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「2016年 4月熊本―九州中部地震活動領域の電気比抵抗構造」
2016年 4月 26日
九州大学、京都大学、熊本大学、産業技術総合研究所、東京大学地震研究所、北海道大学、東京工
業大学は、これまで 2016 年 4 月の熊本九州中部の震源域周辺で、地磁気-地電流 (MT) 法による
構造探査を実施してきました。MT 法とは自然に変動している電磁場を地上で観測し、磁場-電場
間の周期に応じた応答の違いから地下の電気比抵抗構造を推定する物理探査手法です。ここでは得
られたデータをまとめた結果を報告します。
広帯域MT (周期 0.005~3000秒) 観測点分布図。
は高倉 伸一(産業技術総合研究所)・小池 克明(京都大学)・麻植 久史(京都大学)・ 吉永 徹 (熊
本大学)・橋本 武志 (北海道大学) 提供。
は松島 喜雄(産業技術総合研究所)提供。
は相澤 広記 (九州大学)、宇津木 充 (京都大学)・上嶋 誠 (東京大学地震研究所) 提供。
震源 (2016年 4月 14日 21時 26分~4月 24日 12時 40分) 決定には九州大学および2016年熊本
地震合同地震観測グループ、気象庁、防災科学技術研究所のデータを使用した。
見掛け比抵抗
MT法では電場-磁場間の周波数応答関数 (インピーダンス)を計算し、それを説明する地下電気比
抵抗構造を逆問題として数値的に解くことにより推定します。今回は地下の電気比抵抗構造の大局
的な構造を把握するため、平均化したインピーダンス (Rung-Arunwan et al., 2016) による見掛け比
抵抗を周波数ごとに示します。
電磁波は、周期が長くなればより地下深く浸透する性質があるため、短周期 (左上) は浅い場所に、長周
期 (右下)は、深い場所に対応します。どの周期がどのくらいの深さに対応しているかは、表皮深度 = 0.5
(km) ( :比抵抗 (Ωm), T:周期 (s) )によって計算されます。地下の比抵抗構造が 10 (Ωm) 程度と仮定
すると、周期 1秒は深さ 1.5 km、10秒は深さ 5 km、周期 100秒は 15 kmにおおよそ対応します。
比抵抗構造の特徴としては、阿蘇山、九重山、鶴見岳といった活火山周辺は電気を流し易く (低比抵抗)
なっていることがわかります。またこの地域の大局的な構造として、南東側が高比抵抗、北西側が低比
抵抗という特徴があります。
熊本―九州中部の地震活動との対応
震源域の深さ(5~15km) におおよそ対応する、周期 10秒、周期 100秒の見掛け比抵抗図に、今回の一連
の地震活動 (2016年 4月 14日 21時 26分~4月 24日 12時 40分) の震源を重ねたものを示します。
今回の地震活動は阿蘇、九重、鶴見岳周辺の電気を流し易い低比抵抗領域を避けて、その周辺で発
生していることがわかります。これは火山地下がマグマにより高温となり地震を起こしにくくなっ
ていることを反映していると考えられます。最も地震活動が活発な熊本市付近では地震活動は低比
抵抗-高比抵抗の境界、高比抵抗領域で発生しているように見え、断層が電気比抵抗の構造境界と
なっていることを示唆しています。今後、より詳細な構造解析を行い、地震活動との関連を調べて
いきます。
今回の地震で活動した日奈久断層、布田川断層の微細構造と電気比抵抗構造については
1) MT 法による活断層深部の破砕構造解析
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/45/2/45_2_60/_article/-char/ja/
2) 布田川-日奈久断層帯の深部比抵抗構造のイメージングと微小地震分布からの考察
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/48/4/48_4_180/_article/-char/ja/
3) 阿蘇山から熊本にかけての比抵抗構造については
http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs11053-012-9184-2
を、MT法の概要については
https://staff.aist.go.jp/takakura-s/em/em.html
を参照下さい。
広帯域MT 探査の遂行にあたり、以下の補助を受けました。
「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画:課題番号 2201」
「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測」