さ(cm)

1 8×12=96 96m2× 33 cm/m

2 3,168

2 8×10=80 80m2× 21 cm/m

2 1,680

多雪地 1 係数なし

(100cm) 2 係数なし

8096

8096

8096

8096

8096

8096

8096

8096

×(1.3+0.07/

16 }×1.0×96

2 )×1.0×80

お=80

お=96

お=80

お=96

お=80 50 ×(1.3+0.07/

等級3

(品確法

一般地

多雪地

(100cm)

1

30 ×(1.3+0.07/

{ + 20

等級1

(基準法

係数

一般地

)×1.0×96

)×1.0×802

)×1.0×80

1

1

1

一般地

}×1.0×96

)×1.0×80

69 ×(0.4+0.6× )×1.0×96

69 ×(0.4+0.6×

多雪地

等級2

(品確法

)(100cm)

2

2

床面積(m2)

5,011

2,768

6,547

お=96

お=80

お=96

お=80

お=96

4,540

58 ×(0.4+0.6×

25 ×(1.3+0.07/

58 ×(0.4+0.6× +

41

5,962

3,322

7,882

5,536

付録1.建築基準法と品確法との相異点(耐力壁量等)

耐力壁量に関して住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法と呼ぶ)では、等

級1は建築基準法レベルとされている。木造の2階建て建築物を例として等級の違い即

ち基準法と品確法において両者の考え方、規準作成のプロセスの違いを比較する。

1. 地震力について 品確法の耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)では、地震力として極めて稀に発生す

る地震力において構造躯体が倒壊、崩壊等しないこととしている。そして等級につい

ては、等級1(基準法レベル)を1.00として等級2を1.25、等級3を1.50倍した地震力を設

定している。外力の倍率を見ると等級と地震外力は直線的に比例している様に見える

が、以下に述べる理由により必要壁長さは必ずしも直線的に比例していない。

建物条件:平面寸法(1階 8m×12m、2階8m×10m)

重い屋根、Z=1、多雪地100cm

図1 等級別の必要壁長さ(地震力)の例

表1 等級別の必要壁長さ(地震力)計算例

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

等級1 等級2 等級3

一般地 1階

一般地 2階

多雪地 1階

多雪地 2階

(cm)

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1.1 建物重量 モデルプランとして1階(8m×12m)、2階(8m×10m)で重い屋根材で葺いた2階建

住宅の重量を比較する(表2 建物重量比較表)。基準法の必要壁長さを算出する為の床

面積に乗ずる係数を導き出した単位重量と品確法の係数の単位重量はもともと異なっ

ている。

表2 から分かる様に、基準法は品確法で想定されている建物重量(1階壁高さの1/2

から上の部分)の80%である。ただし、基準法は総2階建として1階の必要壁量の係数

が決められ、品確法では、1階と2階の床面積が個々に算入される為に基準法の方が安

全側に算出されることとなる。

表2 建物重量比較表 前提 ・1階床 12m×8m

・2階床 10m×8m ・重い屋根

・1階壁高さの1/2から上の重量とする。

基準法 品確法 2階屋根荷重 90×(10×8)×1.3 =9,360 130×(10×8) =10,400 1階屋根荷重 90×(2×8)×1.3 =1,872 130×(2×8) =2,080 2階床固定荷重 50×(10×8) =4,000 60×(10×8) =4,800 積載荷重 60×(10×8) =4,800 61×(10×8) =4,880 2階壁荷重 60×(10×8) =4,800 (75+20)×(10×8) =7,600 1階壁荷重 60×(12×8)×1/2 =2,880 (75+20)×(12×8)×1/2 =4,560 合計 27,712kg 34,320kg 単位荷重、係数は、木質構造設計規準(解説)による 単位荷重は建築技術2000.10「壁量と壁倍率」によ

1.2 積雪荷重 表1で分かる様に、等級1即ち基準法では、積雪荷重が考慮されていない。一方品確

法には、積雪荷重の違いにより係数が定められており、積雪時の地震を想定した壁量

を算出できることになっている。尚、枠組壁工法の告示にも積雪時の地震が想定され

ている。

1.3 非耐力壁部分 基準法では、耐力壁以外での非耐力壁部分が抵抗要素として建物全体の1/3を負担し

ていることを前提として必要壁量を算出している。一方、品確法においても準耐力壁

として表3 の仕様について耐力壁に加算できることになっている。例えば、両面に石

膏ボード(12mm厚)を釘打ち(釘打ちは柱、間柱のみ)された壁の倍率は1.2倍に評価

されている。

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表3 準耐力壁 準耐力壁(品確法告示仕様)

配置

面材

構造用合板、パーティクルボード、 構造用パネル、せっこうボード、 木ずり、その他これに類するもの

(すべて片面でも可)

壁倍率 1.2倍(せっこうボード両面) 〔1.0倍×0.6×h/H ※(せっこうボード両面)〕

壁の高さ 36cm以上 参入上限

その他適用条件 なし

2. 風圧力について 基準法の風圧力の規定は、風見付面積に50cm/m2を乗じた数値が必要壁長さになる。

但し、特定行政庁が過去の記録にもとづいて50から75cm/m2の範囲で係数を定めること

ができるとしている。

一方品確法は構造計算に準じて表4「風速に応じた係数一覧」の通り風速に応じた係

数を決めている。この係数を決める上での前提条件は、地表面粗度区分をⅢ、平均高

さを7.1mとしている。表4中では、等級1に相当する係数と風圧力を1.2倍した等級2に相

当する係数を記したが、前者と基準法の50cm/m2を比べると風速32m/sの地域(八王子

など)で、ほぼ合致する。

表4 風速に応じた係数一覧 風速 (m/s) 30 32 34 36 38 40 42 44 46 等級2 見付面積に 乗ずる係数

53 60 67 76 84 93 103 113 123

上記より等級 1相当の係数 43 49 56 63 70 77 85 93 102

代表となる 地域 長野市 八王子市

等内陸

東京23区大阪市

神戸市

千葉市 銚子市 室戸市 八丈島 屋久島 沖縄

等級1相当の係数は建築技術2000.10による

H

h1

h2

h=h1+h2(h1、h2は36cm以上)

図2 h/Hの算定方法

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3. まとめ 品確法における等級2および等級3は構造計算を行った場合とほぼ同程度の必要壁量

となる。しかし、基準法で採用している非耐力壁要素が算入できる様に準耐力壁の基

準を設けられており、外力に対しての余力はあまりない状態と考えられる。

又、基準法においては想定している建物重量が軽く見積もられている点と積雪荷重

が想定されていないこと、そして風荷重においても地域により風圧力が異なることを

設計者は理解しておく必要がある。又、表5「建築基準法と品確法の耐力壁量等の相違

点」に記した耐力壁の配置・水平力の伝達、接合部においても基準法と品確法では違

いがある。

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表5 建築基準法と品確法の耐力壁量等の相違点

 =床面積× 33cm/m2  = 58cm/m2 × K1 × Z = 69cm/m2 × K1 × Z

地震地域係数

2階床面積1階床面積

(前提) ←・一部2階建も評価できる・準耐力壁も評価できる

・多雪地用の係数あり・想定荷重(床面積当り)

 1.屋根 90×1.3 = 117kg/m2  1.屋根 =

 2.床(固定荷重) = 50kg/m2  2.床(固定荷重) =

 3.壁 = 60kg/m2  3.外壁(モルタル) =

 4.積載荷重 = 60kg/m2  3.内壁(石膏ボード) =

 4.積載荷重 =

等級別の必要壁長さ(地震力)の例  条件 重い屋根

 1階 8m×12m 2階 8m×10m Z=1 多雪地100cm

・必要壁長さ ・必要壁長さ 一般地   =見付面積に乗ずる数値×見付面積

  =50cm/m2×見付面積 指定地域

  =(50~75cm/m2)×見付面積

 壁率比≧0.5 ・←・耐力壁線規定なし ・耐力壁線規定あり

・火打材、振れ止めの設置 ・水平構面の基準(床倍率)あり ・←

・←

等級3・必要壁長さ(重い屋根・2階建の1階)

・←

60kg/m2

0.4+0.6×

20kg/m2

61kg/m2

無し

・総2階を想定・外力の1/3を耐力壁以外の抵抗要素(雑壁等)が負担

・必要壁長さ(重い屋根・2階建の1階)等級1

・告示H12 1460号(木造の継手及び仕口の構造方法)

・継手、仕口の金物補強基準(接合部倍率)あり

・告示H12 1352号(木造建築物の軸組の設置基準)

・←

風圧力

耐力壁の

配置

接合部

水平力

の伝達

75kg/m2

等級2品確法 評価方法基準

130kg/m2

建築基準法施行令

地震力

・多雪地の規定なし・想定荷重(床面積当り)

(前提)

風速 m/s 30 32 34

見付面積に乗ずる数値

53 60 67

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

等級1 等級2 等級3

一般地 1階

一般地 2階

多雪地 1階

多雪地 2階

必要壁長さ(cm)

(基準法)

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

等級1 等級2 等級3

一般地 1階

一般地 2階

多雪地 1階

多雪地 2階

(cm)

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付録2.割箸の力学

【目的】 身近にある割箸を利用して割箸を壊しながらその壊れ方を自分の手で実感し,自分

の目で確認をして「力学の基本」と「木材の性質」を理解する.

前半は割箸を利用した講義風メモとして,後半は参考とすべき「力学の基本」を資

料編としてまとめた.

【講義メモ】 ステップ① 割箸を割ってみる.

1つの割箸を割るには㋑の方法もあるが,経験から㋐の方法が一般的と思われる.

ステップ② 1本になった割箸を二つにする.

折ってもよいし,引張ってもよい.

ステップ③ 折るための集中荷重はどのくらい必要か?

牛乳パック(1l)が何本必要?・・・1本? 2本? 3本?・・・5本? 10本?

ステップ④ ここで計算によって割箸が中央で折れる時の集中荷重Pを計算する.

L (20cm)

通常,誰に教えられた訳でもなく図のよ

うに中央集中荷重で折る.

P

(1l)

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割箸の断面:

(注)割箸の種類により多少断面に相違がある.

また,割箸の材料はここでは杉材とする.

断面係数: 025.06

5.06.06

22

==bhZ cm3

杉材の曲げ破断強度: 6000=bF N/cm2(600 kg/cm2)とする.

中央集中荷重時の曲げモーメント

PPPLM 5420

4=

×== N・cm

よって 6000025.05

===P

ZMFb N/cm2

∴ 305

025.06000=

×=P N ( 0.3 kg → 牛乳パック3本必要)

※ 自分で折ってみて 0.3 kgを体感する.

ステップ⑤ 断面を縦にして折るための集中荷重Pを算出する.

030.06

6.05.06

22

==bhZ cm3

∴ 365

030.06000=

×=P N ( 6.3 kg → 牛乳パック4本必要)

※ 同じ断面でも荷重をかける方向によって強さに差がある.

(【資料編】-「b.断面に関する各種係数-(2)断面係数( Z )」参照)

ステップ⑥ 次に折れる瞬間のたわみを算出する.

断面2次モーメント: 00625.012

5.06.012

33

==bhI cm4

(【資料編】-「b.断面に関する各種係数-(3)断面2次モーメント( I )」参照)

幅:0.6 cm せい

:0.

5 cm

幅:0.5 cm せい:

0.6

cm

幅:0.6 cm せい

:0.

5 cm

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中央集中荷重時の中央のたわみ

2.100625.070000048

203048

33

=××

×==

EIPLδ cm ( )17/L

(破断時の変形角は1/15~1/20程度である)

杉材のヤング係数: 700000=E N/cm2

※ 定規等を使用して折れる瞬間のたわみの確認を行う.また,破断面の観察をする.

ステップ⑦ 引張って折るためにはどのくらいの力が必要か?

杉材の引張り破断強度: 5000=tF N/cm2とする.

50006.05.0=

×==

TATFt N/cm2

∴ 1500=T N(150 kg → 約2人分の体重)

※割箸に2人がぶら下がることができないので実験は不可能である.

※ 中央集中荷重により(折って)破断する場合の力:30N(3 kg)

引張って破断する場合の力 :1500N(150 kg)

※『50倍の違いとなる理由は?』

中央集中荷重による場合には,縁応力度が破断強度に達し縁が切れると,この状態が次々

と内部に進み全断面が破断する.

引張る場合には,全断面が一挙に破断強度に達しないと破断しない.

ステップ⑧ 圧縮して折るとどうなるのか?

座屈をしてしまう.

50倍!

0.1

mm

:折る場合には少し破断すればよい(30N(3 kg))

5 m

m

:引張る場合には全破断(1500N(150 kg))

縁が切れる 破断!

圧縮側に歪み

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断面2次半径: 144.05.06.0

112

5.06.0 3

××

==AIi cm

kl =20cm 細長比: 138144.020

===iklλ

(【資料編】-「b.断面に関する各種係数-

(4)断面係数( i)と細長比(λ)」参照)

杉材の圧縮破断強度: 3000=cF N/cm2とする.

座屈の破断強度(の場合)

470

100138

30003.0

100

3.022 =

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

×=

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

ck

FF N(47 kg)

※ 人が1人全体重をかける前に座屈してしまう程度である.

ステップ⑨ 噛んで,めりこみについて検討する.

噛むと歯型がつくが(めりこむが)噛み切ることは出来ない.

めりこみは強度はないが,粘りのある壊れ方である.

(台)

P

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【資料編】 この資料編では木材の壊れ方の例を示し,その後に断面設計の基本となる断面に関する

各種係数について解説する.

a.木材の壊れ方 (1)曲げによる壊れ方 以下に杉の角材を用いて行った曲げ破壊実験の例を示す.

●破壊実験の例 その1(杉材:75mm×75mm)

この実験により,梁材において

・中央下端の切欠きがあると耐力が約30%になることがわかる.

・梁せいの1/3程度の穴あけがあると耐力が約60%になることがわかる.

P P

P P

P P

P P

P P

P P

P P

①切欠きなし

②中央側面切欠きあり

③中央下端切欠きあり

④中央上端切欠きあり

⑤断面中央部穴あけあり

⑥断面上端穴あけあり

⑦断面下端穴あけあり

圧縮側に歪み

圧縮(穴の上端にて)

3cm

100

70

30

50

60

60

60

孔よりせん断破

無垢材(①)の破壊荷重を100とした時の各場合の値

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●破壊実験の例 その2(杉材:75mm×75mm)

この実験により,端部下端切欠きがありそれを受けない場合は,耐力が受ける場合

の約50%になることがわかる.大入れにすることの効果がよくわかる.

写真1 破壊実験-①無垢材切欠きなし 写真2 破壊実験-③中央下端切欠きあり

写真3 破壊実験-⑤断面中央部穴あけあり 写真4 破壊実験-⑨端部下端切欠き受けなし

P P

P P

P P

⑧端部下端切欠き受けあり

100

⑨端部下端切欠き受けなし

⑩端部上端切欠きあり

50

80

ささくれ

⑧のように端部切欠き部を大入れのようにして受けた場合の破壊荷重を100とした時の各場合の値

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(2)軸力による壊れ方 ●圧縮力と引張力

圧縮力による破壊としては,座屈とめり込みがある.

また,引張力による破壊では繊維方向と繊維直角方向で抵抗力に差がある.

a.圧縮力

・座屈

柱などの部材に図のように圧縮力の力を加えていくと,短注の場合はかなり大

きな圧縮力で繊維の破断が起こり,長柱の場合は比較的小さな圧縮力で材そのもの

が曲がって折れる.

こうした破壊現象を座屈という.

・めり込み

図のように繊維と直角方向から圧縮の力を加えていくと,めり込み破壊が起こ

る.

b.引張力

部材に引張力を加えていくと,最終的に引きちぎられて破壊する.木材は引張

力に対する抵抗力は繊維の方向では比較的大きいが,繊維と直角方向では比較的

小さい.

ポイント

めり込み

(繊維方向) (繊維と直角方向) 引張破壊

長柱の座屈 短柱の圧縮破壊

←座屈方向→

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(3)せん断による壊れ方 木材のせん断破壊

一般にせん断力とは,下図のように物質を切り裂くように働く力をいう.

木材のせん断力による破壊現象は,繊維に直角の方向に荷重がかかってもそ

の方向には起き難く,一般的には繊維方向に起こる.これは繊維方向に比べて

繊維直角方向のほうが,木材のせん断抵抗力が格段に大きいからである.

① 木材の薄板(表面が滑らか)を4枚重ねておく.

② 荷重を加え,梁が曲げによりたわみだすと薄板は互いに滑り始める.

③ 一体の木材だと薄板を重ねた例のように滑ることができないので,木材の内

部に曲げたわみに起因するせん断力が生じる.

そのため,遂には梁せいの中央(ここが最も切断しようとする内力が大きい)

で割裂する.

【せん断という現象】

スパンが梁せいに比べて短い場合,せん断という現象が起こる.

長ければ曲げによって破壊する.

荷重

荷重

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b.断面に関する各種係数 (1)断面積( A)

断面積とは,材の軸方向に直角に切断したと仮定したときの断面の面積

である.大きいほど軸方向やせん断に対して強くなる.

断面積を求め,軸方向の応力度とせん断応力度を計算する.

・断面積を求める

hbA ×=

・軸方向の応力度を求める

AP

・せん断応力度を求める

AQ

×=23τ

501005000

===APσ N/cm2

10050

5000===

APσ N/cm2

同じ軸力であれば,断面積が1/2のときの応力度は2倍となる.

ポイント

←(軸力) ←(断面積)

←(軸力) ←(断面積)

(平均に対する最大の割増係数)

(幅)

(せい)

5000N 5000N

A=100cm2

5000N 5000N

A=50cm2

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(2)断面係数( Z)

断面係数とは,曲げの強さを示す材料の形に関する係数である.

断面係数は以下の式で計算する.

6

2hbZ ×=

材料に荷重がかかったときに生じる曲げ応力度は次式で求められる.

ZM

断面係数が大きくなるほど材料の曲げに対する抵抗力,すなわち曲げ強さが大きくなる.

断面係数が大きくなればなるほど,同じ荷重が作用しても材料に生ずる単位あたりの曲

げ応力が小さくなる.

材料の曲げの強さは,せいの2乗に比例する.同じ断面でもせいが大きいほど大きくなる.

ポイント

(幅)

(せい)

(幅) ↓

(せい) ↓

←(曲げモーメント)

←(断面係数)

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●各種断面の断面係数

ほぼ同じ断面積であっても形や使う方向によって,曲げに対する強さに差がある.

断面積 (A cm2)

断面係数

(Z cm3)比率

a 200 333 1.0

b 200 666 2.0

c 200 457 1.4

d 200 323 1.0

e 200 402 1.2

20cm (よこ)

10c

m

(た

て)

10cm (よこ)

20c

m

(た

て)

14cm (よこ)

14c

m

(たて)

14cm

14cm

16cm

(中立軸)

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(3)断面2次モーメント( I )

断面2次モーメントとは,変形に関する抵抗力の度合いを示す係数である.

断面2次モーメントが大きくなるほど,曲げによる変形が少なくなる.

断面2次モーメントは以下の式で計算する.

12

3hbI ×=

断面2次モーメントが大きくなるほど,曲げの変形に対して強くなる.

図(a)

図(b)

同じ長方形断面でも,縦長に使えば断面2次モーメント( I )が大きくなり曲がりにくくな

る.

材料の曲げたわみは,せいの3乗に反比例するのでせいの大きい方がはるかに変形しづら

くなる.

曲げたわみの方が曲げ強さよりせいによる影響は大きい.

ポイント

(幅) ↓

(幅)

(せい)

(せい) ↓

b

h

b h

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●各種断面の断面2次モーメントの算定

・同じ断面積の場合

① ② ③

1212

43 aaaI =×

= 12

4/12

)2/(2 43 aaaI =×

=

1241 4a×=

124

12)2(2/ 43 ×

=aaaI

124

4a×=

①を標準とすると,②は1/4倍,③は4倍となる.

・同じ幅の場合

④ ⑤ ⑥

1212

43 aaaI =×

= 12

812

)2( 43 aaaI ×=×

=12

2712

)3( 43 aaaI ×=×

=

④を標準とすると,⑤のようにせいが2倍になると8倍に,

⑥のようにせいが3倍になると27倍となる.

2a

a/2

a/

2a

a

2a

a

3a

a

a (中立軸)

a

a (中立軸)

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(4)断面2次半径( i)と細長比(λ)

断面2次半径とは,材料が圧縮力を受けた場合の座屈のしやすさを求める

ために用いられる係数である.

柱に座屈が生じるかどうかは部材の長さ(座屈長さ)と断面2次半径との

割合によって決まり,この割合を細長比という.

・細長比を求める

ikl=λ

・断面2次半径を求める

AIi =

この細長比の値が大きいときには,材料の許容圧縮応力度の低減を行う.なお

細長比が30以下の材料を短柱,30以上の材料を長柱という.短柱は許容圧縮応力

度の低減はない.

圧縮材の座屈の許容応力度は,国土交通省告示(平成8年1613号)に以下のよう

に定められている.

細長比λ≦30の場合 ck ff =

30 <λ≦100の場合 ( )λ01.03.1 −= ck ff

λ >100の場合 2

100

3.0

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

ck

ff

λ: 有効細長比

kf : 圧縮材の座屈の許容応力度

cf :建築基準法施行令第89条1項の表に掲げる圧縮の許容応力度

ポイント

←(座屈長さ) ←(断面2次半径)

←(断面2次モーメント) ←(断面積)

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●例題●

断面が10cm×10cmで,長さが50cm,1.0m,2.0mおよび3.0mの杉材について,それぞれの

材の細長比および許容座屈応力度を求める.

断面2次半径 ( i) (cm)

座屈長さ

( kl ) (cm)

細長比(λ) 座屈低減係数許容座屈応力度

(N/cm2)

(a) 2.89 50 17 1.00 600 (b) 2.89 100 35 0.95 570 (c) 2.89 200 69 0.61 370 (d) 2.89 300 104 0.28 170

細長比が大きくなると許容座屈応力度はいちじるしく低下する.

一般の木造住宅では細長比が100前後のものが多いが,許容座屈応力度を170N/cm2とする

と10cm角,長さ3mの杉材で,N=170 N/cm2×10cm×10cm=17000 N =17 kN(1.7 t)までの圧縮

力に耐えられることになり,一般の住宅では十分な耐力である.

なお,細長比は上限を150とし,それ以上の場合の設計をしてはならないことになってい

る.

10cm 10cm

10cm 10cm

10cm 10cm

10cm 10cm 50

cm 1.

0m

2.0m

3.0m

(a) 短柱 (b) 長柱 (c) 長柱 (d) 長柱