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2006 5 27 インドネシアジャワ による する 2006 7 18 チーム 目 次 1.はじめに 1.1 調査目的 1.2 調査概要 1.3 調査日程 2.RC 造建築物の被害 2.1 インドネシアの新・旧耐震規定 2.2 被害の概要 2.3 詳細被害調査 2.4 詳細調査建物の解析 (未完) 3.学校建築物とその周辺の被害 3.1 対象地域と調査方法 3.2 学校建築の構造形式 3.3 学校建築の個別事例と被害の傾向 3.4 周辺地域における一般家屋被害率 4.おわりに (未完) 謝辞 (未完) 付録1 レンガ壁目地の強度試験結果

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2006年 5月 27日インドネシアジャワ島中部地震による被害に関する調査研究

(建築被害調査)

速報(2006年 7月 18日版)

建築被害調査チーム

目 次 1.はじめに

1.1 調査目的 1.2 調査概要 1.3 調査日程

2.RC造建築物の被害 2.1 インドネシアの新・旧耐震規定 2.2 被害の概要 2.3 詳細被害調査 2.4 詳細調査建物の解析 (未完)

3.学校建築物とその周辺の被害

3.1 対象地域と調査方法 3.2 学校建築の構造形式 3.3 学校建築の個別事例と被害の傾向 3.4 周辺地域における一般家屋被害率

4.おわりに (未完) 謝辞 (未完) 付録1 レンガ壁目地の強度試験結果

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1 はじめに 1.1 調査目的

2006年 5月 27日午前 5時 53分(現地時間)にインドネシアのジャワ島で発生したM6.3

の地震による建物被害を調査するために、文部科学省科学研究費補助金(特別研究促進費)

による調査研究(2006年 5月 27日インドネシアジャワ島中部地震による被害に関する調査

研究)の一環として建物被害調査チームが組織された。この調査チームの主たる目的は、

建物被害が顕著であった地域において現地調査を実施し、建物の構造計画、施工実態およ

び地盤状況などから地震被害の要因を分析することである。

現地調査では、先遣隊(JSCE/AIJ 合同調査隊)による事前調査情報並びにガジャマダ大

学(UGM)の調査グループからの情報に基づいて、①顕著な被害が報告されているジョグ

ジャカルタ市内の RC造建物、および②この調査に先立って九州大学チームにより実施され

た現地調査(6/20~6/26)において微動計測が行われたバントゥール地域の学校建物並びに

その周辺のレンガ造建物、を主な調査対象とした。

1.2 調査概要

調査チームは日本建築学会の災害委員会との合同調査隊という形式をとり、以下の8名

で構成された。

倉本 洋 (豊橋技術科学大学 助教授:チームリーダー)

河野 進 (京都大学大学院 助教授)

前田 匡樹 (東北大学大学院 助教授:日本建築学会災害委員会兼務)

楠 浩一 (横浜国立大学大学院 助教授)

真田 靖士 (東京大学地震研究所 助手)

高橋 典之 (東京大学生産技術研究所 助手)

Fauzan (豊橋技術科学大学大学院 博士課程3年)

山野辺 宏治(清水建設技術研究所 主任研究員:日本建築学会災害委員会派遣)

RC建物の被害調査は、倉本、楠、山野辺、Fauzanが担当し、大学施設6件と会計検査院

の計7物件を調査した。そのうち構造図等の図面が入手できたインドネシア美術大学(ISI:

Institut Seni Indonesia)の2棟と会計検査院(Financial Audit Agency)について詳細調査も併

せて実施した。

バントゥール地域の学校建物およびその周辺のレンガ造建物の被害調査は、河野、前田、

真田、高橋が担当し、九州大学チームが微動観測を実施した地点のうち 14点(断層線を東

西に横切る2本の線上)で行った。学校建物については、被害状況調査に加え、耐震性能

を把握するために建設年代および構造形式などの調査、並びに建物形状およびレンガ壁目

地強度の実測などを行った。また、学校周辺レンガ造建物の特徴的な被害形式と被害率の

調査も行った。

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1.3 調査日程

調査チームは成田国際空港出発組と中部国際空港出発組の2班に分かれて旅程を組み、7

月 1日から 8日の予定で以下のようなスケジュールで調査を行った。

7月 1日(土) 11:10 中部国際空港発(GA-889:倉本、河野、前田、Fauzan)

17:10 デンパサール国際空港着

11:00 成田国際空港発(GA-881:楠、真田、高橋、山野辺)

17:15 デンパサール国際空港着

※デンパサール国際空港で合流

18:20 デンパサール国際空港発(GA-889)

19:00 ジャカルタ国際空港着

夜 ホテルにて JICA徳丸氏と情報交換および調査計画策定

ジャカルタ泊

7月 2日(日) 10:00 ジャカルタ国際空港発(GA-430)

11:00 ジョグジャカルタ空港着

13:00 ガジャマダ大学訪問(ブリーフィング)

15:00 ジョグジャカルタ市内およびバントゥール地域の予備調査

ジョグジャカルタ泊

7月 3日(月) 終日 現地調査 ジョグジャカルタ泊

7月 4日(火) 終日 現地調査 ジョグジャカルタ泊

7月 5日(水) 終日 現地調査 ジョグジャカルタ泊

7月 6日(木) 09:00 UGM訪問(調査結果報告:倉本、河野、前田、Fauzan)

午前 資料整理(楠、真田、高橋、山野辺)

15:15 ジョグジャカルタ空港発(GA-211)

16:15 ジャカルタ国際空港着

※河野氏帰国(20:00ジャカルタ国際空港→関西国際空港、GA-888)

18:00 ホテルにて JICA徳丸氏に調査報告

夜 報告書作成方針策定 ジャカルタ泊

7月 7日(金) 午前 資料整理および報告書作成

午後 帰国準備

20:00 ジャカルタ国際空港発(デンパサール経由、GA-888:倉本、前

田、Fauzan) 機内泊

23:40 ジャカルタ国際空港発(GA-880:楠、真田、高橋、山野辺)

7月 8日(土) 08:10 中部国際空港着(倉本、前田、Fauzan)

08:50 成田国際空港着(楠、真田、高橋、山野辺)

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2 RC造建築物の被害 2.1 インドネシアの新・旧耐震規定

本節では、RC造建築物の被害の概要を分析するに先立って、インドネシアにおける旧耐

震規定 1)と新耐震規定 2)についての概要を示す。なお、インドネシアにおける耐震規定は1983

年、1989 年および 2002 年にそれぞれ改定されているが、1989 年度版については今回資料

入手ができなかったため、旧耐震規定は 1983年版ののみを概説することとする。

2.1.1 旧耐震規定 1)

(1) 適用範囲

本耐震規定は以下の a)~e)に該当する建築物に適用する。

a) 延べ床面積が 20m2以上の建築物

b) 高さが 5m以上の建築物

c) 高さが 1.5m以上の組積造壁およびコンクリート造壁

d) 容量が 200m3未満の容器建築物(容量 200m3以上の容器建築物については別途特別な

検討を要する)

e) すべての公共建築物

なお、居住人数が 10人未満で、かつ2階建て以下の住宅については、本規定の適用対象

外とする。

(2) 設計方法(解析方法)

建築物の設計は、等価静的荷重解析(Equivalent Static Load Analysis)と動的解析(Dynamic

Analysis)の何れかの方法を用いて行ってよい。ただし、以下のような建築物に対しては、

動的解析による検討が必要とされる。

a) 偏心の大きな建築物:偏心距離が ce >0.3 bである建築物。ここで、bは検討方向と直

交方向の最大建築物長さを表す。

b) セットバックの大きな建築物:セットバック階の面積が下層階における最大層床面積

の 75%未満であるような建築物。ただし、2階以下のペントハウスは対象外とする。 c) 層剛性分布が不均一な建築物:任意の層の剛性に対する層質量の比率 ii Km が建物全

体の平均値 nKm ii∑ ( n:階数)の 1.5倍以上である建築物。

d) 高さ 40m以上の建築物

e) 形状、規模が特殊な建築物および重要建築物

(3) 等価静的荷重解析(Equivalent Static Load Analysis)

建築物の各部材の応力は等価弾性解析により算定する。

設計用ベースシアV は下式により与えられる。

td WCV ⋅= (2.1.1)

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ここで、 tW は固定荷重と地震用積載荷重の総和であり、 dC は下式で与えられる。

KICCd ⋅⋅= (2.1.2)

ここに、 C : 基本耐震係数(Basic Seismic Coefficient)

I : 重要度係数(Importance Factor)

K : 構造形式係数(Structural Type Factor)

基本耐震係数C は、いわゆる日本の新耐震設計法における 0t CRZ ⋅⋅ を応答倍率(3~4)

で除したようなもの相当する係数であり、インドネシア全土を6段階にゾーニングした地

震地域(Fig.2.1-1)のそれぞれに対して Fig.2.1-2のように建築物周期や地盤条件を考慮して

与えられている。今回の地震による被災地であるジョグジャカルタ近郊は Zone 3に相当し、

C は.025~.07の範囲にある。

重要度係数 I は、建築物の重要度に応じて 1.0、1.5および 2.0の3段階の値が設定されて

いる。

構造形式係数 K は、いわゆる sD 値に応答倍率(3~4)を乗じたような値に相当し、RC

造建築物では、構造形式の靭性度合いに応じて 1.0~4.0 の値が設定されている。なお、一

般的な RC造建築物ではK =1.0~1.5となり、靭性に富む構造形式ほど小さな値となる。

RC造建築物の設計用固有周期T は、以下の略算式により算定してよい。 43H06.0T ⋅= (2.1.3)

ここに、H : 建築物高さ(m)

ただし、次式による値が式(2.1.3)による値の 80%未満となる場合には、次式による値を設

計用固有周期として用いるものとする。

∑∑

⋅⋅

=ii

2ii

dFgdw3.6T (2.1.4)

Fig. 2.1-1 Seismic Zones for Structural Design Loadings

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ここに、 id : i層の水平変形

iF: i層に作用する水平力

g: 重力加速度

iw : i層の重量

また、建築物の各層に作用する水平力 iFは次式で与えられる。

Vhw

hwF

ii

iii ∑ ⋅

⋅= (2.1.5)

ここに、 ih : 基礎から i層における水平力作用位置までの高さ

ただし、アスペクト比が 3以上の建築物では、最上層に 0.1V の集中荷重を加え、残りの0.9V を式(2.1.5)により各層の水平力に分配する、いわゆる“トップヘビー型”の外力分布と

する。

Fig. 2.1-2 Basic Seismic Coefficient

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偏心層においては、層せん断力 iV に加えて、式(2.1.6)で与えられる設計用偏心距離 de を考慮したねじれモーメントに対して各部材を設計する必要がある。ただし、偏心距離 ce が0.1 b未満で4階建て以下の場合には、 de =0としてよい。

b05.0e5.1e cd += or b05.0ee cd −= (2.1.6)

なお、各部材は式(2.1.6)による2つのねじれモーメントによって生じる応力のうち何れか厳

しい値に対して設計されなければならない。

2.1.2 新耐震規定 2)

2002年に施行された新耐震規定(SNI 03-1726-2002)における設計法は、基本的には前耐

震規定である SNI 03-1726-1989と同様なものであるが、米国の NEHARP規定 3)や UBCコー

ド 4)の(当時における)最新の考え方を導入している点に特徴がある。特に大きな変更点は、

と設計用地震荷重の考え方と、設計用ベースシアの評価において構造形式係数K(式(2.1.2))

の代わりに NEHARP規定の応答修正係数(Response Modification Coefficient)Rを導入して強度設計(Strength Design)を行っている点である。

設計用地震荷重は、従来、再現期間を約 200 年の地震を想定していたのに対して、新耐

震規定では NEHARP規定を参考に約 500年の再現期間の地震を対象としている。設計用地

震荷重は、前耐震規定と同様にインドネシア全土を6つの地震地域に分類し、それぞれに

対して3つの地盤条件を設定した加速度応答スペクトルで与えられている(Fig.2.1-3および

Fig.2.1-4)。地盤条件は Table 2.1-1に示すように表層地盤の平均せん断波速度、平均 N値お

よび平均非排水繰返三軸応力によって分類されている。一方、設計用加速度応答スペクト

ルで想定する工学的基盤および表層地盤における最大加速度 EBA および 0A は Table 2.1-2の

ように与えられている。さらに、設計用最大応答加速度 mA と表層地盤における最大加速度

0A の関係を

0m A5.2A ⋅= (2.1.7)

で与え(Table 2.1-3)、応答スペクトルのコーナー周期 cT を地盤条件に応じてそれぞれ 0.5sec

Table 2.1-1 Soil Types(英語表記は原文通り)

Type of Soil

Mean Propagation

Velocity Sliding Wave

Vs (m/sec.)

Mean Test Score

Penetration Standard

N

Mean Flow Less

Sliding Strength

Su (kPa)

Hard Soil Vs >= 350 N >= 50 Su >= 100

Medium Soil 175 =< Vs < 350 15 =< N < 50 50 =< Su < 100

Vs < 175 N < 15 Su < 50

Soft Soil Or any profile of soft soil with total thickness more than 3m with PL>20,

Wn>40% and Su<25kPa.

Special Soil Special evaluation needed at each location.

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(Hard Soil)、0.6sec(Medium Soil)および 1.0sec(Soft Soil)と設定し、応答スペクトルに

おける基本耐震係数Cを下式で定義し、その形状を規定している。

cTT ≤ のとき mAC = (2.1.8)

cTT > のとき TTAC cm ⋅= (2.1.9)

Fig.2.1-4および Table 2.1-3に示されるように、新耐震規定の設計用最大応答加速度は旧耐

震規定(Fig.2.1-2)に比べて最大で 8倍程度になっている。

一方、設計用ベースシアは式(2.1.10)で与えられる。

tWR

ICV ⋅⋅= (2.1.10)

ここで、Rは応答修正係数であり、構造強度超過係数(Structural Overstrength Factor) 0Ωおよび建築物の最大強度 YV と弾性応答強度 EV の比 dR (= YE VV )によって次式で与えら

れる。なお、、構造強度超過係数 0Ω =1.6としている。

0dRR Ω⋅= (2.1.11)

Table 2.1-2 Peak Accelerations for Base Rocks and Soil Surfaces for Each Earthquake Area in Indonesia

Peak Acceleration Soil Surface A0 (g) Earthquake

Area

Peak Acceleration Base Rocks

AEB (g) Hard Soil Medium Soil Soft Soil Specific Soil

1 0.03 0.04 0.05 0.08

2 0.10 0.12 0.15 0.20

3 0.15 0.18 0.23 0.30

4 0.20 0.24 0.28 0.34

5 0.25 0.28 0.32 0.36

6 0.30 0.33 0.36 0.38

Special

evaluation

needed at

each location

Table 2.1-3 Response Spectrum Predetermined Earthquake

Maximum Response Acceleration Am (g) Earthquake

Area Hard Soil Tc = 0.5s

Medium Soil Tc = 0.6s

Soft Soil Tc = 1.0s

1 0.10 0.13 0.20

2 0.30 0.38 0.50

3 0.45 0.55 0.75

4 0.60 0.70 0.85

5 0.70 0.83 0.90

6 0.83 0.90 0.95

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新耐震規定では、応答修正係数Rは 1.6~8.5 の値が採用されている。したがって最も靭性のあるフレーム(R =8.5)では dR =5.3となり、旧耐震規定に換算した設計用ベースシア

は概ね tWIC20V ⋅⋅⋅= . 程度になり、前述の「設計用最大応答加速度Cそのものが旧耐震規

Fig.2.1-3 Earthquake Area Map in Indonesia

Fig.2.1-4 Design Earthquake Response Spectra

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定に比べて最大で 8 倍程度になっている」ことを勘案すると、設計用ベースシアレベルは

2倍程度になっているものと考えられる。しかしながら、新旧耐震規定の設計用ベースシ

アの比率はR値と地盤条件、地震地域に依存するため一律に評価することは困難である。

なお、新耐震規定では上記のように、強度設計を基本としているが、終局強度設計とし

てニュージーランド基準における耐力設計(Capacity Design)の考え方も取り入れており、

特に、RC造建築物および鉄骨建築物には梁降伏先行型の全体崩壊形を推奨している。

また、平面的および立面的不整型な建築物に対する規定は、若干の変更はあるものの基

本的な考え方は 2.1.1項で示した旧基準と同様なものである。

参考文献

1) Ministry of Public Works: Indonesian Earthquake Code 1983, pp.22.1-22.28, 1983

2) National Standardization Agency: Indonesian National Standard (SNI) - Design Methods

Earthquake Withstand for Building Structure, SNI 03-1726-2002, 121pp., 2002

3) National Earthquake Hazards Reduction Program (NEHARP), Recommended Provisions for

Seismic Regulation for New Buildings and Other Structures, 1997 Edition, Part 1 - Provisions,

Part 2 - Commentary, FEMA 302, Feb. 1998

4) Uniform Building Code (UCB), 1997 Edition, Vol. 2, Structural Engineering Design Provisions,

International Conference of Building Officials, April 1997

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2.2 被害の概要

7月3日から6日にかけて、Yogjakarta市内のRC造建築物7棟の個別調査を実施した。特に被害の大きかった2棟に関しては、更に詳細調査を実施した。以下に、個別調査結果

を示す。なお、詳細調査結果は章を改めて示す。

2.2.1 Universitas Islam Negeri (UIN) RC造5階建て

位置:S07°47’ 07.7’’ E110°23’ 35.4’’ 建物の全景を Photo 2-1に示す。地盤特性か,周りの地域も被害が多い.現在,24棟分の修理のためにイスラム系銀行から融資を受ける予定である.特に屋根の被害が多い. 本建物は,建設途中であった.主にレンガの非構造壁に被害が集中しており,構造体に

はほとんどひび割れも生じていない.屋根(Photo 2-2)は,瓦は一部落下したようであるが,Photo 2-3でみられるように,屋根の小屋組み自体はほとんど被害を受けていない.これは,①張間方向に比較的多くの雑壁が存在したこと,②桁行き方向に3構面あったこと,

③小屋組みが Cチャンネルで出来ており,かつその部材数が多かったこと,が挙げられる.

Photo 2-1 建物全景

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Photo 2-2 屋根拭き材の被害

Photo 2-3 屋根の小屋組み

2.2.2 Universitas Muhammadiyah Yogyakarta (UMY) RC造3階建て

位置:S07°48’ 39.9’’ E110°19’ 18.6’’ 位置:S07°48’ 39.9’’ E110°19’ 18.6’’

建物の全景を Photo 2-4に示す。1階床下に殆ど何も処理を行っておらず,直接地面の上に仕上げが乗っているため,振動中に床下の土が移動し,その結果床が下がっている(Photo 2-5).エキスパンションジョイント部では,Photo 2-6のように,隣接棟と衝突し,柱にせ

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ん断破壊が生じている.横補強筋はφ10@100 程度で 135 度フックであった.その他の構造被害は殆ど見受けられない.

Photo 2-4 建物全景

Photo 2-5 地盤変状による 1階建物入り口部の沈下

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Photo 2-6 渡り廊下とのエキスパンション部の衝突

2.2.3 Universitas Ahmad Dahlan (UAD) RC造 2階建て

位置:S07°49’ 13.2’’ E110°23’ 17.8’’ 建物の全景を Photo 2-7に示す。本建物では,Photo 2-8で見られるように屋根が殆ど落下した程度で,構造被害は殆ど見受けられない.

Photo 2-7 建物全景

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Photo 2-8 屋根部の被害

2.2.4 Universitas Ahmad Dahlan (UAD) 3rd Campus RC造 3階建て

位置:S07°48’ 31.1’’ E110°23’ 23.7’’ 中庭から見た建物の全景を Photo 2-9に示す.被害は Photo 2-10に示すように,殆ど最上階の3階に集中しており,その内容は屋根の落下である.桁行き構面間につなぎ梁があ

る部分では,Photo 2-11に示すように,小屋組みは残っているが,つなぎ梁が無い場合は,Photo 2-12に示すように小屋組みも落下している.建物の最上階では,Photo 2-13に示すように中柱がなくなり,殆どの部分は梁は外周のみにしか存在していない.その為,建物

の殆どの部分で小屋組みが落下したと思われる.また,Photo 2-13 からも分かるとおり,中庭に面した3階の柱が,全て中庭側に降伏して傾いているが,これは小屋が落下した時

に外方向に引張られたと思われる.地震後,小屋組みは,地震以前とまったく同じ方法で

修復されており,次の地震でも同じような被害が出る可能性が高い. なお,Photo 2-14 に示すように,1箇所の梁で,せん断補強を行っていた.これは,L型の補強筋を新たに挿入して,モルタルを打つものだが,定着が不明で,効果のほどは判

断できなかった.下層階には構造被害は見受けられない.

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Photo 2-9 中庭から見た建物全景

Photo 2-10 最上階3階部分の被害

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Photo 2-11 つなぎ梁がある部分の小屋組み

Photo 2-12 つなぎ梁が無い部分の屋根被害

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Photo 2-13 最上階部分

Photo 2-14 梁の耐震補強

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Photo 2-15 せん断補強用の補強筋の追加 2.2.5 STIE RC造 5階建て

位置:S07°49’ 39.2’’ E110°22’ 03.7’’ 建物の全景を Photo 2-16に示す.2棟は隣接して並んでいるが,1棟は中破程度であるが,片方は1層で層崩壊している.中破の 1 階はオーディトリアムに,倒壊の1階は層崩壊しているが,事務所として使われていた.Photo 2-17~Photo 2-19に1階柱および1階柱頭の接合部被害写真を示す.主筋および横補強筋,フープは全て丸鋼であり,かつ柱端

部で重ね継ぎ手されている場合が多いため,同部分および接合部内では鉄筋が非常に込ん

でおり,被害の理由のひとつである可能性がある. 本物件は,設計者が裁判にかけられる予定であり,図面等を入手することが困難となっ

た.学校敷地内のその他の RC造建物では,例えば Photo 2-20に示すように被害は一般的には大きくない.なお,2棟ともモニュメントとして保存される予定である.

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Photo 2-16 建物全景

Photo 2-17 接合部の被害

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Photo 2-18 柱頭および接合部の被害

Photo 2-19 接合部の被害

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Photo 2-20 近接する5階建て RC造建築物

2.2.6 Finance and development Audit RC造3階建て

位置:S07°50’ 41.7’’ E110°21’ 41.8’’ 建物の配置図をFigure 2-1にしめす.本建物は図に示すように,若干角度を変えて2棟が隣接しているが,両者の間はエキスパンションジョイントで分離されており,別棟となっている.Photo 2-21に建物全景を示す.西側の建物は,層崩壊を生じており,Photo 2-22に示すように,使用禁止のラベルが貼られていた.大破した建物は,特に西側妻面で被害が多

く,1層は総崩壊しており(Photo 2-23および Photo 2-24),北西隅柱は2階脚部でもせん断破壊している(Photo 2-25).この被害の差の一部は,Photo 2-26に示す模型からもわかるとおり,大破した建物の西側妻面では,1階のみレンガ壁が内側にセットバックしてお

り,面外の壁となっている.一方,2階以上の壁は妻構面に入っており結果的にピロティ

構面となっている.それに対して,被害の少ない建物では,1階から3階までレンガ壁が

入っている.Photo 2-27に大破した建物の1階のせん断破壊した柱を示す. なお,この2棟の建物では詳細調査も実施された.

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Figure 2-1 建物配置図

(a) 被害の少ない建物 (b) 大破した建物

Photo 2-21 建物全景

Photo 2-22 建物の応急危険度判定結果

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Photo 2-23 大破した建物

Photo 2-24 層崩壊した建物部分

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Photo 2-25 2階隅柱脚部のせん断破壊

(a) 被害の少ない建物の妻面 (b)大破した建物の妻面

Photo 2-26 建物模型

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Photo 2-27 1階柱のせん断破壊

2.2.7 ISI RC造 3階建て(一部2階建て)

位置:S07°51’ 08.2’’ E110°21’ 20.3’’ 両建物の全景を Photo 2-28に示す.本建物は,隣接する2棟からなる.1層で層崩壊した建物は 2002 年に竣工しており,2000 年に改定された最新の耐震基準に準拠していると思われる.一方,被害の少なかった建物は,1997年竣工であり,旧基準に準拠していると思われる.建物のスパン割りおよび階高は両建物とも殆ど一緒であるが,建物の左右の2

階建て部分が,被害の少なかった建物では構造的に分離されている.例えば,正面玄関右

の柱では,層崩壊した建物では Photo 2-29に示すようにせん断破壊を示しているが,被害の少なかった建物の柱は Photo 2-30に示すように殆ど被害は見受けられない. 層崩壊した建物では,中柱の一部では Photo 2-31に示すようにほぼ無傷で残った柱もあるが,周りの柱の殆どがせん断破壊し,階高が低下したため,その柱に接続する梁は Photo 2-32に示すように,大きな損傷を生じた. なお,この2棟の建物では詳細調査も実施された.

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(a) 層崩壊した建物 (b) 被害の少なかった建物

Photo 2-28 建物全景

Photo 2-29 せん断破壊した柱(層崩壊した建物)

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Photo 2-30 同じ位置の柱(被害の少ない建物)

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Photo 2-31 せん断破壊した中柱(奥)とほぼ無傷の柱(手前)(層崩壊した建物)

Photo 2-32 主筋が曲げ座屈した梁(層崩壊した建物)

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2.3 詳細被害調査

2.3.1 BPKP

本建物は,Figure 2-1 に示したように,2棟が少し角度を振って隣接している.両建物はエキスパンションジョイントで分離されている.建物被害は,西側の建物(以降,西棟と呼ぶ)では1階の柱の多くがせん断破壊を生じており,特に北西角部はスラブが落下している.一方,東側の建物(以降,東棟と呼ぶ)では,レンガ壁にひび割れが発生しているものの,構造部材に関しては殆ど被害は確認されなかった.以下に,各棟別に行った詳細調査結果

を示す. 西棟の各階平面図を Figure 2-2~Figure 2-4に示す.本建物は桁行き5スパン(A構面

は4スパン),張間方向は3スパンの3階建て RC造建物である.図中に示した点線は,レンガ造の雑壁の位置を,塗りつぶした柱はせん断破壊した柱を示す.1階のA構面および

4構面の柱は全てせん断破壊している.2階を見ると,図中実線で示したとおり4構面お

よび3構面A-B間にレンガ造の壁が配されていた.3階では,屋根の被害以外に特に構

造被害は見受けられなかったが,最上階で中柱がなくなる形式が本国の建築でよく見受け

られる.特に4構面,3構面A-B間では 1階柱は下階壁抜け柱となっており,この構造形式が被害を生じる一因となったと考えられる. また,同建物において,シュミットハンマーによるコンクリート強度の調査と,鉄筋レ

ーダーによる配筋の調査を行った.調査結果を Table 2-1にまとめて示す.1階の柱で計測したコンクリート強度の平均値は 46.4N/mm2であり,決して低い値ではない.柱サイズは,

実測値のため仕上げを含むものの,1階では□550mm,2階では□500×550mm,3階では扁平柱で□300×550mm程度であった.主筋は,せん断破壊した1階柱で,主筋は 18~20D25 程度と思われ,横補強筋はφ10@150 程度であった.試みに,1 階 A-3 柱の曲げ耐力およびせん断耐力(荒川min式)を算出した.算出に際しては,柱サイズは 55×55cm,クリア長さを 392cm,被り厚を 5cm,軸力としては支配面積分を考慮して,単位重量は9.8kN/m2と仮定した.鉄筋は,主筋として 20-D25,補強筋はφ10@150を考慮した.材料強度は,Fc=46.4N/mm2(実測値の平均値),鉄筋強度は主筋は 29546.4 N/mm2,補強筋

は 245 N/mm2と仮定した.その結果,曲げ降伏時水平耐力は 531.8kN,せん断破壊時水平耐力は 526.8kNとなり,せん断余裕度は 0.99のせん断破壊する柱となった. 一方,東棟の各階平面図を Figure 2-8~Figure 2-10に示す.本建物は桁行き方向6スパ

ン(A構面は5スパン),張間方向は3スパンの3階建て RC造建物である.図中の実線はレンガ造壁の位置を示す.また,点線はレンガ造の腰壁の位置を示す.本建物は,上部構

造が東方向へ大きく振動したことを示すせん断ひび割れが若干確認されたが,構造被害と

しては軽微の部類である.平面図からも分かるとおり,本建物は桁行き方向の両端部に階

段を有し,また 1 階および 2 階の壁の量は,西棟に比べて多い.これが東棟の被害が西棟に比べて少なくなった一因であると考えられる. 西棟と同じく,コンクリート強度と鉄筋の配筋調査を実施した.その結果を西棟と同じ

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く Table 2-1にまとめて示す.断面寸法や配筋は,ほぼ西棟と同じである.また,コンクリート強度の平均値は 41.9N/mm2と若干下回っている.試みに,1階 A-2柱の曲げ耐力およびせん断耐力(荒川 min 式)を算出した.算出に際しては,柱サイズは 55×55cm,クリア長さを 392cm,被り厚を 5cm,軸力としては支配面積分を考慮して,単位重量は 9.8kN/m2

と仮定した.鉄筋は,主筋として 20-D25,補強筋はφ10@150を考慮した.材料強度は,Fc=41.9N/mm2(実測値の平均値),鉄筋強度は主筋は29546.4 N/mm2,補強筋は245 N/mm2

と仮定した.その結果,曲げ降伏時水平耐力は 531.0kN,せん断破壊時水平耐力は 506.1kNとなり,せん断余裕度は 0.95のせん断破壊する柱となった.コンクリート強度が西棟に比べて若干低い分,強度も若干低くなった.

【階高を確認して,耐力計算】,東棟図面修正 解析的な比較

Figure 2-2 1階(大破した建物,点線:レンガ雑壁)

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Figure 2-3 2階(大破した建物,実線:れんが壁)

Figure 2-4 3階(大破した建物)

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Figure 2-5 1階(被害の少ない建物:実線:れんが壁,点線:レンガ腰壁)

Figure 2-6 2階(被害の少ない建物:実線:れんが壁,点線:レンガ腰壁)

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Figure 2-7 3階(被害の少ない建物:実線:れんが壁,点線:レンガ腰壁)

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Table 2-1 シュミットハンマーおよび鉄筋探査器による詳細調査結果一覧(X:桁行方向(南北方向),Y:梁間方向(東西方向)) シュミットハンマーによるコンクリート強度の推定 鉄筋探査結果および他情報

建 物 対象 部材

階 調査箇所

対象面

カッコは鉄筋探査のみを対象

断面寸法 B×D (mm) B:桁行方向D:梁間方向

計測位置 間隔 (mm)

各計測点の 推定強度 (N/mm2)

平均強度 (N/mm2)

標準偏差 σn-1 (N/mm2)

鉄筋探査器および 他情報による 推定配筋

かぶり厚 (mm)

備 考

35 44 49 38 42 38 1 4-B 南東面 550× 560 150 49 47 35

41.9 5.7 主 筋(X):5-D25 主 筋(Y):4-D25 補強筋:φ10@150

2 5-C 北東,北西面 510 × 540 - - - - 主 筋(X):4-D25 主 筋(Y):4-D25 補強筋:φ10@200

- 鉄筋探査 柱

3 1-D 南西,南東面 370 × 580 - - - - 主 筋(X):4-D25 主 筋(Y):4-D25 補強筋:φ10@200

- 鉄筋探査

3 6-B,C - 200 × 480 - - - - - - 断面寸法のみ

非崩壊 建物 (東棟)

梁 R 2,3-D - 200 × 580 - - - - - - 断面寸法のみ 46 39 41 42 49 46 2-C 北面 555× 540 150 47 49 59

46.4 5.9 主 筋(X):6-D25 主 筋(Y):6-D25 補強筋:φ10@150

主 筋:- 補強筋:63

3-C 西面 555 × 540 - - - - 補強筋: φ10@150~200 - 鉄筋探査

1

4-D 西面 560 × 540? - - - - 主 筋(X):5-D25 主 筋(Y):6-D25 - 外観調査

1-A 北面・西面 495?× 490? - - - - 主 筋(X):4-D25 主 筋(Y):4-D25 - 外観調査

1-B 南面 495 × 560 - - - - 主 筋(Y):4-D25 - 鉄筋探査

2-B 北面 490 × 560 - - - - 主 筋(Y):3-D25 補強筋:φ10@150 - 鉄筋探査 2

2-C 南面 490 × 560 - - - - 主 筋(Y):3-D25 補強筋:- - 鉄筋探査

1'-D 北面・西面 - × - - - - - 主 筋(X):4-D25 主 筋(Y):4-D25 - 鉄筋探査

3 1-D 東面 300 × 570 - - - - 主 筋(X):4-D25

補強筋:φ10@250 - 鉄筋探査 レンガふかし

2 1-A,B - 300 × 550 - - - - - - 断面寸法のみ

2 2-B,C - 300 × 550 - - - - 上端主筋:3,4-D25補強筋:- -

3 3-B,C - 300 × 520 - - - - 上端主筋:3-D25 補強筋:φ10@150 -

R 1,2-D - 180 × 480 - - - - - - 断面寸法のみ 2 1-C 床上・北東 - - - - - 上端主筋:@200? -

崩壊 建物 (西棟)

スラブ筋 3 2-C 床上・北東 - - - - - 上端主筋:@150 -

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2.3.2 ISI

本建物は,南北方向に2棟が隣接して建築されており,将来的には両棟は渡り廊下およ

びエキスパンションジョイントを介して接続される予定であった.工事は渡り廊下部の建

設を残すのみとなっていた.北側の建物(以下,北棟と呼ぶ)は,2000年に改正され

た新基準に基づいて設計されたが,1階の殆どの柱でせん断破壊を生じ,2階床が殆どの

範囲で落階している.一方,南側の建物(以下,南等と呼ぶ)は,2000年以前の基準に基づいて設計されたが,被害は軽微に分類される.以下に,実施された詳細調査の結果を建

物別に示す. 北棟の各階平面図を Figure 2-8~Figure 2-10に示す.本建物は桁行き方向7スパン(最上階は5スパン),張間方向4スパンの3階建て RC造建物である.図中の実線は,レンガ造壁の位置,点線はレンガ造腰壁の位置を示す.また,塗りつぶした柱はせん断破壊を生

じた柱を示している.1階では殆どの柱でせん断破壊を生じていることが分かる.せん断

破壊を生じた柱の特徴としては,Photo 2-33 に示したようにせん断破壊部でジャンカが見受けられるもの,および Photo 2-34に示すように,基礎から立ち上がった主筋の重ね定着部(床面から 135cm)の上でのせん断破壊が挙げられる.1階では C通り 7-8間のレンガ造壁の北側脚部でレンガの圧壊が見受けられ,本壁が大きな力を負担してることが分かる.

その為 C通り5~8の柱は比較的損傷が少なくなったと考えられる(Photo 2-31で手前がC-5柱,奥が C-4柱).なお,最上階の 3回では中柱は存在しない. また,同建物において,シュミットハンマーによるコンクリート強度の調査と,鉄筋レ

ーダーによる配筋の調査を行った.調査結果を Table 2-2にまとめて示す.1階の柱で計測したコンクリート強度の平均値は 21.7N/mm2および 19.2 N/mm2であった.柱サイズは,

実測値のため仕上げを含むものの,1階では□530mm,2階では□600mm程度であった.主筋は,せん断破壊した1階柱で,20D25 程度と思われ,横補強筋はφ10@150 程度であった.試みに,1階 A-5 柱の曲げ耐力およびせん断耐力(荒川 min式)を算出した.算出に際しては,柱サイズは 53×53cm,クリア長さを 416cm,被り厚を 5cm,軸力としては支配面積分を考慮して,単位重量は 9.8kN/m2と仮定した.鉄筋は,主筋として 20-D25,補強筋はφ10@150 を考慮した.材料強度は,Fc=20.5N/mm2(実測値の平均値),鉄筋強

度は主筋は 29546.4 N/mm2,補強筋は 245 N/mm2と仮定した.その結果,曲げ降伏時水平

耐力は 392.0kN,せん断破壊時水平耐力は 350.0kN となり,せん断余裕度は 0.89 のせん断破壊する柱となった.【階高を確認して,耐力計算】 一方,南棟の各階平面図を Figure 2-11~Figure 2-13に示す.本建物は桁行き方向7スパン(最上階は5スパン),張間方向4スパンの3階建て RC造建物である.図中の実線は,レンガ造壁の位置,点線はレンガ造腰壁の位置を示す.スパン長さと平面形状は被害の大

きかった北棟と殆ど同じであるが,北・南端の 2 階建て部分は南等では別棟となっている.また,北棟と比較して分かるとおり,1階・2階において,桁行き方向・張間方向共にレ

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ンガ壁の量は北棟に比べて多い.本建物の構造被害は軽微である. 北棟と同じく,シュミットハンマーによるコンクリート強度の調査と,鉄筋レーダーに

よる配筋の調査を行った.調査結果を Table 2-2にまとめて示す.1階の柱5本および 2階床梁で計測したコンクリート強度は 34.7N/mm2~49.0 N/mm2と,北棟に比べて高くなっ

た.柱サイズは,実測値のため仕上げを含むものの,1階では□530mm~□660mm 程度

であった.主筋は1階柱で 20D25程度と思われ,横補強筋はφ10@100程度であった.また,1階レンガ壁部分のレンガに対して,シュミットハンマーで強度の計測を試みたところ,0.9 N/mm2であった.試みに,1階 A-5柱の曲げ耐力およびせん断耐力(荒川min式)を算出した.算出に際しては,柱サイズは 50×56cm,クリア長さを 416cm,被り厚を 5cm,軸力としては支配面積分を考慮して,単位重量は 9.8kN/m2と仮定した.鉄筋は,主筋とし

て 20-D25,補強筋はφ10@150 を考慮した.材料強度は,Fc=41.2N/mm2(実測値の平

均値),鉄筋強度は主筋は 29546.4 N/mm2,補強筋は 245 N/mm2と仮定した.その結果,

曲げ降伏時水平耐力は 422.3kN(桁行き)・377.0kN(張間),せん断破壊時水平耐力は433.7kN(桁行き)・499.1kN(張間)となり,せん断余裕度は 1.03(桁行き)・1.06(張間)の曲げ破壊する柱となった.【階高を確認して,耐力計算】

Figure 2-8 1階(大破した建物,実線:れんが壁,点線:れんが腰壁)

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Figure 2-9 2階(大破した建物,実線:れんが壁,点線:れんが腰壁)

Figure 2-10 3階(大破した建物,点線:れんが腰壁)

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Photo 2-33 せん断破壊部のジャンカ

Photo 2-34 重ね継ぎ手上部のせん断破壊

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Figure 2-11 1階(被害の少ない建物,実線:れんが壁,点線:れんが腰壁)

Figure 2-12 2階(被害の少ない建物,実線:れんが壁,点線:れんが腰壁)

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Figure 2-13 3階(被害の少ない建物,点線:れんが腰壁)

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Table 2-2 シュミットハンマーおよび鉄筋探査器による詳細調査結果一覧(X:桁行方向(南北方向),Y:梁間方向(東西方向))

シュミットハンマーによるコンクリート強度の推定 鉄筋探査結果および他情報 建 物

対象 部材

階 調査箇所

対象面

カッコは鉄筋探査のみを対象

断面寸法 B×D (mm) B:桁行方向 D:梁間方向

計測位置 間隔 (mm)

各計測点の 推定強度 (N/mm2)

平均強度 (N/mm2)

標準偏差 σn-1 (N/mm2)

鉄筋探査器および 他情報による 推定配筋

かぶり厚 (mm)

備 考

36 39 52 36 46 38 2'-C 東面

(北面) 500 × 560 150 35 26 58

40.7 9.7 主 筋(X):5-D25 主 筋(Y):5-D25 補強筋:φ10@150

主 筋:47~65

補強筋:30~60

41 54 51 42 46 49 4-C 東面

(北面) 640 × 670 200 46 54 51

48.2 4.8 主 筋(X):6-D25 主 筋(Y):6-D25 補強筋:φ10@100

主 筋:(不明)

補強筋:40~55

30 35 52 42 30 41 7'-C 西面 500 × 560 150 32 20 30

34.7 9.2 主 筋(X):- 主 筋(Y):- 補強筋:φ10@100

主 筋:(不明)

補強筋:45 7-B 西面 650 × 660 - - 49 - - - 1箇所のみ

8-B 西面 410 × 400 - - 47 - - - 1箇所のみ 雑壁

1

3-B,C 南面 - - - 0.9 - - - レンガ 49 41 44 38 47 27

梁 2 5-C,D 北面 - 150 38 22 31

37.4 9.2

主筋:側面より 360mm まで

に 3本確認 補強筋:@150

補強筋:55 階段側 より 計測

梁主筋 2 1-C 床上・南側 - - - - - 上端主筋:4本 - 鉄筋探査 スラブ筋 2 1-C 床上・南東 - - - - - 上端主筋:@150 - 鉄筋探査

非崩壊 建物

スラブ筋 2 2-A 床上・南東 - - - - - 上端主筋:@150 - 鉄筋探査 14 19 20 20 27 24 1 5-C 南面 530 × 530 150 24 24 23

21.7 3.8 - - 北面に ジャンカあり

26 18 20 20 23 14

崩壊 建物 柱

2 3-A 西面 600 × 600 150 14 16 22

19.2 4.1 - -

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2.4 詳細調査建物の解析 未完

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3 学校建築物とその周辺の被害 3.1 対象地域と調査方法 3.1.1 調査対象地域

調査の対象地域は Figure 3.1-1 に示す通りであり、九州大学・人間環境学研究院の川瀬博教授らが 6月末に被害および地盤振動調査を行なった 14箇所から、調査時間の制限のため 12箇所のみを選択した。地域によって被害の程度はまちまちであるが、学校敷地における微動観測データが存在する。14箇所の微動観測点の中で、図中に示す 2本の東西方向に走る仮想直線上に存在する点を抽出して被害調査を行なった。仮想した直線は、Segoroyo村を横切る北側線(観測点で7,6,5,1,2,4)と Imorigi村を横切る南側線(観測点で 14,13,12,11,8,10)の 2つである。どちらの直線も、断層と直交に近い角度で交わっているので、断層からの距離と建物の被害程度の相関を確認できると考えた。

Figure 3.1-1 Location of survey area

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3.1.2 調査方法 各調査地点について、学校校舎の構造特性と被害状況を調査し、また、その学校周辺の

住宅を中心とした一般建築物の被害率を調査した。 各地点で調査対象とした学校を Table 3.1-1に示す。各学校では、敷地内の校舎についてはすべて調査を行った。調査は、各学校とも 1時間程度で行い、以下の項目を調査した。 ・ 建物概要:建設年、階数、構造形式(RC柱・梁の有無や構造、壁厚など) ・ 被害状況:壁、RC架構、屋根などの損傷状況、被災度

被災度は、軽微、小破、中破、大破、倒壊の 5段階に分類した。 各学校で代表的な校舎 1 棟を選び、壁量に基づく簡易耐震性能評価を行うために、平面寸法、壁の長さ、壁厚、開口寸法、柱の断面寸法などを実測した。 各学校の敷地周辺の震動の大きさを大略推定し、校舎の被災度との関係を検討する目的

で、学校周辺の住居を中心とする建物の被害状況も調査した。調査は約 30分程度で学校周囲の 1区画程度を徒歩で周り、被災度ごとの建物棟数を調査した。住宅の被災度は、全壊、半壊、無被害の 3 段階で判断した。被害か甚大な地域では、多数の住宅が全壊し棟数が数えられない場合は、住民からの聞取り調査に基づいて数を記録し、可能な範囲で聞取り調

査の再確認を行なった。 さらに、Gadjah Mada 大学が取りまとめた公共建築物の応急危険度判定結果(Rapid Assessment Results Teknik Sipil UGM)から、今回我々が調査した地域の学校施設の応急危

険度判定の状況や、インドネシアの学校建築の標準設計資料 3.1)(Design of Prototype of Elementary School Buildings)などの資料から、学校建築の構造形式についても調査した。 以下、今回調査した地域における学校建築の構造形式の概要と特徴(3.2 節)、詳細調査を行なった学校建築の個別情報(3.3 節)、学校周辺の一般住宅および公共建築物の被害状況(3.4節)を説明し、本章のまとめ(3.5節)を行なう。 参考文献 3.1) Department of Public Works: Design of Prototype of Elementary School Buildings (in Indonesian)

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Table 3.1-1 Survey structures

構造形式 建設年 建設年代 階数 被災度 被災度(最大 桁行方向RC柱+URM 1986 1980年代 1 1 1 南北

RCフレーム+URM 1986 1980年代 2 2 2 南北RC柱+URM 1986 1980年代 1 1 1 南北RC柱+URM 1986 1980年代 1 1 1 東西

URM 1978 1970年代 1 1 1 東西URM 1954 1950年代 1 4 4 東西

RC柱+URM 1980年代 1980年代 1 1(屋根以外),4(屋根) 4 東西RC柱+URM 1980年代 1980年代 1 1(屋根以外),2(屋根) 2 南北RC柱+URM 1980年代 1980年代 1 5 5 東西RC柱+URM 1980年代 1980年代 1 5 5 南北

RCフレーム+URM 建設中 2000年代 2 1(1階),2(2階),4(屋根) 4 北西-南東URM 1970年代 1970年代 1 5 5 北東-南西

RC柱+URM 1980 1980年代 1 1 1 南北RC柱+URM 1976 1970年代 1 1 1 東西RC柱+URM 1976 1970年代 1 1 1 東西RC柱+URM 1976 1970年代 1 1 1 南北RC柱+URM 1976 1970年代 1 1 1 南北RC柱+URM 1976 1970年代 1 1 1 東西

RCフレーム+URM 2003 2000年代 2 2 2 東西RC柱+URM 1975 1970年代 1 2(屋根以外),4(屋根) 4 東西RC柱+URM 1975 1970年代 1 1 1 南北RC柱+URM 1977 1970年代 1 5 5 東西RC柱+URM 1977 1970年代 1 5 5 南北RC柱+URM 1980 1980年代 1 1 1 東西

RCフレーム+URM 2003 2000年代 2 2 2 東西RCフレーム+URM 2003 2000年代 2 2 2 南北

RC柱+URM 1980 1980年代 1 1 1 南北RC柱+URM 1980 1980年代 1 3 3 南北

RCフレーム+URM 2002 2000年代 2 2 2 東西URM 1940 1940年代 1 5 5 南北

RCフレーム+URM 2005 2000年代 1 4 4 東西RC柱+URM 1976 1970年代 1 2 2 北東-南西RC柱+URM 1976 1970年代 1 2 2 北東-南西RC柱+URM 1976 1970年代 1 5 5 北西-南東RC柱+URM 1976 1970年代 1 5 5 南北

URM 1970年代 1970年代 1 1(屋根以外),3(屋根) 3 東西? 1980年代 1980年代 1 1(屋根以外),2(屋根) 2 南北

RC柱+URM 1980年代+1990年代 1980年代+1990年代 1 1 1 南北? 1980年代 1980年代 1 1(屋根以外),2(屋根) 2 東西

RCフレーム+URM 1980年代 1980年代 3 1(屋根以外),4(屋根) 4 南北RCフレーム+URM 2000年 2000年代 1 3 3 東西

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3.2 学校建築の構造形式 調査を行った Bantul県は農村地域であり、調査した学校校舎の構造形式は、周辺の住居と同様な平屋建てのレンガ造建築が大多数であった。Figure 3.2-1に示すように、レンガ(幅120mm×長さ 240mm×厚さ 30~50mm程度)を積んで壁を構成し、壁上に張間方向に屋根組みの木造トラスを架け、屋根下地に瓦を葺いている。 校舎の平面は、基本的に日本の学校建築と同様に一文字型の教室の配置で、1教室が桁行き方向 8-9m、張間方向 7-8mの片廊下型で、廊下には屋根庇はあるが屋外となっており、外壁及び教室間の間仕切り壁はレンガ造となっている。

Figure 3.2-1 Typical structural system of school buildings レンガ壁の目地および仕上げには、石灰石、砂およびブリックパウダー(レンガを砕い

た粉末)で作るモルタル状の材料が使用されている場合が多く、仕上げを含めた壁厚は、

150mm程度(レンガ 120mm+仕上げ 15mm程度×2)である。レンガ壁の補強形式により、学校校舎の構造を大略以下の 3形式に分類した。 無補強レンガ造(URM: Un-Reinforced Masonry) 枠組みレンガ造(CM: Confined Masonry) RC造フレーム+後積みレンガ壁 以下、上記 3構造形式の詳細について説明する。

3.2.1 無補強レンガ造(URM) 無補強レンガ造は、鉄筋などで補強なしに壁をレンガのみで構築し、その上に木造の屋

根架構を載せた構造形式で、1940-1950年代に建設された古い校舎で見られた。

3.2.2 枠組みレンガ造(CM) 1970年代以降の平屋建て校舎では、レンガ壁の周辺を RC架構で囲んだ補強レンガ造で壁を構成する構造が多くみられた。レンガを先積みして壁を作り、各教室の 4隅、および、壁の中間部に、鉄筋を配筋してコンクリート(モルタル)を打設することで柱型を作る。

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Photo 3.2-1に調査した学校近隣での再建中住居の施工状況を示すが、学校校舎のレンガ壁も概ねこれと同様な方法で建設されていると思われる。柱断面は、壁厚と等しい 150mm×150mm程度で、配筋は主筋 4-10φ、帯筋 8φ@150が最近では推奨されているとのことであるが、実際には主筋 4-8φ、帯筋 6φ@200程度で施工される場合も多いようである。 壁上部には RC柱を繋ぐ RC梁を配している場合もあるが、RC梁が無く柱が片持ち形式となっている構造も比較的古い建物では見られた。最近の建物では、Photo 3.2-2に示すように、RC柱及び RC梁でレンガ壁を拘束する形式となっており、妻壁や教室間仕切り壁上部の屋根を受けるためにレンガ壁も RC梁で拘束されている。壁中間部にも柱型がある場合が多く、現在は RC 架構で囲まれるレンガ壁の面積を 9m2以下とする(壁高さ 3m とすると 3m以下ごとに柱を設ける)ことが規定されているとのことである。妻壁や間仕切壁が無い各教室中間部の屋根架構は、新しい建物でも Photo 3.2-3のように木造のトラス架構で、RCの繋ぎ梁が無い場合がほとんどであったが、鉄骨造トラスを用いた事例(Photo 3.2-4)や RC 造山形ラーメン架構(Photo 3.2-5)も一例ずつ見られた。いずれも、屋根トラスや山形 RC梁の下部架構への定着が十分でないと思われる場合が多く、これらの崩壊も多数見られた。屋根面内の強度・剛性を確保する筋交いが用いられておらず、下部壁が健全であ

るにもかかわらず屋根面が崩壊し屋根瓦が落下した被害事例が多数見られた。

Photo3.2-1 補強レンガ造の施工状況(住居)

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Photo 3.2-2 建設中の学校校舎の枠組みレンガ造壁

Photo 3.2-3 建設中の学校校舎の屋根架構

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Photo 3.2-4 鉄骨造の屋根組みトラスを使用した学校校舎

Photo 3.2-5 RC造繋ぎ梁を用いて山形ラーメンの校舎

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3.2.3 RCフレーム+後積みレンガ壁 1990年代以降の比較的新しい建物で、2階建の校舎も数例見られた。これらの 2階建て校舎は、桁行・張間方向ともに RC柱・梁からなる RCフレーム構造となっており、先に施工した RCフレームの中にレンガを後積みして間仕切壁や腰壁などを設けている。最上階である2階には、繋ぎ梁や RC造の屋根スラブは無く、屋根の構造は、前述の平屋建て校舎と同様に木造トラス架構に瓦を載せた構造となっている(Photo 3.2-6)。 2階建て学校校舎の標準設計資料 3.1)によると、柱断面は 200mm×200mm、主筋 4-16φまたは 19φ、帯筋 8φ@150で、桁行き方向は 4mごとに、張間方向は 3.5mごとに柱が配置されている。張間のレンガ壁部分の梁は 150mm×300mm、主筋 2-16φ、あばら筋 8φ@100~200、桁行方向の梁は断面 200mm×400mm程度となっている。 レンガ壁は、フレーム内に後積みする infillタイプで、壁厚 150mm 程度の 1枚積みで、壁厚と同寸法の RC造柱型・梁型が内蔵される点では、枠組みレンガ造の壁と同様である。ただし、Photo3.2-7、3.2-8に示すように被災したレンガ壁の復旧工事状況を見ると、これらの RC造柱・梁主筋は、周辺の RCフレームに定着されておらず、レンガ壁と RCフレームの一体性は十分ではないと考えられる。

Photo 3.2-6

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Photo 3.2-7

Photo 3.2-8

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3.3 学校建築の個別事例と被害の傾向 3.3.1 建物概要と被害状況

(1) Pandak I中学校(No. 14,校舎数:4) 所在地:JL. Srandakan KM. 1 Bantul 配置図:

Figure 3.3-1 西校舎(2階建) ・竣工:1986年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:2 ・被災度:小破 ・詳細資料:有 ・所見: 全 4棟中唯一の 2階建校舎であり,インドネシアの学校校舎の基本設計 3.1)に近い建物で

ある(Photo 3.3-1).RC柱に損傷はない.1階梁間の URM壁に大きなせん断ひび割れが生じたが,面外へ転倒することはなかったとのことである.これらは損傷が大きかったた

め,調査時には既に撤去され,新設中であった(Photo 3.3-2).グラウンド側の 1階桁行のURM壁にもやや大きなせん断ひび割れが見られた(Photo 3.3-1).木造の屋根組は桁行方向に 15°傾斜し,部分的に瓦が落下したとの報告を受けた(ただし,調査時には全ての瓦が除去済).

西校舎(2階建)

南校舎

西校舎(平屋)

東校舎

グラウンド

N

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Photo 3.3-1 Photo 3.3-2

西校舎(平屋) ・竣工:1986年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:あり ・所見: 本校舎(Photo 3.3-3)を含め以下 3棟の平屋校舎は同様の構造,被害状況であった.RC柱に損傷はなく,URM壁の被害も小さかった.ただし,西校舎は先述の 2階建の部分と構造的に分離されていないため,その接合部付近の URM壁のみ大きく損傷していた.

Photo 3.3-3

南校舎・東校舎 ・竣工:1986年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:なし

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(2) Peni小学校(No. 13,校舎数:1) 所在地:JL. Sultan Agung Palbapang Bantul 配置図:

Figure 3.3-2 ・竣工:1978年 ・構造:URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:あり ・所見:

URM壁による平屋校舎である(Photo 3.3-4).屋根組は木造であるが,妻壁および間仕切壁のみ RC造である(Photo 3.3-5).被害は小さく,腰壁脚部に水平ひび割れ,妻壁に斜めひび割れが若干観察された程度である.若干数の瓦が落下していた.

Photo 3.3-4 Photo 3.3-5

校舎

N

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(3) Bakulan小学校(No. 12,校舎数:1) 所在地:Bakulan Patalan Jetis 配置図:

Figure 3.3-3 ・竣工:1954年 ・構造:URM壁 ・階数:1 ・被災度:大破 ・詳細資料:あり ・所見: 柱型を有するが URMの平屋校舎である(Photo 3.3-6).壁は交差部で肌別れしており,妻壁の転倒の恐れがあったため(Photo 3.3-7),被災度は大破と判定した.瓦および天井の落下が数多く見られた.

Photo 3.3-6 Photo 3.3-7

校舎N

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(4) Muhammadiyah Jetis中学校(No. 11,校舎数:4) 所在地:Pulokadang Canden Jetis Bantul 配置図:

Figure 3.3-4 概要: 全 4 棟中,南校舎と東校舎は既に撤去済である.ほぼ同様の構造の北校舎と西校舎は建物方向が直交関係にあり,両者の被害程度の違いから地震動の方向性を推定し得る可能性

がある.また,本校の敷地西側には川が流れ,川との境界にある塀の沈下を確認している. 北校舎 ・竣工:1980年代 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微(屋根以外),大破(屋根) ・詳細資料:あり ・所見: 倒壊を免れた 2棟の内,屋根の損傷がより大きかった北側の校舎である(Photo 3.3-8).

RC柱に加え,梁間方向には RC梁も有する.枠組 URMの妻壁および間仕切壁は屋根を直接支持し,その他の張間では鉄骨造トラス(棟のみ木造)が屋根を支持する(Photo 3.3-9).屋根面に架けられた丸鋼のブレースは破断していた.瓦は撤去済のため地震被害は不明で

あるが,大きな損傷を受けたものと予想される.

西校舎

南校舎

東校舎

川 N

北校舎

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Photo 3.3-8 Photo 3.3-9

西校舎 ・竣工:1980年代 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微(屋根以外),小破(屋根) ・詳細資料:なし ・所見: 倒壊を免れた西側の校舎である(Photo 3.3-10).北校舎とは建物の方向が直交関係にあり,ほぼ同様の構造形式であるが,屋根組が木造である点が異なる.屋根の被害は比較的

小さく,桁行方向の袖壁の損傷がやや大きかった.RC柱の頭部 1箇所にせん断ひび割れも確認された.

Photo 3.3-10

南校舎・東校舎 ・竣工:1980年代 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:倒壊 ・詳細資料:なし

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(5) Wukirsari小学校(No. 10,校舎数:2) 所在地:Dusun Manggung RT. 04 Wukirsari Imogiri 配置図:

Figure 3.3-5 北校舎 ・竣工:建設中 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:2 ・被災度:軽微(1階),小破(2階),大破(屋根) ・詳細資料:あり ・所見:

2棟中 1棟は完全に撤去されており,倒壊を免れた 2階建校舎である(Photo 3.3-11).2階は建設途中であった模様であり,とくに 2階からは,RCフレームを施工後に URM壁を後積みしたことが伺える(Photo 3.3-12).RCフレームにひび割れは見られなかった.屋根と 2階外周の腰壁の一部がそれぞれ崩落していた.

Photo 3.3-11 Photo 3.3-12

南校舎

N

北校舎

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南校舎 ・竣工:1970年代 ・構造:URM壁 ・階数:1 ・被災度:倒壊 ・詳細資料:なし (6) Bantul II中学校(No.7,校舎数:7) 所在地:JL. Raya Bantul 配置図:

Figure 3.3-6 概要:

Yogyakarta から Bantul に向かう街道沿いの中学校である.本校の敷地北側と東側には小さな用水路が走っている. 東校舎 ・竣工:1980年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:あり ・所見: 敷地東側の用水路に沿って建つ平屋校舎である(Photo 3.3-13).RC柱脚部の仕上げの剥落,間仕切壁や腰壁のひび割れ,天井の落下や瓦のずれが見られるが,被災度は軽微であ

る.

N

北校舎

中校舎

南東校舎

用水路

東校舎

南西校舎

西校舎

北東校舎

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Photo 3.3-13

中校舎・西校舎・北東校舎・南東校舎・南西校舎 ・竣工:1976年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:なし ・所見:

RC梁が桁行方向にのみ架かり,梁上部に組積した URM壁を介して屋根組を支持している. 北校舎 ・竣工:2003年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:2 ・被災度:小破 ・詳細資料:なし ・所見:

1 階が RC フレーム+URM 壁,2 階が RC 柱+URM 壁の 2 階建校舎である.ただし,2階は増設された可能性がある.また,1階の一部がピロティとなっている.URMの妻壁にひび割れが見られるが小破程度である.

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(7) Kowen小学校(No.6,棟数:2) 所在地:Cabang Dinas P dan K KEC. Sewon 配置図:

Figure 3.3-7 校舎 ・竣工:1975年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:小破(屋根以外),大破(屋根) ・詳細資料:あり ・所見: 地震時,壁に大きな損傷が生じ,屋根全体が落下したとの報告を得たが,調査時には既

に撤去済であった(Photo 3.3-14).RC柱を有するが,柱頭間を繋ぐ梁はない.また,教室間の間仕切壁は大部分が開口であり,開口に黒板が挿入されている.壁の隅角部に肌別れ

が見られた.

Photo 3.3-14

管理棟 ・竣工:1975年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:なし ・所見:構造は校舎と類似であるが,大きな被害は見られなかった.

校舎

N管理棟

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(8) Pacar小学校(No.5,棟数:2) 所在地:Imogiri Barat KM. 9.5 Timbulharjo Sewon Bantul 配置図:

Figure 3.3-8 北校舎・西校舎 ・竣工:1977年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:倒壊 ・詳細資料:なし ・所見:

2 棟とも全壊であり,校舎内の本や家具さえ取り出せない状態であったとのことである(Photo 3.3-15).屋根組は木造で,架かり代は 20cm程度であったと考えられる.桁行方向の腰壁が基礎ごと転倒した痕跡があった(Photo 3.3-16).

Photo 3.3-15 Photo 3.3-16

北校舎

N西校舎

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(9) Wonokromo高校(No.1,棟数:6) 所在地:JL. Imogiri Timur KM. 10 Pleret Bantul 配置図:

Figure 3.3-9 南校舎 ・竣工:2003年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:2 ・被災度:小破 ・詳細資料:あり ・所見:

1階に比較的大断面の RC柱を有する 2階建校舎である(Photo 3.3-17).ただし,1階柱は建設当初の柱に増設が施された模様である.既存部と増設部の境界は構造的に接合され

ていないため,地震により肌別れしていたが,構造的な被害は軽微であった(Photo 3.3-18).また,URMの妻壁,間仕切壁,腰壁に大きな斜めひび割れが見られ,梁間方向の損傷がより顕著であった.天井の落下も多数確認された.

南校舎

N

中校舎

東校舎

西校舎

北校舎

北西校舎

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Photo 3.3-17 Photo 3.3-18

西校舎 ・竣工:2003年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:2 ・被災度:小破 ・詳細資料:なし ・所見: 南校舎と同様の構造,被害状況の校舎である.建物の方向は南校舎と直交関係にある. 中校舎 ・竣工:1980年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:あり ・所見: 本校では最も古い校舎の 1つである(Photo 3.3-19).腰壁により短柱化した柱の脚部に僅かな曲げひび割れが見られた.また,腰壁の高さ中央付近に水平ひび割れが見られた

(Photo 3.3-20).

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Photo 3.3-19 Photo 3.3-20

東校舎 ・竣工:1980年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:中破 ・詳細資料:なし ・所見: 妻壁の梁上部の URM壁が崩落していた(Photo 3.3-21).

Photo 3.3-21

北西校舎 ・竣工:1980年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:なし

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北校舎 ・竣工:2002年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:2 ・被災度:小破 ・詳細資料:なし ・所見:

RC柱の頭脚部に軽微な曲げひび割れが見られた.URM壁にもひび割れが生じていた.妻の屋根組が部分的に崩壊していた(Photo 3.3-22).

Photo 3.3-22

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(10) Putren II小学校(No.2,棟数:2) 所在地:Kauman Pleret Pleret Bantul 配置図:

Figure 3.3-10 南校舎 ・竣工:2005年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:1 ・被災度:大破 ・詳細資料:なし ・所見: 校舎は形を残すも被害は大きく,屋根が崩落していた(Photo 3.3-23).間仕切壁のない梁間スパンには RC梁が架かり,ラーメンを形成していた(Photo 3.3-24).

Photo 3.3-23 Photo 3.3-24

西校舎 ・竣工:1940年 ・構造:URM壁 ・階数:1 ・被災度:倒壊 ・詳細資料:なし

南校舎

N

西校舎

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(11) Bawuran小学校(No.4,棟数:4) 所在地:Tegalrejo Bawuran Pleret 配置図:

Figure 3.3-11 北校舎 ・竣工:1976年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:小破 ・詳細資料:あり ・所見: 全 4校舎中,倒壊を免れた 2棟の内の 1棟である(Photo 3.3-25).屋根がスレート葺で

あるため,瓦葺の建物よりも地震入力が大幅に小さいと考えられる.URM壁のせん断ひび割れ,天井の落下が確認された.

Photo 3.3-25

南校舎

東校舎

N

北校舎

西校舎

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南校舎 ・竣工:1976年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:小破 ・詳細資料:なし ・所見: 北校舎と同様の建物方向,構造,被災程度の校舎である.間仕切壁に北校舎で見られた

よりも大きなひび割れが確認された. 東校舎・西校舎 ・竣工:1976年 ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:倒壊 ・詳細資料:なし ・所見: 倒壊した 2 棟である.上記 2 棟とは建物方向が直交関係にあるが,構造は同様であった模様である. (12) Muhammadiyah Imogiri中学校(棟数:6) 所在地:JL. Raya Imogiri Bantul 配置図:

Figure 3.3-12 概要:Imogiri役場(No.8)付近に位置する生徒数 425人(12クラス)の中学校である.

南校舎

N

中校舎

西校舎

北校舎北西校舎 東校舎

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北西校舎 ・竣工:1980年代(北側 4スパン)+1990年代(南側 3スパン) ・構造:RC柱+URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微 ・詳細資料:あり ・所見: 北側4スパンがURM,南側3スパンがRC柱+URM壁の平屋校舎である(Photo 3.3-26).

RC造トラスと木造トラスが交互に屋根組を形成している(Photo 3.3-27).URM壁に小さなひび割れが見られ,瓦が一部落下していたが,軽微な損傷である.

Photo 3.3-26 Photo 3.3-27

中校舎 ・竣工:1970年代 ・構造:URM壁 ・階数:1 ・被災度:軽微(屋根以外),中破(屋根) ・詳細資料:なし ・所見: 仕上げモルタルの落下,瓦の落下が確認された.瓦の落下に伴い,天井も多数破損して

いた. 北校舎 ・竣工:1980年代 ・構造:不明 ・階数:1 ・被災度:軽微(屋根以外),小破(屋根) ・詳細資料:なし ・所見:外観からは RC柱の有無を判断できなかった.天井および瓦の落下が見られた.

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南校舎 ・竣工:2000年 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:1 ・被災度:中破 ・詳細資料:なし ・所見:

URM 壁の大規模な補修工事が進められていたことから(Photo 3.3-28),比較的大きなせん断ひび割れが生じていた模様である.その他,RC柱の頭脚部の曲げひび割れ,被りコンクリートの剥落,鉄筋の露出などが確認された.

Photo 3.3-28

東校舎 ・竣工:1980年代 ・構造:RCフレーム+URM壁 ・階数:3 ・被災度:軽微(屋根以外),大破(屋根) ・詳細資料:なし ・所見: 今回調査した学校では唯一の 3 階建校舎である(Photo 3.3-29).URM 壁にせん断ひび割れや仕上げモルタルの落下が見られた.調査時には瓦の落下は確認されなかったが,最

上階の天井が多数落下しており,また瓦が部分的に真新しかったことから,瓦を積み直し

た可能性が高い.本校の他の校舎より明らかに屋根の被害が大きく,上階の応答加速度が

増幅されたことが伺える.

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Photo 3.3-29

西校舎 ・竣工:1980年代 ・構造:不明 ・階数:1 ・被災度:軽微(屋根以外),小破(屋根) ・詳細資料:なし ・所見: 外観からは RC柱の有無を判断できなかった.URM壁の小さなひび割れ,天井の落下が

見られた.

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3.3.2 被害の傾向 以上の調査により得られた資料から,被災地域の学校校舎の特徴,被害の傾向などにつ

いて統計的に検討する. Figure 3.3-13には調査建物の建設年代別,構造別の分布を示す.ただし,複数の年代に渡って建設された校舎(Muhammadiyah Imogiri中学校の北西校舎)は除いている.円グラフに沿う数字は建物棟数を指すが,調査建物は 1970,1980年代に建設されたものがそれぞれ 1/3 以上を占め,1960,1990 年代建設のものは得られていないことを示している.Figure 3.3-14には建設年代別の構造形式の分布を示すが,古くはURMが用いられ,1970,1980 年代に RC 柱+URM が台頭し,現在では RC フレーム+URM が建設されるという技術の変遷を明瞭に示す結果となった.従って,校舎の被害は古いものほど顕著であること

が予想される.そこで,Figure 3.3-14,3.3-15では建設年代別および構造形式別の被災度分布を示した.ただし,先の被害状況では,校舎の被災度を一部構造要素別に判定してい

るため,複数の判定が得られている場合は大きい方の被災度を採用することとした(例:

軽微(屋根以外),大破(屋根) 大破).上記の予想とは異なり,建設年代および構造形

式と被災度の間に明瞭な関係は捉えられないことがわかる.これは,RC部材のディテール,URM壁の脆弱性,屋根の構造など種々の要因の結果と判断されるが,とくに最も新しく比較的耐震性に優れると考えられる RC フレーム+URM が倒壊こそ免れたものの大きく被災した現実は,今後の震災復旧を考える上でも慎重な議論が必要であろうことを指摘してい

る. また,Figure 3.3-17では地震動入力の方向性について検討するため,校舎の桁行方向別(南北と東西について比較)の被災度分布を示したが,両者には明瞭な関係は得られなか

った.そこで,Figure 3.3-18では断層近傍のみの学校(No.1,2,4,8,10)を対象に同様の比較を試みた.その結果,断層近傍では南北方向が桁行となる場合に若干被害が大き

くなる傾向が得られた.ただし,これらは建物の耐震性能の個体差を考慮していない統計

結果であるため,今後はとくに詳細資料が得られて建物の性能を評価し,より厳密なかた

ちでの考察を加える計画である.

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1 1 0

16

15

0

7

1940's

1950's

1960's

1970's

1980's

1990's

2000's

Figure 3.3-13 Distribution of construction age

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1940's

1950's

1960's

1970's

1980's

1990's

2000's

URM

RC Column+URM

RC Frame+URM

Unknown

Figure 3.3-14 Distributions of structural systems

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0% 20% 40% 60% 80% 100%

1940's

1950's

1960's

1970's

1980's

1990's

2000's

I

II

III

IV

V

Figure 3.3-15 Damage distributions vs construction ages

0% 20% 40% 60% 80% 100%

URM

RC Column+URM

RC Frame+URM

I

II

III

IV

V

Figure 3.3-16 Damage distributions vs. structural systems

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0% 20% 40% 60% 80% 100%

E-W

N-S

I

II

III

IV

V

Figure 3.3-17 Directivity of the damage distributions of all buildings

0% 20% 40% 60% 80% 100%

E-W

N-S

I

II

III

IV

V

Figure 3.3-18 Directivity of the damage distributions of buildings near the fault

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3.4 周辺地域における一般家屋被害率 3.4.1 調査手順と被害状況

(1) 調査対象区域と方法 3.1節で示した調査地域公共建築物周辺の一般家屋の被害率を調査した。調査区域は詳細調査を行なった公共施設を含むまたは隣接する一辺がおよそ100~500m程の住宅地とした。調査時間にして 1時間~1.5時間以内に 2名の調査員とガイドが一組となって調査できる範囲である。調査は目視での確認作業を基本としたが,全壊した家屋の数などがはっきりし

ない場合には,Figure 3.4-1に示すように聞取り調査を行った。尚,本節において写真のキャプション中に○で囲まれた数字は,調査地域番号を示す。 また,周辺集落の建物用途が商業施設を主とする場合,当該区画の被害率調査のほか,

近隣で一般住宅を中心とした集落を対象とした被害率調査を併せて行った。この結果詳細

は,ここでは触れない。

(a)手前は案内役の Haris氏(②) (b) 左から Haris氏と地元学生(⑪)

Figure 3.4-1 案内を通じて行なわれた聞取り調査の様子

(2) 典型的な家屋構造形式

調査対象区域で典型的な家屋構造を Figure 3.4-2 に示す。調査した中でもほとんどの家屋は,(a)に示す無筋レンガ組積壁,木造屋根組み,瓦屋根の組合わせである。無筋レンガ壁は,以前 2層から 3層の厚みを持っていたが,ここ 10年ほどは材料節約のため 1層となっていることがほとんどである。また,目地には,レンガを細かく砕いた粉(ブリックパ

ウダー),砂,石灰に水を混ぜた材料(地元では,Bligonと呼ばれる)を使用しており,セメントを使用しないために強度がかなり低く,ブロックを手ではがすことも十分可能であ

る。無筋レンガ壁は,単体のこともあるが,家屋の隅角部などに 100 ㎜角程度の RC 造柱を配することもある。この柱は,φ6鉄筋4本を主筋とし,同じくφ6鉄筋を 200㎜間隔程度でせん断補強筋として配している。(a)においても,この RC 柱だけが残っている様子がわかる。また,屋根組みは,木造トラスを壁上部に定着無しで置いている場合が多く,壁

の面外変形を留める事は期待できない。屋根の瓦は,屋根組みの垂木上に定着無しで並べ

られている。瓦同士も連結されておらず,天井をはらないことが多い一般家屋では,地震

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時に瓦が居室内に降ってきた模様である。Figure 3.4-3には,典型的な屋根構造とその被害例を示す。 次に典型的な家屋構造形式は,Figure 3.4-2(b)に示す竹造住宅である。竹造骨組みに,竹を編んだ壁を取り付けている。屋根は,無筋レンガ組積造と同じ形式の木造トラスに瓦を

おいたものである。変形能力が過大で損傷の有無がはっきりしないため,集計結果からは

外している。

(a) 無筋レンガ組積造(⑤) (b) 竹造骨組と瓦屋根(⑭)

Figure 3.4-2 典型的な家屋の構造形式

(a) 一般家屋の屋根構造(⑬) (b) 瓦が崩落したが,躯体は無被害(①)

(c) 屋根瓦と壁の崩落(⑥) (d) 屋根瓦の崩落(⑪)

Figure 3.4-3 屋根の構造と被害例

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数は多くないものの,Figure 3.4-4に示すような無筋コンクリートブロックを用いた組積造も数例遭遇した。レンガの代わりにコンクリートブロックを用いているものの,その他

の構造は無筋レンガ組積造と変わらない。(a)に示すように無被害である場合もあるが,面外変形には極端に弱く(b)に示すように RC 柱を残してブロックが崩落している例が見られた。

(a) ほぼ無被害の家屋(⑦) (b) RC柱を残してブロックが崩落(⑭)

Figure 3.4-4 無筋コンクリートブロック組積造の被害例 (3) 破壊形式の分類法 組積造家屋の損傷を,以下の 3段階に分類した。

• 全 壊:屋根・鉛直部材ともに大破または崩壊した状態。(Figure 3.4-3(c),Figure

3.4-5等)

• 半 壊:屋根または鉛直部材の一部が大破または崩壊しているが,架構の形態は

保っている状態。(Figure 3.4-3(b)等)

• 無被害:無損傷あるいは軽微な損傷で即時復旧可能な状態。(Figure 3.4-2(b),Figure

3.4-4(a)等)

(a) Kowen小学校近郊(⑥) (b) Pacar小学校近郊(⑤)

Figure 3.4-5 無筋ブロック組積造の全壊例

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(4) 被害の状況 統計結果は次項以下に詳細を記すが,ここでは調査を行なった区域における特徴をまと

めて記す。Figure 3.4-6は,隣合う家屋で被害状況が大きく異なる例を①,⑤,⑦の 3地域で比較したものである。無被害の建物は,フェンスと玄関を有するなど比較的裕福に見受

けられる。これに対して大きな被害を受けた隣家は家の構えなどが明らかに異なっている。

聞き取り調査によると,貧富の差によって使用材料や施工方法が大きく異なる場合があり,

被害程度が異なる原因の一つとなっているようであった。

(a) 無被害住宅(①) (b) 屋根と壁が落ちた住宅(①)

(c) 無被害家屋(⑤) (d) 原形を留めないほど損傷した家屋(⑤)

(e) 無被害家屋(⑦) (f) 屋根と壁が落ちた住宅(⑦)

Figure 3.4-6 同一区域において,隣り合う家屋の被害程度が大きく異なる例

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使用材料や施工方法が建物被害に与える影響は,調査地域②において最も顕著に観察さ

れた。②で詳細調査を行なった Putren小学校に隣接するのは商店街であり,その周囲に農村が広がっている。農村における一般家屋の被害率は 97%を超えているが,Figure 3.4-7に示すように商店街の被害はこれと大きく異なっており,無被害または軽微な被害建物が

半数を超えていた。裕福な商店街では良い材料を用いて専門業者が施工を行なうことが多

く,その結果大きな被害を免れた場合が多い。これに対して,農村部では最低限の材料を

用いて家族や友人で施工することが多く,その結果甚大な被害が生じた可能性がある。

(a) 家具販売店(②) (b) 雑貨店(②)

(c) 病院(②) (d) 医師住宅(②)

Figure 3.4-7 一般家屋の全壊率が 97%である Putren小学校(②)周辺の店舗区域では,全壊率 27%半壊率 21%と被害が住宅地域に比べて低い

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3.4.2 調査地域被害率の地理的傾向 本節では,3.4.1 項に示した調査結果の地理的な傾向を示す。調査地域は,断層におよそ

直交する東西方向 2 通り(南ラインと北ライン)で表される。南ラインおよび北ラインに

沿った調査地域の家屋被害率の変遷を Figure 3.4-8に示す。なお,各地域における詳細情報

は Table 3.4-1に示す通りである。Figure 3.4-8では,前節で「全壊」に分類された建物を赤

色,「半壊」に分類された建物を黄色,「無被害」に分類された建物を緑色で表している。

Figure 3.4-8より,大まかな傾向として,断層に近いほど無被害に類された建物の率が減少

し,全壊に分類された建物の率が増加していることが分かる。

ただし,調査地域①および⑧の被害率は,断層線直交方向の調査地域ライン上に見られ

る被害率の増減傾向から僅かにはずれ,全壊率が相対的にやや低くなっている。①および

⑧の調査地域は,幹線道路沿いに商店が立ち並ぶ地域が近接した住宅街(集落)であった

という共通点を持っていることから,地理的な被害率傾向を断層線からの距離だけで単純

に比較できない原因(貧富の差など)に基づく影響が特異的に現れているものと考えられ

る。実際に,Figure 3.4-9は UNOSAT衛星写真から推定された被害が甚大な地域を表してい

るが,必ずしもある線に沿って距離に比例/反比例するような被害程度分布にはなってい

ない。

この Figure 3.4-9に,本調査チームの調査地域および被害率グラフを重ねて示したものが

Figure 3.4-10である。Figure 3.4-10より,UNOSAT衛星写真から推定された被害が Damage

Areaに分類されていない地域および“Limited Damage Area(黄色)”に分類されている地域

では本調査チームの調査結果による全壊率が 60%以下であるのに対し,“Moderate Damage

Area(橙色)”および“Extensive Damage Area(赤色)”では本調査チームの調査結果による

全壊率が 80%を超えている。また,本調査チームが被害率の調査対象とした一般住宅の被

害率においては,UNOSAT 衛星写真から推定された“Moderate Damage Area(橙色)”と

“Extensive Damage Area(赤色)”とに有意な差は無く,いずれの箇所でも壊滅的な被害を

受けた集落を目にすることとなった。

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Figure 3.4-8 断層線(黒点線)直交方向に並べた調査地域の被害率

Table 3.4-1 一般家屋の被害調査結果

全壊 半壊 無被害 総計 全壊 半壊 無被害⑦ 15 3 4 22 68 14 18 Bantoul第2小学校⑥ 7 3 5 15 47 20 33 Kowen小学校⑤ 58 1 1 60 97 2 2 Pacar小学校① 13 3 2 18 72 17 11 ManWonukromo高校② 67 2 1 70 96 3 1 Putren小学校④ 47 1 1 49 96 2 2 Bawuran小学校⑭ 5 1 7 13 38 8 54 Pandak中学高⑬ 16 3 9 28 57 11 32 Peni小学校⑫ 5 1 7 13 38 8 54 Baklan小学校① 15 1 1 17 88 6 6 MuhammadiyahJetis中学校⑧ 7 5 1 13 54 38 8 Imogiri役場⑩ 15 2 2 19 79 11 11 Wukirsari小学校

270 26 41 337 80 8 12

備考:詳細調査対象建物名

合計

累計(戸数) 百分率(%)

北ライン

南ライン

調査位置

地域

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Figure 3.4-9 UNOSAT衛星写真から推定された被害地域(震源位置は USGSによる)(http://unosat.web.cern.ch/unosat/asp/)

Figure 3.4-10 UNOSATからの被害推定と調査地域の被害率

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3.4.3 ガジャマダ大学(UGM)による公共建築物の応急危険度判定結果との関係 本調査チームの被害率調査結果をより広い視点から検討するにあたり,今回の調査に協

力をお願いしたガジャマダ大学(UGM)の調査グループより提供していただいた被害調査

速報(Rapid Assessment Result Teknik Sipil UGM)による被害率分布を,参照として紹介する。

本調査チームが調査した箇所は,BANTUL県 PANDAK郡,同県 BANTUL郡,同県 JETIS

郡,同県 IMOGIRI郡,同県 SEWON郡,同県 PLERET郡に含まれている(Figure 3.4-11)。

これら 6つの郡について,ガジャマダ大学(UGM)の被害調査速報による被害率分布を「学

校建物」と「学校建物以外」に分けて示すと Table 3.4-2および Table 3.4-3のようになる。

Figure 3.4-11 調査地域が含まれる郡の名称

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Table 3.4-2 ガジャマダ大学の被害調査速報による学校建物の被害率

使用可能(緑色) 要注意(黄色) 危険(赤) 総計

建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率

PANDAK 15 65.2% 7 30.4% 1 4.4% 23 100%

BANTUL 17 33.3% 20 39.2% 14 27.5% 51 100%

SEWON 0 0% 4 66.7% 2 33.3% 6 100%

JETIS 1 100% 0 0% 0 0% 1 100%

IMOGIRI 2 10.5% 5 26.3% 12 63.2% 19 100%

PLERET 2 15.4% 8 61.5% 3 23.1% 13 100%

Table 3.4-3 ガジャマダ大学の被害調査速報による学校以外の建物の被害率

使用可能(緑色) 要注意(黄色) 危険(赤) 総計

建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率 建物数 比率

PANDAK 11 42.3% 8 30.8% 7 26.9% 26 100%

BANTUL 22 40.0% 21 38.2% 12 21.8% 55 100%

SEWON 1 20.0% 2 40.0% 2 40.0% 5 100%

JETIS 1 25.0% 3 75.0% 0 0% 4 100%

IMOGIRI 3 27.3% 1 9.1% 7 63.6% 11 100%

PLERET 0 0% 1 50.0% 1 50.0% 2 100%

ちなみに Table 3.4-2および Table 3.4-3の被害程度の分類は,応急危険度判定のように「危

険(赤色)」「要注意(黄色)」「使用可能(緑色)」で判定されている。被害速報という性質

上,調査建物数の総計が 1 桁の地域も数多くあり,このデータを元に言及できる内容は殆

ど無いと言わざるを得ないが,比較的調査建物数の多い地域である BANTUL郡,PANDAK

郡,IMOGIRI郡の調査データを参照すると,Figure 3.4-12に示したグラフのようになり,断

層に近い郡のほうが「危険(赤)」と判定された建物が多いこと,学校建物を特別に耐震性

を持たせて建設しているわけではないことが読み取れる。

被害程度の判定基準が異なることや,調査地域のサンプリングが郡全体の被害程度を表

すのに適切でない可能性を考えると,本調査チームによる一般住宅の被害率調査結果

(Figure 3.4-8)とガジャマダ大学による応急危険度判定結果(Figure 3.4-12)を単純には比

較できない。それでも敢えて比較するならば,本調査チームによって「全壊」と判定され

た率が,ガジャマダ大学による応急危険度判定で「危険(赤色)」と判定された率よりも,

総じて高いことが指摘できる。その原因として,優先的に応急危険度判定がなされる箇所

は幹線道路沿いなど街区の要衝付近であった可能性が高く,またそのような地域は,調査

地域⑦の Bantul 通り沿いあるいは調査地域②の北部商店街の被害率に見られるように,比

較的健全な建築物の多い集落であるために,幹線道路から奥に入った一般住宅の集落を中

心に調査した本調査チームの被害率よりも,被害程度の小さい建物が多い結果となったの

ではないかと推察される。

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Figure 3.4-12 ガジャマダ大学の被害調査速報による応急危険度判定結果の例

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4.おわりに 未完

謝 辞 未完

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付録1 レンガ壁目地の強度試験結果

レンガ壁の破壊は、目地部の破壊により支配されることが多いので、壁耐力を評価する

ためには目地部の強度を把握する必要がある。そこで、調査した学校で、実際に被災した

レンガ壁の一部を使用して、レンガ壁の目地強度試験を行った。

試験対象のレンガ壁

試験の対象とした壁は、出来るだけ学校校舎の壁を対象としたが、被害が小さく壁の破

壊試験をすることができない場合や、逆に倒壊してすでに撤去済みの場合などは、学校敷

地の塀や周辺の住宅の壁などを対象とした。

強度試験項目

強度試験は、�せん断強度、�引張強度、および�静止摩擦力の 3項目について行った。

試験方法と測定方法

試験は、レンガ 1 枚分を対象とし、レンガ側面の仕上げモルタル及び下面以外の目地を

取り除き、レンガに巻きつけた針金をデジタル式の秤(最大荷重 50kgf、計測単位 0.05kgf)

を用いて人力で引張ることで行った。Figure 3.A-1に示すように、レンガを水平方向に引張

りせん断強度を調べた。せん断強度 τsは、目視による秤の最大荷重 Tから以下で換算した。

blT

s =τ

ここで、b:レンガの幅、l:レンガの長さ

引張試験は、Figure 3.A-2に示すように、下面のみの目地を残したレンガの一端に針金を

巻きつけて鉛直方向に引張破壊させた。引張強度σt は、三角形の引張応力度分布を仮定し

て秤の最大荷重 Tから以下で換算した。

blT

t3=σ

また、せん断・引張試験で破壊したレンガを再度元の位置において、レンガの自重のみが

作用した状態で水平に引張り、静止摩擦力および静摩擦係数μを求めた。静摩擦係数μは、

秤で計測した最大荷重 Tとレンガの重量 Wから以下で求めた。

WT=μ

試験結果

強度試験は、12地点調査した学校のうち 8地点で行い、合計 28個の試料について行った。

レンガの形状、質量などの一覧を Table 3.A-1に示す。レンガの寸法は、幅 Bが 100~120mm、

長さ Lが 200~240mm、厚さ Dが 35~50mmの範囲に分布しており、比重を測定した 11枚

の平均が 1.62、標準偏差 0.25であった。また、試験結果を Table 3.A-2に示す。

①せん断強度

せん断強度については、21体の資料について試験を行い、15体は破壊して強度が得られ

たが、6体は人力では破壊しなかった。破壊した資料の目地のせん断強度は、ほぼ 0.01MPa

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以下と非常に低く、平均値 0.0055MPa、標準偏差 0.0029MPa であった。このように、調査

した範囲の目地のせん断強度は極めて低いものが多く含まれ、またばらつきも大きい。こ

れは、目地に使用する材料にセメントがあまり用いられず、代わりに石灰石を用いている

ことや、材料の調合も現場によってばらつきが大きいことなどによると思われる。

②引張強度

引張強度については、10体の資料について試験を行い、8体は破壊し、2体は破壊しなか

った。破壊した資料の引張強度は、0.003MPa~0.012MPaの範囲にばらついており、平均値

0.0087MPa、標準偏差 0.0042MPaとせん断強度同様に、非常に低くばらつきも大きかった。

③静止摩擦力および摩擦係数

摩擦強度については、18体の資料について試験を行い、重量が不明の 1体(No.14)を除

く 17 体について、目地面での静止摩擦係数μを求めた。静止摩擦係数μは、0.6~1.3 程度

の範囲に分布しており、平均値 0.89、標準偏差 0.27 で、せん断強度や引張強度比較すると

ばらつきは小さかった。

T

Figure 3.A-1 Apparatus of shear and friction test

T

Figure 3.A-2 Apparatus of tensile test

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Photo 3.A-1 View of test of joint mortar in brick wall

Table 3.A-1 List of specimens

Site 部位 資料 No B (mm) L (mm) D (mm)

質量 (kg)

比重

1 110 220 1.95 2 105 225 1.45 SD Peni 学校敷地の塀 3 105 220 1.75 4 115 215 1.9 5 115 250 3 6 115 250 1.75 7 115 240 8 110 255

SD Bakulan 学校敷地の塀

9 110 155 10 110 240 11 110 240

SMP Muhammadiyah Jetis

解体済みの校舎の一部 12 110 240

13 115 240 14 110 240 SD Wukirsari 学校敷地の塀 15 120 250 1.35 16 120 250 50 17 115 240 35 18 110 230 40 1.7 1.7 SD Kowen 解体済みの校

舎の一部 19 110 240 35 1.4 1.5 20 100 200 45 1.05 1.2 SD Pacar 解体済みの校

舎の一部 21 95 200 35 1.1 1.7 22 110 220 35 1.4 1.7 23 110 225 45 1.5 1.3 24 110 230 40 2.15 2.1 25 110 230 40 1.55 1.5

Man Wonokromo Bantul

学校近くの住宅の壁

26 105 220 40 1.55 1.7 27 120 250 50 2.4 1.6 SD Bawuran 学校敷地の塀 28 110 120 40 1 1.9

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Table 3.A-2 Test results

※は、破壊しなかった試料で確認した最大荷重(したがって、強度はこの数値以上あることを確認)

Shear Tension Friction 資料No T (kgf) T (N) τs

(MPa) T (kgf) T (N) σT (MPa) T (kgf) T (N) τ (MPa) μ

1 18 176 0.0073 1.5 15 0.0006 0.77 2 13.5 132 0.0056 3 5.8 57 0.0025 1 10 0.0004 0.57 4 4.5 44 0.0018 1.5 15 0.0006 0.79 5 7.8 76 0.0027 2 20 0.0007 0.67 6 25.5 250 0.0087 2 20 0.0007 1.14 7 11.6 114 0.0124 8 12 118 0.0126 9 ※ 32 314 0.0184

10 ※ 32 314 0.0119 11 ※ 39 382 0.0145 12 ※ 33 323 0.0123 13 11.8 116 0.0042 14 17.9 175 0.0066 2.25 22 0.0008 15 9.5 93 0.0031 1.6 16 0.0005 1.19 16 ※ 32 314 0.0105 17 8.4 82 0.0030 18 3.8 37 0.0015 1.3 13 0.0005 0.76 19 12.7 124 0.0047 1.8 18 0.0007 1.29 20 ※ 38 372 0.0186 7.5 74 0.0037 0.8 8 0.0004 0.76 21 ※ 36 353 0.0186 20.9 205 0.0108 1 10 0.0005 0.91 22 21.8 214 0.0088 1.1 11 0.0004 0.79 23 ※ 32 314 0.0127 10.9 107 0.0129 1.25 12 0.0005 0.83 24 18.7 183 0.0072 3.3 32 0.0013 1.53 25 20.5 201 0.0079 1.65 16 0.0006 1.06 26 21.4 210 0.0091 1.2 12 0.0005 0.77 27 33 323 0.0108 2 20 0.0007 0.83 28 5.6 55 0.0042 0.5 5 0.0004 0.50