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- 1/4 - 2007.6.1 混構造の木造、RC部分の構造計算について これまで、1階WRC造、2~3階木造の確認申請については、2~3階の木造部分は、軸組計算による筋 交いを配置し、1階WRC造部分は構造計算するか、札幌市の「壁式鉄筋コンクリート造と木造を併用する建 築物の取り扱いについて」に準じてWRC造部分の配筋を決定していました。(一部の特定行政庁を除く) 今回の建築基準法の改正により、省令第1条の3による設計図書の省略できる旨の規定が廃止されるこ と、昭和55年建設省告示第1790号(特定建築物の規定)が全面改定され、平成19年5月18日に公布さ れた新告示第593号(第4号)により、木造部分、RC(WRC)造部分ともルート2相当の構造計算書 (剛性 率、偏心率の確認を含む) の添付が必要と規定されました。 このため、平成19年6月20日以降の申請から、1階RC(WRC)造、2~3階木造の建築物の構造計算は 次のとおりとなります。 なお、木造部分の計算は、下記の「木造部分の許容応力度等計算の概要」を参照してください。 また、RC(WRC)造部分の許容応力度等計算は、各設計施工指針等を参考としてください。 *文中のP○○は、特記がない場合には「3階建混構造住宅の構造設計の手引き」(発行(財)日本 住宅・木材センター:平成17年1月)の該当ページを参照してください。 *上記手引きは、告示改正前のものであるため、RC(WRC)造部分のルート1の判別式を満たした 建築物は、許容応力度計算のみで終了していますが、法改正後は、木造、RC(WRC)造部分とも ルート2ー1相当の構造計算が必要となります。 混構造(1階RC(WRC)造、2~3階木造)の構造計算の概要 対象建築物(新告示第593号(第4号)) ・ 地階を除く階数が2又は3であり、かつ、1階部分を鉄筋コンクリート造とし、2階以上の部分を 木造としたもの ・ 高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの ・ 延べ面積が500平方メートル以内であるもの 構造計算の概要 : 新告示第4号 RC造(WRC造を除く)部分のルート判別 2.5Aw +∑ 0.7Ac 0.75 Z W Ai ・β (今回の改正により表現が変更 2.5 α Aw +∑ 0.7 α Ac 0.75 Z W Ai 以下同様) ルート2-1相当の壁量の確認 ①′WRC造部分のルート判別 2.5Aw +∑ 0.7Ac Z W Ai ・β ルート1相当の壁量の確認 (今回の改正告示では、RC造と同様に規定されているが、平成 13 年告示1026号「壁式鉄筋 コンクリート造の技術的基準」によりWRCの場合は、ルート1の壁量が必要となる。) *新告示により木造部分、RC(WRC)造部分ともルート2ー1相当の構造計算が必要となる 木造部分の軸組計算 木造部分の許容応力度等計算 (2階以上の剛性率(6/10以上)、2、3階の偏心率(15/100以下)の確認を含む) RC(WRC)造部分の許容応力度等計算 (1階の偏心率(15/100以下)の確認を含む) 上記、①~④のすべてを満たさない場合は、構造計算適合性判定の対象となります。

2007.6.1 混構造の木造、RC部分の構造計算につ …⑩ 層間変形角(γ)及び剛性率(Rs)の算定 P254 軸組工法で主要な耐力壁が筋かいの場合(算定の条件あり)

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2007.6.1

混構造の木造、RC部分の構造計算について

これまで、1階WRC造、2~3階木造の確認申請については、2~3階の木造部分は、軸組計算による筋

交いを配置し、1階WRC造部分は構造計算するか、札幌市の「壁式鉄筋コンクリート造と木造を併用する建

築物の取り扱いについて」に準じてWRC造部分の配筋を決定していました。(一部の特定行政庁を除く)

今回の建築基準法の改正により、省令第1条の3による設計図書の省略できる旨の規定が廃止されるこ

と、昭和55年建設省告示第1790号(特定建築物の規定)が全面改定され、平成19年5月18日に公布さ

れた新告示第593号(第4号)により、木造部分、RC(WRC)造部分ともルート2相当の構造計算書 (剛性

率、偏心率の確認を含む) の添付が必要と規定されました。

このため、平成19年6月20日以降の申請から、1階RC(WRC)造、2~3階木造の建築物の構造計算は

次のとおりとなります。

なお、木造部分の計算は、下記の「木造部分の許容応力度等計算の概要」を参照してください。

また、RC(WRC)造部分の許容応力度等計算は、各設計施工指針等を参考としてください。

*文中のP○○は、特記がない場合には「3階建混構造住宅の構造設計の手引き」(発行(財)日本

住宅・木材センター:平成17年1月)の該当ページを参照してください。

*上記手引きは、告示改正前のものであるため、RC(WRC)造部分のルート1の判別式を満たした

建築物は、許容応力度計算のみで終了していますが、法改正後は、木造、RC(WRC)造部分とも

ルート2ー1相当の構造計算が必要となります。

○ 混構造(1階RC(WRC)造、2~3階木造)の構造計算の概要

対象建築物(新告示第593号(第4号))

・ 地階を除く階数が2又は3であり、かつ、1階部分を鉄筋コンクリート造とし、2階以上の部分を

木造としたもの

・ 高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの

・ 延べ面積が500平方メートル以内であるもの

構造計算の概要 : 新告示第4号

① RC造(WRC造を除く)部分のルート判別 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ 0.75 Z ・W ・ Ai ・β(今回の改正により表現が変更 ∑ 2.5α Aw+∑ 0.7α Ac≧ 0.75 Z ・W ・ Ai 以下同様)

ルート2-1相当の壁量の確認

①′WRC造部分のルート判別 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ Z ・W ・ Ai ・βルート1相当の壁量の確認

(今回の改正告示では、RC造と同様に規定されているが、平成 13年告示1026号「壁式鉄筋コンクリート造の技術的基準」によりWRCの場合は、ルート1の壁量が必要となる。)

*新告示により木造部分、RC(WRC)造部分ともルート2ー1相当の構造計算が必要となる

② 木造部分の軸組計算

③ 木造部分の許容応力度等計算

(2階以上の剛性率(6/10以上)、2、3階の偏心率(15/100以下)の確認を含む)

④ RC(WRC)造部分の許容応力度等計算

(1階の偏心率(15/100以下)の確認を含む)

上記、①~④のすべてを満たさない場合は、構造計算適合性判定の対象となります。

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木造部分の許容応力度等計算の概要 :1ページ①②③の内容と該当ページ P191~

① 仮定荷重、積雪荷重、風圧力、地震力の算定 P202

*地震力算定のための各階の重量は、1階部分の重量(W1)が、2階部分の重量(W2)の

2倍を超える場合、2階及び3階のA iの算出は、1階部分の重量(W1’)を2階部分の重量の2倍(2×W2)とみなして計算する。

なお、1階部分の地震力は、上記の計算による地震力に、1階部分の残りの重量

(W1’’=W1-2×W2)単独の地震力を加えたものとする。 P14 図1-8

② 令第46条による壁量計算

③ 耐力壁の配置

壁の許容せん断力(Pa)は、以下の式により求める。 P41

Pa=[当該壁の壁倍率]×Po×L

Po : 基準耐力( 1.96 kN/ m ) L : 壁の実長( m )(加力方向ごとの詳細な計算を省略するために、一定のルールが有り、ルールの範囲内で

耐力壁を配置することで、令46条の壁倍率に 1.96を乗じた許容せん断耐力を用いた一方向のみの計算で良いこととされている。)

地震力から求まる必要壁量( m )は、各階の地震力を 1.96 で割ることにより求められる。 P202

( EQi/ 1.96= 23.3mだと、壁倍率 2倍の壁だと 12m、壁倍率 3倍の壁だと 8mの長さが必要)

④ 1階RC部分の壁量柱量の検討(適合性判定の対象外となるための要件) P207

RC造(WRC造を除く)部分 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ 0.75 Z ・W ・ Ai ・β ルート2-1相当の壁量の確認

WRC造部分 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ Z ・W ・ Ai ・β ルート1相当の壁量の確認

⑤ 柱軸力(断面算定の対象とする一部のみ算出も可能)

⑥ 偏心率とねじれ補正(木造部分) P212

重心の計算は、2階3階とも整形である場合、重心は図心とできる。

整形でない場合は、⑤の柱軸力により重心を算出する必要がある。

偏心距離とねじり剛性から2階3階の偏心率が0.15以下であることを確認する。 P214

⑦ 耐力壁量の検討(ねじり補正による検討) P216

⑧ 耐力壁の応力 P216

壁の許容せん断力(Pa: 1.96 kN/ m )により求める。壁の両端の柱に生ずる引き抜き力をVとすると、V= 1.96×壁倍率×H×BH:壁の高さ

B:周辺部材の押さえ効果による係数 出隅柱 0.8 その他 0.5 (ただし圧縮時はBはみない)

木造部分の設計、通りごとのアンカーボルトの必要本数算出のため全フレームの算出が必要

⑨ 木造部分の設計 P220

必要に応じて最大耐力部分を検討 柱(めりこみの検討を含む)、梁、小梁等

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⑩ 層間変形角(γ)及び剛性率(Rs)の算定 P254

軸組工法で主要な耐力壁が筋かいの場合(算定の条件あり) P44

γ=( 1/120 )×(当該階に作用する水平力/当該階の壁の許容耐力の総和)Rs=rs /rs rs:各階の層間変形角γの逆数 rs:当該建築物についてのrsの相加平均

⑪ 接合部の検討 P224

平成12年告示1460号による継手・仕口の仕様は、平屋部分又は2階部分、2階建ての1階部分の

筋かいの種類、仕口に応じた緊結方法の規定であるため、基本的には3階建てには適用できないが、

下記のとおり告示の仕様は、③の基準耐力と同様の許容せん断耐力(1.96 kN/ m )により各階の仕口を算定しているため、ほとんど問題ないと思われるが、確認のため接合部の検討が必要となる。

改正建築基準法の構造関係規定の技術的背景 (平成13年3月:ぎょうせい発行)

P194 抜粋

各柱について、張り間、桁行きの各方向について、次式の値を求め、その大きな方の値に

応じて、講習会テキストの表3に掲げる仕口とすれば良いこととなっている。平成12年建告第

1460号の表も、もともとはこれらの式に基づいて作られている。

( a )平屋部分の柱又は2階建て部分の2階の柱の場合N=A1×B1-L (詳細は略)

( b )2階建て部分における1階の柱の場合N=A1×B1+A2×B2-L (詳細は略)

この式の考え方は3階建て木造住宅の構造計算法に類似しており、倍率1の耐力壁1mの

許容せん断耐力 1.96 kN 、階高 2.7m と仮定して、引き抜き力を算出する式に基づいているが簡単のためにその両辺を 1.96× 2.7で除した結果である。

⑫ アンカーボルトの検討 P226

⑧耐力壁の応力で求めた2階床部分の通りごとの地震力により必要本数を算出する。

*留意事項

上記の設計は、木造軸組工法の設計について記載していますが、枠組壁工法の耐力壁の倍率も

木造軸組工法と同様に壁の許容せん断力(Pa: 1.96 kN/ m )を想定していますので参考としてください。

なお、枠組壁工法の層間変形角は壁の許容せん断力に対して1/150と設定されていますので

⑩の層間変形角の式は( 1/150 )×(当該階に作用する水平力/当該階の壁の許容耐力の総和)となります。

WRC(RC)部分の許容応力度等計算 :1ページ④の内容 P227~

① RC(WRC)造部分の設計

2、3階部分の均し荷重を算定し、設計用荷重を算出し、許容応力度等計算をする。

1階の偏心率(15/100以下)の確認 P255

② 2次部材および基礎の設計

RC(WRC)造部分の許容応力度等計算の詳細については、各設計施工指針等を参考としてください。

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追 加 説 明

対象建築物(新告示第593号(第4号))

・ 地階を除く階数が2又は3であり、かつ、1階部分を鉄筋コンクリート造とし、2階以上の部分を

木造としたもの

地階は、建築基準法上、施行令第1条に規定する地階が対象となるため、RC部分が地階に

該当する場合は、新告示第593号(第4号)の対象とはならず、新告示第3号の扱いとなる。

・ 高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの

・ 延べ面積が500平方メートル以内であるもの

延べ面積が500平方メートルを超える場合は、適合性判定の対象となり、構造計算は、許容

応力度等計算(ルート2)が必要となる。この場合、構造計算の概要で示した構造計算に加え、

1階部分の剛性率も基準値を満足しなければ、保有水平耐力計算または限界耐力計算により

安全を確認することとなる。

構造計算の概要 : 新告示第4号

① RC造(WRC造を除く)部分のルート判別 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ 0.75 Z ・W ・ Ai ・βルート2-1相当の壁量の確認

①′WRC造部分のルート判別 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ Z ・W ・ Ai ・βルート1相当の壁量の確認

② 木造部分の軸組計算

③ 木造部分の許容応力度等計算

(2階以上の剛性率(6/10以上)、2、3階の偏心率(15/100以下)の確認を含む)

④ RC(WRC)造部分の許容応力度等計算

(1階の偏心率(15/100以下)の確認を含む)

RC部分が地階扱いとなる建築物の構造計算

対象建築物(新告示第593号(第3号))

・ 地階を除く階数が3以下であるもの

・ 高さが13メートル以下で、かつ、軒の高さが9メートル以下であるもの

・ 延べ面積が500平方メートル以内であるもの

延べ面積が500平方メートルを超える場合は、適合性判定の対象となり、構造計算は、許容

応力度等計算(ルート2)が必要となる。この場合、ルート2の基準値をすべて満足しなければ、

保有水平耐力計算または限界耐力計算により安全を確認することとなる。

構造計算の概要 : 新告示第3号

① RC(WRC)造部分のルート判別 ∑ 2.5Aw+∑ 0.7Ac≧ Z ・W ・ Ai ・βルート1相当の壁量の確認

② 木造部分の軸組計算

③ 木造部分の許容応力度計算

④ RC(WRC)造部分の許容応力度計算