13
1) a) (i) それは繰り返し分子の長い糸で構成された β-シクロデキストリンポリマーである。 (ii) 以前から、シクロデキストリンの結合力は、臭い分子捕捉のために利用されてきた。 (iii) 科学者は、既存の活性炭と同様に新規シクロデキストリン高分子を利用して、汚染水から BPA を除去した。 b) 炭素 副生成物 溶液 カリウム 多孔質 吸着 2) Acid Boiling point Neutralization Salt Recrystallization Distillation 3) a) Chromatography is often used for the purification of complex organic mixtures. b) Centrifugation should be used when the solid particles are too fine to be collected by filtration. 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験 問 題 用 紙 専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験) 試験科目名 専門科目 ①化学英語 P. 18 化学英語

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)

a) (i) それは繰り返し分子の長い糸で構成された β-シクロデキストリンポリマーである。

(ii) 以前から、シクロデキストリンの結合力は、臭い分子捕捉のために利用されてきた。

(iii) 科学者は、既存の活性炭と同様に新規シクロデキストリン高分子を利用して、汚染水から

BPA を除去した。

b) ① 炭素 ② 副生成物 ③ 溶液

④ カリウム ⑤ 多孔質 ⑥ 吸着

2) ① Acid ② Boiling point ③ Neutralization

④ Salt ⑤ Recrystallization ⑥ Distillation

3)

a) Chromatography is often used for the purification of complex organic mixtures.

b) Centrifugation should be used when the solid particles are too fine to be collected by filtration.

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ①化学英語

P. 1/8

化学英語

Page 2: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)

(a) O2 (b) CO (c) CO2

振動自由度 1 個 1 個 4 個

2)

(a) O2 (b) CO (c) CO2

3)

分子が赤外光を吸収するということは,電磁波と振動する双極子の相互作用で説明できる。す

なわち基準振動に対応する運動に伴って双極子モーメントが変化することが条件となる。

4)

ν =12𝜋

𝑘𝜇

5)

DF は HF よりもわずかに質量が増加するため,力の定数が同じと仮定すると 3950 cm-1よりも

低い波数に吸収バンドが現れると予想できる。

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 2/8

A-1

Page 3: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)d 軌道をいち早く閉殻・半閉殻にしようとする傾向が働く。電子一つを失った状態,Ag+で閉

殻状態となっていれば,エネルギーはより安定となり,題意に沿う。また,電子は最外殻から

抜け易いことも考慮すれば,

47Ag:[Kr](5s)1(4d)10

2)各半反応式の両辺のエネルギーは等しいことから,

ΔG0Ag+ = 0.799F, Δ G0

Ag2+ = Δ G0Ag++1.98F よってΔ G0

Ag2+ = 2.779F

ΔGAg2+ = 2.78F

3) a) 最近接(Br –): 6 個,二番目に近い(Ag+): 12 個,三番目に近い(Br –): 8 個

b) 最近接間距離 r とすれば,二番目に近いイオン間との距離は 2𝑟,三番目は 3𝑟

よって,全ての和は − !!

!!!!!6 − !"

!+ !

!

4)AgBr ⇄ Ag! + Br! Ag! Br! = 5.10×10!!" (1)

Ag! + 2NH! ⇄ Ag(NH!)! !"(!"!)!!"! [!"!]!

= 1.70×10! (2)

AgBr 固体がちょうど 1.00 ×10!! mol 溶解した時は

Br! = 10!! 𝑚𝑜𝑙 𝑑𝑚!! (3)

Ag! + Ag(NH!)! = 10!! 𝑚𝑜𝑙 𝑑𝑚!! (4)

式(1)と(3)から, Ag! = 5.10×10!!! 𝑚𝑜𝑙 𝑑𝑚!!。これを式(4)に代入すると

Ag(NH!)! ⋍ 10!! 𝑚𝑜𝑙 𝑑𝑚!!。式(2)から

[NH!]! =!"!!

!.!×!"!×!.!×!"!!!= !

! ×!.!!×!"!!

NH! = !!.!"× !

= !!.!"×!.!"

= !!.!"#$

≃ 3.40 𝑚𝑜𝑙 𝑑𝑚!!

NH3は全部で 3.40 + 2×0.01 = 3.42 mol dm-3。

よって,水 1dm3あたり NH3を添加する量は 3.42 mol

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 3/8

A-2

Page 4: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

5)Ag+ + e– = Ag の平衡より,𝜇!"! + 𝜇!! = 𝜇!!

溶液中と電極内部の電位を ES, EM とすれば,それぞれの化学,電気化学ポテンシャルは 𝜇!"! = 𝜇!"!

! + 𝑅𝑇 ln 𝑎!"! + 𝐹𝐸!

𝜇!! = 𝜇!!! − 𝐹𝐸!𝜇!" = 𝜇!"!

となる。これらを代入して

𝐸! − 𝐸! = −!!"! !(!!"!

! !!!!! )

!+ !"

!ln 𝑎!"!

よって,𝐸! = −!!"! !(!!"!

! !!!!! )

!

Page 5: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)滴定中の反応式: Fe2+ + Ce4+ → Fe3+ + Ce3+

0.010 M Ce4+溶液の滴定量 5 mL のとき、 E = E0Fe-(0.059/1)log([Fe2+]/[Fe3+]) = E0

Fe = +0.771 (V)

0.010 M Ce4+溶液の滴定量 10 mL のとき、 E = (E0Fe + E0

Ce)/2 ≒ 1.11 (V)(当量点)

0.010 M Ce4+溶液の滴定量 20 mL のとき、 E = E0Ce-(0.059/1)log([Ce3+]/[Ce4+]) = E0

Ce = +1.44 (V)

当量点における電位は約 1.11(V)であるから、最も変色電位が近い酸化還元指示薬であるフェ

ロインが当量点の判定に適している。また、本滴定において色調は赤から青に変化する。

2)2MnO4- + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl2 + 8H2O

3)KMnO4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数 KMnO4-Clは以下のよ

うに計算できる。

E = E0-(0.059/10)logKMnO4-Cl = (E0 MnO4-E0 Cl)-(0.059/10)logKMnO4-Cl = 0.15 -(0.0059)logKMnO4-Cl

平衡状態においては E = 0 だから、上式より、0.15 -(0.0059)logKMnO4-Cl = 0

∴ KMnO4-Cl ≒ 10 25.4

同様にして K2Cr2O7溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応の平衡定数 K Cr2O7-Cl を求めると、

(E0 Cr2O7-E0 Cl)-(0.059/6)logK Cr2O7-Cl = 0 ∴ K Cr2O7-Cl ≒ 10 -3.1

したがって、KMnO4溶液では KMnO4-Cl ≫1 より滴定反応が進行するが、K2Cr2O7溶液を用いた場

合は K Cr2O7-Cl ≪1 より塩化物イオンの酸化が困難である。

4)塩化物イオン濃度の定量を妨げる原因:過マンガン酸イオンによる塩化物イオンの酸化反応に

おいて、塩素分子だけでなく、次亜塩素酸などの化学種も生成するため。

塩化物イオンの正確な定量法:イオンクロマトグラフ法、AgCl 沈殿滴定法など。

イオンクロマトグラフ法の原理:液体クロマトグラフ法の一種で、固定相に陰イオン交換体、移

動相に pH を調整した水溶液を用いて、試料溶液中のイオン種成分を分離・定量する方法。検出

器には電気伝導度検出器が用いられる。

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 4/8

A-3

Page 6: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

問1

IUPAC での命名: 2-bromo-1-fluoro-4-nitrobenzene 構造式:

理由:

ハロベンゼンの芳香族求電子置換反応はオルト-パラ配向である

が、今回の基質ではオルト置換の場合、置換基が3つ並ぶことに

なり、立体的に不利となる。したがって、F のパラ位での置換か、

Br のパラ位での置換かの選択となる。それぞれのパラ位でニトロ

ニウムカチオンが付加した時に生成するカチオン中間体の共鳴構

造式のうち、ハロゲン原子の結合している炭素上にカチオンが位

置する構造とそのハロゲン原子へのカチオンの非局在化した構造

を右に示す。それぞれの共鳴構造式の右側に示してある C=X+

(X=F,Br)の構造において、F の場合 2p 軌道どうしの重なりとなる

のに対し、Brの場合は炭素の 2p軌道と臭素の 4p軌道の重なり(あ

まり有効でない)となり、右側の共鳴構造式の安定化に対する寄

与は X=F の場合に最も有効となる。したがって、F のパラ位で付

加した場合のカチオン中間体の方が安定となり、上記の生成物が

主となる。

問2

反応機構:

理由:

p-ニトロハロベンゼンの求核置換反応は、ハロゲン原子の置換炭素上で求核剤の攻撃が起こった後、

ハロゲンアニオンの脱離により置換生成物が得られる。この場合、2段階目のハロゲンアニオンの脱

離反応は速く進行し(ハロゲンアニオンの脱離能にはほとんど関係しない)、1段階目の求核剤の攻撃

が律速段階となる。すなわち、ハロゲン原子の電子求引性が大きければその結合した炭素原子の電子

密度が低くなり、求核攻撃が促進されることになる。したがって、上記の反応性はハロゲン原子の電

気陰性度の序列と同じになるため、その順序は F>Cl>Br>Iとなる。

問3

IUPAC での命名: 1,3,5-trinitronaphthalene 構造式:

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 5/8

BrF

NO2

A-4

BrF

H NO2

BrF

H NO2

BrF

HO2N

BrF

HO2N

X

O2N

Nu-

O2N

XNu X- Nu

O2Nslow fast律速段階

NO2O2N

NO2

Page 7: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

(解答例) 問題のナフタレン誘導体は左右のベンゼン環にそれぞれ電子求引性の不活性基であるニトロ基が置

換しているため、置換反応の配向性はニトロ基のメタ位となり、C3とC5での2つの置換が可能と

なる。そこで、それぞれの炭素への NO2+の付加により生成するカチオン中間体の共鳴構造式を下図に

記す。この両者を比較すると、共鳴構造の数は共に5つであるが、C5炭素への求電子付加により生

成するカチオン中間体では完全なベンゼン骨格(四角で示す部分)を2つの構造で描くことができる

のに対し、C3炭素への付加により得られるカチオン中間体では、1つの構造でしか描けない。した

がって、C5炭素への攻撃で得られる中間体の方が安定となり、C5炭素でのニトロ化生成物が主生

成物となる。

NO2O2N

C3炭素上への求電子付加で生成するカチオン中間体の共鳴構造式

HNO2

NO2O2N

HNO2

NO2O2N

HNO2

NO2O2N

HNO2

NO2O2N

HNO2

NO2O2N

C5炭素上への求電子付加で生成するカチオン中間体の共鳴構造式

H NO2

NO2O2N

H NO2

NO2O2N

H NO2

NO2O2N

H NO2

NO2O2N

H NO2

Page 8: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)

a)

b)反応①:Diels-Alder 反応 反応③:Wittig 反応

c)

2)

a)Friedel-Crafts アルキル化反応

b)Mannich 反応

c)

d)

e)

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 6/8

A-5

A B C D E

HO

OH

COOH

COOH

CHO

CHO

HO

OH

F G H I

COOMe

COOMeOO

O

O

O

HO

OH

E’

J

K

L M

O

O O

NO2

CH3

NO2

CH3

Cl

Page 9: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)浸透圧は,溶液中の溶質の分子数に依存し,溶質の種類には依存しない。このような性質を示

す名称を答えよ。 解答:束一性

2)図1は,ポリスチレン(Ps)をシクロヘキサンに溶解させ,各温度における浸透圧を測定した

結果を示す。このグラフの傾きは,温度によって変化している。その理由を説明せよ。また,傾

きが“0”となる温度の名称を答えよ。図において,Πは浸透圧,cは濃度を表す。

解答:高分子の浸透圧は、以下の式によって表され、図中の傾きは第2ビリアル係数 A2と密接な関係が

ある。A2は、高分子と溶媒との相互作用を表し、今回の場合、温度が高いと相互作用が増大し、温度が

低いと相互作用は減少することを示している。つまり、温度によって高分子と溶媒との相互作用が変化

するため、グラフの傾きが変化する。

Π=RTc(1/M+A2c)

A2=第 2 ビリアル係数

傾きが 0、すなわち、A2=0 となる温度を、シータ(Θ)温度という。

3)ポリエチレンを 120℃のテトラリンに溶解させ,浸透圧の時間変化を調べた結果を図2に示す。

図のように,時間によって浸透圧が減少する場合(ポリマーA)と,時間によって変化しない場

合(ポリマーB,C)が観察された。このちがいはどうして起こるのか,理由を説明せよ。

図において,Πは浸透圧,tは測定時間(分),Mn は数平均分子量を表す。

解答:浸透圧には、半透膜という分離膜が使われる。この半透膜は、基本的には溶媒のみを透過し、溶

質は透過させない。しかしながら、今回の場合、ポリエチレンの分子量によってこの半透膜を通過する

ものとしないものがあることを示している。すなわち、分子量 6800 以上のポリエチレンは透過させな

いが、分子量 3600 のポリエチレンが時間とともに半透膜を透過するため、見かけの浸透圧が時間とと

もに低下すると考えられる。

4)浸透圧測定によって正確な分子量を測定するためには,適切な測定条件を選択しなくてはなら

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 7/8

A-6

Page 10: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

ない。例えば,分子量分布の広いポリスチレンをシクロヘキサンに溶解させ浸透圧を測定する場

合,50℃で測定する場合と 30℃で測定する場合でどちらが適切か,理由をつけて答えよ。

解答:問3に示された結果より、半透膜には低分子を通過させる程度の穴があると考えられる。溶液中

の分子サイズが大きくなると半透膜を通過しにくくなり、浸透圧の精度が高まると考えられる。問2の

図1が示すように、シクロヘキサンの 50℃での A2は 30℃での A2より大きく、溶液中ではより拡がった

形態をとると考えられる。すなわち、50℃での測定において、ポリスチレンの分子鎖のサイズが大きく

なり半透膜を通過しづらくなるため、浸透圧の精度が上がると予想され適切と考えられる。

Page 11: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

1)a)から d)の高分子の構造を記せ。

a) ポリメタクリル酸メチル, b) ノーメックス(ポリ-m-フェニレンイソフタルアミド), c) ピロメリット酸無水物とパラフェニレンジアミンの重縮合により生成するポリイミド,

d) トルエン-2,4-ジイソシアネートと 1,4-ブタンジオールの重付加

a) , b) ,

c) , d)

2)スチレンのアニオン重合に関して次の a)から c)に答えなさい。

a) n-ブチルリチウムを開始剤に用いたスチレンのアニオン重合の開始反応,生長反応の各素反応の

反応式を記せ。

OO

n NH

NH

O O

n

NN

O O

OO n

NN

OO

O

OH

Hn

Li CHH2C+ CH + Li

開始反応

生長反応

CH + Li CHH2C

+

HC + LiCH

H2C

2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院自然科学研究科 博士前期課程入学試験

問 題 用 紙

専攻名 物質化学専攻(応用化学コース)(一般選抜 A 試験)

試験科目名 専門科目 ②専門化学

P. 8/8

A-7

Page 12: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

b) モノマーの濃度を[M], 速度定数 kp, 生長活性種を M! とするとき,モノマーの消費速度を式で

表しなさい。 速度定数から Rp = kp [M][M—] よって,消費速度は

−𝑑 M𝑑𝑡

= 𝑘![M][M!]

c) 500 mLの1,4-ジオキサン中, 6.06 mLのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液(1.65 mol/L)の存在下,

130 g のスチレンを重合させた。80.1% のモノマーが重合により消費されたとき,得られるポリマ

ーの分子量を計算せよ。

[n-BuLi] = 0.01 mol/500 mL

[M] = 130×0.801/104.15 = 1 mol/500mL

よって,重合度 DP = 100 なので

Mn = 104.15×100 = 1.04 × 104

3)連鎖縮合重合の特徴について説明しなさい。また,通常の縮合重合との違いはなにか,説明しな

さい。 連鎖縮合重合とは:重合性の低いモノマーが開始剤と反応すると電子供与性が下がることにより末

端官能基の反応性が上がる。この置換基効果によって開始剤と反応したモノマーのみが次のモノマ

ーと生長反応を起こすことができる。この連鎖的な縮合重合によって精密重合が可能となった。 具体例:図に示す不活性モノマーは,金属アミドの強い電子供与性のためカルボニルの活性が低い。

一方,開始剤や生長活性種はニトロ基やアミド基による電子求引性のため,末端カルボニルの活性が

上がり,不活性モノマーと反応を起こす。

通常の縮合重合との違い:通常の縮合重合は反応が制御できないため分子量を制御出来ない。その

CO2PhNR

不活性モノマー

CO2PhO2N 開始剤

O2N 生長活性種O

NR

CO2Ph

Page 13: 2019年度(10月期)及び2020年度 金沢大学大学院 …...2)2MnO 4 - + 10Cl- + 16H+ → 2Mn2+ + 5Cl 2 + 8H 2O 3)KMnO 4溶液を用いた塩化物イオン濃度の酸化還元反応において、平衡定数K

ため様々な分子量をもつポリマーが生成するため,分子量分布が広くなる。一方,連鎖縮合重合は開

始剤から始まった生長種のみが反応するため,狭い分子量分布の高分子が得られる。 4)次の a)および b)に答えなさい。 a)ラジカル重合において,モノマーの Q 値と e 値について説明しなさい。 b)Q 値と e 値は,それぞれ重合反応にどのように影響を及ぼすか答えなさい。 a)

Q 値は置換基との共役の程度を示し,ラジカルの安定性を示す指標である。

e 値はラジカルの極性を表す。

b)

重合反応に及ぼす影響:Q 値が大きいとラジカルが安定に存在でき,反応速度は遅いと判断出来る。一方

Q 値が小さいとラジカルが不安定なため,ラジカルは生成しづらいが,反応性は大きい。

重合反応に及ぼす影響:この正負を利用すると共重合の際に交互重合するかを考察することができる。