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位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究 平成22年3月 財団法人 ニューメディア開発協会 この事業は、競輪の補助金を受けて 実施したものです。 http://ringring-keirin.jp

平成22年3月 財団法人 ニューメディア開発協会...3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ 第4章 動線解析技術に求められる要件の整理

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Page 1: 平成22年3月 財団法人 ニューメディア開発協会...3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ 第4章 動線解析技術に求められる要件の整理

位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究

報 告 書

平成22年3月

財団法人 ニューメディア開発協会

この事業は、競輪の補助金を受けて

実施したものです。

http://ringring-keirin.jp

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わが国経済の安定成長への推進にあたり、情報・機械産業をめぐる経済的、

社会的諸条件は急速な変化を見せており、社会生活における環境、都市、防災、

住宅、福祉、教育等、直面する問題の解決を図るためには技術開発力の強化に

加えて、多様化、高度化する社会的ニーズに適応する情報・機械システムの研

究開発が必要であります。

このような社会情勢の変化に対応するため、財団法人ニューメディア開発協

会では、財団法人JKAから自転車等機械工業振興事業に関する補助金の交付

を受けて、ニューメディアを開発・普及する補助事業を実施しております。

本「位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究」は、ニューメディアを

基礎とした調査・研究事業の一環として、当協会がイデア コラボレーションズ

株式会社及び株式会社日立製作所に委託し、実施した成果をまとめたもので、

関係諸分野の皆様方にお役に立てれば幸いであります。

平成22年3月

財団法人 ニューメディア開発協会

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目次

第1章 地理空間情報と動線解析技術 ‥ 1

1.1 地理空間情報分野の動向

1.2 衛星測位分野の動向

1.3 屋内測位分野の動向

1.4 動線解析技術とは

第2章 動線解析技術の調査 ‥ 26

2.1 動線解析技術論文の調査

2.2 動線解析関連特許の調査

2.3 動線解析技術調査のまとめ

第3章 動線解析技術を利用したサービス調査 ‥ 62

3.1 レコメンデーション分野

3.2 小売・商業施設分野

3.3 産業・流通分野

3.4 イベント分野

3.5 人流解析分野

3.6 その他分野

3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ

第4章 動線解析技術に求められる要件の整理 ‥ 104

4.1 動線を取得するための測位に関する要件

4.2 動線解析処理の要件

添付1 地理空間情報の活用推進に関する行動計画(G空間行動プラン)

添付2 平成 22年度 G空間行動プラン関連予算概算要求状況(GIS関係)

添付3 地理空間情報サービス産業の将来ビジョン

添付4 平成 22年度予算(政府原案)における宇宙関係予算について

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第1章 地理空間情報と動線解析技術

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1.地理空間情報と動線解析技術

携帯電話にインターネット機能や GPS(Global Positioning System)機能が

搭載され、情報を「いつ」でも「どこ」でも入手でき、また、所在地近辺の種々

の情報を容易に入手することが可能な環境が整ってきた。一方、増大する情報

を整理し、効率的に検索するために、「位置」や「時間」の情報を活用する試

みが拡大しつつある。今後は、地理空間情報サービスによって蓄積された位置

情報を分析し、そこから新たな価値を持つ情報を生み出しサービスに応用する

ことが期待されている(図1参照)。

GPS衛星準天頂衛星

絶対座標(X,Y,Z)

空間コードC00000

相対座標(α,β,γ)

屋内・地下空間 屋内・地下空間

10F

B2F: :

屋内GPS送信機

屋内GPS送信機

屋外空間

屋内GPS送信機

屋内GPS送信機

シームレス位置情報基盤

●目的地までのルートを検索●屋外はGPSでナビゲーション

8階

●屋内では測位手段を切替

●高さ方向を考慮した屋内地図を表示

8階カバン売場

●フロアレベルの地図を表示●目的地までダイレクトに誘導

駅ビル地下街

百貨店ショ ッピングモール

パーソナルナビゲーション

本日限り

コーヒー

1杯無料

パン好きのあなたに焼きたてパンのお知らせです。

5P ゲット

現在 30P

100Pで100円分の商品が購入できます。

● 嗜好や状態に応じた広告

●時間と場所に応じたクーポンやポイントの提供

レコメンド

集客

B1~B3危険B5出口へ

B5

要救助者B5出口付近

要救助者

避難誘導 救助

迷子発生

さっちゃんがいないよ! おかーさ

んどこ?

6階服売場

居場所検索

見守り

居場所特定

● ITS ●消防・防災●観光 ●地域活性化 ●都市再開発 ●物流●福祉

ICタグ 無線LANUWB

ICタグ無線LAN●シームレス測位●シームレス地図●動線解析

図1:地理空間情と動線解析技術

本章では、地理空間情報分野の動向、衛星測位分野の動向、屋内測位分野の

動向を調査し、動線解析技術が新たな付加価値サービスを生み出す可能性につ

いて述べる。

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1.1 地理空間情報分野の動向

(1)国の施策状況

時間情報を含んだ位置情報と地図などの地理情報は、「地理空間情報」と呼

ばれ、その高度な活用を推進する法律として、2007年 5月に「地理空間情報活

用推進基本法」が成立し、その具体化を推進すべく、2008年に「地理空間情報

活用推進基本計画」が閣議決定された。この基本計画を受け、政府は、「G空間

アクションプラン」として、地理空間情報関連分野をはじめとする様々な分野

で、研究開発や実証実験の準備を進めている。

2009年 6月に地理空間情報活用推進会議が発表した「地理空間情報の活用推

進に関する行動計画(G空間行動プラン)」では、GIS(Geographic Information

System)関係の施策数は 130 件となっている(表1参照、詳細は添付1参照)。

表1:G空間行動プランにおける施策数(GIS関係)

施策 施策数

地理空間情報の活用の推進に関する全般的施策 52

関係主体の推進体制の整備と連携の強化 [9]

政府が一体となった施策の推進とその整備体制 (2)

国と地方公共団体との連携・協力 (3)

産学官の連携 (4)

調査・研究等の実施 [18]

知識の普及等 [5]

セミナー等の開催 (2)

インターネットによる情報提供 (3)

人材の育成 [3]

行政における地理空間情報の活用 [10]

国における活用 (8)

地方公共団体における統合型 GIS導入促進 (2)

国際協力の推進 [7]

会議等への参画 (2)

データ整備・提供等 (5)

地理情報システム(GIS)に関する施策 78

地理空間情報の整備・提供に関する基準等の策定・普及 [13]

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3

地理情報の標準化 (3)

地理空間情報全般の整備・更新・提供・流通に関するルール等 (9)

基盤地図情報の整備のための基準等の普及 (1)

地理空間情報の整備・更新・提供の推進 [56]

主題図等 (17)

地形図 (1)

地名情報 (1)

海域の地理空間情報 (1)

統計情報 (2)

空中写真 (4)

衛星画像 (3)

基盤地図情報【基盤地図情報の整備・更新・提供】 (7)

基盤地図情報【地籍調査、登記所備付地図等の電子化の推進】 (5)

基盤地図情報【民間測量成果の活用方策の検討】 (1)

基盤地図情報【基準点情報の維持管理等】 (5)

基盤地図情報【整備・更新に関する情報提供】 (1)

ウェブマッピングシステムによるデータ提供 (4)

地方公共団体への支援等 (4)

地理情報システムの活用の推進 [9]

国における活用 (6)

地方公共団体等における活用促進 (3)

合計施策数 130

(太字は[]の施策数の合計、[]は()の施策数の合計)

地理空間情報の活用の推進に起案する全般的施策では、「調査・研究等の実

施」が一番多く、続いて「行政における地理空間情報の活用」となっており、

国において新しい技術や利用に関する調査・研究が実施され、それをまずは国

として活用して行くと言う流れとなっていることが読み取れる。

また、地理情報システム(GIS)に関する施策では、「地理空間情報の整備・

更新・提供の推進」が一番多く、続いて「地理空間情報の整備・提供に関する

基準等の策定・普及」となっており、目的別の主題図や各分野で共通に使える

基盤地図の整備・更新・提供が行われ、またそれを共通的・効率的に整備・提

供するための基準策定が行われていることが読み取れる。

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(2)2010年度の予算状況

内閣府発表の 2010年度 G空間行動プラン関連予算概算要求状況の GIS関係は、

10府省庁、101施策、37,768百万円となっている(表2参照、詳細は添付2参

照)。

表2:2010年度 G空間行動プラン関連予算概算要求状況(GIS関係)

府省庁 施策数 概算要求額 主な施策名

内閣府 3施策 80百万円 ・防災見える化の推進

・防災情報共有プラットフォームの

整備(総合防災情報システムに統

合)

・防災関連情報基盤の構築によるハ

ザードマップ普及促進

警察庁 1施策 - ・犯罪情報分析における GISの活用

総務省 3施策 - ・時刻・位置認証技術の研究開発

・ユビキタス空間情報基盤の研究

開発

・統計 GISの拡充

法務省 2施策 13,100百万円 ・登記所備付地図及び公図の電子化

・地籍整備

財務省 1施策 38百万円 ・国有財産情報公開システム運用等

経費

文部科学省 6施策 - ・地球観測衛星の継続的な開発

・地すべり分布図の電子化

・災害リスク情報プラットフォーム

他(3施策)

農林水産省 11 施策 3,627百万円 ・デジタル森林空間情報利用技術

開発事業

・水稲作付面積調査における衛星

画像活用事業

・特殊土壌地帯推進調査

他(8施策)

経済産業省 10 施策 - ・e空間実証事業

・PIの標準化推進

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・G空間プロジェクト(地理空間

情報 3次元データベース整備)

他(7施策)

国土交通省 49 施策 20,351百万円 ・地籍調査

・基盤地図情報整備経費

・海域の地理空間情報の整備

他(46施策)

環境省 15 施策 573百万円 ・地球規模生物多様性情報システム

整備推進費

・花粉観測体制整備費

・アジア・オセアニア重要サンゴ礁

ネットワーク構築事業

他(12施策)

合計 101 施策 37,768 百万円

(他の概算要求に含まれるものは施策数のみで概算要求額に含まず)

2010年度の概算要求では、国土交通省が最も多い 49施策となっており、地図

関連の整備が中心となっている。続いて地図との関連性が高い環境省の 15施策、

農林水産省の 11施策、標準化やサービス実証を中心とした経済産業省の 10施

策となっている。

また、2008年 7 月 3日の経済産業省発表資料によると、2008 年の地理空間情

報サービスの市場規模は約 4兆円であり、2013年には、これまでの既存地理空

間情報サービスと、更に新たに創出されるサービスを提供する新産業分野を加

えて、約 10兆円の市場規模になるとの予測がなされている(図2参照、詳細は

添付3参照)。

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図2:2013 年の地理空間情報サービス市場予測(経産省 HPより)

既存分野では、ソリューション分野のモバイル・ソリューションやモバイル・

コンテンツといったモバイル関連が高い伸び率を示しており、新産業分野では、

高度マーケティング、次世代 ITS、バリアフリー・ハウスリージェント、高度物

流などの新たな市場が形成されると予測されている。

1.2 衛星測位分野の動向

(1)政府の施策状況

衛星測位を含めた宇宙の開発と利用に関する基本的枠組みを定める法律とし

て、2008年 5月に「宇宙基本法」が成立し、その具体化を推進すべく、2009年

に「宇宙基本計画」が閣議決定された。この基本計画を受け、政府は、「G空間

アクションプラン」として、衛星測位関連分野をはじめとする様々な分野で、

研究開発や実証実験の準備を進めている。

2009年 6月に地理空間情報活用推進会議が発表した「地理空間情報の活用推

進に関する行動計画(G空間行動プラン)」では、衛星測位関係の施策数は 33

件となっている(表3参照、詳細は添付1参照)。

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表3:G 空間行動プランにおける施策数(衛星測位関係)

施策 施策数

衛星測位に関する施策 33

信頼性の高い衛星測位によるサービスを安定的に享受できる環境

を効果的に確保するための衛星測位に係る連絡調整等

[3]

システム運営主体との連絡調整 (2)

衛星測位の利用環境の向上に資する情報提供等 (1)

衛星測位に係る研究開発の推進等 [30]

基礎的・基盤的な研究開発等の推進 (3)

準天頂衛星システム計画の推進 (2)

国の機関等による衛星測位の利用の取組 (20)

衛星測位の利用のための情報提供 (3)

地方公共団体及び民間における衛星測位の利用 (2)

合計施策数 33

(太字は[]の施策数の合計、[]は()の施策数の合計)

衛星測位に関する施策としては、「国の機関等による衛星測位の利用の取組」

が最も多く、衛星測位によって国の機関等の業務の効率化や改善などが検討・

実施されていることが読み取れる。

(2)2010年度の予算状況

2010年 1月の宇宙開発戦略本部発表の 2010年度宇宙関係予算(政府原案)は、

11府省庁、338,965 百万円となっている(表4参照、詳細は添付4参照)。

表4:2010年度宇宙関係予算(政府原案)

府省庁 概算要求額 主な施策名

内閣官房 63,638 百万円 ・情報収集衛星関係経費

・宇宙開発戦略本部にかかる経費

内閣府 801百万円 ・総合防災情報システム(人工衛星等を活用

した被害早期把握システムを統合)

警察庁 782百万円 ・高解像度衛星画像解析システムの運用等

総務省 4,372百万円 ・準天頂衛星システム、地上/衛星共用携帯

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電話システムの研究開発等

・超高速インターネット衛星「きずな」を

利用した国際共同実験

・地域衛星通信ネットワークの利用等

文部科学省 185,373 百万円 ・宇宙ステーション補給機(HTV)

・日本実験棟「きぼう」の運用・科学研究等

・準天頂衛星システム

他(主要 8施策)

外務省 190百万円 ・衛星画像における情報収集および分析に

かかる経費

農林水産省 1,110百万円 ・農林水産施策におけるリモートセンシング

技術の活用

・農林水産施策における衛星測位技術の活用

経済産業省 9,130百万円 ・小型化等による先進的宇宙システムの研究

開発

・太陽光発電無線送受電技術の研究開発

国土交通省 10,954百万円 ・静止気象衛星業務等

・人工衛星の測量分野への利活用

・準天頂衛星システムに関する技術開発

環境省 1,682百万円 ・「いぶき」観測データ解析・処理

・気象変動影響モニタリング・評価ネット

ワーク

・自然環境保全基礎調査

防衛省 60,933 百万円 ・衛星通信、商用画像衛星の利用等

・宇宙を利用した C4ISRの機能強化のための

調査・研究

・弾道ミサイル防衛(BMD)(宇宙関連)

合計 338,965 百万円

2010年度の宇宙関係予算(政府原案)では、宇宙関連の設備運用・研究開発

に最も予算が付けられる予定になっており、続いて内閣官房、防衛省の防衛関

連に予算が付けられる予定となっている。

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(3)各国の衛星測位状況

米国、欧州、ロシア、中国などの各国で独自の衛星測位システムの近代化、

構築が進められている。また、日本でも GPS衛星を補完する衛星測位システム

として準天頂衛星システムの構築が進められている。計画通り進めば、2013年

頃には 100機近くの測位衛星が地球を周回しており、測位・時刻信号が全世界

に送信されるようになる。屋外での測位は、今後も衛星測位が中心であり、系

統の異なる複数の測位衛星を利用した受信機の開発が進んで行くことが想定さ

れる。また、系統の異なる複数の測位衛星を利用することで、ビル影など 4機

以上の衛星からの電場が受信できない環境が減り、衛星測位が本来持つ測位精

度に近づいて行くことが想定される。

○米国 GPS近代化計画

米国が軍事用に打上げた人工衛星を利用した測位システムで、衛星からの

電波が地上の受信機に届くまでの時間を用いて求められる距離を基に、受信

機が地球上のどの位置(緯度・経度・高度)にあるかを知ることができる。

リアルタイムな測位が可能であることや場所や天候に大きく左右されずに測

位できることなどから、航空機、船舶、車両の位置管理に利用されており、

近年では、携帯電話での利用も進みつつある。

2009年 6月時点で 30機の衛星による測位サービス(L1C/A)が提供されて

おり、第 2民生用信号(L2C)、第 3民生用信号(L5)の送信も開始されてい

る。現在は、第 4民生用信号(L1C)の信号仕様が確定し、2014 年より送信が

開始される予定である。

○欧州 Galileo 計画

GPSのバックアップや EU(European Union:ヨーロッパ連合)の自立性確

保を目的とし、構築される予定の欧州の衛星測位システムである。現時点で

は、3機の試験衛星が打上げられており、2014年までに 14機(試験衛星 3機

は含まず)の測位衛星が打上げられる予定である。最終的には 30機の衛星に

より全面運用が行われる予定である。本計画には、EU以外にも、インド、中

国、イスラエル、韓国なども計画への参加を表明している。

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○ロシア GLONASS 再生計画

旧ソビエト連邦共和国が開発し、現在はロシア連邦軍が運用している衛星

測位システムである。ロシア経済の崩壊によりシステムの維持・運用が難し

くなっていたが、改良型衛星の打上げを含む衛星測位システムの再生計画が

進められている。2009年 5月時点では 18機(軌道上には 20 機存在)の測位

衛星によりサービスが提供されており、2010年中には 24機体制の全面運用が

行われる予定である。また、2011年には第 3世代衛星 GLONASS-Kの軌道上実

験が実施される予定である。

○中国 COMPASS 構想

米国の GPS、欧州の Galileo、ロシアの GLONASSに対抗した中国独自の衛星

測位システムである。中国はこれまでに 4機の試験衛星を打上げており、ま

た、2007年 4月、2009 年 4月、2010年 1月に第 2世代の測位衛星 3機を打上

げている。2020 年までに 30機以上の測位衛星を打上げ、地球全体をカバーす

る衛星測位システムを構築する予定である。

○日本 QZSS(Quasi-Zenith Satellite System:準天頂衛星システム)計画

GPSなどによる衛星測位では、受信機の位置を計算するのに最低 4機の衛星

からの信号を地上の受信機で受信できる必要がある。しかし、高層ビルが立

ち並ぶ都市部では天空が開けていないため常に 4機の測位衛星を測位点から

同時に見ることは難しく、測位が行えない場所や測位誤差が大きい場所が多

く存在する。そこで日本は、GPSの第 1 民生用信号(L1C/A)、第 4民生用信

号(L1C)と互換性を有する信号方式を採用し、日本の天頂付近に常に 1機の

測位衛星が存在すると言う特徴を持つ「準天頂衛星システム」の構築を進め

ている(図3、4参照)。本計画では、2010年夏に実証 1号機が打上げられ

る予定であり、最終的には 3機の測位衛星によって全面運用することを目標

としている。

準天頂衛星システムが実用化されれば、都市部で衛星測位が利用できるエ

リアが約 2倍に広がり、都市部での測位誤差を尐なくすることができると試

算されている。

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図3:準天頂衛星のイメージ(JAXA HPより)

Page 18: 平成22年3月 財団法人 ニューメディア開発協会...3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ 第4章 動線解析技術に求められる要件の整理

12

図4:準天頂衛星の軌道(JAXA HPより)

1.3 屋内測位分野の動向

屋外での測位は、現在、衛星測位が標準となっており、前節でも述べた通り、

今後も衛星測位が標準となることが予想される。しかし、屋内での測位は、様々

な測位方式が乱立状態であり、標準的な測位方式が確立されていないのが現状

である。屋内では、屋外とは異なり今後も用途や要求される測位精度に応じて

様々な測位インフラが構築される可能性がある。

ここでは、既に実用化されている屋内測位方式を中心に概要をまとめる。

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(1)携帯電話・PHS(Personal Handy-phone System)基地局による屋内測位

○携帯電話基地局による測位

携帯電話基地局による測位方式には、GPS による測位を主とした A-GPS

(Assisted GPS)と呼ばれる方式が用いられている。A-GPS方式では、①アル

マナックデータ、エフェメリスデータの提供による初期化の高速化、②端末

負荷の軽減と測位の高速化のための測位演算(代行)処理、③ビルの谷間な

ど測位に必要な GPS 衛星が十分に捕捉できない環境下で、携帯電話基地局を

GPS衛星に見立て測位を補完といったことが主な特徴となっている。また、地

下街など GPS 衛星が完全に捕捉できない環境下では、携帯電話基地局のみを

利用して測位する TDOA(Time Difference of Arrival:到達時間差)方式、

AOA(Angle of Arrival:複数局方位測定)方式、これらを組合せたハイブリ

ッド方式などが存在する。(図5参照)

図5:A-GPSイメージ(ケータイ Watch HPより)

○PHS基地局による測位

PHS基地局のセル半径は 100m~1km程度であるため、PHS基地局による測位

方式には、このセル特性を生かし端末が存在するセルの基地局の位置を自己

の位置とする Cell-ID方式や各 PHS基地局からの電波強度を利用し測位する

RSSI(Received Signal Strength Indicator:電波強度)方式などが存在す

る。(図6参照)

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14

図6:PHS基地局測位イメージ(ロケーション株式会社 HPより)

(2)無線通信技術による屋内測位

○無線 LANによる測位

無線 LAN による測位方式には、時刻同期された複数の無線 LAN アクセスポ

イントと端末との電波到達時間差による TDOA方式や複数の無線 LANアクセス

ポイントからの電波強度による RSSI方式、無線 LANアクセスポイントの位置

を自己位置とする方式などが存在する。(図7参照)

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15

11.b/g無線LAN端末

RSSI(電界強度) 検知

AirLocationⅡサーバ

AirLocationⅡ基地局 基地局間同期

データ・VoIP

*有線LAN接続も可能

TOAデータ(電波到達時間差)

基地局間無線転送

AirLocationⅡレシーバ

*有線LAN接続専用

Air

TDOA三辺測量直接波検出アルゴリズム

図7:無線 LAN測位イメージ(日立 AirLocaionIIのケース)

○Bluetoothによる測位

Bluetoothによる測位方式には、時刻同期された複数の Bluetoothアクセス

ポイントと端末との電波到達時間差による TDOA方式や Bluetoothアクセスポ

イントの位置を自己位置とする方式などが存在する。(図8参照)

Page 22: 平成22年3月 財団法人 ニューメディア開発協会...3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ 第4章 動線解析技術に求められる要件の整理

16

図8:Bluetooth測位(NEC インフォサイン HPより)

○ZigBee(IEEE802.15.4)による測位

ZigBeeによる測位方式では、複数の送信機からの信号を受信機で受信し、

最も信号強度が強い送信機の位置を自己位置とする方式である。また、信号

強度から送信機と受信機の距離を計算し、3点測量する方式も研究されている。

(図9参照)

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17

イーサネット基地局

アクティブタグ

シリアル基地局(中継局)

シリアル基地局(中継局)

設備機器

設備機器

制御サーバ

シリアル1対1接続は独立のモード

図9:ZigBee測位イメージ(日立産機 smartMODULEのケース)

(3)無線タグ・無線ビーコンによる測位

○RFID(Radio-Frequency Identification)による測位

RFIDによる測位方式には、①電源を内蔵し自ら電波を発信するアクティブ

型 RFIDを使用した方式と②リーダ/ライタから発信される電波を電力に変換

して機能するパッシブ型 RFIDを使用した方式が存在する。いずれの方式も

RFIDには座標もしくは座標と紐付けられた IDが格納されており、受信端末側

で RFIDの座標もしくは IDを受信することで自己の位置を特定する(IDの場

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18

合は、IDから座標への変換が必要となる)。RFIDの電波到達距離は数 cmから

100m程度であり、RFIDの設置位置を自己の位置とする方式である。(図10

参照)

利用者がタグを持つ場合 利用者がリーダを持つ場合

利用者のデバイス

ICタグ(主にアクティブタグ)

ICタグリーダ(PDA、携帯電話等)

インフラ側のデバイス

ICタグリーダ(基地局)

ICタグ(パッシブタグ・アクティブタグ)

利用用途(例)

◆第3者が対象者・物の位置を把握するアプリケーション・子ども見守りシステム・不審者検知 等

◆利用者自身が自位置を把握するアプリケーション・人のナビゲーション・商品の棚管理 等

構成イメージ

・ ・・

・・・・ICタグ

基地局位置情報

位置検知サーバ

ICタグ

図10:RFID(ICタグ)測位イメージ

○無線ビーコンによる測位

無線ビーコンによる測位方式は、VHF帯の無線ビーコン信号を発信する発信

機を屋内に設置し、3つ以上の発信機からの信号を処理して位置を特定する方

式である。VHF帯を使用しているため、人が多く集まる混在した環境でも性能

の低下を抑えることができるが、測位には専用の端末が必要となる。(図11

参照)

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19

図11:無線ビーコン装置と設置状態(産総研 HPより)

(4)可視光・赤外線・レーザによる測位

○LED(Light Emitting Diode)可視光通信による測位

可視光通信は、身の回りにある目に見える光(可視光)を使って通信を行

う方式であり、最近、照明やディスプレイなどで使用されている LEDの高速

に点滅する特性によりデータ通信を行う。LED可視光通信による測位では、こ

の LED可視光通信を利用して、照明等が設置されている位置情報を受信機に

送信、受信機は受信した位置情報を自己の位置とする測位方式である。(図1

2参照)

図12:LED 可視光通信測位(可視光通信コンソーシアム HPより)

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20

○赤外線通信による測位

赤外線通信による測位方式は、赤外線により位置 IDもしくは位置情報を送

信する送信機を屋内に設置し、送信機からの位置 IDを位置情報に変換するか、

位置情報を直接読み込むことで、送信機の位置を自己位置とする方式である。

○レーザ・レーダ検出による測位

レーザ・レーダによる位置測位では、パルス・レーザを一定間隔で発射、高

速にスキャンし、発射光と反射光の時間から物体の距離と方向を計測する測位

手段である。利用者に端末を持たせること無く、測位を行えると言う特長があ

る。(図13参照)

レー 反射光)

レーザ(発射光)

約20cm

約20cm

“人”検知例

データ処理サーバ

高速スキャン

対象者に測位デバイス不要

図13:レーザ・レーダ測位(日立情報通信エンジニアリングのケース)

(5)バーコードによる測位

○2次元バーコードによる測位

バーコードは横方向にしか情報を持たないのに対し、2次元バーコードでは

縦横方向に情報を持つことができる。2次元バーコードによる測位では、携帯

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電話に搭載されているデジタルカメラにより 2次元バーコードに記録されて

いる位置情報を読み込み、自己の位置とする測位方式である。

(6)GPSの技術をベースとした測位

○高感度 GPSによる測位

高感度 GPSによる測位方式は、GPS受信端末の受信感度を高めることで、天

井や壁を透過した弱い GPS信号やマルチパスにより回りこんだ GPS信号を受

信し測位を行う方式である。通常の GPS 受信機の受信感度が-130dBWであるの

に対し、高感度 GPS では-200dBW程度のまでの信号を受信することができるた

め、窓際や遮蔽物の尐ない屋内では測位が行える。但し、天井や壁を透過し

た GPS信号やマルチパスにより回りこんだ GPS信号を使用するため、測位精

度は高くなく、安定はしない。また、地下などの完全に GPSの信号が遮蔽さ

れる環境では測位が行えない。

○GPSリピータによる測位

GPSリピータによる測位方式は、GPS 衛星の信号を捕捉できる地上や屋上に

GPS受信端末を設置し、その GPS 受信端末が受信した GPS信号を同軸ケーブル

で GPS衛星の信号が届かない屋内や地下街に伝送し、中継装置にて再放射す

ることで GPS測位を行う方式である。測位結果は、地上や屋上に設置した GPS

受信端末の位置となるため測位精度が悪く、ケーブルの敷設など設置が大掛

かりになると言う課題を抱えている。(図14参照)

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GPS衛星 GPS衛星

GPSリピータ

GPS衛星

GPSアンテナ

有線で屋内へ

再送信

無線通信

ロケーションサーバ ロケーションサーバ ロケーションサーバ

無線通信 無線通信

屋外 屋内

屋内でも人の位置を表示

GPS受信機

GPSアンテナ

通信モジュール

GPS受信機

GPSアンテナ

通信モジュール

GPS受信機

GPSアンテナ

通信モジュール

図14:GPSリピータによる測位イメージ

○屋内 GPS送信機による測位

屋内 GPS送信機による測位方式(Indoor MEssaging System 測位方式)は、

屋内に設置された屋内 GPS送信機によって、送信機の位置情報を GPSと同一

の信号に乗せて送信するゾーン検出型の測位方式である。本方式は、独立行

政法人宇宙航空開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency:JAXA)に

よって仕様提案されている。GPSと同一の信号を使用しているため、広く普及

している既存の GPS受信機と親和性が高く、屋外・屋内をシームレスに測位

することが可能である。(図15、16参照)

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屋外 屋内

地下街

GPS衛星

屋内GPS送信機

測位演算((x, y, z)を計算)

ゾーン検出((x, y, z)を受信)

同じGPS携帯電話でシームレスにGPS測位

準天頂衛星

図15:屋内 GPS 測位イメージ

図16:屋内 GPS送信機外観(日立産機 smartMODULE-IMES)

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1.4 動線解析技術とは

1.2節、1.3節で述べたように、屋外では GPSをはじめとした様々な衛星測位

システムが構築・近代化され、屋内では無線 LAN測位、屋内 GPS測位など多種

多様な測位方式の研究開発・実用化が盛んに進められている。近い将来には、

「いつ」でも、「どこ」でも、人や物の位置を知ることができる環境の整備が

進むと想定される。

また、携帯電話にインターネット機能や GPS機能が搭載され、情報を「いつ」

でも「どこ」でも入手でき、また、所在地近辺の種々の情報を容易に入手する

ことが可能な環境が整ってきた。

今後は、位置情報サービスによって蓄積される屋外・屋内の大量の位置情報

を解析・活用し、新たな位置情報サービスを提供することや従来の位置情報サ

ービスに新たな付加価値を提供することが求められると想定される(図17参

照)。

状態判別

移動履歴蓄積

購買履歴

検索履歴

移動履歴

動線解析エンジン測位インフラ

GPS

屋内GPS無線LAN

ICタグ

集計処理

Webアプリ

LBSサービス

○歩行者ナビ

○情報検索

○情報配信

○第三者検索

○ トラッキング等

サービス

屋内外地図エンジン

屋内地図

屋外地図

動線DB

地図検索

地図表示

位置時間情報 地図DB

連携

公共空間

産業空間

位置時間情報

サービス応用

図17:位置情報の解析・活用イメージ

本調査研究では、過去から未来に渡る位置情報の変化を捉える技術として、

動線解析技術に注目し報告する。ここで動線解析を以下のように定義する。

「時系列測位データ群を用いて動線区間群に意味づけすること、

及び、その結果を組み合わせて他の意味を派生させること」

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ここで動線とは実際の移動体(人、物)の移動軌跡全体を指し、動線区間と

は動線の一部区間を指す。また、時系列測位データ群とは移動体の位置を測定

した座標値の時系列を意味する。一方、意味づけとは測位データを測位データ

以外の情報と関連づけることを意味する。

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第2章 動線解析技術の調査

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2.動線解析技術の調査

本章では公開されている技術論文や特許から動線解析技術の利用に期待され

ているニーズ、特にその対象や手法等について調査を行う。

2.1 動線解析技術論文の調査

(1)人物の動線解析に関する論文

(a)レーザスキャナを用いた歩容解析に基づく移動軌跡クラスタリングとその

評価

■発表年度:2007 年

■筆 者:中村克行 他

■概 要:

In this paper the authors propose a method for recognizing

non-stationary walking based on a gait analysis using multiple laser

range scanners. The proposed method consists of the following procedures:

(1) people tracking; (2) detection of gait features; (3) recognition of

non-stationary walking. First, people tracking is performed by

recognizing patterns in which the range data obtained near ankle

rhythmically. Next, gait analysis is performed by the spatio-temporal

clustering using Mean Shift algorithm。 Finally, One Class Support Vector

Machine (One Class SVM) is applied for learning and classifying a

non-stationary walking. The experiment in a station concourse in Tokyo

shows the overall accuracy of 98.4% by the proposed method.

(b)歩行者ナビのための自蔵センサモジュールを用いた屋内測位システムとそ

の評価

■発表年度:2008 年

■筆 者:興梠正克 他

■概 要:

In this paper, we describe an indoor positioning system using

self-contained sensors (accelerometers, gyroscopic sensors and

magnetometers) for pedestrian navigation and its evaluation. We

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introduce a novel method of pedestrian dead-reckoning by accumulation

of estimated walking displacement. The method is implemented on a

wearable computing platform and is applied to pedestrian navigation

applications in Science Museum. The implementations using three types

of self-contained sensor modules are compared by their performance on

accuracy of position and orientation.

(c)分散センサ情報の統合によるエリア内人物追跡と動線推定(D論セッション

2)

■発表年度: 2008 年

■筆 者:小林貴君 他

■概 要:

本稿では、環境に疎密に分散配置されたセンサ群を用いて、特定エリア全

体における人物動線を計測する手法について述べる。まず、公共施設や商業

施設などの監視カメラ映像を想定し、視野を共有する複数のカメラを用いて、

人物頭部の三次元位置と向きを追跡する手法について述べる。また、店舗な

どでの複数人物の追跡のため、監視カメラによる追跡にレーザ測域センサを

相補的に統合することで、人物の出現や消失の検出、人物相互の遮蔽を扱う。

さらに、エリア内全体を通じて、連続した人物動線を計測するため、障害物

や人物相互の遮蔽などにより断片化した人物動線や、複数観測領域間におけ

る人物動線を対応付け、観測領域外の人物動線を補間する手法について述べ

る。

(d)動線の軌跡と滞留に着目した動作解析(テーマ関連セッション 8、コンピュ

ータビジョンとパターン認識のための学習理論)

■発表年度: 2009 年

■筆 者:大西正輝 他

■概 要:

近年、実環境において人間の移動軌跡(動線)を抽出する研究が行われてい

る。実証フィールドはこれまでの実験室レベルから現場レベルへと移りつつ

あり、商業施設での顧客行動解析や駅や空港などでの安全管理、オフィスに

おける仕事効率の計測など様々な応用分野を切り開きつつある。本稿ではス

テレオカメラを用いて実シーンにおける動線を抽出し、動線を軌跡と滞留に

分割することによってクラスタリングを行い、動作を解析する手法を提案す

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る。また、提案手法を用いて実際の救急隊の訓練を解析することによってチ

ーム医療行為の解析の一助となり得ることを明らかにする。

(e)Azim : 方向センサを用いたユビキタス位置情報サービス(位置情報・動線

解析(1))

■発表年度: 2003 年

■筆 者:岩崎陽平 他

■概 要:

近年、携帯電話などの携帯端末の普及、GPS モジュールの低価格化により、

位置情報を用いた様々なサービスが普及しつつある。しかし、屋内・屋外を

問わず広い範囲で利用可能、かつ安価な位置測定手段は現状では存在しない。

本論文では、方向センサを用いた位置情報システム Azimを提案する。本シス

テムでは、位置が既知の複数のマーカの方位角を、ユーザが指し示して測定

することにより、ユ-ザの位置を推定する。この測定には誤差が伴うため、ユ

ーザの位置は確率密度として計算した。本手法では、ユーザの位置だけでな

くその方向も取得できるため、ユーザが指し示している物体を特定するなど

の、位置と方向を用いたより高度なサービスが実現できる。

(f)レーザスキャナを用いた群集の追跡および流動の可視化

■発表年度: 2007 年

■筆 者:帷子京一郎 他

■概 要:

本論文では、面的に測距を行うレーザスキャナを用いた群集の追跡手法、

及び駅での検証実験により求められた群衆流動の可視化の方法について述べ

る。提案手法は、複数のレーザスキャナを時間的・空間的に同期させ、計測

された歩行者の足断面のレンジデータから複数の歩行者を追跡する。追跡ア

ルゴリズムは、レーザポイントに対して単純な時空間的クラスタリングを行

うことで、実時間の処理を可能にしている。さらに得られた多数の軌跡デー

タに対して位置と方向を考慮した三次元的なカーネル密度推定を行うことで、

群衆流動の方向や通行密度、サイズといった情報の可視化を行う。また、得

られた軌跡に対して OD別通行量の精度を評価した。

(g)歩行者動線分析システムを用いた大型家電量販店での行動分析(位置情

報・動線解析(2))

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■発表年度: 2003 年

■筆 者:小磯貴史 他

■概 要:

筆者らは、群集ナビゲーション技術開発の一環で、歩行者動線分析システ

ム"Peds-Go-Round"の開発を進めている。このシステムを用いて、実際に営業

を行っている某大型家電量販店において、顧客及び従業員の動線観測実験を

行い、そこから得られたデータに対してどういった知見が得られるか、そり

分析を行った。本稿では歩行者動線分析システム"Peds-Go-Round"の概要と、

実際の実験方法とその分析方法、並びに筆者らが提案している主動線抽出手

法と、その手法の本実験データへの適用に関する報告を行う。

(h)行動履歴に基づいた環境属性の自動構築を伴う三次元人物追跡

■発表年度: 2007 年

■筆 者:杉村大輔 他

■概 要:

本稿では、 人物の行動履歴を用いた人物追跡の安定化手法を提案する。 あ

る決まった通路の通行、 滞留などの人物の行動は、 対象空間内の特定の領

域で頻繁に観測される。 このような人物の行動を長時間観測することにより、

行動履歴に基づいた人物の存在確率分布(環境属性と定義する)を得ること

ができる。 そしてこの環境属性を importance function としてパーティクル

フィルタの枠組みに組み込むことにより、 安定な人物追跡、 特に高速な追

跡初期化を実現する。 また、 環境属性は毎フレーム得られる追跡結果を用

いて逐次的に更新される。 実環境における実験により、 本手法の有効性を

確認した。

(2)店舗内の顧客の動線解析に関する論文

(a)RFIDタグを用いた科学館来館者の移動軌跡の分析

■発表年度:2008 年

■筆 者:神田崇行 他

■概 要:

本稿では、アクティブ型 RFIDタグシステムによる科学館の来館者の移動軌

跡、行動パターン、人間関係に関する情報抽出を報告する。我々は、科学館

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で 25日間にわたり人間型ロボットの展示を行った。この際に、来館者にロボ

ットと相互作用するために RFIDタグを身につけるように求めた。RFIDタグを

所持する来館者の振舞いは、科学館の 1 フロアに設置した 20 台の RFID リー

ダによって記録された。各リーダは、タグの大まかな距離を検知することが

可能である。この 20台のリーダからの出力を統合することにより来館者の移

動軌跡を推定した。さらに、得られた移動軌跡から「空間」「行動パターン」

「人間関係」の 3 つの側面に関する分析を行った。空間については、クラス

タリングにより科学館のフロアの領域分割を行い、領域ごとの混み具合を可

視化することで、空間がどのように利用されたかを分析した。行動パターン

については、DP マッチングとクラスタリングの組合せにより「すべての展示

を見て回る」「ロボット展示に直行する」といった典型的行動パターン抽出が

可能であることを見出した。さらに、人間関係については、一定距離内の滞

在時間率を利用することで、一緒に科学館を来訪したグループ関係について、

たとえば再現率 76%、適合率 90%で推定することが可能であった。

(b)多段階のパターン認識を用いた歩行軌跡データからの顧客行動判別

■発表年度: 2006 年

■筆 者:豊嶋伊知郎 他

■概 要:

RFID・センサーネットワーク・画像処理技術等に代表される各種ユビキタ

スデバイスの発展により、実空間内における人間行動データを収集し蓄積す

ることが可能な環境が整いつつある。平行して、それらにより収集されたデ

ータを使用した行動判別の研究も数多く行われている。我々は人が行動する

空間の状況を把握し、様々な価値を向上させる手法に関して研究を行ってい

るが、空間内での人の行動データの収集技術とと、それらを用いた行動判別

技術は不可欠の要素技術である。本研究では、ユビキタスデバイス中では比

較的安価でありかつ一般化しているカメラ画像から得た歩行軌跡データを入

力とした、店舗内顧客の行動判別手法を提案する。本手法は、軌跡データか

らの「基本行動」判別とその判別結果に基づいて計算された「基本行動量」

を入力とする「顧客行動判別」の 2段階から成る。

(c)店舗内回遊モデルの定性的検証(さまざまな分野の形式的検証最前線及び

一般)

■発表年度: 2005 年

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■筆 者:豊島伊知郎 他

■概 要:

我々は顧客動線データに基づく小売店舗一日回遊モデルを提案した。本研

究はその実装及び検証結果の報告である。本モデルは家電量販店等に代表さ

れる大規模小売店舗の店舗内マーケティングへの応用を視野に入れた、 顧客

動線の予測を目的としている。それゆえ検証頄目として店舗内マーケティン

グにとって有用な指標である顧客動線長・顧客総滞在時間の 2 つの定性的な

側面を選択し、 実測データとの比較考察を行った。本モデルは顧客行動を複

数の側面に分割しそれぞれに対してサブモデルを設定しているという特徴を

持つが、 今回の検証においてはこれが誤差原因の特定を容易にする機能を果

たした。検証結果を受けて、 移動経路決定モデルの表現力向上や推定用デー

タの入力方法の改良等の課題頄目を抽出した。

(d)顧客動線に基づく店舗内環境評価手法の提案(社会システムと知能(群ユー

ザモデルと知的支援)、 「社会システムにおける知能」及び一般)

■発表年度: 2005 年

■筆 者:吉田琢史 他

■概 要:

小売店舗店頭は、売り手の生産活動と買い手(顧客)の消費活動が共存する

極めて相互作用的な場であり、その収益性を評価する際には、顧客の行動分

析が非常に重要となる。従来の店頭研究における顧客行動分析は、POS (Point

of Sale)等のシステムにより支えられてきた。最近は、RFID (Radio Frequency

Identification)やビデオ・カメラに代表される各種センサによるユビキタス

情報の獲得が急速に容易になりつつあり、店頭研究にパラダイム・シフトを

もたらすと期待される。本研究では、店舗内での顧客の移動(動線)や状態な

ど大量に取得されたユビキタス情報に基づき店舗 ROI (Return On Investment)

を評価し、売り手と買い手共に生産性を高めるような ISM (In-Store

Merchandising)の施策を策定するためのフレームワークを提案する。

(3)動線解析による逸脱人物や人物行動の特徴点抽出に関する論文

(a)人物動線データ分析による逸脱行動人物の検出

■発表年度: 2007 年

■筆 者:鈴木直彦 他

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32

■概 要:

近年ユビキタスコンピューティングの発展に伴い、様々な空間において画

像センサ・GPS・レーザレーダセンサなどのデバイスを用いた移動体位置の連

続的検出が可能になっている。そこで本研究では、人物移動経路の時系列デ

ータ群(人物動線データ群)の理解を行うため、人物動線データのパターン分

類および逸脱行動人物検出手法の開発を目的とする。(1)過去に得られた人物

動線データ群の分類および逸脱行動人物検出(2)学習された人物動線パター

ンを用いたリアルタイム逸脱行動人物検出の 2 つの利用シーンに対応した手

法を提案している。提案手法の有効性を検証するために実空間で得られた人

物位置の時系列データ群による評価実験を行い、有効な結果が得られること

が分かった。本研究における提案手法は、店舗におけるマーケティング分析、

様々なセキュリティシステムなどへの応用が考えられる。

(b)実世界中で行動する人間の移動軌跡データからの特徴抽出(位置情報・動

線解析(1))

■発表年度: 2003 年

■筆 者:柳沢 豊 他

■概 要:

近年、GPSなどの位置取得デバイスの発達により、人間や車の移動軌跡デー

タを高い精度で取得できるようになり、これを分析して行動の特徴を取り出

す研究が進んでいる。例えば、店舗内の来客の移動軌跡データを分析し、来

客の購買行動の特徴を取り出せば、商品の陳列の最適化を行うことができる。

このような分析には、一般にシンボル列化された行動情報に対し、データマ

イニングの手法を適用する方法が用いられる。しかし、一般にこのシンボル

化の作業は手動で行う必要があり、この作業がユーザがに大きな負担になっ

ていた。そこで本研究では、ある程度自動でシンボル化を行える手法を提案

し、また一連の分析作業を視覚的に行えるインタフェースシステムの実装を

行った。これによりユーザの労力が軽減され、比較的容易に移動軌跡データ

からその特徴を抽出することが可能になった。

(c)人物動線データ群における逸脱行動人物検出及び行動パターン分類

■発表年度: 2008 年

■筆 者:鈴木直彦 他

■概 要:

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33

画像センサ・GPS・レーザレーダなどから得られる移動体経路情報に基づい

た状況理解として、各種センサから得られる人物動線データ群からの逸脱行

動人物検出及び行動パターン分類を行う手法の提案を行う。提案手法では、

HMM(Hidden Markov Model)を用いてモデル化した人物動線データを低次元

空間上に射影し、クラスタリング及び外れ値検出に基づいて逸脱行動人物検

出及び行動パターン分類を行う。また、過去に得られた人物動線データ群の

検索とリアルタイム検出した人物動線データの識別を行うためのスキームも

同時に提案する。実空間で得られた人物動線データ群を用いた検証を行い、

提案手法により有効な結果が得られることが分かった。本論文の提案手法は、

セキュリティシステム・マーケティング分析などへの応用が考えられる。

(d)クラスタリング結果を用いた外れ値検出による、歩行軌跡データからの行

動識別手法(テーマ関連セッション 3)

■発表年度: 2007 年

■筆 者:豊嶋伊知郎 他

■概 要:

安全意識の高まりを受けて、サーベイランスシステムの需要が高まりつつ

ある。一方でシステムの増加・巨大化は確認業務の増加を招くことは確実で

あり、解決のため自動的に問題のある状況を発見するインテリジェントなシ

ステムの研究が行われてきている。逸脱行動などの問題状況を自動的に発見

する機能を実現するための課題としては、教師データ不足やモデル化の不可

能性が挙げられるが、その解決には外れ値検出法の枠組みが妥当であると考

えられている。一般的な外れ値検出手法は、推定対象の分布の単峰性を仮定

しているが、このことは歩行軌跡データ等の人間行動データでは成立しにく

く、2つ以上の分布が存在する状況に対しても対応可能な仕組みが不可欠であ

る。本報告ではステレオ画像処理により得られた歩行軌跡データを用いた逸

脱行動検出問題において、クラスタリングにより分布の状況を事前に把握す

ることが検出率の向上に有効である事実の実験結果を示した後、最適な逸脱

行動検出の実現のため、外れ値検出手法の 1 つである 1classSVM のハイパー

パラメタ設定方法に関して論ずる。

(e)確率遷移モデルによる人物行動の認識と例外の検出(テーマ関連セッショ

ン 3)

■発表年度:2007 年

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34

■筆 者:青木康洋 他

■概 要:

本研究では、カメラ画像上の人物を追跡し、その行動を認識することで未

知の行動を行う人物を例外として検出するような、安心・安全空間を提供す

るための監視システムの構築を目指す。人物の行動を認識するために、連続

的な状態変化である行動をいくつかの部分に分割して行動素を作り、この行

動素の遷移列を行動モデルとして考える。認識は、ある観測が得られたとき

の行動モデルの事後確率を求めることで行う。事後確率はベイズ推定によっ

て表され、実際の計算機上での計算はモンテカルロ法による近似計算で行え

る。本報告では、人物の行動として人物領域の重心軌跡を用いて認識処理を

行い、未学習の行動を例外として検出できるかどうかを試みる。

(f)HMMによる行動パターンの認識

■発表年度:2002 年

■筆 者:青木茂樹 他

■概 要:

近年、人物の行動の規則性や習慣性などのパターンを認識、理解する研究

が盛んに行われている。本論文では、人物の行動に伴って観測される軌跡に

注目し、軌跡をもとに人物の行動パターンを学習・認識する手法を提案する。

実験では八つのシーンの行動パターンを学習し、日常的な行動と日常的に行

わない行動を認識する。

(4)Web動線解析に関する論文

(a)インターネット上で実空間情報を収集・管理するフレームワークの提案(位

置情報・動線解析(2))

■発表年度: 2003 年

■筆 者:田坂和之 他

■概 要:

インターネット上において、現実世界の情報を利用したサービスを提供す

るために、インターネット上の仮想空間に現実の空間である実空間を表現す

る需要が高まってきている。需要の高まりと共に、センサがインターネッ卜

に接続される、いわゆるセンサネットワークが世の中に広がりつつあり、今

後もさらに増加していくと予想される。しかし現状は、実空間に存在する情

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35

報の収集不足や各センサの仕様の違いなどの問題などがあり、実空間情報の

収集方法や管理手法が確立されていない。そこで本稿では、インターネット

上に実空間を表現し、実空間情報を利用したサービスを提供するために、実

空間情報を収集、管理するフレームワークの提案を行なう。

2.2 動線解析技術特許の調査

(1)利用対象毎の動線解析に関する特許

(a)店舗内の顧客に関する特許

① 動線解析装置

■出 願 日 :2008/4/11

■出願番号 :特許出願2008-103666

■公 開 日 :2009/11/5

■公開番号 :特許公開2009-258782

■出願人権利者:東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

顧客の動線を精度よく解析できるようにする。

【解決手段】

動線解析装置3は、売場領域を撮影したカメラ画像から人物の軌跡を示す動

線を生成し、この動線データを動線サーバ20で記憶する。動線サーバ20の

動線データに基づいて、売場領域で買物をする顧客毎に、その売場領域におけ

る所定範囲内での全軌跡である完全動線を編集する。顧客別に編集された完全

動線データに基づいて売場領域内を移動する顧客の軌跡を再生し、この顧客の

商取引決済に関する情報の入力を受け付ける。そして、入力された商取引決済

に関する情報をその顧客の完全動線データに付加して完全動線データベース3

8で記憶する。完全動線データベース38の完全動線データに、その完全動線

データに付加されている商取引決済に関する情報に該当するトランザクション

データを紐付け、紐付けの組合せを示すデータを紐付けテーブルで記憶する。

② 店舗内の販売分析装置及びその方法

■出 願 日 :2005/6/17

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36

■出願番号 : 特許出願2005-177118

■公 開 日 :2006/12/28

■公開番号 :特許公開2006-350751

■出願人権利者: 松下電工株式会社

■発明の概要 :

【課題】

コンビニエンスストアなどの店舗において、顧客一人当たりの販売金額を上

げるため、店舗側が選択した顧客の動線を解析する。

【解決手段】

店舗内に設置された複数のカメラ1殻で撮影されて映像を時間情報と紐付け

して記録した映像データベース5と、販売情報入力装置6から入力された購入

商品を含む販売情報を購入時刻と紐付けして記録した販売情報データベース7

と、映像データベース5に記録した映像を取込んで画像処理を行い、人物の抽

出と抽出された人物の追跡を行って人物の位置する座標、人物の識別情報に時

間情報を紐付けした動線データを作成する動線変換処理部34と、動線変換処

理部34で作成された動線データを記録する動線データベース36を備え、販

売情報を指定して販売情報データベース7から監視対象者を抽出し、監視対象

者の購入時刻から動線データベース36の動線データを特定して表示する。

③ 顧客管理システム、顧客管理方法、端末装置、プログラム

■出 願 日 :2006/8/25

■出願番号 : 特許出願2006-228785

■公 開 日 :2008/3/6

■公開番号 :特許公開2008-52532

■出願人権利者: 日本電気株式会社

■発明の概要 :

【課題】

カートやかごの無い店舗でも動線情報を把握することができ、また、顧客が

動線情報の収集に対する許諾の判断を下すことができ、さらに、全ての商品に

ICタグを取り付ける必要がない顧客管理システム、顧客管理方法、端末装置、

プログラムを提供する。

【解決手段】

顧客が保持する携帯機器10は、リーダライタ装置20との通信を可/不可

とする許可手段12を備え、店舗内の複数の場所に設置したリーダライタ装置

20は、携帯機器10のID記録媒体11から顧客ID111を収集し、端末

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37

装置30は、顧客ID111と時刻112との紐付情報25と、設置位置情報

231とをリーダライタ装置20から受信し、顧客の店舗内の動線情報を生成

する。

④ 情報収集システム、情報収集方法

■出 願 日 :2006/3/23

■出願番号 : 特許出願2006-81300

■公 開 日 :2007/10/4

■公開番号 :特許公開2007-257335

■出願人権利者: 日本電気株式会社

■発明の概要 :

【課題】

従来の販売管理システム(POS)は単品毎の販売データを管理するには有

効な仕組みであるが、一定の限界があった。すなわち、情報収集のタイミング

が売上時点であるため、顧客がなぜ買ったのか、なぜ買わなかったのかという

購買に至るまでの情報を収集できない弱点があった。

【解決手段】

RFIDリーダ/ライター(12)を付けたカート(10)と買い物かごが

売り場を通り過ぎると、商品ケース(20)のコーナーの随所に設置してある

RFIDタグ(21)を読み取る。顧客が決済する際に、カードを提示すると

該当顧客情報と動線、購買商品リスト情報がデータベースに登録される。これ

によって、推測に頼っていた顧客の動線と足を止める時間を秒単位まで把握す

ることが可能になる。

⑤ 動線情報処理システム

■出 願 日 :2003/8/27

■出願番号 : 特許出願2003-303202

■公 開 日 :2005/3/17

■公開番号 :特許公開2005-71252

■出願人権利者: カシオ計算機株式会社

■発明の概要 :

【課題】

施設内を移動する移動体の正確な動線情報を生成する。

【解決手段】

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38

買物カゴや買物カートに付された無線IDタグ3a、3b、・・・は、店舗内

に設置された各アンテナ対(22a、22b)、(23a、23b)、・・・を通

過する際に、トリガー用ゲートアンテナ22a、23a、・・・から発信された

電波に応答して、無線IDタグ3a、3b、・・・に対応するタグ識別情報と、

アンテナ対(22a、22b)、(23a、23b)、・・・に対応するアンテナ

識別情報とを送信する。これらの情報は、受信アンテナ22b、23b、・・・

によって受信され、通過時刻とともに通過情報データファイル51に保存され

る。表示装置7により店舗レイアウトの画像上に各利用客の動線情報を表示す

る。

⑥ 動線情報取得システム、動線情報取得装置、携帯端末及びプログラム

■出 願 日 :2002/4/15

■出願番号 : 特許出願2002-112039

■公 開 日 :2003/10/31

■公開番号 :特許公開2003-308374

■出願人権利者: 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

■発明の概要 :

【課題】

顧客が商品を選択する際に移動する動線情報を容易に取得できるようにす

る。

【解決手段】

顧客4が所持する会員カード5は、通信可能な位置にある商品2に添付され

たICタグ3から商品コードを受信し顧客IDと共にアンテナ11を介してサ

ーバ6に送信する。サーバ6は受信したデータに時刻情報を追加すると共に、

このデータと顧客所持商品DB9の当該顧客4のそれ以前に受信したデータと

を比較しその差分の商品コードを検出する。この差分商品コードに基づいて商

品位置情報DB7を検索することにより当該顧客4のいた位置情報を得ること

ができる。このようにして顧客の移動と共に得られた複数の位置情報と顧客I

Dと時刻情報とにより、その顧客4の動線情報を取得することができる。この

動線情報は動線ログDB10に記録される。

■出 願 日 :2006/7/3

■出願番号 :特許出願2006-182982

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■公 開 日 :2008/1/24

■公開番号 :特許公開2008-15577

■出願人権利者: 松下電器産業株式会社

■発明の概要 :

【課題】

商品・顧客にICチップを設置することなく、潜在商品の消費動向を分析す

ることが可能な消費者行動分析装置を実現する事を目的とする。

【解決手段】

買い物かごに設置されたかごIDを記憶するRFIDタグと通信可能なRF

IDリーダー装置と撮影装置とからなるシステムであって、RFIDリーダー

装置がRFIDタグに対応するかごIDを検出した場合に、検出したRFID

リーダー装置に対応するリーダー装置IDとかごIDと検出時間とを対応付け

て登録し、検知エリアを撮影するように撮影装置を制御し、画像データを画像

解析技術を用いて解析することにより撮影された各人物の特徴抽出を行い、各

人物について人物特徴IDと抽出された特徴情報とかごIDとを対応付けて登

録し、人物特徴IDとかごIDとが1対1に対応する場合があるかを判定し、

かごIDに対応する人物特徴IDが一意に決定した場合にかごIDに対応する

人物特徴IDを登録する。

⑧ 客動線調査システム、客動線調査方法および客動線調査プログラム

■出 願 日 :2004/1/29

■出願番号 : 特許出願2004-22174

■公 開 日 :2005/8/11

■公開番号 :特許公開2005-216010

■出願人権利者: 日本電気株式会社

■発明の概要 :

【課題】

商品や本といったような物品を格納している棚等の格納手段から客が物品を

持ち出して購入、借り受けあるいは閲覧等の利用を行う際に、商品の管理を行

いながら客動線の調査も併せて行えるようにする。

【解決手段】

客動線調査システム200は商品管理棚システムの一部として組み込まれた

システムである。客281が第1~第3の商品陳列場所271~273で項次

商品203を買物かご282に入れていくと、それぞれの商品203が棚から

なくなった時刻とこれらの個体IDが記憶される。POS端末228で商品2

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40

03を清算すると、一括清算の対象となった商品のグループの中で棚から持ち

出された時刻の項に客281が売り場を移動したことが分かり、これから客動

線が演算される。

⑨ 動線解析装置

■出 願 日 :2008/4/11

■出願番号 : 特許出願2008-103666

■公 開 日 :2009/11/5

■公開番号 :特許公開2009-258782

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

顧客の動線を精度よく解析できるようにする。

【解決手段】

動線解析装置3は、売場領域を撮影したカメラ画像から人物の軌跡を示す動

線を生成し、この動線データを動線サーバ20で記憶する。動線サーバ20の

動線データに基づいて、売場領域で買物をする顧客毎に、その売場領域におけ

る所定範囲内での全軌跡である完全動線を編集する。顧客別に編集された完全

動線データに基づいて売場領域内を移動する顧客の軌跡を再生し、この顧客の

商取引決済に関する情報の入力を受け付ける。そして、入力された商取引決済

に関する情報をその顧客の完全動線データに付加して完全動線データベース3

8で記憶する。完全動線データベース38の完全動線データに、その完全動線

データに付加されている商取引決済に関する情報に該当するトランザクション

データを紐付け、紐付けの組合せを示すデータを紐付けテーブルで記憶する。

⑩ 人物行動分析装置、方法及びプログラム

■出 願 日 :2007/8/13

■出願番号 : 特許出願2007-210934

■公 開 日 :2009/3/5

■公開番号 :特許公開2009-48229

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

店舗エリア内の特定のエリアにおける人物と商品との関連性について詳細な

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分析を容易に行えるようにする。

【解決手段】

同一人物の動線データと商取引データとを関連付ける情報を記憶する関連付

け情報記憶部と、店舗エリア内を細分化したサブエリアをそれぞれ特定する情

報を記憶するサブエリア情報記憶部とを設ける。分析条件としてサブエリアの

指定を受付けると、サブエリア情報記憶部内の当該指定サブエリアを特定する

情報と動線データベース内の各動線データとから、当該指定サブエリアを通過

した人物の動線データを抽出する。また、関連付け情報記憶部内のデータを参

照して、抽出された動線データと関連付けられた商取引データを特定する。そ

して、抽出された動線データと商取引データとの関連性を示す情報を作成して、

この作成された情報により店舗エリア内における人物の行動の特徴を分析する。

⑪ 店舗内の販売分析装置及びその方法

■出 願 日 :2005/6/17

■出願番号 : 特許出願2005-177118

■公 開 日 :2006/12/28

■公開番号 :特許公開2006-350751

■出願人権利者: 株式会社日立製作所

■発明の概要 :

【課題】

コンビニエンスストアなどの店舗において、顧客一人当たりの販売金額を上

げるため、店舗側が選択した顧客の動線を解析する。

【解決手段】

店舗内に設置された複数のカメラ1殻で撮影されて映像を時間情報と紐付け

して記録した映像データベース5と、販売情報入力装置6から入力された購入

商品を含む販売情報を購入時刻と紐付けして記録した販売情報データベース7

と、映像データベース5に記録した映像を取込んで画像処理を行い、人物の抽

出と抽出された人物の追跡を行って人物の位置する座標、人物の識別情報に時

間情報を紐付けした動線データを作成する動線変換処理部34と、動線変換処

理部34で作成された動線データを記録する動線データベース36を備え、販

売情報を指定して販売情報データベース7から監視対象者を抽出し、監視対象

者の購入時刻から動線データベース36の動線データを特定して表示する。

⑫ レイアウト評価・提案システム、その方法、そのプログラム及び該プログラ

ムを記録した媒体

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■出 願 日 :2003/7/11

■出願番号 : 特許出願2003-195932

■公 開 日 :2005/2/3

■公開番号 :特許公開2005-31963

■出願人権利者: 日本電信電話株式会社

■発明の概要 :

【課題】

顧客の移動とともに商品の移動を確実に追跡でき、顧客が購入もしくは興味

を示した商品を特定でき、これから商品間の売上の相関などを解析でき、効果

的な商品レイアウトを提案可能とすること。

【解決手段】

顧客とともに移動する顧客用無線タグ11及び商品に取り付けられた商品用

無線タグ12から顧客ID及び商品IDを、店舗内に設置された複数の無線タ

グリーダ13により定期的に読み取り、顧客ID、商品ID、リーダID、時

刻情報からなるタグ情報を生成し、収集し、移動軌跡解析サーバ15で店舗内

における各顧客及び各商品の動線データを作成し、同一顧客が同時に購入する

確率の高い商品の組み合わせを表す商品間情報を作成し、レイアウト評価・提

案サーバ16で商品間情報と商品の店舗内における配置とを基に、店舗内にお

ける商品レイアウトを評価し、効果的な商品レイアウトを提案する。

⑬ 店舗内の動線把握システム

■出 願 日 :1999/6/16

■出願番号 : 特許出願平11-169638

■公 開 日 :2000/12/26

■公開番号 :特許公開2000-357177

■出願人権利者: 市川甚商事株式会社

■発明の概要 :

【課題】

店舗内での購買者の移動状況を示す動線データを人手に頼らず且つ低コスト

で把握する。

【解決手段】

それぞれ固有の位置識別データを記憶するIDタグ1を陳列棚63などに

多数設け、IDタグ1から発せられた位置識別データをその受信時刻と共に蓄

積するデータ蓄積装置2をカートに搭載する。購買者がカートを帯同して売場

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に入ると、データ蓄積装置2はIDタグ1に呼出しを行い、所定領域内に入っ

たIDタグ1から送信されてくるデータを受け取って項次蓄積してゆく。精算

時にそれらデータは無線送信によって受信装置5に受け渡され、通信線を介し

て解析用のコンピュータへと送られる。一方、各データ蓄積装置2毎に付され

ている端末識別データはPOS連動レジスタ3で読み取られ、売上データと共

にコンピュータへ送られる。その結果、動線が把握されると共に、購入商品と

の対応付けも行われる。

⑭ 顧客動線管理システム

■出 願 日 :1996/8/22

■出願番号 : 特許出願平8-221131

■公 開 日 :1998/3/6

■公開番号 :特許公開平10-63730

■出願人権利者: 日本電気株式会社

■発明の概要 :

【課題】

顧客が商品を選択した時点とその商品コードから対応づけられる棚位置と

を収集することによって顧客の移動を把握する。

【解決手段】

商品コード入力部11、タイマ13、商品情報ファイル21、棚位置情報フ

ァイル22を具備し、制御部31は入力された商品コードをキーにして商品情

報ファイル21および棚位置情報ファイル22を参照しながら売上データおよ

び棚位置データを時刻と共にデータファイル32に書込む。そしてデータファ

イル32の内容は任意の時点でデータ処理部に送信され、売上・在庫管理や顧

客動線管理の基礎データとして使用される。

(b)店舗のレイアウトに関する特許

① 販売促進支援システム

■出 願 日 :2004/4/23

■出願番号 : 特許出願2004-128304

■公 開 日 :2005/11/4

■公開番号 :特許公開2005-309951

■出願人権利者: 沖電気工業株式会社

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■発明の概要 :

【課題】

商品のレイアウトをどのように実行すれば良いか等、小売店側の処置に起因

する販売促進頄目の詳細なデータを有効に取得すること。

【解決手段】

スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の小売り店に於けるPOS

端末装置23を用いた販売促進支援システムに於いて、個人特定エージェント

20は、商品販売領域内の所定の領域における顧客(A、B)の特定動線と該

顧客の購買情報を取得し、解析エージェント30は、上記顧客(A、B)の特

定動線に基づいて該顧客(A、B)の購買情報を分析する。

② 動線情報を基にした施設管理装置

■出 願 日 :2007/5/21

■出願番号 : 特許出願2007-133602

■公 開 日 :2007/9/13

■公開番号 :特許公開2007-234058

■出願人権利者: 株式会社日立製作所

■発明の概要 :

【課題】

当初は適切な施設のレイアウトであったとしても、時間の経過とともに、次

第に不適切なレイアウトへと変化すると考えられる。しかし、従来技術では、

現状のレイアウトの、良し悪しの状態を自動的に把握できないため、適切なタ

イミングで施設のレイアウトを変更できないという問題があった。

【解決手段】

自動計測した移動物体の動線を使って算出した移動コストでレイアウトの良

し悪しを判定する。この目的を達成するために、監視対象中の移動物体を検出

して、その動線を計測する動線計測手段と、移動物体の動線情報から、移動物

体が移動に費やしたコスト、すなわち移動コストを算出する移動コスト算出手

段と、移動コスト算出手段が算出した移動コストが許容範囲内であるかどうか

判定する移動コスト評価手段を備える。

③ 売場統合監視システム

■出 願 日 :2002/9/25

■出願番号 : 特許出願2002-279858

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■公 開 日 :2004/4/15

■公開番号 :特許公開2004-118453

■出願人権利者: 東芝ライテック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

商品の内容、売場の位置、陳列の状態および売上げ等の商品に関する情報を

入力すると共に、売場等に対する来店客の移動等に関する動線情報を入力する

ことにより、売場改善のための適正かつ有効な情報を容易に得られる店舗経営

戦略システムを構築することができる売場統合監視システムを提供する。

【解決手段】

尐なくとも商品棚に位置情報を含む売場に関する情報を入力可能に構成され

た売場情報入力手段10と、売場に陳列される商品の情報を入力可能に構成さ

れた商品情報入力手段12と、商品棚の位置と陳列された商品との関連につい

ての情報を入力設定する商品陳列情報入力手段14と、来店客に購入された商

品の購入情報のデータを入力設定する買上商品入力手段16と、来店客の売場

における移動情報を入力設定する動線情報入力手段18と、前記各入力手段に

より入力された情報およびデータを記憶する記憶手段20と、前記各入力手段

により入力された情報およびデータ並びに前記記憶手段に記憶された記憶情報

およびデータを統合的に表示できる表示手段22とから構成する。

④ 動線調査装置

■出 願 日 :1997/8/26

■出願番号 : 特許出願平9-229569

■公 開 日 :1999/3/5

■公開番号 :特許公開平11-64505

■出願人権利者: 株式会社テック

■発明の概要 :

【課題】

発信器からの固有信号を混信なく受信し人の移動軌跡を確実に把握する。施

設内のレイアウト変更を容易にし、設備にかかる手間やコストを低減する。

【解決手段】

店内の商品陳列棚及び精算カウンタのサッカー台の所定位置に日時情報と個

体識別情報からなる固有信号を間欠的に発信する電池駆動形の発信器1をそれ

ぞれ配置する。客が携行する買物籠に受信器2を取付け、この受信器が各発信

器の1m以内に接近したとき該当する発信器からの固有信号を受信して受信情

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報記憶部25に項次記憶する。受信器のインターフェース部26をPOS端末

装置に接続することでPOS端末装置は受信器から固有信号を取込み、この固

有信号に基づいて客の移動軌跡を動線情報として算出して表示部に表示する。

⑤ 売場計画支援システム

■出 願 日 :2002/11/27

■出願番号 : 特許出願2002-343861

■公 開 日 :2004/6/24

■公開番号 :特許公開2004-178277

■出願人権利者: 東芝ライテック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

売場における商品の種々の売上げ変動要因を仮説設定すると共に、来店客の

購買行動としての動線データを蓄積し、これらの関係を検証および分析して売

上げ予測を行い、さらに来店客のレジ処理状況を算出して、その結果を基準値

と比較し、レジ稼働状況が最適となるように変更ないしレジ稼働の計画立案を

提示することによって、効率的な売場計画を立案することができる売場計画支

援システムを提供する。

【解決手段】

売場における来店客の動きを計測する動線計測手段12と、動線計測手段に

より計測された動線データおよび売上げデータを蓄積するデータ蓄積手段14

と、計測された動線データないし売上げデータに基づいてレジの処理状況を表

すパラメータを計算するレジ処理状況計算手段24と、レジ処理状況計算手段

により得られる計算結果と予め設定された基準値とを比較するレジ処理状況比

較演算手段25と、レジ処理状況比較演算手段により比較した結果に応じてレ

ジの稼働状況の変更を促すレジ稼働状況提示手段26とから構成する。

⑥ 計測システム

■出 願 日 :2002/2/26

■出願番号 : 特許出願2002-50156

■公 開 日 :2003/9/12

■公開番号 :特許公開2003-256843

■出願人権利者: 沖電気工業株式会社

■発明の概要 :

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【課題】

配設されたカメラによって所定範囲内のすべての人物を自動的に追尾して撮

影された映像を画像処理し、従来測定することが困難であった人物の空間的な

動向を測定して分析するとともに、容易に把握することができるような形態で

出力することによって、店舗レイアウトの変更等に有用なマーケティング情報

として活用することができるようにする。

【解決手段】

所定範囲内を撮影するカメラを備える撮像手段と、画像処理装置及び解析デ

ータ蓄積装置を備える解析手段と、解析手段が出力する解析データを所望の形

態に加工して表示する表示装置を備える表示手段とを有し、画像処理装置は、

映像に基づいて店舗内の人物を追跡する人物追跡部、追跡の結果を前記人物の

動線データとして記憶する動線データ記憶部、及び、動線データを解析して所

望の形態に加工するデータ処理部を備える。

(c)情報配信に関する特許

① 動線情報を利用した広告表示システム

■出 願 日 :2008/3/28

■出願番号 : 特許出願2008-86555

■公 開 日 :2009/10/15

■公開番号 :特許公開2009-238148

■出願人権利者: 芝 哲也 外1名

■発明の概要 :

【課題】

動線情報を利用した効率的な広告表示を行うシステムを提供する。

【解決手段】

複数の提携店舗(3)に設置された提携店舗端末(3a)、広告表示店舗(2)に設置

された広告表示装置(2b)及び複数の会員(6)が携帯する会員端末(4)の各々と、

管理サーバ(1)とを有する広告表示システムであって、管理サーバが、会員及び

提携店舗の登録手段と、広告サイト画面を広告表示装置へ表示させる手段と、

提携店舗にて提携店舗IDを読み取った会員端末から受信した場合に、会員I

Dと受信した提携店舗IDと受信時とを対応付けて個別動線情報として逐次記

録する手段と、各地区に滞在する会員の人数を所定時間帯ごとに集計し、動線

集計情報として各提携店舗端末へ送信する手段と、提携店舗端末からの広告表

示更新情報に基づいて広告サイト画面を更新し広告表示装置へ表示させる手段

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とを備える。

② 広告仲介サーバ、動線情報仲介サーバ及び電子マネー等付与サーバ

■出 願 日 :2007/6/5

■出願番号 : 特許出願2007-148739

■公 開 日 :2008/12/18

■公開番号 :特許公開2008-304964

■出願人権利者: 株式会社日立製作所

■発明の概要 :

【課題】

携帯端末のユーザが、ネットワークサービスを利用している位置または時間

に基づいて有効な広告を提供する為の、効率的な広告の申請または提供方法を

提供する。

【解決手段】

広告仲介サーバにおいて、位置・時間情報を指定して、当該情報に対して対

価の額を投入し、当該対価の額に応じて、効率の良い広告を提供し、ユーザが

コンテンツのアクセスした場所・時間に応じて、広告の内容を変更させる。

③ 広告配信システム、広告効果測定システム及び広告配信方法

■出 願 日 :2006/4/21

■出願番号 : 特許出願2006-118436

■公 開 日 :2007/11/8

■公開番号 :特許公開2007-293451

■出願人権利者: 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ

■発明の概要 :

【課題】

広告の効果を測定し、適切な移動端末へ広告を配信する広告配信システム、

広告効果測定システム及び広告配信方法を提供する。

【解決手段】

広告配信システムは、移動端末の時系列動線情報を取得する動線情報取得部

101と、時系列動線情報を保存する動線情報データベース102と、広告を

一意に識別する広告IDに対応付けて、当該広告を配信するエリアと、当該エ

リアに到達するまでの時系列動線情報とを保存する広告情報データベース10

4と、動線情報データベースを参照することにより、広告情報データベースに

Page 57: 平成22年3月 財団法人 ニューメディア開発協会...3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ 第4章 動線解析技術に求められる要件の整理

49

保存されたエリアに存在し、当該エリアに到達するまでの時系列動線情報を有

する移動端末を決定する広告配信エリア決定部105と広告配信エリア決定部

によって決定された移動端末へ、広告情報データベースに保存されたエリア及

びエリアに到達するまでの時系列動線情報に対応付けられた広告を配信する広

告配信部106とを備える。

④ 旅行者動線情報収集システム、旅行者動線情報管理サーバ装置および旅行者

動線情報収集方法

■出 願 日 :2005/3/17

■出願番号 : 特許出願2005-77923

■公 開 日 :2006/9/28

■公開番号 :特許公開2006-262189

■出願人権利者: 株式会社日立製作所

■発明の概要 :

【課題】

旅行サービス業者の旅行商品開発に有用な旅行者の動線情報を取得すること

が可能な旅行者動線情報収集システムおよび旅行者動線情報管理サーバ装置を

提供する。

【解決手段】

GPSを搭載した携帯電話機2と、その携帯電話機2に通信ネットワーク5

を介して接続され、観光施設の位置情報をあらかじめ蓄積した観光施設情報D

B614を備えた旅行者動線情報管理サーバ装置6とを含むように旅行者動線

情報収集システムを構成した。そして、旅行者動線情報管理サーバ装置6にお

いて、携帯電話機2が送信する旅行者の位置・時刻情報を受信し、その情報を

旅行者位置情報DB613に記憶し、さらに、旅行者位置情報DB613およ

び観光施設情報DB614により旅行者が立ち寄った観光施設を判定すること

によって、旅行者動線情報および旅行者動線マッピング情報621を生成し、

さらに、旅行者動線情報を処理して旅行者動線統計情報622を生成した。

⑤ 人物動線追跡システム及び広告表示制御システム

■出 願 日 :2005/2/4

■出願番号 : 特許出願2005-28371

■公 開 日 :2006/8/17

■公開番号 :特許公開2006-215842

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50

■出願人権利者: 日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社

■発明の概要 :

【課題】

金融営業店の店舗内存在する顧客の属性を自動的に取得し、店舗内に設置さ

れている広告ディスプレイに顧客が興味を持ち易い広告を表示する。

【解決手段】

金融営業店の店舗内における顧客の動線を追跡すると同時に窓口に来た時刻

と照らし合わせることで顧客IDとそれに対応する顧客属性を取得して店舗内

で表示する広告表示内容を制御する。

⑥ 地域情報提供方法、情報端末および地域情報配信システム

■出 願 日 :2004/11/17

■出願番号 : 特許出願2004-362006

■公 開 日 :2006/6/8

■公開番号 :特許公開2006-145511

■出願人権利者: 株式会社スーパーコンテンツ流通 外1名

■発明の概要 :

【課題】

車で移動する情報端末の利用者に対し、利用者の生活動線に適合し、且つ利

用者の嗜好に対応した地域情報や、利用者の家庭内の情報をすぐに閲覧できる

ような情報提供方法および情報配信システムを提供すること。

【解決手段】

情報利用者の情報端末に所定の経度、緯度のメッシュ間の移動情報を保持し、

当該移動情報を所定の期間積算して情報利用者の生活動線を算出し、生活動線

と利用者の嗜好情報とに適合する地域情報をポータル画面として利用者に提供

するか、または、情報利用者の情報端末に電子化道路地図上の2点間を結ぶリ

ンクの利用回数を保持し、当該利用回数を所定の期間積算して情報利用者の生

活動線を算出し、利用者の生活動線と嗜好情報とに適合する地域情報をポータ

ル画面として利用者に提供する。

(d)監視システムに関する特許

① 動線認識システム

■出 願 日 :2008/2/5

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51

■出願番号 : 特許出願2008-25519

■公 開 日 :2009/8/20

■公開番号 :特許公開2009-187217

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

監視領域が広い対象に対して有効な動線認識システムを提供する。

【解決手段】

監視領域内における移動体の位置検出を無線タグ方式で行う。そして、この

無線タグ方式により検出された移動体の位置を示す位置情報を、当該位置に移

動体が居た時刻を示す時刻情報とともに監視領域移動体情報として無線タグ動

線データベース27に記録する。一方、監視領域内の一部である特定領域内に

おける移動体の位置を、無線タグ方式よりも位置検出の分解能が高いカメラ画

像方式で行う。そして、このカメラ画像方式により検出された移動体の位置を

示す位置情報を、当該位置に移動体が居た時刻を示す時刻情報とともに特定領

域移動体情報としてカメラ動線データベース28に記録する。

② 人物行動監視装置及び人物行動監視プログラム

■出 願 日 :2008/5/21

■出願番号 : 特許出願2008-133398

■公 開 日 :2009/12/3

■公開番号 :特許公開2009-284167

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

不正行為等の特定の行為が行われたと推定される画像データに速やかにアク

セスできるようにする。

【解決手段】

監視領域内を移動する人物の行動を追跡する動線データを記憶する動線デー

タベース36と、監視領域内を移動する人物を撮影可能なカメラで撮影された

画像データを記憶する画像データベース34とを備える。人物行動監視装置1

は、動線データベース36に記憶された人物の動線データのなかから、特定の

人物行動を表わす条件データに該当する人物行動が行われた区間を検索する。

検出された区間の当該人物を撮影したカメラ画像データを抽出する。抽出され

たカメラ画像データを再生する。

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52

③ 人物動線追跡システム

■出 願 日 :2008/4/24

■出願番号 : 特許出願2008-114336

■公 開 日 :2009/11/12

■公開番号 :特許公開2009-265922

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

動線の人物を精度よく同定できるようにする。

【解決手段】

動線作成部4は、監視領域内を移動する人物の軌跡である動線データを生成

する。生成された動線データは、動線データベース6で記憶される。通常レン

ズカメラCA7は、監視領域内の所定の位置にて人物を撮影する。人物抽出部

5は、カメラCA7で撮影された映像から人物の顔を含む画像データを抽出す

る。抽出された画像データは、人物画像データベース8で記憶される。人物-

動線紐付け部9は、動線データをその動線データに該当する人物の顔が含まれ

る画像データと紐付ける。紐付けられた動線データと画像データとの対応関係

を示すデータは、紐付けリストデータベース10に記憶される。

④ 動線認識システム

■出 願 日 :2008/2/5

■出願番号 : 特許出願2008-25519

■公 開 日 :2009/8/20

■公開番号 :特許公開2009-187217

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

監視領域が広い対象に対して有効な動線認識システムを提供する。

【解決手段】

監視領域内における移動体の位置検出を無線タグ方式で行う。そして、この

無線タグ方式により検出された移動体の位置を示す位置情報を、当該位置に移

動体が居た時刻を示す時刻情報とともに監視領域移動体情報として無線タグ動

線データベース27に記録する。一方、監視領域内の一部である特定領域内に

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53

おける移動体の位置を、無線タグ方式よりも位置検出の分解能が高いカメラ画

像方式で行う。そして、このカメラ画像方式により検出された移動体の位置を

示す位置情報を、当該位置に移動体が居た時刻を示す時刻情報とともに特定領

域移動体情報としてカメラ動線データベース28に記録する。

(e)その他の目的に関する特許

① 自動点灯制御式照明システム

■出 願 日 :2008/6/25

■出願番号 : 特許出願2008-166041

■公 開 日 :2010/1/14

■公開番号 :特許公開2010-9847

■出願人権利者: パナソニック電工株式会社

■発明の概要 :

【課題】

画像センサを用いて人間を検知し、照明器具群の制御を行うに際し、人間以

外の移動物体などの誤検知を低減し、信頼性の高い点灯制御を行うことの可能

な照明制御システムを提供する。

【解決手段】

本発明の照明システムは、画像を検出する画像センサ100と、前記画像セ

ンサの検知結果に基づいて人の位置データを算出する演算部200と、前記演

算部の算出結果に基づいて、光源を点灯制御する制御部300と、を有する自

動点灯制御式照明システムであって、前記画像センサの検知結果を標準データ

として記憶する第1の記憶部400と、標準動線データとして、人であると判

断された輝度の塊の軌跡を、予め記憶する第2の記憶部500とを有し、前記

画像センサの検知結果と前記標準データとの比較から得られる動線データが、

前記第2の記憶部に記憶された標準動線データと同じであると演算部が判断し

た場合には、前記制御部は、前記演算部の算出結果に基づいて前記光源を点灯

制御することを特徴とする。

② 看護支援システム

■出 願 日 :2004/9/29

■出願番号 : 特許出願2004-284066

■公 開 日 :2006/4/13

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■公開番号 :特許公開2006-99371

■出願人権利者: 株式会社ケアコム

■発明の概要 :

【課題】

病院内における看護師等の移動軌跡ないし動線を、通常の看護支援システム

の構成で、位置検知用の特別の機器を使わずに把握できること。

【解決手段】

看護師等が携帯して使用する看護師用情報端末およびまたは患者のベッドサ

イドに設置される患者用情報端末に、看護、観察業務を実施したその場所で、

患者別の実施記録、看護師所見、測定結果等とともに、記録日時、看護実施者

名、看護実施場所を入力することにより、看護動線データベースを形成する。

③ 従業員管理システムおよび従業員管理プログラム

■出 願 日 :2003/5/29

■出願番号 : 特許出願2003-152065

■公 開 日 :2004/12/16

■公開番号 :特許公開2004-355317

■出願人権利者: 三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社

■発明の概要 :

【課題】

従業員の勤務状態の管理および評価を行い、売り上げの増加および客席の回

転率の向上を図るための従業員管理システムおよび従業員管理プログラムを得

ることを目的とする。

【解決手段】

従業員携帯用の無線ICタグ111と、無線ICタグ111が記憶している

従業員IDを読み取るための1以上のIDセンサー101、102、105と、

各IDセンサーにより読み取られた従業員IDのデータを、IDセンサーごと

に、読み取りを行った時刻のデータとともに記憶する客席状況テーブル106

aと、客席状況テーブル106aに記憶されている上記データに基づいて、客

席状態の監視を行い、指示データを生成する監視手段106fとを備えている。

また、上記データを蓄積保存する従業員動線履歴記憶手段106dと、それに

基づいて解析を行う履歴解析部106eとが設けられている。

④ 動線データ収集装置

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■出 願 日 :1994/5/18

■出願番号 : 特許出願平5-147812

■公 開 日 :1995/1/24

■公開番号 :特許公開平7-23452

■出願人権利者: 株式会社空間戦略研究所

■発明の概要 :

【目的】

複数の受信機が、発信機から発信された位置データを同時に受信する。

【構成】

発信領域が重ならないように複数設置された発信機12は、設置された位置

を表す位置データを周期的に発信する。移動体に取り付けられた受信機14が、

前記発信手段の発信領域に入ったとき、その位置データを受信し、かつ、その

位置データとその位置データを受信した時刻に対応する受信時刻データとを記

憶する。その後、受信機14をデータ収集装置16に接続する。データ収集装

置16は、受信機14に記憶された位置データと受信時刻データとを収集する。

データ分析装置18は、データ収集装置16により収集された位置データと受

信時刻データとを分析して動線を求める。

(2)動線解析の手法に関する特許

(a)動線管理システムおよび動線監視装置

■出 願 日 :2007/5/31

■出願番号 : 特許出願2007-144854

■公 開 日 :2008/12/11

■公開番号 :特許公開2008-299584

■出願人権利者: 株式会社日立製作所

■発明の概要 :

【課題】

移動体の動線の変化を検出し、動線変化の原因を開示する動線管理システム

を提供する。

【解決手段】

移動体に装着されたICタグと、前記ICタグから情報を受信するタグリー

ダ30~39と、前記タグリーダから受信した情報を蓄積し処理する動線処理

装置100と、画像を撮影するカメラ20、21とが通信可能なように接続さ

れ、タグリーダがICタグ識別情報を受信して(S501)、ICタグ識別情報

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と位置識別情報を動線処理装置100に送信し(S502)する。動線処理装

置100は、位置識別情報に基づいて、動線を求め、予め記憶された動きと異

なるか同じかを判定し(S504)、予め記憶された動きと異なると判定される

と、カメラ20、21が撮影した画像情報において、変化の有無を抽出し(S

506)、変化有のときに、管理者に通知する(S507)。

(b)非日常行動検知システム

■出 願 日 :2006/3/20

■出願番号 : 特許出願2006-76471

■公 開 日 :2007/9/27

■公開番号 :特許公開2007-249922

■出願人権利者: 三洋電機株式会社

■発明の概要 :

【課題】

実環境での行動動線を適切な行動にクラスタリングすることで、実環境での行

動動線から日常的な行動を自動的に定義する。

【解決手段】

人物の時系列動線情報から生成された複数の行動データを行動毎にクラスタ

リングする第1クラスタリング部1201と、第1クラスタリング部1201

がクラスタリングした複数の行動データを行動毎にモデル化した行動モデルを

生成する第1行動モデル生成部1202と、第1行動モデルを用いて複数の行

動データを認識し、認識結果及び尤度を得る第1認識処理部1203と、第1

認識処理部1203が求めた尤度が閾値以上である行動データのみを複数の行

動データから選別する第1行動データ選別部1204と、第1行動データ選別

部1204が選別した行動データを、第1認識処理部1203の認識結果の示

す行動にクラスタリングする第2クラスタリング部1205とを備える。

(c)顧客動向収集システム、顧客動向収集方法および顧客動向収集プログラム

■出 願 日 :2005/9/22

■出願番号 : 特許出願2005-276551

■公 開 日 :2007/4/5

■公開番号 :特許公開2007-87208

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

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【課題】

チェックアウトレーンには顧客が密集するのでカメラ画像で顧客一人一人を

個別に認識して動線計測を継続することは困難である。

【解決手段】

顧客動向収集システム10は、顧客3の移動経路を示す動線情報を生成する

動線計測手段11、動線計測手段11が生成した各々の動線情報に固有の動線

インデックスを発行する動線インデックス発行手段12、動線計測手段11が

生成した各々の動線情報を動線インデックス毎に記憶する動線情報記憶手段1

3、精算時に顧客3の購買商品の情報を管理する販売時点情報管理手段14、

販売時点情報管理手段14が管理する購買商品の情報を顧客毎に記憶する購買

情報記憶手段15、同一顧客3の動線情報と購買情報とを関連付ける顧客動向

連結手段16及び顧客動向連結手段16が関連付けた情報を記憶する連結情報

記憶手段17を具備する。

(3)動線解析のための動線連結に関する特許

(a)動線編集装置及び動線編集プログラム

■出 願 日 :2007/10/31

■出願番号 : 特許出願2007-283727

■公 開 日 :2009/5/21

■公開番号 :特許公開2009-110408

■出願人権利者: 東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

同一移動体の追跡に失敗しているため削除せざるを得なかった動線データを

活用して、分断された移動体の軌跡を完全なものに容易に復元できるようにす

る。

【解決手段】

編集対象とする動線が選択されると、この選択された動線を第1の表示部で

表示する。また、この動線の軌跡と同期させて、この動線に該当する移動体が

検出されたカメラ画像を第2の表示部に表示する。第1の表示部に表示されて

いる動線上の分割点指示入力を受付け、分割点指示入力を受付けると、編集対

象となる動線を分割点で分割する。そして、分割された各動線のデータを動線

データベースに登録する。

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(b)動線編集装置、方法及びプログラム

■出 願 日 :2007/6/28

■出願番号 :特許出願2007-170706

■公 開 日 :2009/1/15

■公開番号 :特許公開2009-9395

■出願人権利者:東芝テック株式会社

■発明の概要 :

【課題】

簡単な作業により複数の動線を1本の動線に連結できるようにする。

【解決手段】

動線データベースに記憶された動線データの中から、第1の動線データが選

択入力されると、その動線データの終点位置を検出し、動線データ毎に、その

動線データの始点位置から第1の動線データの終点位置までの距離を算出する。

その結果、算出された距離が予め設定された閾値以内である動線データを第1

の動線データと連結される第2の動線データの候補としてリストアップし、リ

ストアップされた動線データの中から第2の動線データの選択入力を受付ける。

かくして、第1の動線データと第2の動線データとが選択されると、第1の動

線データの始点から第2の動線データの終点までの軌跡を示す動線データを生

成するようにしたものである。

(4)動線解析のためのシミュレーションに関する特許

(a)動線処理装置、方法およびプログラム

■出 願 日 :2005/5/30

■出願番号 :特許出願2005-157937

■公 開 日 :2006/12/7

■公開番号 :特許公開2006-331340

■出願人権利者:株式会社東芝

■発明の概要 :

【課題】

実測データから得られる主動線を保持した動線データをシミュレーション

結果として出力する。

【解決手段】

実測動線集合及びシミュレーション動線集合から第1および第2の主動線

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を抽出し、シミュレーション動線の本数から主動線含有率に対応する本数を減

算した値より多い本数のシミュレーション動線から、各第2の主動線の要素の

うち各第1の主動線に含まれない要素を除去し、各第1の主動線を含むシミュ

レーション動線をそれぞれ同一のグループに分類し、各グループの各々内のシ

ミュレーション動線から対応する第1の主動線以外の第1の主動線を削除し、

削除後のシミュレーション動線集合からグループに不足している本数の動線を

選択して対応する第1の主動線を挿入し、挿入後のシミュレーション動線集合

から第3の主動線を抽出し、第3の主動線の集合に第1の主動線の集合以外の

主動線が含まれる場合は、当該主動線を含むシミュレーション動線から当該主

動線を削除する。

(b)食品製造工程分析装置

■出 願 日 :1998/6/15

■出願番号 :特許出願平10-166981

■公 開 日 :2000/1/7

■公開番号 :特許公開2000-66

■出願人権利者:株式会社日立製作所

■発明の概要 :

【課題】

HACCPに基づく分析において、設備レイアウト、動線等の製造施設固有の情報

を入力として、製造工程において起こりうる危害を自動的に判定する。

【解決手段】

入力した食品製造工程の工程フローデータと、設備レイアウトデータと、各

工程と設備の対応データとは、工程設備編集装置103によって工程設備情報

格納装置108に格納され、また入力した対象の製造工程において発生しうる

危害と、その設備レイアウト上での影響範囲のデータは危害編集装置104に

よって危害情報格納装置109に格納され、危害分析装置105では、危害情

報格納装置109に格納された各危害について、設備レイアウト上でその影響

範囲にある設備を判定し、次にこの設備のうち製造工程で用いられるものを判

定して、さらに設備の用いられる工程名を判定し、工程名と該当工程で発生す

る可能性のある危害を出力する。

(5)Web動線解析について

(a)Web動線分析システム

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■出 願 日 :2003/3/17

■出願番号 : 特許出願2003-71452

■公 開 日 :2004/10/7

■公開番号 :特許公開2004-280501

■出願人権利者: 株式会社野村総合研究所

■発明の概要 :

【課題】

Webサイト内におけるユーザの動きに基づいてWebサイトを分析するW

eb動線分析システムを提供する。

【解決手段】

Web動線分析システム2は、Webサーバ6からネットワーク4を介して

送信されたアクセス日時、ユーザ識別情報及びアクセス先WebページのUR

Lを示す情報を含むアクセスログをデータ記憶部14に記憶する。次に、デー

タ記憶部14に記憶されているアクセスログに基づいて、Webサイト内にお

いてユーザがどのWebページにどの項番でアクセスし、各Webページにど

れだけの時間滞留したのかを示す動線データが作成される。そして、作成され

た動線データに基づいて、Webサイト内におけるユーザの一般的なアクセス

パターンを示す主動線が作成され、作成された主動線と共にWebサイトを構

成するWebページが分析結果として表示部16に表示される。

(b)Webサイトアクセス状況の集計方法、そのシステム、およびプログラム

■出 願 日 :2003/12/24

■出願番号 :特許出願2003-427494

■公 開 日 :2005/7/14

■公開番号 :特許公開2005-189942

■出願人権利者:日本電気株式会社

■発明の概要 :

【課題】

Webサイトへの個人毎の一連のアクセス状況を短時間で集計して明らかに

し、Webサイトの問題点の発見および改善を素早く実現する。

【解決手段】

複数のWebページから構成されるWebサイトのアクセス状況を集計して

表示する方法で、WebサイトでアクセスされるWebページ及びそのアクセ

ス日時を含むアクセスログを記録するときに、そのアクセス者毎に特定の識別

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61

番号を発行しその識別番号をアクセスログに加えて1レコード毎に記録し(S

t1~4)、アクセスログを所定のタイミングで収集し(St5)、該アクセス

ログから、同一の識別番号をもつレコードを抽出し、該レコードに基づいて、

Webサイト内の複数のWebページに対するアクセス者の一連のページアク

セスの遷移状況を示す動線データを識別番号毎に作成し(St6~8)、該動線

データを集計対象として、Webサイトのアクセス状況を表示可能に集計する

(St9~11)。

2.3 動線解析技術調査のまとめ

動線解析結果の利用先としては、論文・特許共に店舗内の顧客の行動に関す

るものが最も多い。一方で、モノの動線解析に関する報告は尐なく、食の安全

等、トレーサビリティが重要視されている昨今、更なる検討が必要であると思

われる。また、実態行動の動線分析とは異なるがWeb等の仮想空間における

動線の解析もニーズがあることが分かる。

解析の手法に関しては途中で切断された動線についても効率的に利用する手

段に関する論文や特許が見受けられ、特徴点を抽出する手法と合わせて実際に

動線解析を行う際に、このような研究成果が重要になってくると推測される。

また、解析のみに留まらず最終的に解析結果をシミュレーションによって将来

予測等に反映させる技術についても今後さらなる研究が必要であることが分か

る。

以上の技術調査より、動線解析の利用に際しては①動線の収集、②分断され

た動線の接続、③解析・特徴点の抽出、④シミュレーションによる将来予測と

言う4点を合わせて検討していくことが重要であることが分る。

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第3章 動線解析技術を利用したサービス調査

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3.動線解析技術を利用したサービス調査

屋外では GPS をはじめとした様々な衛星測位環境が整いつつあり、屋内でも

無線 LAN 測位や、屋内 GPS 測位など位置を特定するための技術が研究・開発・

製品化されつつある。また、携帯電話に GPS 機能や無線 LAN 機能が搭載されつ

つあることで、人の位置に応じてナビゲーションをしたり、位置をキーに情報

を検索したり、位置に応じた情報を提供したりするサービスも増加しつつある。

更には RFIDの小型化、低コスト化にともない、物の人だけでなく、物の位置を

知る環境も整いつつある。

位置情報サービスを提供することによって蓄積される人や物の位置情報は、

事業者にとって新たな価値を持つ情報を生み出す情報資源であり、ただの情報

を価値ある情報に昇華させる技術が動線解析技術であるとも言える。現時点で

は、高度な動線解析技術は、研究・開発中のものや実証実験中のものが多いが、

一部では、動線解析技術を利用したシステム、サービスの提供も始まっている。

本章では、現時点で動線解析技術に関係したどのようなシステム、及びサー

ビスが提供されているのかについてまとめる。

3.1 レコメンデーション分野

(1)iコンシェル

■事業者

株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ

■実施期間

サービス提供中

■実施内容

【サービス概要】

「i コンシェル」とは、ケータイがまるで“執事”や“コンシェルジュ”の

ように、利用者一人ひとりの生活をサポートするサービスである。利用者の

様々なデータ(住まいのエリア情報、スケジュール、トルカ、電話帳など)

を預かり、これにより自分の生活エリアや趣味嗜好に合わせた情報を適切な

タイミング、方法で届けたり、携帯電話に保存されているスケジュールやト

ルカを自動で最新の情報に更新したり、電話帳にお店の営業時間などの役立

つ情報が自動で追加されるサービスである。また、i コンシェルの様々な情報

は、待受画面上でマチキャラ(待受画面上に常駐するキャラクター)により

通知される(図18参照)。

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【特長】

○利用者のライフスタイルや住まいのエリアに合わせて毎日の生活に役立つ

情報が通知される。普段利用している鉄道路線の運行情報や道路の渋滞情

報、住まいのエリアの気象情報、台風情報、地震情報、イベント情報、暮

らしのガイドが提供される。また、別途、IP(情報サービス提供者)提供

コンテンツに登録にしていれば、利用者の好みに合わせた豊富な情報が提

供される。

○利用者の好みに合わせて、様々なスケジュールデータを i モードサイトか

らスケジューラにまとめてダウンロードできる。また、住まいのエリアの

一週間分の天気予報をスケジューラに自動で登録、更新するので、いつで

も天気予報を確認できる。さらに、一度ダウンロードしたスケジュールは

自動で最新の情報に更新される。IP(情報サービス提供者)提供コンテン

ツとして、タレントの活動スケジュールや、スポーツチームの試合日程な

どを提供される。

○お店で取得したり、IP(情報サービス提供者)提供サイトなどからダウン

ロードしたトルカ(クーポンなど)が自動で最新の情報に更新される。ト

ルカが更新されたことは待受画面上で確認でき、最新のクーポンをいつで

も利用できる。

○電話帳、トルカ、スケジュールなどの大切なデータは、“万が一”に備えて

センターでもバックアップされている。また、電話帳にレストランなどの

お店の電話番号が登録されている場合、ドコモで保持するデータベースに

登録されているお店の住所や営業時間などの情報が自動で追加、更新され

る。

○マチキャラには、プリインストールされている「ひつじのしつじくん TM」

や、IP(情報サービス提供者)が提供するキャラクターを設定できる。ま

た、「i アバター」サイトでお客様が作ったオリジナルキャラクターをマチ

キャラに設定する事も可能である。

■参照 URL

http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/081105_01.html#p02

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図18:iコンシェルのサービスイメージ

(2)行動履歴に基づくレコメンデーション

■事業者

株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ

日本電気株式会社

■実施期間

情報大航海プロジェクトにて開発・実証中

■実施内容

【技術の概要】

○多数の人々の行動履歴(位置情報やコンテンツの閲覧など) を解析し、個々

人に合った情報を推論・推薦するレコメンデーションエンジン

・大規模コンテンツの特徴語分類および利用者の行動履歴に基づき、適切な

コンテンツを推薦

・多数の人々の行動と閲覧の履歴を重ね合わせてパターン化し、利用者の特

徴を分析

・利用者個々人の情報受容度の高い時間帯を推測

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(図19参照)

【技術の特徴】

○大規模コンテンツの特徴語分類および利用者の行動履歴に基づき、適切な

コンテンツを推薦

・コンテンツベースフィルタリングにより、コンテンツと特徴語の関連付け

を管理

・行動履歴からエリア、時間帯に対応するジャンルと特徴語を取得

・各ジャンルから特徴語に一致するコンテンツを選択

○多数の人々の行動と閲覧の履歴を重ね合わせてパターン化し、利用者の特

徴を分析

・行動履歴(移動、閲覧履歴)に基づく重み付き関係ネットワークの構成と

推論

・コンテンツ(Web ページ、ブログ)閲覧履歴(利用者、場所、時刻、行動

種別、URL)の収集

・利用者とコンテンツの特徴語との対応を、時刻・場所別に集計・記録

・利用者の地域特性を滞在頻度から抽出し、利用者をグループ(地域あるい

は地域の組合せ)に紐付け

○利用者個々人の情報受容度の高い時間帯を推測

・位置情報の定期的な取得と携帯開閉・コンテンツ閲覧回数等により、受容

時間帯を推論

・初期値は総務省社会生活基本調査、職業、曜日などを元に作成

■参照 URL

http://www.igvpj.jp/contents/pdf/01-09.pdf

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図19:行動履歴に基づくレコメンデーションイメージ

(3)行動履歴に応じたパーソナライズを実現する地理情報システム

■実施機関

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

■実施期間

2003年 6月

小型 GPSを携帯(GarmineTrexLegend)

■実施内容

【概要】

例:商店街の回遊支援システム(街頭情報端末でのユーザに適した情報提供)

・買い物を振り返る

ユーザの行動履歴を様々な角度で表現

‐買い物リスト、回った店、一定時間以上滞在した店

次に行くべき店を案内

‐ユーザの買い物傾向を把握

・行動履歴の解析

「行動」の取得(センサから得た生の情報の解析)

‐位置情報→位置に対応付けられた行動目的

‐機器使用状況→機器利用目的

「行動」の解析(これまでの行動の詳細の分析)

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→交通手段

→買い物の詳細

行動モデルの構築や未来予想

→行動目的、行動パターン

→興味・嗜好

・mPATHシステム(行動履歴解析のための GUIアプリケーション)

部品化された解析手法

‐部品同士の組み合わせによる履歴解析の実現

‐解析手法の多様化に柔軟に対応

‐多様な位置表現への対応

標準的な座標系、データ形式への変換

‐地図(環境)情報にも対応

‐行動履歴の多様化に対応

ビジュアルプログラミングによる解析

・データ入力機能

GPS軌跡

‐TRK形式で記録されたファイルからの読み込み

‐RS-232C経由の読み込み

写真

‐GPS軌跡と組み合わせ位置情報を取得

数値地図 2500

‐国土地理院が無償で発行している地図データの読み込み機能

Shapeファイル

‐標準的な GIS で利用されているデータ形式

‐Point of Interest

興味のある場所を点情報で保持

・行動履歴の解析

時刻フィルタ

‐開始、終了時間を設定した情報の選別

スピードフィルタ

‐速度が設定されているデータの場合の選別

軌跡正規化フィルタ

‐GPSの特性を考慮した軌跡データの正規化

‐データの断絶を補完

‐開始点、移動線、終点という構造に整理

対応付けフィルタ

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‐2つの情報を位置情報を元に対応付ける

‐点情報+地図情報→地名や建物名などをもつ点情報

カウントフィルタ

‐格子に区切り、各矩形ごとに要素の数を計算

・解析結果の出力

標準地図出力機能

‐2 次元の標準的な地図データとして表示を実現�複数の入力を受け付け、

重ねて表示可能

表出力機能

‐表形式による表示�重み付け地図出力機能�地域に関連付けられた数値

を地域の重みとして視覚化

(図20参照)

■参照 URL

http://www.ht.sfc.keio.ac.jp/~niya/thesis/ito_zenkoku2004_poster.pdf

図20:行動履歴画面

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(4)位置情報ライフログ(リアルワールドの行動プロファイリング技術)

■実施機関

NTTサイバーコミュニケーション総合研究所

■実施期間

不明

■実施内容

【概要】

リアルワールドにおける行動プロファイリング技術は、利用者の行動の一

歩先読みをした生活コンシェルジュやレコメンドなどのサービスを実現する

ための技術である。

GPS、加速度センサ、距離センサやバイタルセンサなど、携帯端末あるいは

人体に装着されたセンサ群から取得されるデータを用いて、利用者の活動情

報をライフログとして抽出し、データマイニングを行うことにより、利用者

の行動プロファイルを自動的に生成することができる。

移動情報の分析から得られた特徴的な行動パターンや同行判定結果から、

一人で電車に乗っているような手すき状態を検出し、最近の PCで検索した情

報などと連携した効果的なレコメンドを行うことができる。例えば、前日に

PC でポータブル音楽プレイヤーの情報を収集していた人に、該当するポータ

ブル音楽プレイヤーを安く販売している店がその人の移動先のエリアにある

といった情報をケータイなどを通じて提供する。こうしたレコメンドは、行

動パターンにより、いつもの通勤路(日常)なのか、出張時の移動(非日常)

なのかといったシチュエーションごとに変更させることもできる。さらに、

スケジューラとも連携させることにより、ユーザの行動に合わせたリマイン

ド(家を出る時間)を行うこともできる。(図21参照)

【特徴】

○センサデータからの利用者活動情報(ライフログ)の抽出

・測定誤差やデータのロストに強い、 GPSを用いた滞在地、移動手段の

抽出

・マイニングによる行動プロファイルの自動生成

○滞在地遷移のマイニングによる、利用者の特徴的行動パターンの抽出

・GPS誤差を考慮した高精度の同行判定

■参照 URL

http://www.ntt.co.jp/cclab/activity/category_4/b_product_02.html

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図21:位置情報ライフログイメージ

3.2 小売・商業施設分野

(1)顧客動線分析サービス(顧客動線分析ツール:Platz)

■事業者

スプリームシステムコンサルティング株式会社

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■実施期間

製品・サービス提供中

■実施内容

【製品・サービス概要】

長らく店舗のレイアウト改善および売り場改善のための顧客動線分析のニ

ーズは高かったものの、位置を精度高く計測するデバイスが存在しなかった

ために、顧客動線分析は人手によるものがほとんどであった。しかし、精度

の高い位置計測デバイス「UWB(Ultra Wide Band)」の登場と顧客動線データ

取得ソフトウェア「Platz」により、システムによる顧客動線分析が可能とな

り、顧客動線サンプルあたりの取得コストを大幅に下げることが可能となっ

た。

Platzは、ホームセンタ等において顧客が携帯する買い物籠やカートに位置

計測タグを取り付け、その位置データを利用した店内顧客動線分析ツールで

ある。

(図22参照)

【製品・サービスの特長】

顧客の店舗での動線や振る舞いを分析し、店舗や売り場レイアウトの改善、

広告効果の検証へと活用することができる。また、POSデータを取り込むこと

で、商品が置かれている売り場の素通り客数、立寄り客数、滞留客数だけで

なく、それぞれの状態における購入率等を分析することができる。

■参照 URL

http://www.supreme-system.com/product/platz/index.html

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図22:Platz 機能概要

(2)EKahau Tracker

■事業者

丸紅情報システムズ株式会社

■実施期間

製品提供中

■実施内容

【製品概要】

・リアルタイムで、人や機器の位置をモニター

・立入禁止区域などへ近寄る人に対して警戒を連絡

・業務の最適化のための動線データを取得

・様々なデバイス(人・機器)の位置・移動がビジュアルに確認可能

・モニターからの監視とともに、電子メールや SMS(Short Messaging Service)

を介してイベントの通知も可能

【製品特長】

○ビジネスの新しい付加価値

Ekahau Tracker は人や機器の位置検索・移動軌跡(動線)をモニタリング

するための Ekahau Positioning Engine 上で稼働する RTLS ( Real Time

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Location Service)アプリケーションである。 医療機関などでは、医療機

器がどこにあるのかを表示すると共に、機器の移動履歴(位置による稼働

履歴)データの取得や、機器が持込禁止領域に持ち込まれた時に担当者へ

連絡をするなどの利用のされ方をしている。また、Ekahau Tracker は人や

機器の移動履歴を表示、データを保存するので、将来のオペレーションを

定めるための分析やグラフを用いた統計データ報告書を作成することがで

きる。EkahauTracker による位置情報は人や物の適正な配置やローテンシ

ョンを促すなど、新たなるコストダウンや付加価値サービスの領域を作成

する。

○パワフルなユーザーインタフェース

Ekahau Tracker は位置情報に関する様々な領域の情報を凝縮してパワフル

なユーザーインタフェースから表示する。管理対象となるデバイス群は、

無制限の論理的なグループに区分することができる。この機能によりデバ

イスの種類や機器の種類、企業現場であれば職種や部署別などのグループ

区分をして、様々なデバイス群をわかりやすく表示させることが可能にな

る。 特定の管理対象グループだけの位置と動線履歴を表示させることも可

能である。

○外部システムへのアラーム通知

Ekahau Tracker は管理者のデスクトップユーザーのためだけにその機能を

提供するものではない。事前に定義されたイベント条件が満たされた時に

は、イベント管理機能は外部のアプリケーションやメール、SMS などへの

通知を行う。 例えば、人や機器が特定のエリアに入ったとき、特定のエリ

アから高価な機器が持ち出された時などはイベントとして電子メールや

SMS などによって適確な担当者に通知する。Tracker のユーザーインタフ

ェース上ではポップアップスクリーンやブザー音などのアテンションで通

知することも可能である。

○スケーラブル環境対応

Ekahau Tracker には Tracker Lite、Pro、Enterprise の 3 つのバージョン

がある。Lite バージョンは基本的な管理対象の位置検索と移動履歴の追跡

が可能である。Pro バージョンは Lite に加えて、レポート、警告、履歴再

生などの機能も持っている。Enterprise バージョンは Pro の機能に WEB を

利用して多くの人によって、管理対象の位置や動線の情報をシェアするこ

とを可能にしている。全てのバージョンは同じ形式でフォーマットされて

いるので、バージョン間でのデータのやりとりはもとより、Tracker のバ

ージョンアップを容易に行うことができる。

○Ekahau RTLS ソリューション

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Ekahau Tracker は病院、倉庫、製造業などの様々な分野で働く人々や機器

などの位置をリアルタイム追跡するためのソリューションである。Ekahau

の位置情報の環境は標準 802.11 無線 LAN の環境をインフラとするため、

費用対効果に優れ、管理対象となるデバイスも PC、PDA などの Windows 機

器の他にEkahau が提供している Wi-Fi 無線TAG も利用することができる。

Ekahau 位置情報製品群は 802.11 無線 LAN の環境下でデータ通信、音声通

信に加えて、位置検出という第 3 の領域を作成することになる。今後位置

情報システムは、ERP、SCM、CRM などの Enterprise レベルでのシステムと

共存して、多くの新しいサービス領域を形成し、新しいコストダウン手法

を作り出すことになっていくと思われる。

【導入例】

Ekahau位置情報システムは、先進的な小売業の ITシステムをいち早く採用

してしているドイツのメトロ・フューチャーストアにも採用され、顧客動線

管理のシステムや売り場ナビゲーションのシステムなどに採用されている

(図23参照)。

■参照 URL

https://www.marubeni-sys.com/network/ekahau/catalog/Ekahau_Tracker10

_Datasheet_J.pdf

https://www.marubeni-sys.com/network/ekahau/epe-casestudy3.html

図23:Ekahau位置情報システム導入事例

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(3)繊維分野電子タグ実証実験

■事業者

住金物産株式会社 ■実施期間

平成 20年 11 月~平成 21年 3月 31日 ■実施内容

【概要】

○実施規模:実施店舗数:2店舗

○使用電子タグ数量:個品用タグ 約 50,000枚、梱包用タグ 約 4,000枚

○実験の目的

・店舗当たりの投資金額の違い(東京ベイららぽーと店は大、ルミネエス

ト店は小)による取得情報・効果の違いの把握

・既存システムとの連携の検証

・取得情報を分析、可視化し、個品情報の活用を検証

・タグ紛失、破損時の再発行フローの確認

○実証実験概要

設置された RFID システムの内容は、以下のとおりである。

・入出荷や棚卸し時にて一括読み取りができるハンディターミナル

・商品を複数同時に読み取ることができる POSシステム

・ストックと店頭の在庫移動のデータを入力するインショップゲート

・試着室に持ち込んだ商品を認識することができるスマートフィッ

ティング

・手に取った商品の情報が取得できるスマートシェルフ

・各機器のデータを収集する店舗サーバ

これらシステムにより収集されたデータに基づき、以下が実施された。

・データ取得精度の検証

・現状の店舗運用から電子タグを運用した際の課題の抽出

・取得データを定量的に分析

・マーケティング分野への応用が可能かどうかの検証

なお、POSシステム、スマートフィッティング、インショップゲートに使用

した据え置き型リーダーライター「UF-2100-DS-R」は、Windows 環境におけ

る POSデバイス インタフェースおよびアプリケーションサービスインタフェ

ースの標準化を推進している、OPOS (Open Point of Service)技術協議会の

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「OPOS 仕様準拠製品(POS デバイス)」として国内で初めて認定されている。

(図24参照)

【特長】

バックヤードや店舗内における商品の動態管理の実用性が検証され、入荷

した商品の店頭での動きから顧客購買行動をデータ化し、詳細な情報を個品

単位で把握することが可能となっている。また、物流センター側においても、

「初回配送個数の最適化」や「店間移動の削減」、「販売機会ロスの撲滅」と

いった配送計画の高度化が実証されている。例えば、これまで出荷時間の制

約から作業負荷がかかるため実施することができなかった出荷検品プロセス

もすべて可能になるなど、業務の効率化を実現している。(図25参照)

■参照 URL

http://www.sumikinbussan.co.jp/trend/pdf/090203.pdf

http://www.toshibatec.co.jp/news/090421.html

図24:実証実験全体イメージ

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図25:全体フロー

(4)店舗内動線分析ソリューション

■事業者

IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社

■実施期間

不明

■実施内容

【概要】

アクティブ RFIDタグを使って収集した店舗内顧客動線データを POSなどの

売上データと突き合わせることにより、購入・非購入要因の分析を可能にす

るものである。さらに分析結果をマーケティングや販促、製品開発に活用す

ることで、売上の向上を実現する。

顧客の購買に至るプロセスを科学的に把握し、小売業・店舗の売上を向上

させるため、来店した顧客がどのくらいの比率でカートを利用するか、カー

ト利用者が特定売場にどのくらいの比率で寄りつくか、特定売り場寄りつき

顧客の滞留比率はどのくらいか、滞留者のうちどのくらいの比率が購買に至

るか、といった顧客のステージごとの割合を測定する。「カート利用」→「寄

りつき」→「滞留・吟味」の数を向上させる要因を分析し導き出すことで、

今後の売上向上のための施策を打ち出すことが可能になる。(図26参照)

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株式会社ユニバースでのスーパーマーケット店舗で実施された実証実験で

は、ユニバースの 1 つを実験店舗として、期間を 2 週間に限定して行われ、

事前にアクティブ RFID タグ 50 個をカートに取り付け、RFID タグからの情報

をキャッチするアクセス・ポイント(アンテナ)9 個を天井に設置、PC システ

ム側(ATLAS)には店舗マップが入力された。実験が開始されてからは、開店時

間(9 時から 23 時)内のカート動線データを毎日蓄積し、それを分析されてい

る。どのカート(RFID タグ)が店内のどの位置にあるかはリアルタイムで確認

することができ、また蓄積データを処理することで、ヒートマップ(滞留と移

動のイメージ図)や売り場ゾーンごとの滞留時間や訪問率の情報を出力する

ことが可能である。(図27参照)

【特長】

アクティブ RFID タグを利用した位置行動把握ソリューションである ATLAS

(Asset Tracking Location Awareness & Safety:IBM ビジネスパートナー

と IBM が開発した位置検出システム)を活用したサービスで、ATLAS により店

舗内の顧客動線データを収集し、POSなどの売上データと突き合わせることで、

購入・非購入要因を分析、推定します。もちろん分析結果、推定結果を、そ

の後のマーケティングや販促、製品開発に活用することが目的である。

従来型の調査では実現が難しかった、「通路、商品ゾーンなど店舗内を幅広

くカバーできる」という特長があり、「購買発生(POS)以前からの顧客の行動

を観測することができる」ことから、購買者だけでなく、非購買者の行動も

捉えることができるようになるのも大きな特徴であり、従来型の購買行動把

握サービスを IT 中心に変革し、迅速かつ効率的に提供することが可能なのが

このソリューションの最大の特長である。(図28参照)

■参照 URL

http://www-06.ibm.com/industries/jp/dist/topics/atlas_20071122/index

.shtml

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図26:購入に至るまでのプロセス

図27:解析結果イメージ

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図28:動線解析の全体イメージ

(5)群集行動の観測・分析技術

■事業者

株式会社東芝・研究開発センター・システム技術ラボラトリー

■実施期間

開発・実証中

■実施内容

【概要】

動線分析スキームとして、無線 ICタグなどを利用して動線データを収集す

るとともに、アンケートを利用してほかの情報を集め、これを様々な面から

分析する。基礎分析は、どのサービス資源に人気があるのかといった基本的

な情報を集計し、高度分析は、動線データを単に集計しただけでは求められ

ない性質を分析する。代表的なものに主動線抽出があり、主動線とは、たく

さんの動線をまとめて、空間における人の主要な流れを表す(図29参照)。

主動線抽出は、時間と空間を考慮した探索により、主要な行動パターン(主

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動線)を見つける。主動線抽出方法の特徴は、滞在時間を考慮することによ

り、得られた主動線を単なる“移動経路”でなく、“行動パターン”に近づけ

ることができる。また、空間内施設間の移動に関する制約を利用して探索範

囲を調整し、演算時間の短縮や観測ノイズに対するロバスト性の向上を可能

にしている。特徴 1 の各売場左端の矢印は売場への到着時間を、特徴 2 の各

売場間を結ぶ実線は移動可能な経路を表している(図30参照)。

具体的なサービス資源配分の問題は現在の小売店舗に見られる。他店との

激しい競争を勝ち抜くには、集客力を高める以外に、来店客が必要としてい

る商品を的確に入手でき、その店でほかの商品も買おうと思ってもらえる店

舗作りが重要となる。店舗では、商品やレジなどのサービス資源が空間的に

分散される。スタッフや来店客の動線を観測・分析することによって、店舗

の特徴や問題点が見えてくる。

主動線がわかれば,計画された導線とのずれや、案内が重点的に必要な個

所など、店舗レイアウトや商品配置のための重要なヒントが得られる。この

動線解析を用いた場合の家電量販店での分析結果例として、来店後右回りに

回遊する来店客は、奥まで進む傾向があることがわかる(図31参照)。

■参照 URL

http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2004/02/59_02pdf/rd01.pdf

http://www.ipsj.or.jp/10jigyo/fit/fit2004/fit2004program/html/event/

pdf/19koiso.pdf

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図29:動線分析スキーム

図30:主動線抽出の特徴

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図31:家電量販店での分析結果例

(6)ストリームデータマイニング

■事業者

学校法人関西大学 データマイニング応用研究センター(データマイニング・ラボ)

■実施期間

開発・実施中

■実施内容

【概要】

小売業における消費者の購買行動を理解する際には、従来から POS データ

などの購買データや、会員カードなどから特定した利用者 ID を POSデータに

加えた ID付き POS データなどが利用されてきた。一方で、近年では、情報通

信技術の急速な発達から、RFID と呼ばれる電波を利用した認証技術をカート

に取り付けることで、店舗内の顧客動線データとして、顧客の店舗内での巡

回行動をデータとして蓄積する試みが行われている。このデータを用いるこ

とで、ID 付き POS データでは把握することが困難であった、店舗内における

顧客の巡回行動を明らかにすることが可能となった。

これまで蓄積してきた ID付き POSデータに加えて、店舗内の顧客動線デー

タを取得する仕組みを構築し、それら 2 つのデータを組み合わせることで、

いつ、どの顧客が、どの商品をいくらで、どのような巡回経路によって購入

したかを特定することを可能とした。

しかしながら、これまでに顧客の動線データを利用したマイニングはほと

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んど行われていないため、分析手法の構築や、指標としての一般化など多く

の課題が残っている。

これまでに培ってきたさまざま分析手法やデータマイニング技術を適用し

たり、新たな手法を開発したりすることで、これまで分析することが困難で

あった店舗内の巡回行動を含めた顧客の購買行動を明らかにした。そして、

店舗内の購買行動に関する新たな知見の発見と、顧客動線データに対する分

析手法の確立をめざしている。

(図32参照)

■参照 URL

http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~yada/activities.html

http://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/56-2-199.pdf

図32:顧客動線データ例

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85

3.3 産業・流通分野

(1)人(ひと)動線調査管理システム Hps—1

■事業者

株式会社 DSS

■実施期間

提供中

■実施内容

【概要】

物流センターなどでの現場改善では、問題を見つけるための各種データが

必要だが、そのデータを集めること自体が企業にとっては大きな負担となり、

多大なコストと時間がかかる。特に中小企業では、データの取得で予算や時

間を使い切ってしまい、肝心の改善活動まで辿り着けないケースも多い。

パートやアルバイトが中心のピッキング業務では個人の能力に委ねられる

部分も多く、改善策が出る数ヶ月後には、現場スタッフがそっくり入れ替わ

っており、以前の問題が当てはまらなくなることもある。

データ取得の労力やコストを大幅に縮小できる同システムは、ピッカーの

腰に万歩計のような計測機器「b—moni(ビーモニ)」を付けて行動デー

タを取得し、倉庫やセンターのレイアウト図上にピッカーの行動軌跡を矢印

で表示する。重さ60gの「b—moni」には、ジャイロセンサーや気圧セ

ンサーなど、さまざまな計測センサーが内蔵されており、ピッカーがどうい

う行動をとったかが詳細に分かり、誤差も1m以内である。

ピッキングから次のピッキングまでの時間や歩幅、速度に加え、累積の歩

行距離や時間も表示する。さらに、低い棚からピッキングするために腰をか

がめた回数や、『運動強度』と呼ばれるデータも計測可能で、どれくらいの負

荷がピッカーにかかっているかが算出できる。

同システムは複数人の行動データを表示することも可能であり、センター

内で作業を行っているピッカー35人が機器を身に付ければ、全員の動線を

1枚の平面図上に表示することができる。また、滞留度や密集度を色分けで

表示できるため、複数の動線を表示する場合、一目でどのエリア・通路が混

雑しているかが分かる。さらに、同システムでは、指定したエリア内の人の

流出入方向の計測も可能であり左方向から5人のピッカーが入り、すべて上

方向の通路に出て行ったなど、どの通路が過密しているかなど、改善のヒン

トとなる情報が収集できる。出荷頻度の高い商品の棚の周辺にはピッカーが

集りやすく、ピッキング待ちの無駄な時間が発生するケースも多いが、同シ

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ステムを活用すれば現場の状況が明確となり、あらかじめ最適なロケーショ

ンの設定が可能となる。

(図33、34参照)

■参照 URL

http://www.weekly-net.co.jp/system/post-1491.php

図33:b-moni 装着例

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図34:ケースピッキング時の作業動線

(2)物流サポートシステム

■事業者

五洋建設株式会社

■実施期間

製品提供中

■実施内容

【概要】

建物の運営管理やメンテナンス、そして維持管理コストなど、施設のライ

フサイクルを見渡して、運用を支えるシステムを提供する。

物流施設では、物品位置の正確な把握が施設の運営上重要であり、生産性

の向上には作業時間や人員配置の工夫も必要である。フォークリフトや従業

員の動きなどを 3 次元化し、作業効率を分析する「平置き倉庫在庫管理シス

テム」を使用して、生産性改善を図る。

(図35参照)

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【特長】

・作業性評価が難しいフォークリフトや作業者の動きを 3Dシミュレーターに

取り込んで、定量的に評価可能。

・フォークリフトの位置情報、作業履歴や移動パレットの製品情報を自動的

に管理ソフトに取り込み、平置き倉庫でのフリーロケーションの在庫管理

が可能。

■参照 URL

http://www.penta-ocean.co.jp/business/solution/sol_05/manage.html

図35:フォークリフトの移動履歴線(入出荷作業動線)

(3)工場見える化システム

■事業者

パナソニック株式会社

■実施期間

製品提供中

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■実施内容

【概要】

QCD(品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)) の向上を実現するた

めには、4M(Man、Method、Machine、Material)の適切な管理が必要という考

えから、4Mの管理にカメラ映像を恒常的に活用することで、以下が見える。

・工程のムダ・ムラ・ムリが見える

・異常発生時(トラブル)の”その時”が見える

その結果、以下の見える化が可能となる。

現場(工程・プロセス)の見える化

工場(事業経営)の見える化

経営(企業経営)の見える化

(図36、37参照)

■参照 URL

http://panasonic.biz/solution/factory/dousen/exp_02.html

図36:カメラ映像による動線描画

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図37:工場見える化システム概要

(4)商品配置変更支援サービス

■事業者

株式会社 CSK システムズ中部

■実施期間

サービス提供中

■実施内容

【概要】

タグを持った作業者の位置を無線 LAN を利用して検知し、取得した動線デ

ータと倉庫管理システムのデータをあわせて適切な商品配置を提案するサー

ビス。

従来、出庫頻度だけによる商品配置の変更はよく行われているが、結果と

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して特定の場所で人の渋滞が発生していまい、期待した成果が得られないこ

とがある。本サービスでは、作業者の動線分析を行うことで、倉庫管理シス

テムのデータだけではない、より生産性の高い商品配置を提案し、倉庫管理

システムの導入、棚の変更など大掛かりな業務改善を行うことができる。

【特徴】

・作業生産性のさらなる向上

・物流量や取扱商品の変化での作業生産性低下を防止

・最適な商品配置検討の支援

■参照 URL

http://www.csk.com/sys-chubu/docs/catalog/brochure_plcechg.pdf

3.4 イベント分野

(1)イベント入退場管理

■事業者

NTTコミュニケーションズ株式会社

■実施期間

2007年 2月 8 日・9日の 2日間

東京都武蔵野市にある「NTT武蔵野研究開発センタ」にて実施

■実施内容

【概要】

○会場運営/マーケティングの質向上

・入場証事前発行(Web/メール)による、受付や券売機などでの混雑緩和

・来場者の会場動線履歴や属性情報を活用した、今後の会場設営改善

・アンケート回答率の向上(個人情報や属性情報などの記入作業省略による)

・各ブース来訪者/デモ利用者の正確な個人情報や属性情報や動線履歴など

から、より効果的なマーケティング活動の実施

○セキュリティ向上

・入退場ログ管理

・偽造防止(不正入場防止)

○コスト削減

・受付での入場証発行手続き稼働の削減

・受付や券売機などでの人員整理稼働の削減

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・入場証発行費用の削減

○企業イメージ向上

・スムーズな入退場によるユーザビリティ向上/企業イメージ向上

・デザイン性の高い入場証による企業イメージ向上

○広告展開/クーポン配布

・電子透かしを埋め込む原画部分を使った広告展開/クーポン配布

(図38参照)

■参照 URL

http://www.ntt.com/ninsyo-sol/data/solution.html

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図38:イベント入退場管理イメージ

(2)顧客行動を的確に捉えたリアルタイムな展示会場の改善

■事業者

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大阪ガス株式会社

■実施期間

製品

■実施内容

【概要】

大阪ガスでは、行動観察技術をサービスサイエンスに活用する取り組みが

行われており、必ずしも複雑なシステムを利用しているわけではないが、行

動観察による調査を通じてリアルタイムな改善に役立てている。毎年秋から

冬にかけて計 150 以上の会場で「ふれあいガスてん」が開催されている。日

頃ガスを利用している顧客への感謝を示すとともに新しい機器の PRを行うイ

ベントであり、顧客と直接ふれ合える重要な場として位置づけられている。

2006年から計 15回のイベントにてリアルタイム改善が実施されており、①

会場レイアウトの変更による滞留時間の長期化と、②販売員の立ち位置変更

による顧客動線の改善で、成果を上げている。

①は、木陰効果の創出により、意図的に顧客の滞留時間を長くした例であ

る。イベント会場で人の流れの方向に沿ってポスターが展示されている場所

では、通路スペースでは人の流れに押されてしまい、ゆっくりと展示を眺め

ることが難しい。これに対し、観葉植物を設置したような木陰のスペースで

は、それが目隠しとなり、人の流れを気にせずに眺められる傾向にある。そ

こで、観葉植物の設置前と設置後との滞留時間を比較・検証したところ、通

路スペースでは平均 11 秒だったのに対し、木陰では約 2 倍となる平均 24 秒

という結果となっている(観葉植物の設置による木陰効果の検証)。

人には他人と一定の距離を保ち、パーソナルスペースを維持しようとする

心理が働く。観葉植物の設置により落ち着けるスペースが確保され、滞留時

間が延びたと考えられる(パーソナルスペースの理論)。

②は、レイアウトや係員の配置変更により、意図した顧客動線に改善した

例である。ガスてんを開催した、あるイベント会場は円形をしており、顧客

の動線は会場入口から左回りにすることを意図して展示レイアウトが行われ

ている。初日に現場で人の動きを観察したところ、意図に反して 40%しか左

回りをしていないことが判明し、動線が自然と左回りになるよう展示方法が

改善されている。

おもに実施された方法は、会場入口付近のモノの配置や並びの変更、係員

の立ち位置の変更、ディスプレイ関係の配置変更である。具体的には、来場

者が入口から入ろうとするのに妨げとなるよう立ち位置を変更して自然と入

口から入場するような配置にするなどが行われている。こうした改善により、

翌日のイベントでは 80%の顧客の動線を左回りに変更することができている。

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大阪ガスでは、これら以外にもイベントなどを通じて得た知見を定量的な

データと人間工学に基づく理論とともにノウハウとして蓄積している。ガス

てんをはじめ各イベントで、行動観察を通じて分析し仮説を立てて、リアル

タイムにノウハウが実行されている。

■参照 URL

http://www.robonable.jp/monthly/2008_09_10/p1.html

3.5 人流解析分野

(1)人の流れプロジェクト

■事業者

東京大学空間情報科学研究センター

■実施期間

実施中

■実施内容

【概要】

「人の流れプロジェクト」は、交通・防災・観光・マーケティングの分野

などにおいて近年見られる、都市空間でダイナミックに変化する人々の流れ

を俯瞰ふ か ん

したいというニーズに対応するために行っている様々な技術やデータ

を取り扱うプロジェクトである。現在は以下のサービスを実現している。

・時空間データクリーニングサービス

・時空間データ提供サービス

これらのサービスは、現在、動線解析プラットフォームの WebAPIを通じて

行われており、プラットフォームの構築にあたっては一部、国土交通省国土

技術政策総合研究所の技術協力を受けている。

(図39、40、41参照)

■参照 URL

http://pflow.csis.u-tokyo.ac.jp/xoops/

http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/japanese/news/20080731/02.pdf

http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/japanese/news/20080731/03.pdf

http://pflow.csis.u-tokyo.ac.jp/xoops/modules/pico/images/PersonFlow

WebAPI_ver1.12.pdf

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図39:時空間データクリーニングサービス

図40:時空間データ提供サービス

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図41:人流解析イメージ

3.6 その他分野

(1)セキュリティシステム

■事業者

株式会社日立製作所

■実施期間

製品提供中

■実施内容

【概要】

入館者の認証に特定の動作を必要としない「ハンズフリーセキュリティシ

ステム」は、そのシステム構成から、優れた入退場時の認証環境を提供する。

【特長】

○個人別動態履歴

個人毎の動態履歴を表示可能。

個人毎の動態履歴情報を蓄積し、日・週で集計した情報を提供。

(図42、43参照)

■参照 URL

http://www.hitachi.co.jp/products/urban/security/business/handsfree/

hospital.html

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図42:システムイメージ

図43:動線履歴画面イメージ

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(2)顔画像監視ソリューション

■事業者

九州日本電気ソフトウェア株式会社

■実施期間

製品提供中

■実施内容

【概要】

遊園地など大規模施設での迷子探しやデータセンタにおけるセキュリティ

確保など、人手や費用をかけずに特定人物を発見できればという要望に応え

る形で開発されたシステムである。

【特長】

・監視用カメラから顔画像を切り出してサーバへ蓄積。

・事前に登録した特定人物の顔と監視カメラの顔を照合。

・顔の照合における一致率が高ければ強調表示し、特記事頄を表示。

・特定人物の行動履歴を顔画像から検索可能。

・探したい人物のマスタ顔画像が無くても「男性30代」等、性別・年齢(目

撃情報)から検索可能。

・人物移動の履歴を顔画像で管理し、動線分析が可能。(2008 年秋対応予定)

(図44参照)

■参照 URL

http://www.qnes.co.jp/solution/reaf/solution065.html

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図44:ソリューションイメージ

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(3)和泉商工会議所「元気再生事業」

■事業者

和泉商工会議所

■実施期間

2008 年 10 月 18日(土)~11月末

■実施内容

【概要】

平成 20年度地方の元気再生事業「和泉農業ヒト・モノ・カネ活用プロジェク

ト」のひとつの課題として、動線解析を利用。目的と全体概要は以下の通り。

Ⅰ.プロジェクトの目標

「農業を軸に和泉市の産業全体を活性化」

1.“川下から川上へ”

• 飲食店などを含めた消費者のニーズに合わせた農業を展開

• 単に売れているものを生産するのではなく新たなニーズ創出

2.地域の商・工業との連携

• 商店・飲食店、流通業等との連携によるセールス、加工食品とのパッケ

ージ販売、契約栽培の拡大など、商・工業との連携強化

3.産学連携による農業経営体の強化

• 大学(経営学部)との連携で家族経営から法人経営への転換

• 農業経営体の強化

Ⅱ.平成20年度の主な取り組み

① 泉内外のヒトが和泉農業に愛着をもってもらうため、地元 NPOとともに農

業体験バスツアーを実施

② フェリカICカード技術を用いた“あいらぶ和泉カード”を発行。観光商

業ルートの検証のためオリジナルキャンペーンを実施。

③ 飲食店の食材ニーズを把握するため、ぐるなび飲食店ネットワーク活用に

よる食の調査を実施。

④ ものづくり人材育成のため、桃山学院大学とともにカリキュラムを作成。

(図45、46、47参照)

■参照 URL

http://www.izumicci.jp/commercial/img/pdf/saisei20.pdf

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図45:動線解析に関係する実施内容(1)

図46:動線解析に関係する実施内容(2)

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図47:動線解析に関係する実施内容(3)

3.7 動線解析技術を利用したサービス調査のまとめ

本章で調査した動線解析技術を利用したシステムやサービスでは、コンシュ

ーマの行動を解析して情報を提供する「レコメンデーション」や小売・商業施

設、イベント施設での行動を解析してお勧めの商品情報を提供するものが中心

となっている。

コンシューマ以外では、小売・商業施設や工場・倉庫などでの顧客や作業員

の動線を解析し、レイアウト変更等の業務効率向上のために動線解析を用いて

いるものが中心となっている。また、動線解析をセキュリティに応用するよう

なケースも出始めている。

本章の調査から、①コンシューマへのサービス向上を目的とした動線解析の

利用、②業務効率改善を目的とした動線解析の利用、③セキュリティの高度化

を目的とした動線解析の利用と言った大分類ができ、動線解析技術は今後もこ

のどれかの目的で利用されて行くと考えられる。

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第4章 動線解析技術に求められる要件の整理

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4.動線解析技術に求められる要件の整理

本章では、今後の動線解析技術に求められる要件を測位の観点と解析の観点

から整理する。

4.1 動線を取得するための測位に関する要件

(1)測位手段

第 1章の 1.2節、1.3 節に挙げたように、屋外・屋内で動線を取得するための

様々な測位手段(GPS 測位、屋内 GPS 測位、無線 LAN測位、LED可視光測位、ZigBee

測位など)が研究・開発され、実用化されている。動線解析技術には、どの様

な測位手段から得られた測位結果であっても共通に扱える汎用性が求められる。

また今後は、単一の測位手段による測位結果だけでは無く、複数の測位手段

によって得られた測位結果を統合的に扱う状況が想定されるため、この点も考

慮した動線解析技術の開発が求められる。

(2)測位結果

測位手段によって得られる測位結果は、“緯度、経度、高さ”といった絶対座

標、ある空間を限定して、“(X,Y,Z)”といった相対座標、位置に関連した位

置 IDなどがある。

(3)測地系

座標を表す前提となる測地系においては、世界測地系(ITRF94、WGS84、PZ90

など)、日本測地系があり、使用する測地系の違いにより、同じ場所で測位を行

っても測位結果として得られる座標が異なることとなる。

また、相対座標で得られた測位結果や位置 IDとして得られた測位結果を絶対

座標に置き換える(変換する)場合、どの測地系に変換するかにより座標値が

ことなるため注意が必要となる。

従って、複数の測位手段によって得られた測位結果を統合的に扱うためには、

測位手段が使用している測地系を識別し、共通処理が可能な測地系に変換する

処理が必要となる。測地系の変換においては、変換誤差が発生する場合がある

ため、この点についても留意する必要があり、必要に応じて補正処理を行う必

要がある。

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(4)測位時刻

動線解析を行うためには、測位が「いつ」行われたかを知るための測位時刻

パラメータも重要である。測位時刻は、世界共通の時刻系である世界時、世界

時を基に地域毎に決められた標準時(日本の場合は、世界時を 9 時間進めた時

刻を日本標準時としている)、測位手段が任意に定めたシーケンシャルな数値な

どがある。測位時刻は、測位手段が使用している時刻によって異なるため、動

線解析を行うためには、必要に応じて時刻系を合わせる必要がある。

(5)測位タイミング

測位のタイミングは、測位手段の制約により一定間隔のものから、利用者が

指定する任意のものまで様々である。動線解析を行う場合、動線解析を行うエ

リアにより解析に必要となる測位の粒度が異なってくる。例えば、店舗や工場

などにおける人の動線解析では細かな粒度が求められる。一方、パーソントリ

ップなど広域な範囲での人の動線解析では、店舗や工場で求められる粒度より

もずっと荒いもので良い。

従って、動線解析を行うには、解析対象となるエリアを考慮し、そのエリア

に応じた測位手段の選択、測位タイミングの選択を行う必要がある。また、既

に取得済みの測位結果を用いて解析するためには、解析対象となるエリアから

測位粒度を設定し、測位結果を前処理する必要がある。

(6)測位誤差

測位手段や測位環境によって測位誤差は異なる。測位手段による誤差は、そ

の測位手段が本来持つ測位の分解能であり、測位環境による誤差とは、測位を

行う環境によって発生する測位精度の低下のことである。測位手段によって、

測位誤差の範囲が大きいものから小さいものまで様々である。動線解析を行う

場合、測位誤差が動線解析の粒度を超えてしまうと動線解析の意味を成さなく

なる。

従って、動線解析を行うには、動線解析の粒度を考慮し、その粒度以下の測

位誤差を持つ測位手段を選択する必要がある。また、既に取得済みの測位結果

を用いて解析するためには、対象の測位結果が持つ測位誤差を見極めて解析を

行う必要がある。

動線解析の粒度を考慮して測位手段を選択したとしても、測位環境により解

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析粒度を超えた測位誤差が発生する場合もある。この様な誤差は、動線解析を

行うにあたっては外乱となり、正しい解析結果が得られなくなる。この様な外

れ値は動線解析を行う前に除去するか補正する必要がある。

(7)個人情報保護

動線解析を行うためには多数の測位結果を収集・蓄積する必要がある。人の

動線を解析する場合、多数の測位結果から動線解析された結果は、個人を特定

することはできないため個人情報にはあたらない。しかし、動線解析を行うた

めに収集した測位結果については、データから個人が特定できないよう、暗号

化などを施し匿名性に配慮するとともに、情報漏洩を防ぐ仕組みを導入するな

ど、情報セキュリティには細心の注意を払う必要がある。また、動線解析対象

が個人である場合、動線解析された結果についても動線解析を行うために収集

した測位結果と同様に細心の注意を払った管理が必要となる。

4.2 動線解析処理の要件

(1)動線解析処理全体の流れ

動線解析とは、測位データに対して意味づけを行う処理である。測位データ

とは移動体の動線をサンプリングして得られる誤差を含んだデータであり、測

位対象を一意に示す ID、測位を実行した時刻、および測位結果である座標値の

組で表現される(表5参照)。

表5:測位データのデータ形式(例)

頄番 名称 意味

1 移動体 ID 測位対象を一意に示す ID。具体的には、ユーザ IDとなる。

2 時刻 軌跡上の一点を表す時刻。

3 座標値 空間上の一点を表す値。二次元の場合は二つの値の組、三次

元の場合は三つの値の組となる。

また、時系列測位データとは、単一の移動体に対する測位データを時間項に

並べて得られるものを指す。

動線解析では、意味づけ対象の動線をサンプリングした時系列測位データの

処理により、動線区間が意味づけられる(図48参照)。

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107

元データ 前処理後データ

状態遷移

(a)前処理 (b)状態判別処理 (c)状態遷移解析

統計情報

図48:動線解析処理の全体構成(例)

以下では、各処理について述べる。

(a)前処理

図48(a)の前処理とは、意味づけが実施される前の時系列測位データ(元デ

ータ)に対して加えられる処理である。この処理としては、測位誤差の低減の

ための平滑化処理や、測位誤差が大きいために極端に外れた位置が得られた測

位データを除去する外れ値除去処理、地図情報との整合性をとるマップマッチ

ングと呼ばれる処理などがある。

(b)状態判別処理

図48(b)の状態判別処理では、動線区間に対し移動体の状態を示す符号が付

与される。動線区間とは、移動体の移動軌跡の一部区間を切り取ったものを指

し、動線のサンプリングを行ったものが時系列測位データである。動線区間と

他の情報を関連づけるためには、動線区間がどのような状態を表現しているか

判定する必要がある。状態判別処理では、時系列測位データに基づき、移動中、

停留中など、各区間の状態を判別する。

(c)状態遷移分析

図48(c)の状態遷移分析は、動線を状態遷移へ変換した後に実施される統計

処理である。前述の状態判別処理によって、動線区間が状態へ変換されるため、

動線の全体は状態間の遷移と見なすことができる。状態遷移は一種の記号列で

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あるので、記号列に対する統計処理が実行できる。例えば、状態遷移をマルコ

フモデルであると見なしてモデルパラメータの推定を行ったり、記号列マッチ

ングにより動線間の類似度を判定したりすることができる。

(2)前処理における誤差低減

前述の通り、前処理には測位誤差の低減のための処理が含まれる。以下では、

測位誤差を低減するための前処理について述べる。

(a)測位誤差の分類

誤差は系統誤差と偶然誤差に分類される。系統誤差とは、例えば電波の反射

波を誤検出する場合など、誤差がある特定の原因に基づいており、偶然によら

ないものを指す。他方、偶然誤差は測位時にランダムに現れる誤差を指す。

偶然誤差が不偏な誤差であれば、平均化などの前処理により誤差を低減する

ことができる。一見、非常に誤差の大きな測位データであっても、平均化など

の処理を加えることにより、かなりの部分が改善できる可能性がある。

ところが、例えば電波の反射など、測位の誤差が位置のずれとして現れるメ

カニズムは複雑である。ゆえに誤差の現れ方や振る舞いは画一的ではないため、

平均化だけでは誤差は除去しきれない可能性が高い。

(b)外れ値除去処理

測位の誤差は複雑な振る舞いをする可能性が高いため、ある条件において偶

然誤差が極端に大きな値に振れてしまうことがある。このような、測位環境上

の問題により実際の位置から極端に乖離した測位結果が得られたものを、外れ

値と呼ぶ。外れ値は平均化の結果に大きく影響してしまうため、外れ値を除去

することが必要となる。

外れ値の除去処理は、外れ値を判別し除去することが目的である。外れ値の

原因はいくつか考えられるが、電波を利用した測位の場合、一般に十分な受信

感度が得られない条件下にて頻繁に発生する。例えば、GPS の場合、「測位装置

が樹木や人混みなど信号の伝達を阻害するものが環境中にある」、「屋内で屋外

の信号を受信する」、「屋外で屋内の信号を受信する」などの状況により、外れ

値が発生する。

外れ値は頻繁に現れる誤差よりも極端に大きなものであるから、外れ値はそ

の前後の測位データの傾向から逸脱したデータとなる。そのため、前後の測位

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データとの乖離度合いを計測することによって、外れ値を検出することができ

ると考えられる。

従来の外れ値除去処理には距離や速度に対する閾値処理が用いられてきた。

閾値処理は、通常はその測位環境においてありえないほど速い移動の測位デー

タを外れ値と見なす処理である。外れ値の特徴は測位手段や移動体の特徴によ

って異なるため、閾値や処理内容を変更する必要がある。

(c)学習型外れ値除去処理

複数の測位方式が混在する環境下においては、各種測位方式に適した外れ値

除去処理を設計せねばならない。

外れ値外れ値ではない

10m

1m

10m

(a)標準誤差10m程度の例 (b)標準誤差1m程度の例

図49:測位方式によって異なる外れ値の定義(例)

図49(a)は屋外において歩行者が誤差±10m 程度の GPS 受信機を保有してい

る場合の例である。通常、歩行速度を極端に上回る速度で前後している測位デ

ータは、外れ値とみなすことができる。しかし、たとえ歩行速度を上回ってい

たとしても 10m 程度の範囲内の移動であれば、外れ値ではない誤差と考えられ

る。他方で、図49(b)に示すように測位誤差が±1m程度の測位装置を用いてい

る場合、10m程度範囲内の移動であっても外れ値とみなすことになる。この例が

示すように、測位結果が外れ値であるか否かは、尐なくともその測位方式での

平均的な誤差(標準誤差)を鑑みなければ判定できない。さらに、測位精度が

高い測位装置であれば、移動体が標準誤差以上の速度で移動する場合もありえ

る。この場合、たとえ標準誤差以上の変位があったとしても外れ値とみなすこ

とはできない。また、測位方式によっては外れ値や標準誤差の傾向が異なる場

合がある。例えば、障害物などが原因で外れ値が連続して得られる場合や、広

域の施設で弱い電波を用いた測位方式を採用したことにより標準誤差が大きく

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なってしまうこともある。以上のように、測位方式や設置環境毎に外れ値除去

処理を設計しなおす必要があるため、この点が汎用的に動線解析を適用するた

めの開発コストを増大させる要因となる。

この開発コスト増大の要因の一つとして、フィルタ処理のパラメータを外れ

値の傾向に適するように決定する作業の煩雑さがある。最適なフィルタパラメ

ータを決定するには、事前にサンプルデータを収集し、どのようなパラメータ

が外れ値の除去に適しているかを試行錯誤しながら決定せねばならない。この

パラメータチューニングにかかる工数を低く抑えることが、多種の測位手段を

併用するにあたって重要である。

(3)移動状態にもとづく状態判別処理

移動状態とは、歩行中、移動中など歩行者の移動にまつわる状態を指す。状

態判別処理は各動線区間に対して意味を表現する離散値を関連付ける処理であ

る。一つの測位データは、移動体を一意に識別する移動体 ID、測位された時刻、

座標値によって記述される。歩行者や車両のように移動体が二次元平面上で移

動するならば、座標値は二つの値によって構成される。状態判別処理を構築す

ることは、この測位データからその時点での歩行者の行動を表す離散値への写

像を定義することに相当する。以下では、この歩行者の行動を表す離散値を状

態ラベルと呼ぶ。

測位データの情報は座標値二つと時刻一つの計三つの値からなるため、三次

元の連続値から状態ラベルへの写像を定義することにより状態判別が可能とな

る。但し、実際には三つの値全ての組合せが、異なる状態ラベルへ対応付く訳

ではない。実際、時間的に近い点、すなわちある状態から次の状態に遷移する

までの間は同一の状態ラベルが付与されることがある。更に、距離の非常に近

い点に関しても同様であり、同一の状態ラベルが付与されることがある。これ

は歩行者の行動が周囲にある物体の影響を受けているためである。例えば、歩

行者がベンチに座る時、歩行者とベンチの位置関係は非常に近いはずであり、

歩行者が移動せずに遠くのベンチに座るのは不可能である。すなわち、周囲の

地理的条件や時間帯に応じて状態ラベルが付与されると考えられる。

従来方式の多くは、座標のみにもとづき状態を判別しているが、それでは状

態を適切に判別できない場合がある。

歩行者が目的を持って移動している場合、目的物が手の届かない遠方にある

と考えられる。一方、歩行者が周囲の物体に関する行動(例えば機器類を操作

するなど)をとる場合、歩行者とその物体の距離は手が届く程度には近いこと

が多い。従って、歩行者行動の目的物体が制止している場合、その行動が終わ

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るまでは、歩行者はその物体の付近にて滞留する。ところが、物体が移動して

いる場合(例えば、誰かについて行く)や物体が空間的な広がりを持っている

(例えば、部屋内で機器類を探す)場合、移動しながらでも行動対象の物体と

の距離が近い状態を維持できる。従って、行動しながら移動している状態を導

入することにより、より精緻に歩行者状態を推定できることになる。これによ

り、空間的に広がりのある物体と関連する行動を表現できる。尚、物体が移動

している場合に関しては、移動している物体の位置情報が必要となる。

(4)移動遷移分析

状態遷移分析とは、動線から得られた状態遷移の履歴データを処理し、利用

しやすくする処理を指す。状態遷移分析は各動線区間から得られる状態遷移を

処理して、他の意味を得る処理である。動線を構成する測位データは、移動体

を一意に識別する移動体 ID、計測された時刻、座標値によって記述される。状

態遷移分析はこの時系列状態ラベル列に対する統計処理である。

動線を表現する測位データはほぼ連続とみなせる座標値である。そのため、

移動体が類似する状態にあったとしても、異なった値になる。状態判別ではこ

の測位データを分類し、類似する状態にあるものについては同一の状態ラベル

を割り当てる。その結果、動線は状態ラベルの時系列、すなわち記号列にて表

現されたことになる。

記号列の統計処理は、言語処理や DNA鎖の分析、Webアクセスログの分析など

様々な分野で既に応用されており、種々の方式が提案されている。動線から得

られる記号列の特徴として、各記号が実際の時空間情報と対応付いているとい

う点があげられる。そのため、記号が得られた地点間の空間上の距離や経過時

間、記号が得られた地点の周囲にある物体など、実空間の特質を適切に取り込

んだモデルが必要となる。

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-禁無断転載-

位置情報収集解析技術の利用に関する調査研究

平成 22 年 3 月

作 成 財団法人 ニューメディア開発協会

東京都文京区関口一丁目43番5号

委託先名 イデア コラボレーションズ株式会社

東京都港区三田三丁目2番8号

株式会社日立製作所

東京都江東区新砂一丁目6番27号