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1 2018 年 9 月 28 日(金) JPEC 世界製油所関連最新情報 2018 年 9 月号 (2018 年 8 月以降の情報を集録しています) 一般財団法人 石油エネルギー技術センター調査情報部 目 次 概 況 1. 北 米 6 ページ (1) PBF Energy が Chalmette 製油所の遊休装置を再稼働する情報 (2) ハワイ州の石油精製事業の統合情報 (3) Philadelphia Energy Solutionsの破産保護に基づく新事業活動情報 2. ヨーロッパ 11 ページ (1) Gunvor が Rotterdam 製油所のアップグレード計画を再検討 (2) カナダの Irving Oil がアイルランドの流通販売企業を買収 (3) 欧州主要国の石油精製能力の概要を伝える情報 3. ロシア・NIS諸国 16 ページ (1) Lukoil の Nizhny Novgorod 製油所におけるディレードコーカー建設開始情報 (2) ロシア製油所に関する最近の報道内容 4. 中 東 19 ページ (1) サウジアラビア Saudi Aramco の 2017 年の業績と事業方針 1) アップストリーム事業部門 2) ダウンストリーム事業部門 3) 技術開発 4) サステナビリティーへの取り組み (2) イラン Tabriz 製油所の状況と中国・ロシアとの出資交渉 (3) Saudi Aramco の JV 事業のトピックス 1) Jazan 経済都市で、発電・水素・ユーティリティー事業の JV を設立 2) 合成ゴム JV の ARLANXEO を 100%子会社化 次ページに続く

2018 年9月28 日 金 JPEC 世界製油所関連最新情報 2018年9月号...1 2018年9月28日(金) JPEC 世界製油所関連最新情報 2018年9月号 (2018年8月以降の情報を集録しています)

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    2018年 9月 28日(金)

    JPEC 世界製油所関連最新情報

    2018 年 9月号

    (2018年 8月以降の情報を集録しています)

    一般財団法人 石油エネルギー技術センター調査情報部

    目 次

    概 況

    1. 北 米 6ページ

    (1) PBF Energyが Chalmette製油所の遊休装置を再稼働する情報

    (2) ハワイ州の石油精製事業の統合情報

    (3) Philadelphia Energy Solutionsの破産保護に基づく新事業活動情報

    2. ヨーロッパ 11ページ

    (1) Gunvorが Rotterdam製油所のアップグレード計画を再検討

    (2) カナダの Irving Oilがアイルランドの流通販売企業を買収

    (3) 欧州主要国の石油精製能力の概要を伝える情報

    3. ロシア・NIS諸国 16ページ

    (1) Lukoilの Nizhny Novgorod製油所におけるディレードコーカー建設開始情報

    (2) ロシア製油所に関する最近の報道内容

    4. 中 東 19ページ

    (1) サウジアラビア Saudi Aramcoの 2017年の業績と事業方針

    1) アップストリーム事業部門

    2) ダウンストリーム事業部門

    3) 技術開発

    4) サステナビリティーへの取り組み

    (2) イラン Tabriz製油所の状況と中国・ロシアとの出資交渉

    (3) Saudi Aramcoの JV事業のトピックス

    1) Jazan経済都市で、発電・水素・ユーティリティー事業の JVを設立

    2) 合成ゴム JVの ARLANXEOを 100%子会社化

    次ページに続く

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    5. アフリカ 24ページ

    (1) ナイジェリアの LNG増産への取り組み

    (2) 南スーダンが Toma South油田からの原油のパイプライン輸送を再開

    6. 中 南 米 27ページ

    (1) 米国からメキシコへの天然ガス輸出

    (2) ブラジル Petrobrasの 2018年上半期の業績

    7. 東南アジア 30ページ

    (1) 南シナ海、マラッカ海峡を通過する原油輸送量の EIAのデータ

    (2) ベトナム Long Son Petrochemicalのオレフィンプラント建設で契約

    (3) インドの IOCが BS-Ⅵ対応で水素プラントの拡張に取り組む

    (4) バングラデシュで浮体式 LNG輸入施設が稼働

    8. 東アジア 34ページ

    (1) 中国 Sinopec Corpと PetroChinaの 2018年上半期の業績概要

    (2) Sinopecのクリーン燃料出荷関連のトピックス

    1) Shanghai Petrochemicalが南アフリカ共和国向けにディーゼルを輸出

    2) Shanghai Petrochemicalが国 VIガソリン・ディーゼルを出荷

    3) 香港向けに Euro-5基準のガソリンを継続的に供給

    (3) 中国の LNG関連情報

    1) ロシアの Yamal LNGトレイン 2から中国向けに LNGが初出荷

    2) 中国 CNOOCが深セン市の LNG輸入ターミナルを稼働

    9. オセアニア 37ページ

    (1) オーストラリア・サウスウェールズ州に LNG「輸入」ターミナルの建設計画

    (2) オーストラリア CSIROが水素エネルギーのロードマップを公表

    1) 水素のバリューチェーン

    2) 水素の生産

    3) 水素の利用

    「世界製油所関連最新情報」は、原則として 2018年 8月以降直近に至るインターネット情報をまとめたものです。JPECの ウェブサイトから改訂最新版をダウンロードできます。

    http://www.pecj.or.jp/japanese/overseas/refinery/refinery_pdf.html 下記 URLから記事を検索できます。(登録者限定)

    http://info.pecj.or.jp/qssearch/#/

    http://www.pecj.or.jp/japanese/overseas/refinery/refinery_pdf.htmlhttp://info.pecj.or.jp/qssearch/#/

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    概 況 1.北米

    米国 PBF Energyは、ルイジアナ州の Chalmette製油所で、IMO規制対応の低硫

    黄船舶燃料等の生産目的で水素化分解装置とコーカーの再稼働を計画している。

    ハワイの Par Pacificは、Island Energy Servicesの Kapolei製油所を買収し、

    ハワイの全 2製油所を傘下に収める。IESは、燃料販売事業を継続する。なお、

    Kapolei製油所の装置構成はIMOの船舶燃料の硫黄濃度規制対応に有利と見られ

    ている。

    事業再建中の米国 Philadelphia Energy Solutions(PES)が再生可能燃料会社 RNG

    と組んで、食品廃棄物を大規模に収集し、バイオメタンを生産する事業に参入す

    る。PESは、バイオメタン販売を RINクレジットに利用する計画である。

    2.ヨーロッパ

    トレーダーの Gunvorは、ロッテルダム製油所の近代化プロジェクトを棚上げし

    た。Gunvorは、IMO規制対応の低硫黄船舶燃料の需要が、想定以下となる見通し

    であることから計画の見直しを選択した。

    アイルランド唯一の Whitegate製油所を操業するカナダの Irving Oilが、燃料

    販売、コンビニエンス事業会社 Tedcastle Groupを買収した。Irvingのアイル

    ランド市場の燃料販売シェアは 40%で、業績は良好である。

    欧州の石油精製会社の精製能力をまとめたレポートが公表された。国別精製能力

    は、ドイツ・イタリア・スペイン・英国・オランダの順。欧州の精製業は、依然とし

    て、ロシアなどの輸出攻勢に曝されている。

    3.ロシア・NIS諸国(New Independent States)

    ロシアの民間石油会社 Lukoilの Nizhny Novgorod製油所でディレードコーカー

    の建設工事が始まった。製品収率、白油化率を引き上げることを目指している。

    ロシアでは、政府の強力な指導や税制の下で、多くの製油所で近代化が急速に進

    んでいる。しかしながら、旧態化した設備で劣質な燃料を生産している製油所も

    多い。

    ロシアの製油所では、設備や製品の環境対応を徐々に進めているが、高品質ガソ

    リンの生産には、イソパラフィンや含酸素化合物の生産プラントが必要になる。

    4.中東

    原油価格が上昇している中で、サウジアラビア国営 Saudi Aramcoが 2017年版の

    年次報告で、好業績を発表している。原油類の生産、輸出も好調で、新たな埋蔵

    も発見されている。

    ダウンストリーム事業では、Sadaraのフル稼働や crude oil to chemicalsプロ

    ジェクトなど国内石油化学事業が進展している。また、国外では、米国・インド・

    マレーシア・インドネシア・中国の石油精製事業で進展があった。

    イランの Tabriz製油所では、近代化プロジェクトで、中国・ロシアとプロジェク

    トへの参加を交渉している。

    Saudi Aramcoは、Jazan経済都市に発電・水素・ユーティリティー事業の JVを設

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    立する。中核企業は 55%以上を出資する予定の Air Productsで、同社が建設と

    ともに 25年間に亘りプロジェクトを主導する計画である。

    Saudi Aramcoは、ドイツの Lanxessと設立したエラストマー事業の JV ARANXEO

    の株式 100%を取得した。Saudi Aramcoは ARANXEO を通じて、C4ケミカル事業

    を拡大する方針である。

    5.アフリカ

    天然ガス輸出市場のシェア拡大を目指すナイジェリアは、懸案の Nigeria LNG

    の拡張を決定した。LNGトレインを 1基増設し、既設設備のボトルネック解消を

    図り、LNG輸出能力を 2,200万㌧/年から 3,000万㌧/年に増強する。FEEDは、既

    設トレインの建設を手掛けた、KBRのコンソーシアムが受注した。

    スーダンと南スーダンの関係改善を受けて、南スーダンの Toma South油田から

    スーダンのパイプラインへの原油の供給が再開された。

    6.中南米

    テキサス州などのシェールガス増産で、米国からメキシコへの天然ガスによるパ

    イプライン輸出が増えている。メキシコの天然ガス需要増を満たすために建設さ

    れている、天然ガスパイプラインが、次々に完成している。

    2018年上半期のブラジル国営 Petrobrasの業績は、世界の主要石油会社と同様

    に、2017年の上半期に比べて増収・増益となった。原油価格の上昇が要因である。

    一方、石油製品の販売量は減少した。

    7.東南アジア

    米国エネルギー情報局(EIA)が、南シナ海・マラッカ海峡を通過する原油の輸送量

    を報告している。2016年に南シナ海を通過した原油量は、世界の海上輸送量の

    30%を占めている。

    日本・韓国が輸入する原油の 90%は南シナ海経由で、大半はマラッカ海峡も通過

    している。

    ベトナム最大の石油化学事業となる Long Son Petrochemicalsプロジェクトは、

    オレフィンプラントの建設業務を TechnipFMCに発注した。クラッカーの生産能

    力は 160万㌧/年で、原料はナフサと LPGを使用する。

    インド国営 IOCが、ガソリン・ディーゼルの BS-VI対応で、6製油所の水素化脱

    硫能力の強化に必要な水素プラントの水素精製装置の新増設(16.6万㌧/年)に、

    Honeywell UOPの PolybedTM技術を採用する。

    バングラデシュ初の LNG輸入ターミナル MLNGが稼働した。再ガス化能力は 5億

    cf/日で、天然ガスはベンガル湾東岸のチッタゴン管区に輸送される。

    8.東アジア

    中国国有Sinopec Corp.とPetroChinaの2018年上半期の業績が公表されている。

    両社とも原油の増産を要因に、前年同期比で増収・増益となっている。増益率は

    上流事業の比率の高い PetroChinaが Sinopecを上回った。

    精製事業部門では原油処理量が増加した。需要構造の変化を受けて燃料の生産量

  • 5

    ではガソリン/ディーゼル比が上昇した。

    Sinopec Corpの Shanghai製油所は南アフリカ共和国向けにディーゼルを初輸出

    した。

    Shanghai Petrochemicalは、10月 1日の規制施行を控えて、国 VIガソリン・デ

    ィーゼルを上海市向けに出荷した。広東市の Guangzhou Petrochemicalが、香港

    向けに Euro-5ガソリンの定期的な出荷を開始した。両社とも Sinopec Corp.の

    精製子会社。

    中国国有CNPCが出資し、中国企業が建設に関与しているロシアの北極圏のYamal

    LNGのトレイン 2から LNGが中国向けに初出荷された。

    中国国有 CNOOCの、深圳市で 4基目の LNG輸入ターミナルが稼働した。今冬から

    中国北部向けに天然ガスを,700m3/日供給する予定。

    9.オセアニア

    世界で 2番目の LNG輸出国であるオーストラリアの東部地域では、天然ガス供給

    力不足が懸念されているが、サウスウェールズ州の Port Kembla に浮体式 LNG

    輸入プラントを設置する計画が発表された。

    オーストラリアの科学産業開発機構 CSIROが、水素事業のロードマップを発表し

    た。内容は、① 水素のバリューチェーン、②生産、③ 貯蔵方法、④ 輸送手段、

    ⑤ 利用方法(輸送用燃料・僻地電力・工業用原料・熱源・合成燃料・輸出)など広範

    囲に亘っている。

  • 6

    1.北米

    (1) PBF Energyが Chalmette製油所の遊休装置を再稼働する情報

    米国東部地域を事業拠点とする独立系精製会社 PBF Energy Inc.は、ルイジアナ州

    New Orleans の Chalmette 製油所(19 万 BPD)で、2010 年以来運転を停止している水

    素化分解装置(2.3万 BPD)とコーカー(1万 BPD)の再稼動を検討している。

    Chalmette製油所は、前所有者の Exxon Mobilとベネズエラ国営石油会社の PDVSA

    が、50:50 の権益で運営していたが、本報の 2015 年 7 月号(北米編)第 2 項の「PBF

    Energy による Chalmette 製油所の買収情報」で報告した通り、2015 年 6 月に PBF

    Energyが買収した製油所である。水素化分解装置とコーカーは、2007年〜2009年の

    世界的な景気後退期の 2010年に運転を停止していた装置で、それ以来稼働していな

    い。

    PBF Energy は、Chalmette 製油所の 2 装置の再稼動発表と同時に、同社のデラウ

    ェア州の Delaware City 製油所(18.2 万 BPD)に水素製造装置を新設する計画も発表

    している。水素製造装置の建設は、PBF Energy 傘下の国内 5製油所(合計約 88.4万

    BPD)の高硫黄重質原油の処理能力やクリーン燃料の生産能力を向上し、同時に装置

    類運転の信頼性を改善するなど、総合的な最適化を図るものであると説明されてい

    る。

    図 1 は米国の独立系石油精製会社の精製能力に占めるコーカー能力の比率を示し

    ているが、PBF Energyの比率は Phillips 66の 19%に次ぐ 18%を示しており、この

    優位性を生かした製油所の運営を念頭に置いたものと考えられる。

    図 1. 米国における独立系石油精製会社の精製能力に占めるコーカー能力比率

    (出典:PBFの 2018年 6月決算発表会資料)

  • 7

    PBF Energy が Chalmette 製油所のコーカーの再稼動や新装置の建設に積極的姿勢

    を示す背景には、2020年から施行される国際海事機関(IMO)の船舶燃料中の硫黄分規

    制(現状の 3.5%から 0.5%以下に引き下げる)があると見られている。

    2020 年時点で、船舶燃料としての重質油とクリーン燃料の価格差は、大幅な開き

    が生じるものと想定されていることから、設備投資資金の回収は容易であると PBF

    Energyは見ていることになる。

    今年 6月に PBF Energyの子会社が、水素化分解装置の再稼働に関わる税控除を求

    めてルイジアナ州経済開発省に提出した書類には、、コーカーの再稼働に伴う設備投

    資額は約 1.08 億ドルと記されている。同社は別途、約 5.03 億ドルを投資する「製

    油所のアップグレード」に関わる書類も提出したとされるが、同社から説明は無く、

    今回の 2装置再稼働の関係についての詳細は不明である。

    PBF Energy は、8 月 14 日に終了する普通株式 600 万株の公募により約 2.91 憶ド

    ルを調達し、高硫黄重質原油を処理してクリーン燃料を製造するプロジェクトに投

    資すると共に、一部を Chalmette 製油所の 2 装置の再稼働プロジェクト用に充てる

    予定である。

    <参考資料>

    https://www.nasdaq.com/article/pbf-chalmette-refinery-mulls-reviving-idle-coker-hcu-20

    180810-00527

    https://www.theadvocate.com/new_orleans/news/business/article_0b1abc1a-9f3e-11e8-99c7-

    db0602687392.html

    https://www.nasdaq.com/article/pbf-energy-to-resurrect-idle-units-with-offering-procee

    ds-cm1006841

    http://investors.pbfenergy.com/~/media/Files/P/PBF-Energy-IR-V2/reports-and-presentati

    ons/20180619-pbf-june-presentation-vfr.pdf

    (2) ハワイ州の石油精製事業の統合情報

    ニューヨーク州を拠点とする One Rock Capital Partners LP の子会社の Island

    Energy Services LLC(IES)は、ハワイ州オアフ島の Kapolei 製油所(5.4 万 BPD)を、

    Par Pacific Holdings Inc.に売却し、自らは石油製品の流通事業並びに販売事業に

    専念することになった。

    Par Pacific は、取得する製油所の操業に必要な、原油および関連製品の貯蔵・流

    通インフラの使用に関する長期契約も締結することで合意している。実際には監督

    官庁の認可を得た後、買収が成立するが、両社は今年の第 4 四半期末までに、これ

    らの手続きが終了するものと期待している。

    Kapolei 製油所は、主として軽質低硫黄原油を処理する製油所で、IES は 2016 年

    にChevron USA Inc.から同製油所を買収している(2016年5月号北米編第2項参照)。

    https://www.nasdaq.com/article/pbf-chalmette-refinery-mulls-reviving-idle-coker-hcu-20180810-00527https://www.nasdaq.com/article/pbf-chalmette-refinery-mulls-reviving-idle-coker-hcu-20180810-00527https://www.theadvocate.com/new_orleans/news/business/article_0b1abc1a-9f3e-11e8-99c7-db0602687392.htmlhttps://www.theadvocate.com/new_orleans/news/business/article_0b1abc1a-9f3e-11e8-99c7-db0602687392.htmlhttps://www.nasdaq.com/article/pbf-energy-to-resurrect-idle-units-with-offering-proceeds-cm1006841https://www.nasdaq.com/article/pbf-energy-to-resurrect-idle-units-with-offering-proceeds-cm1006841http://investors.pbfenergy.com/~/media/Files/P/PBF-Energy-IR-V2/reports-and-presentations/20180619-pbf-june-presentation-vfr.pdfhttp://investors.pbfenergy.com/~/media/Files/P/PBF-Energy-IR-V2/reports-and-presentations/20180619-pbf-june-presentation-vfr.pdf

  • 8

    Par Pacific(旧 Par Petroleum Corp.)は、この買収に先立ち、2013年に Tesoro(現

    Andeavor)から同名の Kapolei 製油所(9.4 万 BPD)を買収しており、子会社の Par

    Hawaii Refining LLCが、製油所を操業している(2013年 7月号北米編第 2項参照)。

    ハワイ州では、同名の 2 つの Kapolei 製油所が操業しているが、買収後は Par

    Pacificのみがハワイ州で製油所資産を所有する企業になる。

    Par Pacificの Kapolei製油所も二次処理装置の装備率は低く、基本的には原油の

    選択で製品構成を調整している。また、Par Pacific は Andeavor から製油所を買収

    して以来、ガソリン増産目的の設備投資は行っていない。同社は、2019 年に製油所

    設備の更新を目的として 1,000 万ドルを投資すると発表しているが、投資の内容に

    関する情報は得られていない。

    このような事情から、Par Pacific の Kapolei 製油所は、ディーゼルの得率は約

    50%と高い値を示している。このディーゼル得率が高いことが、2020 年 1 月から施

    行される国際海事機関(IMO)による船舶燃料の硫黄分規制対応で、プラスに働くもの

    と思われる。

    IESは、ハワイ州に本拠を置き燃料マーケティングおよび物流事業を展開している。

    その物流関連資産は、Par Pacific が保有する 91 ヶ所の給油所数より数の上で劣る

    ものの、Texacoブランドを掲げた 56ヶ所の給油所を保有しているほか、Kapoleiの

    石油輸入ターミナルに加え、ホノルル市内の他、マウイ島、カウアイ島、ハワイ島

    に製品流通ターミナル加えパイプライン流通システムなど、州内に多くの物流イン

    フラを所有している。

    IESの給油所への燃料の供給に関しては、燃料貯蔵および流通サービスに関する長

    期契約を Par Pacific との間で取り交わしたことから、これまで通りネットワーク

    から石油製品の供給される予定で、石油製品の供給が中断することは無いとしてい

    る。

    さらに IESは、2019年初頭に Kapoleiで Texacoブランドの新規の給油所を開設す

    ると共に、他の場所でも新給油所を開設するなど、販売事業を今後も拡大する事業

    計画を発表している。

    Par Pacificと IESは、ハワイ州内に数多くの給油所を運営し、これらのネットワ

    ークを維持する物流システムを備えている。会員制倉庫型卸売り・小売りチェーン店

    (warehouse clubs)の Costcoも石油製品を輸送し販売することはあるが、Par Pacific

    と IESの両社で、ほぼ州内需要の 100%を賄っていることが分かる。

    今後、Par Pacificの下で稼働する 2製油所の将来性に関しては、ハワイ州が進め

    る脱化石燃料計画の「Hawaii Clean Energy Initiative」が大きく関わってくると

    思われる。当該計画は、2030年までに同州で消費されるエネルギーの 70%をクリー

  • 9

    ン・エネルギー由来にする内容であり、今後、化石燃料の使用量は大幅に削減される

    と見られている(2017年 12月号北米編第 3項参照)。

    しかし、今日の実際の需要に応え、ハワイのクリーンエネルギー化への円滑かつ

    実用的な移行を確実にする役割を担うことを化石燃料は負っているとも言える。例

    えば、、国内線・国際線の航空機による移動が欠かせないハワイでは、州内で精製さ

    れたジェット燃料が需要を支えている。また、ハワイ州の最大の輸出石油製品はジ

    ェット燃料であることも忘れてはならない。

    ハワイ州政府は非化石燃料への切り替えを主導しているが、ジェット燃料に関し

    ては、安定供給を必要とする軍関係施設や商用航空会社への対応は必然である上、

    ジェット燃料に代わる燃料や液体燃料を使用しない航空機はこれまで実用化されて

    いない。この特殊性が米国本土から遠く離れたハワイ州の燃料販売全体に影響を及

    ぼしている。

    <参考資料>

    https://www.islandenergyservices.com/news/ies-shifting-strategic-focus-logistics-retai

    l-operations-selling-select-refinery-assets-par-pacific-holdings-inc

    http://www.parpacific.com/profiles/investor/ResLibraryView.asp?ResLibraryID=88421&BzID

    =2193&g=652&Nav=0&LangID=1&s=0

    https://www.reuters.com/article/us-islandenergy-m-a-par-pacific/par-pacific-says-hawai

    i-refinery-throughput-may-reach-120000-bpd-idUSKCN1LF1N6?rpc=401&

    https://www.ogj.com/articles/2018/08/island-energy-to-end-hawaii-refining-business-sel

    l-assets.html

    http://www.hawaiinewsnow.com/story/38995936/jobs-will-be-lost-as-hawaii-goes-from-2-re

    fineries-to-1

    (3) Philadelphia Energy Solutionsの破産保護に基づく新事業活動情報

    米国の石油精製会社の Philadelphia Energy Solutions Refining and Marketing

    LLC(PES)は、農業、都市及び工業などの廃棄物を原料としたエネルギー開発の経験

    を持つ RNG Energy Solutions(RNG)との間で、再生可能天然ガス販売および土地貸借

    などに関わる数件の長期契約を締結した。

    PESは、ペンシルベニア州フィラデルフィア地区の Point Breeze及び Girard Point

    の 2 ヶ所に精製設備を所有し、両設備を 1 製油所として統合して操業しており、合

    計精製能力は 33.5万 BPDで、米国東海岸で最大規模の製油所になっている。

    PESと RNGの両社は、レストランなどから排出される食品加工廃棄物などの有機廃

    棄物を原料に、再生可能天然ガス(バイオガス)を製造する、大規模な嫌気性処理設

    備を、PESの製油所のオフサイトエリアに建設し、JVとして Point Breeze Renewable

    Energy(PBRE)を設立することにしている。

    https://www.islandenergyservices.com/news/ies-shifting-strategic-focus-logistics-retail-operations-selling-select-refinery-assets-par-pacific-holdings-inchttps://www.islandenergyservices.com/news/ies-shifting-strategic-focus-logistics-retail-operations-selling-select-refinery-assets-par-pacific-holdings-inchttp://www.parpacific.com/profiles/investor/ResLibraryView.asp?ResLibraryID=88421&BzID=2193&g=652&Nav=0&LangID=1&s=0http://www.parpacific.com/profiles/investor/ResLibraryView.asp?ResLibraryID=88421&BzID=2193&g=652&Nav=0&LangID=1&s=0https://www.reuters.com/article/us-islandenergy-m-a-par-pacific/par-pacific-says-hawaii-refinery-throughput-may-reach-120000-bpd-idUSKCN1LF1N6?rpc=401&https://www.reuters.com/article/us-islandenergy-m-a-par-pacific/par-pacific-says-hawaii-refinery-throughput-may-reach-120000-bpd-idUSKCN1LF1N6?rpc=401&https://www.ogj.com/articles/2018/08/island-energy-to-end-hawaii-refining-business-sell-assets.htmlhttps://www.ogj.com/articles/2018/08/island-energy-to-end-hawaii-refining-business-sell-assets.htmlhttp://www.hawaiinewsnow.com/story/38995936/jobs-will-be-lost-as-hawaii-goes-from-2-refineries-to-1http://www.hawaiinewsnow.com/story/38995936/jobs-will-be-lost-as-hawaii-goes-from-2-refineries-to-1

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    埋め立てられた食品廃棄物が分解する際に発生するメタンは、大気放出が避けら

    ない。PES と RNG のバイオガスプロジェクトは、食品廃棄物からバイオガスを製造

    することに止まらず、食品廃棄物の埋め立て自体を避けることで、メタンの発生を

    防止する目的も合わせ持っていることになる。

    両社のプロジェクトでは、食品廃棄物を 1,100トン/日で処理して、生産されるバ

    イオガスはメタン換算では 300 万 cf/日(約 8.5万㎥/日)で、州外に繋がるパイプラ

    イン(Interstate Pipeline)に注入し、市場に供給する計画である。バイオメタンの

    用途は、市町村など自治体や官庁所轄のバスや一般商用トラックの燃料が有望なほ

    か、発電用燃料としての使用も念頭に置かれている。

    米国では、再生可能燃料基準(RFS)に基づいて。再生可能燃料使用量の最低基準(義

    務量)が毎年決められ、製造するガソリンに一定量の再生可能燃料を混合することが

    義務付けられている。混合義務量を達成出来ない場合には、不足分を価格が高騰し

    ている再生可能識別番号(RIN:Renewable Identification Numbers)と呼ばれるクレ

    ジットの購入で補わざるを得ず、PESは、その財政的圧迫から倒産が誘引されたと報

    じられた企業である。

    PESは今年 7月に破産保護に基づき、新たな形態で事業活動を始めており、今回の

    プロジェクトでは、バイオガスの市場売却で生み出される RIN クレジットを使用す

    ることで、RINクレジットの購入量を削減することに役立つものと期待されている。

    なお、PESが RIN義務達成を要因として倒産に至った背景については、本報の 2017

    年 11月号(北米編)第 3項「再生可能燃料基準の適用除外を要請するペンシルベニア

    州知事のレター」の 1)フィラデルフィア地域の製油所の現況」で報告しているので

    参考にしていただきたい。

    一方の RNG は、バイオガスを生産するために 1.2 億ドルを投資して嫌気性発酵プ

    ラントを建設する計画である。RNGが採用する技術は新しいものではなく、下水を分

    解処理する活性汚泥施設で使用されている一般的なプロセスで、ここ数年でバイオ

    ガス生産分野に応用され始めた技術である。環境保護庁(EPA)によると、米国におい

    て食品廃棄物は、地方自治体が廃棄する固形廃棄物として 2 番目に多く、通常は埋

    め立て処理されていることから、応用技術としては、目新しいものと考えられる。

    これまでに RNGは、コロラド州で関連会社の EDF Renewable Energyと、食品廃棄

    物と牛の糞尿からメタンを製造するプロジェクトを立ち上げているが、このプロジ

    ェクトでは“悪臭”が問題視された経緯がある。しかし、フィラデルフィアの 2 ヶ

    所で進める今回のプロジェクトでは、食品廃棄物のみを使い、牛の糞尿は使用しな

    いことになっている上に、全ての操作を容器内など閉鎖系で行うため、臭気問題は

    発生しないとしている。

    特に、共同事業範囲内である Point Breeze処理設備では、食料品店、レストラン、

  • 11

    特定機関の施設や食品加工業者から廃棄される産業廃棄物を原料にする予定である。

    収集方法や分別作業が複雑で、経済性に問題があると考えられる、一般家庭などか

    ら排出される都市ゴミとしての食品廃棄物は、処理対象にしていない。

    今回のプロジェクトでは食品廃棄物は、廃棄物処理場に併設するサテライトプラ

    ントに集積し、そこでスラリー状に加工してからバイオガスプラントに搬送する。

    サテライトプラントの前処理の重要な部分は、各種形態からなる食品廃棄物を処理

    する工程になる。RNGでは高速遠心分離技術で食品部分を抽出する欧州製の「デパッ

    ケージ」機器を採用している。この段階で分別される食品部分以外の固形物は、埋

    め立て処理される。

    バイオガスプラントの主要処理設備は、嫌気性発酵処理用の 8 基のバイオリアク

    ターで、ここでは容器内でバクテリアと混合し、110〜115℃の環境下でスラリー状

    の有機物を分解し、主に二酸化炭素、メタン、水蒸気からなるバイオガスを生成す

    る。この粗成ガスは、メタンを約 60%含んでいる。これを濃縮・精製して純度約 95%

    のパイプライン規格のメタンとして、パイプラインに供給する。

    処理設備の副産物として、泥炭状の固形物が排出されるが、この固形物は窒素と

    リンを豊富に含み、植物の成長に有益で付加価値の高いものであるため、造園材料

    や土壌改良材として販売する予定である。

    共同事業体である PBRE の設備建設地として選定された PES 製油所内の 22 エーカ

    ー(約 9 万 m2)の用地は、現在、工事関係者用駐車場などに使用されている土地で、

    PES は PBRE に土地の貸与と蒸気などのユーティリティーを供給すると共に、製品の

    再生可能天然ガスを販売することになっている。なお、プロジェクト遂行に関わる

    官庁の認可を取得し、設備を建設するには 2〜3年かかると見積もられている。

    因みに、フィラデルフィア市当局は、2050年までに GHG排出量を 80%削減する目

    標を掲げているが、今回のプロジェクトは、この目標達成の一翼を担うことになる。

    <参考資料>

    http://pes-companies.com/newsroom/press-release/rng-energy-solutions-and-philadelphia-

    energy-solutions-partner-to-form-point-breeze-renewable-energy/

    https://phys.org/news/2018-08-philly-refiner-120m-food-scraps.html

    http://uk.businessinsider.com/philadelphia-refiner-machine-turns-food-scraps-into-natu

    ral-gas-2018-8

    2.ヨーロッパ

    (1) Gunvorが Rotterdam製油所のアップグレード計画を再検討

    大手石油トレーダーの Gunvor Groupは、2020年から施行される国際海事機関(IMO)

    http://pes-companies.com/newsroom/press-release/rng-energy-solutions-and-philadelphia-energy-solutions-partner-to-form-point-breeze-renewable-energy/http://pes-companies.com/newsroom/press-release/rng-energy-solutions-and-philadelphia-energy-solutions-partner-to-form-point-breeze-renewable-energy/https://phys.org/news/2018-08-philly-refiner-120m-food-scraps.htmlhttp://uk.businessinsider.com/philadelphia-refiner-machine-turns-food-scraps-into-natural-gas-2018-8http://uk.businessinsider.com/philadelphia-refiner-machine-turns-food-scraps-into-natural-gas-2018-8

  • 12

    の一般海域における船舶燃料硫黄分規制(現状の 3.5%から 0.5%以下に強化)対策並

    びに競争力強化策として、オランダの Rotterdam製油所(約 9万 BPD)のアップグレー

    ドを計画していたが、この計画を棚上げし、代替策を検討することを発表した。

    本報の 2018 年 2 月号(欧州編)第 1 項「Gunvor の Rotterdam 製油所における 2020

    年 IMO船舶燃料規制対応情報」で報告しているように、Gunvorは Rotterdam 製油所

    のアップグレード計画として、ディレードコーカーの新設を検討していたが、「その

    後、石油製品価格やその他の経済環境は大きく変化している。」と Gunvor は計画棚

    上げの理由を述べている。

    昨年、Gunvorは Rotterdam 製油所近くにある Maasvlakte Olie原油ターミナルに

    保有していた権益を、サウジアラビア国営石油会社 Saudi Aramcoの海外事業子会社

    Saudi Aramco Overseas Co.に売却しているが、これに加えて、同じ Rotterdam の

    Stargate 複合貯蔵ターミナル(原油のほか各種製品も貯蔵)に保有している一部権益

    の売却も計画していた。しかし、Stargateターミナルに持つ権益の売却に関しては、

    製油所のアップグレード計画と同様に、現在交渉を保留していると Gunvorは説明し

    ている。

    Gunvorが欧州地域に保有する資産の見直しを進める背景には、“石油製品価格や関

    連する経済環境の変化”としていること以外に、競合相手の動向が大きく関わって

    いるものと考えられる。

    その一つとして、Gunvor が Rotterdam 製油所のアップグレード計画の再検討を発

    表した直前の 8 月 20 日に、石油トレーダーの Maersk Oil Trading と Vopak が、欧

    州最大の船舶燃料供給基地になっているロッテルダムで、Vopakが所有する燃料貯蔵

    基地に、低硫黄船舶燃料(硫黄濃度 0.5%以下)の貯蔵施設を立ち上げることに合意し

    たことを挙げることが出来る。

    この共同計画では、低硫黄船舶燃料を年間 230 万トン貯蔵する内容になっている

    が、この量はMaerskが1年間を通し、世界中で必要する量の約20%に相当している。

    IMO の船舶燃料硫黄分規制が施行されるまでに、残り 16 ヶ月と迫る中で、多くの

    海運企業が低硫黄船舶燃料の使用でなくスクラバーの装備を選択する動きを見せて

    いる。これまで、頑なにスクラバーの設置に反対し続けてきた Maerskも、最近では

    スクラバーの設置に向けて舵を切り始めていることも報道されている。

    この様な事業環境を受けて Gunvor は、Rotterdam 製油所のアップグレード計画や

    Stargate ターミナルに持つ権益の売却交渉の保留など、巨額な設備投資を伴う計画

    を見直し、あらゆる選択肢の中から、最適解を得ようとする姿勢を示しているもの

    と考えられる。

  • 13

    <参考資料>

    https://www.reuters.com/article/oil-refineries-gunvor/update-1-gunvor-halts-rotterdam-

    refinery-upgrade-for-new-shipping-fuels-idUSL8N1VJ2L7

    http://www.motorship.com/news101/fuels-and-oils/sulphur-fuel-bunkering-facility-for-ro

    tterdam

    https://www.bunkerspot.com/europe/46586-europe-gunvor-put-rotterdam-refinery-upgrade-o

    n-hold

    https://www.maersk.com/-/media/ml/migration/press/2018/20180820/20180820-press-release

    -01.pdf

    (2) カナダの Irving Oilがアイルランドの流通販売企業を買収

    カナダの大手石油精製会社の Irving Oil は、アイルランド南部の Cork に同国唯

    一の Whitegate 製油所(7.1 万 BPD)を操業している。その Irving Oil は、暖房油、

    工業用および農業用燃料のサプライヤーである Tedcastle Groupを買収した。Dublin

    に本社を置く Tedcastle Group は「Top Oil」ブランドで燃料油を年間 100 万 KL 以

    上販売する企業で、最近は自社所有のコンビニエンス併設給油所経営や航空燃料事

    業にも進出している。

    Tedcastle Group の歴史は古く、Tedcastle Holdings を親会社として、Dublin 港

    に 5.5万トンのターミナル、内陸部に 20ヶ所の油槽所を持つほか、カード専用給油

    所など200ヶ所以上の給油所を傘下に収めている。なお、Irving OilによるTedcastle

    Group買収後も、Top Oilブランドはそのまま維持されることになっている。

    Irving Oilは、本報の 2016年 8月号(欧州編)第 3項「カナダの Irving Oilがア

    イルランドの Whitegate製油所を買収」で報告した通り、Philips 66から 2016年 8

    月に Whitegate製油所を買収しているが、それに先立つ 2014年にはロンドンに事務

    所を開設、アムステルダムに燃料貯蔵所を設置するなどして、着々と欧州市場へ進

    出している。

    Irving Oil の欧州事業を見ると、Whitegate 製油所で製造される製品は、輸送用

    燃料及び暖房用燃料を中心にアイルランドの石油需要の約 40%を賄い、最近の収益

    状況は好調である。

    アイルランドでの石油販売事業に進出する Irving Oilにとっては、石油販売事業

    やコンビニエンスストアを営む企業の Topaz Energy Group Ltdや Maxol Groupが競

    合相手になる。しかし、Topaz Energyの親会社である Alimentation Couche-Tard Inc.

    は、カナダや米国などでコンビニエンスストア「Couche-Tard」や「Circle K」を展

    開する会社で、Irving Oilと緊密な関係を築いている。

    今回の Tedcastle Group の買収も、Irving Oil がカナダのケベック州の Lavalに

    本拠を置く Couche-Tard との間で、業務提携を結んだことに端を発していると報じ

    られている。

    https://www.reuters.com/article/oil-refineries-gunvor/update-1-gunvor-halts-rotterdam-refinery-upgrade-for-new-shipping-fuels-idUSL8N1VJ2L7https://www.reuters.com/article/oil-refineries-gunvor/update-1-gunvor-halts-rotterdam-refinery-upgrade-for-new-shipping-fuels-idUSL8N1VJ2L7http://www.motorship.com/news101/fuels-and-oils/sulphur-fuel-bunkering-facility-for-rotterdamhttp://www.motorship.com/news101/fuels-and-oils/sulphur-fuel-bunkering-facility-for-rotterdamhttps://www.bunkerspot.com/europe/46586-europe-gunvor-put-rotterdam-refinery-upgrade-on-holdhttps://www.bunkerspot.com/europe/46586-europe-gunvor-put-rotterdam-refinery-upgrade-on-holdhttps://www.maersk.com/-/media/ml/migration/press/2018/20180820/20180820-press-release-01.pdfhttps://www.maersk.com/-/media/ml/migration/press/2018/20180820/20180820-press-release-01.pdf

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    Couche-Tardは、カナダの大西洋岸地域の Circle Kチェーンの強化を目的に、2017

    年にカナダの CST Brands Inc.を買収していた。この際に Irving Oil との間で共同

    事業契約を締結し、36ヶ所の CST Brandsの給油所を Circle Kに改称し、13ヶ所を

    Irving Oilに売却している。Irving Oilは、これらの給油所を自社ブランドの給油

    所に改変しているが、運営自体は Couche-Tardが行う業務形態を取っている。

    このような Irving Oil との関係を持つ Couche-Tard は、アイルランドにおいて、

    大手コンビニエンスストア並びに燃料小売店経営をする Topaz を買収した。買収手

    続きを 2016年初期に終了させると共に、Topazが掲げていたブランドを Circle Kに

    掲げ直している。また、最近では、アイルランドにおける Essoの販売店網を買収し、

    444ヶ所の給油所を傘下に収めている。

    <参考資料>

    https://irvingoil.com/en/newsroom/news-releases/irving-oil-confirms-agreements-in-plac

    e-to-acquire-irish-company-top-oil

    https://www.irishtimes.com/business/energy-and-resources/canada-s-irving-oil-buys-tedc

    astle-group-for-undisclosed-sum-1.3603142

    https://www.cspdailynews.com/mergers-acquisition-growth/mergers-acquisitions-news/arti

    cles/irving-oil-acquire-top-oil-ireland

    https://www.independent.ie/business/irish/tedcastle-sold-to-irving-oil-as-forecourts-s

    ector-set-for-shakeup-37239092.html

    (3) 欧州主要国の石油精製能力の概要を伝える情報

    インターネット情報メディアの OilVoiceや Neftegazが、調査会社 GlobalDataが

    発表したレポート「Refining Industry Outlook in Europe to 2022」に記載された

    内容の概要を報じている。欧州の石油精製能力は世界で 14.1%を占め、その 55.1%

    はドイツ、イタリア、スペイン、英国、オランダの 5 ヶ国に集中している。中でも

    ドイツ、イタリア、スペインの 3 ヶ国を合わせた精製能力は、欧州における石油精

    製能力の 35%以上を占めている。

    ドイツの総精製能力は、2017 年時点で 213.6万 BPDであり、主要製油所としては

    Shell Exploration und Produktion Deutschland GmbHが操業する Rheinland製油所

    (32.5 万 BPD)が精製能力として最大で、次いで Karlsruhe 製油所(31 万 BPD)、

    Gelsenkirchen製油所(26.5万 BPD)になっている。

    https://irvingoil.com/en/newsroom/news-releases/irving-oil-confirms-agreements-in-place-to-acquire-irish-company-top-oilhttps://irvingoil.com/en/newsroom/news-releases/irving-oil-confirms-agreements-in-place-to-acquire-irish-company-top-oilhttps://www.irishtimes.com/business/energy-and-resources/canada-s-irving-oil-buys-tedcastle-group-for-undisclosed-sum-1.3603142https://www.irishtimes.com/business/energy-and-resources/canada-s-irving-oil-buys-tedcastle-group-for-undisclosed-sum-1.3603142https://www.cspdailynews.com/mergers-acquisition-growth/mergers-acquisitions-news/articles/irving-oil-acquire-top-oil-irelandhttps://www.cspdailynews.com/mergers-acquisition-growth/mergers-acquisitions-news/articles/irving-oil-acquire-top-oil-irelandhttps://www.independent.ie/business/irish/tedcastle-sold-to-irving-oil-as-forecourts-sector-set-for-shakeup-37239092.htmlhttps://www.independent.ie/business/irish/tedcastle-sold-to-irving-oil-as-forecourts-sector-set-for-shakeup-37239092.html

  • 15

    図 2. 欧州主要国の 2017年における石油精製能力

    (出典:oilvoice.com記事)

    GlobalData の石油・天然ガスアナリストの Soorya Tejomoortula 氏は、「ドイツは

    欧州で最大の精製能力を保有しているが、原油生産量はごくわずかで、ロシアと北

    海からの原油輸入に依存している。加えて、ドイツの石油精製業は、現在、ロシア

    及びアジアの石油精製業との競争激化、厳格化が進む環境規制に苦しめられている。」

    と説明している。

    ドイツに次ぐイタリアの総精製能力は、2017年時点で 165.3万 BPDで、Lukoil Oil

    Coが運営する高分解型の Melili製油所(32万 BPD)が国内最大で、Sarroch製油所(30

    万 BPD)と Sannazzaro de Burgondi製油所(20万 BPD)が、2位と 3位に付けている。

    Tejomoortula氏はイタリアの状況について、「ドイツと同様に、イタリアの石油需

    要に比較すると、国産原油生産量は無視できるほどで、原油は輸入に依存しており、

    精製業者は海外企業との厳しい競争に直面し、対応すべき環境規制も厳しくなって

    いる。」と述べている。

    スペインの精製能力は、欧州地域では 3番目で、国内 10ヶ所に製油所があり、2017

    年時点の合計精製能力は 154.2 万 BPD になっている。国内最大規模の製油所は、

    Cepsa(Compania Espanola de Petroleos SAU)が運営する Gibraltar-San Roque製油

    所(24.1万 BPD)で、Cartagena製油所(22万 BPD)と Bilbao製油所(22万 BPD)が続い

    ている。

    2018年から 2022年の期間で、欧州で製油所建設が計画されている国はアルバニア

    のみであり、重質油、オイルサンドなどから脱瀝操作している Petrosonic Albania

  • 16

    SHA が、2018 年稼働予定で 3,000BPD の重質油・重質原油類のアップグレーダーを建

    設中との情報があるが、詳細は不明である。

    <参考資料>

    https://oilvoice.com/Opinion/21452/Germany-Italy-and-Spain-Together-Contribute-More-Th

    an-35-to-Refining-Capacity-in-Europe-Says-GlobalData

    http://www.kallanishenergy.com/2018/08/30/germany-italy-spain-hold-35-of-europes-refin

    ing-capacity/

    https://neftegaz.ru/en/news/view/174575-GlobalData-Germany-Italy-and-Spain-contribute-

    more-than-35-to-refining-capacity-in-Europe

    3.ロシア・NIS諸国(New Independent States)

    (1) Lukoilの Nizhny Novgorod製油所におけるディレードコーカー建設開始情報

    Lukoilは、沿ヴォルガ連邦管区ニジニ・ノヴゴロド州の Kstovoで、子会社の Lukoil

    -Nizhegorodnefteorgsintez が操業する Nizhny Novgorod 製油所(34万 BPD)に、4.2

    万 BPDのディレードコーカー建設の最終投資決定(FID)を 2017年 11月に下し、ほぼ

    同時期に、CB&Iに対し同装置の詳細設計、調達、および加熱炉 2基を含むプロセス

    と専用機器の供給契約を締結している。同社は、8月末に同工事開始を記念する起工

    式を挙行した。

    ディレードコーカープロセスには、Chevron Lummus Globalの技術が採用され、2021

    年に試運転が予定されているが、本格稼働すると Nizhny Novgorod 製油所の重油生

    産量は大幅に減少し、稼動中の流動接触分解装置(FCC)との相乗効果で、製油所の製

    品収率は最大 95.5%まで向上し、軽質留分の収率は現状の 64%から 76%に増加する

    とみられている。

    ディレードコーカーとコンプレックスを構成するディーゼル脱硫装置、水素製造

    装置、圧力スイング吸着法によるガス分離装置(PSA)、ガス分留装置、硫黄回収装置

    の 5装置も建設される。

    本報の 2018年 8月号(ロシア・CIS編)第 1項「Lukoilの Kstovo製油所の白油化プ

    ロジェクト」で報告した通り、イタリアのエンジニアリング会社 KT-Kinetics

    Technology SPAの子会社である Maire Tecnimont SPAとの間で、設計・調達・建設(EPC)

    業務に関わる契約を交わしており、これ等の装置に関してもディレードコーカーと

    同じ 2021年の稼働が予定されている。

    なお、別件ながら、Lukoil-Nizhegorodnefteorgsintezは、減圧軽油処理用の第 2

    FCC装置群(4万 BPD)を 2015年に稼働させている。また、Lukoilは Nizhny Novgorod

    製油所や傘下の Perm、Volgograd の各製油所で、2018年 7月からポリマー改質ビチ

    ューメン(PMB)の製造を開始した旨の発表を行っている。

    https://oilvoice.com/Opinion/21452/Germany-Italy-and-Spain-Together-Contribute-More-Than-35-to-Refining-Capacity-in-Europe-Says-GlobalDatahttps://oilvoice.com/Opinion/21452/Germany-Italy-and-Spain-Together-Contribute-More-Than-35-to-Refining-Capacity-in-Europe-Says-GlobalDatahttp://www.kallanishenergy.com/2018/08/30/germany-italy-spain-hold-35-of-europes-refining-capacity/http://www.kallanishenergy.com/2018/08/30/germany-italy-spain-hold-35-of-europes-refining-capacity/https://neftegaz.ru/en/news/view/174575-GlobalData-Germany-Italy-and-Spain-contribute-more-than-35-to-refining-capacity-in-Europehttps://neftegaz.ru/en/news/view/174575-GlobalData-Germany-Italy-and-Spain-contribute-more-than-35-to-refining-capacity-in-Europe

  • 17

    <参考資料>

    http://www.lukoil.com/PressCenter/Pressreleases/Pressrelease?rid=287071

    https://neftegaz.ru/news/view/174581-LUKOIL-starts-construction-of-petroleum-residue-r

    ecycling-facility-at-Nizhny-Novgorod-refinery

    https://www.compelo.com/energy/news/lukoil-breaks-ground-on-new-petroleum-residue-recy

    cling-facility-in-russia/

    https://www.ogj.com/articles/2018/08/lukoil-starts-construction-on-kstovo-refinery-s-d

    elayed-coking-complex.html

    (2) ロシア製油所に関する最近の報道内容

    石油・天然ガス関連の国際会議やイベントを企画・主催する BGS Group のオーナー

    である Kristina Sabirova氏が、ロシアの石油精製分野における近代化の推移・趨勢

    の概要について語っている内容が、インターネット公開記事として紹介されている。

    漠然とした内容ではあるが、ロシアにおける石油精製分野の状況を知る上で参考に

    なるので、以下に紹介する。

    Sabirova氏は、ロシアにおける石油精製分野のプロセス/精製技術の陳腐化につい

    て触れ、次のように述べている。ロシア国内の製油所は、20 世紀に建設されたとこ

    ろが多く、大規模な近代化が喫緊の課題になっていた。この状況を受けて進められ

    たロシアの石油精製設備の近代化は、全面的な国家支援で 7 年前に始まった。その

    後、ロシアの製油所は、今日に至るまでに大きな進歩を遂げている。現在では、軽

    質留分の収率は向上し、よりクリーンな製品が製造され、処理原油の最適化が図れ

    るようになってきている。

    ロシアエネルギー省によると、2011年から 2016年の期間で 70基の二次処理装置

    が稼動した。通常、このような精製分野の大々的な変革には、膨大な時間と労力、

    巨額な投資が必要になる。さらに、国際市場で競合するために規則類を遵守した上

    で、新技術を開発する必要がある。

    国家が総力を挙げて近代化工事に取り組んだ結果、ロシアの石油精製分野はかな

    り顕著な変容を遂げている。中でも、7 万 BPD の水素化分解装置を備えた

    LUKOIL-Volgogradneftepererabotka、2.4万 BPDの接触分解装置を備えた NewStream

    の Antipinsky製油所、4万 BPDの接触分解装置を備えた Tatneftの TANECO製油所な

    どは、特筆すべき製油所である。

    新規に装置類を導入した効果も次第に現れてきており、ロシアの平均精製効率

    (refining efficiency)は、2017 年末には 81%に達し、2016 年に比べて 2%上昇し

    ている。また、国内製油所の総精製能力は約 560 万 BPD に増加し、米国や中国の総

    精製能力の約 1/3 に達するまでになっている。このまま推移すると、ロシアの 2020

    年時点の平均精製効率は、2017 年より更に 4%改善されて 85%まで上昇すると見込

    まれている。

    http://www.lukoil.com/PressCenter/Pressreleases/Pressrelease?rid=287071https://neftegaz.ru/news/view/174581-LUKOIL-starts-construction-of-petroleum-residue-recycling-facility-at-Nizhny-Novgorod-refineryhttps://neftegaz.ru/news/view/174581-LUKOIL-starts-construction-of-petroleum-residue-recycling-facility-at-Nizhny-Novgorod-refineryhttps://www.compelo.com/energy/news/lukoil-breaks-ground-on-new-petroleum-residue-recycling-facility-in-russia/https://www.compelo.com/energy/news/lukoil-breaks-ground-on-new-petroleum-residue-recycling-facility-in-russia/https://www.ogj.com/articles/2018/08/lukoil-starts-construction-on-kstovo-refinery-s-delayed-coking-complex.htmlhttps://www.ogj.com/articles/2018/08/lukoil-starts-construction-on-kstovo-refinery-s-delayed-coking-complex.html

  • 18

    このように説明すると、ロシアでは大部分の製油所が最新技術を備え、高精製効

    率で稼働しているように受け取られるが、実際には、90%以上の精製効率で稼働し

    ている製油所は、現状では RN-Komsomolsk、NNK-Khabarovsk、LUKOIL-

    Permnefteorgsintezなど、8ヶ所の製油所に止まっている。

    精製効率が 50〜60%と低い近代化が遅れている製油所では、他の製油所向けの中

    間原料を製造しているに過ぎない。例えば、精製効率が 58.5%の Rosneft の

    Kuibishev 製油所は、精製効率が約 90%の Novokuibishev 製油所向けの中間製品を

    製造している。

    企業グループ「Titan」を主宰している Mikhail Sutyaginskiy氏は、2018年 4月

    に Moscowで開催された石油・天然ガス並びに海運関連の国際会議「PRC Russia&CIS

    2018」で、「精製効率の向上に伴い国内市場を充足できるようになり、半製品留分の

    輸出量が減少し、最終製品規格に適合した製品の輸出量が増加するようになる。」と、

    融通性が向上していることを指摘している。

    ロシアの特色と見られる事項の一つは、石油関連税制が頻繁に改訂されることで

    ある。2015年以来、何度か税制改訂が行われ、石油関連税が引き上げられたために、

    精製マージンは低下し、設備投資も減少した。その結果、近代化の速度も低下して

    いる。エネルギー省によると、石油会社は 2017年に下流分野に約 1,900億ルーブル

    (約27.7億ドル)を投資していることが分かるが、実際には近代化工事関連の投資は、

    石油会社の経済的負担になっており、倒産の危機に晒されている企業も多い。

    このような状況を受け、石油会社による設備投資金額の減少を危惧したロシア政

    府は、近代化が終了した装置に対して、その近代化・技術レベルに応じて、控除が与

    えられるようにしている。更には、Euro 5 基準で製造した製品の 10%を 2024 年ま

    で国内市場向けに供給する企業は、連邦政府の石油関連税を避けて、州や地方レベ

    ルの補償を受ける選択肢も残されている。

    近年、ロシアの石油下流事業が直面している課題は、欧州諸国とは変わりはない。

    石油精製プロセスや石油製品が直面している環境関連の規制は厳しくなる一方で、

    2020年から施行される国際海事機関(IMO)の船舶燃料硫黄分規制もその一つである。

    ロシアの製油所では処理システムを変えたり、再生可能燃料の使用を模索したり

    して、徐々に新環境規制に対応し始めている。欧州と同様に、ロシアでも新燃料規

    格の Euro 6対応の体制を整え始めているが、環境に優しいガソリン製造を目指すに

    は、先ずオクタン価の高いイソパラフィンやオクタン価向上剤になる含酸素化合物

    の生産量を増やさなくてはならない。

    今後一層、環境関連規則の規制が厳しくなり、これまでのガソリン性状では対応

    できなくなり、その解決策として多成分触媒の開発などが進められているが、研究

  • 19

    開発に掛かる費用は膨大で、大手石油会社にとっても負担になっている。

    <参考資料>

    https://www.energyglobal.com/downstream/petrochemicals/07092018/why-is-modernisation-t

    he-main-question-for-petrochemical-russian-and-cis-markets-in-2019/

    4. 中 東

    (1) サウジアラビア Saudi Aramcoの 2017年の業績と事業方針

    サウジアラビア国営 Saudi Aramcoが、2017年の年次報告(Annual Review)を公表

    しているので、同社の業績と、今後の取り組み方針を紹介する。

    Saudi Aramcoは、2017年の業績のポイントとして次の 6項目を挙げている。

    ① 原油・コンデンセート生産量は、1,020万 BPD。

    ② 天然ガスは 4年連続の増産で、生産量は 87億 cf/日。

    ③ 原油輸出量は、690万 BPD。

    ④ Shellとの米国の JVを解消し、Motivaを 100%子会社化。

    ⑤ 国外精製能力拡大を目指し、中国とマレーシアで精製 JV。

    ⑥ 米国特許 230件を取得。

    1) アップストリーム事業部門

    上流事業部門では、東部州 Haradh南東の Sakab油田、南部ルブアルハリ砂漠の

    Zumul油田、Sahba油田では天然ガスの埋蔵を発見した。また、Khurais油田では、

    生産能力を 2018年に 30万 BPD拡張することを計画している。2017年には、原油・

    コンデンセートを1,020万BPD生産し、産出した粗天然ガスを 124億 scf/日処理し、

    天然ガスを 87億 scf/日生産した。

    天然ガス供給能力を増強し、発電能力を拡大することを目指す。また、原油随伴

    型でない Midyan天然ガス田で、天然ガスを 7,500万 cf/日、コンデンセート 4,500BPD

    を生産し、発電プラント向けの石油燃料を代替する準備が整った。また、Fadhili天

    然ガスプラント(処理能力 25億 scf/日)建設プロジェクトが進捗した。

    Hawiyah天然ガス処理施設の処理能力を 2021年までに 11億 scf/日拡張し、36億

    scf/日とする。さらに、Uthmaniyah天然ガス処理プラントでは、NGL回収設備を増

    強し、エタンその他の NGLの回収率を上げる計画で、設備の設計・調達・建設(EPC)業

    務を開始した。

    2) ダウンストリーム事業部門

    Saudi Aramcoは、事業ポートフォリオの拡大と多様化および他社との連携で、炭

    化水素の価値を高める方針を明らかにしている。2017年には、原油を 690万 BPD輸

    https://www.energyglobal.com/downstream/petrochemicals/07092018/why-is-modernisation-the-main-question-for-petrochemical-russian-and-cis-markets-in-2019/https://www.energyglobal.com/downstream/petrochemicals/07092018/why-is-modernisation-the-main-question-for-petrochemical-russian-and-cis-markets-in-2019/

  • 20

    出しゅいた。また、傘下の製油所の精製能力は、国外分を合わせて 490万 BPDに達

    している。因みに、Saudi Aramcoは、国内外の精製能力(権益分)を 800~1,000万

    BPDに引き上げる目標を掲げている(2017年 4月号中東編第 1項参照)。

    ① 国内精製事業

    米国の石化会社 Dow Chemical Companyとの JVプロジェクトである新設石化プラ

    ント Sadaraの全 26プラントがフル稼働に移行した。Sadaraは、エタンを 8,500万

    scf/日、ナフサを 5.3万 BPD処理する能力を保有している。

    ダウンストリーム分野では、事業の統合・拡大と石油化学事業を増強することが重

    点方針であるが、実現には技術開発が重要になる。そのために、既存技術ベースの

    Crude Oil to Chemicals(COTC)技術を大規模で実施し、その一方で新規技術の開発

    に注力する。

    Saudi Aramcoは、2017年に原油をクラッキングする新規プロセスのパイロット実

    験に成功し、高い収率を確認している。また、プロセスのスケールアップとプロセ

    ス開発のリスク回避目的で McDermott(CB&I)、Chevron Lummus Globalと技術提携し

    た。

    COTCプロジェクトでは、SABICとプラント建設に向けた MoUに調印した。両社が

    計画している COTCコンプレックスは、原油処理能力が 40万 BPD、化学品生産能力は

    900万㌧/年で、化学品と燃料製品を併産する計画である。

    潤滑油ベースオイル事業では、傘下のサウジアラビア LUBEREF、韓国 S-Oil、米国

    Motiva 間で、ベースオイルの融通を実現した。また、aramcoDURA® と aramcoPRIMA®

    ベースオイルの国内販売を開始した。

    さらに下流側に位置付けられる事業関係では、Aramco Performance Materialsが

    商業運転を開始し、ポリオールCONVERGE®を販売したことを特記している。

    ② 国外精製事業

    米国

    米国では、Shellとの精製事業の JVを解消し、Shellの持分を引き受け、Motiva

    を 100%子会社化した。Motivaは、1系列の製油所としては米国最大規模のテキサス

    州 Port Arthur製油所(60万 BPD)を操業している。

    インド

    インドのニューデリーに子会社 Aramco Asia-Indiaのオフィスを開設した。イン

    ドの事業強化の拠点として活動する。

  • 21

    マレーシア

    マレーシアでは、ジョホール州に製油所(30万 BPD)・石油化学コンプレックス(オ

    レフィン 300万ン㌧/年)を建設する、国営 Petronasのプロジェクト RAPIDに資本参

    加することに合意した。RAPIDは、アジア最大の石油ハブのあるシンガポールに隣接

    していることから、Saudi Aramcoの原油輸出戦略と精製・石油化学事業の海外展開に

    合致するプロジェクトである。

    インドネシア

    2016年に国営 Pertaminaとの間で合意した、精製事業の JVプロジェクトでは、中

    部ジャワ州のCilacap製油所の拡張・近代化プロジェクトの予備設計業務が完了して

    いる。

    中国

    中国では、コングロマリット Norincoとの間で、既設製油所の拡張、遼寧省盤錦

    市(Panjin、Liaoning)に精製能力 30万 BPDの製油所を新設するプロジェクトに合意

    し MOUに調印した(2017年 6月号東アジア編第 3項参照)。

    3) 技術開発

    Saudi Aramcoの技術開発は多岐に亘っているが、次の 4項目の成果を特記してい

    る。

    2017年には、コンピュータモデル技術を応用したリザーバーシミュレーター

    TeraPOWERS/GigaPOWERSを開発した。また、地震探査結果の画像化技術や高細

    密地下マッピング技術開発で進展があった。

    フランスのパリにある Aramco Fuel Research Centerでは、エンジンの CO2排

    出量を最小化するオクタン価を評価するシステムの実証研究を完了した。2種

    類のガソリンでエンジンの効率向上(8%)やアンチノック性能の向上が認めら

    れた。

    新規な非金属材料(innovative nonmetallic materials)の利用拡大に取り組み、

    パイプライン 2,300kmの長寿命化を図った。

    技術開発成果の一つの指標になる特許分野では、Saudi Aramcoの 2017年の米

    国特許取得数は過去最高の 230件に上った。

    4) サステナビリティーへの取り組み

    Saudi Aramcoは、低炭素化のために各事業分野で、最新技術の採用を図っている。

    2017年には、中国の製油所を対象に、世界の 20ヶ国の原油の油田から製油所までの

    (well-to-refinery)GHG排出量調査の結果、サウジアラビア産原油の炭素強度が最も

    低いと評価された。サウジアラビア産原油は、① 油田の生産性が高く、② 水の生

    成が少なく、③ フレア放出量が少ないことが評価された。天然ガス生産量に占める

  • 22

    フレアの割合は、2017年には 1%を下回った。

    <参考資料>

    http://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/2017-annual-review.html

    http://www.saudiaramco.com/content/dam/Publications/annual-review/2017/PDFs-English/20

    17-annualreview-full-EN.pdf

    (2) イラン Tabriz製油所の状況と中国・ロシアとの出資交渉

    イランのダウンストリーム事業の近況について、先月号(2018年 8月号中東編第 1

    項)で紹介したところである。イランは、2017年 5月の核問題に関する西側諸国から

    の制裁解除後、天然ガスの増産や、石油化学事業への外国企業の参加に向けた取り

    組みを進めてきた。しかしながら、今年に入ってから米国トランプ政権によるイラ

    ン制裁の再開の影響が顕在化し始め、状況は一変している。

    最近のエネルギー関連メディアは、世界各国がイランからの原油やコンデンセー

    トの輸入を見直す動きを伝えている。また、フランスの Totalが、South Pars天然

    ガス田開発プロジェクトからの撤退を決めたことも報じられている。

    イランでは、原油・天然ガスを増産しダウンストリーム事業を発展させるポテンシ

    ャルが高いが、資金調達や技術提供面で、外国企業のプロジェクト参入が不可欠な

    である。近年は、欧米企業を中心に、プロジェクトへの参加計画が盛んに報じられ

    ていて、本報でも紹介してきたが、今後は、欧米企業のプロジェクトからの撤退が

    予測され、欧米以外の国々の企業からの投資や、共同プロジェクトに頼らざるを得

    ない状況になると予測される。

    イランの公式メディア IRNA(Islamic Republic News Agency)は、精製会社の Tabriz

    Oil Refining Companyの Bagheri Dizaj社長が、Tabriz製油所の近代化プロジェク

    トで中国やロシアの企業と交渉していることを、8月下旬に報じている。

    イラン北西部の東アーザルバーイジャーン州都 Tabrizにある Tabriz製油所では、

    軽油からEuro-4基準(硫黄分:50ppm以下)ディーゼルの生産を中心に据える近代化プ

    ロジェクトを計画している。計画では軽油の全量を Euro-4基準に転換することを目

    指している。

    Bagheri Dizaj社長は、Tabriz製油所の操業改善への取り組みを紹介している。

    同製油所は、昨年は計画に比べて、3.8%多く原油を処理した。また、ディーゼル精

    製装置を潤滑油プラントに、停止していたガソリン精製設備を軽質ナフサ異性化設

    備に改造するなどに取り組み、エネルギー効率の改善も達成した。

    同氏によると、Tabriz製油所の精製能力は、イランの製油所の中で 4番目(EIAの

    Country Analysisでは、7番目の 11万 BPD)で、イラン国内の燃料需要量の 7%を賄

    っている。また、同製油所が位置する東アーザルバーイジャーン州はカスピ海に面

    http://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/2017-annual-review.htmlhttp://www.saudiaramco.com/content/dam/Publications/annual-review/2017/PDFs-English/2017-annualreview-full-EN.pdfhttp://www.saudiaramco.com/content/dam/Publications/annual-review/2017/PDFs-English/2017-annualreview-full-EN.pdf

  • 23

    し、アルメニア共和国、アゼルバイジャン共和国と国境を接していることから、原

    油調達や製品輸出で特別な役割がある。

    イランは、北部州で中央アジア諸国と接しているが、同地域はイランの主要原油

    生産地から離れていることから、中央アジアから原油を輸入し、イラン南部ペルシ

    ャ湾から輸出する原油のスワップ取引が行われている。スワップ取引の拡大も計画

    されてきたが、東アーザルバーイジャーン州の Tabriz製油所は、原油のスワップ精

    製の拠点に位置付けられている(2016年 10月号中東編第 3項参照)。また、イランで

    は主要製油所の設備をグレードアップし、Euro-4などの低硫黄燃料の増産に取り組

    んでいるが、Tabriz製油所では、Euro-4基準ガソリンの生産を始めていた(2015年

    3月号中東編第 1項参照)。

    <参考資料>

    https://www.kuna.net.kw/ArticleDetails.aspx?id=2743189&language=en

    (3) Saudi Aramcoの JV事業のトピックス

    1) Jazan経済都市で、発電・水素・ユーティリティー事業の JVを設立

    8月中旬に、Saudi Aramco、工業用ガス会社 Air Products、発電会社 ACWA Power

    は、Jazan 経済都市(Jazan Economic City:JEC)のガス化/発電プロジェクトで JVを

    設立することに合意した。

    JVは、現在 2019年の稼働を目指して建設中のガス化設備・発電設備・関連ユーティ

    リティーを約 80億ドルで買収し、25年間の月額固定料金契約の条件で保有し、運転

    することになる。JVは、Saudi Aramcoが原料を供給し、電力・水素・その他のユーテ

    ィリティーを、提供するスキームが設定されている。

    JVの権益は、Air Productsが、少なくとも 55%を保有し、残りを Saudi Aramco

    と ACWA Powerが受け持つと発表され、JVは、官民パートナーシップ方式( Public

    Private Partnership:PPP)方式の経営形態になる。

    JECでは、Jazan製油所(40万 BPD)とターミナルの建設プロジェクトが進行中で、

    JVが供給する電力・水素は、重質・中質原油から燃料油・LPG・ベンゼン/パラキシレン

    などを製造する目的で利用される。

    因みに、Air Productsは Shellから購入したガス化プロセス特許の技術を JECの

    ガス化プラントに利用している。

    <参考資料>

    http://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/jv-aramco-airproducts-acwapower-jaz

    an-gasification.html

    https://www.kuna.net.kw/ArticleDetails.aspx?id=2743189&language=enhttp://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/jv-aramco-airproducts-acwapower-jazan-gasification.htmlhttp://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/jv-aramco-airproducts-acwapower-jazan-gasification.html

  • 24

    2) 合成ゴム JVの ARLANXEOを 100%子会社化

    サウジアラビア国営 Saudi Aramcoは、ダウンストリーム事業部門で、石油精製、

    石油化学基材、ポリオレフィンなどのポリマー製品の製造事業への進出を果たして

    おり、現在、スペシャリティーケミカルやファインケミカルへの事業拡大に力を入

    れている。

    この事業方針に沿って、Saudi Aramcoは、2016年にドイツのスペシャリティーケ

    ミカルメーカーLANXESSと折半出資で、タイヤ向け合成ゴム・エラストマー事業の JV

    企業 ARLANXEOを設立していた(2016年 5月号中東編第 4項参照)。

    8月初めに、LANXESSは、ARLANXEOに保有する株式 50%を、Saudi Aramco側に売

    却することを計画していると発表した。これには、LANXESS側に負債を減らしたいと

    いう事情があり、同社は ARLANXEOの価値を 30億ユーロと見込み、権益の売却で 14

    億ユーロの現金収入を見込んでいると明らかにした。当初の合意では、両社は、2021

    年まで権益を維持することになっていた。

    LANXESSのプレスリリースと同日に、Saudi Aramcoは、ARLANXEOの権益 50%を引

    き受けることを発表している。この結果、Saudi Aramcoが ARLANXEOの権益を 100%

    保有し、完全子会社化することになる。

    Saudi Aramcoは、ARLANXEOの 100%子会社化は、下流事業部門への展開を図る方

    針に合致した取引で、ブタジエン・イソブテンなど“C4ケミカル”事業を強化してい

    くと説明している。

    <参考資料>

    https://lanxess.com/en/corporate/media/press-releases/2018-00060e/

    http://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/aramco-acquire-50-percent-stake-in-

    arlanxeo.html

    5. アフリカ

    (1) ナイジェリアの LNG増産への取り組み

    ナイジェリアが、LNG輸出能力を拡大するプロジェクトへの取り組みに関連する動

    きが、7月から 8月にかけて発表されている。

    世界で天然ガス需要が増え、供給手段として LNGへの依存が高まっている中で、

    ナイジェリア国営 NNPCは、今年 6月に、世界の LNG市場でシェア 10%を目指す目標

    を発表していた。最近の、世界の LNG供給量増加には、オーストラリアの新規 LNG

    プロジェクトの稼働、シェールガス革命で天然ガスが余剰となった米国が、LNGの輸

    出を開始したことが寄与している。

    https://lanxess.com/en/corporate/media/press-releases/2018-00060e/http://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/aramco-acquire-50-percent-stake-in-arlanxeo.htmlhttp://www.saudiaramco.com/en/home/news-media/news/aramco-acquire-50-percent-stake-in-arlanxeo.html

  • 25

    国際ガス連盟 International Gas Union(IGU)の年次報告“IGU 2018 World LNG

    Report”の世界の LNG輸出データを見ると(表 1参照)、2017年の LNG輸出国の輸出

    量とシェアは、多い順に、カタール(8,100万トン、27.6%)、オーストラリア(5,620

    万トン、19.2%)、マレーシア(2,640万トン、9%)で、ナイジェリアの輸出量は 2,130

    万トン、シェアは 7.3%で、第 4 位につけている。2016 年と比べると、カタールの

    シェアは減少し、オーストラリアは量・シェアとも増やしている。

    ナイジェリアの輸出量も増加したが、シェアは 0.1%増に止まった。2016年と 2017

    年の大きな違いは、2016年に LNG輸出を開始した米国の輸出量が、2016年の 290万

    トン/年から 1,310 万トンに大幅に増加し、シェア 4.5%を獲得して、インドネシア

    に次ぐ世界第 6位になったことを挙げることができる。

    表 1. 世界の LNG輸出国、上位 10ヶ国

    2016年 2017年

    国名 輸出量 MMT % 国名 輸出量 MMT % 1 カタール 77.2 29.9 1 カタール 81.0 27.6

    2 オーストラリア 44.3 17.2 2 オーストラリア 56.2 19.2

    3 マレーシア 25.0 9.7 3 マレーシア 26.4 9.0

    4 ナイジェリア 18.6 7.2 4 ナイジェリア 21.3 7.3

    5 インドネシア 16.6 6.4 5 インドネシア 16.2 5.5

    6 アルジェリア 11.5 4.5 6 米国 13.1 4.5

    7 ロシア 10.8 4.2 7 アルジェリア 12.4 4.2

    8 トリニダード・T 10.6 4.1 8 ロシア 11.1 3.8

    9 オマーン 8.1 3.2 9 トリニダード・T 10.8 3.7

    10 PNG 7.4 2.9 10 オマーン 8.4 2.9 IGU 2017/2018 World LNG Reportより

    ナイジェリアが LNG 輸出の市場シェアを 10%に引き上げるためには、現在の世界

    市場規模でも、50%の増産が必要になる。今後の市場規模の拡大を見据えると、そ

    れ以上の増産がターゲットになるが、競合相手は増産余力の大きい米国になると予

    測される。

    米国のワシントンで開催された“27th World Gas Conference”で、NNPCの Maikanti

    Baru 社長は、「ナイジェリアの天然ガス生産には大きなポテンシャルがあり」、国内

    で「発電プラントへの供給量を増やす」、「肥料・石油化学・メタノール等の原料に活

    用する」と同時に、輸出拡大を目指すと発言した。

    さらに Baru 社長は、LNG 生産能力拡大を表明し、そのために Nigeria LNG(NLNG)

    に 1 トレインを追加することを明らかにした。能力拡張計画は、以前から、検討さ

    れていたが、市場環境から投資決定は見送られていた。

    NLNG 拡張プロジェクトについては、7 月中旬に、コンソーシアムのメンバー企業

    の NNPC、Shell、Total、Eni が第 7 トレインの基本設計業務(FEED)に合意し MOU に

    調印した。調印式では、NLNGトレイン 1~トレイン 6の借入金 54.5億ドルの返済を

  • 26

    終えたことも発表された。

    プロジェクトは、トレイン 1-トレイン 6のボトルネックを解消し、トレイン 7と

    関連インフラ設備を増設し、LNG 生産能力を現在の 2,200 万㌧/年から 3,000 万㌧/

    年に引き上げることを目指している。なお、プロジェクトの最終投資判断(FID)は、

    2018年の第 4四半期を目標に置いている。

    8月の初めには、KBRが NLNGの第 7トレインの基本設計業務(FEED)を受注したこ

    とが、発表されている。KBRはコントラクターコンソーシアム“Bonny7JV”のリーダ

    ーとして、TechnipFMC、JGCを率いて、FEEDを手掛け、トレイン 7の設計・調達・建

    設業務(EPC)への入札の準備を進める。KBRによると、プロジェクトではトレイン 7

    とともに、既設の LNGトレイン 1~6の余剰分の天然ガスを処理する共用液化設備

    (Common Liquefaction Unit:CLU)を建設する。なお、既設のトレイン 1~6も、KBR

    等のコンソーシアムが 1995~2007年にかけて手掛けた設備である。

    <参考資料>

    http://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleVie

    w/articleId/1033/FG-Targets-10-Per-Cent-Global-LNG-Market-Says-Baru.aspx

    https://www.igu.org/content/download-email-capture?foo=93545

    http://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleVie

    w/articleId/1044/NNPC-Other-Stakeholders-Sign-NLNG-Train-7-Engineering-Design--Contrac

    t.aspx

    https://www.kbr.com/Pages/KBR-Awarded-FEED-Contract-for-NLNGs-Project.aspx

    (2) 南スーダンが Toma South油田からの原油のパイプライン輸送を再開

    旧スーダンの原油の産出地は、現在の南スーダン領内に多く、生産した原油はス

    ーダン国内のパイプラインで紅海沿岸の Port of Sudanまで輸送し、タンカーに積

    み込まれていた(スーダン・南スーダンの石油・天然ガス事情は、2018年 4月号アフリ

    カ編第 1項を参照されたい)。分離独立した南スーダンは、内陸国であることから、

    自国から直接輸出することができなかった。南スーダンを経由しない、ウガンダ・ケ

    ニア経由など、別ルートのパイプラインを建設する動きも報道されているが、実現

    していない。

    2011年の独立後、南スーダンとスーダンの関係は不安定な状態が続いていた。南

    スーダンから、スーダン国内のパイプラインへの原油の輸送では、パイプライン料

    金などで折り合いがつかないことや妨害活動が度々伝えられ、輸送が滞っていた。

    今年に入ってから、スーダン・南スーダン間で関係改善に向けた協議が前進し、

    2018年 7月には、スーダン・南スーダンの間で和平が成立した。その結果、南スーダ

    ンの原油の生産やパイプラインによる輸送問題が改善することが期待されていた。

    こうした状況の変化を受けて、南スーダンの Toma South油田からのスーダン南部

    http://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleView/articleId/1033/FG-Targets-10-Per-Cent-Global-LNG-Market-Says-Baru.aspxhttp://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleView/articleId/1033/FG-Targets-10-Per-Cent-Global-LNG-Market-Says-Baru.aspxhttps://www.igu.org/content/download-email-capture?foo=93545http://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleView/articleId/1044/NNPC-Other-Stakeholders-Sign-NLNG-Train-7-Engineering-Design--Contract.aspxhttp://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleView/articleId/1044/NNPC-Other-Stakeholders-Sign-NLNG-Train-7-Engineering-Design--Contract.aspxhttp://www.nnpcgroup.com/PublicRelations/NNPCinthenews/tabid/92/articleType/ArticleView/articleId/1044/NNPC-Other-Stakeholders-Sign-NLNG-Train-7-Engineering-Design--Contract.aspxhttps://www.kbr.com/Pages/KBR-Awarded-FEED-Contract-for-NLNGs-Project.aspx

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    の国境都市 Hegligへのパイプラインへのポンプ輸送が、南スーダンの Eskol Loul

    Gattkoth石油相により開始されたと、スーダンの Azhari Abdulqader Abdullah石油・

    天然ガス相が、8月下旬に省のウェブサイトで発表した。

    Toma South油田の原油生産能力は、2万 BPDであるが、今後、他の油田でも生産

    再開が予定されている。

    南スーダンの原油の主な輸出先は中国であるが、同国からの原油輸出の増加は、

    西アフリカや北アフリカ以外のアフリカ地域からの原油輸出の動きとして注目され

    る。

    <参考資料>

    http://www.mop.gov.sd/eng/news/qawse

    http://www.china.org.cn/world/Off_the_Wire/2018-08/27/content_60429937.htm

    6.中南米

    (1) 米国からメキシコへの天然ガス輸出

    本報では、米国メキシコ湾岸地域の石油・天然ガスの増産で、テキサス州と国境を

    接するメキシコが米国からの石油・天然ガスの輸入を増やしていることに着目して

    きたが(2018年 7月号中南米編第 2項参照)。 8月初めにも米国エネルギー情報局

    (EIA)が、メキシコへの輸出の最近の状況を、ショートレポートにまとめているので

    紹介する。

    メキシコでは、発電用燃料用途を中心に、天然ガスの需要量が急増しているが、

    国産天然ガスは、増産ができていないばかりか減少傾向にある(表 2参照)。このた

    めにメキシコでは米国からの天然ガス輸入パイプラインの拡張を目指し、5ヶ年計画

    に取り組んでいた。その結果、米国発の天然ガスパイプラインが次々に完成し、2018

    年末までには、大規模な天然ガスパイプライン 6本が稼働する予定である。

    表 2. メキシコの天然ガス生産量と消費量の推移

    単位: 百万 cf

    2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

    消費量 1,494 1,684 1,894 1,989 1,947 2,173 2,280 2,361 2,553 2,269

    生産量 1,283 1,319 1,384 1,449 1,513 1,678 1,781 1,773 2,107 1,769

    2011 2012 2013 2014 2015

    消費量 2,329 2,426 2,529 2,570 2,756

    生産量 1,686 1,626 1,594 1,567 1,426

    EIAのデータベース参照

    近年、米国とメキシコを結ぶ天然ガスパイプラインが増強されていることから、

    http://www.mop.gov.sd/eng/news/qawsehttp://www.china.org.cn/world/Off_the_Wire/2018-08/27/content_60429937.htm

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    天然ガスの輸出量が増えている。表 3に月毎の天然ガス輸出量を示すが、2017年の

    米国からメキシコへのパイプライン経由の天然ガス輸出量は、42億 cf/日であった

    が、2018年 1月から 5月の輸出量は 44億 cf/日を上回っている。

    表 3. 米国からメキシコ向けの天然ガスパイプライン輸出量の推移

    単位: 百万 cf

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

    2014 52,807 51,291 58,019 56,719 62,199 65,247 69,366 65,624 64,834 60,318 58,487 63,601

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

    2015 68,635 64,596 74,286 77,196 86,805 90,724 101,031 101,131 100,111 98,314 91,490 99,952

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

    2016 98,841 97,234 103,413 104,857 115,606 115,836 123,173 132,446 123,722 129,984 120,378 111,815

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

    2017 121,696 115,089 128,774 116,027 129,110 134,118 135,068 135,108 125,724 132,778 133,807 135,756

    1 2 3 4 5 6

    2018 136,698 125,684 132,301 130,644 138,128 133,546

    EIAのデータベース参照

    多くの新設パイプラインは、メキシコの中部や南部まで延伸され、米国の Permian

    盆地で増産している天然ガスの重要な輸出先になっている。

    2018年 11月には、La Laguna-Aguascalientes (12億 cf/日)と Villa de Reyes -

    Aguascalientes-Guadalajara(9億 cf/日)の 2本のパイプラインが商業稼働を始める

    予定で、Ojinaga-El Encino と Tarahumaraパイプラインに接続し、テキサス州西部

    の天然ガスを、メキシコの中部・西部に輸送する。この 2本の天然ガスパイプライン

    の稼働で、太平洋沿岸のコリマ州にある Manzanillo LNGターミナルから供給される

    輸入 LNGに代わり、メキシコ第 2の都市 Guadalajaraへの天然ガス供給が可能にな

    る(2016年 12月号中南米編第 2項、2015年 12月号中南米編第 2項)。

    同じく 11月に Samalayuca-Sásabeパイプライン(5億 cf/日)が稼働し、メキシコ

    西部の新設発電プラント(複�