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2015年度3年後期 素粒子物理学 1 第4回 2015年10月30日 戸本 誠 高エネルギー物理学研究室(N研)

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2015年度3年後期 素粒子物理学 1

第4回 2015年10月30日

戸本 誠高エネルギー物理学研究室(N研)

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前回の復習 2

- Klein-Gordon方程式

→ スピンが記述できない → ボソンを記述

質量mの自由粒子の相対論的な運動方程式

負のエネルギー解、負の確率密度時間に逆行して伝搬する負エネルギー粒子の解=時間に順行して伝搬する正エネルギー反粒子の解

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前回までの復習 3

- Dirac方程式

→ 4つの独立な解を持つα、β、γは、4成分の行列の固有値がmと-mの固有関数が2つずつ

1. E>0(粒子)のスピン+1/2(正のヘリシティー)の粒子2. E>0(粒子)のスピン -1/2(負のヘリシティー)の粒子3. E<0(反粒子)のスピン +1/2(正のヘリシティー)の粒子4. E<0(反粒子)のスピン -1/2(負のヘリシティー)の粒子

負のエネルギー解、負の確率密度を解決するために導入

の固有値が1/2と-1/2の固有関数が2つずつ

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今日の内容 4

自由粒子の運動から電磁場中の素粒子の運動へ→ 素粒子の電磁相互作用 (Quantum Electromagnetic Dynamics)

実験的には、断面積や崩壊率が重要→ 散乱振幅(遷移確率)の計算

1. 非相対論的摂動論の復習(ラザフォード散乱)2. スピンを持たない粒子(非現実的だが次のための準備)3. スピン1/2の粒子(本当の素粒子の電磁気学)

の順で進めます。

←今日は主にこれ

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散乱断面積5

単位面積あたり毎秒Nin個粒子を入射する時、標的粒子数1個につき、θ,φ方向の立体角dΩ中に散乱される粒子が毎秒dN個とする。

立体角dΩ

θ

微分断面積単位体積あたりnt個の物質粒子中をd進む間の衝突数

全断面積

相互作用によるi→fの遷移確率

initial(i)final(f)

加速器の衝突実験では、反応頻度 ∝ 断面積

Nin /秒

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状態 ”initial”無限遠から

相互作用による遷移確率 6

Vni

Vfn

1回散乱1次の摂動

2回散乱2次の摂動

相互作用→時間に依存する摂動として扱う→遷移確率

0回散乱自由粒子

ごく短時間 (t=T秒)

状態 “final”

状態 ”initial”

無限遠へ

無限遠から

状態 “final”

t

t1

t2

e-

e-

e-

e-無限遠へ

状態 “final”

状態 ”initial”

無限遠へ

無限遠からe-

e-

e-

e-

e-e- e+Vfi

Vni

Vfn状態”n”

ポテンシャルV

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遷移確率 7

自由粒子のシュレディンガー方程式の解

Vinitial(i)

final(f)

ポテンシャルV(x,t)中の粒子のシュレディンガー方程式

の解は、 と書ける。

H0は時間に依存しない。体積V中に1粒子存在する。

an(t)を求めて、遷移確率を出していく

時間に依存する摂動:遷移確率を考える状態i→状態fへの遷移確率

EnとΦn(x)は求まっている

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遷移確率 8

をして、体積V内で積分する

に を代入

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遷移確率 9

のT秒間に相互作用が起こるとする時刻

時刻 t=-T/2において、 (n≠i)H0の固有状態である状態”i”

ポテンシャルが小さく、ごく短い時間だけ作用する

Vinitial(i)

final(f)

初期条件が全ての時間で適用できる

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遷移確率 10

相互作用が終わった t=+T/2 のi→fに興味がある

共変形で書けば、

|Tfi|2の物理的意味を考える

ポテンシャルが時間に依存していない場合: V(x,t)=V(x)

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フェルミの黄金律 11

単位時間あたりの遷移確率を定義

ρ(Ef):終状態の密度 ρ(Ef)dEf: EfとEf+dEfの間の状態数フェルミの黄金律入射フラックスを考慮して断面積に

素粒子のエネルギースケールの時間 << 観測の時間スケール

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ラザフォード散乱 12

規格化因子 (N) : 体積Vに粒子が1個

クーロンポテンシャル 原子核

θ

α粒子, spin=0

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ラザフォード散乱 13

とおいて積分を実行

遮蔽されたクーロン型を考える積分は発散

電子の雲のせいで原子核のポテンシャルが遮蔽されているあとからμ→0の極限を考える

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ラザフォード散乱 14

に、

状態数密度 :

Vfiとρ(E)を代入して

θ

原子核クーロンポテンシャル

α粒子, spin=0

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ラザフォード散乱 15

入射フラックス:単位時間に単位面積を通過する粒子数体積Vに一個 → 単位体積に1/V個と定義入射粒子が速度viで入射する

Wfi/(入射フラックス)→

α線を原子核に衝突 → 断面積、散乱角度分布を測定           電磁気力の性質、結合の強さを理解

速度vi=p/m

θ

原子核クーロンポテンシャル

α粒子, spin=0

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スピンを持たない素粒子の散乱 16

自由粒子のKlein-Gordn方程式

で、電磁場を導入

e- e-

γ

電子(spin=0)が電磁場中を運動

pA pC

1次 2次 (無視)

と比較して摂動ポテンシャルVを導出

相互作用の強さと関連

t

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スピンを持たない素粒子の散乱 17

e- e-

γ

pA pC

jμとAμがわかると、断面積が計算できる。

jμ(1)

Aμt

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スピンを持たない素粒子の散乱 18

e- e-

γ

pA pC平面波スピン0の粒子の波動関数として

を考える

φA(x) φc(x)jμ(e)

t

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スピンを持たない素粒子の散乱 19

次に、電磁場γ (Aμ)がμ粒子によってできたと考えるMaxwell方程式μ粒子の電流によってできた電磁場 μ粒子の電流

e- e-

γ

pA pC

φA(x) φc(x)jμ(e)

μ- φB(x) μ- φD(x)jμ(2)

q=pD-pB

なので

不変振幅

t

エネルギー・運動量保存

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不変振幅 20

e- e-

γ

pA pC

φA(x) φc(x)jμ(e)

μ- φB(x) μ- φD(x)jμ(2)

q=pD-pB

ちなみに、q2 ≠ 0 (質量が0でない)→仮想光子と呼ぶ

単位時間の遷移率、フラックス、終状態数の定義→断面積

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今日のまとめ 21

量子力学で非相対論的な散乱振幅を導出

ラザフォード散乱

スピン0の粒子の散乱振幅を導出

遷移確率とフェルミの黄金律断面積の定義

スピン0粒子の断面積の計算スピン1/2粒子の断面積の計算

次回

目標:e+e- → μ+μ-散乱の導出へ

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おしまい

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