10
「中学校・高等学校における理系進路選択に関する調査研究 最終報告書」等の概要について (報告書全文は国立教育政策研究所ホームページ(http://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/seika_digest_h24.html)に掲載) 1.調査研究の目的・概要 (1)調査研究の目的 中学校と高等学校の段階の生徒が、各教科の学習にどの程度の意義や有用性を感じて進路を選択 したり理系・文系を選択しているのか、また、学校や学校外での教育的活動や様々な環境要因がど の程度関係しているのか等の実態を全国規模の意識調査によって把握し、理系・文系進路選択に関 わる課題を明らかにする。 また、当該調査の結果に基づき、よりよい進路選択のためには学習に対する高い意欲や態度が必 要であるとの仮定の 、学校訪問調査によって優れた取組を抽出する。 (2)調査研究の概要 以下のとおり、中高生を対象とした意識調査や学校訪問調査等を行い、分析・考察を行った。 【研究期間:平成22~24年度、研究代表者:後藤顕一(基礎研究部総括研究官)】 全国規模の意識調査 中高生が各教科の学習にどの程度の意義や有用性を感じて進路や理系・文系を選択している のか、学校や学校外での教育的活動や様々な環境要因がどの程度関係しているのか等の実態を 把握するため、平成 23 9 月に全国の中学校及び高等学校を対象に、学校及び生徒に対する 質問紙調査を行った(回答数:中学校 485 校、中学3年生 6,410 人。高等学校 488 校、高校1 年生 33,071 人、高校3年生 33,127 人。)。 全国意識調査結果に基づく学校訪問調査 全国意識調査において特徴的な結果が得られた学校、具体的には、よりよい進路選択のため には学習に対する高い意欲や態度が必要であるとの仮定の下、 ・文系においても数学や理科の学習が「大好き」「好き」と意識する生徒の割合が高い学校 ・数学や理科の学習が将来生きていく上で「とても重要だ」「重要だ」と答えた生徒の割合が 高い学校 等を抽出し、平成 24 11 月~平成 25 1 月に訪問調査を行った(パイロット調査として 3 校、本調査として中学校 6 校、高等学校 9 校、教育センター1 か所)。 学校訪問調査では、学習機会、体制、学習指導、意識等、具体的な取組事例や効果が上がっ ている要因を抽出し、研究会等における議論により示唆をまとめた。 研究の総括としての公開研究会の実施 上記の全国意識調査の概要報告や学校訪問調査のまとめや総括を行うため、公開研究会を平 25 1 12 日(土)に開催した。

平成24年度研究成果 中学校・高等学校における理 …ア.高校の3校に2校では、文系・理系のコース分けを実施している。理系・文系のコースを選択

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Page 1: 平成24年度研究成果 中学校・高等学校における理 …ア.高校の3校に2校では、文系・理系のコース分けを実施している。理系・文系のコースを選択

「中学校・高等学校における理系進路選択に関する調査研究

最終報告書」等の概要について (報告書全文は国立教育政策研究所ホームページ(http://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/seika_digest_h24.html)に掲載)

1.調査研究の目的・概要

(1)調査研究の目的

中学校と高等学校の段階の生徒が、各教科の学習にどの程度の意義や有用性を感じて進路を選択

したり理系・文系を選択しているのか、また、学校や学校外での教育的活動や様々な環境要因がど

の程度関係しているのか等の実態を全国規模の意識調査によって把握し、理系・文系進路選択に関

わる課題を明らかにする。 また、当該調査の結果に基づき、よりよい進路選択のためには学習に対する高い意欲や態度が必

要であるとの仮定の 、学校訪問調査によって優れた取組を抽出する。 (2)調査研究の概要

以下のとおり、中高生を対象とした意識調査や学校訪問調査等を行い、分析・考察を行った。

【研究期間:平成22~24年度、研究代表者:後藤顕一(基礎研究部総括研究官)】

① 全国規模の意識調査

中高生が各教科の学習にどの程度の意義や有用性を感じて進路や理系・文系を選択している

のか、学校や学校外での教育的活動や様々な環境要因がどの程度関係しているのか等の実態を

把握するため、平成 23 年 9 月に全国の中学校及び高等学校を対象に、学校及び生徒に対する

質問紙調査を行った(回答数:中学校 485 校、中学3年生 6,410 人。高等学校 488 校、高校1

年生 33,071 人、高校3年生 33,127 人。)。

② 全国意識調査結果に基づく学校訪問調査

全国意識調査において特徴的な結果が得られた学校、具体的には、よりよい進路選択のため

には学習に対する高い意欲や態度が必要であるとの仮定の下、 ・文系においても数学や理科の学習が「大好き」「好き」と意識する生徒の割合が高い学校 ・数学や理科の学習が将来生きていく上で「とても重要だ」「重要だ」と答えた生徒の割合が

高い学校 等を抽出し、平成 24 年 11 月~平成 25 年 1 月に訪問調査を行った(パイロット調査として 3

校、本調査として中学校 6 校、高等学校 9 校、教育センター1 か所)。 学校訪問調査では、学習機会、体制、学習指導、意識等、具体的な取組事例や効果が上がっ

ている要因を抽出し、研究会等における議論により示唆をまとめた。

③ 研究の総括としての公開研究会の実施

上記の全国意識調査の概要報告や学校訪問調査のまとめや総括を行うため、公開研究会を平

成 25 年 1 月 12 日(土)に開催した。

Page 2: 平成24年度研究成果 中学校・高等学校における理 …ア.高校の3校に2校では、文系・理系のコース分けを実施している。理系・文系のコースを選択

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2.研究成果の概要

(1)全国規模の意識調査結果のまとめ

全国意識調査の結果の詳細については、既に報告書を作成し、本研究所のホームページに掲載

している(http://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/zokuseichi-report.pdf)。このため、ここでは調査

結果の一部を示すとともに、報告書作成後に追加的に分析を行った結果を示すこととする。

① 学校質問紙調査及び生徒質問紙調査の結果(一部)

ア.高校の3校に2校では、文系・理系のコース分けを実施している。理系・文系のコースを選択

させる時期は、第1学年の 10~12 月が最も多い。コースに分かれる時期は、大半が第2学年の

4月からであるが、第3学年の4月からという学校も少数見られる【図1】。高校3年の理系コ

ースで履修する生徒の割合は 22%(男子 27%、女子 16%)、文系コースで履修する生徒の割合

は 46%(男子 38%、女子 54%)である【図2】。

【図1】理系・文系のコース選択の時期(高等学校) N=267

【図2】あなたの学習コース(高校生)

2 15 5

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文系・理系コースを選ばせる時期 文系・理系コースに分かれる時期

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高校1年全体

高校1年男子

高校1年女子

高校3年全体

高校3年男子

高校3年女子

1理系(数学・理科などの科目を多く学習する)コース

2文系(国語・社会などの科目を多く学習する)コース

3専門(農業・工業・商業・水産・家庭・看護・情報・福祉・音楽・体育・美術・英語)コース

4上のいずれでもないコース (例「理系・文系に分かれていない」など)

無回答等

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3

イ.各教科の学習が「大好き」「好き」と意識している生徒の割合は、中学校では,地域規模区分

間で、大きな差は見られない。高校では、教科によって、大学志願者割合区分間で顕著な差が

見られ、大学志願者割合の高い学校の生徒ほど高い割合を示す傾向が見られる。この傾向が顕

著に見られる教科は、「地理・歴史」「公民」「数学」「外国語」である。理科については、「物理」

「化学」に関して、「大好き」「好き」と意識している生徒の割合が、大学志願者 9 割以上の学

校でやや高い【図3-①、②】。

【図3-①】あなたの好きな教科-高校1年生(大学志願者割合区分別:国語~理科)

6

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0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

① 国語〔大学志願9割以上〕

① 国語〔9割未満6割以上〕

① 国語〔6割未満3割以上〕

① 国語〔3割未満〕

② 地理・歴史〔大学志願9割以上〕

② 地理・歴史〔9割未満6割以上〕

② 地理・歴史〔6割未満3割以上〕

② 地理・歴史〔3割未満〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔大学志願9割以上〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔9割未満6割以上〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔6割未満3割以上〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔3割未満〕

④ 数学〔大学志願9割以上〕

④ 数学〔9割未満6割以上〕

④ 数学〔6割未満3割以上〕

④ 数学〔3割未満〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔大学志願9割以上〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔9割未満6割以上〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔6割未満3割以上〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔3割未満〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔大学志願9割以上〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔9割未満6割以上〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔6割未満3割以上〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔3割未満〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔大学志願9割以上〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔9割未満6割以上〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔6割未満3割以上〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔3割未満〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔大学志願9割以上〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔9割未満6割以上〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔6割未満3割以上〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔3割未満〕

1大好き 2好き 3どちらともいえない 4嫌い 5大嫌い 無回答等

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4

【図3-②】あなたの好きな教科-高校1年生(大学志願者割合区分別:外国語~美術)

ウ.各教科が将来生きていく上で重要な学習かについて、「とても重要だ」「重要だ」と意識して

いる生徒の割合も、中学校では地域規模区分間で大きな差は見られない。高校では、教科によ

って、大学志願者割合区分間で顕著な差が見られ、大学志願者割合の高い学校の生徒ほど高い

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⑨ 外国語〔大学志願9割以上〕

⑨ 外国語〔9割未満6割以上〕

⑨ 外国語〔6割未満3割以上〕

⑨ 外国語〔3割未満〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔大学志願9割以上〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔9割未満6割以上〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔6割未満3割以上〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔3割未満〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔大学志願9割以上〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔9割未満6割以上〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔6割未満3割以上〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔3割未満〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔大学志願9割以上〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔9割未満6割以上〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔6割未満3割以上〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔3割未満〕

⑬ 保健体育〔大学志願9割以上〕

⑬ 保健体育〔9割未満6割以上〕

⑬ 保健体育〔6割未満3割以上〕

⑬ 保健体育〔3割未満〕

⑭ 音楽〔大学志願9割以上〕

⑭ 音楽〔9割未満6割以上〕

⑭ 音楽〔6割未満3割以上〕

⑭ 音楽〔3割未満〕

⑮ 美術〔大学志願9割以上〕

⑮ 美術〔9割未満6割以上〕

⑮ 美術〔6割未満3割以上〕

⑮ 美術〔3割未満〕

1大好き 2好き 3どちらともいえない 4嫌い 5大嫌い 無回答等

Page 5: 平成24年度研究成果 中学校・高等学校における理 …ア.高校の3校に2校では、文系・理系のコース分けを実施している。理系・文系のコースを選択

5

割合を示す傾向が見られる。この傾向が顕著に見られる教科は、「公民」「外国語」「情報技術」

である。理科については,「物理」「化学」「生物」に関して、「とても重要だ」「重要だ」と意

識している生徒の割合が、大学志願者 9 割以上の学校でやや高い【図4-①、②】。

【図4-①】あなたが将来生きていく上で重要な学習-高校1年生 (大学志願者割合区分別:国語~理科)

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① 国語〔大学志願9割以上〕

① 国語〔9割未満6割以上〕

① 国語〔6割未満3割以上〕

① 国語〔3割未満〕

② 地理・歴史〔大学志願9割以上〕

② 地理・歴史〔9割未満6割以上〕

② 地理・歴史〔6割未満3割以上〕

② 地理・歴史〔3割未満〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔大学志願9割以上〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔9割未満6割以上〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔6割未満3割以上〕

③ 公民(政治,経済,現代社会等)〔3割未満〕

④ 数学〔大学志願9割以上〕

④ 数学〔9割未満6割以上〕

④ 数学〔6割未満3割以上〕

④ 数学〔3割未満〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔大学志願9割以上〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔9割未満6割以上〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔6割未満3割以上〕

⑤ 理科-物理(力,運動,光,電気等)〔3割未満〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔大学志願9割以上〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔9割未満6割以上〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔6割未満3割以上〕

⑥ 理科-化学(物質の構成,変化,分析等)〔3割未満〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔大学志願9割以上〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔9割未満6割以上〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔6割未満3割以上〕

⑦ 理科-生物(動植物の成長やつくり等)〔3割未満〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔大学志願9割以上〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔9割未満6割以上〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔6割未満3割以上〕

⑧ 理科-地学(地層,地震,天気,天体等)〔3割未満〕

1とても重要だ 2重要だ 3 重要でない 4 重要でない 無回答等

Page 6: 平成24年度研究成果 中学校・高等学校における理 …ア.高校の3校に2校では、文系・理系のコース分けを実施している。理系・文系のコースを選択

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【図4-②】あなたが将来生きていく上で重要な学習-高校1年生 (大学志願者割合区分別:外国語~道徳)

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45

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22

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36

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23

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⑨ 外国語〔大学志願9割以上〕

⑨ 外国語〔9割未満6割以上〕

⑨ 外国語〔6割未満3割以上〕

⑨ 外国語〔3割未満〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔大学志願9割以上〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔9割未満6割以上〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔6割未満3割以上〕

⑩ 技術(材料,加工,機器,栽培等)〔3割未満〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔大学志願9割以上〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔9割未満6割以上〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔6割未満3割以上〕

⑪ 情報技術(情報処理,情報活用等)〔3割未満〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔大学志願9割以上〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔9割未満6割以上〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔6割未満3割以上〕

⑫ 家庭(家族・育児・家庭,衣食住等)〔3割未満〕

⑬ 保健体育〔大学志願9割以上〕

⑬ 保健体育〔9割未満6割以上〕

⑬ 保健体育〔6割未満3割以上〕

⑬ 保健体育〔3割未満〕

⑭ 音楽〔大学志願9割以上〕

⑭ 音楽〔9割未満6割以上〕

⑭ 音楽〔6割未満3割以上〕

⑭ 音楽〔3割未満〕

⑮ 美術〔大学志願9割以上〕

⑮ 美術〔9割未満6割以上〕

⑮ 美術〔6割未満3割以上〕

⑮ 美術〔3割未満〕

⑯ 道徳〔大学志願9割以上〕

⑯ 道徳〔9割未満6割以上〕

⑯ 道徳〔6割未満3割以上〕

⑯ 道徳〔3割未満〕

あ 将 要 ⑨ ⑯ 高校 願

1とても重要だ 2重要だ 3 重要でない 4 重要でない 無回答等

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② 追加的に行った分析結果のまとめ

全国意識調査の結果のうち普通科高校について、コース選択の有無によって、また、理系・文

系の選択の時期や分割時期の違いによって、各教科(科目)に対する生徒の好感度、重視度、中

学時代からの好感度の変化、将来の進路意識に違いがあるのかを明らかにすべく、追加分析を行

った。 (注)分析に当たっては、普通科高校に在籍する3年生の回答を、在籍校の大学志願者割合で区分して比較を

行った。全教科(科目)について分析したが、以下では代表的な教科として数学の分析結果を記載した。

ア.コース選択の有無による生徒の意識の違い(高校3年生)

教科(科目)に対する生徒の好感度・重視度は、コース選択のある学校の生徒の方が高い

傾向が見られた【表1】。また、教科(科目)の好感度の中学時代から高校時代への変化につ

いては、コース選択の有無による統一的な特徴は見られなかった【表2】。さらに、職業面の

意識についてはコース選択しない方がより明確な傾向が見られたが、進学面の意識については、

コース選択のある学校の生徒の方が、より高い学校段階への進学を希望するようになる傾向

が見られた【図5、図6】。

大学志願者割合 選択なし 選択あり 選択なし 選択あり

全体 2.79 3.12 2.57 2.64

9割以上 3.06 3.30 2.58 2.68

6割以上9割未満 2.96 3.10 2.52 2.60

3割以上6割未満 2.68 2.90 2.55 2.62

3割未満 2.64 2.76 2.60 2.60

注:黄色マークは統計的有意差が確認されたことを示し、高い方を

赤太字で示した。(有意水準5%)

表1 好感度・重視度の比較 〔数学での結果〕

好感度 重視度

6割以上 3割以上

9割未満 6割未満

選択なし -0.16 -0.34 -0.28 -0.24 0.15

選択あり -0.23 -0.29 -0.24 -0.15 0.17

注:黄色マークは統計的有意差が確認されたことを示し、高い方を赤太字で

示した。(有意水準5%)

表2 好感度変化の比較 〔数学での結果〕

3割未満9割以上全体大学志願者割合

24.0%

20.3%

41.6%

40.8%

23.9%

27.1%

10.6%

11.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

選択なし

選択あり 図5 将来つきたい職業の意識の明確さ

とても明確 ある程度明確 明確でない

10.7%

2.5%

19.4%

7.1%

6.3%

2.2%

55.1%

71.7%

6.0%

12.0%

2.5%

4.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

選択なし

選択あり 図6 進学希望の学校段階

進学しない 専門学校まで 短大まで 大学まで 修士課程まで 博士課程まで

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イ.コース選択・分割時期の違いによる生徒の意識の違い(高校3年生)

教科(科目)の好感度や重視度は、2年時に選択して3年4月から分割した学校の生徒の

方が、1年時に選択して2年4月から分割した学校の生徒に比べ、高くなる傾向が確認でき

た【表3、表4】。また、教科(科目)に対する好感度の中学時代から高校時代への変化につ

いては、ほとんどのケースにおいて分割・選択時期による差が確認できなかった【表5】。さ

らに、職業意識の明確さについては、選択・分割時期による有意な分布の違いまでは確認で

きないものの、2年時に選択して3年4月から分割した学校の生徒の方がより明確な傾向が

あった【図7】。進学を希望する学校段階については、選択・分割時期による有意な分布の違

いまでは確認できないものの、2年時に選択して3年4月から分割した学校の生徒の方が、多

様化している傾向が見られた【図8】。

大学志願者割合 1年 2年 2年春 3年春 1年 2年 2年春 3年春 1年 2年 2年春 3年春

全体 3.12 3.23 3.13 3.29 3.56 3.67 3.56 3.69 2.68 2.82 2.69 2.89

9割以上 3.29 3.39 3.29 3.40 3.62 3.85 3.62 3.85 2.93 2.95 2.93 2.95

6割以上9割未満 3.10 2.99 3.11 2.99 3.57 3.40 3.58 3.40 2.60 2.61 2.61 2.61

3割以上6割未満 2.89 3.06 2.91 3.21 3.40 3.44 3.40 3.50 2.46 2.72 2.46 2.92

3割未満 2.70 3.04 2.70 3.04 3.44 3.48 3.44 3.48 2.43 2.35 2.43 2.35

注:黄色マークは統計的有意差が確認されたことを示し、高い方を赤太字で示した。(有意水準5%)

表3 好感度の比較 〔数学での結果〕

選択時期 分割時期

全体 理系 文系

選択時期 分割時期 選択時期 分割時期

大学志願者割合 1年 2年 2年春 3年春 1年 2年 2年春 3年春 1年 2年 2年春 3年春

全体 2.63 2.71 2.64 2.74 2.87 2.94 2.87 2.96 2.39 2.50 2.40 2.53

9割以上 2.68 2.71 2.68 2.72 2.90 2.95 2.90 2.96 2.44 2.48 2.45 2.48

6割以上9割未満 2.60 2.78 2.61 2.78 2.85 2.86 2.86 2.86 2.34 2.71 2.35 2.71

3割以上6割未満 2.61 2.71 2.61 2.81 2.86 2.95 2.86 3.01 2.39 2.51 2.39 2.61

3割未満 2.61 2.68 2.61 2.68 2.92 2.82 2.92 2.82 2.50 2.48 2.50 2.48

注:黄色マークは統計的有意差が確認されたことを示し、高い方を赤太字で示した。(有意水準5%)

表4 重視度の比較 〔数学での結果〕

全体 理系 文系

選択時期 分割時期 選択時期 分割時期 選択時期 分割時期

大学志願者割合 1年 2年 2年春 3年春 1年 2年 2年春 3年春 1年 2年 2年春 3年春

全体 -0.24 -0.16 -0.24 -0.16 -0.25 -0.17 -0.25 -0.17 -0.23 -0.15 -0.23 -0.15

9割以上 -0.29 -0.21 -0.29 -0.21 -0.30 -0.20 -0.30 -0.20 -0.29 -0.22 -0.29 -0.22

6割以上9割未満 -0.24 -0.32 -0.24 -0.32 -0.24 -0.34 -0.24 -0.34 -0.25 -0.29 -0.25 -0.29

3割以上6割未満 -0.16 -0.12 -0.16 -0.12 -0.19 -0.17 -0.19 -0.17 -0.14 -0.08 -0.14 -0.08

3割未満 0.12 0.24 0.12 0.24 0.14 0.21 0.14 0.21 0.11 0.29 0.11 0.29

注:黄色マークは統計的有意差が確認されたことを示し、高い方を赤太字で示した。(有意水準5%)

表5 好感度変化(高校時代の好感度-中学時代の好感度)の比較 〔数学での結果〕

全体 理系 文系

選択時期 分割時期 選択時期 分割時期 選択時期 分割時期

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ウ.追加的に行った分析結果のまとめ

・ 上記ア、イより、理系・文系のコース選択の有無や選択・分割時期については、教科(科

目)に対する生徒の好感度・重視度や進路意識を培う観点からは、コース選択を設けないよ

りも設けた方が、また、1年時に選択して2年4月から分割するよりも、2年時に選択して

3年4月から分割する場合の方がメリットは多いと考えられる。 (注)今回の分析では、教科(科目)の習得度や実際の進学実績などは分析対象としていない。

・ 1年時にコースを選択して2年4月から分割することは、早めの選択により自分の将来に

向けた準備の遂行や意識の明確化を図る狙いがあると考えられるが、生徒の教科(科目)へ

の意識や進路意識を見ると、その効果が必ずしも表れていない。 このため、生徒のキャリア意識の形成支援や、各教科(科目)における指導方法の改善な

どの面において、一層の工夫を図る必要があると考えられる。

20.8%

20.2%

21.2%

20.1%

41.2%

40.7%

42.2%

40.7%

26.2%

27.4%

25.1%

27.5%

11.8%

11.8%

11.6%

11.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

3年4月分割

2年4月分割

2年時選択

1年時選択

図7 将来つきたい職業の意識の明確さ

とても明確 ある程度明確 明確でない 全く明確でない

2.7%

2.1%

3.9%

2.1%

8.6%

6.5% 10.2%

6.4%

2.3%

2.2%

2.5%

2.2%

65.7%

73.0%

64.1%

73.0%

13.8%

12.2%

13.1%

12.2%

6.9%

4.2%

6.2%

4.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

3年4月分割

2年4月分割

2年時選択

1年時選択 図8 進学希望の学校段階

進学しない 専門学校まで 短大まで 大学まで 修士課程まで 博士課程まで

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(2)全国意識調査結果に基づく学校訪問調査のまとめ

訪問調査から、効果が上がってきた要因と考えられる取組内容を整理すると、以下のようにま

とめることができた。 新しいと考えられる取組 これまでも尊重してきた取組

A 教育課程に関

係する事項

・汎用的な力を意識した取組

・わかる授業に向けての取組

・体験を重視した取組

・生徒が主体の学習指導

・問を発する生徒の育成

・わかるまで指導徹底

・授業についていけない生徒への配慮

・探究活動の重視

・基本的な学習習慣の確立

・書かせる指導の徹底

・授業のねらいの明確化

B 外部との連携

等に関係する事

・中学生に向けての大学教官の研究講話

・身近な課題に対するプロジェクト型学習

・地域・保護者への発信

・家庭との連携強化

・面談や家庭訪問

A,B 双方にかか

わること

・地域が子供たちを育てていくという気

・体験的な課題研究の実施

(文系も含む)

・生徒がわからないでいることを放置し

ない

(講習指導,面談指導,こまめな試験,

添削指導,学習テスト)

・体験的な大学訪問,職場訪問

・教師と生徒との信頼関係の構築

学校訪問調査の結果及び公開研究会から得られた示唆を整理すると、以下のとおりである。 【汎用的な力をはぐくむ取組】

○ことばを大切にしている学校が多い。 (教師と生徒や生徒と生徒による授業での巧みなやりとりや、ことばを紡ぎながら授業中に知が

構成されていくような授業の進行・展開、「語り尽くす」学校文化、巧みな添削指導と的を射

たコメント、イベントとしての生徒弁論大会) ○論理構成能力を全ての教科科目で意識的に育てて活用しようとしている。 (考え抜く楽しさの共有、学校文化、課題研究の発表) 【きめの細かいわかる授業に向けての取組】

○きめの細かいわかる授業に向けて丁寧な指導がなされている(他者との認め合い、授業について

いけない生徒への配慮、失敗の許容)。また、教員間の関係が良好であることも見逃せない。 【学ぶ意義を実感できるような体験を重視した取組】

○学ぶ意義を実感できるような体験活動を重視し、主体的な学びを尊重しながら、他者と関わる取

組(協働的な取組)を多く取り入れている。