15
06 回復期リハビリテーション 2016.7 時報1 保険・調査委員会から 概要(A 票)、病棟概要(B 票)、自由記載(C 票)、 退院患者調査(D票)から構成されている。 回リハ病棟を有する病院データ(A票) 回リハ病棟を有する病院の約 3/4 が民間病院、 約 2/3 が200床未満の中小病院(図1)である。民 間病院が取り組みやすい病棟要件を背景に、病棟 数が増加してきたものと推察される。 病院あたりの病棟数は 1 病棟が最も多いが(2左)、7 病棟を有する病院も 1 病院あった。回リ ハの病床数は15~303床、中央値は50床であった 図2右)。 回リハ病棟協会 宮井 一郎 当協会副会長、保険・調査委員会委員長 はじめに 回復期リハビリテーション(回リハ)病棟協会が 2001 年以降、毎年行ってきた実態調査も、昨年度 で15 回目となった。その間、診療報酬改定、特に 2008 年度以降、質の評価の導入により調査項目数 を増加したにもかかわらず、調査協力病院は毎年 平均60.1 %と高水準を維持し、累積患者データは 26 万8,800 例に達している()。改めて、調査に 協力いただいた病院の皆様に感謝申し上げたい。 p3 「巻頭言」でも触れたように、本稿では、 2015年度実態調査結果の概要や経年的比較に加え て、自院の病棟機能を高めるためのベンチマーク として活用いただけるように、中央値の表示や病 棟ごとの集計を可能な限り追加した。実態調査報 告書(会員病院は回リハ病棟協会のホームページ よりダウンロードが可能)とあわせて利用される ことで、各病棟のリハ・ケアの質向上の一助とな れば幸いである。 2015年度調査の概要 調査の対象は、2015 年 7月24 日時点で回リハ 病棟協会が把握しているすべての回リハ病棟 (1,313 病院、1,678 病棟、74,817病床)とした。回 答状況の詳細はのとおりである。調査票は病院 99床以下 14.9% 100~199床 49.2% 200~299床 18.4% 300~399床 9.8% 400~499床 4.8% 500床以上 3.0% 図1 回リハ病棟を有する病院の総病床数(n=777) 時報1 保険・調査委員会から

時報1 保険・調査委員会から 回リハ病棟協会p06-20 実態調査 0728 16.7.29 1:59 PM ページ06 回復期リハビリテーション 2016.7 07 回リハ病棟協会

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06 回復期リハビリテーション◆2016.7

時報1 保険・調査委員会から

概要(A票)、病棟概要(B票)、自由記載(C票)、

退院患者調査(D票)から構成されている。

回リハ病棟を有する病院データ(A票)

回リハ病棟を有する病院の約3/4が民間病院、

約2/3が200床未満の中小病院(図1)である。民

間病院が取り組みやすい病棟要件を背景に、病棟

数が増加してきたものと推察される。

病院あたりの病棟数は1病棟が最も多いが(図

2左)、7病棟を有する病院も1病院あった。回リ

ハの病床数は15~303床、中央値は50床であった

(図2右)。

回リハ病棟協会

宮井一郎 当協会副会長、保険・調査委員会委員長

はじめに

回復期リハビリテーション(回リハ)病棟協会が

2001年以降、毎年行ってきた実態調査も、昨年度

で15回目となった。その間、診療報酬改定、特に

2008年度以降、質の評価の導入により調査項目数

を増加したにもかかわらず、調査協力病院は毎年

平均60.1%と高水準を維持し、累積患者データは

26万8,800例に達している(表)。改めて、調査に

協力いただいた病院の皆様に感謝申し上げたい。

p3「巻頭言」でも触れたように、本稿では、

2015年度実態調査結果の概要や経年的比較に加え

て、自院の病棟機能を高めるためのベンチマーク

として活用いただけるように、中央値の表示や病

棟ごとの集計を可能な限り追加した。実態調査報

告書(会員病院は回リハ病棟協会のホームページ

よりダウンロードが可能)とあわせて利用される

ことで、各病棟のリハ・ケアの質向上の一助とな

れば幸いである。

2015年度調査の概要

調査の対象は、2015年7月24日時点で回リハ

病棟協会が把握しているすべての回リハ病棟

(1,313病院、1,678病棟、74,817病床)とした。回

答状況の詳細は表のとおりである。調査票は病院

99床以下14.9%

100~199床49.2%

200~299床18.4%

300~399床9.8%

400~499床4.8%

500床以上3.0%

図1 回リハ病棟を有する病院の総病床数(n=777)

時報1 保険・調査委員会から

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ06

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回復期リハビリテーション◆2016.7 07

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

対象病院

99

153

325

472

570

616

780

879

970

1,048

1,096

1,140

1,199

1,250

1,313

11,910

調査年度

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

累 計

対象病棟

181

389

554

659

727

933

1,080

1,208

1,306

1,368

1.433

1,504

1,568

1,678

14,588

対象病床

5,131

8,479

17,599

25,140

30,046

32,829

42,083

48,266

53,792

57,954

60,674

63,471

66,542

69,372

74,817

656,195

回答病院数

64

87

152

234

289

343

436

536

580

607

721

754

756

801

799

7,159

回答病院%

64.6%

56.9%

46.8%

49.6%

50.7%

55.7%

55.9%

61.0%

59.8%

57.9%

65.8%

66.1%

63.1%

64.1%

60.9%

60.1%

回答病棟数

75

111

202

296

360

442

568

684

767

786

892

990

986

1,049

1,072

9,280

回答病棟%

61.3%

51.9%

53.4%

54.6%

60.8%

60.9%

63.3%

63.5%

60.2%

65.2%

69.1%

65.6%

66.9%

63.9%

63.6%

回答病床数

3,512

5,297

9,607

13,701

16,405

19,982

26,060

30,923

34,480

35,291

37,232

44,199

44,082

47,781

48,381

416,933

回答病床%

68.4%

62.5%

54.6%

54.5%

54.6%

60.9%

61.9%

64.1%

64.1%

60.9%

61.4%

69.6%

66.2%

68.9%

64.7%

63.5%

例 数

1,799

2,293

4,300

8,113

9,681

13,026

16,366

18,889

22,579

23,585

27,129

28,927

28,900

30,863

32,350

268,800

表 過去15年間の実態調査の動向

1病棟76.5%

2病棟15.2%

3病棟6.0%

4病棟2.0%

5病棟0.1% 7病棟

0.1%

≦20床1.6%

≦40床26.2%

≦60床48.7%

≦80床2.4%

≦100床9.2%

≦120床4.9%

≦140床2.3%

≦160床1.8%

≦180床1.6%

≦200床0.4%

>200床0.9%

図2 1病院あたりの回リハ病棟数(左)および病床数の分布(右) (n=798)

病棟数 中央値1 病床数 中央値50

3月)であるのに対し、回リハ病棟を有する病院

では、375/772=48.6%の病院が認定を受けており、

受審に積極的な姿勢が見てとれる(図3左)。

一方、付加機能の認定は49/749=6.5%だが(図3

右)、2016年度はすでに従来の3倍近い受審申し

込みがあり、今後のさらなる普及が期待される。

人員配置に関しては、リハ科の専門医は全体の

回リハ病棟の質を測るための一手段と考えられ

る、日本医療機能評価機構による第三者評価につ

いては、当協会と協調して、本体審査である病院

種別「リハビリテーション病院」、付加機能「リハ

ビリテーション機能」(回復期)を開発し、2012年

よりサーベイを開始している。

全病院の認定率が2,228/8,485=26.3%(2016年

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ07

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08 回復期リハビリテーション◆2016.7

200人発症し、最重症や軽症例を除くと半数の約

100人が回リハ病棟に転院すると考えられる。回

リハ病棟における脳血管疾患の平均在院日数は3

か月でベッドが年に4回転することから、これら

の患者に対応するための病床数は人口10万あた

り100/4=25床で十分であることが示唆される。

半数の病院で配置がなく、3割の病院で1名のみ

である(図4)。チーム医療のリーダーとしてリハ

に関する専門知識をもつ常勤医師の配置は喫緊の

課題である。

療法士の配置に関しては、中央値はPT25名、

OT14名、ST6名である。療法士総数の中央値は

46名であるが、約1割の病院で100名以上を配置

していた(図5)。社会福祉士配置の中央値は3名、

管理栄養士の中央値も3名であった。

回リハ病棟に関するデータ(B票)

病棟基準に関しては入院料1の割合が年々増加

しており、2015年度は50.7%を占めた(図6)。

同年の各種加算の取得状況を見ると、入院料1

の7割が体制強化加算を、8割がリハ充実加算を

算定している(図7)。

病棟の疾患構成に関しては、病床数の増加とと

もに年々脳血管疾患の割合が減少し、それを補う

ように整形疾患の割合が増加している(図8)。実

際、人口10万あたりの回リハ病床数と脳血管疾

患の割合をプロットすると、きれいな線形関係に

あることがわかる(図9)。脳卒中が10万人に年

時報1 保険・調査委員会から

なし51.4%

Ver54.7%

Ver626.7%

リハ病院(主機能)5.8%

リハ病院(副機能)5.2%

3rdG:Ver1.06.2%

なし93.5%

Ver22.9%

Ver33.6%

図3 日本医療機能評価機構による認定の状況

図4 回リハ病棟を有する病院のリハ科専門医配置状況(n=647)

病院機能評価本体認定(n=772) 付加機能評価認定(n=749)

0名46.4%

<1名4.5%

1名31.1%

2名11.3%

3名3.9%

4名1.2%

5名0.8%

6名0.3%

7名0.2%

8名0.5%

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ08

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回復期リハビリテーション◆2016.7 09

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

図5 回リハ病棟を有する病院のPT・OT・STの配置状況(n=787)

図6 回リハ病棟入院料取得状況の変遷(2009年~2015年)

0名<10名

<10名

<10名

<20名

<20名

<20名

<30名

<30名

<30名

<40名

<40名

<40名

<50名

<50名<60名

<60名<70名<70名

<80名<90名<100名

100名以上

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

PT OT ST

90.9

93.9

92.4

26.8

40.2

45.8

50.7

9.1

6.1

7.6

64.8

52.6

48.4

44.8

8.4

7.2

5.7

4.4

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

入院料1 入院料2 入院料3

さらに都道府県別にプロットすると、人口あた

りの回リハ病床が多い地域ほど脳血管疾患の割合

が低い傾向が見られた(図10)。この事実は、各地

域における回リハ病棟の役割を考える上でも重要

であろう。

ちなみに都道府県別の病床利用率、在院日数と

回リハ病床数には有意な相関が見られなかった。

病院・患者双方のニーズに応じベッドコントロー

ルが行われているというのが実情であろう。個別

リハの提供状況においては2010年のリハ充実加

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ09

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10 回復期リハビリテーション◆2016.7

算、休日リハ提供体制加算の導入以降、週末・祝 日の個別リハ提供が一気に進んだ。

図7 入院料別各種加算の取得状況(2015年)

体制強化+充実, 59.1体制強化のみ, 9.5

充実のみ, 20.8

充実のみ, 1.7休日+充実, 47.1

休日+充実, 30.8

休日のみ, 32.5

休日のみ, 34.6

加算なし, 10.6

加算なし, 18.7

加算なし, 34.6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

回リハ入院料 1

回リハ入院料 2

回リハ入院料 3

図8 回リハ病棟における疾患構成の変遷(2001年~2015年)

47.3

48.0

47.7

47.6

48.4

49.6

49.7

51.3

54.0

54.8

64.3

63.7

63.9

64.4

70.8

44.0

43.3

40.1

39.5

38.0

37.5

37.5

37.4

32.2

32.7

24.6

23.4

23.7

25.4

15.1

7.4

7.5

11.1

11.4

12.4

11.8

11.7

10.1

11.9

10.7

8.6

10.1

8.9

7.5

5.8

1.3

1.2

1.1

1.4

1.2

1.1

1.1

1.2

1.9

1.8

2.5

2.8

3.4

2.7

8.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2015年度

2014年度

2013年度

2012年度

2011年度

2010年度

2009年度

2008年度

2007年度

2006年度

2005年度

2004年度

2003年度

2002年度

2001年度

脳血管系 整形外科系 廃用症候群 その他

時報1 保険・調査委員会から

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ10

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回復期リハビリテーション◆2016.7 11

Part 2 回復期リハ病棟で働く介護福祉士座談会

図9 回リハ病床数と脳血管疾患患者の割合の年次推移

2001

2002

2003

2004

2005

2006 2007

2008

2009

2010

2011

2012

20132014

2015

y = -0.4416x + 70.653R2 = 0.9223

y = -0.4416x + 70.653R2 = 0.9223

4040

4545

5050

5555

6060

6565

7070

7575

00 1010 2020 3030 4040 5050 6060 7070

脳血管疾患患者の割合(%)

脳血管疾患患者の割合(%)

病床数(床/人口10万)病床数(床/人口10万)

図10 病床数(人口10万あたり)と脳血管疾患患者の割合(2015年)

北海道

青森

岩手

宮城

秋田

山形

福島

茨城

栃木

群馬

埼玉

東京

千葉

神奈川

新潟

山梨

静岡

長野

富山

石川

福井岐阜愛知 三重

滋賀

京都

大阪

兵庫

奈良

和歌山

鳥取

島根

岡山広島

山口

徳島

香川

愛媛

高知福岡

佐賀

長崎

熊本

大分宮崎

鹿児島

沖縄

25%

30%

35%

40%

45%

50%

55%

60%

65%

0 20 40 60 80 100 120 140 160病床数(床/人口10万)病床数(床/人口10万)

脳血管疾患患者の割合(%)

脳血管疾患患者の割合(%)

y = -0.0016x + 0.5825R2 = 0.3227

y = -0.0016x + 0.5825R2 = 0.3227

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ11

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12 回復期リハビリテーション◆2016.7

間帯による差の少ないスタッフ配置が理想である

が、人員上の問題がある場合でも、個別リハでの

一方、モーニングケア・イブニングケアの時間

帯への対応はさほど増加していない(図11)。時

時報1 保険・調査委員会から

図11 早朝・夜間、週末・祝日におけるリハ提供状況の変遷(2001年~2015年)

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ12

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回復期リハビリテーション◆2016.7 13

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

運動学習内容が実際のADL場面で復習・汎化され

るような運用の工夫は重要な課題であろう。

入院患者に関するデータ(D票)

入院患者のプロフィール

平均年齢は75.8歳、女性が57.5%を占めている。

疾患構成は上述図8の通りである。発症から入棟

までの期間は平均26.6日(脳血管30.8日、整形

22.7日)、重症度、医療・看護必要度に関しては

14.4%の患者で入院時A項目が1点以上、項目別に

は創傷処置(6.9%)、心電図モニター(4.0%)、呼吸

ケア(2.7%)、免疫抑制剤投与(1.2%)の順であった。

入院時日常生活機能評価は、図12に示すように、

入院料1、2で入院時10点の例数が突出している

ように見える。妥当な評価が行われているかどう

か、各施設で再確認いただけると幸いである。

入院患者の診療点数と自宅復帰率

図13に、2003年からの1日あたりの診療点数

図13 回リハ病棟における診療点数と自宅復帰率の変遷(2003年~2015年)

62%

63%

64%

65%

66%

67%

68%

69%

70%

71%

72%

73%

2,000

質の評価の導入

回復期リハ病棟協会実態調査より改変

2,200

2,400

2,600

2,800

3,000

3,200

3,400

3,600

3,800

4,000

4,200

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

自宅復帰率

日当点

自宅復帰率

6単位から9単位/日へ

重症回復加算在宅復帰≧60%

充実/休日加算

新回リハ1在宅復帰≧70%

新回リハ1体制強化加算

脳血管系 整形外科系 廃用症候群

図12 入院料別の入院時日常生活機能評価評点の分布(n=32,172)

入院料1(n=17,622)中央値7 入院料2(n=13,439)中央値5

日常生活機能評価点数合計点(入院時)

入院料3(n=1,111)中央値52,500

2,000

1,500

1,000

500

00 5 10 15 20 0 5 10 15 20 0 5 10 15 20

度数

1,250

1,000

750

500

250

0

度数

125

100

75

50

25

0

度数

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14 回復期リハビリテーション◆2016.7

らず、自宅復帰率が低下している。次に述べる、

アウトカム指標の向上とともに大きな課題である。

FIM利得、効率、効果の実績指数

症例ベースの入退院時のFIM点数や利得、効率

およびそれらの疾患別の分布については実態調査

報告書を参照されたい。ここでは病棟ごとの解析

を中心に記載する。

運動FIM点数の各病棟の平均値の中央値は、

入院時48.9点、退院時64.4点(図14)、運動FIM利

得の中央値は14.8点(図15)であった。

(日当点)を脳血管、整形、廃用に分けて、折れ線

で示している。

自宅復帰率の変遷を図13 に棒グラフで示した。

2006年以降、リハ単位数の増加とともに質の評価

に関するさまざまな加算が設定された。端的にい

えるのは、在宅復帰率の要件は全体の自宅(在宅)

復帰率向上にカンフル的には貢献していることで

あろう(図13矢印部分)。

しかし、2015年には医師と社会福祉士の専従を

要件とする体制強化加算が新設されたにもかかわ

時報1 保険・調査委員会から

図14 運動FIMの入退院時点数の病棟平均値の分布(2015年、n=961)

中央値48.9

125

100

75

50

25

013 26 39 52

入院時運動FIM 退院時運動FIM65 78 91

中央値64.4病棟数

125

100

75

50

25

013 26 39 52 65 78 91

病棟数

図15 運動FIM利得の病棟平均値の分布(2015年、n=935)

運動FIM利得0

0

20

40

60

80

100

120

10 20 30 40

中央値14.8

病棟数

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回復期リハビリテーション◆2016.7 15

一方、在院日数の病棟平均値の中央値は75.5日

(図16)で、1日あたりの運動FIM利得である運動

FIM効率の中央値は0.22であった(図17)。

「実績指数」に関する解析

さて、2016年度改定でアウトカム評価として運

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

図16 在院日数の病棟平均値の分布(2015年、n=935)

在院日数0

0

20

40

60

80

100

20 40 10060 80 120

中央値75.5日

病棟数

図17 運動FIM効率の病棟平均値の分布(2015年、n=935)

運動FIM効率.00 .10 .20 .30 .40 .50 .60 .70 .80 .90 1.00 1.10 1.20 1.30 1.40

0

100

200

300

400

中央値0.22

病棟数

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16 回復期リハビリテーション◆2016.7

動FIM利得を在院日数と原因疾患で補正した

「実績指数」が導入された。

以下はその観点からの解析を追加記載する。

実績指数は、過去6か月間に退棟した患者に対

して、ΣFIM利得/ Σ(在院日数/疾患ごとの算定

上限日数)と計算される。この計算の利点は疾患

構成が異なる病棟間での転帰の比較がある程度可

能になることである。運動FIM効率には脳血管、

整形、廃用で中央値がそれぞれ0.16、0.26、0.16と、

整形で高いという元来の特性がある(図18A)。

時報1 保険・調査委員会から

図18 運動FIM効率、実績指数の疾患別比較(2015年、n=27,099)

中央値0.16

中央値25.1 中央値

23.1 中央値14.7

脳血管

.00

.10

.20

.30

.40

.50

.60

.70

.80

.90

1.00

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

整形 廃用

脳血管 整形 廃用

中央値0.26

中央値0.16

実績指数

運動   効率

FIM

A

B

箱の上端が75%中央が50%下端が25%

エラーバーの上が90%下が10%

各プロットがはずれ値を示す

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回復期リハビリテーション◆2016.7 17

一方、これらに対し補正をかけた実績指数では、

それぞれ25.1、23.1、14.7と、脳血管と整形でほぼ

類似した数値となる(図18B)。この指数が、回

リハのアウトカム評価の指標として次のような基

準で利用されるようになった。

過去6か月間の退棟患者数が10名以上、提供リ

ハ単位数が1日平均6単位以上の施設で、3か月ご

との報告で報告前月までの6か月間の退棟患者を

対象とした実績指数が2回連続して27未満の場合

1日6単位を超えるもの(脳血管疾患等に発症後

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

図19 実績指数の分布(症例単位)(2015年、n=27,099)

実績指数0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160

0

1,000

2,000

3,000

4,000

中央値23.4

症例数

図20 実績指数の分布(病棟単位)(2015年、n=928)実績指数

0-5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 10550

50

25

75

100

125

中央値23.1

病棟数

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18 回復期リハビリテーション◆2016.7

図21 個々の除外規定による実績指数の違い(2015年、n=27,099)

運動FIM

5.915.428.647.676.139.6

非除外18,943

2.612.125.645.075.036.7

非除外15,57運動FIM(20以下76以上除外) 年齢(80歳以上除外)認知FIM(25点未満除外)

010.124.844.975.036.0

非除外14,625

00.99.924.948.920.7

除外8156(30.1%)

05.920.038.962.830.2

除外11,522(42.5%)

08.721.839.064.331.6

除外12,451(45.9%)

10%25%50%75%90%平均

0510152025303540455055606570

認知FIM 年齢

実績指数

60日以内に行ったものを除く)は、回リハ病棟入

院料に包括される。

患者ベースの解析では、実績指数の中央値は

23.4(図19)、これを病棟に紐付けると中央値は

23.1であり(図20)、いずれも27に達していない。

しかし、実績指数の計算には、除外規定がある。

まとめて除外できる基準としては、高次脳機能障

害患者があり、退棟患者の4割以上の保険医療機

関ではその全例である。

個々の基準としては入棟時の運動FIM≦20また

は≧76、または認知FIM≦24、または年齢≧80で

ある。いずれかの除外規定に当てはまる患者は全

症例の77.4%もあるが、実際は30%までしか除外

できないことから、機能予後予測に基づく判断が

必要になる。

上の3つの基準の中で実績指数への影響が最も

大きいのは、「入院時運動FIMの点数」である。除

外規定の非適用例の中央値が28.6であるのに対し、

適応例は9.9と極端に低い(図21)。

もう少し具体的に入院時運動FIM点数による

実績指数の分布を見ると、13~15点および85点

~ 91点の領域で中央値が大きく低下することが

わかる(図22)。前者は「重症度」という患者側の

要因、後者は「天井効果」というFIMの評価とし

ての特性に起因するものと考えられる。

さらに、アウトカムに影響を与える要因として、

リハ単位数と病院機能評価認定についても検討し

た。運動FIM利得の中央値は1日あたりの単位数

が多いほど大きく、妥当な結果が得られた(図23)。

しかし、1日あたりのFIM利得である運動FIM

効率に関しては単位数を多くしても伸び悩むため、

適正な在院日数と個別リハ時間以外のケアにおけ

る活動性向上による効率改善が必要であろう。

FIM利得や効率は疾患特性や在院日数に影響され

るが、これらを補正した実績指数は1日あたりの

リハ単位数が多いほど良好であることから、回リ

ハ病棟での9単位の個別リハ提供の臨床的意義は

示されているものと考えられる。

時報1 保険・調査委員会から

p06-20 実態調査���0728 16.7.29 1:59 PM ページ18

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回復期リハビリテーション◆2016.7 19

図22 入院時運動FIMによる実績指数の違い(2015年、症例単位 n=27,099)

27点

76点20点13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51 53 55 57 59 61 63 65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

入院時運動FIM点数

実績指数(症例単位)

各列、太い点が中央値、その上下の・太い棒が 25%~75%値・細い棒が 10%~90%値 を示す○、★ははずれ値

図23 リハ単位とアウトカム指標(2015年、n=25,688)

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0

5

10

15

20

25

30

運動FIM効率

運動FIM効率

運動FIM利得実績指数

実績指数

運動FIM利得

8単位以上

<8単位

<7単位

<6単位

<5単位

<4単位

<3単位

<2単位

病院機能評価はリハ・ケアのプロセスの質を反

映しうるとして、回リハ協会が質の評価に包含す

るべきものと提言してきた。2012年度より本体は

病院種別ごとの評価となり、「リハビリテーション

回リハ病棟協会 2015年度実態調査の結果とその活用 

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20 回復期リハビリテーション◆2016.7

病院」というカテゴリーが設定された。

加えて、回リハ病棟の上位20%のリハ・ケアの

質を想定して策定された「付加機能評価」も開始

されている。付加機能評価では常勤リハ科専門医

の配置が必須となっている。

2015年度のデータでは幸い、非認定病院、本体

認定病院、本体+付加機能認定病院の順に運動

FIM利得、効率、実績指数とも中央値が高く、現

時点では協会が設定した作業仮説に矛盾しない

(図24)。

おわりに

今年度(2016年)、会員病院の皆様にお願いす

る実態調査では、現状に照らし合わせて入院患者

に関する調査(D票)の項目数を大幅に削減した。

具体的には、原疾患を考慮した修正FIM効率を用

いた実績指数が導入されたため、バーセル指数の

調査は廃止した。

また、回リハ病棟協会の従来からの提言通り、

入院料1に対する「重症度、医療・看護必要度A項

目」の基準が今年度の改定で10%から5%に緩和

されたため、A項目ごとの記載や気切カニューレ、

胃管などの留置の調査も廃止した。代わりに症例

毎に実績指数の計算対象から除外するかどうかの

項目を設けたので、全国の病院の対応状況もお伝

えできることになる。

ぜひ、2016年度以降もご協力をお願い申し上げ

たい。

《参考資料》2015年度実態調査票(A、B、C、D票)

図24 病院機能評価認定とアウトカム指数(2015年、n=25,767)

0

5

10

15

20

25

30

運動FIM効率運動FIM利得実績指数

0.18

0.19

0.19

0.20

0.20

0.21

0.21

0.22

なし 本体のみ 本体+付加

運動FIM効率

実績指数

運動FIM利得

時報1 保険・調査委員会から 

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