10
コンクリートの劣化現象 ~主にアルカリ骨材反応について~ 港湾空港技術研究所 構造研究G 川端雄一郎 アルカリ骨材反応とは 骨材に含まれる反応性物質(主にシリカ鉱物)がアルカリと 反応してアルカリシリカゲル(ASRゲル)を生成・膨張 ASRの事例紹介 ASRと上手く付き合う 骨材の反応性を理解する試験法の課題,将来展望 反応を抑制するフライアッシュ,スラグ アル カリ 骨材

20170710 miyako yk 配布コンクリートの劣化現象 ~主にアルカリ骨材反応について~ 港湾空港技術研究所 構造研究G 川端雄一郎 アルカリ骨材反応とは

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • コンクリートの劣化現象~主にアルカリ骨材反応について~

    港湾空港技術研究所構造研究G

    川端雄一郎

    アルカリ骨材反応とは

    骨材に含まれる反応性物質(主にシリカ鉱物)がアルカリと反応してアルカリシリカゲル(ASRゲル)を生成・膨張

    ASRの事例紹介

    ASRと上手く付き合う 骨材の反応性を理解する→試験法の課題,将来展望 反応を抑制する→フライアッシュ,スラグ

    アルカリ

    骨材

  • Chambon dam, France

    1930-1935建設 現在も継続して膨張

    Salanfe dam, Switzerland 

    DriftingDrifting

  • 骨材の反応性とは?

    高いpHのアルカリ溶液で反応性物質が溶解。 鉱物によって溶け方が違う。

    偏光顕微鏡による観察による反応性物質の同定が重要。 ただし,反応性物質があるからといって必ず膨張するわけではない。 化学的な視点(溶解),物理的な試験(膨張)を併用することが重要。

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    700

    800

    13.0 13.2 13.4 13.6 13.8 14.0アルカリ溶液のpH

    Sc (m

    mol

    /l)

    An(N)

    An(Q)

    An(R)

    試験法の課題

    JIS:2つの骨材試験法 化学法(JIS A 1145) モルタルバー法(JIS A 1146)

    必ずしも骨材の反応性を検出できるわけではない ペシマム 遅延膨張性骨材

    海外の試験法 ASTM C 1260 デンマーク法

  • 化学法

    ペシマム

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    700

    10 100 1000Sc (mmol/l)

    Rc (

    mm

    ol/l)

    No.1 No.2No.3 No.4No.5 No.6No.7

    風化

    halloysite(7Å)

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    0 50 100 150 200試験期間 (日)

    膨張

    率 (

    %)

    No.1 No.2 No.3No.4 No.5 No.6No.7

    風化度大:非膨張

    風化度小:膨張

    風化度大風化度小

  • ペシマム

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    0 50 100 150 200試験期間 (日)

    膨張

    率 (

    %)

    No.1 No.2 No.3No.4 No.5 No.6No.7

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0.25

    0.3

    0 50 100No.3混合率 (%)

    膨張

    率 (

    %)

    骨材全量を使用するモルタルバー法ではペシマムを検出できない

    化学法でSc/Rcが小さい領域は要注意0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0.6

    0.7

    0 2 4 6 8Sc/Rc

    膨張

    率 (

    %)

    No.1 No.2No.3 No.4No.5 No.6No.7

    風化

    ASTM C 1260,デンマーク法

    ASTM C 1260:1mol/lアルカリ溶液に浸漬する試験法 デンマーク法:飽和NaCl溶液に浸漬する試験法

    ペシマム現象を生じる骨材であっても検出

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0 7 14 21 28試験期間 (日)

    膨張

    率 (

    %)

    No.1No.2No.3No.4No.5No.6No.7

    0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    0 50 100 150 200試験期間 (日)

    膨張

    率 (

    %)

    No.1 No.2No.3 No.4No.5 No.6No.7

  • 遅延膨張性骨材

    泥質片岩

    ゲル脈

    モルタル

    1mm

    遅延膨張性骨材

    0.1mmゲル脈 隠微晶質石英

    隠微晶質石英

    泥質片岩に含まれる隠微晶質石英が反応性鉱物

  • 化学法,モルタルバー法

    0

    200

    400

    600

    1 10 100 1000

    アル

    カリ

    濃度

    減少

    量R

    c(m

    mol/

    l)

    溶解シリカ量Sc(mmol/l)

    0.00

    0.05

    0.10

    0.15

    0.20

    0 100 200

    膨張

    率(%

    )

    促進期間(日)

    1.20% 1.80%

    2.40%

    現行の試験では、反応性を適切に評価することができない

    ASTM C 1260,デンマーク法

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0.5

    0 100 200

    膨張

    率(%

    )

    促進期間(日)

    ASTM法では反応性を検出可能

    不明

    有害

    無害

    デンマーク法では反応性を検出できない

    不明

    有害

    0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35 0.40 0.45

    0 10 20 30

    膨張

    率(%

    )

    促進期間(日)

    無害

  • 骨材試験から膨張予測へJCI-TC115FS提案の試験法(AW-CPT)JCI-152Aで改良予定

    0

    0.05

    0.1

    0.15

    0.2

    0 10 20 30 40 50

    Expansion (%)

    Time (week)

    60°C40°C20°C

    福岡 横須賀

    ‐0.1

    0

    0.1

    0.2

    0.3

    0.4

    0 100 200 300

    Expansion (%)

    Time (week)

    ‐5

    5

    15

    25

    35

    2011/3/28 2012/3/28 2013/3/28 2014/3/28 2015/3/28 2016/3/28

    Tempe

    rature (°C)

    Temperature(Fukuoka) Temperature(Yokosuka)

    ASRの抑制

    骨材の反応性を完璧に評価できる試験法はない

    上手く付き合うには,反応を制御すればよい

    水を減らす

    アルカリを減らす

    アルカリ

    骨材

  • アルカリとは何か?

    世界的に重大な勘違いや誤解

    アルカリ金属イオン(Na++K+)の対イオンとなるOH-が重要。

    アルカリ金属イオンの対イオンがOH-でなければ大きな問題はない。(特殊事例は除く)

    一般的なセメントであれば,Na++K+はOH-とバランス

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    600

    700

    800

    13.0 13.2 13.4 13.6 13.8 14.0アルカリ溶液のpH

    Sc (m

    mol

    /l)

    An(N)

    An(Q)

    An(R)

    Sorp

    tion

    amou

    nt o

    f Na

    or K

    (mm

    ol/g

    )

    Ca / (Si+Al) molar ratio

    アルカリの制御

    Al Si

    Ca

    Ca Na

    セメントから生成されるC-S-H

    液相のアルカリと強い相互作用

    C-S-HのCa/(Si+Al)比を下げるとアルカリはたくさん固定される

  • フライアッシュの効果

    Ca/Si=1.0‐1.2Ca/Si>1.7

    0 0.01 0.02 0.03

    rv/sv50‐FA20

    rv/sv50‐FA0

    rv/sv20‐FA20

    rv/sv20‐FA0

    mean (Na+K)/Si atomic ratio

    C‐S‐H gel

    FA product

    aggregate: KsFA 0%

    FA20%

    FA 0%

    FA20%

    セメント フライアッシュ

    セメントの一部をフライアッシュで置換することによって空隙水のアルカリが減少

    ASRに使用できるアルカリが減る

    終わりに

    ASR構造物の維持管理は大変。新設時に適切な対策を。

    ASRに関する基礎を紹介。

    ASRは難しい。リスクがあるなら早めに専門家に相談を。

    森北出版,¥15,000

    是非ご購入ください!