技術経営 - 京都大学...1 © GraduateSchoolofManagement，KyotoUniversity2007 技術経営京都大学経営管理大学院原良憲 [email protected] 京都大学経営管理大学

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© ＧｒａｄｕａｔｅＳｃｈｏｏｌｏｆＭａｎａｇｅｍｅｎｔ，ＫｙｏｔｏＵｎｉｖｅｒｓｉｔｙ２００７

技術経営

京都大学経営管理大学院

原良憲

[email protected]

京都大学経営管理大学院

目次

１．技術経営（ＭＯＴ）とは２．イノベーションマネジメント３．製品開発マネジメント４．技術経営の構成財管理５．技術経営の今後の展開

© ＧｒａｄｕａｔｅＳｃｈｏｏｌｏｆＭａｎａｇｅｍｅｎｔ，ＫｙｏｔｏＵｎｉｖｅｒｓｉｔｙ２００７ 2

１．技術経営（ＭＯＴ）とは

2


なぜ技術経営が必要か？

情報通信産業のパラダイムシフト

垂直統合から水平分業へ

コモディティ化によるグローバルな競争優位性の低下

一方で、米国インターネット企業や、自動車産業の活況

出所： NEEDS Financial Quest, ドイツ証券（週刊ダイアモンド 2006年 7月22日号）

０％

“Japan as No.1”の時代

営業利益率５％

この差は何か？どのように技術開発や経営を行えばよいか？


技術経営とは

ＭＯＴ（ＭａｎａｇｅｍｅｎｔＯｆＴｅｃｈｎｏｌｏｇｙ）

1970年代より米国のビジネススクールを中心に発展

MIT Sloan SchoolのMOTプログラムが最初

「経営」、「研究・技術」、「生産」を統合する総合戦略マネジメント

技術開発から新製品や新事業を創出するためのマネジメント

２つの視点製造業のための経営学（技術のわかる経営者育成）

技術者のための経営学（経営のわかる技術者育成）

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技術経営の目的と課題

目的

経済成長戦略の一環としての新市場創出

技術に立脚する企業や産業の生産性向上、高付加価値化

課題

技術の不確実性、技術にまつわる不確実性（顧客ニーズ、環境制約等）

価値創造（Value Creation)と価値獲得（Value Capture)


技術経営のスコープ

マトリックス型技術経営事業分野の特性、環境制約・地域特性、政策・インフラによる影響も存在

人（戦略・組織）

もの・技術・情報（無形資産）

かね（投資）

イノベーションマネジメント（研究開発・事業開発マネジメント）

事業マネジメント（特に、製造業の製品開発・生産管理）

時間

Plan, Do, See構成財

技術活用ステージ

経営戦略事業運営

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２．イノベーションマネジメント

ー研究開発・新事業開発マネジメントー


社会・経済価値を創造する技術発明と市場洞察との結びつき

「技術革新」よりも広汎な考え方cf. シュンペーター「イノベーション（新結合）」（１９１２年）

（１）イノベーションとは

市場洞察技術発明イノベーション

社会・経済価値の創造

アイデアや知識を、商用的に価値ある形態（製品・サービス）へ

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（２）プロセスの脆弱点ー陥りやすい罠ー

基礎研究の重要性、インキュベーション、事業開発・発展の困難さ死の谷、ダーウィンの海、キャズム

研究開発

インキュベーション

事業開発

事業化

強いIPRの実現市場ペイン認識と解決

ＩＰＲ価値の定量化・向上

継続的事業構築・運営

ＩＰＲ/企業価値の向上

目標価値

目標価値

目標価値

目標価値

死の谷ダーウィンの海キャズム

イノベーシ

ョン


Political picture

of the “gap”

BasicResearch;Invention

ＴｈｅＶａｌｌｅｙｏｆＤｅａｔｈ

“ＶａｌｌｅｙｏｆＤｅａｔｈ”

AppliedResearch;Innovation

ＤｅａｔｈＶａｌｌｅｙ（「死の谷」）とＤａｒｗｉｎｉａｎＳｅａ（「ダーウィンの海」）

基礎研究から応用研究へのギャップ

研究開発（基礎・応用）から事業開発へのギャップ

Lewis Branscomb and Philip Auerswald, Between Invention and Innovation, NIST, 2002

ＴｈｅＤａｒｗｉｎｉａｎ

Ｓｅａ

Research &Invention

Innovation &New Business

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Ｃｈａｓｍ（「キャズム」）

ジェフ・ムーア（ＧｅｏｆｆｒｅｙＭｏｏｒｅ）の経験則

シリコンバレー・ハイテックマーケットのマーケットサイクル

Ｃｈａｓｍを越え、トルネードに耐えＭａｉｎＳｔｒｅｅｔになり得るビジネスシーズの創造

目標８００ポンドゴリラ


「キャズムを超える」ポジショニング

製品重視から市場重視への転換

専門的全体的

価値に信頼

価値に慎重技術価値

製品価値

市場価値

企業価値

テクノロジーマニア

（イノベーター）

ビジョナリー（アーリーアドプター）

実利主義（アーリーマジョリティ）

保守（レイトマジョリティ）

初期市場の成長

メイン市場の成長

高性能使いやすさ・デザイン洗練アーキテクチャ

製品価格ユニーク機能（ベンチマーク）同類者の支持

多数利用者サポート業界標準

（マーケットシェア）TCO（含運用費用）

品質管理

キャズムを

超える

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（３）ディスラプティブイノベーションーディスラプティブ技術による市場浸透－

市場成熟期の新しい市場浸透方策性能が利用者の要求をつきぬける

ローエンド市場から浸透し、既存市場を置き換え

業界１位企業が陥りやすい罠

時間

早晩成長が止まる性能・要求程度

ハイエンドユーザ要求程度

ローエンドユーザ要求程度

Sustaining技術進展 Disruptive技術進展

Xジャンプできない

出典：The Innovator’s Dilemma, C. Christensen, Harvard Business School

現在のコア事業


ディスラプティブイノベーションの例

Ｗｅｂサービス

接続性

頑健性、信頼性

可用性、拡張性

柔軟性、信用

時間

Ｗｅｂサービス（Ｗｅｂ２．０）

ジャンプできない

Ｗｅｂ（１．０）専用コンピュータシステム

要求レベル

高度

低度

セキュリティ

早晩成長が止まる

装置：ＨＰインクジェットプリンタ流通：Ｄｅｌｌ直販モデル（ＰＣ）、ｅＢａｙ（オンライン・オークション）通信：Ｓｋｙｐｅ（ＩＰ電話）・・・

技術が破壊的（Ｄｉｓｒｕｐｔｉｖｅ）である必要なしインテグレーションに高度なノウハウがある産業（自動車等）には、不向き

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オープンシステムへの変遷

オープン化・モジュラー化による破壊・置換的イノベーションの進展垂直統合から水平分業化へ

集中選択型ベンダーによるコストパフォーマンス差別化

出典：The Innovator’s Dilemma, C. Christensen, Harvard Business School

時間

垂直統合・相互依存（分解困難）性能・要求程度

ハイエンドユーザ要求程度

ローエンドユーザ要求程度

モジュラー・水平分業機能による差別化

コストパフォーマンス、カスタマイゼーション等による差別化

Ｄｉｓｉｎｔｅｇｒａｔｉｏｎ

ライフライン化


ディスラプティブイノベーションによる事業開発

要求の増大率が、製品技術の成長率よりも低い場合の対応技術が要求に追いつかない場合（技術ギャップ）は、持続型モデル

オーバーシュート（要求以上の技術提供）の認識と対処

研究型製品の導入は、ローエンドから（非対称の法則）スモールスタート等、成功確率をあげる一定のパターンが存在

過度の投資、過度のコミットメント、過度の期待を抱かせない成功と失敗へのフィードバック（期待以下だと負、期待以上だと正）

小差が大差

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（４）イノベーション創出の立地特性

異質で多様なものが出会い、触発すること

企業家精神（思考・行動）

場（創発機会）

インフラ（物理的環境）

機会の認識・実行・評価挑戦と未来志向（進取の気風）楽しむ、好きなことに没頭する

素材（ひと、もの、かね、情報）が豊富で流動的触媒の存在、コミュニティーのリズムセレンディピティ

よい大学の存在・専門支援組織の存在、公共政策、充実したネットワーク環境気候・文化風土のよさ将来の成功を価値化既存企業との共存共栄（Ｍ＆Ａ）


米国サンフランシスコベイエリア

シリコンバレー

サンフランシスコ

バークレー

オークランド

(Google Map)

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インドバンガロール

インド南部の高原ガーデンシティー、海抜９００ｍ、気候がよい、歴史もあり

インドのシリコンバレーインドソフトウェア輸出の35%(2004) オフショアリング、米国との繋がりInfosys, Wipro, Tata, …IBMも5万人規模でインドに拠点を設立(予定）

大学を中心とした経済発展IIS （インド科学大学院大学）IIIT-B （インド情報技術大学院）

テクノロジーパークの整備Electronics CityInternational Technology ParkSoftware Technology Parks

Electronics City

InternationalTech Park


中国中関村（ちゅうかんそん）

北京市西北部海淀区（かいでんく）の一部中関村科学技術園区（サイエンスパーク）７園の巨大ベンチャー企業エリア、研究開発エリア

中国のシリコンバレー聯想集団（レノボ）

IBMのPC部門買収

方正集団（ファウンダー）、…米国シリコンバレーとの繋がり、人材還流

大学や公的研究機関を中心とした産官学連携

清華大学、北京大学、中国科学院、…優遇政策

税制優遇、規制緩和（定款規定の優遇等）起業のワンストップオフィス

清華大学経済管理学院

中関村企業研究所

北京サイエンスパーク

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３．製品開発マネジメントー特に製造業を中心とした事業推進ー


製造業の特質と経営学

製造業の特質加工による付加価値化

部品ー最終製品の連鎖（サプライチェーンによる材の移転）

製品構成の設計思想－製品アーキテクチャ論

経営学の製造業へ適用主に、戦略論と組織論

コア・コンピタンス経営

プラットフォーム戦略と標準化

・・・

生産・製造・販売・保守工程等の経営学的体系化生産管理 ex. カンバン（Just In Time）方式

品質管理、品質保証 ex. QC活動

製造業出力入力

素材、部品部品（中間財）、最終製品

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製品アーキテクチャの重要性

製品構成の設計思想

市場競争力や企業戦略・企業間連携等への影響大

部品間特性

（サブシステム間の非依存度）

インテグラル

モジュラー

オープン化特性（部品間インターフェースの標準度）

クローズドオープン

統合・擦り合わせ

能力

選択・組み合わせ

能力

延岡健太郎, ＭＯＴ入門, 2006

水平分業

垂直統合

ex. パソコン

ex. 自動車


コア・コンピタンス経営

コア・コンピタンス：まねできない自社の強み、競争優位の源泉集団的学習、生産技術を調整法、複数技術の統合など

例： NEC C&Cツリー、日立日立の樹キャノン精密機械＋精密工学＋マイクロエレクトロニクス

コア・コンピタンス vs. 戦略事業単位（ＳＢＵ）

範囲の経済の効用

行動指針育成技術ロード・マップの明示

コア人材の流動化

アライアンス、アウトソーシング戦略明確化

・・・

事業１事業２事業３事業４

コア製品１

コア製品２

コンピタンス１

コンピタンス２

コンピタンス３

コンピタンス４

最終製品

Prahalad and Hamel, The Core Competence of the Corporation, HBR, 1990

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プラットフォーム戦略

プラットフォーム：標準、共通技術基盤、設計基盤等生産性の向上（技術転用、組織学習）

差別化で制約になることも

プラットフォーム戦略の類型化専有/共有：商品ライン間で共有するか否か

新規/再利用: 商品世代間で共有するか否か

新規開発重視

再利用重視

プラットフォーム専有化プラットフォーム共有化



事業推進の組織デザイン

組織構造機能別組織

プロジェクト組織

マトリックス組織（機能部門とプロジェクト制組織の並存）

マネージャの役割リーダシップ：変革を推し進める機能

オリエンテーション：組織方向づけ、ビジョンの提示

マネジメント：効率的に組織を運営する機能（過度は弊害）


機能部門

プロジェクト

マトリックス組織機能部門長

プロジェクトリーダ

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市場と技術の構造分析

ＳＷＯＴ分析：組織・企業の強み、弱み、機会、脅威の観点からの総合的判断

強み（Ｓｔｒｅｎｇｔｈｓ）

弱み（Ｗｅａｋｎｅｓｓｅｓ）

機会（Ｏｐｐｏｒｔｕｎｉｔｉｅｓ）

脅威（Ｔｈｒｅａｔｓ）

内部環境分析

外部環境分析

攻勢差別化

施策防衛・撤退

経済、技術革新、規制、文化、顧客、競合他社、．．．

コアコンピタンス（人材、資金、知財、情報、．．．）


その他の企業分析・構造化

３Ｃ分析Ｃｕｓｔｏｍｅｒ（顧客、お客）

Ｃｏｍｐａｎｙ（会社、自分）

Ｃｏｍｐｅｔｉｔｏｒ（競合相手）

５つの力（ＦｉｖｅＦｏｒｃｅｓ）新規参入

売り手（供給者）

代替品

買い手（ユーザ）

競合他社（敵対関係）

規模、ニーズ、セグメント、．．．

ブランド、シェア、経営資源、．．．

寡占度、参入困難性、価格競争、．．．

Ｃｕｓｔｏｍｅｒ

ＣｏｍｐｅｔｉｔｏｒＣｏｍｐａｎｙ

新規参入

代替品

競合他社（敵対関係）

売り手(供給者）

買い手(ユーザ）

Michael Porter, "How Competitive Forces Shape Strategy", Harvard Business Review, 1979

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４．技術経営の構成財管理

ー人・もの（情報）・金のマネジメントー

もの・ＩＰＲ（技術）

投資（Ｃａｐｉｔａｌ）

人材・組織

企業戦略・理念ＩＰＲ価値

企業家精神

研究テーマ選定ＩＰＲ創出

情報共有・意思決定

人材価値

投資スキーム

潜在ニーズ発掘技術革新

場の共創

ビジネスモデル


４.１. 知財マネジメント

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（１）知的財産（ＩｎｔｅｌｌｅｃｔｕａｌＰｒｏｐｅｒｔｙ）とは？

人の精神的な創造活動から生まれた創作物や、営業上の信用を表した標識などの経済的な価値（日本知的財産協会）

知的資産（ＩｎｔｅｌｌｅｃｔｕａｌＡｓｓｅｔ）とも呼ばれる

無形資産（ＩｎｔａｎｇｉｂｌｅＡｓｓｅｔ）の１つ

権利で保護されているものと秘匿（営業秘密、ノウハウ等）とがある

ＩＰＲ（ＩｎｔｅｌｌｅｃｔｕａｌＰｒｏｐｅｒｔｙＲｉｇｈｔｓ）：知的財産権

産業財産権：特許、実用新案、意匠（デザイン）、商標

新規性、進歩性があること

その他権利：著作権

http://www.jipa.or.jp/content/syoukai/zaisan.html

出典：日本知的財産協会


特許と著作権

特許アイデアを保護

保護期間：登録後、出願日から２０年

出願・公開制度による権利化（登録）

排他的権利

日本は先願主義

著作権表現を保護（著作物、プログラムなど）

保護期間：著作者の死後５０年

表現を行なった時点で権利発生

Fair Use（公正使用）などの考え方

公告番号

公告日（現在は廃止）

出願日

出願番号

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知的財産にまつわるマネジメント

特許ライセンス、特許侵害訴訟防衛だけでなく、攻めの姿勢が重要

クロスライセンス企業間で技術の実施権を交換。過度の特許ライセンス、侵害の応酬を防ぐ。

特許プール特許の有効活用、取引コストの低減例：画像の圧縮符号化技術

特許ポートフォリオ管理特許の維持コストと影響度（収入、他社比較）との分析

ビジネス方法特許ビジネスの方法も特許化可能。最近は、電子商取引は減少傾向。

発明者の貢献評価例：青色ダイオード、フラッシュメモリ、．．．

「プロパテント」（保護強化）と規制緩和とのバランス米国と日本の文化風土の違い


（２）目利き（無形資産の価値化）

無形資産（ＩｎｔａｎｇｉｂｌｅＡｓｓｅｔ）とは？会計的には、テクノロジープレミアム、ブランド価値など

市場付加価値（ＭＶＡ）＝株式時価総額ー株主資本

広義には、知的資産、人材、情報財なども含む（経済的・社会的に価値）

企業における特許発明者の貢献

サッカー、野球などの移籍料

選択権、機会、経験、将来の成功（失敗）

・・・

無形資産の価値は、財務諸表（Ｂ/Ｓ、Ｐ/Ｌ）に現われない

「のれん代」として、企業買収時等に顕在化

資産

負債

資本

収益費用

負債

株式時価総額

利益市場付加価値（ＭＶＡ）無形資産

プレミアム

Ｂ/Ｓ

Ｐ/Ｌ

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スタートアップモデルによる無形資産の価値化

価値化は、投下コストの積算ではなく、市場メカニズムで決定

投資額と所有比率による無形資産（ＩＰＲ価値、人材価値）の定量化

ＩＰＲ価値の定量化により分割所有、分割回収が可能

「小さく産んで大きく育てる」当該処理ではなく、全体プロセスの最適化を重視

ＩＰＲ（技術）

投資マネジメント

投資

ＩＰＲ（技術）

マネジメント

Ｐｒｅ-Ｍｏｎｅｙの価値Ｐｏｓｔ-Ｍｏｎｅｙの価値

（ＩＰＲ・マネジメント未実現価値の規定, 定量化）


リアルオプションー不確実性の価値と選択・保留の価値ー

将来生み出される価値の評価手法Ｂｌａｃｋ-Ｓｃｈｏｌｅｓのオプション価格理論を実資産・無形資産の評価に援用

不確実性に伴う収益と選択行使の権利による価値とを考慮効用：アップサイドゲインと選択（活用者）、リスクを考慮した実行（提供者）

課題：不確実性の定量評価、選択されなかった場合の損失

投資コストの現在価値（－）

将来キャッシュフロー期待値の現在価値（＋）

投資コストの現在価値（－）

将来キャッシュフロー期待値の現在価値（＋）

機会の有効期間（＋）

将来キャッシュフローの不確実性（＋）

オプション行使期間中の価値低減（ー）

リスクフリー金利（＋）

[行使価格]

[行使選択期間]

[金利（リスクフリー）] [配当]

[株価]

[不確実性（ボラティリティ）]

ＮＰＶリアルオプション

K. Leslie and M. Michaels, The Real Power of Real Options, 1997

ＮＰＶ：正味現在価値

将来生み出されるキャッシュフローを

現在に割り戻すことによる資産の価値評価法

（ＮｅｔＰｒｅｓｅｎｔＶａｌｕｅ）

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４.２. 投資マネジメント


（１）資金投入の方法とベンチャ・キャピタル

基本は、“他人のお金”の投入

投入金額の制約、投入者にとってのリスク軽減等の要因

投資と融資

ベンチャ企業への資金投入は、一般的に極めてハイリスク

世の中の法則：Low risk, low returnからHigh risk,

high returnまで様々なケースあり；High risk, low

returnはあるが、Low risk, high returnはない

ベンチャへの資金投入は、通常、投資の形をとる

→ ベンチャ企業への投資を生業にしているのが

Venture Capital ( VC )

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VCファンドの基本ストラクチャー(典型的な北米のVCの構造)

ベンチャーキャピタルファンド

(Limited Partnership)(Limited Partnership)

投資家(LP)＝Limited Partner(s)Limited Partner(s)

運用/投資意思決定者(GP)＝General Partner(s)General Partner(s)

マネジメントカンパニー

ファンド$の99%

ファンド$の1%

配当80%

配当20%コスト

投資有価証券

キャピタルゲイン

Review /

Advisory

Committee

Fee


ＶＣ投資の推移と投資領域（米国２００５年）

(PWC, Venture Source)

$ B

0

5

10

15

20

25

30

1995 1997 1999 2001 2003 2005

1Q2Q3Q4Q

13%

5%

8%

8%24%

18%

14%

10%通信・ネットワーク

ハードウエア

情報サービス

半導体

ソフトウエア

バイオ

その他ヘルスケア

その他（VentureOne )

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ベンチャーの一般的な発展過程

ステージ Seed Early Middle Late IPO

概要コンセプト・

技術開発

製品開発製品出荷

(利益無し)

市場開発市場地位

拡大

マネジメント創業者チーム編成

BOD編成

強化強化チーム再編 (成熟市場)

売上 $0 $0 ～$20M $20～50M $50M～

従業員数～10 10～20 20～100 100～ 150～

資金調達～$1M $2～5M $5～20M $10～30M $30～70M

企業価値 (Pre Money)

～$2M $2～10M $10～20M $20 ～

100M

$100 ～

300M

5～0～1 1～2 2～3 3～5Year


（２）投資審査（ＤＤ）時の評価内容

顧客への便益が明確か－顧客のどういう問題を解決するのか

（誰が顧客なのか；その顧客が何故その製品を買うのか）

市場規模が十分大きい（大きな成長が期待できる）か－４～５年で$1B程度

優秀なマネージメントチームかその領域の専門家；ＶＢ立ち上げの経験者；技術者だけでない

CEOがどんな質問にも的確に答えられるか

コア技術又は持続的競争優位性の源泉を持っているか

競争状況（通常、First Moverが好まれる）

技術の独自性、法的保護（特許）、等

（できれば）参入障壁があるか

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投資審査（ＤＤ）時の評価内容（続き）

魅力的なビジネス・モデルを持っているか利益を生み出す仕掛け

ファイナンシャルプランは妥当か売上成長及びP to P ( Path to Profit )リーズナブルな価格での投資か（Valuationが妥当か）

今後の資金調達の可能性(資本構成、等）

他の投資家は誰かTop TierのVCが投資する／しているか

Exitの可能性はどうか- IPO? M&A？（誰が買いそうか）

その他の大きなリスクがないか例えば、他のVBの提供するplatformへの依存、等

Portfolio Conflictの有無


４.３. 人材マネジメント

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（１）多様性を尊重する風土

Ｍｅｔｃａｌｆｅの法則

イノベーションに影響を与える人的要素多様性の尊重

画一的な（トップダウン）マネジメントは、効率的な側面もあるが、脆弱性と変化への不適合性とが内在

触発の機会（変化が起きやすい、起こさせやすい環境）豊富で流動的な素材（ひと、もの、かね、情報）、触媒の存在

触発の実行セレンディピティ＊（運を呼び込む能力）や、場のもつリズムも重要

ＮｅｔｗｏｒｋＣｏｍｐｕｔｉｎｇＰｏｗｅｒ（ＮＣＰ）

ＮＣＰ＝Ｎｏｄｅ数2

＊偶然に幸運な予想外の発見


参考：日本の人材の流動性の少なさ

ＯＥＣＤ諸国の高等教育修了者に対して、日本における流出入はともに少ない

日本は出入りともに少ない

他国への流出割合他国からの流入割合

出典：平成１８年度通商白書

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多様性触発の機会と実行－スモールワールドネットワーク－

スモールワールド直接の繋がりが少なくても、小数の間接的繋がりの連鎖により、到達可能

世の中狭いね！Ｉｔ‘ｓａｓｍａｌｌｗｏｒｌｄ！

ＳｉｘＡｐａｒｔ（ＳｉｘＤｅｇｒｅｅｓ）ｃｆ．４４６(≒７３億)～６５億（世界の人口）

Ｗａｔｔｓ-Ｓｔｒｏｇａｔｚのネットワーク重複部分をもつ小クラスターのネットワーク構成

強い繋がり：家族、親友、地域コミュニティー、・・・

弱い繋がり：ちょっとした知り合い、偶発性の繋がり、・・・

兼業、複数コミュニティー帰属、ＯＮとＯＦＦとのある生活、・・・の奨め

豊富な情報を有する中継者を発見・依頼し、異分野の情報を探索

D. J. Watts, Six Degrees: The Science of a Connected Age, Norton, 2003

～


（２）動機づけ（Ｍｏｔｉｖａｔｉｏｎ）

人の貢献度合いは、モチベーションに左右される一寸の虫にも五分の魂

マズローの欲求五段階仮説「生理的」、「安全」、「社会的（帰属）」、「尊重」、「自己実現」

モチベーション（なぜ働くか） ⇔ インセンティブ（どうすれ働くか）

自己実現の欲求

尊重の欲求

帰属と愛情の欲求

安全の欲求

生理的欲求

仕事により満足

まわりから理解されたい

集団の一員

基本的欲求

社会的欲求

個人の成長欲求

家族

食べる、寝る

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心持ち（Ｍｉｎｄｓｅｔ）

運命共同体（コミットメント）意識

関係メンバーにおける当事者意識・コンフリクト意識が重要

信頼関係の構築・崩壊・再構築と、それを支えるケミストリの重要性

研究・技術開発者

事業開発者

フェーズイン/フェーズアウト

役割

ビジネスの成熟度Ｒ＆Ｄインキュベーション事業開発


（３）人材確保戦略（リテンションストラテジー）

有望な人材を採用、育成、維持する（引き留める）ための実践的手法（金銭面、社会・組織面のインセンティブ等）

金銭面のインセンティブ報酬

社会・組織面のインセンティブ昇進（降格）、役職タイトル

人材開発（早期選抜、飛び級昇格、人材登録、企業内教育等）

権限（権限委譲、裁量権、自由度等）

その他人事評価と評価フィードバック

人事制度改革機会の平等、役割に応じた職務給ｃｆ．終身雇用制、年功序列制

参考文献：スティーブ・Ｙ・西浦, 「リテンションストラテジー」, かんき出版, ２００１

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５．技術経営の今後の展開


（１）知識仲介ーオープンイノベーションー

技術提携、Ｍ＆Ａなどの企業間関係マネジメント組織を超えた新しいイノベーションマネジメント

ＩＰＲ創造＋知識仲介＋価値化研究開発の役割進化

市場獲得の不明確さ研究開発

製品開発

現事業の持続的成長

内部研究開発投資

大学連携・外部資金・外部IPR

外部技術供与

新事業開発による市場置換・開拓

役割：ＩＰＲ創造＋知識仲介・価値化

ＯｐｅｎＩｎｎｏｖａｔｉｏｎ

出典：Open Innovation, H. Chesbrough, UC Berkeley HAAS Business School

ＣｌｏｓｅｄＩｎｎｏｖａｔｉｏｎ

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Ｃｉｓｃｏの買収型技術開発（Ａ＆Ｄ：Ａｃｑｕｉｓｉｔｉｏｎ＆Ｄｅｖｅｌｏｐｍｅｎｔ）

企業買収によるＴｉｍｅ-ｔｏ-Ｍａｒｋｅｔな技術開発最近の大型買収Ｓｃｉｅｎｔｉｆｉｃ－Ａｔｌａｎｔａ社（2005年、7000人規模、＄6.9Ｂ）

http://www.cisco.com/web/about/ac49/ac0/ac1/about_cisco_acquisition_years_list.html

‘０６‘０５‘０４‘０３‘０２‘０１‘００‘９９‘９８‘９７‘９６‘９５‘９４‘９３

SwitchingSolutions

ATMSolutions

SwitchingSolutions

Dial AccessSolutions

Firewall,Cache

SwitchingSolutions

EnterpriseSolutions

AccessRouters

SLM

GigabitEther Sol.

Token RingSwitch Sol.

Univ. AccessServers

WANSwitch Sol.

Security

Signaling

DSL Mplx.

Multi AccessPlatform

FirewallSol.

Sonet

IDSL Channel U

ISR

IP Telephony

Wireless

NWRegistrar

Prog.Switch

PolicyNW Sol.

IP/TV

ADSL Modem

NetSonar

Optical NW

Optical NW

Cust. Advocary

Cable

W-LAN

Web Scaling

IC Mgmt

Cable

Optical NW

Optical NW

DSL

IP Telephony

Media GW

Optical NW

Unif. Com.

Routing Sol.

CES GW

IADLC

Wireless NW

W-LAN

Unif. Msging

BB SM Sol.

VoIP

Integ. Access

Digital Video

Mob Wireless

IP SAN

VoIP Device

C-Aware SW

ATM-IP Sol.

Metro DWDM

Content NW

HS Silicon

Metro IP NW

Content Del.

Inf. Appliance

In-build. Wireless

NE MgmtSW Fabrics

Ent. VPN

SP VPN

VPN

SiliconTech. forMetro NW

IntrusionDetection

Storage

IOS

Ether SW

IP Aggregation

EnterpriseConferencing

Consumer/SOHO

Consumer/SOHOW-Router

HIDS

SecurityMonitoring

NW Soft

NW Mgmt

NAC

SIP

Mgmt Service

IP Service

TE Tech.

Storage NW

Routing

Security

SSL VPN

Security

Video

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ＸｅｒｏｘＰＡＲＣからのスピンアウト

スピンアウト会社の企業価値と本体の企業価値とが逆転する時期もあり

https://www.oecd.org/dataoecd/6/23/2461567.pdf

Henry Chesbrough, “Open Innovation: A New Paradigm for Managing Technology”, 2001よりスライド引用

28


（２）情報・サービス・格差への対応

全世界における年間の情報生成情報量はＥｘａｂｙｔｅ(x 1018)のオーダーへ

各国とも経済のサービス化が進展

SS

情報量

時間

１９４５１９９０１９９５２０００２００５

V. Bush“Memex”

Web

深層Web（動的・非公開）

環境・周辺情報（コンテキスト情報）

Web・ブラウザ実現

Web検索エンジン

Exabyte

Terabyte

Petabyte

Gigabyte

出典： “How Much Information? 2003” (UC Berkeley)

出典：平成１８年度通商白書

サービス経済化の動向


べき法則（ＰｏｗｅｒＬａｗ）

情報財に関連する振舞いの多くは、べき法則に従うＺｉｐｆの法則、ロングテール現象

本質的な格差が内在ｃｆ．Ｐａｒｅｔｏ（「８０：２０」）の法則、Ｍｕｒｐｈｙの法則

べき法則とは？変数のべき乗と比例（両対数グラフ上で直線）

http://www.wired.com/wired/archive/12.10/tail.htmlhttp://www.ucl.ac.uk/~ucbplrd/zipf.png

Chris Anderson

Ｚｉｐｆの法則単語の出現頻度と出現順位との関係

ＴｈｅＬｏｎｇＴａｉｌ非常に大多数の小規模取引からの売上（特に、ＥＣ）

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（３）オフショアリングの影響

オフショアリング（海外業務委託）増加＄１７Ｂ～３２Ｂ（２００３年）

インド（約半分）、中国等へ

定型業務から高度Ｒ＆Ｄ業務も

米国大学生のコンピュータサイエンス志望半減

米国のＩＴ関連の就業人口は３．８％増約３００万人（２００４年）だが

学位取得者増加率＜雇用増加率

中国、インドの大学は、飛躍的増加

1996年学生数

2005年学生数

増加率

大学（学部） 26,167 102,723 400％

大学院（修士） 2,032 18,300 900％

大学院（博士） 360 1,798 500％

（出典）ＣｏｍｐｕｔｅｒＲｅｓｅａｒｃｈ

Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ

米国コンピュータ科学学科志望学生数

（引用）北京航空航天大学ＷｅｉＬｉ学長の講演資料 “Past, Present and Future of Computer Science and Engineering Education in China” （2006年10月23日）より

http://www.acm.org/globalizationreport/ （2006年 2月）

中国コンピュータ科学・工学科学生数


（４）イノベーション・エコシステム

公共政策としての技術経営

社会全体の効用を考え、政策・インフラ基盤から活性化

供給と需要（欲求）との対応の中でイノベーションを捉える

需要側・基礎研究フェーズにもイノベーションを見出す

イノベーション

供給需要（欲求）

政策（環境）例；教育、知財保護、規制

国家インフラ基盤例；運輸、エネルギー、情報ネットワーク

スキル・知識リスク管理研究・技術開発

品質安心・安全カスタム・便利効率・デザイン

ＩｎｎｏｖａｔｅＡｍｅｒｉｃａ（「パルミサーノ・レポート」）

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まとめ

マトリックス型技術経営技術活用ステージ

イノベーションマネジメント－研究開発からの新事業開発

（製造業の）事業マネジメント－製品開発・生産管理等

構成財知的財産管理、投資管理、人材管理

技術経営のフレームワークを理解した上での、情報共有と意思決定の実行のしかたが重要

イノベーション創出のためのマネジメントでは特に重要

技術経営の今後の展開サービスのマネジメント

オープンイノベーション

情報活用、ＩＴ活用と技術経営


参考文献

技術経営全般ジョージ・デイ, ポール・シューメーカー, ウォートンスクールの次世代テクノロジー・マネジメント, 東洋経済新報社, 2002一橋大学イノベーション研究センター, イノベーション・マネジメント入門, 日本経済新聞社, 2001延岡健太郎, ＭＯＴ[技術経営]入門, 日本経済新聞社, 2006

イノベーションマネジメント関連デイビッド・A・カプラン, シリコンバレー・スピリッツ, ソフトバンクパブリッシング, 2000梅田望夫, シリコンバレー精神, ちくま文庫, 2006ジョー・ティッド他, イノベーションの経営学, ＮＴＴ出版, 2004ジェフリー・ムーア, キャズム, 翔泳社, 2002クレイトン・クリステンセン, 翔泳社, 2000ヘンリー・チェスブロウ, 「ＯｐｅｎＩｎｎｏｖａｔｉｏｎ」, 産業能率大学出版部, ２００４ダンカン・ワッツ, スモールワールド・ネットワーク, 阪急コミュニケーションズ, 2004クリス・アンダーソン, ロングテール, 早川書房, 2006マーク・ステフィック, バーバラ・ステフィック, ブレイクスルーイノベーションの原理と戦略, オーム社, 2006

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技術経営 - 京都大学...1 © GraduateSchoolofManagement，KyotoUniversity2007 技術経営 京都大学経営管理大学院 原良憲 [email protected] 京都大学経営管理大学

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