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-134- 「蒸気性質第139委員会」活動状況報告 月:昭4411月 委 員 名(所職名):原 勝(京名教授) (期間:平2111月1〜現) :40名(委員19名、業委員21名) 1.委員会趣旨・目的 あるの基であるを安で安に み出すには、高高圧ののや に関する基としい技術がで ある。この観より、・原プラント のエネルギー変効の向上に貢献することが本 委員の目である。機工、、な どの研究者・技術者の携で、・蒸気・ 液系の諸に関する情報をレベルで交 し、技術の向上に役つの及と問の に主役をたすことをめざす。本 以降、エネルギーのやの についても研究する。グローバルを野 に れ 、 ・ 蒸 気 協 ( IAPWS, International Association of the Properties of Water and Steam)に携して、蒸気の 準の構と及に貢献する。 20113月11の本後のエネルギー 情のに呼する目で、のか らバイオマスへののエネルギーの も新たに研究する。 2.活動概要・実績 概要: 方法・システムおよびエネルギー変 のに関する諸問を、上記目にって研 究し、をで交・共した。へ の依軽減のための、なエネルギ ーのを求し、出 へのを模した。高高圧のと に関する新でも信できる情報をで交 ・共し、600℃をえる高での効の 向上にな技術についても議し た。もく、平23の本によって じたエネルギー問のを乗り越えるため、 蒸気及びの・に関する研 究をした。情による収激減の と苦しながら、エネルギー効・安・環 境(効ガス)問の決に役 つ研究・講をした。さらに、と 蒸気のに関するIAPWS2014(モスクワ で)において、委員の研究をし た。委員の目のひとつである、との に関する準の構と及に貢献し、 がのに関すると技術野での協を させた。 実績: ⑴議における研究、⑵議を える、⑶携織IAPWSのに 関する況報書の出。 委員の目にって、議(本3 :186月6、1911月18、20 2月2)と門の、運営委員を した。また、モスクワでのIAPWS(平26 6月)に委員を遣し、研究をした。

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「蒸気性質第139委員会」活動状況報告

⑴ 設置年月日:昭和44年11月

⑵ 委 員 ⻑ 名(所属職名):中原 勝(京都大学名誉教授)

(期間:平成21年11月1日〜現在)

⑶ 委 員 数:40名(学界委員19名、産業界委員21名)

1.委員会趣旨・目的 活力ある社会の基盤である電力を安全で安定に

生み出すには、高温高圧水等の作動流体の物性や

反応に関する基礎知識と正しい応用技術が必要で

ある。この観点より、火力・原子力発電プラント

のエネルギー変換効率の向上に貢献することが本

委員会の目的である。機械工学、物理学、化学な

どの研究者・技術者の連携で、水・水蒸気・水溶

液系の諸性質に関する情報を世界的レベルで交換

し、技術の向上に役立つ知識の普及と問題の整理

に主導的役割を果たすことをめざす。東日本大震

災以降、再生可能エネルギーの開発や水素燃料の

可能性についても研究する。グローバル化を視野

に 入 れ 、 国 際 水 ・ 蒸 気 性 質 協 会 ( IAPWS,

International Association of the Properties of

Water and Steam)に連携して、蒸気性質の国際

標準の構築と普及に国際貢献する。

2011年3月11日の東日本大震災後のエネルギー

事情の困難に呼応する目的で、燃料の化石燃料か

らバイオマスへの転換等の再生可能エネルギーの

可能性も新たに研究する。

2.活動概要・実績 概要:

発電方法・システムおよびエネルギー変換作動

流体の水に関する諸問題を、上記目的に沿って研

究し、成果を産学で交換・共有した。化石燃料へ

の依存度軽減のための、多様な再生可能エネルギ

ー開拓の可能性を探求し、二酸化炭素排出量抑制

への対策を模索した。高温高圧水の物性と反応性

に関する最新で最も信頼できる情報を産学で交

換・共有し、600℃を超える高温での発電効率の

飛躍的向上に必要な要素技術についても議論し

た。今も続く、平成23年の東日本大地震によって

生じたエネルギー問題の困難を乗り越えるため、

水蒸気及び水の熱力学的性質・反応性に関する研

究を推進した。電力事情による会費収入激減の困

難と苦闘しながら、エネルギー効率・安全性・環

境(温室効果ガス二酸化炭素)問題等の解決に役

立つ研究会・講演会を開催した。さらに、水と水

蒸気の性質に関するIAPWS2014年会(モスクワ

で開催)において、当委員会の研究成果を発表し

た。当委員会の目的のひとつである、水と海水の

性質に関する国際標準の構築と普及に貢献し、我

が国の水に関する科学と技術分野での国際協力を

前進させた。

実績: ⑴全体会議における研究活動、⑵全体会議を支

える分科会活動、⑶国際連携組織IAPWSの年会に

関する概況報告書の出版。

当委員会の目的に沿って、全体会議(本年度3

回開催:第18回6月6日、第19回11月18日、第20

回2月2日)と専門部会の分科会、運営委員会を開催

した。また、モスクワでのIAPWS年会(平成26年

6月)に委員を派遣し、研究成果を発表した。

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IAPWS国際標準の作成・評価・制定に国際貢献し

た。IAPWS年会での活動内容は、「概況報告書

2014年度版」として149ページの印刷体にまとめ

られ、日本学術振興会より出版配布された。実績

を特徴づけるキーワードを中心とした概要は以下

の通りである。

⑴ 全体会議による研究活動

★第9期第18回全体会議

(慶應義塾大学三田キャンパス)

委員会目的の情報交換の後、以下の研究成果

(モスクワでのIAPWS年会に向けて)が発表さ

れ、活発な質疑応答が行われた。

難 内田俊介 委員(JAEA原研)“Evaluation

of the Effects of pH Controlled by Several

Chemical Agents on Wall Thinning Rate

due to Flow Accelerated Corrosion”

汝 中 原 勝 委 員 ⻑ ( 京 大 ) “ C h e m i c a l

reactions in biomass”

二 平野秀朗 委員(電中研)“Reviewing the

Status of the Revision of JIS B 8223 ―

Water Conditioning for Boiler Feed Water

and Boiler Water"

尼 ⽊⼾遥 氏(三菱日立パワーシステムズ)

"Development of Water Quality Simulator

for Thermal Power Plants"との内容の講演が

なされ、活発な議論があった。

弐 塙悟史 氏(日本原子力研究開発機構)

"In-situ Monitoring of Hydrogen Peroxide

in Irradiation Fields by using Frequency

Dependent Complex Impedance Analysis"

★第9期第19回全体会議

(慶應義塾大学三田キャンパス)

本委員会第10期設置継続申請が承認されたこと

を受けて、最初に委員⻑は“第10期の展望”を示し

た 。 印 刷 冊 子 「 概 況 報 告 書 」 が 配 布 さ れ 、

IAPWS2014(モスクワ)の活動実績を報告し

た。その要点は以下の通り。

難 IAPWS年会への参加者は、ロシア(22)、

米国(8)、ドイツ(8)、チェコ(7)、日本

(7)の順であり、それ以下は、英国、カナ

ダ、スエーデンであった。日本の参加者は、

上記の国際シンポジュウムに加えて、次の専

門委員会で成果を発表した:①熱力学・物性

部門(TPWS)⇔動力プラント基盤技術分科

会 と 高 温 高 圧 水 分 科 会 、 ② 海 水 委 員 会

(TPWS)⇔高温高圧水分科会、③工業的ニー

ズと解決委員会(IRS)⇔動力プラント分科

会、④物理化学(PCAS)⇔高温高圧水分科

会、⑤電力サイクル化学(PCC)⇔パワーサ

イクル化学分科会(記号⇔の後は対応する当

委員会の分科会名)。内容の詳細については、

「概況報告書」を参照されたい。

汝 IAPWS国際シンポジュウム“Water and

Steam: Industrial and Scientific Application

(水と水蒸気の工業的ならびに学術的応用)”

・最初に、若手研究者に与えられる2014年

IAPWS Helmholtz賞が、我が国から推薦さ

れた吉田健博士(徳島大学講師)に授与さ

れ、受賞記念講演が行われた。演題は”Self-

diffusion in supercritical water: NMR and

MD studies on dynamics of hydrogen

bonds(超臨界水における自己拡散係数:

水素結合の動態に関するNMR分光学とMD

コンピュータシミュレーションによる研

究)”

水の自己拡散係数が水素結合の強弱によ

って如何に変化するかを、広範囲の密度・

温度・圧力条件下で実験的ならびに理論的

にミクロな視点から解明した研究について

の発表が行われた。

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・続く研究発表は、①ロシアの電力事情の現

状報告、②アモルファス氷・低温過冷却

水、③メタンや二酸化炭素のハイドレー

ト、④解離を含む超臨界水、⑤アミンなど

の水への添加物の化学-についてであっ

た。

二 IAPWS理事会での議論と決議

(ⅲ-1)専門委員会TPWS/IRS/SCSW⇔高温高圧

水化学分科会、動力プラント基盤技術分科

会関係:

・水の状態方程式IAPWS-95の改訂リリース

・水の状態方程式IAPWS-IF97の逆算式の捕

捉リリースの改訂

・水と水蒸気の状態方程式の改Spline内挿法

による高速計算

・氷Ⅲの融解曲線の改訂

・水の界面張力TGD

・重水の状態方程式

・重水の輸送係数

(ⅲ-2)専門委員会PCAS⇔高温高圧水化学分科

会関係:

・水のpH制御用添加物としてのアミンの性質

・海水の熱伝導度のガイドライン

(ⅲ-3)専門委員会PCC/PCAS⇔パワーサイクル

化学分科会関係のテクニカルガイダンスド

キ ュ メ ン ト TGD ( Technical Guidance

Document):

・TGD①-循環ユニットのイオン交換処理

水の供給の健全性と信頼性の保証

・TGD②-HRSGの高圧気化器管のサンプ

リング

・TGD③-腐食生成物のサンプリングと分析

尼 ICRN(国際認定研究ニーズのテーマ)

・ICRN17(アミンの挙動)

・ICRN20(高温モニター用センサー)

・ICRN22(相変化領域における蒸気化

学)

・ICRN25(ボイラ水中に不純物を存在さ

せる腐食の機構)

・ICRN26(水蒸気/水サイクルにおけるア

ルミニウムの挙動)

弐 今後のIAPWS開催国

・IAPWS2015年会はスカンジナヴィア連合

の主催、スエーデン、ストックホルム

・IAPWS2016年会ドイツの主催、ドレスデ

・IAPWS2017年会は日本の主催

★第9期第20回全体会議

(慶應義塾大学三田キャンパス)

委員会目的に沿って、事務的連絡、IAPWS

2017年度年会の開催時期・場所・シンポジウム

テーマ・予算・準備委員会、IAPWSの理事会・

各専門委員会の国内外における活動状況報告、

2015-IAPWS年会(6月、ストックホルム)、当

委員会の研究ニーズに関するアンケート(①

139委員会は何に役に立っているか、②何を期

待するか)の集計結果報告が行われ、以下の特

別講演で研究成果が発表され、活発な質疑応答

が行われた。

難 宮本泰行委員(富山県立大学)

「地熱発電について」

汝 沖田信雄委員(東芝電力システム)

「南あわじ太陽熱バイナリ発電試験装置」

二 吉田健委員(徳島大学)

「高温高圧NMR法による水・水溶液系のダ

イナミクスと反応の解析」

⑵ 分科会活動

★パワーサイクル化学分科会(主査平野秀朗)

「 水 と 水 溶 液 の 性 質 に 関 す る 国 際 組 織

IAPWS」のPCC(Power Cycle Chemistry)専

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門委員会に呼応して研究成果を、水処理技術の

国 際 標 準 技 術 指 針 ド キ ュ メ ン ト ( TGD,

Technical Guidance Document)を以下の通

りまとめた。

・ 国 際 標 準 「 揮 発 物 処 理 TGD 」 ”Volatile

Treatments for Steam-Water Circuits for

Fossil and Combined Cycle /HRSG

Power Plants”

・国際標準「リン酸処理TGD」”Phosphate

and NaOH Treatments for the Steam-

Water Circuits of Drum Boilers of Fossil

and Combined Cycle/HRSG Power

Plants”

・ 国 際 標 準 「 モ ニ タ ー 装 置 設 備

TGD 」 ”Instrumentation for Monitoring

and Control of Cycle Chemistry for

Steam-Water Circuits for Fossil and

Combined Cycle Power Plants”

・国際標準「タービン操作のための蒸気純度

TGD 」 ” Steam Purity for Turbine

Operation”

・国際標準「腐食生成物のサンプリングと分

析 TGD 」 ”Corrosion Product Sampling

and Analysis”

★動力プラント基盤技術分科会(主査沖田信雄)

・分科会発足当初から継続の、以下の研究課

題を追究した。

① 高温水蒸気の熱物性値高温水蒸気の解

離に関する情報

② CO2を含む水蒸気の物性値

③ 数字水分を含む空気の物性値

④ 数字排ガス中の水分と露点の関係

・今後次のテーマで研究活動する方針を決定

した。

国際協会であるIAPWS(特にIRS分科

会)へ貢献することを基本とし、最近の国

家プロジェクト研究であるA-USC(先端超

臨界圧蒸気サイクル、蒸気温度700℃〜

750℃)などを念頭に置いて以下の項目に

ついて活動する。

① 高温における水蒸気酸化(特にNi 基材

への影響など)

② 凍結の問題(論文の確認など現状の課

題含む)

③ 熱物性値などソフトウエアの開発(火

原協など参考)

④ 再生可能エネルギーが増加した場合の

火力低負荷・低流速の問 題

⑤ その他TPWSとのジョイント

3.活動の成果 ・委員会の特色や研究成果が分かる写真、ポンチ

絵やイラストなど:

水と水溶液分野で優れた若手研究者に与えら

れるIAPWS Helmholtz賞が、上述の通り、我が

国より推薦された吉田健博士に授与された。

・研究成果の刊行(シンポジウムのプロシーディ

ングも含む):

※書名、発行所、出版社名、発行年月日、発行

部数

書名:「2014年度 概況報告書」

発行所:独立行政法人 日本学術振興会 蒸

気性質 第139委員会

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発行年月日:2014年11月

4.今後の活動方針 今後、より高温・高圧の水蒸気による発電の効

率を高めるには科学と技術の総合的進歩が必要で

ある。広い領域での水の状態方程式の定式化と利

用方法の普及により発電効率の一層の向上に産学

が一致して協力する活動方針を継続する。さら

に、高効率発電プラント技術のため、材料の研究

に加えて、超臨界水の物性、反応性に関する研究

を今後さらに発展させる。具体的には、過冷却・

過圧縮などの非平衡状態における水の熱物性を国

際協力によって研究する。熱力学的考察のみなら

ず化学反応論の観点から腐食のコントロール技術

を改良することへの可能性を産学が協力して研究

する。物性に加えて水の化学的性質の研究を世界

標準で飛躍的に発展させ、我が国の電力システム

の安全性と効率をこれまで以上に向上させる。

産業活動・日常生活の向上に伴って、化石燃料

を燃料とする二酸化炭素発生の発電に加えて、太

陽光発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電

といった多様な再生可能エネルギーの可能性への

期待が一段と強まっていることを受けて、今後、

再生可能エネルギー燃料についても研究し、その

知見・情報を集め、産学間での議論を双方向から

推進する。この活動は電力システムの多様化の未

来に貢献するものと期待される。

グローバル化の中で日本の存在感を高めるた

め、国際組織IAPWSへの当委員会の貢献度を一層

高める。そのために、冊子「概況報告書」を毎年

出版することを継続する。これにより国内活動を

外国に発信すると同時に、外国からの最新情報を

国 内 の 産 業 界 に も た ら す 。 ま た 、 2017 年 の

IAPWSを日本で開催する準備を今後進める。

水を作動流体として大量に利用する電力システ

ムを取り巻く環境は、平成23年に発生した東日本

大震災の影響下で⻑期にわたり深刻である。この

活動方針は産学の協力体制の発展的継続と持続に

大きく貢献するものと期待される。活動の中心的

エンジンを全体会議とし、その手段としての分科

会、「高温・高圧水化学」、「動力プラントの基盤技

術」、「パワーサイクル化学」を機能的に運営し、

2017年のIAPWSでの理事会、専門委員会、シン

ポジュウムを充実させる計画である。

若手育成は技術と知識体系の継承と飛躍的発展

の鍵である。次世代への橋渡しを意図しながら本

委員会の活動を継続したい。産業界と学界の双方

で若手を登用し、若手の研究発表の機会を増や

す。若手にできるだけ早くから多くの機会を与え

ることにより、リーダーシップを育む。国内だけ

でなく国際的舞台のIAPWSにおいてバイリンガル

でコミニュケーションする経験を与える。学界も

産業界も多忙な変⾰期にあるが、若手の育成こそ

が新しい産学協力の芽である。若手育成の成果は

将来のエネルギー社会を豊かにする。