19
20 全国銀行預金についての一分析 ―― その特質と決定要因 ―― ◆朝倉 孝吉・北川 巧生・石井 康裕 は じ め に この研究はクライン・ゴールドバーガーのモデルにあ る個人流動性,法人流動性の各方程式の日本への適用を 検討するために,種々のテスト計算をおこなっている中 に,預金についていろいろの統計解析を試みることがで きたので,その一部分を多少加工して「預金についての一 分析」として小論にまとめてみようとしたにすぎない。 L. R. Klein and A. S. Goldberger, "An Eco- nometric Model of the United States, 19291952." 1955. pp. 2328, 53参照。 つまり,戦後の預金の成長率は次表のように国民所得 にくらべて著しく高いが,これは,どのようにしてつく られ,どのような特質をもっているか,またそれが景気 変動とともにどのように変っていくか,などの点につい て,主として最小自乗法によって分析してみようとした ものである。そして,あるていどは問題が解明されたり’ 疑問点として提出されたと思う。 同時に,この分析の結果でいろいろ不備な点が明らか になったことは1つの収獲である。すなわちわが国の預 金は当座預金,普通預金,通知預金,定期預金など,性 質の異なったものを数多含んでいるため,この分析のご とく,総体としての預金1本で論ずることには不備があ り,またわが国の銀行は都市銀行と地方銀行とでは性格 もかなり違い,そのビヘイビアも相当に異なっているこ となどから,これを1本にして扱うことには無理がある ことが明らかになった。 同時に,個人預金の中には個人業主預金が含まれてお り,この点からも,この分析方法では必ずしも十分な結 果が得られないことがはっきりした。したがって,さら に預金種類別に細かく分析し,また都市銀行,地方銀行別 に統計解析を続けることが必要と思われる。これがつぎ にとりあげるべき問題の焦点になってくるわけである。 ただ,この分析からいいうるのは,法人にしても個人 にしても,その流動性の分析には欧米流の方法をもって しては適当でないということである。これが,この分析 を通じて得られたひとつの結論である。 国民所得と預金の成長率の比較 11.623.5 23.0 20.6 28.5 23.9 14.7 32.3 (備考)指数曲線によって,昭和2633年をとった。 (注)本文中に出てくる資料の出所はつぎの通りであ る。 () 預金 日本銀行本邦経済統計 (全国銀行預金者別預金統計) () 貸出 (全国銀行資産) () 財政 (国家財政) () その他一般経済指標 国民所得白書 (当庁) 4半期別国民所得統計(当庁) なお,預金統計は,すべて預金者別預金統計に よっているため,第I期(3月末),第II期(9 月末)の年二つに限られる結果となった。した がって他の資料もすべてこれに調整してある。 1.わが国預金の特質 わが国の企業はよく知られている通り,恒常的に投資 超過の傾向にある。したがって,たとえば賃金,俸給支 払額の変化による預金増減も,割引なり貸付なりを経て はじめて法人預金となるという面がかなり強く,企業が その流動性選好の動機を自己資金によって直接的に預金 〈分析〉2

〈分析〉2 全国銀行預金についての一分析 - ESRI分析・2 - 21 - の形でみたしうる余地は,欧米諸国にくらべては少ない ということができる。全国銀行の貸出残高と法人預金残

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- 20 -

全国銀行預金についての一分析 ―― その特質と決定要因 ――

◆朝倉 孝吉・北川 巧生・石井 康裕

は じ め に

この研究はクライン・ゴールドバーガーのモデルにあ

る個人流動性,法人流動性の各方程式の日本への適用を

検討するために,種々のテスト計算をおこなっている中

に,預金についていろいろの統計解析を試みることがで

きたので,その一部分を多少加工して「預金についての一

分析」として小論にまとめてみようとしたにすぎない。

* L. R. Klein and A. S. Goldberger, "An Eco-

nometric Model of the United States, 1929~

1952." 1955. pp. 23~28, 53参照。

つまり,戦後の預金の成長率は次表のように国民所得

にくらべて著しく高いが,これは,どのようにしてつく

られ,どのような特質をもっているか,またそれが景気

変動とともにどのように変っていくか,などの点につい

て,主として 小自乗法によって分析してみようとした

ものである。そして,あるていどは問題が解明されたり’

疑問点として提出されたと思う。

同時に,この分析の結果でいろいろ不備な点が明らか

になったことは1つの収獲である。すなわちわが国の預

金は当座預金,普通預金,通知預金,定期預金など,性

質の異なったものを数多含んでいるため,この分析のご

とく,総体としての預金1本で論ずることには不備があ

り,またわが国の銀行は都市銀行と地方銀行とでは性格

もかなり違い,そのビヘイビアも相当に異なっているこ

となどから,これを1本にして扱うことには無理がある

ことが明らかになった。

同時に,個人預金の中には個人業主預金が含まれてお

り,この点からも,この分析方法では必ずしも十分な結

果が得られないことがはっきりした。したがって,さら

に預金種類別に細かく分析し,また都市銀行,地方銀行別

に統計解析を続けることが必要と思われる。これがつぎ

にとりあげるべき問題の焦点になってくるわけである。

ただ,この分析からいいうるのは,法人にしても個人

にしても,その流動性の分析には欧米流の方法をもって

しては適当でないということである。これが,この分析

を通じて得られたひとつの結論である。

国民所得と預金の成長率の比較

国 民 所 得 11.6%

総 預 金 23.5

法 人 預 金 23.0

短 期 預 金 20.6

長 期 預 金 28.5

個 人 預 金 23.9

短 期 預 金 14.7

長 期 預 金 32.3

(備考)指数曲線によって,昭和26~33年をとった。

(注)本文中に出てくる資料の出所はつぎの通りであ

る。

(イ) 預金 日本銀行本邦経済統計

(全国銀行預金者別預金統計)

(ロ) 貸出 〃 (全国銀行資産)

(ハ) 財政 〃 (国家財政)

(ニ) その他一般経済指標

国民所得白書 (当庁)

4半期別国民所得統計(当庁)

なお,預金統計は,すべて預金者別預金統計に

よっているため,第I期(3月末),第II期(9

月末)の年二つに限られる結果となった。した

がって他の資料もすべてこれに調整してある。

1.わが国預金の特質

わが国の企業はよく知られている通り,恒常的に投資

超過の傾向にある。したがって,たとえば賃金,俸給支

払額の変化による預金増減も,割引なり貸付なりを経て

はじめて法人預金となるという面がかなり強く,企業が

その流動性選好の動機を自己資金によって直接的に預金

〈分析〉2.

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■ 分析・2 ■

- 21 -

の形でみたしうる余地は,欧米諸国にくらべては少ない

ということができる。全国銀行の貸出残高と法人預金残

高とが同じようなほとんど一直線の上昇傾向をたどって

いるのは,これを別の面から立証しているものに外なら

ない。(第1図)

したがって,その意味では,金融に関するかぎり,「供

給はそれみずからの需要を生む」傾向が日本ではかなり

強いということができる。資金供給のあるところ,必ず

資金需要あり,といってもほとんど過言ではなく,それ

第1図 法人預金と貸出の動向

はすでに昭和30年から31年にかけての金融緩慢時の経験

によって立証されているといってもよい。

いかに資金のアベイラビリテイが増大しようとも,ま

たいかに貸出金利が低下しようとも,資金需要のないと

ころには割引や貸付の起りうるはずはないのであって,

銀行預金が増加し,金融が緩んだ場合,企業の資金需要

面が直接的には銀行の貸出にはね返ることが多いのはこ

のことを示している。

個人預金についてもあるていど同じようなことがいえ

る。一般的には個人可処分所得が増加すると個人預金が

増加するのは所得動機にもとづく流動性選好によって説

明されるべきものであり,欧米の場合には一般にこうい

うことが妥当すると思われる。しかし,日本の個人預金

が個人可処分所得によって説明されるのは,流動性選好

による個人の需要面からみた預金としてばかりではな

く,個人可処分所得の増加を通ずる個人貯蓄の増加によ

って,いわば流動性選好とは別の動機から個人預金の増

加となっている面がかなり強いのではないかと考えられ

る。ことに個人預金の中,長期預金だけをとり上げれ

ば,この事実は一そう明白になるように思われる。この

点は,法人預金の特徴とならんで,日本の預金を分析す

るに当ってかなり顕著な特色をなすものといってよい。

さらに法人,個人の両預金を通じていえば,一般的に

わが国の金融は間接金融方式として知られている。それ

はマネー・フロー的には個人部門で投資を超える貯蓄が

おこなわれ,その差額が法人企業部門における貯蓄を超

える投資によって吸収されているというものである。理

論的には個人部門で投資を超える貯蓄がおこなわれれ

ば,その差額は資本市場を通じて法人企業部門の実物資

本形成にあてられるべきはずのものである。そうするこ

とによってはじめて投資と貯蓄が均衡し,経済の安定的

発展が可能となる。

それにもかかわらず,わが国の場合,個人部門の貯蓄

が個人預金,なかんずく長期性の定期預金として吸収さ

れ,それが金融機関を通じて法人企業部門に放出され,

いわゆる間接金融方式となって現われている実状にあ

る。ちなみに欧米,ことにアメリカでは長期預金ないし

定期預金という概念は存在しない。強いて挙げれば,

“time deposit”という概念がそれに類似しているとい

えようが,これはむしろわが国の通知預金のやや長期間

のものと考えてよく,「有期預金」ということばが該当

する。したがってこれの引出しにはつねに事前の通告を

必要としており,しかも半年以上にわたる期間の預金は

きわめて少ない。たとえばクリスマスセールを目当てに

したような貯蓄性積立預金も本来は消費目的のものであ

って日本の貯蓄性預金とはその概念が本質的に違ってい

る。

いずれにしてもそれらの預金はすべて流動性選好の動

機によって保持される預金であって,それ以上のもので

はない。このことは不況期を除いて有期預金がほぼ30%

の水準に安定していることによってもわかるであろう

(第2図)。

これに反して日本の場合には,長期預金は流動性選好

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■ 分析・2 ■

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第2図 アメリカの預金構成

(備考) L. Pritchard "Money and Banking" p. 228

の動機よりもむしろそれとは別個の動機にもとづくもの

ではないかと考えられる節が多い。一般に個人可処分所

得はまず消費と貯蓄に分けられる。つぎに貯蓄は,(イ)実

物投資,(ロ)現金保有,(ハ)債権保有などに処分される。具

体的には家屋を建てたり,普通預金をしたり,また株式

に投資したりすることである。

しかし,わが国の長期預金は貯蓄の処分形態としての

上のいずれの範疇にも属さないように思われる。その範

疇をして規定すれば,つぎの図のように,貯蓄の処分形

態としての(イ)実物投資,(ロ)現金保有,(ハ)債権保有などと

並んでその前段階としての過渡的なもので,やや証券投

資に近いものと考えられる。ことに 近のように個人長

期預金の中で1年定期の占める割合が80%前後にあるこ

とを考えると,この傾向はそうとう強いように思われる。

所得および貯蓄の処分形態

* これは流動性選好の中,予備的動機にもとづくも

のと考えられるかも知れない。しかし,ケインズ

が定義したように,「利子は流動性を手放すこと

に対する報酬」であり,しかも1年定期に対して

証券利回りにも匹敵するほどの利子が得られるか

ぎり,長期預金は明らかに予備的動機にもとずく

流動性選好とも異る。

したがって,わが国の長期預金は,遊資運用的性格と

でも呼ばれるものと,貸出によって拘束されるものとの

二つに大別される(わが国の個人預金には個人業主の預

金も含まれており,それが分離不可能のため拘束される

預金もかなりあるとみられる)。すなわち,より具体的に

は,(イ)耐久消費財をも含めて将来の実物投資目的のもの,

(ロ)本来の貯蓄目的のもの,(ハ)将来の消費目的のもの,お

よび(ニ)貸出によって拘束される預金,などとなろう。

このような傾向は,しかし,一面で資本市場,なかん

ずく,その流通市場の未整備,未発達に原因があること

も否定できない事実であり,税制の改革,企業資本構成

の是正などを通じてあるていど変動することも考えられ

る。しかし基本的には間接金融方式は日本的特質として

今後も残るものと考えられる。

そこで以上の預金の分析については二つの側面からこ

れに接近することができる。そのひとつは預金者として

の企業なり,個人なりの供給面からその分析を進めるこ

とである。たとえば,個人可処分所得が増加することに

よって個人預金がどう影響されるかとか,法人所得が減

少することによって法人預金がどう変化するか,とかい

う形での分析は,預金の供給面からするそれであるとい

える。これに対して,たとえば賃金,俸給の支払額が増

加した場合,法人預金はどう影響されるかとか,個人消

費が減少した場合,個人預金がどう変化するか,という

ような形で問題をとり上げることもできる。これは預金

者としての企業なり,個人なりが預金を保持する動機面

から分析を進めるもので,前に述べた預金の供給面から

の分析に対してこれを預金の需要面からの分析というこ

とができる。

しかしこれまで述べてきたようなわが国預金の特質か

らすればその分析には需要面から接近するよりも供給面

から接近する方が問題の核心にふれ易いし,またそれで

ほぼ誤りないと思われる。したがってこの分析はいずれ

も供給面から預金に接近したものである。

2.個 人 預 金

(1) 個人預金と個人可処分所得

個人預金を規定するもっとも重要な要因は,いうまで

個人可処 分所得

消費

貯蓄 長期預金

実物資本形成(耐久消費財 購入を含む)

現金・短期預金(流動性選好)

証券(債権)

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■ 分析・2 ■

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もなく,個人可処分所得である。まず生のままの個人可

処分所得と個人預金の相関をみると,相関係数は0.969

とかなり高い。

(億円)

Y=0.248X-10,299 ······························· (1)

( r =0.869)

しかし,これによって計測値を計算し,実際値と比較

してみると,可処分所得の季節変動がきわめてはっきり

と出てしまう。

そこで2期間移動平均によって個人可処分所得の季節

変動を調整して計測値と実際値とを比較してみると第3

図のようになる。この場合,相関係数は0.991ときわめ

て高くなる。

第3図 個人可処分所得と個人預金の 相関々係

(億円)

Y=0.983X-12,442 ······························· (2)

( r =0.991)

このように個人可処分所得と個人預金とはきわめて高

い相関々係に立つことは明らかである。

およそ個人預金は,大別して長期預金としての定期預

金と積立定期預金,短期預金としての普通預金の二つに

分けることができる。短期預金としての個人当座預金は

その比重がきわめて低い(当座預金総額中約5%)ので

日本の場合には,欧米と違ってとくに問題とならない。

そこで長期預金としての定期預金や積立定期預金と短

期預金としての普通預金や当座預金とをくらべてみる

と,この間には構造的にかなり顕著な変化がみられる。

すなわち,昭和26年には個人預金の構成比は大よそ短期

預金55%に対して長期預金45%であったが,それが昭和

28年にはおおよそ短期預金40%に対して長期預金60%

と,その構成比は2年間ではやくも逆転している。さら

に昭和33年にはその構成比は大きく変って長期預金75%

に対して短期預金は25%に過ぎなくなっている(第4

図)。このことから個人預金の中でもとくに長期預金は間

接投資というわが国独特の金融方式を支えるきわめて安

定的でかつ重要な柱をなしているといえよう。しかもそ

れが万能的な性格をもってきていることも同時に明らか

であろう。戦後,日本経済の変動の中で,このように個

人預金の構成比を変動させてきたものは何であろうか。

この点を追究するにはどうしても,さらに預金の構造変

化の分析をしてみる必要があろう。

(2) 個人預金と個人貯蓄(個人預金の構造変化)

第4図 個人の長期預金と短期預金の 比率推移

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■ 分析・2 ■

- 24 -

戦後の日本経済では,生産水準の急速な回復にもかか

わらず生活水準の回復はインフレーションの渦中にあっ

ていちじるしく遅れていた。生活水準の指標としては必

ずしも適切ではないが,一応消費水準でみるとその戦前

水準への回復はようやく朝鮮動乱以降のことといわれて

いる。そしてその後も消費水準の上昇はいぜんとして持

続され,昭和27年から昭和28年にかけての消費ブームは

(その後の投資増大の影響もあって)ついに国際収支の

破綻にまで及んだ。その意味では昭和28年のデフレ政策

の時期は個人預金にとっても一つの転換期をなしている

ということができる。事実,昭和28年の金融引締の時期

までは個人の消費水準は急速に伸び続けてきた。

したがってそれまでの個人預金はそのほとんどがこの

急速に伸びる消費と密切に結びついて増加してきたとい

える。いわば本来の

貯蓄の反面としての

長期預金(前節で述

べた遊資運用的性格

のものに該当する。

以下同じ)は徐々に

は伸びきつつあった

ものの,全体として

の預金はいぜんとし

て消費と結びついて

いるという傾向が強

かったように思われ

る。

それが第5図にみ

られるように,昭和

29年頃を転機として

消費の伸びは一段落

して,昭和28年の

14.3%から-0.2%

となり,ここに本来

の個人貯蓄としての

長期預金が急速にそ

の比重を大きくする

ようになった。この

間の事情を個人貯蓄と個人預金の相関分析によってみれ

ばつぎのようにはっきりとわかるであろう。

すなわち,個人貯蓄と個人預金との相関々係をみれ

ば,昭和26年から30年における相関係数は0.303ときわ

めて低いが,

(億円)

Y=2.081X+3,618 ································ (3)

( r =0.303)

昭和29年から33年では実に0.993という高い相関々係

数が得られる(第6図)。

第6図 個人貯蓄と個人預金の相関々係

第5図 生産の増加と

消費の上昇

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■ 分析・2 ■

- 25 -

(億円)

Y=2.997×4,157 ·································· (4)

( r =0.993)

したがって前期における個人預金と個人貯蓄の相関が

低いのは,預金が個人消費の動きに影響されているから

であり,後期に逆に相関が急激に高くなっているのはそ

れが本来の貯蓄と密接に結びついているからだと考えら

れる。

このようにみてくれば,個人預金が個人可処分所得と

非常に高い相関々係に立っているが,同時に,その構造

には過去8年間の基本的な変化を生じていることも明ら

かである。

端的にいって昭和26年から29年頃までの個人預金は生

活(消費)水準の向上のために直接的に消費と結びつい

て,いわば欧米的な流動性選好を目的としたものに近い

性格のものが大部分であったと思われる。これに反して

昭和29年頃から33年にかけての個人預金は個人貯蓄とう

ら腹をなしつつ,めぐりめぐって間接的に消費や,さら

には実物投資(耐久消費財の購入を含めて)に結びつき,

いわば遊資運用的性格を強めてきたように思われる。

* 個人預金の中でもウェイトの高い長期預金につい

てみても,昭和26年から30年にかけては個人貯蓄

との相関係数が0.301であるのに対して,昭和29

年から33年にかけては0.987と大きく変化してお

り,総預金と全く同様なことがみられる。

さらにまた限界的な意味で個人預金増加額(フロー)

と個人貯蓄(フロー)との相関をみると,昭和26年から

30年にかけての両者間の相関々係は0.876とかなり高い

が,

(億円)

△Y=0.389X-70

( r =0.876)

昭和29年から33年にかけては0.663と低くなっている。

(億円)

△Y=0.177X+713 ································ (5)

( r =0.663)

しかし,長期預金の増加額について同じように相関係

数を出してみると,昭和26年から30年にかけては0.280

と極端に低いのに反し,

(億円)

△Y=0.1159X+463

( r =0.281)

昭和29年から33年にかけては0.937と急激に高くなっ

ている。

(億円)

△Y=0.196X+363 ······························· (6)

( r =0.937)

これによってフローとしての個人長期預金の増加額と

個人貯蓄についても,その遊資運用的性格は立証される

であろう。個人総預金の増加額について後期の方が相関

が低くなっているのは流動性選好動機的な個人短期預金

の増加額が激しく波をうっているからである(第7図)。

以上の分析によってわが国の個人預金は, 近では,流

動性選好によって決定されるよりも,むしろ主として遊

資運用目的の動機によって決定されている,ということ

を統計解析によっても確認することができた。同時に昭

和29年以降とそれ以前との個人預金構造における顕著な

対象的現象については十分注目に値すると考えられる。

第7図 個人貯蓄と個人預金増加

(3) 要約と問題点

個人預金の分析によって明らかになったことは,わが

国の個人預金が欧米的なそれと違って,流動性としての

意味合いが非常に薄くなってきている,という点であ

る。したがってたとえば個人消費に対する個人流動性の

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■ 分析・2 ■

- 26 -

影響(流動資産仮説)を検討するに際しても,その流動

性については欧米のそれとは違った取扱いをしなければ

ならないであろうと考えられる。わが国の個人預金は,

いわば流動性選好プラスα(遊資運用的預金)なのであ

って,しかもそのαがしだいに個人預金の大勢を決定し

てきつつある,といってよいだろう。

ただ,個人預金をこのような形で分析したについて問

題がないわけではない。その中でももっと重要な点はこ

こでいう個人預金の中には非法人企業のものがすべて含

まれてしまっている,ということである。その結果は個

人預金とはいっても,いわゆる個人のものばかりでな

く,企業のものも当然に含まれてくるはずであるから,

それは,個人の消費なり,またその反対としての貯蓄な

りを全面的に規定したり,また規定されたりするとはい

いきれない。したがって,個人預金の中で比重の高い長

期預金についても家計的な個人以外のものも含まれてい

ることが注意されなければならない。

もう一つ,ここでは無記名定期預金はすべて個人預金

とみなしたことである。 近ではこの預金の比重はずっ

と小さくなっているが,ここで問題とした期間では無視

できない時期もある。多くの場合,この割り振りは恣意

的になされているが,法人の中小企業との関連ではやは

りそうとうに問題を含んでいると思われる。

4.法 人 預 金

(1) 法人預金と銀行貸出

法人預金の分析についてまず想起すべきことは,すで

に述べたように,わが国の法人企業部門が原則として,

貯蓄に対して投資超過の状態にある,という事実であ

る。もちろん,個々の企業についてみれば,逆に投資に

対して貯蓄超過になっているものも多いであろうが,法

人企業部門全体としてこういう事実があるとすれば,企

業の自己資金をもってしては不十分な預金部分は必然的

に割引や貸付などの銀行貸出に依存せざるをえない面が

多いのではないかと考えられる。

そこでまず全国銀行貸出残高と法人預金残高との相関

々係をみるとその相関々係数は0.993となり予想された

以上に極度に高いことがわかる(第8図)。

(億円)

Y=0.655X-997 ··································· (7)

( r =0.993)

これは必ずしも法人企業部門の投資超過の事実を前提

第8図 貸出残高と法人預金の相関々係

にしなくても,一般に貸出はいったん当座預金などの短

期性預金に振替えられるのであるから,両者間の相関は

当然に高いはずだと考えられるかも知れない。しかし第

1図の法人預金残高と貸出残高(全国銀行)とをみてす

ぐわかるように,この二つが趨勢にひっぱられているた

めに,実勢以上に高い相関々係を示すのではないかとい

う疑問が生ずるにちがいない。

この疑問を解くには,全国銀行貸出の増加額と法人預

金の増加額との相関々係が同じような高い相関係数を示

すかどうかを明らかにすればよいと考えられる。

そこで上の増加額について相関係数をはじいてみると

r=0.535と相当に低いことがわかる。

(億円)

△Y=0.417X+663 ······························· (8)

( r =0.535)

このことは,やはり予想された通り,わが国のように

全国銀行の貸出残高が恒常的に上昇傾向の一途をたどっ

ており,それと歩調を合わせるように法人預金残高が増

加している場合には,高い経済成長率にもとづく法人企

業部門の慢性的な投資超過の状態を背景とした趨勢から

の影響もそうとうに大きいとみることができる。冒頭に

確認された高い相関々係には明らかにこの現象によるも

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■ 分析・2 ■

- 27 -

のも含まれているように思われる。

いずれにしても法人預金は貸出残高によって左右され

る面がきわめて大きいことは事実であるが,0.993という

極度に高い相関係数には趨勢が作用していることも確か

であり,これのみをもって法人預金の決定要因と規定す

ることにはやや無理があるように思われる。

* 以上のような関係をみると法人企業への貸出がそ

の預金にはね返り,両者間に高い相関がみられ

るという金融上の常識も,わが国の場合には,実

はそう単純に承認されえないのであって,本来の

両者間の比較的高い相関々係がみられるようにな

ったのはごく 近のいわば安定化現象に属すると

いうことは一つの興味ある事実だと思われる。

全国銀行の貸出増加額と法人預金増加額との相

関を昭和26年~30年と,昭和29年~33年との2期

間に分けて調べてみると,前期についての相関係

数は0.084でまず無相関といえる。しかし,後期

になると相関係数は0.648と明らかにかなり急速

な上昇を示している。

このことの意味は,戦後の経済復興期,および

金融引締期などの特殊な時期には貸出された資金

がほとんど法人企業の預金に歩留らずに払出され

ていったことも多かったのであろうが,経済の安

定とともに,貸出と法人預金の各増加額の相関々

係が高まってきたこと,いわば経済安定化による

本来の相関々係を回復してきたことを統計的に裏

付けているということである。

△Y=0.708X ····························· (9)

( r =0.648)

(2) 法人預金と法人所得・財政

そこでいったん金融的要因を離れて,個人預金の場合

と同じように,国民所得的要因から法人預金の決定要因

を求めれば,まず考えられるのは法人所得である。法人

所得が増加するのは一般に好況期であり,この時期には

法人預金も増加する。反対に,法人所得が減少するのは

不況期であり,同時に法人預金の増加額も減少をみる。

まず法人所得と法人預金増加額との相関をみると相関

係数は0.453と非常に低い。

(億円)

△Y=0.478X+308 ································ (10)

( r =0.453)

そこで法人所得と法人預金残高との相関をみると相関

係数は0.860とかなり高くなる。

(億円)

Y=9.559X-5,782 ································ (11)

( r =0.860)

法人所得と法人預金残高との相関がこのていどである

とすれば,その残余は他の要因によって説明されなけれ

ばならない。

第9図で両者の相関を計測値と実際値についてみてす

ぐわかることは第一に計測値の方が実際値を上回ってい

る時期は,昭和26年~27年,昭和28年第II期~29年第I

期,および昭和32年の3期間である。

第9図 法人所得と法人預金の相関々係

これに対して実際値が計測値を上回っている時期は昭

和30年第I期~31年第I期にかけてと,昭和33年との二

期間である。

大ざっぱにこの対象的な二つの期間の特徴を挙げれ

ば,計測値が実際値を上回っているのは金融逼迫の時期

であるのに対し,実際値が計測値を上回っているのは金

融緩慢の時期であるということができる。

第二に,計測値が実際値を上回っている時期と実際値

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■ 分析・2 ■

- 28 -

が計測値を上回っている時期とを比較してみると,後者

が前者よりも乖離(誤差率)が大きいことがわかる。

(前者の誤差率10~15%に対し,後者のそれは10~40

%)

この二つの事実から,このギャップを説明するものは

金融の逼迫,緩慢の現象に大きな影響をもつもので,し

かもその影響の仕方が逼迫の時期と緩慢の時期とで非対

象的な性格をもつものだということがわかる。そこです

ぐ想い浮ぶのは財政の対民間収支(ことに外為会計の収

支)でないかということであろう。

第一に好況期にはまず租税の自然増収がふえるために

財政の対民間収支尻は必ず揚超になる。さらに好況の波

が輸入の増加にはね返り,これが外為会計の揚超となっ

て租税の自然増収と相まって財政の対民間収支尻の揚超

傾向を促進する。反対に不況期には租税の自然増収は法

人税を中心にかなり縮減する。同時に有効需要は輸出に

依存する比重が大きくなるのでこれが輸入の減少とあい

まって外為会計の対民間収支尻を撤超にする。ことに不

況期における外為会計の撤超は財政の対民間収支尻に対

してきわめて大きな影響をもつ。

第二に実際値が計測値を上回る時期よりも計測値が実

際値を上回る時期の方がその乖離(誤差率)が小さい

(前者の誤差率10~40%に対し後者のそれは10~15%)

のは財政の対民間収支尻が揚超になった場合には,それ

は全国銀行貸出,したがって,また日銀貸出によって埋

め合わされるためである。もし外為会計の揚超がすべて

金融市場の逼迫に直結するならば,経済界は激甚な変動

に見舞われるはずであるが,それが銀行貸出によってい

わば緩和されることになる。いいかえれば財政の対民間

収支尻が揚超の時期には法人預金の実際値と計測値との

乖離は貸出によってそれだけせばめられていることにな

る。したがって貸出がおこなわれなければ法人預金はも

っと減少するはずなのである。

反対に財政の対民間収支尻が撤超の時期には銀行貸出

ないし日銀貸出は必ずしも揚超の時期ほど並行的に減少

を示さない。銀行貸出ないし,日銀貸出は財政収支尻の

撤超の時期には企業部門の根強い資金需要に押されて揚

超時の変動ほど激しくは影響を受けない。したがってこ

の時期には法人預金は,再び増加傾向をたどることにな

る。同時に,これらの事情が前に述べた金融逼迫時と緩

慢時との非対象性をひき起しているといえる。

そこで第9図(法人所得と法人預金残高との相関)の

実際値と計測値との残差をとり,これを一般会計の支払

額に外為会計の収支尻を加えたものとを比較したのが第

10図である。

第10図 法人預金(法人所得相関) 残差と財政の変動

ここで外為会計の収支尻をとらずにこれに一般会計の

支払額を加えたのは,残差の大きさが波を打ちつつもし

だいに大きくなってきているために,これによって財政

の規模(の増大)を示すこととし,外為会計の収支尻で

その変動を現わそうとしたものであるが,これによると

両者はかなりよく一致した動きを示している(昭和26年

だけが特に例外をなしているのは法人所得データに問題

があるためと思われる)。

ここで上に述べた財政(一般会計支払額+外為収支

尻)の変動と法人預金残差との相関係数をはじいてみる

と,0.723である(第10図)。

そこで前述の法人所得の外にこの財政を加えて,法人

所得(X1)と財政(X2)との2変数による相関をみると,

法人預金(Y)の重相関係数はかなり高くなって0.938

となる(第11図)。

(億円)

Y=6.972X1+2.999X2-16,452 ··············· (12)

(0.860) (0.768) R =0.938 R2=0.880

( )

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■ 分析・2 ■

- 29 -

第11図 法人所得・財政と法人預金 との相関々係

* 法人預金増加額(△Y)と法人所得(X1)および

財政(X2)について同じことをやってみると重相

関係数は0.630と非常に低い。

(億円)

△Y=0.397X1+0.418X2-1,185 ······ (13)

(0.231) (0.207)

R =0.630 R2=0.396

また財政(X2)の代りに貸出増加額(X2)を入

れる(貸出残高を入れずに増加額を入れるのは,

法人預金残高と貸出残高との相関係数が0.993と

すでにきわめて高いため技術的に不可能だからで

ある)と,重相関係数は0.552とさらに低い。

(億円)

△Y=0.082X1+0.373X2+552 ········ (14)

(0.381) (0.275)

R =0.552 R2=0.305

(3) 法人預金と法人総所得・財政

けれども,これでは法人預金を説明するにはまだ十分

でないと思われる。そこで法人預金の源泉となりうるも

のとして想い浮ぶのは,法人所得のほか法人の減価償却

であろう。減価償却は,いうまでもなく法人総貯蓄の一

形成要因であり,それが売上高にまじって法人預金に流

入してくると考えられるかぎり,法人所得にこれを加え

たものと法人預金との相関はさらによくなるものとみて

よい。この考え方はすでに述べた個人預金の場合に,個

人所得との相関をとらずに個人可処分所得とのそれをと

ったのとまったく同じ根拠にもとずいている。

法人所得に減価償却を加えたものを法人総所得とよぶ

ことにし,まず,法人所得の場合と同じようにフローと

しての法人預金増加額(△Y)との相関をみると

(億円)

△Y=0.270X+235 ······························· (15)

( r =0.525)

となり,相関係数は非常に低い。

そこで法人預金残高(Y)との相関をみると,相関係

数は0.950と相当に高くなる(第12図)。

(億円)

Y=4.040X-5,532 ································ (16)

( r =0.950)

第12図 法人総所得と法人預金の 相関々係

* 法人預金の中,比重の大きい短期預金について同

じことをやってみると,相関係数は0.960とさら

によくなる(第13図)。

( )

( )

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■ 分析・2 ■

- 30 -

(億円)

Y=2.701X-3,144 ······················· (17)

( r =0.960)

第13図 法人所得と法人短期預金の 相関々係

つぎに法人所得の場合と同じようにして,この法人預

金の実際値と計測値とのギャップをとり,これと財政と

を比較してみたものが第14図である。ここでも両者の動

きはかなりよく一致したものであることがはっきりしよ

う。

* 同じようにして前の(註)の法人短期預金の残差

と財政とを比較したものが第15図である。

ここで財政を加えて前と同じようにして法人預金との

相関をみると,相関係数はいっそう高まって0.973とな

る(第16図)。

(億円)

Y=3.713X1+1.781X2-11,027 ················ (18)

(0.287) (0.531)

R =0.973 R2=0.943

* 同様にして法人預金増加額(△Y)との相関をみ

ると,当然ながら,法人所得の場合とほとんど変

らず,相関係数は0.633とかなり低い。

第14図 法人預金(法人総所得相関) 残差と財政の変動

(億円)

△Y=0.204X1+0.353X2-847 ················· (19)

(0.116) (0.214)

R =0.633 R2=0.401

また財政(X2)のかわりに貸出増加額(X2)をとると

相関係数はさらに低くなって

( ) ( )

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■ 分析・2 ■

- 31 -

第15図 法人短期預金(法人総所得) 残差と財政の変動

(億円)

△Y=0.148X1+0.273X2+182 ·············· (20)

(0.151) (0.225)

R =0.592 R2=0.350

となる。

なお,法人短期預金(Y)と法人総所得(X1)および

財政(X2)との相関係数は0.978である(第17図)。

(億円)

Y=2.14X1+1.029X2-6,329 ················ (21)

(0.174) (0.319)

R =0.978 R2=0.956

第16図 法人所得・財政と法人預金 の相関々係

第17図 法人短期預金と法人総所得 財政の相関々係

(4) 法人預金と法人総所得・財政・貸出(法人預金と

景気変動)

そこでつぎに,冒頭の貸出残高による法人預金の相関

( )

( )

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■ 分析・2 ■

- 32 -

分析の結果と,ここでやった法人総所得と財政によるそ

れとの相互関係を調べてみるときわめて興味ある事実に

気がつく。まず,後者による法人預金の実際値と計測値

との残差をとり,これを計測値で割って誤差率(以下誤

差率Aとよぶ)を計算し,他方同じようにして冒頭の貸

出残高についてもこれとの相関による法人預金の実際値

と計測値との誤差率(以下誤差率Bとよぶ)を計算して

比較してみたものが第18図である。

第18図

これからすぐにわかることは,誤差率B(貸出相関の

乖離)の小さい時期(昭和26年第II期~28年第I期,昭

和30年第I期,昭和33年第II期)には誤差率A(法人所

得・財政相関の乖離)が大きいのに対して,逆に誤差率

Bの大きい時期(昭和28年第II期~29年第II期,昭和31

年第I期~32年第I期)には誤差率Aが小さい,という

ことである。これを経済的に解釈すれば,法人預金は,

景気の変動とともに,ある時期には主として法人総所得

や財政によって決定され,またある時期には主として貸

出によって決定されているといってよいように思われ

る。

まず第一に,誤差率B(貸出残高相関の乖離)がマイ

ナス方向に大きくなるのは,ごく大ざっぱにいって金融

逼迫期(ほぼ景気の山を中心としてその前後の期間)で

あり,法人預金増加額は急減する。反対にプラス方向に

大きくなっているのは金融緩慢期(ほぼ景気の谷を中心

としてその前後の期間)であって,法人預金は急増す

る。これは前者では金融引締の結果,貸出の預金歩留り

が極度に低下し,後者では逆にそれが急増することを反

映しているのであろう。原則的には誤差率B(貸出残高相

関の乖離)は金融逼迫とともにマイナスの乖離となり,

金融緩和とともにプラスの乖離となって上下に波を打

つ。

* ただ,同じ金融引締政策による法人預金の減少と

いっても昭和28年の時期と昭和32年の時期ではか

なりの相違が認められる。第18図によって明らか

な通り,昭和28年の第II期から29年の第II期にか

けての貸出による法人預金の実際値と計測値との

ギャップ(誤差率)は昭和32年の第II期から33年

の第II期にかけてのそれに比較してずっと大き

い。

逆にいえば,本来ならば,昭和32年の時期に

も,そのギャップは金融引締の結果として,昭

和28年のそれと同じくらいにマイナス方向に大

きくなるべきはずである。しかし,実際にそう

ならなかったのはなぜであろうか。

この理由は二つの考えられる。第一に前者の

場合には民間資本形成は後者の場合に比較して

減り方はずっと緩やかである。したがってこれ

が実際に輸出増加を通じて在庫減少となったの

は昭和29年第II期から30年第I期にかけてであ

る。これに反し昭和32年第II期から33年第I期

にかけて民間資本形成は1兆3千億円から8千億

円へと急速な減少を示している。これによって後

者では在庫の減少が法人預金の増加となったのに

対し,前者ではそういう余地が少なかったのであ

ろう。

第二に前者では貸出増加額は昭和28年第I期か

ら29年第II期への2年間にかけて3千億円から千

億円弱に減少したのに対し,昭和32年第I期から

33年第II期へかけては6千億円弱から4千億円に

なっている。これは後者では金融引締政策にもか

かわらず,企業救済の意味で赤字融資,滞貸融資

などがかなりみられ,貸出水準が比較的高く保た

れたことによっている(第19図)。

第二に,誤差率Bがマイナスの方向に大きくなる時期

には,第20図にみられるごとく財政は底をついてさらに

上昇に向うが,一方で法人総所得はタイム・ラッグをも

ってようやくピークを迎え頭打ちとなる。しかも,第18

式にもみられたごとく,財政よりも法人総所得の方が法

人預金に対する影響力がずっと大きいので,これが,こ

の時期の法人預金の頭打ちを説明する。したがって誤差

率A(法人総所得・財政と法人預金との相関の乗離)は

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■ 分析・2 ■

- 33 -

第19図 民間資本形成と貸出増加お

よび法人預金の変動

小さくなる。

反対に,誤差率Bがプラスの方向に大きくなる時期に

は,第21図にみられるように,財政は頭打ちとなって減

少に移るが,法人総所得が急増するため,この影響が強

く出て法人預金の増大を説明することになる。したがっ

てこの時期には誤差率Aはやはり小さくなる。

いずれにしてもこのように法人預金が,法人総所得,

財政の面と貸出残高の面との両方から相互に補完されて

説明されるような関係にあることは明らかである。そこ

で法人総所得(X1),財政(X2)の外に貸出増加額(X3)

を加えて(貸出残高をとらないで貸出額をとる理由は前

に述べた通り)3変数による説明式を求めると,相関係

数は0.974となる(第20図)。

(億円)

Y=3.627X1+1.852X2+0.168X3-11,289 ···· (22)

(0.380) (0.584) (0.458)

R =0.674 R2=0.948

もちろん,相関係数は,法人総所得と財政とによる説

明式の場合とそう変りないが,経済的意味からいうかぎ

り,やはり貸出を変数として加えることが必要と思われ

る。したがって不十分なことはいうまでもないが,この

式はここでとり上げたデータおよび方法論によるかぎり

もっとも妥当なもののように考えられる。

以上のごとく,個人預金,法人預金の統計解析的な分

析を続けて来たが,ここで注目すべきことの一つは法人

預金についてのこれまでの分析の中,フローとしての増

加額での相関係数が申し合わせたようにいずれも低いと

いう事実である(これは個人預金の場合にもある程度い

える)。これはなぜであろうか。

第20図 法人預金と法人総所得・財政・ 貸出増加の相関々係

いま,任意の一企業について考えれば,企業の原材料

手当,労賃の支払いにもなってその預金は払出されて減

少し,極端な場合には残高は零となる。ことに短期預金

としての営業性預金についてはこの点はもっともはっき

りしよう。しかし,経済全体,ないし銀行全体としてみ

れば,上のように預金残高が零になる企業が一方にある

と同時に他方には生産物の産出売上にもなって売上高が

回収され,預金が流入している企業もあるので,銀行預

金全体としては経済活動の拡大と共に増大しているわけ

である。

すなわち,企業活動がおこなわれているかぎり,営業

性預金は個々の企業毎に出し入れされ,結果的には預金

( )

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■ 分析・2 ■

- 34 -

総体として回転しているとみるのが実情のように思え

る。

こう考えてくれば,たとえば法人企業の売上高,した

がってまたそこから生ずる法人所得と相関をもつべきも

のは法人預金の残高であってその増加額ではないとみる

のが妥当のように思われる。したがって預金残高は厳密

な意味ではストックではなくフローの概念だと考えられ

る。

ただ,個人預金の場合よりも法人預金の場合に極端に

増加額の相関が悪いのは,後者の方が預金総額中の短期

預金の比重がずっと大きい(個人預金残高に占める個人

短期預金の比率は平均35%に対し,法人預金残高に占め

る法人短期預金の比率は平均70%)からだということが

できる。

一般的に考えられるようなフローとしての預金増加額

がフローとしての所得などと高い相関々係をもち,それ

が金融資産増加として既存の預金残高に積み重ねられる

とみられるのは,主として長期預金の場合である。ただ,

個人預金についてはその残高の相関が高く出るのは趨勢

からの影響もかなり効いているからだとみられる。

(5) 要約と問題点

これまでの分析から得られた結果はわが国の預金が法

人預金についても欧米的な流動性の概念をもってしては

規定できない,ということであった。それは法人所得,

減価償却,といった企業内部と財政,銀行貸出のような

企業外部とから,すなわち預金供給面で規定されている

からであって,欧米のように法人企業の流動性の観念に

立って,預金需要面で規定されているのではないからで

ある。これが以上の分析から明らかになるもっとも重要

な点である。

しかし,この分析を通じて問題となる点が2,3ある。

一つには,この分析では性質の異なるすべての預金をそ

のまま総体として把んだために,必ずしも十分に問題の

核心にふれえなかったのではないかと考えられる。たと

えば財政の影響は主として法人の当座預金に及ぶはずで

あるが,この分析でとり上げた法人短期預金には,この

他に普通預金,通知預金,別段預金などがあってこれが

当座預金の残高にほぼ等しいことを考えると,やはり問

題は残されよう。さらに法人の長期預金が 近では短期

預金の半分に及んでいる点にもやはり同じような問題が

起ってくるように思われる。

もうひとつは,この分析では,性質の違った銀行(長

期信用銀行,都市銀行,地方銀行,および信託銀行)を

総体として採り上げているために,必ずしも問題を明白

に浮び上らせえないうらみがある,ということである。

たとえば法人所得の変動の法人預金に対する影響につい

ては地方銀行よりも都市銀行の方がずっと大きいであろ

うし,ましてや外為会計などの財政の影響についてはい

っそうのことそうである。したがって,ここからはさら

に銀行の種類別によるいっそうキメの細かい分析が必要

とされる。

もうひとつは預金者別預金統計が3月末,9月末の二

つしかないため,すべてこの二つの期末残高の資料を使

っていることである。しかし,実際にはこの期末残高に

は手形・小切手が含まれており,しかも預金に対する手

形・小切手比率が過去8年間にそうとう変化してきてい

る。この点は資料的にやむをえないこととはいえ,やは

り問題を残しそうに思われる。

以上のような問題点がいろいろあるため,法人預金の

決定要因としての方程式もどれと決め手は出さなかった

しだいである。参考に収録した種々の方程式とともに現

段階では参考の程度に止めることとした。

補論 財政の変動と法人預金

本論の分析でも判明したように,わが国の法人預金に

は,外為会計の揚超,撒超を中心とした財政の変動が非

常に大きな影響を及ぼしているという事実がある。こと

にわが国の場合,ドッジ政策以降,揚超と撒超とがかな

り大きな波を打ちながらも,大勢としては揚超の傾向が

強くなってきている。

さらに限界的な意味で法人預金増加と財政との相関を

みると,相関係数はそうとうに高くなって0.820であ

る。

(億円)

△Y=0.924X-2,130 ····························· (23)

( r =0.820)

これは法人預金増加と貸出増加,および法人線所得と

の相関係数がそれぞれ0.535および0.748と比較的低い

のと対照的である。このように限界的な意味では上に述

べた事実はいっそう明白に確認することができる(第21

図)。そこで問題はその原因の所在である。すでに再三に

わたって述べたように,日本の経済では主として個人部

門の貯蓄の中,実物資本形成を超える部分が大部分遊資

運用的性格の強い長期預金として金融部門を通じて法人

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■ 分析・2 ■

- 35 -

第21図 法人総所得・財政・貸出増加

と法人預金増加

企業部門へ流入している。マネー・フロー的にいって法

人企業部門は,法人留保・減価償却・社債株式とともに

金融部門から個人貯蓄を吸収して資金調達をおこない,

これを実物資本形成・証券投資にあて,その残差として

預金と現金が保有される。

けれども法人企業部門全体としては恒常的に貯蓄に対

して投資超過となっている結果,一営業期間を終って決

算してみても実際の法人所得はその対応物としてすでに

たとえば在庫品などの形で実物資本形成になっている面

も強いと思われる。そのために納税とか配当とかの支払

資金については当然に決算資金借入が必要となり,たと

えば売上による受取手形が銀行で割引かれることにな

る。こういう場合には法人所得の増加による預金増加は

割引という形の銀行貸出を通じてはじめて実現されるこ

とになる。 近のように景気回復期に企業収益が増加

し,法人預金の増加がみられて流動性回復ということが

いわれるのは多くはこのような事実を指している。景気

回復期に手形割引が先行するのもこのためである。

けれども銀行貸出の増加をともなわずに法人預金の増

加する場合がひとつ考えられる。それは輸出が増加した

り,輸入が減少したり,あるいはこの二つが組合わさっ

て財政面で外為会計が大幅な撒超を示す場合である。

一般的にいって輸出が伸びればそれだけ在庫品が減少

するが,輸出により獲得された外貨は外為会計に売却す

ることによって直ちに現預金化される。したがってここ

では法人預金は銀行の貸出増加のはね返りとしてではな

しに増加することになる。

さらに外為会計の撒超による法人預金増加が非常に大

きな理由として忘れてはならないことは外為会計そのも

ののもつ制度的特殊性である。現在の外為会計はその外

為証券の日銀引受によって調達した資金によって外貨を

買入れ,また円資金を供給している。その意味では外為

証券は一種の短期の赤字公債だといってもよいのであ

り,その金融市場に及ぼす作用は戦時中の長期の赤字公

債と選ぶところがない。もし外為証券が市中消化によっ

て民間の銀行で買入れられたならば全体としての法人預

金はそれほど増加しないであろう。なぜならば,輸出超

過(海外投資)に対しては必ず国内に貯蓄が対応的に預

金されているはずであり,これによって銀行が外為証券

を買入れようとすれば,日銀貸出が増加しないかぎり,

なんらの形で銀行の貸出を減少しなければならず,それ

は必然的にそれだけの預金減少を招くだろうからであ

る。したがって外為証券の市中消化がおこなわれる場合

には輸出超過による預金増加はその対応的貯蓄としての

預金増加の限度に留まるであろうが,外為会計の存在は

法人預金の増加をそれだけ累増させ,この預金増加によ

る金融市場の緩慢化を促進していることになる。前節で

述べたように法人預金の変動に対して外為会計を中心と

した財政が大きな影響を及ぼしているのはこのような理

由からである。

* 民間資本形成+海外投資=民間貯蓄

〈参考〉

預金に関する各種相関々係

(相関係数及び回帰方程式)(単位億円)

1. 個人預金残高(Y)および個人預金増加額(△Y)

の相関々係

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■ 分析・2 ■

- 36 -

付表1 主 要 預 金 統 計 表 △印=減少(単位億円)

年期 個 人 預 金 個人預金増加額 法 人 預 金 法人預金増加額

短期預金 長期預金 短期預金 長期預金 短期預金 長期預金 短期預金 長期預金

26.3

9

27.3

9

28.3

9

29.3

9

30.3

9

31.3

9

32.3

9

33.3

9

4,565

5,726

7,066

8,326

9,627

10,790

11,799

12,780

14,018

15,222

17,128

19,345

21,542

22,990

24,777

26,439

2,520

3,082

3,400

3,715

4,160

4,524

4,723

4,894

5,114

5,320

5,840

6,505

6,981

6,869

7,057

7,109

2,045

2,644

3,666

4,611

5,467

6,266

7,076

7,886

8,904

9,902

11,288

12,840

14,561

16,121

17,720

19,330

552

1,161

1,340

1,260

1,301

1,163

1,009

981

1,238

1,204

1,906

2,217

2,197

1,448

1,787

1,662

223

562

318

315

445

364

199

171

220

206

520

665

476

△112

188

52

329

599

1,022

945

856

799

810

810

1,018

998

1,386

1,552

1,721

1,560

1,599

1,610

7,546

7,909

9,690

11,757

13,705

14,331

15,350

15,477

17,595

19,403

21,799

24,930

28,176

29,035

32,301

35,637

5,963

5,862

7,194

8,641

9,988

10,135

10,609

10,282

11,945

13,176

15,323

17,757

20,015

20,005

22,134

23,577

1,583

2,047

2,496

3,115

3,717

4,196

4,741

5,194

5,649

6,227

6,476

7,172

8,161

9,030

10,167

12,060

1,918

363

1,782

2,066

1,948

627

1,019

126

2,119

1,808

2,395

3,132

3,245

860

3,266

3,335

1,426

△ 101

1,332

1,447

1,347

148

474

△ 328

1,664

1,231

2,146

2,435

2,257

△ 10

2,130

1,442

492

464

450

619

601

479

545

454

455

577

249

697

988

870

1,136

1,893

付表2 主 要 預 金 統 計 表 ※印=季節調整済 △=揚超 (単位億円)

年期 ※ 個 人 可 処分所得

個人貯蓄

法 人 総 所 得 全国銀行

貸出残高同増加額

財 政 (参 考)

法人所得 減価償却一般会計 支 払

外為会計 収 支 尻 財政収支

26.3

9

27.3

9

28.3

9

29.3

9

30.3

9

31.3

9

32.3

9

33.3

9

14,978

17,518

19,626

20,507

22,938

23,036

25,476

25,867

27,144

28,526

30,324

31,919

33,423

36,222

35,570

38,143

2,069

3,143

3,544

3,479

3,293

2,878

2,574

2,689

3,154

3,806

4,460

5,187

6,040

6,523

6,634

7,131

3,669

3,875

3,866

4,141

4,182

5,016

5,687

5,091

5,780

5,556

6,758

7,643

9,286

9,380

9,138

8,261

2,590

2,671

2,270

2,506

2,222

2,917

3,054

2,579

2,740

2,601

3,370

4,054

5,127

5,188

4,448

4,209

1,079

1,204

1,596

1,635

1,960

2,099

2,633

2,512

3,040

2,955

3,388

3,589

4,109

4,192

4,690

4,052

10,641

13,830

16,406

19,397

22,613

25,185

26,960

27,854

29,266

30,301

32,584

37,198

43,012

47,209

51,486

55,303

1,862

3,189

2,576

2,982

3,226

2,571

1,775

895

1,411

1,035

2,282

4,613

5,814

4,197

4,277

3,816

4,932

3,098

2,783

2,748

4,026

3,890

2,808

4,489

4,968

5,125

5,036

4,644

3,469

3,177

5,751

6,264

2,255

2,690

2,576

3,072

3,516

3,918

4,078

4,629

4,088

4,249

4,213

4,529

4,230

5,018

5,045

5,365

2,677

408

207

△ 324

510

△ 28

△1,270

△ 139

880

879

823

115

△ 761

△1,841

706

899

414

△1,055

635

△ 700

485

△ 628

△ 321

279

1,623

1,116

1,650

△ 437

△1,197

△2,790

192

804

Page 18: 〈分析〉2 全国銀行預金についての一分析 - ESRI分析・2 - 21 - の形でみたしうる余地は,欧米諸国にくらべては少ない ということができる。全国銀行の貸出残高と法人預金残

■ 分析・2 ■

- 37 -

(1) 個人可処分所得(X)

Y=0.248X-10,299

(γ=0.969)

(2) 個人可処分所得(季節調整済)(X)

Y=0.983X-12,442

(γ=0.991)

(3) 個人可処分所得

△Y=0.046X+172

(γ=0.709)

(4) 個人可処分所得(前期)

△Y=0.020X+663

(γ=0.385)

(5) 個人可処分所得(後期)

△Y=0.609X+17,474

(γ=0.600)

(6) 個人貯蓄(季節調整済)(X)

Y=3.895X-1,706

(γ=0.915)

(7) 個人貯蓄(前期)

Y=2.081X+3,618

(γ=0.303)

(8) 個人貯蓄(後期)

Y=2.997X+4,157

(γ=0.993)

(9) 個人貯蓄(季節調整済)

△Y=0.21X+525

(γ=0.761)

(10) 個人貯蓄(前期)

△Y=0.389X-70

(γ=0.876)

(11) 個人貯蓄(後期)

△Y=0.177X-713

(γ=0.663)

(12) 個人消費

Y=1.067X-9,806

(γ=0.899)

(13) 個人消費(前期)

Y=0.701X-3,662

(γ=0.884)

(14) 個人消費(後期)

Y=1.109X-10,779

(γ=0.709)

* 前期:昭和26年3月~30年9月

後期:昭和29年3月~33年9月

(参考)個人長期性預金(Y)および個人長期性預金

増加額(△Y)の相関々係

(15) 個人貯蓄(季節調整済)(X)(前期)

Y=1.532X+1,153

(γ=0.301)

(16) 個人貯蓄(後期)

Y=2.442X+11,772

(γ=0.987)

(17) 個人貯蓄(前期)

△Y=0.1159X+464

(γ=0.280)

(18) 個人貯蓄(後期)

△Y=0.196X+363

(γ=0.937)

2. 法人預金残高(Y)および法人預金増加額(△Y)

の相関々係

(1) 貸出残高(X)

Y=0.655X-997

(γ=0.993)

(2) 貸出増加額(△X)

△Y=0.417△X+663

(γ=0.535)

(3) 貸出増加額(前期)

△Y=0.073X+1,220

(γ=0.084)

(4) 貸出増加額(後期)

△Y=0.708X

(γ=0.648)

(5) 法人所得(X)

Y=7.559X-5,782

(γ=0.860)

(6) 法人所得

△Y=0.478X+308

(γ=0.453)

(7) 法人総所得(法人所得+減価優却)(X)

Y=4.040X-5,532

(γ=0.950)

(8) 法人総所得

△Y=0.270X+235 (五)

(γ=0.525)

Page 19: 〈分析〉2 全国銀行預金についての一分析 - ESRI分析・2 - 21 - の形でみたしうる余地は,欧米諸国にくらべては少ない ということができる。全国銀行の貸出残高と法人預金残

■ 分析・2 ■

- 38 -

(9) 法人所得(X1)と財政(X2)

Y=6.972X1+2.999X2-16,452

(0.860) (0.768)

R =0.938 R2=0.880

(10) 法人所得(X1)と財政(X2)

△Y=0.397X1+0.418X2-1.185

(0.231) (0.207)

R =0.630 R2=0.396

(11) 法人総所得(X1)と財政(X2)

Y=3.713X1+1.718X2-11,027

(0.287) (0.531)

R =0.973 R2=0.947

(12) 法人総所得(X1)と財政(X2)

△Y=0.204X1+0.353X2-847

(0.116) (0.214)

R =0.633 R2=0.401

(13) 法人所得(X1)と貸出増加(X2)

Y=8.930X1-1.282X2-6.557

(1.884) (1.356)

R =0.869 R2=0.756

(14) 法人所得(X1)と貸出増加(X2)

△Y=0.082X1+0.373X2+552

(0.381) (0.275)

R =0.552 R2=0.305

(15) 法人総所得(X1)と貸出増加(X2)

Y=4.266X1-0.512X2-7,398

R =0.952 R2=0.907

(16) 法人総所得(X1)と貸出増加(X2)

△Y=0.148X1+0.273X2+182

(0.151) (0.225)

R =0.592 R2=0.350

(17) 貸出残高(X1)と財政(X2)

Y=0.640X1+0.375X2-2,104

(0.028) (0.283)

R =0.994 R2=0.988

(18) 貸出増加(X1)と財政(X2)

△Y=0.450X1+0.523X2-1,630

(0.132) (0.165)

R =0.780 R2=0.608

(19) 法人所得(X1)と財政(X2)と貸出増加(X3)

Y=7.013X1+2.990X2-0.37X3-16,440

(1.480) (0.489) (1.054)

R =0.938 R2=0.880

(20) 法人所得(X1)と財政(X2)と貸出増加(X3)

△Y=-0.293X1+0.585X2+0.616X3+3.286

(0.315) (0.181) (0.224)

R =0.800 R2=0.635

(21) 法人総所得(X1)と財政(X2)と貸出増加(X3)

Y=3.627X1+1.852X2+0.168X3-11,289

(0.380) (0.584) (0.458)

R =0.974 R2=0.948

(22) 法人総所得(X1)と財政(X2)と貸出増加(X3)

△Y=-0.062X1+0.568X2+0.513X3-1,627

(0.142) (0.198) (0.199)

R =0.783 R2=0.614

(23) 法人総貯蓄(法人留保+減価償却)(X1)

Y=5.285X-3,543

(γ=0.928)

(24) 財 政(X1)

Y=0.186X+18,260

(γ=0.236)

(25) 財 政(X1)

△Y=0.924X-2,130

(γ=0.820)

(参考)法人短期預金(Y)の相関々係

(26) 法人総所得(X)

Y=2.701X-3,144

(γ=0.960)

(27) 法人総所得(X1)と財政(X2)

Y=2.514X1+1.029X2-6.339

R =0.978 R2=0.956 ( )

( )

( )

( )

( )

( ) ( )

( )

( )

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( )

( )

( )

( )

( )