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2014/7/5 1 Mars Direct Crew137 ミッション目標 Team Nipponは、火星協会の3S(Safety, Simulation, and Science)のポリシーを参考に3つ のミッション目標を設定する。 1. Team Nipponは怪我や事故なく、安全にこのミッションを達成する。 2. 火星の生活と探査を模擬する。 衛生・健康・廃棄物最小を維持しながら、水をあまり使わない災害食を、 火星の食事に応用する。 過去の居住体積やヒューマンファクター研究を参考にしながら、火星居 住施設の研究と設計を行う。 MDRSEVA機器を利用して、惑星表面移動探査のパラメータについて調 査する。 3. サイエンスとしては、調理器具・キッチン設備のATP検査を行い、伝統的な日 本式の衛生管理法の効果を測定する。 研究テーマ 火星居住のための宇宙食の一部としての 日本食の研究(実験主任者:片山) 惑星表面探査におけるロジスティクスと 生命維持の研究(実験主任者:宮嶋) 米国ユタ州にある火星砂漠研究基地 Mars Desert Research Station: MDRS)の 2013-2014期ローテーションに日本火星協 会により結成されたTeam Nipponが参加し た。日本人6人からなるTeam Nipponは、 12年間のMDRS運用の歴史の中で、初め ての日本人によるクルーである。MDRS は火星協会によって運営される火星を模 擬した2つの居住実験施設のうちの1つで、 1シーズン11のクルーが交代で2週間の居 住実験を行う。居住実験や惑星表面の有 人活動の模擬施設として欧米各国のク ルーによって現在まで利用されてきた。

2014/7/5file.blog.fc2.com/mylab360/ppt/see/see2014pp-mdrs.pdf2014/7/5 3 水使用量・食料供給量・廃棄物量 左表に6人で2週間の居住実験の水の使用量を示す。我

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Mars Direct

氏名 所属 役割

宮嶋宏行

, Ph.D.

東京女学館大学 教授

Commander

片山直美

, Ph.D.

名古屋女子大学 教授

Crew Journalist

高瀬芳美 名古屋女子大学 学生

GreenHab Officer

河合美佳 名古屋女子大学 学生

Health & Safety Officer

諸島玲治 宇宙システム開発株式会社 ソフトウエアエンジニア

Engineer

岡本渉

公益財団法人科学技術交流財団

エンジニア

Engineer

Crew137 ミッション目標

Team Nipponは、火星協会の3S(Safety, Simulation, and Science)のポリシーを参考に3つ

のミッション目標を設定する。

1. Team Nipponは怪我や事故なく、安全にこのミッションを達成する。

2. 火星の生活と探査を模擬する。

• 衛生・健康・廃棄物最小を維持しながら、水をあまり使わない災害食を、

火星の食事に応用する。

• 過去の居住体積やヒューマンファクター研究を参考にしながら、火星居

住施設の研究と設計を行う。

• MDRSのEVA機器を利用して、惑星表面移動探査のパラメータについて調

査する。

3. サイエンスとしては、調理器具・キッチン設備のATP検査を行い、伝統的な日

本式の衛生管理法の効果を測定する。

研究テーマ

• 火星居住のための宇宙食の一部としての日本食の研究(実験主任者:片山)

• 惑星表面探査におけるロジスティクスと生命維持の研究(実験主任者:宮嶋)

米国ユタ州にある火星砂漠研究基地

(Mars Desert Research Station: MDRS)の

2013-2014期ローテーションに日本火星協

会により結成されたTeam Nipponが参加し

た。日本人6人からなるTeam Nipponは、

12年間のMDRS運用の歴史の中で、初め

ての日本人によるクルーである。MDRS

は火星協会によって運営される火星を模

擬した2つの居住実験施設のうちの1つで、

1シーズン11のクルーが交代で2週間の居

住実験を行う。居住実験や惑星表面の有

人活動の模擬施設として欧米各国のク

ルーによって現在まで利用されてきた。

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MDRSは、Musk天文台、

温室(GreenHab)と居

住モジュール(Hab)、

エネルギー供給施設

(発電機)からなる。

居住モジュールは火

星協会会長Robert Zubrin

によるマーズダイレク

ト計画の実物大居住施

設である。

内部は2階層から構成

され、下層階に実験室、

作業室、EVA準備室、ト

イレ、洗面室、シャ

ワー、2つのエアー

ロックがあり、上層階

には、キッチンとダイ

ニングルーム、6つの個

室、ロフトがある。

電気はディーゼル発

電設備(120V, 8kW)に

より供給される。

コマンダールーム管理用コンピュータキッチン保存食保管庫

ダイニングルーム

起床後の健康診断 実験室事務仕事

火星の食事3月1日 災害食 3月2日 3月3日 3月4日

3月5日 3月6日 3月7日 3月8日

3月9日 3月10日 3月11日 3月12日

3月13日 3月14日 GreenHab

ミッション前後で、味覚とにおいの感応検査を実施

毎食後、食事に対する味、におい、量、見た目、総合の質問

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水使用量・食料供給量・廃棄物量左表に6人で2週間の居住実験の水の使用量を示す。我々は調理に関わ

る水の使用量を大きく抑え、その分の水をシャワーなどの衛生維持に利

用した。

水洗トイレを利用しているため結果的に水の使用量の半分がトイレの

洗浄水に利用される結果になった。乾燥式トイレなど別方式のトイレ利

用により水使用量の削減が可能と考えられる。

1日一人当たりの水使用量の比較

水用途

使用量

L/mission

水使用量

割合

使用量

L/人-day

トイレ洗浄水 2,137 48% 27.4

シャワー用水 422 10% 5.4

洗髪用水 136 3% 1.7

洗顔・歯磨き用水 266 6% 3.4

手洗い用水 297 7% 3.8

洗濯用水 76 2% 1.0

調理用水 197 4% 2.5

飲用水 148 3% 1.9

食器洗浄水 30 1% 0.4

植物栽培用水 49 1% 0.6

その他 673 15% 8.6

合計 4,431 100% 56.4

廃棄物 廃棄物量

紙 9,500 g

カン 3,653 g

パッケージ 1,018 g

ボトル 440 g

プラスチック 456 g

合計 15,067 g

1日一人当たり 193 g/人-day

6人13日間の廃棄物量 食料供給量乾燥食品(供給):60kg, 273,000 cm3

日本食(持ち込み):35kg, 180,000 cm3

左:トレイラータンク1700 L (8日分)

右:スタティックタンク

ロフトタンク200L程度

# 日日日日 人数人数人数人数 ATV 目的地目的地目的地目的地 時間時間時間時間

1 3/3 4 East hill of MDRS 14:32 - 16:06

2 3/4 4 North hill of MDRS 10:15 - 12:02

3 3/6 2 x White Rock Reservoir 10:02 - 11:45

4 3/7 3 x Muddy Creek 11:05 - 15:35

5 3/10 3 x North Pinto Hills 10:55 - 13:45

6 3/11 4 East hill of MDRS 9:53 - 11:58

7 3/12 3 x East valley of MDRS 10:05 - 12:25

MDRSに装備されたEVA機器を利用して惑星表面探査研究を実

施した。我々は左表に示すように7回のEVAを実施した。その

うちAll-Terrain Vehicle(ATV)を利用した遠征探査を4回行った。

EVAの移動データをMy tracks(google)を利用して記録し、ナ

ビゲーション、速度、高度などを解析した。#4の記録をGoogle

Earthでグラフ化したものを中央図に示す。これは峡谷をATVで

走行し最後の1.5kmを徒歩によりMuddy Creekに到達する往復

26kmの遠征探査である。

エアーロック

徒歩でのEVA ATVを利用したEVA

探査プランニング

峡谷を探査

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衛生管理

茶葉、コーヒ粕を利用した床掃除

スタンプテスト 微生物検査

ATP測定法

電子レンジで最高値66,321 ATPを計測

次亜塩素酸水、70%アルコールでの数回

の洗浄により許容範囲に維持した。

少量の水を利用して洗濯を実施

次亜塩素酸製造装置スッ霧ライフ

約12時間で20L×約150回!!次亜塩素酸

水生成器「スッ霧ライフCM-6」

キッチン、調理器具、トイレ、

シャワールームなどの清浄度

検査を行い、次亜塩素酸水、

アルコールなどを用いて衛生

管理を行った。

1日目

07:45 Safewayで買い物

09:30 GJ出発

12:00 Hanksville到着

13:00 Hollow Mountainから物資をピストン輸送

14:00 最後の便は14時頃出発、Chunkブリーフィン

グ開始

15:00 各自引継ぎ開始

18:00 夕食

19:00 CapCom開始、19:15 ベルギーチーム帰国

21:00 CapCom終了、休憩

23:00 初日任務完了

2日目

06:00 起床、健康診断

07:00 朝食

08:00 事務仕事

09:00 事務仕事

10:00 ブリーフィング

11:00 事務仕事

12:00 昼食

13:00 事務仕事

14:30 運動

16:00 Habに帰着、おやつ

17:00 報告書作成

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了

22:00 任務完了

23:00 事務仕事

24:20 就寝

3日目

04:40 起床

05:00 事務仕事

06:00 事務仕事、健康診断

07:20 朝食

08:00 事務仕事

10:00 おやつ

11:00 事務仕事

12:00 昼食

13:00 事務仕事

14:32 EVA出発

16:07 EVA帰着

16:30 シャワー

17:00 雑用

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、CapCom後の打ち合わせ等

22:00 事務仕事

24:20 就寝

4日目

04:00 起床

05:00 報告書作成

06:00 報告書作成

07:00 朝食

08:00 広報活動

09:00 広報活動

10:02 EVA-2出発、EVA-2 HabCom

11:00 研究

12:02 EVA-2帰着、昼食

13:00 昼寝

14:00 昼寝

15:00 研究

16:00 報告書作成

17:00 報告書作成

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、談話、自由時間

24:20 就寝

5日目

05:00 起床、事務処理

06:00 報告書作成、健康診断

07:00 朝食

08:00 事務処理

11:00 EVA事前偵察

12:00 昼食

13:00 事務処理

14:00 EVA事前偵察

16:00 報告書作成

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、休憩

22:30 就寝

6日目

05:00 起床、報告書作成

06:00 報告書作成、健康診断

07:00 朝食

08:00 事務処理

09:00 報告書作成

10:00 EVA-3出発

12:00 EVA-3帰着、昼食

13:00 昼寝

14:40 昼寝終わり

15:00 EVAプランニング、ATVメンテ

17:00 シャワー

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、ブリーフィング、自由時間

22:30 就寝

7日目

04:40 起床

05:00 研究、事務仕事

07:00 朝食

08:00 報告書作成

09:30 買い物出発

10:30 買い物戻り、EVA準備

11:05 EVA-4 出発

12:00 第3waypoint到着ATVを降りて徒歩へ

12:50 第5waypoint到着(最終目的地creekへ到着)

14:00 昼食(弁当)

15:35 EVA-4帰着

16:00 報告書作成

17:00 シャワー

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、自由時間

22:30 就寝

8日目

05:08 起床

06:00 研究、事務仕事

07:00 朝食

08:00 事務仕事

09:00 研究

12:00 昼食

13:00 報告書作成

14:00 Crew Video打ち合わせ

15:00 報告書作成

16:00 写真撮影

17:00 報告書作成

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了

21:00 休憩

22:00 研究

00:30 就寝

9日目

07:30 起床、健康診断

08:00 朝食

09:00 研究

12:00 報告書作成

13:00 昼食、昼寝

14:00 洗濯実験

15:00 Crew Video作成

17:00 運動

18:30 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、Crew Video作成

22:00 Crew Video作成

00:45 就寝

10日目

06:30 起床、健康診断

07:00 朝食

08:00 報告書作成、研究

09:00 研究

10:55 EVA-5 出発

12:30 EVA中の昼食

13:45 EVA-5 帰着

14:00 昼寝

15:00 シャワー

16:00 研究

17:00 malware対応

18:00 夕食

19:10 CapCom開始

20:00 論文提出

21:36 CapCom終了

22:00 メール返信など

23:50 就寝

11日目

06:55 起床

07:00 朝食

08:00 事務仕事、Crew Video upload終了

09:00 報告書作成

10:00 報告書作成、(4人EVA-6)

11:00 malware対応、(4人EVA-6)

12:30 昼食

13:00 昼寝

14:00 研究

16:00 malware対応

17:00 休憩

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、休憩

22:00 研究

00:45 就寝

12日目

06:23 起床、健康診断

07:30 朝食、報告書作成

08:00 報告書作成

09:00 報告書作成、EVA準備

10:05 EVA-7出発

12:25 EVA-7帰着

13:00 昼食

14:00 昼寝

15:00 シャワー

16:00 研究

17:00 報告書作成

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、研究

00:00 就寝

13日目

06:30 起床、健康診断

07:00 朝食、報告書作成

08:00 報告書作成

12:00 昼食

13:00 研究報告書作成

14:00 昼寝

15:00 研究報告書作成

17:30 クルー写真撮影

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:00 CapCom終了、研究報告書作成

01:40 就寝

14日目

06:23 起床、健康診断

07:00 朝食、研究報告書作成

08:00 研究報告書作成

09:00 事務仕事

09:30 休憩

10:00 研究報告書作成

12:00 昼食

13:00 事務仕事

14:00 昼寝

15:00 研究

17:00 運動

18:00 夕食

19:00 CapCom開始

21:06 CapCom終了、休憩、広報活動

22:00 後片付け

00:00 就寝

15日目

06:50 起床

07:00 健康診断、朝食

08:00 シャワー

09:00 後片付け

12:00 昼食

13:00 自由時間

16:30 Crew138到着、ディレクター到着、引継ぎ開始

19:30 MDRS離脱

22:05 Days Inn到着、デニーズで夕食(Team Nippon最後

の食事)

03:00 就寝

コマン

ダースケジュール

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居住実験のまとめ

• Team Nipponは怪我や事故なく、安全にミッションを達成した。

• 火星の生活と表面探査を模擬した。

1. 最小限の水しか使わない災害食を火星の食事に応用し、衛生、健康、廃棄物最小の3つを維持した。 → 衛生状態、健康状態、廃棄物量、

水使用量を定量的に把握した。

2. 過去の居住体積やヒューマンファクター研究を参考にしながら、火星居住施設の研究と設計データの取得を行った。 → インスピレー

ションマーズミッションの有人宇宙船設計に応用した。

3. MDRSのEVA機器を利用して、惑星表面移動探査のパラメータについて

調査した。 → ローバやナビゲーション機器の開発に応用可能。

• 調理器具・キッチン設備のATP検査を行い、衛生管理法の効果を測定した。