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経産業省 製造産業局化学物質管理課 殿 平成 24 年度環境対応技術開発等 リスク評価対象物質への一斉質量分析手法の適用性と環境濃度把握の可能性 事業報告書 平成 25 3 6 横国立大学 大学院環境情報研究院 代表:亀屋隆志

平成24年度環境対応技術開発等 リスク評価対象物質へ … · ②gc/ms aiqs-db 沵における同定ン定量に適した質量ケヒェダャの選択 ③gc/ms

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経済産業省 製造産業局化学物質管理課 殿

平成 24 年度環境対応技術開発等

リスク評価対象物質への一斉質量分析手法の適用性と環境濃度把握の可能性

事業報告書

平成 25 年 3 月 6 日

横浜国立大学 大学院環境情報研究院

代表:亀屋隆志

1

1.調査名

リスク評価対象物質への一斉質量分析手法の適用性と環境濃度把握の可能性

2.調査目的

化審法の優先評価化学物質および化管法対象物質を中心とする数百種類に及ぶ化学

物質の環境リスク評価に不可欠な曝露情報である環境中濃度の同時一斉分析を実現で

きる技術を確立する。具体的には、主に食品残留農薬等の検出用に開発されたガスク

ロマトグラフ質量分析(GC/MS)装置を用いた自動同定・定量テータベースシステム

(AIQS-DB)の適用範囲の拡大を図る。また、近年に著しく技術が進歩した液体クロ

マトグラフ質量分析(LC/MS/MS)法の適用を試みる。これら普及型の GC/MS と

LC/MS/MS を併用して、多数の化学物質を対象とする一斉分析法の適用条件と適用範

囲を明らかにする。

3.調査項目

第一に、商用 DB に登録されていない化管法の指定物質および化審法の優先評価化

学物質を優先的に調査対象として、以下の①~④の流れで調査を実施する。

①GC/MS AIQS-DB 法における DB-5ms カラムでの分離性の有無と保持時間

②GC/MS AIQS-DB 法における同定・定量に適した質量スペクトルの選択

③GC/MS AIQS-DB 法における検量線

④GC/MS AIQS-DB 法における共存物質マトリクス影響の調査

第二に、GC/MS AIQS-DB 法における同定・定量が困難であることが明らかになっ

た物質を調査対象として、以下の⑤~⑦の流れで調査を実施する。

⑤トリプル四重極 LC/MS/MS 法における同定・定量に適した質量スペクトルの選択

⑥トリプル四重極 LC/MS/MS 法における検量線

⑦トリプル四重極 LC/MS/MS 法における共存物質マトリクス影響の調査

第三に、上記2つの同定・定量分析法の適用の可能性が示された物質を対象として、

以下の検証を行う。

⑧汎用の固相抽出剤 Sep-Pak PS-2 を用いた濃縮回収技術の適用性

4.調査結果

(1)①GC/MS AIQS-DB 法における DB-5ms カラムでの分離性の有無と保持時間

(1-1)化管法対象物質の選定仕分け

①~⑧に示した具体的な適用条件を検討するに当たり、対象物質の選定は極めて重

要である。ここでは、機器の特性や化学物質の物性、試薬の現実的な入手可能性等を

調査して、本研究の対象物質ができるだけ広範なものとなるように検討した。

はじめに、化管法第一種および第二種指定の 562 物質(群)について、本調査におけ

2

る選定仕分けを行った内容を表1に示す。

まず、他の法律における管理がなされているものとして、ダイオキシン類 1 物質(群)

とオゾン層破壊物質 19 物質(群)を検討対象外とした。無機物・金属類や有機溶媒・水

溶媒に不溶な物質および標準試薬の購入が不可能であるため原理的に GC/MS や

LC/MS/MS への適用が困難な 33 物質(群)は本調査の検討対象外とした。また、すなわ

ち、化管法対象 562 物質(群)からこれら検討対象外の計 53 物質(群)を除いた計 509 物

質(群)を本調査の検討対象とした。

次に、商用の GC/MS AIQS-DB に収録されている 206 物質(群)に加え、文献情報等

において GC/MS 分析の可能性が示されている 187 物質(群)を GC/MS AIQS-DB 包括

一斉分析の追加検討対象とした。

さらに、本調査における検討結果により、GC/MS AIQS 包括一斉分析法が適用でき

ないと判断された 104 物質(群)を含む計 220 物質(群)を LC/MS/MS 一斉分析の調査対

象とした。

表1 本調査検討における化管法対象物質の選定仕分け

分類 内容

化管法対象

物質数

既存適用物質

 206物質(群)

商用AIQS-DB登

録物質

商用AIQS-DBに収録されている物質。 206

AIQS-DB新規 本調査においてAIQS-DBに追加した物質。 83

GC/MS検出不可

本調査において標準溶液を調製してGC/MS包括一斉分析を試

みたが、同分析の設定条件では検出できないことが判明した物

質。

(104)

LC/MS/MS一斉分

析条件を確立

本調査において、LC/MS/MS分析の一連操作(試薬購入~試薬

調整~イオン化~LC分離~検量線作成)が確立できた物質。

66

本調査において、LC/MS/MS分析の試薬購入~試薬調整~イオ

ン化までの操作が確認できた物質。LC分離~検量線作成は未

確認。

46

LC/MS/MS一斉分

析(分離)は不可

本調査において、LC/MS/MS分析の試薬購入~試薬調整~イオ

ン化までの操作が確認できたが、LC分離ができなかった物質。

24

LC/MS/MSでイオ

ン化不可

インヒュージョン(IF)分析でイオン化が確認できなかったもの 52

有機溶媒に不溶

/水にも不溶

有機溶媒に不溶または難溶かつ水に不溶なため、2000ppm標準

液を調製できず、GC/MSおよびLC/MS/MS分析を行わなかった

物質。

14

分析溶媒(アセトニ

トリル)

LC/MS/MS分析では分析溶媒で用いるため、試薬調製を行わな

かった物質

1

試薬なし 試薬が販売されていない、または入手困難なもの 17

原理的にGC/MS

やLC/MS/MSが

適用困難なもの

無機物

本調査対象のGC/MSおよびLC/MS/MSでは原理的に分析でき

ない物質(ICP/MSやICを用いれば分析・管理が可能と考えられ

る)。

33

他の法律におけ

る管理されている

もの

オゾン層破壊物質 オゾン層保護法において管理(使用禁止)されている物質。 19

ダイオキシン類

ダイオキシン類特措法において管理され、公定法も定められてお

り、包括一斉分析が困難と判断された物質。

1

計 562

LC/MS/MS一斉

分析の調査対象

とするもの

 220物質(群)

GC/MS AIQS-

DB包括一斉分析

の調査対象とす

るもの

 289物質(群)

 (+104物質(群))

本調査の対象外

とするもの

 53物質(群)

調査対象物質の選定仕分け

分析検討不可

 32物質(群)

分析検討対象

 188物質(群)

追加検討対象

 187物質(群)

3

(1-2)GC/MS AIQS-DB 法を適用する化管法対象物質

GC/MS AIQS-DB 分析の調査対象とするもののうち、既存の商用 AIQS-DB に収録

されている 206 種を除く 187(=83+104)物質(群)を本検討の対象とした。それぞれ、

標準試薬を購入し、ヘキサン、アセトン、メタノール、エタノールのいずれかの分析

溶媒に溶かして 2000mg/L の標準原液を作成し、1ppm 標準溶液に希釈して、DB-5ms

カラムを用いた GC/MS 分析を行った。GC/MS 一斉分析法の分析条件を表2に示す。

その結果、デフォルト設定された AIQS-DB GC/MS 包括一斉分析の条件において、

83 物質(群)はピーク検出可能であるが、残りの 104 物質(群)がピーク検出不可能であ

ることが判明した。新たに GC/MS 検出が可能であることが判明した 83 物質(群)の化

管法政令番号を商用 DB 収録済の 206 物質(群)と合わせて以下の表3に示す。

表2 GC/MS 一斉分析法の分析条件

項目 条件 装置 島津 GC/MS-QP2010 plus 分離キャプラリーカラム J&W DB-5ms (30m×0.25mm, 0.25µm) カラム昇温プログラム 40ºC (2min) → 8ºC/min → 310ºC (5min) イオン源温度 200ºC 気化室温度 250ºC インターフェイス温度 300ºC 注入モード スプリットレス キャリアガス ヘリウム(He) キャリアガス流量 40 cm/sec イオン化法 EI 測定モード Total Ion Chromatograph (TIC) モード 試料注入量 1 µL

表3 GC/MS 検出可能な化管法対象物質 289 物質(群)の化管法政令番号

商用商用商用商用 AIQSAIQSAIQSAIQS----DBDBDBDB 収録済収録済収録済収録済 206206206206 物質物質物質物質((((群群群群)))):::: 1-7, 1-15, 1-17, 1-18, 1-21, 1-22, 1-24, 1-25, 1-32, 1-37, 1-39, 1-40, 1-41, 1-46, 1-47, 1-48, 1-49, 1-50, 1-54, 1-64, 1-73, 1-74, 1-76, 1-78, 1-79, 1-81, 1-86, 1-89, 1-90, 1-91, 1-92, 1-93, 1-95, 1-96, 1-100, 1-101, 1-113, 1-114, 1-116, 1-117, 1-118, 1-119, 1-120, 1-121, 1-129, 1-135, 1-138, 1-139, 1-140, 1-146, 1-147, 1-148, 1-153, 1-156, 1-160, 1-162, 1-167, 1-168, 1-170, 1-171, 1-173, 1-180, 1-181, 1-182, 1-184, 1-188, 1-190, 1-191, 1-192, 1-193, 1-194, 1-195, 1-196, 1-197, 1-198, 1-200, 1-201, 1-203, 1-204, 1-207, 1-212, 1-215, 1-216, 1-217, 1-222, 1-225, 1-233, 1-247, 1-248, 1-249, 1-250, 1-251, 1-252, 1-253, 1-254, 1-260, 1-261, 1-266, 1-271, 1-286, 1-287, 1-290, 1-293, 1-294, 1-299, 1-301, 1-302, 1-311, 1-312, 1-314, 1-315, 1-316, 1-319, 1-320, 1-323, 1-326, 1-331, 1-336, 1-340, 1-346, 1-348, 1-349, 1-350, 1-353, 1-354, 1-355, 1-356, 1-357, 1-361, 1-363, 1-367, 1-368, 1-369, 1-370, 1-371, 1-376, 1-383, 1-388, 1-393, 1-398, 1-402, 1-404, 1-406, 1-422, 1-425, 1-426, 1-427, 1-428, 1-430, 1-431, 1-432, 1-435, 1-438, 1-439, 1-441, 1-442, 1-443, 1-444, 1-445, 1-449, 1-450, 1-452, 1-457, 1-458, 1-459, 1-460, 1-462, 2-2, 2-8, 2-9, 2-10, 2-11, 2-13, 2-17, 2-19, 2-21, 2-22, 2-23, 2-29, 2-32, 2-33, 2-34, 2-36, 2-41, 2-43, 2-49, 2-50, 2-55, 2-57, 2-58, 2-59, 2-63, 2-64, 2-69, 2-71, 2-72, 2-76, 2-78, 2-80, 2-82, 2-83, 2-88, 2-90, 2-91, 2-92, 2-94,

本調査本調査本調査本調査によによによによりりりり AIQSAIQSAIQSAIQS----DBDBDBDB へへへへ追加収録追加収録追加収録追加収録できできできできたたたた 83838383 物質物質物質物質((((群群群群)))):::: 1-5, 1-6, 1-16, 1-19, 1-23, 1-29, 1-34, 1-51, 1-53, 1-69, 1-80, 1-83, 1-97, 1-102, 1-109, 1-110, 1-111, 1-112, 1-125, 1-133, 1-154, 1-155, 1-165, 1-166, 1-189, 1-202, 1-208, 1-213, 1-214, 1-223, 1-224, 1-230, 1-240, 1-246, 1-258, 1-265, 1-269, 1-273, 1-289, 1-292, 1-295, 1-296, 1-297, 1-306, 1-330, 1-334, 1-335, 1-338, 1-339, 1-344, 1-345, 1-347, 1-352, 1-359, 1-365, 1-373, 1-390, 1-391, 1-397, 1-413, 1-414, 1-416, 1-417, 1-418, 1-419, 1-436, 1-440, 1-447, 1-451, 2-20, 2-45, 2-46, 2-47, 2-48, 2-56, 2-60, 2-62, 2-66, 2-70, 2-77, 2-79, 2-96, 2-99

4

(1-3)GC/MS AIQS-DB 法を適用する化審法対象物質

化審法の優先評価化学物質 138 物質(群)(平成 24 年 12 月 28 日現在)に加え、生態

毒性を有する旧第三種監視化学物質 321 物質(群)について、GC/MS AIQS-DB 法の適

用の可否を確認した。これらの物質の大部分は、化管法対象物質となっており、また、

両法においては群化合物の整理のされ方が異なるため、GC/MS AIQS-DB 法が適用可

能な 289 物質(群)を個別の 359 物質に分けて検討した。

その結果、化審法の優先評価化学物質は、化管法対象 33 物質および化管法対象外 3

物質の計 36 物質が本研究の AIQS-DB に収録済であることが判明した。同じく、旧第

三種監視化学物質は化管法対象 95 物質(うち 15 物質は優先評価化学物質と同一)お

よび化管法対象外 26 物質(うち 1 物質は優先評価化学物質と同一)が本研究の

AIQS-DB に収録済であることが確認できた。すなわち、化審法の優先評価化学物質お

よび旧三監物質を合わせ、以下の表4に示す計 141 物質(うち 16 物質は優先評価化学

物質および旧三監物質の両方に該当)が GC/MS AIQS-DB 法による包括一斉分析が可

能であることが確認できた。

表4 GC/MS 検出可能な化審法対象物質の政令番号/官報公示整理番号

化管法対象のもの

(政令番号)

化管法対象外のもの

(官報公示整理番号)

優先評価化学物質

(平成 24 年 12 月 28 日)

1-18, 1-53, 1-73, 1-76, 1-80, 1-83, 1-86, 1-153, 1-224, 1-240, 1-271, 1-273, 1-316, 1-349, 1-355, 1-391, 1-398,

(2)-407, (3)-2381

1-7, 1-37, 1-89, 1-89, 1-112, 1-160, 1-180, 1-181, 1-181, 1-181, 1-190, 1-207, 1-296, 1-299, 1-299, 1-302, 1-348, 1-436, 1-447,

(2)-798

旧第三種監視化学物質

(生態毒性)

1-15, 1-19, 1-23, 1-24, 1-32, 1-39, 1-41, 1-48, 1-64, 1-79, 1-90, 1-97, 1-102, 1-109, 1-110, 1-111, 1-116, 1-120, 1-125, 1-129, 1-139, 1-155, 1-156, 1-156, 1-165, 1-166, 1-167, 1-188, 1-197, 1-201, 1-202, 1-203, 1-204, 1-208, 1-214, 1-216, 1-230, 1-233, 1-246, 1-248, 1-249, 1-251, 1-260, 1-290, 1-290, 1-290, 1-293, 1-312, 1-320, 1-330, 1-338, 1-350, 1-363, 1-367, 1-373, 1-404, 1-425, 1-426, 1-428, 1-440, 1-441, 1-452, 1-457, 1-460, 2-9, 2-19, 2-23, 2-29, 2-33, 2-34, 2-41, 2-45, 2-49, 2-50, 2-58, 2-66, 2-70, 2-72, 2-82, 2-83, 2-90, 2-91, 2-99

(3)-129, (3)-290, (3)-503, (3)-503, (3)-521, (3)-540, (3)-896, (3)-931, (3)-969, (3)-1124, (3)-2254, (3)-4010, (3)-4123, (3)-4123, (3)-4123, (3)-4598, (3)-4598, (4)-329, (4)-378, (4)-643, (5)-908, (5)-2303, (5)-3352, (5)-6891, (9)-381

※化管法対象外の物質には化審法官報公示整理番号。

※政令番号/官報公示整理番号の重複は群化合物。

5

(1-4)DB-5ms カラムでの分離性の有無と保持時間

本研究で追加収録できることが判明した 83 物質(群)を加え、本調査で用いている

AIQS-DB に収録された全 1,025 物質について、DB-5ms カラムを用いたガスクロマト

グラフィー(GC)における分離性の確認を行った。なお、83 物質については、N=3

の繰り返し測定を実際に行って、DB-5ms カラムでの保持時間(RT)を決定した。

GC/MS AIQS-DB 包括一斉分析法の条件で分離に要する約 35 分(=約 2,000 秒)を

対象物質数の 1,025 物質で割ると、1 物質あたり平均 2 sec となる。したがって、必然

とピークは重なることになる。実際に 1,025 物質の各ピークトップ間隔の時間を調べ

た結果を図1に示す。通常、ピーク同士が重ならないためには約 6 sec のピークトップ

間隔が必要になるが、6 sec を超えるのは約 50 物質程度に過ぎず、1 sec に満たない物

質もかなり存在することが明らかになった。したがって、対象物質の分離・同定は重な

り合うピーク同士での異なる質量スペクトルの選択に大きく依存することがわかった。

図1 AIQS-DB に収録された 1,025 物質の GC におけるピークトップ間隔時間の分布

(2)②GC/MS AIQS-DB 法における同定・定量に適した質量スペクトルの選択

AIQS-DB に収録された 1,025 物質について、同定・定量に適した質量スペクトルの選

択を行った。1,025 物質の定量イオン質量数 m と電荷 z の比(いわゆる m/z)の頻度分

布を図2に示した。1,025 物質について、m/z は 41~498 の範囲に 289 パターンが存在

し、m/z=85 では 26 物質が競合していた。カラム保持時間(RT)ごとに m/z の重複の

有無をひとつひとつ確認したところ、4 物質では互いの重複を解消できる定量イオンを

選択することができなかった。また、互いに位置異性体である 2 物質(1-クロロナフ

タレン(化管法 2-19)と 2-クロロナフタレン(化管法&化審法対象外))はカラム保

持時間(RT)および m/z のいずれにおいても分離ができないが、機器の分析感度がほ

ぼ等しいことから、両異性体の合計値としてならば定量可能であることがわかった。

以上によって、AIQS-DB に収録された 1,020 物質は同定・定量に適した m/z が選択

でき、そのうち本研究の対象 289 物質(群)359 物質もすべて同定・定量に適した m/z

が決定できた。

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

1≦ 1<≦2 2<≦3 3<≦4 4<≦5 5<≦6 6<

次ピークとの時間差 [sec]

物質

数 [-]

6

図2 AIQS-DB に収録された 1,025 物質の定量イオン m/z の頻度分布

(3)③GC/MS AIQS-DB 法における検量線

本研究の対象 289 物質(群)359 物質について、上記で決定したカラム保持時間 RT で

の定量イオンの m/z を用いて、検量線の作成と定量下限値の確認を行った。S/N 比 10

となる濃度を目安に検量線の最小濃度を決め、順次 10 mg/L まで約 5 濃度分の混合標

準液を調製して検量線の作成を行った。

その結果、検量線の決定係数は、2 物質を除いて 0.90 以上の良好な値となり、検量

線に高い線形性が確認できた。また、決定係数が 0.90 を下回った 2 物質についても、

0.82(政令番号 1-224:N,N-Dimethyldodecylamin=N-oxide)および 0.72(同 2-77:

p-phenetidine)であり、定量精度はやや劣るものの、検出レベルでの存在有無の確認

程度の半定量分析は行える可能性は十分にあると考えられた。

また、検量線の定量下限 LOQc を調べた結果、359 物質のうちの 337 物質では

0.1mg/L(注入液)まで定量可能であることが明らかになり、すなわち、元の試料水を

1,000 倍濃縮することを想定すれば、0.1µg/L(=0.1 ppb)まで定量分析できる可能性

が示されたことになる。環境中の共存物質マトリクスによる影響については次項で検

討した。

以上のように、本調査で GC/MS AIQS-DB 法の適用性が確認された化管法 289 物

質(群)の 359 物質/化審法の優先評価化学物質 36 物質/旧第三種指定化学物質 128 物

質の GC カラム保持時間 RT、定量イオンおよび確認イオン m/z、定量下限および定量

上限の例を表5に示した。なお、化管法と化審法の重複を除けば、物質(群)ベースでは

387 物質が適用対象となるが、本調査では各物質の毒性値に基づく目標検出下限値の

検討は行っていないことや、河川水の際水地点や季節等によって共存物質マトリクス

の影響は未知数であることもあり、上記の数字は GC/MS AIQS-DB 法の適用可能性が

示された最大値である。それにしても、このような大規模な包括一斉分析法の条件が

明らかになったことは、今後の環境モニタリングデータの蓄積に大いに貢献できるも

のと考えられる。

0

5

10

15

20

25

30

定量イオンのm/z

物質

7

表5 GC/MS AIQS-DB 法の適用性が確認された化管法/化審法対象物質の例

整理番号 化管法化管法化管法化管法 化審法化審法化審法化審法 旧化審法旧化審法旧化審法旧化審法 化合物名化合物名化合物名化合物名 保持時間保持時間保持時間保持時間 定量定量定量定量イオンイオンイオンイオン 確認確認確認確認イオンイオンイオンイオン①①①① 確認確認確認確認イオンイオンイオンイオン②②②② 定量下限定量下限定量下限定量下限 定量上限定量上限定量上限定量上限

政令番号政令番号政令番号政令番号 優先評価優先評価優先評価優先評価 三監三監三監三監 minminminmin m/zm/zm/zm/z m/zm/zm/zm/z m/zm/zm/zm/z µgµgµgµg////LLLL µgµgµgµg////LLLL

1 1-5 アクリル酸2-(ジメチルアミノ 8.5 58 71 42 0.1 10

2 1-6 アクリル酸2-ヒドロキシエチル 7.2 55 73 86 1 10

3 1-7 ● ● アクリル酸ノルマル-ブチル 6.5 73 55 56 0.01 10

4 1-15 ● アセナフテン 17.6 153 154 152 0.01 10

5 1-16 2,2’-アゾビスイソブチロニトリル9.2 69 41 39 0.1 10

6 1-17 オルト-アニシジン 12.1 123 108 80 0.025 5

7 1-18 ● アニリン 8.1 93 65 92 0.01 10

8 1-19 ● 1-アミノ-9,10-アントラキノン28.5 223 167 139 0.1 10

9 1-21 5-アミノ-4-クロロ-2-フェニルピリダジン28.5 266 313 283 0.1 10

10 1-22 5-アミノ-1-[2,6-ジクロロ25.2 367 369 213 0.1 10

11 1-23 ● パラ-アミノフェノール 16.3 134 149 93 0.1 10

12 1-24 ● メタ-アミノフェノール 14.0 109 80 81 0.01 10

13 1-25 4-アミノ-6-ターシャリ-ブチル23.1 198 199 144 0.01 10

14 1-29 1-アリルオキシ-2,3-エポキシプロパン6.4 57 41 58 0.2 10

15 1-32 ● アントラセン 22.1 178 176 152 0.01 10

16 1-34 3-イソシアナトメチル-3,5 19.1 110 123 81 0.1 10

17 1-37 ● ● 4,4’-イソプロピリデンジフェノール26.6 213 228 119 0.1 10

18 1-39 ● N-イソプロピルアミノホスホン 26.3 303 288 260 0.01 10

19 1-40 イソプロピル=2-(4-メトキシビフェニル29.8 258 300 199 0.1 10

20 1-41 ● 3’-イソプロポキシ-2-トリフルオロメチルベンズアニリド26.4 173 145 281 0.01 10

21 1-46 エチル=2-[4-(6-クロロ 33.2 299 243 372 0.1 10

22 1-47 O-エチル=O-(6-ニトロ 26.2 286 200 232 0.05 10

23 1-48 ● O-エチル=O-4-ニトロフェニル29.7 157 169 323 0.1 10

24 1-49 N-(1-エチルプロピル)-2 25.1 252 281 161 0.02 10

25 1-50 S-エチル=ヘキサヒドロ-1 18.4 126 55 187 0.01 10

26 1-51 2-エチルヘキサン酸 11.0 73 88 57 0.1 10

27 1-53 ● エチルベンゼン 5.8 91 106 65 0.1 5

28 1-54 O-エチル=S-1-メチルプロピル24.8 195 139 166 0.1 10

29 1-64 ● 2-(4-エトキシフェニル)- 33.4 163 135 107 0.1 10

30 1-69 2,3-エポキシプロピル=フェニルエーテル14.3 94 150 77 0.01 10

31 1-73 ★ 1-オクタノール 10.1 56 69 84 0.01 10

32 1-74 パラ-オクチルフェノール 21.6 107 206 108 0.01 10

33 1-76 ● イプシロン-カプロラクタム 13.6 113 85 55 0.01 10

34 1-78 2,4-キシレノール 11.5 107 122 121 0.01 10

35 1-79 ● 2,6-キシレノール 10.8 122 107 91 0.01 10

36 1-80 ★ キシレン 5.9 91 106 105 0.1 5

37 1-81 キノリン 13.4 129 102 50 0.025 5

38 1-83 ★ クメン 7.0 105 120 79 0.1 5

39 1-86 ★ クレゾール 9.6 108 107 79 0.01 10

40 1-86 クレゾール 10.1 107 108 77 0.02 20

41 1-89 ● ● クロロアニリン 11.2 127 129 92 0.025 5

42 1-89 ● クロロアニリン 12.6 127 129 92 0.01 10

43 1-90 ● 2-クロロ-4-エチルアミノ- 21.4 200 215 173 0.01 10

44 1-91 2-(4-クロロ-6-エチルアミノ24.4 225 240 198 0.1 10

45 1-92 4-クロロ-3-エチル-1- 35.5 383 171 197 0.01 10

46 1-93 2-クロロ-2’-エチル-N-(24.2 162 238 146 0.01 10

47 1-95 3-クロロ-N-(3-クロロ- 25.0 372 337 418 1 10

48 1-96 1-({2-[2-クロロ-4-( 34.6 265 323 267 0.2 10

49 1-97 ● 1-クロロ-2-(クロロメチル 12.3 125 127 106 0.1 10

50 1-100 2-クロロ-2’,6’-ジエチル 26.5 162 176 238 0.05 10

355 2-91 ● 6-メチル-1,3-ジチオロ[ 25.9 206 234 148 0.01 10

356 2-92 2-メチル-5-ニトロアニリン 19.2 152 106 77 0.1 10

357 2-94 2-メチル-1,1’-ビフェニル 29.7 181 166 165 0.01 10

358 2-96 4,4’-メチレンビス(N,N- 28.7 254 253 134 0.1 10

359 2-99 ● りん酸(2-エチルヘキシル)ジフェニル29.3 251 55 70 0.1 10

1013 ● 1,2,5,6,9,10-Hexabromocyclododecane35.7 239 159 319 0.1 10

1014 Cholestanol 35.7 233 215 388 0.2 5

1015 Dimethomorph Z 35.7 301 387 165 0.2 10

1016 Imibenconazole 36.1 125 82 253 0.5 10

1017 Indeno(1,2,3-cd)pyrene 36.1 276 138 277 0.01 10

1018 n-C32H66 36.2 85 71 57 0.2 20

1019 Dibenzo(a,h)anthracene 36.2 278 139 279 0.01 10

1020 Fluthiacet-methyl 36.5 403 56 84 0.1 10

1021 Benzo(ghi)perylene 36.7 276 138 277 0.01 10

1022 Stigmasterol 36.7 412 300 351 0.5 5

1023 n-C33H68 37.1 85 71 57 0.2 20

1024 Temephos 37.1 466 125 203 0.2 10

1025 beta-Sitosterol 37.3 414 396 329 0.5 5

8

(4)④GC/MS AIQS-DB 法における共存物質マトリクス影響の調査

共存物質マトリクスの要因として、実際の複数の河川水をサンプリングして、GC/MS

AIQS-DB 法への適用条件と同様の固相抽出濃縮法により各試料の前処理を行い、河川

水濃縮液を作成した。調査対象とした 359 物質のうちから抜き出した 192 物質の混合

標準溶液に河川水濃縮液を添加して、定量値に与える河川水中の共存物質マトリクス

影響を調べた結果を図3に示した。192 物質中 177 物質は標準偏差 1σの近似値とし

て用いた 20%tile 値~80%tile 値の範囲がマトリクス効果 80%~120%の範囲内に収

まり、定量値に対して大きな影響を及ぼさないことが明らかになった。

また、河川水中の共存物質マトリクスの影響を受けやすい物質は、表6に示したよ

うな一部の農薬類やエステル類などであった。

図3 河川水中の共存物質によるマトリクス効果

表6 河川水中の共存物質マトリクスの影響を受けやすい物質

50

0

1 5 10 15 20 25 30 35 40 187 192

100

150

200

250

300

マト

リク

ス効

果M

E%

物質(マトリクスの影響の強い順)

※ブランク濃度<1.49 [mg/L]

80

CVmatrix大

ME%大

20%tile

max

min

80%tile

(σ=1近似値)

9試料, 192物質

環境マトリクス中に

定量イオンと

重複する物質あり

192物質混合標準を各物質が1 mg/Lとなるよう環境試料の抽出液に添加

120

政令番号 物質名 保持時間RT 定量イオンm/z

1-125 クロロベンゼン 5.5 112

2-62 テトラブロモメタン 10.0 251

2-2 4-アニシジン 13.0 108

1-301 トルエンジアミン 15.9 122

1-335 N-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド 20.5 109

1-404 ペンタクロロフェノール 21.4 266

1-49 ペンディメタリン 25.1 252

2-99 りん酸(2-エチルヘキシル)ジフェニル 29.3 251

1-458 りん酸トリス(2-エチルヘキシル) 29.5 99

1-355 フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) 30.4 149

1-460 りん酸トリトリル 31.7 368

1-460 りん酸トリトリル 31.9 368

1-460 りん酸トリトリル 32.0 368

1-460 りん酸トリトリル 32.2 368

1-64 エトフェンプロックス 33.4 163

9

一方、河川水中の共存物質によってノイズの値が上昇する現象が確認された。標準

試料に対する定量下限 LOQi と河川水中マトリクス添加試料での S/N 比の上昇から、

環境試料に対する定量下限 LOQenv を算出して図4に示した。その結果、LOQi に比

べ、LOQenv は 10 倍程度の値に上昇することが明らかになり、この方法が適用できる

濃度限界は、元の河川水試料で 1µg/L(=1 ppb)程度までとなる物質が多くなること

が明らかになった。

図4 標準試料に対する定量下限 LOQi と環境試料に対する定量下限 LOQenv の比較

(5)⑤トリプル四重極 LC/MS/MS 法における同定・定量に適した質量スペクトルの

選択

(5-1)試薬の購入と分析標準液の調製

まず、化管法対象物質のうち、ダイオキシン類 1 物質(群)、オゾン層破壊物質 19 物

質(群) 、無機物・金属類であるため原理的に GC/MS や LC/MS/MS への適用が困難な

53 物質(群)および GC/MS AIQS-DB 法一斉分析対象物質 206 物質(群)を除く 220 物質

(群)について、市販試薬の購入ができたものは 203 物質(群)であった。このうち、溶媒

あるいは水に溶解させることができ、分析標準液の調製が可能な物質は 188 物質(群)

であった。また、化管法対象物質のうち今回試薬購入できなかったものが 17 物質(群)

もあり、これらの物質は試薬の開発・市販がまず先に必要である。また、分析溶媒に

溶けないために標準液が調製できない物質が 14 物質(群)あり、これらの分析法の開発

は難しいと思われた。

(5-2)インフュージョン分析による遷移質量スペクトル候補のリストアップ

これらの 188 物質(群)について、それぞれ個別に 2000 ppm 標準液を作成し、LC カ

ラムを通さずに MS/MS に直接注入するインフュージョン(IF)分析によって、同定・

定量に用いるプリカーサーイオン(親)およびプロダクトイオン(子)の候補となり

うる遷移質量スペクトル m/z のリストアップを行った。本調査におけるイオン化法は、

高分子をフラグメント化することなくイオン化できるもっともソフトなイオン化法で

あるため、 LC/MS/MS 分析でもっとも一般的なエレクトロスプレーイオン化

(Electrospray ionization: ESI)法を採用することとした。本調査でデフォルト値と

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

101

102

100

10-1

10-2

10-3

10-4

101

102

100

10-1

10-2

10-3

10-4

定量

下限

濃度

LOQ

[mg/

L]

物質(LOQEnvの低い順)

平均 10倍前後

LOQ= ×10 (×希釈倍率)濃度

S/N比

LOQ= ×10 (×希釈倍率)濃度

S/N比

LOQTh

LOQEnv

10

して設定した LC/MS/MS 一斉分析の条件を表7に示す。

イオン強度がポジティブモード(+)の場合は 1.0×105

以上またはネガティブモー

ド(-)の場合は 1.0×104

以上になるプロダクトイオンが確認できることを遷移が確認

できることの判断基準にしたところ、188 物質のうち表8に示す 136 物質(群)について

遷移質量スペクトルの候補をリストアップすることができた。この時点では、1 つの物

質(群)について複数の候補がリストアップされる場合があったが、LC 分離や検量線作

成において、最適な遷移質量スペクトルを選択することにした。また、残りの 52 物質

(群)の中には、(a) MS/MS 分析における検出が不可能な物質と (b) プロダクトイオン

の強度が低い物質とがある。これらをさらに LC/MS/MS で分析しようとする際には、

大気圧化学イオン化(Atmospheric pressure chemical ionization: APCI)法の適用を検

討することもありうるが、本調査では GC/MS 法によって無極性~中極性の主な物質は

先にカバーされていることもあり、今回は APCI 法の検討は行わなかった。

(5-3)LC カラムでの分離性

インフュージョン分析で遷移質量スペクトルの候補がリストアップできた 136 物質

(群)について、LC カラムで分離を行った際のピークの分離性を調べた。リストアップ

された遷移質量スペクトル候補のうち、0.5 mg/L で分析を行った際に、応答強度が特

に高かった遷移をプリカーサーやプロダクトイオンとして選定した。基本的には 1 物

質につき最大 4 遷移までとしたが、鎖状構造をもつ物質については、構造ごとに遷移

質量スペクトルを選定することとした。その結果、このうち 66 物質(群)については、

定量可能な分離ピークが確認でき、さらに次項の検討によって信頼性の高い検量線が

作成できることが明らかになった。これら 66 物質(群)を表9に示す。また、イオン化

は行えるが LC カラム分離ができないことが判明した 24 物質を表10に示したが、こ

れらの物質については、今後、性質の異なる LC 分離カラムを用いて分離の可能性を

検討することが望ましい。なお、66 物質のイオン化モードについて調べたところ、プ

ロトンが付加しやすい官能基を有する化合物に適したポジティブモード(+)による物

質が 57 物質、プロトンを放出しやすい官能基を有する化合物に適したネガティブモー

ド(-)による物質が 9 物質あった。

LC カラムでの分離性を示す保持時間の確認を行ったところ、表7の (1) 60 分メソ

ッドでは検出が見られない時間が多く存在した。このため、グラジエント条件を変更

して(2) 18 分メソッドおよび(3) 20 分メソッドについて検討した。このときの遷移質量

スペクトルと LC 保持時間の例を一覧にしたものを表11に、また、LC 保持時間の分

布を図5に示した。設定した約 18 分の分析時間内で各物質の保持時間 RT は、16 min

~18 min において遷移質量スペクトル数が多い意外には比較的均一に分布していた。

従って、LC カラムでの分離は分析メソッドのグラジエントを 99%A において 2 min

伸ばし、分析時間を 20 分とすることで比較的良好に行えると考えられた。

また、LC カラム分離によって遷移質量スペクトルがリストアップできた 66 物質の

うち、検量線の適用範囲を決定した 20 物質以外の 46 物質のなかには、分離カラムへ

の保持が良好でなく、ピーク形状の悪い物質があったため、LC カラムの変更によりピ

ーク形状の改善を検討した。①Hypersilgold(C18 カラム、Thermo)、②Scherzo

11

SM-C18(C18+イオン交換、 Imtakt)、③Shim-pack XR-Phenyl(C8+phenyl、

SHIMADZU)の3種類の LC 分離カラムを比較したところ、分離できた物質数に大き

な違いはなかったが、イオン性の高い物質の分離を得意とする Imtakt 社の Scherzo

SM-C18 カラムでは、1-236(除草剤アイオキシニル)や 2-86(殺虫剤レスメトリン)

の分離ができなかった。LC カラムによってピークの形状や強度が異なる物質もあり、

それぞれ最適なカラムを選択すれば分離可能になると考えられるが、一斉分析の観点

からは同一のカラム条件でできるだけ多くの物質を分析できる必要があり、この点で

はさらに物質数を増やして検討する必要がある。

表7 LC/MS/MS の分析条件

LC/MS/MS Analysis Condition 装置 Thermo Scinetific TSQ Quantum Access MAX 分離カラム Thermo Hypersil Gold (50×2.1mm, 1.9µm) Oven Temp. 40ºC Flow rate 0.2 mL/min 試料注入液量 5 µL 移動相 A: MeOH, B: 2mM HCOONH4 グラジエント (60min) (1) 1%A --(5min)--1%A--(4min)--60%A--(15min)--75%A--(30min)

--99%A--(0.01min)--1%A--(4.99min)--1%A (18min) (2) 1%A --(0.5min)--1%A--(3.5min)--40%A--(6min)--90%A--(6.1min)

--99%A--(0.4min)--1%A--(1.5min)--1%A (20min) (3) 1%A --(0.5min)--1%A--(3.5min)--40%A--(6min)--90%A--(6.1min)

--99%A--(2.4min)--1%A--(1.5min)--1%A イオン化法 エレクトロンスプレーイオン化法(ESI) スプレー電圧 ポジティブモード 3000V、ネガティブモード 2500V シースガス圧力 50 Arb 補助ガス圧力 25 Arb キャピラリー温度 220ºC 脱溶媒ガス温度 450ºC 衝突ガス圧力 1.5 mTorr 測定モード Timed SRM with EZ Method

表8 遷移質量スペクトルの候補がリストアップできた 136 物質

対象法令 政令番号

化管法対象物質

1-2, 1-3, 1-4, 1-9, 1-10, 1-12, 1-14, 1-20, 1-26, 1-27, 1-28, 1-30, 1-35, 1-36, 1-38, 1-42, 1-52, 1-57, 1-58, 1-59, 1-65, 1-67, 1-68, 1-84, 1-85, 1-98, 1-99, 1-108, 1-115, 1-122, 1-123, 1-124, 1-127, 1-130, 1-131, 1-136, 1-141, 1-142, 1-143, 1-145, 1-150, 1-169, 1-172, 1-174, 1-175, 1-183, 1-199, 1-205, 1-206, 1-210, 1-221, 1-226, 1-227, 1-228, 1-229, 1-231, 1-232, 1-236, 1-244, 1-245, 1-259, 1-262, 1-264, 1-267, 1-268, 1-275, 1-276, 1-277, 1-278, 1-280, 1-281, 1-282, 1-283, 1-291, 1-298, 1-303, 1-324, 1-328, 1-333, 1-341, 1-342, 1-343, 1-358, 1-360, 1-362, 1-364, 1-381, 1-389, 1-396, 1-399, 1-400, 1-401, 1-403, 1-408, 1-409, 1-410, 1-429, 1-434, 1-437, 1-446, 1-454, 1-455, 1-461, 2-1, 2-3, 2-5, 2-6, 2-12, 2-15, 2-16, 2-18, 2-25, 2-26, 2-28, 2-30, 2-31, 2-35, 2-37, 2-42, 2-44, 2-51, 2-52, 2-53, 2-65, 2-67, 2-68, 2-74, 2-75, 2-81, 2-84, 2-86, 2-89, 2-93, 2-95, 2-97, 2-98

12

表9 LC/MS/MS 法の同定・定量に用いる遷移質量スペクトルが選択できた 66 物質

対象法令 政令番号

化管法対象物質

1-2, 1-4, 1-20, 1-26, 1-27, 1-28, 1-35, 1-38, 1-52, 1-67, 1-115, 1-124, 1-130, 1-141, 1-143, 1-169, 1-172, 1-174, 1-183, 1-205, 1-228, 1-231, 1-236, 1-244, 1-277, 1-291, 1-298, 1-358, 1-362, 1-364, 1-396, 1-403, 1-408, 1-410, 1-429, 1-434, 1-446, 1-454, 1-455, 2-3, 2-5, 2-15, 2-18, 2-25, 2-26, 2-28, 2-30, 2-31, 2-35, 2-37, 2-42, 2-44, 2-51, 2-52, 2-53, 2-65, 2-67, 2-68, 2-74, 2-75, 2-81, 2-86, 2-89, 2-95, 2-97, 2-98

表10 これまでに LC カラム分離ができないことが判明した 24 物質

対象法令 政令番号

化管法対象物質 1-3, 1-12, 1-30, 1-36, 1-65, 1-84, 1-99, 1-122, 1-123, 1-210, 1-226, 1-232, 1-245, 1-259, 1-275, 1-276, 1-282, 1-303, 1-333, 1-342, 2-1, 2-12, 2-84, 2-93

表11 LC/MS/MS 法における遷移質量スペクトルと LC 保持時間の例

政令番号 プリカーサー プロダクト CE モード 保持時間 定量下限

m/z m/z eV pos.=1, neg.=0 min µg/L

1-002 72.3 55.3 11 1 0.8 50

72.3 44.5 31 1 250

1-004 306.1 55.4 22 1 4.5 250

306.1 127.1 15 1 50

306.1 199.0 11 1 250

1-020 62.1 44.6 10 1 1.2 50

1-026 58.1 41.6 10 1 1.7 50

1-027 203.0 104.1 24 1 5.8 10

203.0 175.0 17 1 10

1-028 99.2 43.5 5 1 2.0 50

1-035 234.2 111.1 13 1 12.3 250

217.1 69.3 18 1 10

217.1 111.1 9 1 50

1-038 649.8 294.6 24 1 14.2 250

649.8 292.6 22 1 250

649.8 632.8 12 1 50

1-052 238.1 91.2 29 1 13.1 1

400.1 149.9 21 1 10

400.1 237.9 9 1 10

1-067 166.1 57.3 15 1 0.8 10

166.1 75.2 11 1 10

240.1 75.2 17 1 250

1-115 350.1 154.1 11 1 13.2 10

350.1 197.0 5 1 10

1-124 605.2 302.9 12 1 11.7 250

303.1 125.0 32 1 1

303.1 185.0 13 1 1

1-130 200.9 142.9 17 0 5.8 250

199.0 140.9 18 0 50

1-141 199.1 111.1 19 1 6.4 10

199.1 128.1 9 1 1

1-143 201.1 156.1 24 1 6.2 50

201.1 80.2 32 1 10

201.1 108.1 20 1 10

1-169 233.0 46.5 17 1 9.5 50

233.0 72.3 18 1 10

1-172 376.1 161.0 27 1 14.8 10

376.1 133.0 32 1 10

376.1 190.0 14 1 0.1

13

図5 LC/MS/MS 法におけるカラム保持時間 RT の分布(66 物質)

(6)⑥トリプル四重極 LC/MS/MS 法における検量線

LC カラム分離によって遷移質量スペクトルがリストアップできた 66 物質について、

S/N 比 20 となる濃度を目安に検量線の最小濃度を決め、順次 0.1 mg/L 程度まで 6 濃

度の混合標準溶液を調製し、各濃度区について N=2 で検量線を作成した。

次に、検量線と同時に遷移質量スペクトルごとに定量下限 LOQi を確認したところ、

注入液で 0.1µg/L まで分析が可能であった遷移質量スペクトルをもつ物質が 4 物質、

1µg/L までが 18 物質、10µg/L までが 26 物質、50µg/L までが 15 物質、250µg/L まで

が 3 物質あった。環境中の試料水を濃縮してから分析に供することを想定すれば、い

ずれも高感度分析が可能であること明らかになった。一方で複数の遷移質量スペクト

ルを指定している物質については、同じ物質であっても定量下限 LOQi が異なる物質

があり、このような遷移質量スペクトルは定量を行うための遷移質量スペクトル(定

量イオン)としては適さない可能性が考えられた。

これらを正確な検量線とみなすには、複数の遷移質量スペクトル同士の面積比や各

濃度におけるばらつきについて検証する必要があるため、これらの中から保持時間 RT

に偏りが出ないように 20 物質を選定し、詳細検証を行った。まず、S/N 比が 100 以上

となる濃度を目安に検量線を作成する最小濃度を決め、そこから順次 1 mg/L 程度まで

最大約 10 濃度区に亘って混合標準溶液を調製し、N=3~5 で検量線を作成して、直線

性や相関性、ばらつきを詳しく調べた。その結果、高濃度域では線形相関の相関係数

R2が 0.98 以下となり直線性がやや低下するものや、低濃度域では RFD50%以上とな

りデータのばらつきが大きくなる場合があった。このように検量線の精査を行って、

定量下限と定量上限を検証し、検量線の適用範囲を決定した結果を表12に示した。

0

10

20

30

40

50

60

70

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

LCカラムでの保持時間 (min)

累積

物質

14

表12 精査した 20 物質における検量線の適用範囲

(7)⑦トリプル四重極 LC/MS/MS 法における共存物質マトリクス影響の調査

上記の(6)において検量線の精度を詳細に検証した 20 物質について、作成した検

量線を用いて、河川水中の環境マトリクスが分析値に与える影響を調べた。神奈川県

内の実際の河川水のうち、GC/MS における分析で検出される物質の比較的少ない 2 地

点および多い 3 地点の計 5 地点を選び、(8)で検討した方法によって固相抽出濃縮試

料を作成し、地点ごとに標準添加法によりマトリクス効果を調べた。マトリクス効果

は以下の式によって算出した。

マトリクス効果(ME)[%]= 100×−標準試料の面積値

環境試料の面積値標準添加試料の面積値

添加濃度は物質ごとに定量下限や検出濃度より適正な濃度を 0.01 mg/L、0.25mg/L、

政令番号 保持時間 イオン プリカーサ プロダクト CE モード 定量下限 定量上限 検量線 濃縮回収率 CV[%]

min m/z m/z eV pos.=1, neg.=0 µg/L µg/L R^2

5.8 定量 203.0 104.1 24 1 5 50 0.97 92.4% 15.0

定性 203.0 175.0 17 1 5 50 0.97

6.4 定量 199.1 128.1 9 1 10 100 0.99 110.3% 15.2

定性 199.1 111.1 19 1 10 100 0.99

6.2 定量 201.1 108.1 20 1 2.5 100 0.99 75.1% 10.0

定性 201.1 80.2 32 1 2.5 100 0.99

9.5 定量 233.0 72.3 18 1 1 100 0.99 100.5% 14.3

定性 233.0 46.5 17 1 1 100 0.99

10.5 定量 248.9 181.9 16 1 1 250 1.00 98.1% 11.9

定性 248.9 159.9 19 1 1 250 1.00

13.8 定量 439.0 172.8 20 1 1 250 1.00 80.4% 13.2

定性 439.0 91.1 31 1 1 250 1.00

8.9 定量 212.1 119.1 22 1 2.5 1000 1.00 84.3% 11.0

定性 212.1 77.2 35 1 2.5 1000 1.00

6.3 定量 435.1 182.0 19 1 2.5 100 0.99 105.2% 9.0

定性 435.1 139.1 40 1 2.5 100 0.97

0.7 定量 237.1 72.3 14 1 1 250 0.99 90.9% 13.7

定性 237.1 90.2 7 1 1 250 0.99

7.2 定量 199.1 106.2 26 1 2.5 500 0.99 81.2% 12.9

定性 199.1 77.3 46 1 2.5 500 0.99

11.1 定量 397.0 350.8 21 1 1 250 1.00 100.1% 15.0

定性 397.0 254.8 34 1 1 250 1.00

15.2 定量 378.7 338.8 14 0 1 10 0.99 91.0% 8.9

定性 379.0 338.8 15 0 1 10 0.98

14.5 定量 431.1 105.1 32 1 1 250 1.00 85.2% 12.9

定性 431.1 119.1 21 1 1 250 1.00

16.8 定量 329.1 313.0 36 1 5 500 1.00 65.8% 14.0

定性 329.1 207.9 34 1 5 500 1.00

8.6 定量 295.0 279.9 18 0 1 250 0.99 97.6% 10.6

定性 295.0 109.0 32 0 1 250 0.99

8.5 定量 319.1 224.9 21 1 5 1000 1.00 103.5% 9.4

定性 319.1 141.1 39 1 5 1000 0.99

6.4 定量 157.0 130.1 25 1 10 250 0.99 87.4% 9.8

定性 157.0 77.2 35 1 10 250 0.99

5.4 定量 157.1 83.2 10 1 10 50 0.98 92.8% 17.6

定性 139.1 69.3 17 1 10 50 0.98

10.0 定量 412.8 368.8 12 0 1 100 0.99 108.4% 13.6

定性 412.8 168.8 20 0 1 100 0.99

6.4 定量 192.2 160.0 17 1 1 250 0.99 99.7% 10.3

定性 192.2 132.1 29 1 1 250 0.99

2-074

1-205

2-095

2-075

1-027

1-143

1-429

1-141

1-446

1-183

2-028

2-026

2-051

2-053

2-081

1-169

2-089

1-174

2-003

1-434

15

0.5mg/L、0.1 mg/L の中から選び、分析を行った。解析した結果、GC/MS 分析で検出

された物質数の少ない 2 地点では 20 物質中 18 物質について ME が 80%~120%とな

り、マトリクスの影響は小さかった。GC/MS 分析で検出された物質数の多い 3 地点に

ついては ME が高かったものの、その変動係数は比較的小さく(ME が 80%~120%範

囲外の 70%以上で CV20%以下)なった。従って、試料中の目的成分の濃度は、検量線

から得られる見かけ濃度を次式によって割戻すことで、マトリクスの影響を考慮した

濃度として定量可能と考えられた。

試料中濃度=ME/100

かけ濃度検量線から得られる見

(8)⑧汎用の固相抽出剤 Sep-Pak PS-2 を用いた濃縮回収技術の適用性

まず、GC/MS AIQS-DB 法で一斉分析可能であることが明らかになった 289 物質

(群)359 物質のうち、物性の異なる 157 物質をピックアップして混合標準溶液を調製し、

純水中へ添加して、Sep-Pak PS-2 により固相抽出濃縮を行った際の、窒素吹付濃縮工

程におけるを回収率に与える諸条件の影響を図6に示した。窒素吹付濃縮工程におい

て、①濃縮容器内壁の洗いの回数を減らす、②アセトンからヘキサンへの溶媒転換を

省略する、③窒素吹付流量を変化させる、④最終濃縮液量を極端に小さくしないとい

った条件改善や⑤窒素吹付濃縮工程における溶液濃度の変化による影響について検討

を行った。その結果、窒素吹付濃縮工程における回収率のロスの要因は、濃縮液中の

濃度が上昇することによって揮発が促進されるために生じることが明らかになり、濃

縮容器の洗い回数を減らすことと濃縮液量を極端に小さくしないことが効果的であり、

これらの改善によって、広範な物性を有する対象 157 物質の窒素吹付工程での回収率

は1物質を除き 70%以上となり、大幅な改善が達成できた(図7)。

次に、固相抽出剤の違いによる試料水からの回収率の違いについて検討した。汎用

の固相抽出剤として実績があり、本調査においても採用している Sep-Pak PS-2 に加え、

疎水性物質から親水性物質を幅広く捕捉できるとして農薬等への適用例が増えている

Oasis-HLB との比較を行った。LogPow が1以下~5以上までの幅広い極性の物質を

対象として検討し、その結果を図8に示した。中には、Oasis-HLB の方が優れた回収

率を示す物質もいくつかあったが、その場合も Sep-Pak PS-2 が極端に劣るというわけ

ではなく、全体的にみれば、回収率の平均値が Oasis-HLB では 70%程度であったの

に対し、 Sep-Pak PS-2 では 80%程度であり、化管法対象物質のような多様な物質を

対象とした一斉分析用としては Sep-Pak PS-2 方が適していると判断できた。

以上の改善検討による固相抽出濃縮工程全体での回収率を図9に示した。5 割程度の

物質については環境省のモニタリングにおいて定量範囲として許容されている回収率

70%~120%の範囲内に収まった。一方、回収率が 50%を下回るような物質や 140%

を超える物質も 2 割弱あるが、いずれも変動係数 CV がそれほど大きな値ではなく、

したがって、あらかじめ回収率を算出しておけば、半定量分析ならば十分に適用可能

なレベルであると考えられた。

また、LC/MS/MS 法で同定・定量を行う対象物質についても、上記(6)で作成し

た検量線を用いて、20 物質を対象に固相抽出濃縮工程における回収率を求めた。その

16

結果を表12および図10に示した。20 物質中 19 物質について、回収率が 70%~

120%の許容範囲内に収まっており、回収率が 70%に満たない 1 物質についても変動

係数 CV が 14%と小さい値であったため、十分に定量可能であると考えられた。

図6 窒素吹付濃縮工程における諸条件の検討

図7 窒素吹付工程における回収率の改善検討

0

50

70707070

100100100100

120120120120

140

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

物質

回収

率[%]

溶媒転換工程:あり

溶媒転換工程:なし

0

50

70

100100100100

120

140

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

物質

回収

率[%]

窒素流量:0.4 L/min

窒素流量:0.5 L/min

窒素流量:0.6 L/min

窒素流量:0.7 L/min

0

50

70

100100100100

120

140

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

物質

回収

率[%]

最終溶液量:0.2mL

最終溶液量:0.4mL

最終溶液量:0.6mL

最終溶液量:0.8mL

0

50

70707070

100100100100

120120120120

140

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17

物質

回収

率[%]

初期濃度:0.01ppm

最初濃度: 0.1ppm

最初濃度: 1ppm

a)a)a)a)溶媒転換溶媒転換溶媒転換溶媒転換のののの影響影響影響影響 b)b)b)b)窒素吹付流量窒素吹付流量窒素吹付流量窒素吹付流量のののの影響影響影響影響

c)c)c)c)溶液濃度溶液濃度溶液濃度溶液濃度のののの影響影響影響影響 d)d)d)d)最終液量最終液量最終液量最終液量のののの影響影響影響影響

0

70707070

100100100100

120120120120

140

1 21 41 61 81 101 121 141

物質

回収

率[%

]

157

50505050

・ヘキサン溶媒転換あり→なし

・窒素吹付流量 0.5 L/mim

・濃縮時最小液量 0.5→1mL

改善後

改善前

17

図8 固相抽出剤 Sep-Pak PS-2 と Oasis-HLB での回収率の比較

図9 固相抽出濃縮工程全体における回収率の改善(GC/MS 対象物質)

0

50

70

100100100100

120

140

-0.90

0.42

1.09

1.44

1.84

1.98

2.27

2.38

2.88

3.11

3.32

3.50

3.77

4.21

4.75

5.50

物質のLogPow [-]

回収

率[%]

8.23

PS-2

HLB

0

50505050

70707070

100100100100

120120120120

140

1 21 41 61 81 101 121 141

物質番号(回収率が高い順)

固相

抽出

にお

ける

回収

率[%

]

157

・ヘキサン溶媒転換あり→なし

・窒素吹付流量 0.5 L/mim

・濃縮時最小液量 0.5→1mL

半定量半定量半定量半定量::::55550000物質物質物質物質((((32323232%%%%))))

定量定量定量定量:::: 80808080物質物質物質物質((((51%51%51%51%))))

改善後

改善前

18

図10 固相抽出濃縮工程全体における回収率(LC/MS/MS 対象物質)

5.まとめと課題

本調査では、化管法対象物質および化審法の優先評価化学物質と旧第三種監視化学

物質について、GC/MS AIQS-DB 法および LC/MC/MS 法を用いた一斉分析の可能性に

ついて検討し、以下のことが明らかになった。

①GC/MS AIQS-DB 法における DB-5ms カラムでの分離性の有無と保持時間

②GC/MS AIQS-DB 法における同定・定量に適した質量スペクトルの選択

③GC/MS AIQS-DB 法における検量線

④GC/MS AIQS-DB 法における共存物質マトリクス影響の調査

以上の検討により、化管法対象物質については、商用 DB 収録済 206 物質(群)に加え、

本調査により新たに 83 物質(群)を加え、計 289 物質(群)が GC/MS AIQS-DB 法により

包括一斉分析できることを示し、それらを分離・同定するための保持時間、質量スペ

クトルおよび検量線と定量下限を明らかにした。また、河川水中の共存物質マトリク

スが対象物質の定量値に大きな影響を及ぼす可能性は低いことを示した。

また、化審法の優先評価化学物質については、36 物質(群)(化管法対象 33 物質(群)、

化管法対象外 3 物質(群))が本研究の AIQS-DB に収録済であり、同じく旧第三種監視

化学物質は 121 物質(群)(化管法対象 95 物質(群)、化管法対象外 26 物質(群))が本研

究の AIQS-DB に収録済であることが確認でき、これにより、計 141 物質(うち 16 物

質は優先評価化学物質および旧三監物質の両方に該当)が GC/MS AIQS-DB 法による

包括一斉分析が可能であることが確認できた。

140

2-051

1-143

1-446

1-183

2-75

2-028

1-205

1-434

2-026

1-174

2-95

2-053

2-003

1-169

1-429

2-089

1-027

2-074

1-141

2-081

120

100

70

50

0

対象物質の化管法政令番号

固相

抽出

にお

ける

回収

率[%

]

19

⑤トリプル四重極 LC/MS/MS 法における同定・定量に適した質量スペクトルの選択

⑥トリプル四重極 LC/MS/MS 法における検量線

⑦トリプル四重極 LC/MS/MS 法における共存物質マトリクス影響の調査

以上の検討により、66 物質(群)について LC/MS/MS 一斉分析が可能であることを示

し、それらを分離・同定するための保持時間、質量スペクトルおよび検量線と定量下

限を明らかにした。また、その他 46 物質についても、LC カラムでの分離性と検量線

の詳細検討を行うことによって、LC/MS/MS 一斉分析が行える可能性があった。

⑧汎用の固相抽出剤 Sep-Pak PS-2 を用いた濃縮回収技術の適用性

以上の検討により、Sep-Pak PS-2 を用いた固相抽出濃縮の回収率が大幅に改善され、

ほとんどの物質が回収率 70%~120%の定量のための許容範囲内に収まり、また、変

動係数も小さく、精度の高い定量が可能であることが確認された。

6.成果の公表と人材育成

本調査の成果は、平成 25 年 3 月に大阪で開催予定の第 47 回日本水環境学会年会に

おいて、3 件の研究発表として公表する予定であり、講演申込ならびに講演要旨集の作

成・提出を行った。また、平成 25 年 6 月に東京で開催予定の International Conference

on Water and Environment Technology 2013 (WET2013)や平成 25 年 9 月に静岡で開

催予定の環境科学会 2013 年会においても、本調査の成果の一部を公表する予定である。

また、本調査の実施にあたり、大学院修士課程の院生 3 名をメンバーに加えている

が、本報告書における GC/MS および LC/MS/MS を用いた千種類を超える化学物質の

環境モニタリング技術の大部分は、プロジェクト代表の亀屋および副代表の小林の指

導の下、これら院生が生み出した成果であり、第 47 回日本水環境学会年会における成

果公表においても、院生のうち 2 名が発表を行うこととなっている。

1) 亀屋隆志, 小池瑛子, 齋藤美穂, 三保紗織, 近藤貴志, 小林剛, 亀屋隆志, 藤江幸

一:河川における約 500 種の生態毒性物質の一斉分析とハザード比, 第 47 回日本水

環境学会年会講演集,1-J-14-1 (2013.3.11 大阪市旭区) 発表予定

2) 小池瑛子, 齋藤美穂, 三保紗織, 亀屋隆志, 近藤貴志, 小林剛, 藤江幸一:生態毒性

物質のハザード比と藻類・甲殻類急性毒性試験結果の比較, 第 47 回日本水環境学会年

会講演集,1-J-14-2 (2013.3.11 大阪市旭区) 発表予定

3) 齋藤美穂, 三保紗織, 小池瑛子, 近藤貴志, 小林剛, 亀屋隆志, 藤江幸一:

LC/MS/MS による PRTR 対象物質同時分析法の適用範囲, 第 47 回日本水環境学会年会

講演集,2-J-11-4 (2013.3.12 大阪市旭区) 発表予定

20

7.経費の執行

本調査で計上した直接経費 2,700,000 円は、すべて「2.事業費/物品費・消耗品

費」であった。直接経費の執行状況を表13に示した。

表13 本調査における直接経費の執行状況 (単位:円)

8.スケジュール管理

表14に本調査におけるスケジュール管理について示した。当初計画に従って実施

したが、調査途中で政府による化審法の優先評価物質の指定(最新版は平成 24 年 12

月 28 日)があったことや、水生生物毒性を有する化審法の旧第三種指定化学物質を本

調査の検討対象に加えたことにより若干の追加作業が発生した。しかしながら、本調

査は追加作業を含めて順調に進行し、予定された調査期間内に終了した。

表14 スケジュール管理の状況

H24.8 9 10 11 12 H25.1 2 3

○0 企画、準備 ● ●●

①GC/MS 分離性 ●● ●●● ▲

②GC/MS スペクトル ●●● ▲

③GC/MS 検量線 ●●● ●● ▲

④GC/MS マトリクス ● ●●● ●

⑤LC/MS/MS スペクトル ● ●●● ● ▲▲

⑥LC/MS/MS 検量線 ● ●●● ●● ▲▲▲

⑦LC/MS/MS マトリクス ●● ●●● ● ▲

⑧濃縮回収 ● ●●● ●●●

⑨報告書作成 ● ●● ●

整理番号 支払日品名 収入 支出類別内訳 支出 残額

(税込み) 1.試薬 2.標準ガス 3.機器部品4.分析器具 (税込み) (税込み)

予算 2,700,000 832,240 72,500 385,200 1,410,060

① 11/22 ネジ口瓶ほか 56,385 933,775 990,160 1,709,840

② 11/22 窒素 3,234 3,234 1,706,606

③ 11/22 窒素 3,234 3,234 1,703,372

④ 11/22 純ヘリウム 40,425 40,425 1,662,947

⑤ 12/25 アセトンほか 534,775 534,775 1,128,172

⑥ 12/25 碍子ほか 93660 277,460 371,120 757,052

⑦ 12/25 窒素 3,234 3,234 753,818

⑧ 12/25 内部標準物質 36,000 36,000 717,818

⑨ 1/25 酸化フェンタすず標準品ほか 101,565 101,565 616,253

⑩ 1/25 Oasis HLB Plusほか 341,008 341,008 275,245

⑪ 1/25 窒素 3,234 3,234 272,011

⑫ 1/25 HPLCカラムほか 83,265 83,265 188,746

⑬ 1/25 窒素2本 6,468 6,468 182,278

⑭ 2/1 メタノールほか 44,015 44,015 138,263

⑮ 2/1 ネジ口瓶ほか 9,828 115,510 125,338 12,925

⑯ 2/1 CHROMACOLパッキン 12,925 12,925 -

計 2,700,000 819,843 59,829 417,110 1,403,218 2,700,000 -

差額 12,397 12,671 -31,910 6,842 -