時間を科学する。

2012 年 4 月 17 日　生理学

本日のメニュー

いいたいこと：考えよう。

1.　雑談2.　概日時計の基礎の基礎＆余談

1.　雑談

科学するとは何か？

[ 科学 ] 　世界と現象の一部を対象領域とする、経験的に論証できる系統的な合理的認識。　（広辞苑）

現代科学とは、未来を予測し、制御するための挑戦である。

やまだ　 (2012)

真理とは何か？① ほんとうのこと。②[truth] 　絶対的存在または実在的関係・事態を表している判断の客観的妥当性。従って、単なる概念は真でも偽でもなく、それが判断により肯定または否定されたときにだけ真理・虚偽が云々される。この場合、真理とは実在の肯定であり、実在しないものの否定である。それは一般に判断と実在との一致に他ならない。この一致や、実在概念については諸々の見地がある。

（広辞苑）多くの独立した検証による淘汰に耐えたものが真理となる。

やまだ　 (2012)

生理学とは何か？[ 生理 ] 生物体の生活現象と生活原理　（広辞苑）

ホメオスタシスHomeostasis

from Greek: ὅμοιος, hómoios, "similar, and στάσις, stásis, "standing still"

ホメオスタシス

• ほぼ一定。• 昨日の私 ≈ 今日の私 ≈ 明日の私• 動的平衡（福岡伸一）

・ ・

Time定義が不可能、そして不可能の定義。捉えようとすればするほど逃げていく。時間は言葉をすり抜ける。ちょうど、空間が視線をすり抜けるように。

Josef Kosuth　“Time. Art as Idea as Idea” 1967

時間とは何か？

物理学における時間。（時間の矢）

Yanagi Miwa ”The three fates” 2008

“ 老化”という時間の矢。

様々な時間。

• ゾウの時間、ネズミの時間　（本川達

雄）

• 動物は『時間』を意識しているのか？

• 視床下部的な時間、人間的（社会的・文

化的）な時間

Hirohiko Araki “Steel Ball Run” vol23

( 生命）科学できる時間。Femto secPico secNano secMicro secMilli sec

SecMinHourDay

MonthYearLife

時間生物学

• リズム（事象の規則的な繰り返し）• 概日リズム

今日の今頃の私 ≈ 明日の今頃の私今朝の私 ≠ 今夜の私

時間生物学は、すべての生物のすべての構造段階（共同体（群集）、個体群、個体、器官、組織、細胞など）における自律振動現象、とくに環境サイクルの長さに似た振動（概リズム）を記載し、その機構や適応機能を扱う分野で、基礎、応用を問わず、生命科学のすべての分野と深く関係している。（日本時間生物学会）

http://chronobiology.jp

2. 概日時計の基礎の基礎

と、余談。

24

12

18 　　6

24

12

18 　　 6

血中成長ホルモン↑細胞分裂↑コレステロール↑

テストステロン・エストロゲン↑コルチゾール↑アルドステロン↑レニン↑

カテコールアミン↑

赤血球↑

肺の機能↑

血圧↑

胃酸分泌量↑

交感神経緊張↑体力↑

体温↑

ヒスタミン感受性↑

様々な生理現象にみられる概日周期

胃潰瘍

気管支喘息

心筋梗塞

アレルギー性鼻炎慢性関節リウマチ

皮膚過敏

疾患の発症や増悪の好発時間

概日リズム現象。

Metal Plates Used in Francis Crick’s and

James Watson’s Original Double Helix

Model of DNA

概日時計はゲノムに書き込まれている“ 時計遺伝子“

-Recently (1999–2010) the average annual length of the mean solar day in excess of 86,400 SI seconds has varied between 0.25 ms and 1 ms.

- The current rotation period of the Earth is the result of initial rotation and other factors.

-By changing the distribution of the Earth's mass, the Japanese earthquake should have caused the Earth to rotate a bit faster, shortening the length of the day by about 1.8 microseconds," Gross told SPACE.com .

地球の自転

~30 億年前：シアノバクテリア（藍藻、光合成）

~ ２億年前：哺乳類

~6500 万年前：霊長類

Kondo et al. 1998 Science

Hardin et al. 1999 Science

Reppert et al. 2000 Science

~3 億年前：昆虫

概日時計の歴史

http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/37/research_21.htmlより

太古のシアノバクテリアの時計は２１時間周期だったのかも？？

フィードバックループ。

Input Output

ポジティブ→システムの不安定化ネガティブ→システムの安定化

概日リズムを生み出す転写・翻訳のネガティブフィードバックループ。

BMAL1

CLOCK

PER

CRYPER

Delay 　 (Δt)

哺乳類の時計遺伝子• 転写・転写関連遺伝子

http://jaspar.cgb.ki.se/

JASPAR より。

http://www.bea.ki.se/service_tiling.html

Ueda (2011)

UCSC Genome Bioinfomatics

結合サイトの探し方

分子時計（細胞時計）

BMAL1

CLOCK

Per1/Per2

Cry1/Cry2

E-box

E-box

D-box PER

CRY

B C

B C

SCF

P P

CRY CRY

FBXL3

+Ub

26S

REV-ERB

BMAL1

DBP

E4BP4

E-boxB C

Dbp

E-boxB C

DecDEC

DBP

E4BP4

RREBmal1

RREE4bp4

ROR REV-ERB

DEC

E-box Rev-erbB C

CK1

CK1PP

PER

P P

26S

+Ub b-TrCP

PER

Degradation

Degradation

PERCRY

Nucleus

Cytosol

分子時計（細胞時計）

Clock Controlled Genes

CCG

分子時計の出力

糖新生も。

ＰＥＰＣＫ

ほどけるのが先か？転写因子が先か？あるいは結合したままか？

Heterochromatin Euchromatin

Saurabh and

Sassone-Corsi (2012)

概日時計（リズム）の基本的性質。

1. 同調性

2. 自律性（フリーラン）

3.温度補償性（温度非依存性ではない）

概日時計（リズム）の基本的性質。

1. 同調性

2. 自律性（フリーラン）

3.温度補償性（温度非依存性ではない）

Nagoshi (2004) より

細胞の時計を同調（リセット）。

概日時計（リズム）の基本的性質。

1. 同調性

2. 自律性（フリーラン）

3.温度補償性（温度非依存性ではない）

Nagoshi (2004) より

個々の細胞時計はいずれバラバラ。

概日時計（リズム）の基本的性質。

1. 同調性

2. 自律性（フリーラン）

3.温度補償性（温度非依存性ではない）

温度補償性と温度依存性

Takahashi (2010)Ueda (2010)

行動でも。

Doi et al. (2011)

同調

フリーラン

温度補償

全身の時計はバラバラではない。

ホルモン・神経伝達・行動・食事時刻などにより同調

<中枢時計>視交叉上核

（ Suprachiasmatic nucleus）

末梢時計

視交叉上核による統合。

夜行性と昼行性

Mouse Monkey

Liver (肝臓 )

Cerebral cortex (大脳皮質）

mRN

A量

　(M

axを

１）

サンプル採取時間

Per1 Per2 Bmal1

Per1 Per2 Bmal1

ネズミとサル

SCN ( 視交叉上核 )

Mouse

MonkeyPer1 Per2 Bmal1

ネズミとサル：視交叉上核

光環境にロックされてい

る。

What decides?夜行性 昼行性

末梢時計 = 活動時刻とリンク

中枢時計 = 明暗サイクルとリンク

• 概日リズム分野は、時間を科学でき

るステージにある。

• 概日リズムは２４時間を基準に対称

である。

• 社会的な時間は生物的時間に基づい

ている。

• 細胞の日めくりカレンダー

おわりに