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基礎物理実験資料[1] 2003..11.14 1 光の回折と干渉(フラウンホーファー回折)平成 15 年 11 月 14 日 1. 目的 波動は媒質を伝わるとき回折し,たがいに重なり合うとき干渉する.この実験ではレーザー光といく つかのスリットを用いて光波の回折現象を観察し,この現象が Huygens-Fresnel(ホイヘンス-フレネ ル)の原理に基づいて理解できることを学ぶ.実験は,(a)光源や観測点がともにスリットから十分遠い 場合に起るフラウンホーファー (Fraunhofer)回折と,(b)光源や観測点あるいはその一方がスリットに 近い場合に起こるフレネル (Fresnel)回折を扱ったものから成る.ただし,後者についてはこの回折の 興味深い応用の1つである Fresnel のゾーン・プレートに関する実験を行う. 2. 課題 (1) 単スリットによる平面波の回折模様を観察し,スリットの幅と回折角の関係を定量的に調べる. (2) 平行に並んだ複数のスリット(実験ではスリット幅 b のスリットが 2 本平行に並んだ複スリットを使 う)による回折模様を観察してスリットの数と回折像の関係を定性的に調べ,回折現象を記述する基 本原理を理解する. 3. 実験内容 (1) 単スリットによる回折 1) スリットからスクリーンまでの距離 D を数回測定して,その平均値を求めること. 2) 拡大投影器を用いて,試料1-1,1-2のスリット幅bを数回測定して,その平均値を求めること. 3) 回折模様(明暗の縞模様)が現れるので,スクリーン上に投影した回折模様をグラフ用紙に写し 取ること. 【注意】1枚のグラフ用紙の中央に試料 1-1,1-2の中心の主極大をそろえて平行に並べて写し 取ること. 【注意】回折模様はグラフ用紙に収まる範囲でよい.(試料 1-1 : n=±2,試料 1-2 : n=±4) (2) 平行に並んだ複数のスリット(回折格子)による回折 1) 拡大投影器を用いて,試料 2-1,2-2 のスリット幅 b,スリット間隔 d を数回測定して,その平 均を求めること. 2) スリットを光学台の上において,スリットに垂直にレーザー光線をあてると,スクリーン上に 回折模様(明暗の縞模様)が現れるので,スクリーン上に投影した回折模様をグラフ用紙に写し 取ること. 【注意】1枚のグラフ用紙の中央に試料 2-1,2-2の中心の主極大をそろえて平行に並べて写し 取ること. 【注意】回折模様はグラフ用紙に収まる範囲でよい.(試料 2-1 : n=±8,試料 2-2 : n=±15) 4. 実験後の確認事項 (1) スリットからスクリーンまでの距離 D(例 : D=5238 mm)の平均値が算出されていること. (2) He-Ne ガス・レーザーの発振波長 8 . 632 = λ nm であること. (3) 単スリットによる回折 1) 試料 1-1 スリット幅(例 : b=0.07 mm)の平均値が算出されていること. 2) 試料 1-2 スリット幅(例 : b=0.14 mm)の平均値が算出されていること. 3) グラフ用紙の中央に回折模様が主極大をそろえて平行に並べて写し取られていること. 【注意】回折模様に暗線の測定距離 2 1 , x x ± ± ・・・が記入されていること.

光の回折と干渉(フラウンホーファー回折)平成15 …konomi.nagaokaut.ac.jp/Open/PR/kaki/interference.pdfつかのスリットを用いて光波の回折現象を観察し,この現象がHuygens-Fresnel(ホイヘンス-フレネ

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基礎物理実験資料[1] 2003..11.14

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光の回折と干渉(フラウンホーファー回折)平成 15 年 11 月 14 日

1. 目的

波動は媒質を伝わるとき回折し,たがいに重なり合うとき干渉する.この実験ではレーザー光といく

つかのスリットを用いて光波の回折現象を観察し,この現象が Huygens-Fresnel(ホイヘンス-フレネ

ル)の原理に基づいて理解できることを学ぶ.実験は,(a)光源や観測点がともにスリットから十分遠い

場合に起るフラウンホーファー (Fraunhofer)回折と,(b)光源や観測点あるいはその一方がスリットに

近い場合に起こるフレネル (Fresnel)回折を扱ったものから成る.ただし,後者についてはこの回折の

興味深い応用の1つである Fresnel のゾーン・プレートに関する実験を行う.

2. 課題

(1) 単スリットによる平面波の回折模様を観察し,スリットの幅と回折角の関係を定量的に調べる. (2) 平行に並んだ複数のスリット(実験ではスリット幅bのスリットが2本平行に並んだ複スリットを使う)による回折模様を観察してスリットの数と回折像の関係を定性的に調べ,回折現象を記述する基

本原理を理解する.

3. 実験内容

(1) 単スリットによる回折 1) スリットからスクリーンまでの距離 Dを数回測定して,その平均値を求めること. 2) 拡大投影器を用いて,試料 1-1,1-2 のスリット幅 bを数回測定して,その平均値を求めること. 3) 回折模様(明暗の縞模様)が現れるので,スクリーン上に投影した回折模様をグラフ用紙に写し取ること.

【注意】1枚のグラフ用紙の中央に試料 1-1,1-2 の中心の主極大をそろえて平行に並べて写し

取ること.

【注意】回折模様はグラフ用紙に収まる範囲でよい.(試料 1-1 : n=±2,試料 1-2 : n=±4)

(2) 平行に並んだ複数のスリット(回折格子)による回折 1) 拡大投影器を用いて,試料 2-1,2-2 のスリット幅 b,スリット間隔 dを数回測定して,その平均を求めること.

2) スリットを光学台の上において,スリットに垂直にレーザー光線をあてると,スクリーン上に回折模様(明暗の縞模様)が現れるので,スクリーン上に投影した回折模様をグラフ用紙に写し

取ること.

【注意】1枚のグラフ用紙の中央に試料 2-1,2-2 の中心の主極大をそろえて平行に並べて写し

取ること.

【注意】回折模様はグラフ用紙に収まる範囲でよい.(試料 2-1 : n=±8,試料 2-2 : n=±15)

4. 実験後の確認事項

(1) スリットからスクリーンまでの距離 D(例 : D=5238 mm)の平均値が算出されていること. (2) He-Ne ガス・レーザーの発振波長 8.632=λ nm であること.

(3) 単スリットによる回折 1) 試料 1-1 スリット幅(例 : b=0.07 mm)の平均値が算出されていること. 2) 試料 1-2 スリット幅(例 : b=0.14 mm)の平均値が算出されていること. 3) グラフ用紙の中央に回折模様が主極大をそろえて平行に並べて写し取られていること.

【注意】回折模様に暗線の測定距離 21 , xx ±± ・・・が記入されていること.

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4) 暗線の距離 xを計算し,測定結果の距離 nx と比較検討されていること.

b

nλθ =sin ( ・・・,3,2,1 ±±±=n )

b

DnDx λθ == 但し,Dx

=≈≈ θθθ tansin  

【注意】測定結果の距離 nx は, 2,1 xx ±± ・・・を平均した値を使うこと.

5) 測定結果の距離 nx からスリット幅 bが計算されていること.

θλ

sinnb = ( ・・・,3,2,1 ±±±=n )

【注意】それぞれの距離 nx からスリット幅 bを計算し,最確値 b0が求めてあること.

【注意】最確値のスリット幅 b0から暗線の距離 xが再計算されていること. 6) スリット幅 b[mm]と回折角θ[rad]の関係が調べてあること. 【注意】スリット幅 b(試料 1-1 の最確値 b0の半分の値)を nb (n=1,2,3,4・・・)に変化した場合

の回折角θを求めて,グラフが作成されていること.また,グラフには,測定結果がマ

ーク(例 : ○,△,×等)で示され,関係式(理論式)が記載されていること.

(4) 平行に並んだ複数のスリット(回折格子)による回折 1) 試料 2-1 スリット幅(例 : b=0.12 mm),スリット間隔(例 : d=0.21 mm)の平均値が算出されて

いること.

2) 試料 2-2 スリット幅(例 : b=0.12 mm),スリット間隔(例 : d=0.41 mm)の平均値が算出されていること.

3) グラフ用紙の中央に回折模様が主極大をそろえて平行に並べて写し取られていること.

【注意】回折模様に明線の測定距離 21 , xx ±± ・・・が記入されていること.

4) 明線の距離 xを計算し,測定結果の距離 nx と比較検討されていること.

dmλθ =sin ( ・・・,3,2,1,0 ±±±=m ) →

dDmDx λθ ==

【注意】測定結果の距離 nx は, 2,1 xx ±± ・・・を平均した値を使うこと.

【注意】試料 2-1 では,欠線(次数 n=2,n=4,n=6・・・)が観察されるので,距離( nx , x )と次数

の対応に注意すること.

【注意】暗線の距離 xは,次のようになる.

dm

2)12(sin λθ += ( ・・・,3,2,1,0 ±±±=m ) →

dDmDx2

)12( λθ +==

5) 測定結果の距離 nx からスリット間隔 dが計算されていること.

【注意】それぞれの距離 nx からスリット間隔 dを計算し,最確値 d0が求めてあること.

【注意】最確値のスリット間隔 d0から明線の距離 xが再計算されていること.

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5. レポート

(1) 測定データが一覧表になっていること (2) 試料 1-1,1-2 の回折模様が1枚のグラフ用紙に記載されていること. 【注意】回折模様にタイトル,物理量,単位,試料情報(b,D,λ)等が記載されていること.

【注意】回折模様に暗線の測定距離 21 , xx ±± ・・・が記入されていること.

(3) 試料 1-1,1-2 で,暗線の距離 xが計算されていること. 【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果および測定結果が一覧表になっていること.

【注意】測定結果 nx と計算結果 xの距離について検討および考察がされていること.

(4) 試料 1-1,1-2 で,測定結果の距離 nx からスリット幅 bを計算し,最確値 b0が求めてあること.

【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果が一覧表になっていること.

【注意】測定結果と計算結果のスリット幅について検討および考察がされていること.

(5) 試料 1-1,1-2 で,最確値のスリット幅 b0から暗線の距離 xが再計算されていること. 【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果および測定結果が一覧表になっていること.

【注意】測定結果 nx と計算結果 xの距離について検討および考察がされていること.

(6) 試料 1-1,1-2 で,スリット幅 b[mm]と回折角θ[rad]の関係が調べてあること. 【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果が一覧表になっていること.

【注意】スリット幅 bと回折角θのグラフを作成し,検討および考察がされていること.

(7) 試料 2-1,2-2 の回折模様が1枚のグラフ用紙に記載されていること. 【注意】回折模様にタイトル,物理量,単位,試料情報(b,d,D,λ)等が記載されていること.

【注意】回折模様に明線(暗線)の測定距離 2,1 xx ±± ・・・が記入されていること.

(8) 試料 2-1,2-2 で,明線の距離 xが計算されていること. 【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果および測定結果が一覧表になっていること.

【注意】測定結果 nx と計算結果 xの距離について検討および考察がされていること.

(9) 試料 2-1,2-2 で,測定結果の距離 nx からスリット間隔 dを計算し,最確値 d0が求めてあること.

【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果が一覧表になっていること.

【注意】測定結果と計算結果のスリット間隔について検討および考察がされていること.

(10)試料 2-1,2-2 で,最確値のスリット間隔 d0から明線の距離 xが再計算されていること. 【注意】計算方法の1例が記載され,計算結果および測定結果が一覧表になっていること.

【注意】測定結果 nx と計算結果 xの距離について検討および考察がされていること.

(11)複スリットにおいて,次式が成り立つことが検討されていること(設問(1)関連).

2

2

2

2

)sin(sinsin

γγ

ββ

NNI ⋅∝ → γ

ββ 2

2

2

cossin⋅∝I

但し, 2=N ,λ

θπβ sinb= ,

λθπγ sind

= , bd 3=

【注意】N=2 の場合の算出過程が記載されていること(予備実験で証明させる).

【注意】計算方法の1例が記載され,相対的強度分布図が描かれていること.

(13)単スリット,複スリットの測定結果の妥当性や数値計算との整合性などについて検討および考察

がされていること.

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6. 参考資料

(1) 計画書に実験目的,理論,実験装置,実験手順,測定量および精度,測定量の解析が記載されていること.

(2) 最終レポートに計画書,実験結果,考察,検討,課題解答,感想が記載されていること. 【注意】結論として考察結果をまとめてあること.

(3) 単スリットおよび複スリットについて測定結果および計算結果の例を示す. 【注意】単スリット試料では暗線の距離,複スリット試料では明線の距離を記載してある.

【注意】スリットからスクリーンまでの距離は,D=5238[mm]を使った.

【注意】スリット幅 b,スリット間隔 d は,測定値を表す.また,スリット幅 b0 スリット間隔 d0

は,測定結果 nx より算出された最確値を表す.

1) 単スリット試料 1-1

次数 測定平均値 計算値

(b=0.07[mm])

再計算値

(b0=0.066[mm])

n=1 49.90[mm] 47.35[mm] 50.22[mm]

n=2 101.50[mm] 94.71[mm] 100.44[mm]

n=3 142.07[mm] 150.66[mm]

2) 単スリット試料 1-2

次数 測定平均値 計算値

(b=0.138[mm])

再計算値

(b0=0.130[mm])

n=1 25.50[mm] 24.02[mm] 25.50[mm]

n=2 51.00[mm] 48.04[mm] 51.00[mm]

n=3 77.25[mm] 72.06[mm] 76.49[mm]

3) 複スリット試料 2-1 (次数 n=2,n=4 : 欠線)

次数 測定平均値 計算値

(b=0.12[mm],d=0.22[mm])

再計算値

(b0=0.104[mm],d0=0.211[mm])

n=1 15.25[mm] 15.07[mm] 15.71[mm]

n=2 32.40[mm] 30.13[mm] 31.42[mm]

n=3 47.00[mm] 45.20[mm] 47.13[mm]

n=4 63.65[mm] 60.27[mm] 62.84[mm]

4) 複スリット試料 2-2

次数 測定平均値 計算値

(b=0.13[mm],d=0.40[mm])

再計算値

(b0=0.11[mm],d0=0.409[mm])

n=1 8.05[mm] 8.29[mm] 8.10[mm]

n=2 16.30[mm] 16.57[mm] 16.21[mm]

n=3 24.45[mm] 24.86[mm] 24.31[mm]

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参考資料

単スリットの強度分布(b=0.07 [mm])

0

0.5

1

X [cm]

I

単スリットの強度分布(b=0.14 [mm])

0

0.5

1

X [cm]

I

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複スリット強度分布(b=0.11[mm],d=0.409[mm])

0

0.5

1

-0.02 -0.01 0 0.01 0.02

sinθ

I_b

I_b_bata

I_b_gamma

複スリット強度分布(b=0.104[mm],d=0.211[mm])

0

0.5

1

-0.02 -0.01 0 0.01 0.02

sinθ

I_a

I_a_bata

I_a_gamma