34
多核NMR応用 多核NMR応用 19 F NMRを用いた量分析~ 第1回定量NMRクラブ(2012/12/4産業技術総合研究所 計測標準研究部門 有機分析科 イオディカル標準研究室 山﨑 有機分析科 イオディカル標準研究室 山﨑 1

19F NMRを用いた定量分析~ NMR 2012/12/4nmijclub/qNMR/docimgs/4_20121204.pdf分子式:C F SO K F NMR 、 FF FF FF F O C8F17SO3K 分子量:538.214 構造式: S O F F F

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多核NMRの応用多核NMRの応用~19F NMRを用いた定量分析~定

第1回定量NMRクラブ(2012/12/4)

産業技術総合研究所 計測標準研究部門有機分析科 バイオディカル標準研究室 山﨑 太一有機分析科 イオディカル標準研究室 山﨑 太

1

定量19F NMR法の開発目的定量19F NMR法の開発目的

フッ素化合物は生化学におけるスクリ ニングやフッ素化合物は生化学におけるスクリーニングや材料科学におけるポリマー分析等幅広く用いられている

分子構造解析や酵素活性等の速度論解析に使用19F NMRを用いた高精度な定量法開発は重要!

・1H NMRと同等の検出感度同等 検出感度・目的以外の成分にフッ素が含まれないことが多く、

スペクトル上で他の成分の影響を受けにくい

2

他 成分 影響を受

発表内容発表内容

1.19F NMRの特性

2.定量分析法の検討

3.標準物質を用いた分析法の評価

4 解析法の最適化4.解析法の最適化

5 まとめ5.まとめ

3

使用装置使用装置

測定装置 :Varian Inc.製 VNS 600A測定装置 製

磁石 :14.1 T1 共鳴周波数 6001H共鳴周波数:600 MHz検出器(プローブ):Dual broadband probe

測定核種 :1H 19F/15N 31P測定核種 :1H-19F/15N-31P温度可変 :-5~80 ℃

4

1 と19 比較1H NMRと19F NMRの比較1H 19FH F

共鳴周波数 600 MHz 564.48 MHz核スピン 1/2 1/2核スピン / /

天然存在比 99.98 % 100.00 %測定範囲 20 ppm以下 200 ppm以上

19F NMRに1H NMRと類似かつ感度も良好→定量NMRとして有効

19Fを用いるメリット

・天然存在比100 %で同位体の影響がない溶媒の影響を受けにくい・溶媒の影響を受けにくい

・測定範囲が広いため、シグナル分離が良好多成分の 斉分析の可能性・多成分の一斉分析の可能性

5

オフレゾナンス効果とは?オフレゾナンス効果とは?

励起中心から遠い位置のシグナルほどシグナル強度が減衰する

~オフレゾナンス効果~

パルスは励起中心周波数付近ではほとんど励起できるが、励起中心から遠い位置(オフレゾナンス)では100 %励起されない励起中心から遠い位置(オフレゾナンス)では100 %励起されない

オフレゾナンス効果はNMR活性な全ての核種で確認できるが、19F NMRのように測定範囲が広い核種では影響が顕著に現れる

6

測定 解析条件測定・解析条件

測定条件測定核 :19 F測定温度 :25 ℃測定スペクトル幅 :131578.9 Hz (233.1 ppm)取り込み時間 :1 s遅延時間 :60 sパルス幅 :14.4 sパルス角度 :90°積算 数積算回数 :32

7

測定対象測定対象19F NMR測定における分子内積分比を比較し 測定法の確立を目指す

物質名:ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム(PFOS-K)分子式:C F SO K

F NMR測定における分子内積分比を比較し、測定法の確立を目指す

F FF FF FF O

分子式:C8F17SO3K分子量: 538.214構造式:

S

OF FF FF FF F

FF

F

OK

F FF FF FF F

試料はNMIJ CRM 4220-aの原料(高純度品)に用いられたものを使用

分子内に類似した複数のFを有するため、19F NMR測定のシグナル分離や積分比比較に適している

※2010度から特化物の対象に指定

8

19F NMRスペクトル(PFOS K)1

19F NMRスペクトル(PFOS-K)

S

F FF FF F

FF O

OK

1 35

S

OF FF FF FF F

F

F

OK

26 4

シグナル4には3つのシグナルが重なっている

2

34 65

(

40 ppm超pp

9

オフレゾナンス効果(PFOS K)オフレゾナンス効果(PFOS-K)120 0 F数で規格化

80 0

100.0

120.0

00(%

)

F数で規格化

40 0

60.0

80.0 m

ax)/

F数×

1

0 0

20.0

40.0

(A/A

m

0.0

-200-150-100-500測定中心周波数 / ppm

シグナルが測定中心周波数に近いときに対象シグナルの極大を持つシグナルが測定中心周波数に近いときに対象シグナルの極大を持つ

シグナルごとに最大値を与える測定条件が異なる

10

19F NMRスペクトル(PFOS-K)F NMRスペクトル(PFOS-K)

100 0

120.0

100 0

120.0

40 0

60.0

80.0

100.0

max

)/F数

×10

0(%)

40 0

60.0

80.0

100.0

max

)/F数

×10

0(%)

0.0

20.0

40.0

-200-150-100-500

(A/A

m

測定中心周波数 / ppm

0.0

20.0

40.0

-200-150-100-500

(A/A

m

測定中心周波数 / ppm

1 1

測定中心周波数 / pp 測定中心周波数 pp

2 4 6 2 4 6234 6

5

( 234 6

5

(

測定中心 測定中心

11

シグナル強度と再現性 のオ レゾナンス効果の影響シグナル強度と再現性へのオフレゾナンス効果の影響

面積値 / F数面積値 / F数

90 o

シグナルNo. 平均値 RSD / %

1 15054 0.11

2 14603 0.01

3 14186 0.12 シグナル1とシグナル6の比較

測定中心

40

4 14012 0.16

5 13820 0.10

6 13557 0 14

約10 %の差

0 ppm

6 13557 0.14

結果 パ 角 ° 場合は

面積値 再現性 分子内シグナル間差

90° 1 <0 2 % <10 %

結果 パルス角90°の場合は面積強度・再現性は十分だが、分子内シグナル間差があるため

90 1 <0.2 % <10 % 定量には工夫が必要

12

発表内容発表内容

1.19F NMRの特性

2.定量分析法の検討

3.標準物質を用いた分析法の評価

4 解析法の最適化4.解析法の最適化

5 まとめ5.まとめ

13

定量法案定量法案

シグナルA

シグナルB

測定中心周波数(2つのシグナルの中心)

////

シグナルAの信号強度とシグナルBの信号強度を比較

※中心周波数の設定に問題が無いことが条件となる※中心周波数の設定に問題が無いことが条件となる

14

測定結果測定結果

比較シグナル 90 o 30 o

シグナルA シグナルB (A B)/A×100 シグナルA シグナルB (A B)/A×100

PFOS-K

A BシグナルAの面積値

シグナルBの面積値

(A-B)/A×100 (%)

シグナルAの面積値

シグナルBの面積値

(A-B)/A×100 (%)

1 2 18251 18093 0.86 6826 6922 1.40

1 3 18147 17986 0 88 6811 6845 0 501 3 18147 17986 0.88 6811 6845 0.50

1 5 18126 18160 0.19 6816 6779 0.55

1 6 18064 18039 0.14 6761 6725 0.53

2 6 18230 18081 0.81 6680 6775 1.42

シグナ 間の面積強度比を比較シグナル間の面積強度比を比較

90°:約1 %° 約 程度で測定することが出来た30°:約2 % 程度で測定することが出来た

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結果結果

測定条件を適切に設定することでオフレゾナンス効果を低減することができた低減する とができた

90°パルス照射のほうが30°パルスと比較すると90 パルス照射のほうが30 パルスと比較するとより再現性が高い結果が得られた

S/Nの影響と考えられ、高精度かつ短い測定時間で分析するためには90°パルスのほうが有効と考えられる

16

分析するためには90 パルスのほうが有効と考えられる

発表内容発表内容

1.19F NMRの特性

2.定量分析法の検討

3.標準物質を用いた分析法評価

4 解析法の最適化4.解析法の最適化

5 まとめ5.まとめ

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分子間純度測定(内標準法)分子間純度測定(内標準法)

19F NMRの特性を考慮し、提案した定量法を分子間測定へと応用し、測定法の有効性を検証

~検討方法~標準物質間で比較(一方を基準物質、他方を測定対象)することで、定量法の妥当性評価を行った

観測されるケミカルシフトの近い物質・遠い物質でそれぞれ観測されるケミカルシフトの近い物質 遠い物質でそれぞれ検討し、幅広い環境に適応できる定量法・解析法を検討

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基準物質基準物質

Oピ

N CF3

ClO

物質名 :クロルフェナピルCAS No. :122453-73-0純度 :0.996 ± 0.005 g/g (k = 2)

BrN

g g ( )

19F NMRスペクトル(アセトン溶媒)19F NMRスペクトル(アセトン溶媒)

= -57 2 ppm= -57.2 ppm

19

測定対象1測定対象1F3C

O

SCl

HN

O

Cl物質名 :フルスルファミドCAS No. :106917-52-6純度 :0 995 ± 0 006 g/g (k = 2)

NO2

純度 :0.995 ± 0.006 g/g (k 2)

19F NMRスペクトル(アセトン溶媒)F NMRスペクトル(アセトン溶媒)

= -63 7 ppm= -63.7 ppm

20

19F NMRスペクトル19F NMRスペクトル

クロルフェナピル= -57.2 ppm)

フルスルファミド= -63.7 ppm)

21

定量結果定量結果

1.006

1

1.002

1.004 中心値で約0.4 %程度の差

0.996

0.998

1

度(m

g/m

g)

TRM

90°

30°

0 99

0.992

0.994純度

0.988

0.99

標準物質の純度範囲(k 2)標準物質の純度範囲(k = 2)

標準物質の不確かさの範囲内で定量値が一致標準物質 確 範囲 定 値 致

22

測定対象2測定対象2

ズN

OO

N ClF物質名 :ジフルベンズロンCAS No. :35367-38-5純度 :0.998 ± 0.008 g/g (k = 2) O

F

g g ( )

19F NMRスペクトル(アセトン溶媒)F NMRスペクトル(アセトン溶媒)

= -114 2 ppm= -114.2 ppm

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19F NMRスペクトル19F NMRスペクトル

面積値は同程度だが、シグナルの形状が異なるために

クロルフェナピル= -57.2 ppm)

S/Nに大きな差がある

ジフルベンズロン= -114.2 ppm)

24

定量結果定量結果中心値で約2 %程度の差

1.01

1

1.005

◆TRM

0.99

0.995■90°▲30°

標準物質の純度範囲(k = 2)

0 98

0.985

0.975

0.98

標準物質の認証純度と比較して大きな差が確認

S/N、ベースライン(補正)、半値幅、積分区間などいくつかの要因が懸念( )

25

発表内容発表内容

1.19F NMRの特性

2.定量分析法の検討

3.標準物質を用いた分析法の評価

4 解析法の最適化4.解析法の最適化

5 まとめ5.まとめ

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解析法 最適化解析法の最適化

19F NMRでは1H NMRと比較して半値幅の大きなシグナルが観測されることがある大きなシグナルが観測されることがある

19F NMRでは測定のスペクトル幅は広く、F NMRでは測定のス クトル幅は広く、広い積分範囲ではベースラインの影響を受ける

1H NMRにおける定量分析は十分広い積分範囲を設定し、精確に定量できるが、19F NMRではシグナルごとの最

27

、精確 定量 る 、 シグナ 最適化が必要 ⇒ 固定範囲ではなく半値幅を基準?固定範囲ではなく半値幅を基準?

測定対象物質

F C

測定対象物質

ClO SCl

F3C

HN

O

O

Cl NN ClF

N CF3

Br

HN Cl N

OO

FN NO2

クロルフェナピル(IS) フルスルファミド ジフルベンズロン

IS :Chlorfenapyl (0.996 kg/kg±0.005 kg/kg, 半値幅:2 Hz)Analyte A:Flusulfamide (0.995kg/kg±0.006 kg/kg,半値幅: 2 Hz)Analyte B:Diflubenzurone (0.998 kg/kg±0.008 kg/kg,半値幅: 27 Hz)

28

ドフルスルファミドクロルフェナピル(□)/フルスルファミド(●)

0 98

1

0 98

1

0.94

0.96

0.98

0.94

0.96

0.98

mal

ized

are

a

mal

ized

are

a

0.9

0.92

0 100 200 300 400 500 6000.9

0.92

0 10 20 30 40 50 60

Nor

m

Nor

m

Integral range (Hz) Integral range (×FWHM (Hz))

積分範囲の拡大とともに規格化面積値も増加積分範囲の拡大とともに規格化面積値も増加

内標準と測定試料の面積変動が同等!

測定結果(純度値)は変わらない

29

測定結果(純度値)は変わらない

ジ ベ ズジフルベンズロンクロルフェナピル□)/ジフルベンズロン(●)

0 98

1

0 98

1

クロルフェナピル□)/ジフルベンズロン(●)

0.94

0.96

0.98

0.94

0.96

0.98

mal

ized

are

a

mal

ized

are

a

0.9

0.92

0 100 200 300 400 500 6000.9

0.92

0 10 20 30 40 50 60

Nor

m

Nor

m

Integral range (Hz) Integral range (×FWHM (Hz))

積分範囲の拡大とともに規格化面積値も増加積分範囲の拡大とともに規格化面積値も増加

内標準と測定試料の面積変動が異なる!

測定結果(純度値)に影響

30

測定結果(純度値)に影響

最適化後の定量結果最適化後の定量結果flusulfamide diflubenzurone

integral range purity SD purity SDreference value 0.995 0.006 0.998 0.008

100 Hz 0.995 0.002 0.897 0.002 200 Hz 0.996 0.002 0.944 0.004 300 Hz 0.996 0.000 0.956 0.006 400 Hz 0.992 0.005 0.966 0.003 500 Hz 0.995 0.007 0.981 0.011

10 times to FWHM 0.988 0.001 0.986 0.001 20 times to FWHM 0.995 0.000 0 987 0 00120 times to FWHM 0.995 0.000 0.987 0.001 30 times to FWHM 0.994 0.002 0.996 0.005 40 times to FWHM 0.994 0.002 1.000 0.008 50 times to FWHM 0 992 0 006 1 008 0 00750 times to FWHM 0.992 0.006 1.008 0.007

半値幅に差がない場合 ⇒ 積分方法の影響は小さい半値幅に差がある場合 ⇒ 積分方法の影響は大きい

31

半値幅に差がある場合 ⇒ 積分方法の影響は大きい半値幅の30~40倍で積分すると妥当な値が得られた

まとめまとめ

19 は測定周波数範囲が広く・ 19F NMRでは測定周波数範囲が広く、オフレゾナンス効果の影響を大きく受けるために影響を低減可能な測定法が必要

・ 1H NMRと比較してブロードなシグナルもあり、半値幅に対応した解析方法が有効半値幅に対応した解析方法が有効

測定法及び解析法を最適化する と・測定法及び解析法を最適化することで、0.5 %程度の精度で測定が可能

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今後 課題今後の課題

・ふっ素含有の様々な化合物の定量を試み、本法の妥当性を検証する本法の妥当性を検証する

・ 19F NMR用の内標準物質の開発・ 19F NMR用の内標準物質の開発

溶液中の成分定量 の応用・ 溶液中の成分定量への応用

・オフレゾナンス効果を低減させる工夫

33

ご静聴ありがとうございましたご静聴ありがとうございました

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