73
2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017 試験;5.3.5.2.62.7.6.7.1 試験方法の概略 治験依頼者名 Organon Inc. 申請資料中の該当 箇所分冊番号 11 開発のフェーズ 第Ⅱ及びⅢ相試験 ・スフェンタニル麻酔下で心筋の血行再建術, 大動脈又は僧帽弁疾患の手術を受ける患者におい ,Org 9426 の安全性及び血行動態に対する作用を検討する. ・心臓手術を受ける患者において,手術直後の機械的換気(812 時間)を容易にする目的で Org 9426 持続注入を行う場合の必要量及び安全性を検討する. Org 9426 持続注入時,自然回復時及び回復後の血漿中及び尿中薬物濃度を測定する.代謝物濃度も測 定する. 非盲検臨床試験 1)選択基準: 11870 歳の男性及び妊娠していない女性 2ASA 分類が Class 23 又は 4 で,冠動脈バイパス移植手術(CABG),若しくは大動脈又は 僧房弁疾患の手術を予定している患者 2)除外基準: 118 歳未満又は 71 歳以上の患者 2ASA 分類が Class 1 又は 5 の患者 3気管の視認又は挿管を妨げる異常あるいは気道閉塞を有する患者 4問診歴,一般臨床所見若しくは血漿中又は尿中 hCG 検査により妊娠していると診断された 女性 5重要な腎,肝又は神経筋疾患を有する患者 6降圧薬によりコントロールされなかった高血圧の病歴を有する患者(収縮期血圧 140 mmHg 以上,拡張期血圧 90 mmHg 以上) 7治験責任医師により病的な肥満と診断された患者 8ベンジルアルコール,麻薬性鎮痛薬又はその他の麻酔時に使用される薬物に対するアレルギ ーを有する患者 9長期間抗ヒスタミン薬を投与されている患者 10)Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型糖尿病),薬剤不応の甲状腺疾患等の重要な代謝疾患を有す る患者,アシドーシス又はアルカローシス状態にある患者 11)筋弛緩剤の作用に影響する可能性のある薬剤(抗痙攣薬,アミノグリコシド系又はポリペプ チド系抗生物質)を投与されている患者 12)オルガノン社により承認されていない他の治験に被験者として参加している患者 13)治験に対する同意が得られない患者 Org 9426 100 mg/10 mL/バイアル

2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

182

2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017 試験;5.3.5.2.6]

2.7.6.7.1 試験方法の概略 項 目 内 容

治験依頼者名 Organon Inc. 申請資料中の該当

箇所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ及びⅢ相試験

目 的

・スフェンタニル麻酔下で心筋の血行再建術,大動脈又は僧帽弁疾患の手術を受ける患者におい

て,Org 9426 の安全性及び血行動態に対する作用を検討する. ・心臓手術を受ける患者において,手術直後の機械的換気(8~12 時間)を容易にする目的で Org 9426

持続注入を行う場合の必要量及び安全性を検討する. ・Org 9426 持続注入時,自然回復時及び回復後の血漿中及び尿中薬物濃度を測定する.代謝物濃度も測

定する. 試 験 の 種 類 非盲検臨床試験

1)選択基準: (1) 18~70 歳の男性及び妊娠していない女性 (2) ASA 分類が Class 2,3 又は 4 で,冠動脈バイパス移植手術(CABG),若しくは大動脈又は

僧房弁疾患の手術を予定している患者

対 象 患 者

2)除外基準: (1) 18 歳未満又は 71 歳以上の患者 (2) ASA 分類が Class 1 又は 5 の患者 (3) 気管の視認又は挿管を妨げる異常あるいは気道閉塞を有する患者 (4) 問診歴,一般臨床所見若しくは血漿中又は尿中 hCG 検査により妊娠していると診断された

女性 (5) 重要な腎,肝又は神経筋疾患を有する患者 (6) 降圧薬によりコントロールされなかった高血圧の病歴を有する患者(収縮期血圧 140 mmHg

以上,拡張期血圧 90 mmHg 以上) (7) 治験責任医師により病的な肥満と診断された患者 (8) ベンジルアルコール,麻薬性鎮痛薬又はその他の麻酔時に使用される薬物に対するアレルギ

ーを有する患者 (9) 長期間抗ヒスタミン薬を投与されている患者 (10)Ⅰ型糖尿病(インスリン依存型糖尿病),薬剤不応の甲状腺疾患等の重要な代謝疾患を有す

る患者,アシドーシス又はアルカローシス状態にある患者 (11)筋弛緩剤の作用に影響する可能性のある薬剤(抗痙攣薬,アミノグリコシド系又はポリペプ

チド系抗生物質)を投与されている患者 (12)オルガノン社により承認されていない他の治験に被験者として参加している患者 (13)治験に対する同意が得られない患者

試 験 薬 剤 Org 9426 100 mg/10 mL/バイアル

Page 2: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

183

2.7.6.7.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 麻酔導入 60~90 分前に,硫酸モルヒネ 0.1 mg/kg 及びスコポラミン 0.4 mg を筋肉内投与する.

必要であればニトログリセリン経皮吸収型貼付剤を使用する.Ca チャネル遮断薬又はβ遮断

薬をいずれか,若しくは併用で投与してもよい. 2)麻酔導入

100%酸素吸入下で適量のスフェンタニルの静脈内投与により導入する. 3)スキサメトニウム投与

麻酔導入後に,挿管用量としてスキサメトニウム 1~1.5 mg/kg(合計 120 mg まで)を投与す

る. 4)気管挿管

スキサメトニウム投与後に臨床上適切な時点で挿管を行う.挿管直前に拇指の TOF 刺激に対

する反応を肉眼で観察し,記録する. 5)カテーテル装着

気管挿管後の臨床上適切な時点で肺動脈カテーテルを装着する. 6)治験薬投与

①スキサメトニウム投与から 20 分以上経過している,②血行動態が安定し,肺動脈カテーテル

が挿入されている,③4 回の TOF 反応が得られている. 以上の基準すべてに適合した場合に,初回量として Org 9426 0.6 mg/kg を生理食塩水 5 mLで希釈し,5 秒かけて単回静脈内投与する.

7)麻酔維持 100%酸素吸入及びスフェンタニル追加投与により麻酔を維持する.必要であれば,血行動態

評価の終了後にベンゾジアゼピン系薬物(ジアゼパム,ミダゾラム等)及び吸入麻酔薬を投与

する. 8)筋弛緩の維持

適度の筋弛緩を維持するために,心肺バイパス中及び前後に TOF 刺激に対する拇指の反応の

自然回復が 初に肉眼で観察された時点で,維持用量として Org 9426 0.3 mg/kg を投与する.

すべての患者に対して,心肺バイパス開始直前及び終了時に Org 9426 0.3 mg/kg を投与する. 9)神経筋機能の回復

手術終了時に残存する筋弛緩に対しては拮抗剤を投与しない.すべての患者に対して,手術室

から出る前及び SICU に入る前に,維持用量として Org 9426 0.3 mg/kg を再度投与する. 10)鎮痛薬及び鎮静薬投与

必要であれば,手術後の機械的換気時に鎮痛目的で麻薬,鎮静目的でベンゾジアゼピン系薬剤

を投与する.バルビツール酸系薬物を投与してもよい. 11)SICU 内での筋弛緩維持

後の維持用量投与後 TOF 反応が 初に回復した時点で,Org 9426 の持続注入を初期速度

0.9 mg/kg/hr で開始する.注入速度は TOF 刺激に対する 1 回の反応を維持するように調節する.

8~12 時間後に注入を停止し,その後 15 分毎に TOF 刺激に対する反応を肉眼で観察する.4回の刺激に対し同等の反応が生じた時間を記録する.

目 標 症 例 数 30 例 心筋血行再建手術群,大動脈又は僧帽弁手術群,各群 15 例 症例数の設定根拠 - 実 施 症 例 数 11 例 冠動脈バイパス移植手術(CABG)群 10 例,大動脈疾患群 1 例

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

184

2.7.6.7.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

観察項目及び評価

方 法

薬物動態 血漿中薬物濃度;SICU 内での本剤持続注入開始直前,注入開始から 2,4,6,8,10 及び 12時間後,注入終了時,注入終了から 15,30 分,1,2,3,4,6,8,10,12,15 及び 18 時間

後の血漿中未変化体及び代謝物(17-desacetyl 体)濃度(ガスクロマトグラフィーにより測定) 尿中薬物濃度;持続注入開始から 4,8 及び 12 時間後,並びに注入終了から 4,8 及び 12 時間

後の尿中未変化体及び代謝物(17-desacetyl 体)濃度(ガスクロマトグラフィーにより測定) 安全性

血行動態;スキサメトニウム投与から少なくとも 15 分後,本剤初回投与直前及び投与 2,5分後に,収縮期血圧,拡張期血圧,肺毛細血管楔入圧,中心静脈圧及び心拍出量を肺動脈カテ

ーテルから直接に記録する.平均動脈圧,肺動脈圧,心係数,1 回心拍出量,体血管抵抗,肺

血管抵抗及び左心室 1 回仕事係数を算出する. ヒスタミン関連症状,臨床検査,理学的検査,有害事象(通常手術時にみられる臨床症状は有

害事象として収集しなかった)

統 計 解 析 方 法 本剤初回投与後 2 及び 5 分の血行動態パラメータの投与前値からの変化について,Wilcoxon 符号

付順位和検定を用いて解析を行った. 治 験 責 任 医 師 実 施 施 設 Department of Anesthesiology, Medical university of 治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

185

2.7.6.7.2 試験の流れ

表 2.7.6-122 検査・観察項目及び時期

検査・観察項目 病歴 一般臨床

所見 心拍数 血圧

血行動態

評価 TOF 臨床検査

手術前 ● ● ● ● ●a) スキサメトニウム投与前 ● ● ● スキサメトニウム投与後

2,5,10,15 分

● ●

治験薬の初回量投与前 ● ● ●b),c) 初回量投与後 1,2,3,4,5,10,15,20,25,30 分

● ●

初回量投与後 2,5 分 ● 維持用量投与前,投与後 2分,心肺バイパス開始前

● ●

初回量投与前,持続注入開

始後 0,2,4,6,8,10,12 時間,持続注入終了後

15,30 分後,1,2,3,4,6,8,10,12,15,18 時

●b)

持続注入開始後 4,8,12時間,持続注入終了後 4,8,12 時間

●c)

手術時及び手術後自然回

復時に 15 分間隔 ●

フォローアップ評価(48時間) ● ●a)

a):血液学検査,血液生化学検査,尿検査項目 b):Org 9426 及び代謝物定量用血漿サンプル(6mL)採取 c):Org 9426 及び代謝物定量用尿サンプル(10mL)採取

2.7.6.7.3 症例の構成

登録症例は 12 例であった.治験薬投与前に死亡した 1 例を除く 11 例(CABG 群 10 例,大動脈疾患

群 1 例)に治験薬を投与した.治験薬投与症例を評価対象とした.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

186

2.7.6.7.4 患者背景

治験薬の投与を受けたのはすべて男性であった.またASA分類クラスが 3 の患者が大部分であった表

2.7.6-123).

表 2.7.6-123 患者背景

背景因子 CABG 群 治験薬投与症例 登録症例 症例数 10 11 12

性別 男性 女性

10 0

11 0

12 0

年齢 (歳)

平均±標準偏差

範囲

62±7

49~70

62±6

49~70

61±7

49~70

体重 (kg)

平均±標準偏差

範囲

79±13

54.0~107.0

77±14

54.0~107.0

78±13

54.0~107.0

身長 (cm)

平均±標準偏差

範囲 177±7

170~192

177±7

169~192

177±7

169~192.0

理想体重 (kg)

平均±標準偏差

範囲

72±6

66~85

71±6

65~85

72±6

65~85

人種

白人系 アジア系 黒人系 その他

8 0 2 0

9 0 2 0

10 0 2 0

ASA 分類 Class 1 Class 2 Class 3

0 1 9

0 1

10

0 1

10

2.7.6.7.5 有効性

有効性の評価は実施しなかった.

2.7.6.7.6 血漿中及び尿中薬物濃度

外科集中治療室(SICU)での持続注入開始から 10 時間までの血漿中未変化体濃度推移を表 2.7.6-124

及び図 2.7.6-32に,また持続注入終了後における血漿中未変化体濃度推移を表 2.7.6-125及び図 2.7.6-33

に示した.

TOF 刺激に対する反応が完全に自然回復した時点(T1~T4 がほぼ同じ時点)での血漿中未変化体濃度

を測定した 7 例の中央値は 533 ng/mL,平均値(標準偏差)は 764.0(508.6)ng/mL であった.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

187

表 2.7.6-124 SICU 内持続注入時の血漿中未変化体濃度(ng/mL)

持続注入開始からの時間(時間) n 血漿中未変化体濃度 範囲

0 11 1019±345 634~1940

2 11 3054±1264 1210~4750

4 11 2602±1596 617~6330

6 11 2142±1558 700~5940

8 11 2032±1471 341~5240

10 3 2993±1811 1270~4880 数値は平均±標準偏差

図 2.7.6-32 持続注入開始から 10 時間までの平均血漿中濃度推移 平均-S.D.

表 2.7.6-125 持続注入後の未変化体濃度(ng/mL)

持続注入終了後からの時間(時間) n 血漿中未変化体濃度 範囲

0.25 11 1490±921 644~3720

0.5 11 1383±1086 559~4230

1 11 1175±1130 403~4260

2 10 859±1192 208~4210

3 11 630±854 127~3100

4 11 494±646 97~2320

6 11 344±434 58~1450

8 10 243±284 56~954

10 9 198±188 75~634

12 9 163±162 59~532

15 7 148±148 56~455

18 6 142±123 57~379 数値は平均±標準偏差

持続注入開始からの時間(hr)

血漿

中濃

度(

ng/m

L)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

188

図 2.7.6-33 持続注入終了後における平均血漿中濃度推移 平均-S.D.

本剤の持続注入(12 時間まで)において,平均注入速度は約 8 µg/kg/min であり,また代謝物

(17-desacetyl 体)の蓄積はみられなかった.多くの血漿サンプルについて Org 9426 の 17-desacetyl 体に

対する比は 10:1 以上であった.

本剤持続注入終了から 12 時間以内に,投与量の 38±17%が尿中に排泄された(表 2.7.6-126).持続

注入時,注入終了後のいずれにおいても尿中に 17-desacetyl体は検出されなかった.

表 2.7.6-126 持続注入時及び注入後の投与量及び尿中未変化体量

投与量(mg) 尿中未変化体量(mg) 症例番号

単回投与 a) SICU 内

持続注入 b) 合計 c) 持続注入時

持続注入 終了後

合計 (投与量に対する%)d)

202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 251

270 215 182 231 110 168 282 257 144 230 234

770 477 523 316 282 238 317 247 193 221 358

1040 692 705 547 392 406 599 504 337 451 592

401 135 175 85

215 136 132 88

170 204 105

54 56 54 41 25 14 26 14 59 53 37

456(44) 191(28) 229(33) 126(23) 240(61) 151(37) 158(26) 103(20) 230(68) 258(57) 143(24)

38 ± 17%(平均 ± SD) a):挿管後に投与された初回量,CABG 中及び前後,並びに SICU 搬入前に投与された維持用量 b):SICU 内で持続注入された合計量 c):単回投与及び持続注入による総投与量 d):尿中未変化体量の総投与量に対する割合(%)

持続注入終了後からの時間(hr)

血漿

中濃

度(

ng/m

L)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

189

2.7.6.7.7 安全性

2.7.6.7.7.1 有害事象

1 例で手術前に難治性胸痛,及び予定外の緊急手術実施後に低血圧が現れ,本剤投与前に死亡した.

治験薬投与症例(11 例)中 3 例で有害事象 5 件が報告された.その内訳は,軽度の有害事象 1 件(手術

後の左脚虚血),中程度の有害事象 3 件(手術中の心室性期外収縮,手術後 4 日の胸骨裂開,左脚虚血

の増大),重度の有害事象 1 件(胸腔チューブからの出血)であった.このうち心室性期外収縮及び胸

腔チューブからの出血は本剤と因果関係があると判断された.ヒスタミン遊離が関連する症状(紅斑,

潮紅,気管支痙攣等)は観察されなかった.因果関係別,重症度別の有害事象の発現を 表 2.7.6-127及

び表 2.7.6-128に示す.なお同一症例で複数回同じ有害事象が発現しても 1 件として集計した.

表 2.7.6-127 因果関係別の有害事象(0.6mg/kg / 冠動脈バイパス手術群)

有害事象

明らかにあ

0%

多分あり

0% 可能性あり

20% 多分なし

0% なし

10% 合計

30%

症例数 10 10 10 10 10 10 有害事象発現例数 0 0 2 0 1 3 有害事象発現件数 0 0 2 0 2 4

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

心臓障害 心室性期外収縮 - - 10.0(1/1) - - 10.0(1/1) 血管障害 末梢性虚血 - - - - 10.0(1/1) 10.0(1/1) 傷害、中毒および 処置後出血 - - 10.0(1/1) - - 10.0(1/1) 処置合併症 創し開 - - - - 10.0(1/1) 10.0(1/1)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

190

表 2.7.6-128 重症度別の有害事象(0.6mg/kg / 冠動脈バイパス手術群)

すべての有害事象(発現数 3例 4件) 関連を否定できない有害事象(発現数 2例 2件)

有害事象 軽度

0%

中等度

20%

高度

10%

不明

0%

合計

30%

軽度

0%

中等度

10%

高度

10%

不明

0%

合計

20%

症例数 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 有害事象発現例数 0 2 1 0 3 0 1 1 0 2 有害事象発現件数 0 3 1 0 4 0 1 1 0 2

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

心臓障害 心室性期外収縮 ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1) ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1) 血管障害 末梢性虚血 ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1) ― ― ― ― 0.0(0/0) 傷害、中毒および 処置後出血 ― ― 10.0(1/1) ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1) ― 10.0(1/1) 処置合併症 創し開 ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1) ― ― ― ― 0.0(0/0)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

191

2.7.6.7.7.2 血行動態

CABG群 10 例について,本剤初回投与(0.6 mg/kg)前,投与後 2 分及び 5 分に測定した血行動態パ

ラメータを 表 2.7.6-129に示した.平均動脈圧及び体血管抵抗は本剤投与後に増加傾向を示したが,心

拍出量,1 回心拍出量及び左心室 1 回仕事係数には変化がみられなかった.

表 2.7.6-129 初回量投与前後の血行動態パラメータ

血行動態パラメータ 投与前 投与後 2 分 投与後 5 分

心拍数(bpm) 50±10 48±6 50±4 収縮期血圧(mmHg) 111±18 114±21 121±19

拡張期血圧(mmHg) 50±13 54±12 59±10a)

平均動脈圧(mmHg) 68±10 74±11 82±12 a) 体血管抵抗(dyne・sec・10-2/cm5) 12±3 18±7a) 17±6 a) 肺動脈圧(mmHg) 17±5 16±5 19±5

肺毛細血管楔入圧(mmHg) 14±4 13±3 15±5

中心静脈圧(mmHg) 10±4 10±3 11±4 心拍出量(L/min) 4.1±1.4 3.6±2.2 3.6±1.3 心係数(L/min/m2) 2.1±0.7 1.8±1.1 1.8±0.6 a) 1 回心拍出量(mL/beat) 81±24 74±42 72±24

肺血管抵抗(dyne・sec/cm5) 73±68 90±82 92±50

左心室 1 回仕事係数(g・m/m2) 31±13 32±21 34±12 数値は平均±標準偏差 a):Wilcoxon 符号付順位和検定により投与前値との間に有意差あり(P≦0.05)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験)

192

CABG群 10 例について,本剤初回投与前後の血行動態パラメータの変化率が 30%以上であった症例

数を 表 2.7.6-130に示した.肺血管抵抗は本剤投与後に増加したが,臨床的に意味のある変化ではない

と考えられた.

表 2.7.6-130 初回量投与前後の血行動態パラメータの変化率が 30%以上であった症例数

血行動態パラメータ 低下 上昇

心拍数 1 0 収縮期血圧 0 1 拡張期血圧 0 2 平均動脈圧 0 2 体血管抵抗 0 7 肺動脈圧 2 4 肺毛細血管楔入圧 1 4 中心静脈圧 1 4 心拍出量 2 0 心係数 2 0 1 回心拍出量 2 2 肺血管抵抗 2 7 左心室 1 回仕事係数 2 4

2.7.6.7.8 要約及び結論

心臓手術を受ける成人冠動脈疾患患者に,初回投与量として本剤 0.6 mg/kg を単回静脈内投与し,維

持用量として 0.3 mg/kg を投与した.手術後,集中治療室内で本剤の持続注入を初期速度 15 μg/kg/hr で

開始し,12 時間まで継続した.平均注入速度は 8 µg/kg/min であった.本剤の単回投与及び持続注入に

より,臨床的に意味のある血行動態に対する作用はみられなかった.

本剤の持続注入時の血漿中未変化体濃度は約 2500 ng/mL で,代謝物(17-desacetyl 体)の蓄積はみら

れなかった.TOF 刺激に対する反応が完全に回復した時点での血漿中濃度は 533 ng/mL であった.持続

注入終了から 12 時間以内に投与量の 38%が尿中に排泄された.

本剤投与症例(11 例)中 3 例で有害事象 5 件(手術中の心室性期外収縮,手術後の胸骨裂開,胸腔チ

ューブからの出血各 1 件,手術後の左脚虚血 2 件)が報告された.このうち,心室性期外収縮及び胸腔

チューブからの出血は本剤との因果関係ありと判断された.ヒスタミン遊離に関連した症状はみられな

かった.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

193

2.7.6.8 〔参考資料〕ヒスタミン遊離作用検討試験[021-018 試験;5.3.5.2.7]

2.7.6.8.1 試験方法の概略 項 目 内 容

治験依頼者名 Organon Inc. 申請資料中の該当

箇所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ及びⅢ相試験

目 的

バランス麻酔下の手術患者において以下の検討を行う. ・挿管用量(ED95の 2,3 及び 4 倍量)の単回投与及び維持用量(0.15 mg/kg)の投与による Org 9426

の薬力学 ・高用量の Org 9426 による安全性及び心血管系に対する作用 ・高用量の Org 9426 によるヒスタミン遊離作用

試 験 の 種 類 無作為化/非盲検臨床試験

対 象 患 者

1)選択基準: (1) 18~75 歳の男性又は妊娠していない女性 (2) ASA 分類が Class 1,2 又は 3 の患者 (3) バランス麻酔下で所要時間 1 時間以上の手術を予定している患者 2)除外基準: (1) 18 歳未満又は 76 歳以上の患者 (2) ASA 分類が Class 4 又は 5 の患者 (3) 血漿中 hCG 検査により妊娠の可能性があると判断された女性 (4) 急速導入及び挿管が必要な患者 (5) 動脈カニューレを使用しない手術を受ける患者 (6) 重篤な腎,肝,代謝性又は神経筋疾患を有する患者 (7) 体重が理想体重(IBW)の 130%以上の肥満患者 (8) ベンジルアルコール,麻薬性鎮痛薬又はその他の麻酔時に使用される薬物に対してアレル

ギーを有する患者 (9) 手術前 1 週間に抗ヒスタミン薬,H1受容体拮抗剤又は H2受容体拮抗剤を投与されている患

者 (10)筋弛緩剤の作用に影響する可能性がある薬剤(抗痙攣薬,アミノグリコシド系又はポリペ

プチド系抗生物質)を投与されている患者 (11)他の治験に被験者として参加している患者 (12)治験参加に対して同意が得られない患者

試 験 薬 剤 Org 9426 100 mg/10 mL/バイアル

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

194

2.7.6.8.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 麻酔導入 60~90 分前にジアゼパム 0.1~0.2 mg/kg を経口投与する.動脈カテーテル装着時にミ

ダゾラム 2.5 mg/70 kg を 0.5 mg ずつ静脈内投与する. 2)麻酔導入

ミダゾラム 0.1~0.2 mg/kg を眼瞼反射が消失するまで静脈内投与する.反射消失後,ミダゾラ

ム追加投与及びスフェンタニル 0.5~1.5 μg/kg の静脈内投与を行う.呼気中 pCO2 は 32~42 mmHg に保つ.

3)筋弛緩剤投与 麻酔導入から 2 分後,並びに基準となる TOF が安定した後に,挿管用量として Org 9426,0.6,0.9 又は 1.2 mg/kg を単回静脈内投与する.患者は 6 分間 100%酸素でマスク換気し,呼気中の

pCO2は 32~42 mmHg,食道温は 35.5~37℃に保つ. 4)気管挿管

挿管は Org 9426 投与から 6 分後に行う. 5)麻酔維持

亜酸化窒素/酸素(60/40%)により適切な麻酔深度を維持する.必要に応じて手術時にスフェン

タニルを 0.5~2 μg/kg で単回投与,並びに 0.3~0.6 μg/kg/hr で持続注入する.また挿管後にチオ

ペンタール及びミダゾラムを追加投与する.深部体温は 35.5~37℃に保つ. 6)筋弛緩の維持

手術時に継続して筋弛緩が必要な場合は,T1がコントロール値の 25%に回復する毎に維持用量

として Org 9426 0.15 mg/kg を投与する. 7)神経筋機能の回復

可能な限り自然回復させる.患者を手術室から搬出する時点で T4/T1 が 75%未満の場合には,

残存する筋弛緩に対しネオスチグミン 2.5 mg 及びグリコピロレート 0.5 mg を静脈内投与する.

必要に応じて反復投与する. 目 標 症 例 数 45 例

症例数の設定根拠

他の筋弛緩剤を用いた過去の臨床試験の結果より,目標症例数は試験目的を達成するのに十分で

あると思われた.ベクロニウムを用いた過去の臨床試験で血漿中ヒスタミンレベルの標準偏差は

0.19~1.25 ng/mL であった.この値を参考にすると,目標症例数により 5%の有意差で 1.0 ng/mL以上の差を各群間で検出する検出力は少なくとも 80%はあることが示された.

実 施 症 例 数 52 例 0.6 mg/kg 群 17 例,0.9 mg/kg 群 18 例,1.2 mg/kg 群 17 例

観察項目及び評価

方 法

有効性 10 秒間隔の TOF 刺激(2 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋電図反応の T1より計測した 90%遮

断時間,作用発現時間, 大遮断率,,作用持続時間,自然回復時間を解析した.また拮抗剤

投与後の TOFR,挿管完了時間及び挿管スコアを記録した. 安全性

心血管系機能,ヒスタミン関連症状,血漿中ヒスタミン濃度,臨床検査,一般臨床所見,バイ

タルサイン,有害事象(通常手術時にみられる臨床症状は有害事象として収集しなかった)

統 計 解 析 方 法 筋弛緩作用については 3 群間で Kruskal-Wallis 検定を用いて解析し,有意差がある場合は各群間で

Wilcoxon 順位和検定を用いて解析した.解析対象は有効性評価対象とした. 血漿中ヒスタミン濃度については,群間で順位変換データの反復測定分散分析を用いて解析した.

治 験 責 任 医 師 実 施 施 設 Department of Anesthesiology, University Hospital 治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

195

2.7.6.8.2 試験の流れ

表 2.7.6-131 検査・観察項目及び時期

回復時の単収縮高が Tc に対して下記の%の時刻

検査・観察項目

手術前日まで

治験薬投与前

90 % 遮 断 到 達 時

大遮断到達時

治 験 薬 投 与 30 分 後 ま で

10% 25% 50% 75% 90%

手 術 後 2 日 以 内

患者背景・併用薬 ● Tc ● 治験薬投与時間 ● 90%遮断時間 ● Tm ● 作用発現時間 ● 作用持続時間 ●

Tm(維持投与) ●

筋弛緩作用

作用持続時間(維

持投与) ●

挿管完了時間 ● 挿管 挿管スコア ●

回復時間 ● ● ● ● ● 回復 TOFR ● ● ● ● ●

血圧・心拍数 ● ● ●a) 理学検査 心電図 ●

ヒスタミン濃度 ●b) 臨床検査 ● ● バイタルサイン ● ● 一般臨床所見 ● ● 有害事象 ●

a):投与後 10 分までは 1 分毎,その後 30 分後までは 5 分毎. b):挿管用量投与後,1,3,5 分.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

196

2.7.6.8.3 症例の構成

登録症例は 56 例(0.6 mg/kg群 17 例,0.9 mg/kg群 22 例,1.2 mg/kg群 17 例)で,このうち治験薬投与

前に筋電図データが得られなかった 4 例を除外した 52 例に治験薬を投与した.また,0.6 mg/kg群 2 例,

0.9 mg/kg群 3 例,1.2 mg/kg群 2 例を除いた 45 例(各群 15 例)を有効性評価対象とした(図 2.7.6-34).

治験薬を投与したすべての症例を安全性評価対象とした.治験実施計画書逸脱症例の取扱い及び内訳を

表 2.7.6-132に示した.

登録症例(56 例)

0.6 mg/kg 群:17 例 0.9 mg/kg 群:22 例 1.2 mg/kg 群:17 例

治験薬投与症例(52 例) 除外症例(4 例)

0.6 mg/kg 群:17 例 0.9 mg/kg 群:4 例 0.9 mg/kg 群:18 例 1.2 mg/kg 群:17 例

有効性評価対象(45 例) 安全性評価対象(52 例) 0.6 mg/kg 群:15 例 0.9 mg/kg 群:15 例 1.2 mg/kg 群:15 例

0.6 mg/kg 群:17 例 0.9 mg/kg 群:18 例 1.2 mg/kg 群:17 例

図 2.7.6-34 症例の構成

表 2.7.6-132 有効性評価における治験実施計画書逸脱症例の取扱い及び内訳(重複あり)

用 量 群 症例 採否 理 由

0.6 mg/kg 0.9 mg/kg 1.2 mg/kg 治験薬投与前に筋電図反応が得られなかった

(治験薬を投与せず) 0 4 0 ×

治験薬投与後に測定機器不調により筋電図を

記録できなかった 0 2 0 ×

単収縮刺激(Single twitch)により神経刺激 0 0 1 × 血漿中ヒスタミンを定量できなかった 2 1 1 × 体重が理想体重の 130%以上 1 1 3 ○ 20 秒間隔で TOF 刺激を行った 2 0 2 ○ 治験薬投与後 5 分にイソフルラン投与 0 0 1 ○ 維持用量として 0.075mg/kg 投与 1 0 0 ○ 拮抗剤としてピリドスチグミン投与 1 0 0 ○ 治験薬投与後 6 分以内(3 分後)に挿管 1 0 0 ○ ○:有効性評価対象とする, ×:評価対象から除外

2.7.6.8.4 患者背景

背景因子について各群間に有意な偏りはみられなかった(表 2.7.6-133).

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

197

表 2.7.6-133 患者背景(有効性評価対象)

用量群

背景因子

0.6 mg/kg 0.9 mg/kg 1.2 mg/kg 症例数 15 15 15

検定

性別 男性 女性

8 7

11 4

5 10 P (χ2)=0.09

年齢 (歳)

n 平均±標準偏差

範囲

15 58±18 21~74

15 57±14 29~74

15 57±15 30~73

P (kw)=0.89

体重 (kg)

n 平均±標準偏差

範囲

15 71.7±15.5 46.0~92.0

15 77.2±10.5 54.0~94.0

15 70.0±13.2 48.0~95.0

P (kw)=0.37

身長 (cm)

n 平均±標準偏差

範囲

15 171.4±9.2

157.5~185.4

15 173.8±9.6

157.5~188.0

15 170.9±10.2

155.0~188.0 P (kw)=0.70

理想体重 (kg)

n 平均±標準偏差

範囲

15 64.7±10.2 49.9~79.4

15 67.8±10.2 49.9~81.7

15 63.4±10.1 47.7~81.7

P (kw)=0.49

人種

白人系 アジア系 黒人系 その他

14 0 1 0

14 0 1 0

13 0 1 1

P (χ2)=0.76

ASA 分類 Class 1 Class 2 Class 3

0 8 7

1 7 7

3 5 7

P (χ2)=0.38

P (χ2):χ2検定(P≦0.05 で有意), P (kw):Kruskal-Wallis 検定(P≦0.05 で有意)

2.7.6.8.5 有効性

すべての有効性評価対象症例(45 例)で 90%以上の筋弛緩がみられ,そのうち 38 例(0.6 mg/kg 群

10 例,0.9 mg/kg 群 14 例,1.2 mg/kg 群 14 例)で 100%の 大遮断が得られた.

90%遮断時間は用量依存的に短縮し,1.2 mg/kg群で 0.6 mg/kg群と比較して有意に短かった.作用発現

時間も用量依存的に短縮し,0.9 mg/kg群及び 1.2 mg/kg群で 0.6 mg/kg群と比較して有意に短かった.作

用持続時間は用量依存的に延長し,3 群比較及び各群間比較で有意差がみられた(表 2.7.6-134).

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

198

表 2.7.6-134 筋弛緩作用

挿管用量 n 90%遮断時間(秒) n 作用発現時間(秒) n a) 作用持続時間(分)

0.6 mg/kg 15 147.3±88.3 15 258.7±191.9 13 44.7±20.2

0.9 mg/kg 15 99.3±50.4 15 144.0±90.3 14 65.7±16.3

1.2 mg/kg 15 75.3±44.4 15 112.0±74.2 14 84.6±21.6 3 群間比較 P=0.0121* P=0.0073* P=0.0001*

P (a)=0.1091 P (a)=0.0417* P (a)=0.0239* 2 群間比較 P (b)=0.0066* P (b)=0.0036* P (b)=0.0001*

P (c)=0.0657 P (c)=0.1449 P (c)=0.0094* 数値は平均±標準偏差 3 群間比較:Kruskal-Wallis 検定(P≦0.05 で有意) 2 群間比較:Wilcoxon 順位和検定(P≦0.05 で有意) P (a):0.6 mg/kg 群 vs. 0.9 mg/kg 群 P (b):0.6 mg/kg 群 vs. 1.2 mg/kg 群 P (c):0.9 mg/kg 群 vs. 1.2 mg/kg 群 a):T1の 25%回復までの時間を記録できなかった症例(0.6 mg/kg 群 2 例,0.9 mg/kg 群 1 例,1.2 mg/kg 群 1 例)を除外した. * P≦0.05

挿管スコアは 45 例中 44 例で優秀又は良好であった(表 2.7.6-135).

表 2.7.6-135 挿管スコア

挿管用量 優秀 良好 不良 不可

0.6 mg/kg 14 0 0 1 0.9 mg/kg 14 1 0 0 1.2 mg/kg 15 0 0 0

45 例中 40 例に,維持用量(0.15 mg/kg)を投与した.そのときの 大遮断率の平均値は 96.7%,投与

間隔の平均値は 26.3 分,作用持続時間の平均値は 28.3 分であった(表 2.7.6-136).

表 2.7.6-136 維持用量による筋弛緩作用

項目 測定回数 a) 平均±標準偏差 大遮断率(%) 122 96.7±4.1

投与間隔(分) 83 26.3±12.4 作用持続時間(分) 71 28.3±14.1

a):パラメータの記録及び算出が可能であった測定回数

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

199

2.7.6.8.6 安全性

2.7.6.8.6.1 ヒスタミン濃度

52 例中 46 例で本剤投与前及び投与後 1,3,5 分に動脈血を採取し,血漿中ヒスタミン濃度を定量し

た.投与前後でヒスタミン濃度に有意な変化はみられず,群間でも有意差はみられなかった(表

2.7.6-137).

表 2.7.6-137 本剤投与前後の血漿中ヒスタミン濃度

血漿中ヒスタミン濃度(ng/mL) 挿管用量

投与前 投与後 1 分 投与後 3 分 投与後 5 分 0.6 mg/kg(n=15)a) 0.393±0.647 0.308±0.401 0.298±0.264 0.309±0.411 0.9 mg/kg(n=16)a) 0.217±0.164 0.201±0.118 0.376±0.534 0.306±0.399 1.2 mg/kg(n=15)a) 0.190±0.113 0.325±0.667 0.258±0.253 0.259±0.258 数値は平均±標準偏差 群間 P=0.91,時間 P=0.19,時間*群間 P=0.95 a):血漿中ヒスタミン濃度を定量できなかった症例(0.6 mg/kg 群 2 例,0.9 mg/kg 群 1 例,1.2 mg/kg 群 1 例)及び本

剤投与前データがない症例(0.9 mg/kg 群 1 例,1.2 mg/kg 群 1 例)を除外した.

2.7.6.8.6.2 有害事象

安全性評価対象 52 例中 1 例(1.2 mg/kg群)で腹部及び尻部の紅斑がみられたが,医療用テープに対

する過敏によるもので,本剤投与前の症状であり,本剤との関連性はないと判断された.因果関係別,

重症度別の有害事象の発現を表 2.7.6-138及び表 2.7.6-139に示す.なお同一症例で複数回同じ有害事象

が発現しても 1 件として集計した.

表 2.7.6-138 因果関係別の有害事象(Org9426, 1.2mg/kg 群)

すべての有害事象(発現数 1例 1件)

有害事象

明らかにあ

0%

多分あり

0% 可能性あり

0% 多分なし

0% なし

5.9% 合計

5.9%

症例数 17 17 17 17 17 17 有害事象発現例数 0 0 0 0 1 1 有害事象発現件数 0 0 0 0 1 1

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

皮膚および皮下

組織障害 紅斑 - - - - 5.9(1/1) 5.9(1/1)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

200

表 2.7.6-139 重症度別の有害事象(Org9426, 1.2mg/kg 群)

すべての有害事象(発現数 1例 1件) 関連を否定できない有害事象(発現数 0例 0件)

有害事象 軽度

5.9%

中等度

0%

高度

0%

不明

0%

合計

5.9%

軽度

0%

中等度

0%

高度

0%

不明

0%

合計

0%

症例数 17 17 17 17 17 17 17 17 17 17 有害事象発現例数 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 有害事象発現件数 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

皮膚および皮下

組織障害 紅斑 5.9(1/1) ― ― ― 5.9(1/1) ― ― ― ― 0.0(0/0)

Page 20: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

201

2.7.6.8.6.3 臨床検査値異常

多くの症例で血液学的検査値及び血液生化学的検査値の異常変動がみられたが,手術時の失血,組織

の損傷,感染,ストレス等によるものと考えられ,有害事象として報告されたものはなかった(表

2.7.6-140,表 2.7.6-141).

表 2.7.6-140 臨床検査値変動症例数(血液学的検査)

検査項目 基準値より減少

(低下) 基準値内

基準値より増加

(上昇) ヘモグロビン量 17 8 0 ヘマトクリット値 17 8 0 赤血球数 21 7 0 白血球数 0 16 23 MCH 0 40 0 MCHC 3 40 0 MCV 0 39 1 リンパ球 22 17 0 単球 0 46 0

杆状核球 0 4 2 好中球

分節核球 0 24 17 好酸球 0 46 0 好塩基球 0 46 0 血小板数 5 33 1 手術前検査値が施設の基準値内にあり,手術後検査値が測定された症例のみについて集計した.

Page 21: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-018 試験)

202

表 2.7.6-141 臨床検査値変動症例数(血液生化学的検査)

検査項目 基準値より減少

(低下) 基準値内

基準値より増加

(上昇) アルブミン 22 19 0 直接ビリルビン 0 45 4 総ビリルビン 1 47 1 Ca 30 4 0 Cl 0 45 4 Na 3 45 0 K 3 47 0 P 3 38 4 総コレステロール 0 26 0 炭酸ガス 5 39 0 CPK 0 40 9 クレアチニン 2 44 1 γ-GTP 0 46 0 血糖 1 13 29 LDH 0 45 3 ALP 0 44 0 ALAT 0 45 2 ASAT 0 44 5 総蛋白 31 1 0 尿素窒素 0 39 0 尿酸 1 45 0 手術前検査値が施設の基準値内にあり,手術後検査値が測定された症例のみについて集計した.

2.7.6.8.7 要約及び結論

バランス麻酔下成人患者に,本剤 0.6,0.9 又は高用量の 1.2 mg/kg を気管挿管時に単回投与した.90%

遮断時間及び作用発現時間は用量依存的に短縮し,作用持続時間は用量依存的に延長し,3 群間及び各

群間で有意差がみられた.挿管スコアは 0.6 mg/kg 群 1 例の「不可」以外は 44 例で優秀又は良好であっ

た.

本剤投与前後の血漿中ヒスタミン濃度を定量したところ,高用量を含むいずれの投与群においても投

与前後で血漿中ヒスタミン濃度の有意な変化はみられず,ヒスタミン遊離の臨床的症状も観察されなか

った.52 例中 1 例(1.2 mg/kg 群)で腹部及び尻部の紅斑がみられたが,本剤投与前の症状であり,本

剤との関連性はないと判断された.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

203

2.7.6.9 〔参考試験〕各種麻酔下患者における持続注入試験[021-020 試験;5.3.5.2.8]

2.7.6.9.1 試験方法の概略 項 目 内 容

治験依頼者名 Organon Inc. 申請資料中の該当

箇所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ及びⅢ相試験

目 的 バランス麻酔,エンフルラン麻酔又はイソフルラン麻酔下患者において,Org 9426 の持続注入速度及

び有効性及び安全性を比較検討する. 試 験 の 種 類 無作為化/非盲検臨床試験

対 象 患 者

1)選択基準: (1) 18~70 歳の男女患者 (2) ASA 分類 Class 1,2 又は 3 の患者 (3) 所要時間 2 時間以上の手術を予定している患者 2)除外基準: (1) 18 歳未満又は 71 歳以上の患者 (2) ASA 分類 Class が 4 又は 5 の患者 (3) 妊娠可能(不妊手術を受けていない閉経前の)な女性,又は妊婦 (4) 所要時間 2 時間未満の手術を予定している患者 (5) 重篤な腎,肝,代謝又は神経筋疾患を有する患者 (6) 体重が理想体重(IBW)の 130%以上である肥満患者 (7) ベンジルアルコール,麻薬性鎮痛薬又はその他の麻酔時に使用される薬物に対してアレル

ギーを有する患者 (8) 長期間抗ヒスタミン薬を投与されている患者 (9) 筋弛緩剤の作用に影響する可能性がある薬剤(抗痙攣薬,アミノグリコシド系又はポリペ

プチド系抗生物質)を長期投与されている患者 (10)他の治験に被験者として参加している患者 (11)治験参加に対して同意が得られない患者

試 験 薬 剤 Org 9426 100 mg/10 mL/バイアル

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

204

2.7.6.9.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 麻酔導入 30~90 分前にジアゼパム 10 mg を経口投与する.

2)麻酔導入 フェンタニル 2~12 μg/kg 及びチオペンタール 2~5 mg/kg の静脈内投与により導入する.

3)筋弛緩剤投与 基準となる筋収縮反応が安定した後,挿管用量として Org 9426,0.45 mg/kg を単回静脈内投与

する. 4)気管挿管

治験薬投与後,T1がコントロール値の 10%未満となった時点で挿管を行う. 5)麻酔維持

すべての被験者に亜酸化窒素/酸素(50/50%)の吸入を行い,以下の麻酔方法のいずれかによ

り麻酔維持を行う. 1)バランス麻酔:フェンタニル 0.15~0.3 mg,ドロペリドール 5~10 mg 及びチオペンタール

50~100 mg を必要な場合に投与する. 2)エンフルラン麻酔:1.5~2%エンフルランを,MAC を 1.25 に保つように調節して投与する.

3)イソフルラン麻酔:1.5~2%イソフルランを,MAC を 1.25 に保つように調節して投与する.

6)筋弛緩の維持 挿管用量のOrg 9426投与後,T1がコントロール値の5%に回復した時点で,初期速度7 μg/kg/minで注入を開始する.注入速度は T1がコントロール値の 5~10%に保たれるように調節する.手

術終了の約 20 分前に注入を停止する. 7)神経筋機能の回復

可能な限り,手術が終了した時点で T4/T1 が 75%となるまで自然回復させる.拮抗剤として,

エドロホニウム 0.5~1.0 mg/kg 及びアトロピン 0.01~0.015 mg/kg を併用して投与する. 目 標 症 例 数 30 例 バランス麻酔群 10 例,エンフルラン麻酔群 10 例,イソフルラン麻酔群 10 例

症例数の設定根拠 他の筋弛緩剤を用いた過去の臨床試験の結果より,目標症例数は試験目的を達成するのに十分で

あると思われた. 実 施 症 例 数 31 例 バランス麻酔群 11 例,エンフルラン麻酔群 10 例,イソフルラン麻酔群 10 例

観察項目及び評価

方 法

有効性 12 秒間隔の TOF 刺激(2 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋収縮(フォーストランスデューサ

ー)反応の T1 より計測した作用発現時間, 大遮断率,持続注入速度及び注入時間,自然回

復時間を解析した.また拮抗剤投与後の TOFR,挿管完了時間及び挿管スコアを記録した.さ

らに持続注入開始時,注入速度変更時及び注入終了時の注入速度を記録した. 薬物動態

Org 9426 の挿管用量投与前,持続注入開始後1時間,2 時間の時点で採血を行い,血漿中の未

変化体濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した. 安全性

心血管系機能,ヒスタミン関連症状,臨床検査,一般臨床所見,バイタルサイン,有害事象(通

常手術時にみられる臨床症状は有害事象として収集しなかった).

統 計 解 析 方 法

治験薬の持続注入開始後 30,60,90 及び 120 分の注入速度については 3 群間で Kruskal-Wallis 検定を用いて解析した.有意差がある場合は各群間で Wilcoxon 順位和検定を用いて解析した.持続

注入開始後 60 分及び 120 分の注入速度については各群内で Wilcoxon 符号付順位検定を用いて解

析した.解析対象は有効性評価対象とした. 治 験 責 任 医 師 実 施 施 設 Department of Anesthesiology, University Medical Center 治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

205

2.7.6.9.2 試験の流れ

表 2.7.6-142 検査・観察項目及び時期

回復時の単収縮高が Tc に対して下記の%の時刻

検査・観察項目

手術前日まで

治験薬投与前

90 % 遮 断 到 達 時

大遮断到達時

持続注入終了時まで

10% 25% 50% 75% 90%

手 術 後 2 日 以 内

患者背景・併用薬 ● Tc ● 治験薬投与時間 ● 90%遮断時間 ● Tm ● 作用発現時間 ●

筋弛緩作用

持続注入速度 ● 挿管完了時間 ● 挿管スコア ● 挿

抜管完了時刻

回復時間 ● ● ● ● ● 回復 TOFR ● ● ● ● ●

血圧・心拍数 ● ● ●a)

臨床検査 ● ● バイタルサイン ● ● 一般臨床所見 ● ● 有害事象 ●

a):麻酔導入前,挿管前,作用発現時,持続注入開始時及び開始後 10 分毎

Page 25: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

206

2.7.6.9.3 症例の構成

登録症例は 31 例(バランス麻酔群 11 例,エンフルラン麻酔群 10 例,イソフルラン麻酔群 10 例)で,

全症例に治験薬を投与した.このうち抗痙攣薬を投与されていた 1 例(バランス麻酔群)及び誤った挿

管用量を投与された 1 例(エンフルラン麻酔群)を除く 29 例を有効性評価対象とした(図 2.7.6-35).

治験薬を投与したすべての症例を安全性評価対象とした.治験実施計画書逸脱症例の取扱い及び内訳を

表 2.7.6-143に示した.

登録症例(31 例)

バランス麻酔群:11 例 エンフルラン麻酔群:10 例 イソフルラン麻酔群:10 例

治験薬投与症例(31 例) バランス麻酔群:11 例

エンフルラン麻酔群:10 例 イソフルラン麻酔群:10 例

有効性評価対象(29 例) 安全性評価対象(31 例) バランス麻酔群:10 例

エンフルラン麻酔群:9 例 イソフルラン麻酔群:10 例

バランス麻酔群:11 例 エンフルラン麻酔群:10 例 イソフルラン麻酔群:10 例

図 2.7.6-35 症例の構成

表 2.7.6-143 有効性評価における治験実施計画書逸脱症例の取扱い及び内訳

理 由 バランス麻酔 エンフルラン麻酔 イソフルラン麻酔 症例 採否

抗痙攣薬を投与 1 0 0 × 挿管用量として 0.34 mg/kg 投与 0 1 0 × 拮抗剤としてネオスチグミン及びグ

リコピロレートを投与 4 0 1 ○

○:有効性評価対象とする, ×:評価対象から除外

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

207

2.7.6.9.4 患者背景

背景因子について各群間に有意な偏りはみられなかった(表 2.7.6-144).

表 2.7.6-144 患者背景(有効性評価対象)

背景因子 バランス麻酔 エンフルラン麻酔 イソフルラン麻酔 症例数 10 9 10

検定

性別 男性 女性

9 1

7 2

7 3 P(χ2)=0.54

年齢 (歳)

n 平均±標準偏差

範囲

10 42±14 22~66

9 47±16 23~64

10 47±19 22~70

P(kw)=0.84

体重 (kg)

n 平均±標準偏差

範囲

10 76.9±16.9

56.0~105.0

9 74.0±13.3

57.0~104.0

10 77.7±14.5

50.0~104.0 P(kw)=0.74

身長 (cm)

n 平均±標準偏差

範囲

10 174.4±11.5

152.0~188.0

9 174.2±11.4

155.0~193.0

10 174.5±9.0

155.0~188.0 P(kw)=0.82

理想体重 (kg)

n 平均±標準偏差

範囲

10 69.1±11.1 49.5~81.7

9 68.3±11.9 47.7~86.1

10 68.3±9.7

47.7~81.7 P(kw)=0.73

人種

白人系 アジア系 黒人系 その他

7 0 3 0

9 0 0 0

9 0 1 0

P(χ2)=0.15

ASA 分類 Class 1 Class 2 Class 3

6 3 1

5 4 0

6 3 1

P(χ2)=0.86

P (χ2):χ2検定(P≦0.05 で有意), P (kw):Kruskal-Wallis 検定(P≦0.05 で有意)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

208

2.7.6.9.5 有効性

本剤の挿管用量(0.45 mg/kg)による 大遮断率は 29 例中 3 例で 100%,17 例で 95~99%,3 例で 90

~94%,6 例で 82~90%であり,平均値は 94.9%であった.作用発現時間の平均値は 205.0 秒,挿管完了

時間の平均値は 144.8 秒であった(表 2.7.6-145).

挿管スコアは29例中9例で「優秀」,14例で「良好」,5例で「不良」,1例で「不可」であった(表 2.7.6-146).

表 2.7.6-145 筋弛緩作用

維持麻酔方法 n 作用発現時間

(秒) n

挿管完了時間 (秒)

バランス麻酔 10 214.5±103.9 10 168.0±101.2 エンフルラン麻酔 9 196.7±65.2 9 113.3± 81.9 イソフルラン麻酔 10 203.0±103.2 10 150.0±81.2 合計 29 205.0±90.4 29 144.8±88.6

数値は平均±標準偏差

表 2.7.6-146 挿管スコア

挿管用量 優秀 良好 不良 不可 バランス麻酔 4 4 1 1 エンフルラン麻酔 3 5 1 0 イソフルラン麻酔 2 5 3 0 合計 9 14 5 1

いずれの麻酔群においても,約 60 分後に持続注入速度は安定し,T1 遮断率は 90~95%に維持された.

注入開始から 60 分,90 分及び 120 分の注入速度はバランス麻酔群で他の 2 群に比べて高く,3 群間に

有意差がみられた.注入開始から 120 分の注入速度は,イソフルラン麻酔群及びエンフルラン麻酔群で

バランス麻酔群と比較して 37~39%低かった(表 2.7.6-147).

表 2.7.6-147 持続注入速度

持続注入速度(μg/kg/min) 麻酔維持方法

注入後 30 分 注入後 60 分 注入後 90 分 注入後 120 分 注入開始時の

T1 遮断率(%)

バランス麻酔(n=10) 12.4±2.5 10.9±3.6 10.4±3.8 9.8±3.7 90.6±5.8 エンフルラン麻酔(n=9) 9.8±4.2 8.0±3.6 6.9±3.3 6.0±3.2 92.1±3.7 イソフルラン麻酔(n=9)a) 8.9±5.7 6.7±2.5 5.9±2.4 6.2±2.9 92.9±3.4 3 群間比較 P=0.07 P=0.04* P=0.02* P=0.05*

P(a)=0.11 P(a)=0.04* P(a)=0.02* 2 群間比較 実施せず P(b)=0.01* P(b)=0.01* P(b)=0.06

P(c)=0.37 P(c)=0.53 P(c)=0.89

実施せず

数値は平均±標準偏差 3 群間比較:Kruskal-Wallis 検定(P≦0.05 で有意) 2 群間比較:Wilcoxon 順位和検定(P≦0.05 で有意)

P(a):バランス麻酔群 vs. エンフルラン麻酔群 P(b):バランス麻酔群 vs. イソフルラン麻酔群 P(c):イソフルラン麻酔群 vs. エンフルラン麻酔群

a):イソフルラン麻酔群で持続注入時間が 108 分であった 1 例を除外した. *: P≦0.05

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

209

0

400

800

1200

1600

2000

2400

血漿

中濃

度(ng

/mL)

バランス麻酔

エンフルラン麻酔

イソフルラン麻酔

持続注入 60 分 120 分

開始前 注入開始後

持続注入終了後のT1 がコントロール値の 25%から 75%に回復するまでの回復時間の平均値は,バラン

ス麻酔群はエンフルラン麻酔群及びイソフルラン麻酔群より短かった(表 2.7.6-148).

表 2.7.6-148 自然回復時間(分)

維持麻酔方法 n 回復時間(T25-75)

バランス麻酔 10 19.5±5.8 エンフルラン麻酔 9 25.9±18.4 イソフルラン麻酔 8 a) 40.9±28.0

数値は平均±標準偏差 a):T1 がコントロール値の 10%となった時点で拮抗剤を投与した 1 例及び 75%回復ま

での時間を記録しなかった 1 例を除外した.

2.7.6.9.6 薬物動態

有効性評価対象群において,筋弛緩状態維持のための持続注入開始後 60 分,120 分での血漿中未変化

体濃度をガスクロマトグラフィーにより測定した.結果を表 2.7.6-149及び図 2.7.6-36に示す.

表 2.7.6-149 Org 9426 を持続注入した後の血漿中未変化体濃度(ng/mL)

麻酔群 タイミング 項目

バランス麻酔 エンフルラン麻酔 イソフルラン麻酔

n 10 9 9a) 平均 1614 1305 1497

標準偏差 384 389 611 小値 722 813 658

持続注入開始後

60 分

大値 2010 1940 2290 n 10 9 9a)

平均 1358 1117 1223 標準偏差 479 580 465

小値 425 465 517

持続注入開始後

120 分

大値 1930 2320 1920 a) 持続注入時間が 108 分であった 1 例を集計から除外した.

図 2.7.6-36 平均血漿中濃度推移 平均+S.D.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

210

また,持続注入速度と血漿中未変化体濃度からクリアランスを算出し,表 2.7.6-150に示した.エン

フルランとイソフルランの血漿クリアランスは注入開始後 60,120 分ともに同程度であった.

表 2.7.6-150 Org 9426 を持続注入した後の血漿クリアランス(mL/kg/min)

麻酔群 タイミング 項目

バランス麻酔 エンフルラン麻酔 イソフルラン麻酔

n 10 9 9a) 平均 7.11 5.98 4.74

標準偏差 2.70 1.40 1.32 小値 4.47 3.96 2.04

持続注入開始後

60 分

大値 11.54 7.79 6.13 n 10 9 9 a)

平均 9.09 5.37 5.39 標準偏差 7.90 1.18 2.01

小値 3.73 3.23 1.57

持続注入開始後

120 分

大値 30.59 6.80 7.74 a) 持続注入時間が 108 分であった 1 例を集計から除外した.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

211

2.7.6.9.7 安全性

2.7.6.9.7.1 有害事象

安全性評価対象 31 例中 1 例(エンフルラン麻酔群)で持続注入後の喘鳴(中程度)1 件が報告され,

本剤との関連性があると判断された.因果関係別,重症度別の有害事象の発現を 表 2.7.6-151及び 表

2.7.6-152に示す.なお同一症例で複数回同じ有害事象が発現しても 1 件として集計した.

表 2.7.6-151 因果関係別の有害事象(0.45mg/kg / エンフルラン麻酔群)

有害事象

明らかにあ

0%

多分あり

0% 可能性あり

10% 多分なし

0% なし

0% 合計

10%

症例数 10 10 10 10 10 10

有害事象発現例数 0 0 1 0 0 1

有害事象発現件数 0 0 1 0 0 1

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

呼吸器、胸郭およ

び縦隔障害 喘鳴音 - - 10.0(1/1) - - 10.0(1/1)

Page 31: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

212

表 2.7.6-152 重症度別の有害事象(0.45mg/kg / エンフルラン麻酔群)

すべての有害事象(発現数 1例 1件) 関連を否定できない有害事象(発現数 1例 1件)

有害事象 軽度

0%

中等度

10%

高度

0%

不明

0%

合計

10%

軽度

0%

中等度

10%

高度

0%

不明

0%

合計

10%

症例数 10 10 10 10 10 10 10 10 10 10 有害事象発現例数 0 1 0 0 1 0 1 0 0 1 有害事象発現件数 0 1 0 0 1 0 1 0 0 1

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

呼吸器、胸郭およ

び縦隔障害 喘鳴音 ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1) ― 10.0(1/1) ― ― 10.0(1/1)

Page 32: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

213

2.7.6.9.7.2 臨床検査値異常

多くの症例で血液学的検査値及び血液生化学的検査値の異常変動がみられたが,手術時の失血,組織

の損傷,感染,ストレス等によるものと考えられた(表 2.7.6-153,表 2.7.6-154).

表 2.7.6-153 臨床検査値変動症例数(血液学的検査)

検査項目 基準値より

減少(低下) 基準値内

基準値より 増加(上昇)

ヘモグロビン 11 4 0 ヘマトクリット 10 5 0 赤血球数 11 8 0 白血球数 0 9 13 MCH 0 25 1 MCHC 3 24 0 MCV 0 26 0 リンパ球 17 6 1 単球 0 28 0

杆状核数 0 4 0 好中球

分節核数 0 7 18 好酸球 0 27 0 好塩基球 0 28 0 血小板数 1 23 0

手術前検査値が施設の基準値内にあり,手術後検査値が測定された症例のみについて集計した.

Page 33: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-020 試験)

214

表 2.7.6-154 臨床検査値変動症例数(血液生化学的検査)

検査項目 基準値より

減少(低下) 基準値内

基準値より 増加(上昇)

アルブミン 7 22 0 直接ビリルビン 0 27 2 総ビリルビン 0 28 0 Ca 12 13 0 Cl 0 29 1 Na 0 30 0 K 1 27 0 P 3 22 1 総コレステロール 0 16 0 炭酸ガス 1 27 0 CPK 0 19 10 クレアチニン 1 29 0 γ-GTP 0 26 1 血糖 0 6 10 LDH 0 26 3 ALP 0 29 0 ALAT 0 28 2 ASAT 0 27 2 総蛋白 11 13 0 尿素窒素 1 28 0 尿酸 0 28 0 手術前検査値が施設の基準値内にあり,手術後検査値が測定された症例のみについて集計し

た.

2.7.6.9.8 結論

本剤 0.45 mg/kg(ED95 の 1.5 倍量)を気管挿管時に単回静脈内投与した.平均 大遮断率は 94.9%で,

大遮断率が 90%以下の症例は 29 例中 6 例であった.また,挿管スコアは 29 例中 23 例で「優秀」又

は「良好」であったが,5 例で「不良」,1 例で「不可」であった.

バランス麻酔,エンフルラン麻酔又はイソフルラン麻酔下で,T1 をコントロールの 5~10%に維持で

きるように本剤の持続注入を行ったところ,注入開始から 120 分までの持続注入速度は吸入麻酔群でバ

ランス麻酔群と比較して低く,120 分時点では約 36%低下した.また,注入開始後の 60 分,90 分及び

120 分で 3 群間で有意差がみられた.

安全性評価対象 31 症例中,エンフルラン麻酔群 1 例で中程度の喘鳴 1 件が報告され,本剤との関連

性ありと判断された.

以上の結果から,各種吸入麻酔下において,本剤の持続注入による筋弛緩の維持が有効かつ安全であ

ることが確認されたが,バランス麻酔に比べ吸入麻酔下では持続注入速度を低下させる必要があること

が示唆された.

Page 34: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

215

2.7.6.10〔参考資料〕ED90及び 3×ED90の Org 9426 投与による筋弛緩作用,安全性及びヒスタミン遊

離[CT 05.4.203 試験;5.3.5.2.9]

2.7.6.10.1 試験方法の概略 項 目 内 容

治験依頼者名 Organon 申請資料中の該当箇

所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ相試験

目 的

挿管用量として ED90(0.3 mg/kg)又は 3×ED90(0.9 mg/kg)の Org 9426 投与,また維持用量として

1/2×ED90(0.15 mg/kg)投与による血漿中ヒスタミン濃度の測定及びヒスタミン関連症状の誘発の可

能性について検討を行う. 挿管用量として ED90(0.3 mg/kg)又は 3×ED90(0.9 mg/kg)の Org 9426 投与,また維持用量として

1/2×ED90(0.15 mg/kg)投与による筋弛緩作用の効果及び時間経過について検討を行う. 試 験 の 種 類 非盲検臨床試験

1)選択基準: (1) 18~65 歳で ASA 分類 Class 1,2 又は 3 の男女患者 (2) 患者の体重が 0.75×(身長(cm)-100)kg 以上,1.35×(身長(cm)-100)kg 以下の患

者 (3) 妊娠中又は授乳中でない患者

対 象 患 者

2)除外基準: (1) 選択基準に適合しない患者 (2) 腎,肝,代謝又は神経筋疾患を有する患者 (3) 手術前の臨床検査に異常のある患者 (4) 家族又は本人にアトピーの既往歴のある患者 (5) アレルギー症状を持つ患者(薬物アレルギー又は仮性アレルギー,食物アレルギー又は仮性

アレルギー,ぜんそく,湿疹,花粉症等) (6) 麻酔薬,筋弛緩剤,全身麻酔時に使用される薬剤にアレルギーを持つ患者 (7) 治験実施計画書に記載されていない筋弛緩剤の作用に影響する可能性がある薬剤を投与され

ている患者 (8) 手術前 7 日以前にヒスタミン遊離やヒスタミン反応,又はヒスタミン代謝に影響を与える薬

剤を投与された患者 (9) 手術前 7 日以降に NSAID を投与された患者 (10)家族又は本人に悪性高熱症の既往歴のある患者 (11)薬物代謝の低下が認められる患者 (12)アルコールを 1 日あたり 150 mL 以上飲む患者,又は薬物乱用の患者

試 験 薬 剤 Org 9426 20 mg/1 mL/バイアル

試 験 方 法

1)麻酔前投薬;麻酔導入 60 分前にロルメタゼパム 2 mg を経口投与する. 2)麻酔導入;100%酸素吸入下でミダゾラム 50-70 μg/kg を投与し,引き続きエトミデート 0.2 mg/kg

を投与する.1.9%エンフルランを含む亜酸化窒素/酸素(60/40%)を投与する. 3)治験薬投与;エトミデート投与後 4 分に,挿管用量として Org 9426 を単回投与する. 4)気管挿管;Org 9426 投与後 5 分に気管挿管を行う. 5)麻酔維持;1.9%エンフルランを含む亜酸化窒素/酸素(60/40%)により麻酔維持を行う. 6)筋弛緩の維持;継続して筋弛緩が必要な場合は,T1 がコントロール値の 25%に回復した時点で

0.15 mg/kg のロクロニウムを投与する. 7)神経筋機能の回復;必要な場合,残存する筋弛緩作用に拮抗するため 40 μg/kg のネオスチグミ

ン及び 15 μg/kg のアトロピンを併用して投与する. 目 標 症 例 数 36 例 0.3 mg/kg 群 18 例,0.9 mg/kg 群 18 例 症例数の設定根拠 - 実 施 症 例 数 36 例 0.3 mg/kg 群 18 例,0.9 mg/kg 群 18 例

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

216

2.7.6.10.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

検 査 ・ 観 察 項 目 12 秒間隔の TOF 刺激(2 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋電図反応,血漿中ヒスタミン濃度,有害

事象,心血管系機能,ヒスタミン関連症状,臨床検査,一般臨床所見,バイタルサイン

評価方法(項目)及

び統計解析方法

すべてのパラメータについて例数,平均値,標準偏差, 大値及び 小値の統計量を算出した.統

計解析は両側で行い,有意差レベルを 0.05 とした. 患者背景 年齢,身長,体重に関する 2 群間比較は Wilcoxon 2 標本検定により行い,男女の分布は Fisher の直接確率法により比較した.

ヒスタミン分析 血漿中のヒスタミン濃度が低い場合(1 ng/mL 以下)の軽微な変動は臨床的に重要でない.このた

め血漿中ヒスタミン濃度が 0.25 ng/mL 以上の場合に 40%以上の濃度上昇が認められた場合,

0.25 ng/mL 以下の場合に 200%以上の濃度上昇が認められた場合をレスポンダーとした.レスポン

ダーの割合(%)を Fisher's 直接確率法で比較した.ミダゾラム,エトミデートの投与後又は挿管

後のレスポンダーの割合を Org 9426 の挿管用量 0.3 mg/kg,0.9 mg/kg 又は維持投与による割合と

比較した.また Org 9426 投与 2 群間でも比較を行った. ヒスタミン遊離

ヒスタミン遊離に関連する臨床症状はヒスタミンの絶対的な濃度に関連するため,ヒスタミン関

連症状の発現中又は直前の血漿中ヒスタミン濃度の関連について検討を行った.ヒスタミン濃度

が減少した場合を「増加なし」とし,増加が 1 ng/mL 以下の場合を「増加の可能性あり」,1 ng/mL以上の増加を「確実な増加」とした.

筋弛緩作用 筋弛緩作用として作用発現時間, 大遮断率及び作用持続時間を評価した.

心血管機能 心拍数,拡張期及び収縮期血圧,平均血圧について,導入麻酔完了後に測定したベースライン値

及びベースラインからの変化率(%)を評価した. 治 験 責 任 医 師

実 施 施 設 Institute of Anesthesiology of the University of

治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

Page 36: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

217

2.7.6.10.2 試験の流れ

表 2.7.6-155 検査・観察項目及び時期

検査・観察項目 病歴 一般臨

床所見 血漿中ヒスタ

ミン濃度 a) T1(% of control)

心拍数・ 血圧 b)

臨床検査

手術前 ● ● ● 麻酔導入前 ● ● ミダゾラム投与後 4 分 ● エトミデート投与後 4 分 ● Org 9426 投与 ● 挿管用量投与後 2.5 分 ● 挿管用量投与後 4.5 分 ● 挿管後 4 分 ● 1 回目維持投与の直前 ● Org 9426 投与 ● 1回目維持用量投与後 2.5分 ● 1回目維持用量投与後 4.5分 ● 2 回目維持用量投与の直前 ● Org 9426 投与 ● 2回目維持用量投与後 2.5分 ● 2回目維持用量投与後 4.5分 ● 手術後 0~2 日 ● ●

a):ヒスタミン関連症状がみられた場合,その時点でも血漿中ヒスタミン濃度測定のため採血を行なった. b):心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧,平均動脈圧は Org 9426 投与後 30 秒から 330 秒まで 1 分間隔で記録した.

2.7.6.10.3 症例の構成

登録症例は 36 例(0.3 mg/kg群 18 例,0.9 mg/kg群 18 例)で,全症例にOrg 9426 を投与した.キャリ

ブレーションに問題があり神経筋反応が記録できなかった 1 例(0.3 mg/kg群)及びミオクローヌスが生

じた 1 例(0.3 mg/kg群)を除く 34 例で筋弛緩作用を検討した.また血漿中ヒスタミン濃度が高い状態

が維持された 3 例(0.3 mg/kg群)及び挿管用量投与後 4.5 分から挿管後 4 分までのサンプルが欠落した

1 例(0.9 mg/kg群)及びミオクローヌス(0.3 mg/kg群)の 1 例を除く 31 例をヒスタミン分析の対象とし

た.Org 9426 を投与した全症例を安全性評価対象とした(図 2.7.6-37).

登録症例(36 例) 0.3 mg/kg 群:18 例 0.9 mg/kg 群:18 例

Org 9426 投与症例(36 例)

0.3 mg/kg 群:18 例 0.9 mg/kg 群:18 例

有効性評価対象(34 例) ヒスタミン分析(31 例) 安全性評価対象(36 例) 0.3 mg/kg 群:16 例 0.9 mg/kg 群:18 例

0.3 mg/kg 群:14 例 0.9 mg/kg 群:17 例

0.3 mg/kg 群:18 例 0.9 mg/kg 群:18 例

図 2.7.6-37 症例の構成

Page 37: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

218

2.7.6.10.4 患者背景

背景因子について 2 群間に有意な偏りはみられなかった.

表 2.7.6-156 患者背景

用量群

背景因子

0.3 mg/kg 0.9 mg/kg 症例数 18 18

検定

性別 男性 女性

14 4

15 3 1.0000a)

年齢 (歳)

平均±標準偏差

範囲

35.2±15.2

18-62

35.8±12.4

18-56 0.6348b)

体重 (kg)

平均±標準偏差

範囲

74.6±14.4

55.0-106.0

77.2±9.4

52.0-94.0 0.3185b)

身長 (cm)

平均±標準偏差

範囲 177.3±8.8

165.0-202.0

175.9±10.2

155.0-194.01.0000b)

a):Fisher の直接確率法,b):Wilcoxon 2 標本検定

2.7.6.10.5 ヒスタミン分析

薬剤の投与,挿管後のレスポンダー数について,またレスポンダー及びノンレスポンダーの血漿中ヒ

スタミン濃度を 表 2.7.6-157に示した.統計的に有意ではないもののミダゾラム投与後のレスポンダー

の割合と本剤維持投用量投与後のヒスタミンレスポンダーの割合は軽度の相違がみられた.

表 2.7.6-157 ヒスタミンレスポンダー数及びヒスタミン濃度

ヒスタミン濃度(ng/mL,平均±標準偏差) 処置

レスポンダーの

割合(%) 検定

レスポンダーd) ノンレスポンダー

ミダゾラム投与 3/29(10) 0.326a) 0.229b) 0.065c)

0.6±0.2 0.2±0.2

エトミデート投与 7/31(22) 0.844a) 0.963b) 0.451c)

0.9±0.7 0.2±0.1

Org 9426 0.3 mg/kg 投与 3/14(21) 0.889b) 0.4±0.1 0.1±0.1 Org 9426 0.9 mg/kg 投与 4/17(24) - 0.7±0.5 0.2±0.1

挿管 4/30(13) 0.525a) 0.400b) 0.130c)

1.1±0.6 0.2±0.2

Org 9426 1回目維持用量投与 3/8(38) - 0.2±0.1 0.5±0.5 Org 9426 2回目維持用量投与 0/3(0) - - 0.3±0.1

1,2 回目維持用量投与合計 3/8(38) - 0.2±0.1 0.5±0.5 a):Org 9426 0.3 mg/kg 群との比較 b):Org 9426 0.9 mg/kg 群との比較 c):Org 9426 維持用量投与合計との比較 d):血漿中ヒスタミン濃度が 0.25 ng/mL 以上の場合に 40%以上の濃度上昇が認められる場合,又は 0.25 ng/mL 以下の場合に 200%以上

の濃度上昇が認められる場合をレスポンダーとした.

Page 38: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

219

2.7.6.10.6 ヒスタミン遊離

ヒスタミン濃度が減少した場合を「増加なし」とし,増加が 1 ng/mL 以下の場合を「増加の可能性あ

り」,1 ng/mL 以上の増加を「確実な増加」とした.5 例(症例番号 7,11,14,23,29)で血漿中ヒス

タミン濃度の増加とヒスタミン関連症状の発現に関連性がみられた.ヒスタミン症状の発現前にヒスタ

ミン濃度が増加した症例(症例番号 7,14)や,ヒスタミン濃度がピークに達した数分後に症状が現れ

た症例(症例番号 11,29)があった.

2.7.6.10.7 筋弛緩作用

表 2.7.6-158に挿管用量として 0.3 mg/kg又は 0.9 mg/kgを投与したときの 大遮断率及び維持用量投与

後の 大遮断率を示す.0.3 mg/kg群の 1 例で筋弛緩作用が十分でなく,挿管のためにスキサメトニウム

が投与された.各群における作用発現時間及び作用持続時間をそれぞれ 表 2.7.6-159及び 表 2.7.6-160

に示した.

表 2.7.6-158 最大遮断率(%)

挿管用量 挿管用量投与時 1 回目維持用量投与時 2 回目維持用量投与時

0.3 mg/kg 75.1±23.4(16) 84.5±26.8(12) 82.6±23.3(5)

0.9 mg/kg 100±0(18) 100(1) -

平均±標準偏差(症例数)

表 2.7.6-159 作用発現時間(分)

挿管用量 挿管用量投与時 1 回目維持用量投与時 2 回目維持用量投与時

0.3 mg/kg 3.3±0.7(16) 2.2±0.7(12) 1.9±0.4(6)

0.9 mg/kg 1.3±0.3(18) 1.3(1) -

平均±標準偏差(症例数)

表 2.7.6-160 作用持続時間(分)

挿管用量 挿管用量投与時 1 回目維持用量投与時 2 回目維持用量投与時

0.3 mg/kg 13.9±5.1(11) 16.4±3.9(10) 15.1±8.2(4)

0.9 mg/kg 47.4±12.0(18) 12.0(1) -

平均±標準偏差(症例数)

2.7.6.10.8 有害事象

7 例の被験者で 7 件の有害事象(潮紅 5 件,紅斑 1 件,ミオクローヌス 1 件)が報告された.このう

ち潮紅 3 例(症例番号 14,24,29)はヒスタミン遊離と関連性ありとされた.また,潮紅 3 件(症例番

号 7,14,29)はOrg 9426 と関連性ありとされた.因果関係別,重症度別の有害事象の発現を表 2.7.6-161

及び表 2.7.6-162に示す.なお同一症例で複数回同じ有害事象が発現しても 1 件として集計した.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

220

表 2.7.6-161 因果関係別の有害事象(Org9426, 0.3mg/kg 群)

すべての有害事象(発現数 3例 3件)

有害事象

明らかにあ

0%

多分あり

0% 可能性あり

11.1% 多分なし

0% なし

5.6% 合計

16.7%

症例数 18 18 18 18 18 18 有害事象発現例数 0 0 2 0 1 3 有害事象発現件数 0 0 2 0 1 3

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

血管障害 潮紅 - - 11.1(2/2) - 5.6(1/1) 16.7(3/3)

表 2.7.6-161 因果関係別の有害事象(Org9426, 0.9mg/kg群)

すべての有害事象(発現数 4例 4件)

有害事象

明らかにあ

0%

多分あり

0% 可能性あり

5.6% 多分なし

0% なし

16.7% 合計

22.2%

症例数 18 18 18 18 18 18 有害事象発現例数 0 0 1 0 3 4 有害事象発現件数 0 0 1 0 3 4

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

神経系障害 ミオクローヌス - - - - 5.6(1/1) 5.6(1/1)

血管障害 潮紅 - - 5.6(1/1) - 5.6(1/1) 11.1(2/2)

皮膚および皮下

組織障害 紅斑 - - - - 5.6(1/1) 5.6(1/1)

Page 40: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

221

表 2.7.6-162 重症度別の有害事象(Org9426, 0.3mg/kg 群)

すべての有害事象(発現数 3例 3件) 関連を否定できない有害事象(発現数 2例 2件)

有害事象 軽度

11.1%

中等度

5.6%

高度

0%

不明

0%

合計

16.7%

軽度

5.6%

中等度

5.6%

高度

0%

不明

0%

合計

11.1%

症例数 18 18 18 18 18 18 18 18 18 18 有害事象発現例数 2 1 0 0 3 1 1 0 0 2 有害事象発現件数 2 1 0 0 3 1 1 0 0 2

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

血管障害 潮紅 11.1(2/2) 5.6(1/1) ― ― 16.7(3/3) 5.6(1/1) 5.6(1/1) ― ― 11.1(2/2)

表 2.7.6-162 重症度別の有害事象(Org9426, 0.9mg/kg群)

すべての有害事象(発現数 4例 4件) 関連を否定できない有害事象(発現数 0例 0件)

有害事象 軽度

22.2%

中等度

0%

高度

0%

不明

0%

合計

22.2%

軽度

0%

中等度

0%

高度

0%

不明

0%

合計

0%

症例数 18 18 18 18 18 18 18 18 18 18 有害事象発現例数 4 0 0 0 4 0 0 0 0 0 有害事象発現件数 4 0 0 0 4 0 0 0 0 0

器官別分類 有害事象項目(基

本語) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件) %(例/件)

神経系障害 ミオクローヌス 5.6(1/1) ― ― ― 5.6(1/1) ― ― ― ― 0.0(0/0) 血管障害 潮紅 11.1(2/2) ― ― ― 11.1(2/2) ― ― ― ― 0.0(0/0)

皮膚および皮下

組織障害 紅斑 5.6(1/1) ― ― ― 5.6(1/1) ― ― ― ― 0.0(0/0)

Page 41: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CT 05.4.203 試験)

222

2.7.6.10.9 要約及び結論

ミダゾラム,エトミデートや挿管操作によるものと比較してOrg 9426 のヒスタミン遊離作用は高くは

なかった.Org 9426 投与後のレスポンダーの血漿中ヒスタミン濃度の上昇はエトミデートや挿管操作に

よる上昇よりも小さかった.Org 9426 投与後の血漿中ヒスタミン濃度は 3×ED90 までの用量で

1.80 ng/mLを超えることはなかった.2 ng/mL以上のヒスタミン濃度で中程度の臨床症状が伴うと報告さ

れており 2,3×ED90 までの用量を投与しヒスタミン遊離に伴う臨床症状がみられたとしても,その程度

は軽度であると予想される.

Page 42: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

223

2.7.6.11 〔参考資料〕バランス麻酔下の肥満患者における臭化ロクロニウムの挿管用量及び維持用量

の薬力学並びに安全性の検討[021-021 試験;5.3.5.2.10]

2.7.6.11.1 試験方法の概略

項 目 内 容 治 験 依 頼 者 名 Organon Inc.

申請資料中の該当

箇 所 分 冊 番 号 11 巻

開 発 の フ ェ ー ズ 第Ⅲ相試験

目 的

1) 成人男女を対象とし,以下の 3 群(①,②,③)について Org 9426 0.6 mg/kg の挿管用量を投

与したときの薬力学(80%遮断までの時間,作用発現時間, 大遮断率,挿管完了までの時間,

挿管スコア,作用持続時間)並びに安全性を比較検討する. ①実体重(ABW)から計算された用量の Org 9426 を投与する肥満患者, ②理想体重(IBW)から計算された用量の Org 9426 を投与する肥満患者, ③実体重(ABW)から計算された用量の Org 9426 を投与する正常体重の患者 2)同様に 0.15 mg/kg の維持用量を投与したときの薬力学( 大遮断率,作用持続時間,自然回

復時間,リバーサル)並びに安全性を比較検討する.

試 験 の 種 類 非盲検臨床試験,肥満患者の割付(群①又は②)は無作為化

対 象 患 者

1)選択基準: (1)18~69 歳の男性または妊娠していない女性患者 (2)ASA Class 1,2 又は 3 の患者 (3)群③については,各性別の理想体重(IBW)の±10%の範囲の体重の患者

なお,IBW は以下の式に基づき算出した. IBW(男性):110 ポンド+5 ポンド×(身長(フィート)-5 フィート)×12 IBW(女性):100 ポンド+5 ポンド×(身長(フィート)-5 フィート)×12,

(4)群①及び②については,各性別の理想体重の 135%を超える体重で歩行可能な患者 (5)バランス麻酔下で所要時間 1 時間以上の手術を予定している患者 2)除外基準: (1)18 歳未満又は 70 歳以上の患者 (2)ASA Class 4 又は 5 の患者 (3)身体検査,既往歴,手術の 3 日前以降の尿又は血清 HCG テストで妊娠が確認された患者 (4)所要時間 1 時間未満の手術を予定している患者 (5)気管が見えなかったり気管挿管が出来ない,気道に異常又は狭窄がある患者 (6)腎,肝,代謝異常又は神経筋疾患を有する患者 (7)歩行できない肥満患者 (8)群③については,各性別の理想体重(IBW)の±10%から外れる体重の患者.群①及び②

については,各性別の理想体重の 135%以内の患者 (9)ベンジルアルコール,麻薬性鎮痛薬又はその他麻酔時に使用される薬物に対してアレルギ

ーを有する患者 (10)長期間抗ヒスタミン薬を投与されている患者 (11)筋弛緩剤の作用に影響する可能性がある薬剤(抗痙攣薬,アミノグリコシド系又はポリペ

プチド系抗生物質)を投与されている患者 (12)他の治験に被験者として参加している患者 (13)治験参加に対して同意が得られない患者

試 験 薬 剤 Org 9426 100 mg/10 mL/バイアル

Page 43: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

224

項 目 内 容

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 麻酔導入1~2 時間前に,硫酸モルヒネ 12 mg 以下,グリコピロレート 0.2~0.4 mg,ミダゾ

ラム 1~5 mg を筋注する. 2)麻酔導入

パルスオキシメーターを装着後,チオペンタール初期用量 2~7 mg/kg で麻酔導入し,チオペ

ンタールの追加量 25 mg,フェンタニール 0.001~0.01 mg/kg を眼瞼反射がなくなるまで投与

する.亜酸化窒素/酸素(70/30%)を投与する.呼気中 pCO2は 30~40 mmHg に保つ.心電図

と筋弛緩モニターを装着する. 3)筋弛緩剤投与

TOF の安定したベースラインを得た後,Org 9426 の挿管用量 0.6 mg/kg を ABW 又は IBW で正

しく計算して点滴チューブから 5 秒で静脈内投与する.挿管用量投与後,肥満患者では T1がコ

ントロール値の 10%未満にならない場合,T1がコントロール値の 10%未満になるまで Org 9426 0.1 mg/kg を繰り返し追加投与する.

4)気管挿管 大遮断が得られたら気管挿管する.

5)麻酔維持 亜酸化窒素/酸素(70/30%)により適切な麻酔深度を維持する.酸素飽和度は 93%以上,終末

呼気中 pCO2は 30~40 mmHg,深部体温は 35.5~37℃に保つ. 6)筋弛緩の維持

T1 がコントロール値の 25%になり,筋弛緩が更に必要な場合のみ Org 9426 の維持用量

0.15 mg/kg を ABW 又は IBW で正しく計算して投与する. 7)神経筋機能の回復

可能な限り T1 が 90%になるまで自然回復させる.手術室を出る時に T4/T1 が 75%未満の場合

には,ネオスチグミン 2.5 mg とアトロピン 1.0 mg を静注してリバースする.これを必要に応

じて繰り返す.

目 標 症 例 数 36 例(各群 12 例)

症例数の設定根拠 他の筋弛緩剤を用いた過去の臨床試験の結果より,目標症例数は試験目的を達成するのに十分で

あると思われた.

実 施 症 例 数 治験薬投与症例数 38 例(①群:13 例,②群:12 例,③群:13 例)

(評価症例数 35 例:①群:12 例,②群:11 例,③群:12 例)

観察項目及び評価

方 法

有効性 10 秒間隔の TOF 刺激(2 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋張力を測定し,T1を計測した.Org 9426 0.6 mg/kg の挿管用量を投与したときの薬力学(80%遮断までの時間,作用発現時間, 大遮

断率,挿管完了までの時間,挿管スコア,作用持続時間,自然回復時間,リバーサル) 0.15 mg/kg の維持用量を投与したときの薬力学( 大遮断率,作用持続時間,自然回復時間,

リバーサル) リバーサルの評価としてネオスチグミン投与前,投与後 2,5,8,10 分の T1及び T4/T1 を記録

する. 安全性

有害事象(通常手術時にみられる臨床症状は有害事象として収集しなかった),心血管系機能,

ヒスタミン関連症状,臨床検査,麻酔完了後の術後評価,一般臨床所見,バイタルサイン.

統 計 解 析 方 法 薬力学パラメータを患者群ごとに要約した.薬力学パラメータの患者群間の比較は,患者群及び

性別を要因とする順位変換データに基づく二元配置分散分析(交互作用を含む)により行った.

全体の P 値が有意な場合に対比較を実施した.

用 量 設 定 根 拠 後期第Ⅱ相試験の結果から,Org 9426 の至適用量と考えられる挿管用量 0.6 mg/kg 及び維持用量

0.15 mg/kg を投与した.

治 験 責 任 医 師

実 施 施 設 Department of Anesthesia, The University of Hospitals and Clinics, University of , ,

治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

Page 44: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

225

2.7.6.11.2 試験の流れ

表 2.7.6-163 検査・観察項目及び時期

検査・観察項目 病歴 一般臨床

所見 血圧 心拍数 T4/T1(%)

T1(対照値に

対する%) 臨床検査

手術前 ● ● ● 麻酔導入前 ●a) ●a) 治験薬投与前 ● ● ●b) ●b) 挿管前( 大遮断時) ● ● 治験薬投与後 1,2,3,4,5,10,15,20,25,30 分

● ●

拮抗薬投与前 ● ● 拮抗薬投与後 2,5,8,10 分 ● ●

手術後 0~2 日 ● ● a):手術中連続してしてモニターした. b):麻酔導入後継続してモニターした.

2.7.6.11.3 症例の構成

登録症例は 40 例(正常体重群:14 例,肥満-ABW群:14 例,肥満-IBW群:12 例)で,このうち手術中

にゲンタマイシンが投与された 1 例及び登録後に手術がキャンセルされた 1 例を除く 38 例に治験薬を

投与した.このうち神経筋データの記録ができなかった 3 例を除く 35 例(正常体重群:12 例,肥満-ABW

群:12 例,肥満-IBW群:11 例)を有効性評価対象とした.治験薬を投与したすべての症例を安全性評

価対象とした(図 2.7.6-38).治験実施計画書逸脱症例の取扱い及び内訳を表 2.7.6-164に示した.

登録症例(40 例)

正常体重群 :14 例 肥満-ABW 群 :14 例 肥満-IBW 群 :12 例

治験薬投与症例(38 例) 未投与症例(2 例) 正常体重群 :13 例 正常体重群 :1 例 肥満-ABW 群 :13 例 肥満-ABW 群 :1 例 肥満-IBW 群 :12 例

有効性評価対象(35 例) 安全性評価対象(38 例) 正常体重群 :12 例 肥満-ABW 群 :12 例 肥満-IBW 群 :11 例

正常体重群 :13 例 肥満-ABW 群 :13 例 肥満-IBW 群 :12 例

図 2.7.6-38 症例の構成

Page 45: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

226

表 2.7.6-164 有効性評価における治験実施計画書逸脱症例の取扱い及び内訳(重複あり)

患者群 理 由

正常体重 肥満-ABW 肥満-IBW 症例 採否

治験薬を投与しなかった 1 1 0 × 測定機器の機械的不調のため神経筋デ

ータを収集できなかった 1 1 1 ×

体重が理想体重の 135%を超えない 0 1 0 ○ T1 がコントロール値の 25%を超える時

点で維持用量を投与 3 5 9 ○

治験実施計画書に規定されたもの以外

の拮抗薬を投与 a) 3 1 1 ○

○:有効性評価対象とする, ×:評価対象から除外 a):正常体重群 2 例及び肥満-ABW 群 1 例でネオスチグミン及びグリコピロレート,正常体重群 1 例及び肥満-IBW 群 1 例でアトロピン

及びエドロホニウムを投与した.

2.7.6.11.4 患者背景

背景因子について各群間に有意な偏りはみられなかった(表 2.7.6-165).

表 2.7.6-165 患者背景(有効性評価対象)

患者群

背景因子

正常体重 肥満-ABW 肥満-IBW 症例数 12 12 11

検定

性別 男性 女性

6 6

6 6

5 6

実施せず

年齢 (歳)

平均±標準偏差 範囲

33±8 21~44

39±13 21~68

46±14 28~68

P(W)=0.07

体重 (kg)

平均±標準偏差 範囲

67±10 50~85

99±16 81~129

99±13 81~118

実施せず

身長 (cm)

平均±標準偏差 範囲

174±10 152~188

170±12 155~188

169±9 157~186

P(W)=0.24

理想体重 (kg)

平均±標準偏差 範囲

67±11 45~82

64±12 48~82

62±10 50~80

P(W)=0.27

人種

白人 アジア人 黒人 その他

12 0 0 0

12 0 0 0

11 0 0 0

実施せず

ASA 分類 Class 1 Class 2 Class 3

11 1 0

5 7 0

3 7 1

P(CMH)=0.20

P(W):性別及び患者群を要因とした順位データに基づく二元配置分散分析で検定(p≦0.05 で有意) P(CMH):性別を層別因子とした Cochran-Mantel-Hanszel 検定で検定(p≦0.05 で有意)

両側 p 値を記載した.

Page 46: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

227

2.7.6.11.5 有効性

肥満-ABW群では,肥満-IBW群又は正常体重群と比較して 80%遮断時間,作用発現時間,挿管完了時間

の平均値は有意に短かった.3 例(正常体重群:1 例,肥満-IBW群:2 例)を除くすべての症例で挿管

完了時間は 165 秒以下であった.挿管用量投与後の平均作用持続時間は,肥満-ABW群で肥満-IBW群又

は正常体重群と比較して有意に長かった(表 2.7.6-166).

表 2.7.6-166 筋弛緩作用

患者群 n 80%遮断時間

(秒) n 作用発現時間

(秒) n 挿管完了時間

(秒) n 作用持続時間

(分)

正常体重群 12 67±16

(39~88) 12

112±33 (61~165)

12 144±33

(114~235) 12

28±5 (19~38)

肥満-ABW 群 12 53±9*

(39~70) 12

82±12* (57~102)

12 96±8*

(85~111) 10a)

36±10* (24~52)

肥満-IBW 群 11 84±29

(43~141) 11

129±34 (73~203)

11 147±53

(82~262) 11

23±5 (14~29)

3 群間比較 P=0.0017* P=0.0007* P=0.0001* P=0.0011* 2 群間比較 P(a)=0.0070* P(a)=0.0092* P(a)=0.0001* P(a)=0.0221* P(b)=0.1761 P(b)=0.3122 P(b)=0.9821 P(b)=0.0386* P(c)=0.0023* P(c)=0.0002* P(c)=0.0026* P(c)=0.0006*

数値は平均±標準偏差 (範囲)

a):T1の 75%までの回復時間を記録しなかった 2 例を除外した。 3 群間比較:患者群及び性別を要因とした順位変換データに基づく二元配置分散分析で検定,両側 p 値を記載. 2 群間比較:Wilcoxon 順位和検定で検定(P≦0.05 で有意).

P(a):正常体重群 vs. 肥満-ABW 群 P(b):正常体重群 vs. 肥満-IBW 群 P(c):肥満-ABW 群 vs. 肥満-IBW 群 *:P≦0.05

挿管スコアはすべての症例で優秀又は良好であった(表 2.7.6-115).肥満-ABW群では肥満-IBW群に比

べてよい挿管状態が得られた.

表 2.7.6-167 挿管スコア

患者群 優秀 良好 不良 不可 正常体重群 11 1 0 0 肥満-ABW 群 10 2 0 0 肥満-IBW 群 5 6 0 0

1 回目の維持用量投与後の作用持続時間は,肥満-ABW群で肥満-IBW群及び正常体重群と比較して長か

った(表 2.7.6-168).

表 2.7.6-168 1 回目の維持用量投与後の作用持続時間

患者群 n 作用持続時間(分) 正常体重群 6 15±4 (10~20) 肥満-ABW 群 2 25±5 (21~32) 肥満-IBW 群 4 14±8 (9~20)

数値は平均±標準偏差 (範囲)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

228

Org 9426 終投与後,T1がコントロール値の 25%から 75%に回復するまでの自然回復時間(T25-75)は,

肥満-ABW群 4 例を除くすべての症例で 20 分未満であった(表 2.7.6-169).

表 2.7.6-169 自然回復時間(分)

患者群 na) 回復時間(T25-75) 正常体重群 10 12±3 (7~18) 肥満-ABW 群 10 17±8 (7~30) 肥満-IBW 群 9 14±4 (7~19)

数値は平均±標準偏差 (範囲) a):T1の 25%から 75%回復までの時間を記録しなかった 6 例(正常体重群 2 例,肥満-ABW 群 2 例,肥満-IBW群 2 例)を除外した.

2.7.6.11.6 安全性

2.7.6.11.6.1 有害事象

有害事象は報告されなかった.

2.7.6.11.6.2 心血管系の変化

38 例,221 観察時点について,本剤の挿管用量投与 1,2,3,4,5 分後及びT1 大遮断時における心拍

数及び平均動脈圧のベースラインからの変動を調べた(図 2.7.6-39).

図 2.7.6-39 心拍数及び平均動脈圧のベースラインからの変動

心拍数の変化(%)

平均動脈圧の変化(

%)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-021 試験)

229

本剤の挿管用量を投与後 T1 大遮断時に挿管を行ったが,T1 大遮断までの時間及び挿管完了までの

時間は一般的に本剤投与 2~4 分後であった.本剤投与 2~4 分以内に挿管が行われた患者では,30%以

上の心拍数増加及び 30%以上の平均動脈圧増加は挿管完了と同時及び挿管直後(通常は本剤投与 3,4,

5 分後測定時)に発現した.本剤に起因する臨床的に問題となる心血管系事象はみられなかった.30%

以上の心拍数増加と 30%以上の平均動脈圧減少が同時に発現した症例はなかった.

表 2.7.6-170に,心拍数及び平均動脈圧の変化率が 30%以上であった症例数及び事象数を示した.

表 2.7.6-170 心拍数及び平均静脈圧の変化率が 30%以上であった症例数(事象数)

心拍数 平均動脈圧 患者群

n (N)a) 減少 増加 (N)a) 減少 増加 正常体重群 13 (77) 0 (0) 3 (8) 13 (76) 0 (0) 5 (12) 肥満-ABW 群 13 (75) 0 (0) 3 (7) 13 (76) 1 (2) 3 (4) 肥満-IBW 群 12 (70) 0 (0) 3 (4) 12 (69) 0 (0) 1 (1)

a):n=症例数, (N)=観察時点.

表 2.7.6-171に,本剤投与症例について,Org 9426 投与 1 分後の心拍数及び平均動脈圧の変化率を示した.

表 2.7.6-171 挿管用量投与 1 分後の心拍数及び平均動脈圧の変化率(%)

患者群 na) 心拍数 平均動脈圧 正常体重群 12 1±7 (-13~13) 0.4±12 (-15~22) 肥満-ABW 群 12 3±15 (-20~40) 3±6 (-7~11) 肥満-IBW 群 12 4±15 (-20~38) -2±6 (-14~8)

数値は平均±標準偏差 (範囲) a):挿管用量投与 1 分後の血圧及び心拍数を記録しなかった 2 例(正常体重群 1 例及び肥満-ABW 群 1 例)を除外した.

本試験において,本剤と関連性ありと考えられる心血管系の変化は報告されなかった.またヒスタミン

遊離に関する症状,臨床検査値異常変動は観察されなかった.

2.7.6.11.7 要約及び結論

Org 9426 の挿管用量 0.6 mg/kg 及び維持用量 0.15 mg/kg の薬力学及び安全性を正常体重群,肥満-ABW

群及び肥満-IBW 群で比較検討した.肥満-IBW 群の平均 80%遮断時間,平均作用発現時間及び平均挿管

完了時間は肥満-ABW 群よりも有意に長く,平均作用持続時間は有意に短かった(p≦0.05).また,肥

満-IBW 群では肥満-ABW 群と同程度の挿管状態は得られなかった.この結果,肥満患者に対しては実

際の体重に基づいて Org 9426 の用量を設定するべきという結論が導かれた.

本試験において,Org 9426 と関連性のある心血管系パラメータ及びバイタルサインの変化はみられなか

った.有害事象,臨床的に問題のある心血管系事象,ヒスタミン遊離に関連した症状,並びに臨床検査

値異常変動は報告されなかった.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

230

2.7.6.12 〔参考資料〕手術患者を対象とした Org 9426 の持続点滴注入の検討[9601 試験;5.3.5.2.11]

2.7.6.12.1 試験の概要 項 目 内 容

治験依頼者名 日本オルガノン株式会社

申請資料中の該当

箇所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ相試験

目 的 Org 9426 の手術中(回復室での術後麻酔・呼吸管理を含む)における持続点滴注入時の安全性及び有

効な持続点滴注入量について検討を行う.

試 験 の 種 類 非盲検/多施設臨床試験

対 象 患 者

1)選択基準: (1) 一般の状態は良好で,手術部位のみの障害を有する,又は軽度の全身疾患を有する各科領

域の手術予定患者で,手術及び手術から回復室における術後麻酔・呼吸管理で筋弛緩維持

時間が 3 時間以内と予想される患者 (2) 20 歳以上 64 歳以下の男女 (3) 肥満度が標準体重の 30%を越えない患者 (4) ASA 分類 Class 1~2 である患者 (5) 治験実施に先立ち文書による同意が得られた患者 2)除外基準: (1) 神経筋疾患(重症筋無力症,筋無力症候群,筋緊張症候群等)又は筋麻痺を有する患者 (2) 重症の肝・腎機能障害を有する患者 (3) 呼吸困難,気道閉塞又は気管支喘息を有する患者 (4) パンクロニウム,ベクロニウムに対し過敏症の既往を有する患者 (5) アトピー性疾患を有する患者 (6) 薬剤による全身性アレルギー症状の既往のある患者 (7) 全身麻酔中における全身性アレルギー症状の既往のある患者 (8) 電解質異常,酸・塩基平衡異常を有する患者 (9) 低体温麻酔及び低体温灌流法による人工心肺使用の患者 (10)妊婦又は妊娠している可能性のある患者 (11)過去に本剤の治験に参加した患者 (12)現在他の治験に参加している患者 (13)その他治験担当医師が本治験への参加に不適切であると判断した患者

試 験 薬 剤 Org 9426 50 mg/5 mL/バイアル

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 手術室入室前に,硫酸アトロピン及び塩酸ヒドロキシジン,ミダゾラム等の筋弛緩に影響しな

い薬剤の通常量を投与する. 2)麻酔導入

酸素又は亜酸化窒素/酸素の換気下において,チオペンタールあるいはチアミラールの就眠量に

より急速導入する. 3)筋弛緩剤投与(挿管用量)

麻酔導入後血圧が安定した後に,Org 9426 0.6 mg/kg を単回静脈内投与し,十分な筋弛緩が得ら

れた後に気管挿管を行う.筋弛緩が不十分な場合には,Org 9426 0.1~0.3 mg/kg を補充投与する. 4)麻酔維持

イソフルランを含む亜酸化窒素/酸素の吸入により麻酔を調節維持する.イソフルラン濃度は必

要に応じて変更するが,可能な限り 2.5%以下に保ち,必要に応じてフェンタニルの通常量の追

加投与も可とする.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

231

2.7.6.11.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

試 験 方 法 ( つ づ き )

5)治験薬持続点滴注入 原則として筋弛緩が回復し始めた時点(T1 出現時)で,Org 9426 の持続点滴注入を初期速度

5 μg/kg/min(0.3 mg/kg/hr)で開始し,T1 がコントロール値の 5~10%に維持されるよう注入速

度を調節する. 本剤の総投与時間は原則として 3 時間以内とする.手術の延長等により 3 時間を超える場合は,

本剤の投与を中止し,必要に応じ他剤に切り替える. 6)回復方法

原則として TOFR が 0.7 以上となるまで自然回復させる.著しい回復の遷延がみられた場合は,

T1 がコントロール値の 25%に回復した時点でネオスチグミンを投与し,TOFR で完全に回復し

たことを確認する.

目 標 症 例 数 40 例

症例数の設定根拠

海外における持続点滴注入量の検討結果から,イソフルラン麻酔下での持続点滴注入量を抽出し,

データが正規分布に従い,分散が未知であると仮定した場合の信頼区間幅は約 3.5 となった.今

回の治験では,データのバラツキを考慮に入れ,またデータの信頼度を増すために信頼区間幅を

2.5 とし,95%信頼区間で例数設定を行った.その結果,本治験の必要 少例数は,29 例であっ

たが,筋弛緩作用は個人差が大きいことと,中止・除外症例を考慮して目標例数を 40 例とした.

実 施 症 例 数 投与症例数 38 例

観察項目及び評価

方 法

有効性 持続点滴注入量;T1 がコントロール値の 5~10%の範囲で維持され,5 分間安定したことを確認

した時点(初回安定確認時点)の注入量,初回安定時から 1 時間後の注入量,単位時間あたり

の持続点滴注入量,術後麻酔・呼吸管理時の持続点滴注入量 単収縮刺激(0.1 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋収縮(加速度トランスデューサー)反応によ

り計測した 大遮断率,作用発現時間,安定確認時点(筋弛緩が 5~10%の範囲で 5 分間安定し

たことを確認した時点),回復時間 薬物動態

神経筋遮断率が 5~10%に安定したと判断した時点,その 1 時間後で同様に安定したと判断した

時点及び TOFR が 0.7 に達したと判断した時点で採血を行い,血漿中の未変化体及び代謝物

(17-desacetyl 体)を液体クロマトグラフィー・マススペクトロメトリーで測定した. 安全性

心血管系機能,臨床検査,有害事象

統 計 解 析 方 法

初回安定確認時及び 1 時間経過後の持続点滴注入量については,安定確認時,5 分後及び 10 分後

の 3 ポイントについて 10 分後の平均値を基準として Dunnett 法を用いて多重比較を行った.検定

の有意水準は両側 5%とした. 初回安定時の10分後,並びに1時間経過後安定時の10分後の持続点滴注入量については,Wilcoxon符号付順位和検定を行い,検定の有意水準は両側 5%とした.

用 量 設 定 根 拠

本剤の前期及び後期第 II 相試験の結果から気管挿管及び手術可能な筋弛緩が得られる Org 9426 の

至適用量は 0.6 mg/kg であると判断された.したがって,本試験において気管挿管時の用量は

0.6 mg/kg とし,不十分な場合には 0.1~0.3 mg/kg を補充投与することとした. 外国の添付文書によると,持続点滴注入量は静脈麻酔下で 0.3~0.6 mg/kg/hr,吸入麻酔下で 0.3~0.36 mg/kg/hr とされている.本試験では,外国の 少量である 0.3mg/kg/hr で持続点滴注入を開始

し,原則として T1をコントロールの 5~10%に維持するようにした.

治 験 総 括 医 師 麻酔科

実 施 施 設

1) 麻酔科 ) 麻酔科 3) 麻酔科 4) 麻酔科 5) 麻酔科 ) 麻酔科 7) 麻酔部 ) 麻酔科 9) 麻酔科

治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

232

2.7.6.12.2 試験の流れ

表 2.7.6-172 検査・観察項目及び時期

初回安定時点及び初回

安定から約 1 時間後の安

定時点 検査・観察項目

手術前日まで

治験薬投与前

気管挿管

T1

出 現 時 点 安定時 5 分後 10 分後

T1= 25%

T1= 50%

T1= 75%

T1= 90%

TOFR ≧0.7 確認時

T1= 25~ 75%

手 術 後 1 週 間 以 内

同意取得のための 説明

患者背景等の調査 ● 同意取得 ●

大遮断率 ● 初

時 作用発現時間 ●

持続注入開始 から初回安定 までの時間

持続静脈内 注入速度

● ● ●

筋弛緩率 ● ● ●

時 血中濃度 ● ●

復 回復状態 回復時間

● ● ● ● ● ●

心拍数・血圧 ● ● ● ● 心電図 臨床検査 ●* ●

性 有害事象

*:同意取得前の臨床検査結果を使用する場合,手術前 2 週間以内に実施した検査であることが望ましい.

2.7.6.12.3 症例の構成

本試験については,前回の承認申請後,20 年 月に GCP 実地調査実施通知書を受理し,第 II 相持

続点滴注入試験(9601 試験)についてその準備を進めていたところ,実施対象施設の一つから同意文書

のすべて(5 症例)が見当たらない旨の報告を受けた.他の施設に対して調査を行った結果,以下の GCP

違反が明らかとなった.

1)9 施設 38 症例中,6 施設 23 例で同意文書の紛失.

2)治験薬管理表(1 施設),治験薬の納品書及び回収書控え(1 施設),終了報告書(1 施設)の紛失.

3)4 施設 16 例について,CRF と原資料の整合性について間接閲覧により確認したところ,12 症例に軽

微な有害事象の記載もれが発見された.また以下の項目において不整合及び CRF への記載もれ記入

漏れが確認された.患者背景(6 例),既往歴(4 例),合併症(4 例),担当医師(主治医)の治験参

加了解年月日(2 例),併用薬剤(術前:11 例,術中:2 例,術後:11 例),臨床検査値(原資料な

し:3 例,一部データの不整合:11 例),血中濃度測定結果伝票なし(11 例),麻酔記録(原資料)に

本治験薬を投与した記録がない症例(1 例).これらの GCP 違反例については 20 年 月に医薬品

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

233

副作用被害救済・研究振興調査機構に報告を行った.

以上のことから本試験を,評価資料ではなく参考資料として使用することとした.

登録症例

38 例

治験薬投与症例

38 例

有効性評価対象 有効性評価除外症例 安全性評価対象

28 例 10 例 38 例

(No.31,32,33,34,35,61,62,74,81,83)

図 2.7.6-40 症例の構成

2.7.6.12.4 有効性

2.7.6.12.4.1 挿管用量による最大遮断率及び作用発現時間

挿管用量 0.6 mg/kg による 大遮断率は 99.46±1.37%,作用発現時間は 100.54±48.67 秒であった.

2.7.6.12.4.2 持続点滴注入量の安定性

初回の安定確認時点及び 1 時間経過後の安定確認時点における持続点滴注入量を,Dunnett法による多

重比較及びWilcoxon符号付順位和検定の結果とあわせて表 2.7.6-173に示した.

初回安定時注入量及び 1 時間経過後注入量は,安定確認時ではそれぞれ 5.000 及び 4.873 μg/kg/min,5

分後では 5.163 及び 4.871 μg/kg/min,10 分後では 5.652 及び 4.823 μg/kg/min であった.初回安定時,1

時間後の安定時ともに,測定時点 3 ポイント間(安定確認時,5 分後,10 分後)の注入量の平均値は 95%

信頼区間内にあり,測定時点による差はなかった.

各時点における 10 分後の値を基準とした Dunnett 法による多重比較においても,いずれも注入量に有

意差はなく 5 分毎の測定間では大きな変動は認められなかった.また,初回と 1 時間後の安定時点の 10

分後測定値の比較においても,有意な差は認められなかった.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

234

表 2.7.6-173 安定時の持続点滴注入量

測定時点 n 平均値±標準偏差 (μg/kg/min)

平均値の 95%信頼区間

10 分後を基準と

した Dunnett 法に

よる多重比較

10 分後測定値にお

ける Wilcoxon の符

号付き順位和検定 安定確認時 28 5.000±1.533 4.406~5.594 P=0.0915 5 分後 27 5.163±1.626 4.520~5.806 P=0.2756

初回安定時

10 分後 25 5.652±1.445 5.055~6.249 - 安定確認時 15 4.873±1.216 4.200~5.547 P=0.4787 P=0.1045a) 5 分後 14 4.871±1.384 4.073~5.670 P=0.7960

1 時間経過後 の安定時

10 分後 13 4.823±1.368 3.996~5.650 - a):初回安定時(10 分後)注入量 vs. 1 時間経過後の安定時(10 分後)注入量

単位時間当たりの持続点滴注入量の平均値及び標準偏差は 5.50±1.41 μg/kg/min(範囲 3.43~

8.24 μg/kg/min)であった(表 2.7.6-174).

表 2.7.6-174 単位時間当たりの持続点滴注入量

n 平均値(μg/kg/min) 標準偏差

28 5.50 1.41

2.7.6.12.4.3 回復時間

回復時間の解析症例 18 例の回復方法の内訳は,自然回復が 16 例,拮抗剤による回復が 2 例であった.

自然回復例及びネオスチグミン使用例別に,持続点滴注入の終了時からTOFのT1 がコントロール値の

25,50,75 及び 90%までの回復時間,及びTOFRの 0.7 までの回復時間を 表 2.7.6-175に示した.25%,

50%,75%及び 90%までの回復時間はそれぞれ,10.69±5.37 分,17.61±7.11 分,27.09±11.60 分及び 33.63

±14.13 分であった.

表 2.7.6-175 T1の 25,50,75 及び 90%までの回復時間,並びに TOFR の 0.7 までの回復時間

(自然回復時間または拮抗剤による回復時間)

自然回復 拮抗剤回復 回復

n 平均値±標準偏差

(分) 平均値の

95%信頼区間 n

平均値±標準偏差 (分)

平均値の 95%信頼区間

25% 16 10.69± 5.37 7.82~13.55 2 12.75± 6.72 50% 16 17.61± 7.11 13.82~21.40 2 16.50± 8.84 75% 16 27.09±11.60 20.91~33.28 2 20.25±10.96 計算せず

90% 10 33.63±14.13 23.52~43.74 1 17.25 TOFR=0.7 14 40.32±12.98 32.83~47.82 2 21.25±11.31

Page 54: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

235

自然回復例及びネオスチグミン使用例別に,TOFのT1 がコントロール値の 25%から 75%まで回復す

る回復時間を表 2.7.6-176に示した.回復時間の平均値は,自然回復例が 16.41±8.01 分,拮抗剤使用例

が 7.50±4.24 分であった.

表 2.7.6-176 T1の 25%から 75%までの回復時間(自然回復時間または拮抗剤による回復時間)

自然回復 拮抗剤回復 回復

n 平均値±標準偏差

(分) 平均値の

95%信頼区間 n

平均値±標準偏差 (分)

平均値の 95%信頼区間

25%~75% 16 16.41±8.01 12.14~20.68 2 7.50±4.24 計算せず

以上の結果から,筋弛緩状態をモニターしながら本剤を持続点滴注入することにより術中安定した筋

弛緩状態が得られることが示唆された.

2.7.6.12.5 薬物動態

表 2.7.6-177に,評価症例における持続点滴注入開始後の初回安定時から注入終了後のTOFR 0.7 の回

復までの未変化体とその代謝物(17-desacetyl体)の血中濃度推移を標準偏差及び中央値の 95%信頼区間

とあわせて示した.

初回安定時での未変化体の血中濃度は 1312.54±321.92 ng/mL であった.また,1 時間経過後安定時点

での血中濃度は 1306.00±208.28 ng/mL に維持された.更に,持続点滴注入終了後の TOFR≧0.7 回復確

認時での未変化体の血中濃度は 638.82±243.95 ng/mL であった.

表 2.7.6-177 未変化体とその代謝物(17-desacetyl 体)の血中濃度推移(ng/mL)

測定時点 薬物 症例数 平均値 標準偏差 中央値 中央値の 95%信頼区間 未変化体 27 1312.54 321.92 1240.80 1120.30~1463.20

初回安定時 17-desacetyl 体 27 10.91 5.23 9.80 7.50~14.80

未変化体 18 1306.00 208.28 1335.10 1145.60~1491.30 1時間後

17-desacetyl 体 18 11.68 2.33 11.55 9.70~13.80 未変化体 27 638.82 243.95 588.50 522.40~680.80

TOF≧0.7a) 17-desacetyl 体 27 1.07 2.34 0.00 0.00~0.00

a):TOFR: TOF ratio (T4/T1),TOFR≧0.7 は抜管可能な時点

また,表 2.7.6-178に肝機能障害あるいは腎機能障害を有する症例の血中未変化体濃度推移を示した.

そのうち,肝機能障害を有する 1 例(症例番号 81)において平均値+2×標準偏差の値を超える血中濃

度を示した.その他の症例については,いずれも平均値+2×標準偏差の値を超えるものはなく,蓄積

性及び排泄遅延の疑われる症例は認められなかった.

表 2.7.6-178 肝機能あるいは腎機能障害症例における血中未変化体濃度推移(ng/mL)

症例番号 既往歴 合併症 初回安定時 1 時間後 TOF≧0.7

75 - 肝機能障害 1255.8 1601.8 717.2 81 - B 型肝炎 1343.2 2003.2 -

82 急性腎炎 B 型肝炎

- 1251.5 952.8 680.8

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

236

2.7.6.12.6 安全性

2.7.6.12.6.1 有害事象

臨床検査値異常変動,心拍数・血圧及び心電図の異常変動以外の有害事象については,評価対象 38

例中 5 例(13.2%)で 10 件発現し,その内訳は発熱 4 件,創痛 3 件,嘔気,かゆみ及び両側内踝部血管

炎各 1 件であった.発熱,創痛,嘔気及びかゆみは手術に伴うもので,また両側内踝部血管炎は治験実

施 1 週間後に採血部位に出現したものであり,いずれも本剤との因果関係はなしと判断された.

心拍数・血圧及び心電図については,評価対象 38 例中 17 例で心拍数増加,15 例で血圧変動(上昇又

は低下),1 例で上室性二段脈がみられたが,いずれも本剤との因果関係は認められなかった.なお同一

症例で複数回同じ有害事象が発現しても 1 件として集計した.

2.7.6.12.6.2 臨床検査値異常

臨床検査値異常変動の発現頻度を 表 2.7.6-179に示す.臨床検査値異常変動は評価対象 38 例中 27 例

で 73 件みられた.B型肝炎(慢性)を合併していた 1 例でASATの異常変動(37→49→19 mIU)が「B

型肝炎のため」とされた以外は,手術の影響によって生じた変化と判断され,本剤との因果関係を否定

できない異常変動は認められなかった.

表 2.7.6-179 臨床検査値異常変動の発現頻度

異常変動と本剤との関連性(件数) 検査項目及び異常発現内容

無 疑 有 血液学的検査

赤血球数減少 12 0 0 白血球数増加 14 0 0 ヘモグロビン低下 15 0 0 ヘマトクリット低下 16 0 0 血小板数減少 1 0 0

血液生化学的検査 ASAT 上昇 3 0 0 総コレステロール上昇 1 0 0 総コレステロール低下 1 0 0 尿素窒素低下 2 0 0 クレアチニン低下 1 0 0 総ビリルビン上昇 2 0 0 Na 低下 1 0 0 K 上昇 1 0 0 Cl 低下 1 0 0 Ca 低下 2 0 0

発現件数合計 73 0 0

2.7.6.12.7 結論

本剤 0.6 mg/kg 投与後,気管挿管を行ない,イソフルランで麻酔を維持した.神経筋遮断が回復し始

めた時点で 5 μg/kg/min の持続点滴注入に切り換え,T1 がコントロール値の 5~10%に維持されるよう注

入速度を調節した.初回安定確認時及び 1 時間後の安定確認時の注入速度の変動は少なく,安定した筋

弛緩状態が得られ,単位時間当たりの点滴注入量の範囲は 3.43~8.24 μg/kg/min(平均 5.5 μg/kg/min)で

Page 56: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 9601 試験)

237

あった.自然回復時間の平均値は 16.4 分であった.また,安全性の面については,本剤投与後に評価対

象 38 例中 34 例,116 件の有害事象が発現したが,いずれも本剤との因果関係はなしと判断された.

以上の結果から,筋弛緩状態をモニターしながら本剤を持続点滴注入することにより,術中安定した

筋弛緩状態が得られることが示唆された.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

238

2.7.6.13 〔参考資料〕前期第Ⅱ相試験(筋弛緩作用及び安全性の検討)[CV-9141 試験;5.3.5.2.12]

2.7.6.13.1 試験方法の概略 項 目 内 容

治験依頼者名 日本オルガノン株式会社 申請資料中の該当箇

所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ相試験

目 的 (1)Org 9426 の安全性を検討する. (2)血漿中濃度と筋弛緩作用の関連を検討する. (3)筋弛緩作用についてベクロニウムと比較検討する.

試 験 の 種 類 非盲検/多施設臨床試験

対 象 患 者

1)選択基準: (1) 一般状態が良好で(ASA 分類 Class 1~2)ある患者 (2) 手術部位にのみ障害を有する成人男子の手術予定患者(年齢 20~60 歳) (3) 治験の内容を説明して同意を得た患者 2)除外基準: (1) 神経筋疾患(重症筋無力症,筋無力症候群,筋緊張症候群など)を有する患者 (2) 重症の心,肝及び腎疾患を有する患者 (3) 呼吸困難,気道閉鎖又は気管支喘息を有する患者 (4) 電解質異常,酸・塩基平衡異常を有する患者 (5) 低体温麻酔及び低体温潅流法による人工心肺使用患者 (6) 臭素又は筋弛緩剤に対する過敏症を有する患者 (7) その他担当医師が本治験の参加に不適と判断した患者

試 験 薬 剤 治験薬:Org 9426 50 mg/5 mL/バイアル 対照薬:ベクロニウム 4 mg/1 mL/アンプル(凍結乾燥品,使用時に注射用蒸留水に溶解)

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 硫酸アトロピンもしくは硫酸アトロピンと塩酸ヒドロキシジンの通常量を試験薬投与 30 分前

に投与する. 2)麻酔導入

麻酔導入としてはチオペンタールナトリウムによる急速導入を用いる. 3)気管挿管

Step 1~3 では麻酔導入後,スキサメトニウム 1 mg/kg 投与により挿管を行い,筋弛緩から回復

後,単収縮高が 5 分間以上安定するまで観察を行った.Step 4 では,Org 9426 あるいはベクロ

ニウムの挿管用量投与 2 分後に挿管を行った. 4)麻酔維持

麻酔の維持は,酸素 2 L/min+亜酸化窒素 4 L/min+イソフルラン(0.5~2.5%)で行った.また,

適正換気を行い,血液 pH は約 7.4,pCO2は 35~40 mmHg に保った. 5)筋弛緩剤投与

Step 1(力価の検討);少量累積投与法として Org 9426 0.05 mg/kg 又はベクロニウム 0.01 mg/kgを静脈内投与し,単収縮高が投与前のコントロール値の 10%以下になるまで同量を反復投与し

た.ただし,反復投与は単収縮高が少なくとも 3 回連続して同じ高さになった時点で行った. Step 2,4(筋弛緩作用及び気管挿管の検討);初回量として Org 9426 0.3 mg/kg,0.6 mg/kg,0.9 mg/kg 又はベクロニウム 0.15 mg/kg を静脈投与した.初回投与後筋弛緩が不十分な場合は,

Step 2 では 大遮断率を,また Step 4 では挿管スコアを評価した後,それぞれ Org 9426 0.3 mg/kgあるいはベクロニウム 0.05 mg/kg を補充投与した.術中継続して筋弛緩が必要な場合は,単収

縮高がコントロールの 25%回復した時点で Org 9426 0.1 mg/kg 又はベクロニウム 0.02 mg/kg を

追加投与した. Step 3(筋弛緩作用と血中濃度の検討);Org 9426 の 0.6 mg/kg を単回静脈投与した.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

239

2.7.6.12.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

試 験 方 法 ( つ づ き )

6)神経筋機能の回復 Step 1,2,4;自然回復させるか,又は拮抗剤(硫酸アトロピン 1.0 mg 及び臭化ネオスチグミ

ン 2.5 mg)を約 2 分間かけて静脈内投与し,90%以上回復するまで観察を行った. Step 3;回復は原則として自然回復を行い,90%以上回復するまで観察を行った.

目 標 症 例 数

(1) Step 1 Org 9426 0.05 mg/kg 群;10 例,ベクロニウム 0.01 mg/kg 群;10 例

(2) Step 2 Org 9426 0.3 mg/kg 群;21 例,0.6 mg/kg 群;21 例,0.9 mg/kg 群;21 例,ベクロニウム

0.15 mg/kg 群;21 例 (3) Step 3

Org 9426 0.6 mg/kg 群;10 例 (4) Step 4

Org 9426 0.3 mg/kg 群;15 例,0.6 mg/kg 群;15 例,0.9 mg/kg 群;15 例,ベクロニウム

0.15 mg/kg 群;15 例

症例数の設定根拠

Step 1 今回海外のデータからある程度の結果も予想されることから累積投与法を採用し,かつ,1 症例

につき 低 3 回の投与を実施する事を保証する事により用量反応曲線を用いた推定を行うために

必要と考えられる 低 30 ポイントの測定データを確保する事を目的とした. Step 2 以前に行った Pancuronimn bromide, vecuroninm bromide 単剤における検討結果から,各評価項目の

検討に必要な症例数を 1 投与群あたり 10 例とした.本治験においては,回復方法(自然回復,桔

抗剤投与)別の比較検討をも行う事から,投与薬剤群あたり 20 例が必要と考えた.なお,施設毎

の症例数を均一化するため,目標症例数を1施設 3 例(合計 21 例)とした. Step 3 術中に採血することを考え,Step l と同様の理由により血中濃度測定の 小例数として 10 例とし

た. 実 施 症 例 数 Step 1 に 29 例,Step 2 に 98 例,Step 3 に 10 例,Step 4 に 66 例で合計 203 例に投与された.

観察項目及び評価方

有効性,薬物動態,安全性 単収縮刺激(0.1 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋収縮(フォーストランスデューサー)反応に

より筋弛緩に関するパラメータを計測した. (1) Step 1

少量累積投与により 95%以上の筋弛緩が得られる状態での安全性. 少なくとも 3 回累積投与された症例についての ED50,ED90及び ED95,ベクロニウムとの相対

力価. (2) Step 2

Org 9426 の 0.3,0.6,0.9 mg/kg の 3 群と ベクロニウム 0.15 mg/kg 群の 大遮断,作用発現時

間,作用持続時間,追加投与間隔,回復性及び安全性について比較し,本剤の至適用量及び特

性を評価した. (3) Step 3

血中濃度を測定し,本剤の薬物動態を検討した.また,筋弛緩率と血中濃度との関係から 50%作用発現濃度を求め,本剤の作用特性を評価した.

(4) Step 4 塩化スキサメトニウムを投与せず,本剤 0.3,0.6,0.9 mg/kg 又はベクロニウム 0.15 mg/kg を投

与し, 大遮断時の挿管スコアを評価後,気管挿管を試みて挿管の可否を判定した.挿管が不

可能な場合補充投与後挿管を行った.

安全性は心血管系機能,臨床検査,副作用について検討を行った.

Page 59: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

240

2.7.6.12.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

統 計 解 析 方 法

患者背景 χ2検定,Wilcoxon 検定,Kruskal- Wallis 検定

Step 1 累積用量-反応関係については,回帰分析により回帰方程式を求め,ED50,ED90,ED95を推定

した.相対力価の比較については,ベクロニウムを対照として Student t 検定を行った. Step 2

筋弛緩効果については二元配置分散分析を用い,また,各群間に対しては,Tukey 法及び Dunnett法を用いて多重性の調整を行った.ここで,Dunnett 法を用いるときは,ベクロニウムを対照

にすることとした. Step 4

挿管スコアについてはベクロニウムを含めて Kruskal-Wallis 検定を行い,血圧・脈拍について

は各 Step 毎に分散分析(GLM)を行うこととした. 各検定に対する有意水準は,患者背景については 15%,その他の検定については 5%にすること

とした.

用 量 設 定 根 拠

海外のデータから本剤の ED90は約 0.3 mg/kg で,初回投与量は 0.6 mg/kg(ED90×2)とされている.

また,これまでのパンクロニウム,ベクロニウムでの検討及び経験で海外の臨床使用量と日本人

における使用量には差がなかったことから,本剤の投与量は 0.6 mg/kg が適当であることが予測さ

れた.したがって,Step 3 では 0.6 mg/kg を,Step 2 及び Step 4 では 0.6 mg/kg 群と,その半量であ

る 0.3 mg/kg 群及び 1.5 倍量の 0.9 mg/kg 群を設定した. なお,Step 1 では,海外のデータから ED90を 0.3 mg/kg と想定すると,0.05 mg/kg の累積投与では

6 回投与する必要があり,各投与の作用発現時間を約 3 分間と仮定すると投与終了までに 18 分も

かかることになり,被験者に対する負担が必要以上に増え,1~2 回目の作用が減弱する可能性も

考えられたため,投与回数が累積投与で 3~4 回となる倍量の 0.1 mg/kg と設定するのが適当と結

論づけられた(治験開始後,治験担当医師よりこの用量では累積投与にならない旨の報告を受け,

本剤 0.05 mg/kg,ベクロニウム 0.01 mg/kg と半量とした).

対照薬の選定根拠 ベクロニウムは本邦で承認されている非脱分極性筋弛緩剤のうち短時間型であり,なおかつ も

繁用されている筋弛緩剤であることから対照薬として選定した. 治 験 総 括 医 師 麻酔科

実 施 施 設

1) 麻酔科 2) 麻酔科 3) 麻酔科 4) 麻酔科 5) 麻酔科 6) 麻酔・蘇生科 7) 麻酔・蘇生科

治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

2.7.6.13.2 症例の構成

本治験成績については,19 年 月 日に開催された症例検討会の結果をもとに集計解析が行われ

ていたが,19 年 月に社内監査準備を行った際に問題点(未報告例,対照薬に市販薬を使用,GCP

不遵守例の取扱い等)が明らかになったため,全実施施設に麻酔記録の再調査を依頼し,未報告例につ

いては現時点で可能な限りの情報を入手した上で 19 年 月 日に再度症例検討会を行った.その結

果,「GCP 遵守状況が不適切であった.」と判断せざるを得なかったため,「本試験成績を申請資料とし

て使用しない.」との結論に至った.

本項は,19 年 月 日の症例検討会で検討された症例取扱い基準に従い再集計・解析を行った結

果に基づいて作成した.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

241

治験薬投薬症例(203 例)

Step 1 0.1 mg/kg 0.05 mg/kg 0.01 mg/kg ベクロニウム 0.01 mg/kg

Step 2 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg ベクロニウム 0.15 mg/kg

Step 3 0.6 mg/kg

Step 4 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg 不明 ベクロニウム 0.15 mg/kg

29 7 11 1

10 98

28 27 21 22

10 10

66 16 19 16 1

14

除外症例(80 例)

Step 1 0.1 mg/kg 0.05 mg/kg 0.01 mg/kg ベクロニウム 0.01 mg/kg

Step 2 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg ベクロニウム 0.15 mg/kg

Step 3 0.6 mg/kg

Step 4 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg 不明 ベクロニウム 0.15 mg/kg

19 7 1 1

10 38

5 10 1

22 0

0 23

2 4 2 1

14

有効性評価症例(58 例) 安全性評価症例(123 例) Step 1

0.05 mg/kg Step 2

0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg

Step 3 0.6 mg/kg

Step 4 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg

10 10

28 9 7

12 0

0 20

7 7 6

Step 1 0.05 mg/kg

Step 2 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg

Step 3 0.6 mg/kg

Step 4 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg

10 10

60 23 17 20

10 10

43 14 15 14

図 2.7.6-41 症例の構成

Page 61: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

242

2.7.6.13.2.1 除外症例の詳細(重複あり)

(1)報告時期不適切症例(28 例)

未報告例 28 例については,重大な GCP 違反かつ各施設との契約違反であり,投与からデータ入手ま

でに長い年月が経過している事から,データの信頼性に問題があるため,有効性,安全性評価対象から

除外した.

(2)Step 1 の用量変更前の症例(7 例)

発足研究会で決定された 0.1 mg/kg の用量において Step 1の目的である累積投与にならなかった症例

であり,用量はその後 0.05 mg/kg に変更された.

Org 9426 0.1 mg/kg 使用症例の 7 例全例の症例記録回収時期が不適切であったため,有効性,安全性

評価対象から除外した.

(3)Step 1 実施中に開始された Step 2~4 の症例(65 例)

本剤は呼吸抑制作用を有し人工呼吸を必要とするため,健常人を対象とした第Ⅰ相試験の実施には倫

理的に問題があり,第Ⅰ相試験を実施していない.そこで Step 1 で安全性を確認後 Step 2 以降を開始す

ることと治験実施計画書で規定されていた.しかし,Step 1 の Org 9426 終投与は 1992 年 2 月 27 日で

あり,これ以前に Org 9426 が投与された症例は Step 2 で 35 例,Step 3 で 10 例,Step 4 で 20 例であった.

これらの症例はいずれも GCP 不遵守例であるので,集計解析からは除くこととした.

この規定に抵触する 65 例については,安全性を評価する事が科学的には問題ないため,この 65 例を

含めた集計解析(安全性評価対象)と,65 例を除いた集計解析(有効性評価対象)の 2 つの解析を行う

事にした.

(4)契約期間外の症例(1 例)

本規定に抵触する症例は,1991 年度と 1992 年度の契約延長手続き期間の間に投与が行われたもので,

GCP 不遵守例となるため有効性,安全性評価対象から除外した.

(5)契約施設外の症例(2 例)

Step 2 の対照薬であるベクロニウム投与症例のうち 2 例が契約施設以外で投与された症例であった.

GCP 不遵守例であり,有効性,安全性評価対象から除外した.

(6)対照薬に市販薬を使用(46 例)

旧 GCP においても,対照薬は治験薬等に含まれ,治験薬管理者は治験薬等を治験依頼者から受領し,

他の医薬品と区別して保管・管理する旨規定されていた.しかし,本試験においては対照薬のベクロニ

ウムは治験依頼者からは提供されず,各々の参加施設が個々に購入したベクロニウムを治験に使用して

いた.

このため,ベクロニウム使用症例は全例 GCP 不適格例として,有効性,安全性評価対象から除外し

た(46 例).

(7)性別違反(6 例)

選択基準違反であり,本試験が第Ⅰ相試験を兼ねている事を考慮すると GCP にも抵触しているため

有効性,安全性評価対象から除外した(6 例).

(8)年齢違反(8 例)

選択基準違反であり,有効性,安全性評価対象から除外した(8 例).

(9)同意不適格(1 例)

本規定に抵触する症例は精神分裂病を合併しており,本人の同意しか取得されていないため,GCP 不

Page 62: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

243

遵守例として有効性,安全性評価対象から除外した.

2.7.6.13.3 有効性

Step 1 では,スキサメトニウム 1 mg/kg を投与して挿管後,筋弛緩からの回復を確認した後,本剤

0.05 mg/kg を T1 がコントロール値の 10%以下になるまで反復投与した.平均 4.5 回の投与でほぼ 100%

の筋弛緩がみられ,本剤の平均 ED50,ED90及び ED95はそれぞれ 0.102,0.225 及び 0.248 mg/kg であった.

Step 2 では,スキサメトニウム 1 mg/kgを投与して挿管後,筋弛緩からの回復を確認した後,初回量と

して本剤 0.3,0.6 又は 0.9 mg/kgを投与した.初回量による作用発現時間は用量依存的に短縮した. 大

遮断率は 0.3 mg/kg群 9 例中 7 例,0.6 mg/kg群及び 0.9 mg/kg群の全例で 100%であった.作用持続時間及

び自然回復時間は用量依存的に延長した(表 2.7.6-180).

表 2.7.6-180 筋弛緩作用及び回復時間(自然回復時間または拮抗剤による回復時間)

回復時間(分) 挿管用量

作用発現時間 (秒)

大遮断率 (%)

作用持続時間 (分) 自然回復 ネオスチグミン投与

0.3 mg/kg 130.2±53.7 (n=9)

99.3±1.48 (n=9)

25.61±7.26 (n=9)

15.4± 3.99 (n=4)

4.50±0.87 (n=3)

0.6 mg/kg 77.4±27.2* (n=7)

100.0 (n=7)

46.56±9.70* (n=7)

26.6±10.15 (n=3)

5.13±1.56 (n=4)

0.9 mg/kg 53.8± 8.3* (n=12)

100.0 (n=12)

67.39±14.03*§ (n=12)

37.7±17.02 (n=4)

5.06±2.35 (n=7)

数値は平均±標準偏差 2 群間比較:対数変換後 Tukey 型多重比較 *:0.3 mg/kg 群に対して有意(P<0.05), §:0.6 mg/kg 群に対して有意(P <0.05)

維持用量(0.1 mg/kg)の追加投与による作用持続時間には各群間で有意な差は認められなかった(表

2.7.6-181).また,各症例で投与間隔は一定であり,蓄積性は認められなかった.

表 2.7.6-181 維持用量の作用持続時間

作用持続時間(分) 挿管用量

1 回目 2 回目 3 回目 4 回目

0.3 mg/kg 15.3±3.41 (n=3)

16.4±2.08 (n=3)

19.2±6.31 (n=3)

19.2±7.10 (n=3)

0.6 mg/kg 16.4±3.66 (n=4)

17.9±4.55 (n=4)

17.2±3.91 (n=4)

19.6±7.54 (n=4)

0.9 mg/kg 18.0±1.30 (n=3)

17.8±0.58 (n=3)

18.3±0.64 (n=2)

18.0±1.84 (n=2)

数値は平均±標準偏差

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9141 試験)

244

Step 3 は Step 1 の実施後に開始することと治験実施計画書で規定されていたが,すべての症例で Step 1

の 終投与以前に治験薬が投与されていたためすべての症例を除外した.

Step 4 では,スキサメトニウムを投与せずに挿管用量として本剤の 0.3,0.6 又は 0.9 mg/kgを投与した.

挿管スコアは用量依存的に良好な方向に分布し,平均順位でみると 0.3 mg/kg<0.6 mg/kg<0.9 mg/kgの順で

あり,用量群間で有意な差が認められた(表 2.7.6-182).

表 2.7.6-182 挿管用量での挿管スコア

挿管スコア 挿管用量

優秀 良好 不良 不可 3 群間比較

0.3 mg/kg(n=7) 0(0.0%) 2(28.6%) 3(42.9%) 2(28.6%) 0.6 mg/kg(n=7) 1(14.3%) 4(57.1%) 1(14.3%) 1(14.3%) 0.9 mg/kg(n=6) 5(83.3%) 0(0.0%) 1(16.7%) 0(0.0%)

P=0.0154*

3 群間比較:Kruskal-Wallis 検定(P≦0.05 で有意) *: P≦0.05

2.7.6.13.4 安全性

Step1~4 を通して,5 例で有害事象 7 件(心拍数増加 3 件,血圧上昇 3 件,顔面・体幹の紅潮 1 件)

がみられた.心拍数増加及び血圧上昇 2 件は本剤との因果関係あり,血圧上昇 1 件及び紅潮は因果関係

不明と判断された.また,本剤との因果関係が不明な臨床検査値異常変動が 2 例 4 件(1 例で GOT,GPT

及び総ビリルビン増加,1 例で総ビリルビン増加)でみられた.なお同一症例で複数回同じ有害事象が

発現しても 1 件として集計した.

2.7.6.13.5 結論

本剤の効力は外国の報告とほぼ等しく,作用発現が早く十分な 大遮断が得られることから,気管挿

管用量として 0.6 mg/kg が適当と考えられた.追加投与による蓄積性がなく,確実に回復が得られるこ

と,有害事象も少ないことから安全性の高い筋弛緩剤であることが確認された.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9241 試験)

245

2.7.6.14 〔参考資料〕前期第Ⅱ相追加試験(各種筋弛緩剤のモニター上の特徴)[CV-9241 試験;

5.3.5.2.13]

2.7.6.14.1 試験方法の概要 項 目 内 容

治験依頼者名 日本オルガノン株式会社

申請資料中の該当

箇所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ相試験

目 的 ピペクロニウム,パンクロニウム,ベクロニウム,Org 9426 の 4 筋弛緩剤の筋弛緩作用を評価するモ

ニターの特性.

試 験 の 種 類 非盲検臨床試験

対 象 患 者

1)選択基準: (1) 一般の状態は良好で,手術部位のみの障害を有する患者 (2) 治験実施に先立ち同意が得られた患者 2)除外基準: (1) 神経筋疾患(重症筋無力症,筋無力症候群,筋緊張症候群等)を有する患者 (2) 重症の心,肝及び腎機能障害を有する患者 (3) 呼吸困難,気道閉塞又は気管支喘息を有する患者 (4) 電解質異常,酸・塩基平衡異常を有する患者 (5) 低体温麻酔及び低体温灌流法による人工心肺使用の患者 (6) 臭素又は筋弛緩剤に対する過敏症を有する患者 (7) 妊婦又は妊娠している可能性のある患者 (8) その他治験担当医師が本治験への参加に不適切であると判断した患者

試 験 薬 剤

Org 9426 50 mg/5 mL/バイアル ピペクロニウム 4 mg/バイアル パンクロニウム 4 mg/2 mL/バイアル ベクロニウム 10 mg/バイアル

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 手術室入室前に,硫酸アトロピン 0.5 mg/kg 及び塩酸ヒドロキシジン 25 mg を筋肉内投与する.

2)麻酔導入 チアミラール 5 mg/kg により急速導入する.

3)気管挿管 スキサメトニウム 1 mg/kg により筋弛緩を得,気管挿管を行う.

4)麻酔維持 イソフルラン(0.5~2.5%)を含む亜酸化窒素/酸素(各 2 及び 4L/分)の吸入により麻酔維持を

行う. 5)筋弛緩剤投与

気管挿管後,単収縮刺激(0.1 Hz,0.2 msec 矩形波)による反応によりスキサメトニウムの筋

弛緩からの回復を確認し,筋収縮反応が 5 分以上安定した状態をコントロール値とした.各筋

弛緩剤の ED50相当量すなわち ピペクロニウム 0.015 mg/kg パンクロニウム 0.02 mg/kg Org 9426 0.104 mg/kg ベクロニウム 0.012 mg/kg

を 100%の筋弛緩が得られるまで投与する. 6)回復

被験薬投与により単収縮が 100%遮断に達した時点から単収縮反応を記録しながら筋収縮を回

復させる.単収縮が 25%,50%,75%,80%及び 10 分以上にわたって安定して記録された時点

で 2 Hz の TOF 刺激を 4 回行う.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9241 試験)

246

2.7.6.13.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

目 標 症 例 数 ピペクロニウム 10 例,パンクロニウム 10 例,Org 9426 10 例,ベクロニウム 10 例

症例数の設定根拠 -

実 施 症 例 数 ピペクロニウム 4 例,パンクロニウム 7 例,Org 9426 7 例,ベクロニウム 9 例

観察項目及び評価

方 法

有効性 単収縮刺激(0.1 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋収縮(フォーストランスデューサー)反応に

より記録した T1がコントロール値の 25,50,75,80%に回復するまでの時間及びその時点での

TOFR 安全性

心血管系機能,臨床検査,副作用

統 計 解 析 方 法 回復時間(作用持続時間)については単収縮が 25,50,75,80%時及び定常状態になった時点の

それぞれにおいて 4 群の多重比較(Tukey,Sheffe)を行い,また各時点の TOFR も同様の検定を

行い,P<0.05 で有意差とした.

治 験 総 括 医 師 麻酔科

実 施 施 設 麻酔科

治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

2.7.6.14.2 症例の構成

本試験成績については,ベクロニウム及びパンクロニウムは市販品を用いており,GCP規定から逸脱

しているため,評価資料ではなく参考資料として取り扱うこととした(図 2.7.6-42).

治験薬投薬症例(33 例)

ピペクロニウム群

パンクロニウム群

Org 9426 群 ベクロニウム群

6 11 7 9

有効性評価対象(27 例) 安全性評価対象(33 例)

ピペクロニウム群

パンクロニウム群

Org 9426 群 ベクロニウム群

4 7 7 9

ピペクロニウム群

パンクロニウム群

Org 9426 群 ベクロニウム群

6 11 7 9

図 2.7.6-42 症例の構成

2.7.6.14.3有効性

単収縮反応が 25,50,75,80%及び定常状態(10 分以上にわたって一定した単収縮反応が記録され

た状態)に回復するまでの時間は,Org 9426 群が も短く,ベクロニウム群でその約 2 倍,パンクロニ

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9241 試験)

247

ウム群及びピペクロニウム群でその 5~6 倍を要した(表 2.7.6-183).

表 2.7.6-183 単収縮反応の自然回復時間

試験薬剤 n 25%回復時間

(分) 50%回復時間

(分) 75%回復時間

(分) 80%回復時間

(分) 定常状態到達

までの時間(分)

Org 9426 7 8.3±0.8 12.5±1.2 18.8±2.3 23.5±2.7 29.6±3.8 ベクロニウム 9 10.2±1.1 24.5±4.5 37.7±6.0 39.0±5.9 51.3±6.0 パンクロニウム 7 33.0± 2.1*§ 62.2± 5.8*§ 101.5± 9.6*§ 115.5±13.5*§ 128.8±12.4 ピペクロニウム 4 50.9±18.9*§ 72.4±21.0*§ 107.8±16.2*§ 133.5±20.4*§ 156.0±21.7

数値は平均±標準誤差 薬剤群間比較:Tukey 型多重比較 *:Org 9426 群に対して有意(P<0.05), §:ベクロニウム群に対して有意(P<0.05)

単収縮反応が同程度に回復した時点のT4/T1 を比較したところ,各薬剤群間で差は認められなかった

(表 2.7.6-184).すなわち,筋弛緩からの回復をTOFRで判定する場合に,筋弛緩剤の種類を考慮する必

要はないものと考えられた.

表 2.7.6-184 各薬剤の T4/T1(%)

試験薬剤 n 25%回復時

(n) 50%回復時 75%回復時 80%回復時 定常状態到達時

Org 9426 7 2.3(1) 18.1±2.2 43.1±5.9 58.3±4.9 80.7±3.0 ベクロニウム 9 6.1±5.1(2) 25.4±6.0 42.2±7.6 49.4±4.2 70.0±4.1 パンクロニウム 7 10.4±3.9(4) 28.6±5.9 51.9±9.0 58.1±9.6 69.0±7.3 ピペクロニウム 4 - 26.5±4.3 49.8±6.7 64.8±7.6 72.0±8.5 数値は平均±標準誤差

2.7.6.14.4 安全性

治験薬投与後 15 分間の循環器系への影響を評価したところ,心拍数の平均値においてパンクロニウ

ム群のみ上昇傾向がみとめられた.

治験薬剤と関連性があると思われる有害事象及び臨床検査値の異常変動は認められなかった.

2.7.6.14.5 結論

臓器障害を有さない成人手術患者に現在開発中の 2 つの筋弛緩剤,ピペクロニウムとロクロニウム,

及び従来からのパンクロニウムとベクロニウムの 4 薬剤のいずれかを投与し,遮断からの回復中同一の

遮断程度で TOFR を測定し,薬剤間で比較した.その結果は拇指内転筋の機械的収縮を指標にし,かつ

同一条件で薬剤を使用させた場合には,4 つの薬剤間に TOFR で差は認められなかった.遮断からの回

復時間はロクロニウムとベクロニウムで短く,パンクロニウムとピペクロニウムで明らかに長時間を要

した.循環器系に対してはパンクロニウムで軽度頻脈傾向を示したのみであった.以上の結果からロク

ロニウムは短時間作用性,ピペクロニウムは長時間作用性の筋弛緩剤で,遮断の判定には従来の同属薬

剤と同様の考え方で TOFR を指標にしてよいことがわかった.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9242 試験)

248

2.7.6.15 〔参考資料〕後期第Ⅱ相試験(各科領域手術患者に対する至適用量の検討)[CV-9242 試験;

5.3.5.2.14]

2.7.6.15.1 試験方法の概略 項 目 内 容

治験依頼者名 日本オルガノン株式会社 申請資料中の該当

箇所分冊番号 11 巻

開発のフェーズ 第Ⅱ相試験

目 的 塩酸スキサメトニウムを使用せず,Org 9426 のみによる挿管及び手術時の筋弛緩作用並びに安

全性を検討し,Org 9426 の至適用量を決定する.この際,ベクロニウムを対照薬として比較検

討する. 試 験 の 種 類 非盲検/多施設臨床試験 対 象 患 者 1)選択基準:

(1) 原則として 20 歳以上 65 歳未満の男女各科領域の手術患者(ASA 分類 Class 1~2) 2)除外基準: (1) 神経筋疾患(重症筋無力症,筋無力症候群,筋緊張症候群等)を有する者 (2) 重症の肝及び腎疾患を有する者 (3) 呼吸困難,気道閉塞又は気管支喘息を有する者 (4) 電解質異常,酸・塩基平衡異常を示す者 (5) 低体温麻酔及び低体温潅流法による人工心肺使用の者 (6) 妊娠又は妊娠している可能性のある者 (7) その他担当医師が本治験の参加に不適と判断した者

試 験 薬 剤 治験薬:Org 9426 50 mg/5 mL/アンプル 対照薬:ベクロニウム 4 mg/アンプル(凍結乾燥品,使用時に注射用蒸留水に溶解)

試 験 方 法

1)麻酔前投薬 塩酸ヒドロキシジン(12.5~50.0 mg)+硫酸アトロピン(0.3~0.5 mg)を年齢,体重に応じ

て入室 30 分前に投与した. 2)麻酔導入

チオペンタール 4~6 mg/kg,フェンタニル 2~3 μg/kg で導入し,マスクで笑気 4 L/分+酸素

2 L/分吸入下に測定機器の設定を行った.終了後 100%酸素で換気し,必要がある場合チオペ

ンタールを適当量追加した. 3)筋弛緩剤投与

麻酔導入後,挿管量として Org 9426 の 0.3,0.6,0.9 mg/kg もしくはベクロニウム 0.15 mg/kgを上腕の静脈内に 10 秒以内で注入し,記録紙にマークした.なお,マークは治験薬を点滴チ

ューブに注入後,活栓を開け薬剤を流入させた時点とした. 初回投与後筋弛緩が不十分な場合は, 大遮断率,挿管スコアを評価した後,それぞれ

Org 9426 の 0.3 mg/kg あるいは ベクロニウムの 0.05 mg/kg を投与し,同様に記録紙にマーク

した. 4)麻酔維持

笑気 4 L/分+酸素 2 L/分+イソフルラン 1 MAC 以下で維持麻酔を行った.必要な場合にはフ

ェンタニルを適宜追加した.また,適正換気を行い,血液 pH 約 7.4,pCO2は 35~40 mmHgに保ち,できる限り動脈圧モニターを行った.

5)筋弛緩の維持 術中継続して筋弛緩の維持が必要な場合は,単収縮高が 25%回復した時点で Org 9426 の

0.1 mg/kg 又はベクロニウム 0.02 mg/kg を追加投与した. 6)神経筋機能の回復

自然回復又は拮抗剤(硫酸アトロピン 1.0 mg+臭化ネオスチグミン 2.5 mg)を約 2 分間かけ

て静脈内投与し,コントロール値が 90%以上回復するまで観察を行った.拮抗剤を使用する

場合は,可能な限り単収縮高が 25%回復した時点とした.また,自然回復で 75%以上回復し

ない状態で単収縮高が定常状態に達した場合は,TOF の T4値を確認後モニターの中止,又は

拮抗剤の投与を行った.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9242 試験)

249

2.7.6.14.1 試験方法の概略(続き) 項 目 内 容

目 標 症 例 数 108 例 Org 9426 0.3 mg/kg 群:27 例,0.6 mg/kg 群:27 例,0.9 mg/kg 群:27 例,ベクロニウム 0.15 mg/kg群:27 例

症例数の設定根拠 -

実 施 症 例 数 121 例 Org 9426,0.3 mg/kg 群 32 例,0.5 mg/kg 群 2 例,0.6 mg/kg 群 33 例,0.9 mg/kg 群 27 例,

ベクロニウム 0.15 mg/kg 群 27 例

評 価 方 法

1)有効性 単収縮刺激(0.1 Hz,パルス幅 0.2 msec)による筋収縮(フォーストランスデューサー)反応

により計測した作用発現時間, 大遮断率,挿管スコア,作用持続時間,追加投与間隔,自

然回復時間 2)薬物動態

維持投与直前に採血を行った 3)安全性

心血管系機能,臨床検査,副作用

統 計 解 析 方 法

1)患者背景 性別,ASA 分類,既往歴の有無,合併症の有無,併用薬の有無及び回復方法については,

χ2 検定で有意水準 15%で解析を行った.年齢及び体重については,Kruskal-Wallis 検定で有

意水準 15%で解析を行った. 2)筋弛緩作用の検討

大遮断率,作用発現時間及び作用持続時間:Tukey 法 3)気管挿管の検討

初回投与での挿管の可否:χ2検定 挿管可能となった時間:Tukey 法 挿管スコア:Kruskal-Wallis 検定

4)追加投与における回復時間の検討 自然回復,拮抗剤回復:Tukey 法

用 量 設 定 根 拠

海外では初回投与量として本剤の ED90(約 0.3 mg/kg)の 2 倍量の 0.6 mg/kg が用いられている.

更にこれまでのパンクロニウム,ベクロニウムの臨床使用経験から海外の臨床使用量と日本人

における使用量には差がないものと考えられること,及び本剤の前期第Ⅱ相試験の結果から初

回投与量として 0.6 mg/kg が手術中の筋弛緩のための至適用量と判断され,0.3 mg/kg でも気管

挿管も可能であると判断されたため,0.6 mg/kg 群と,その半量である 0.3 mg/kg 及び 1.5 倍量の

0.9 mg/kg 群を設定した. 対照薬のベクロニウムの承認用量は 0.08~0.1 mg/kg であるが,適宜増減の範囲と解釈でき,確

実な気管挿管を得るために一般的に使用されている量の 0.15 mg/kg とした. 治 験 総 括 医 師 麻酔科

実 施 施 設

1) 麻酔科 ) 麻酔科 3) 麻酔科 ) 麻酔科 5) 麻酔科 6) 麻酔科・蘇生科 7) 麻酔科・蘇生科 8) 麻酔科 9) 麻酔科

治 験 期 間 19 年 月~19 年 月

Page 69: 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患 …...2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 021-017 試験) 182 2.7.6.7 〔参考資料〕スフェンタニル麻酔下成人患者における持続注入試験[021-017

2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9242 試験)

250

2.7.6.15.2 症例の構成

本治験成績については,19 年 月 日に開催された症例検討会の結果を基に集計解析が行われて

いたが,19 年 月に社内監査準備を行った際に問題点(未報告例,対照薬に市販薬を使用,GCP 不

遵守例の取扱い等)が明らかになったため,全実施施設に麻酔記録の再調査を依頼し,未報告例につい

ては現時点で可能な限りの情報を入手した上で19 年 月 日に再度症例検討会を行った.その結果,

「GCP 遵守状況が不適切であった.」と判断せざるを得なかったため,「本試験成績を申請資料として使

用しない.」との結論に至った.

本項は,19 年 月 日の症例検討会で検討された症例取扱い基準に従い再集計・解析を行った結

果に基づいて作成した.

治験薬投薬症例(121 例) 0.3 mg/kg 群 0.5 mg/kg 群 0.6 mg/kg 群 0.9 mg/kg 群

ベクロニウム群

32 2

33 27 27

除外症例(41 例)

0.3 mg/kg 群 0.5 mg/kg 群 0.6 mg/kg 群 0.9 mg/kg 群

ベクロニウム群

5 2 5 2

27

有効性評価対象(78 例) 安全性評価対象(80 例) 0.3 mg/kg 群 0.6 mg/kg 群 0.9 mg/kg 群

ベクロニウム群

27 27 24 0

0.3 mg/kg 群 0.6 mg/kg 群 0.9 mg/kg 群

ベクロニウム群

27 28 25 0

図 2.7.6-43 症例の構成

2.7.6.15.2.1 除外症例の詳細

(1)報告時期不適切症例(12 例)

未報告例 12 例については,重大な GCP 違反かつ各施設との契約違反であり,投与からデータ入手ま

でに長い年月が経過している事から,データの信頼性に問題があるため,有効性,安全性評価対象から

除外した.ただし,副作用が報告された症例については,その項目に限り集計に加えた.

(2)対照薬に市販薬を使用(27 例)

旧 GCP においても,対照薬は治験薬等に含まれ,治験薬管理者は治験薬等を治験依頼者から受領し,

他の医薬品と区別して保管・管理する旨規定されていた.しかし,本試験においては対照薬のベクロニ

ウムは治験依頼者からは提供されず,各々の参加施設が個々に購入したベクロニウムを治験に使用して

いた.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9242 試験)

251

このため,ベクロニウム使用症例は全例 GCP 不適格例として,有効性,安全性評価対象から除外し

た(27 例).

(3)年齢違反(2 例)

選択基準違反であり,有効性,安全性評価対象から除外した(2 例).

2.7.6.15.3 有効性

0.6 mg/kg群及び 0.9 mg/kg群では全症例で初回量による挿管が可能であったが,0.3 mg/kg群 5 例で挿

管が不可能であった.これらの症例の初回量による 大遮断率は 23.3~67.3%で,5 例中 4 例は補充投与

(0.3 mg/kg)により気管挿管が可能となった.他の 1 例では初回量投与時に挿管スコアの観察が行われ

ず,経鼻挿管された.挿管スコアは用量依存的に良好な方向に分布し,用量群間でスコア分布に有意な

差が認められた(表 2.7.6-185).

表 2.7.6-185 気管挿管の可否及び挿管スコア分布

分 類 初回投与量 項 目 コード 0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg

検定結果

挿管の可否 可 否

22 5

27 0

24 0

χ2検定 P=0.006

挿管スコア a)

優秀 良好 不良 不可

3 7

10 7

15 9 2 0

19 3 1 0

Kruskal-Wallis 検定 P=0.0001

a):麻酔導入時にチオペンタールが 4~6 mg/kg を超えて投与された症例(0.6 mg/kg 群,0.9 mg/kg 群各

1 例)を挿管スコア評価対象から除外した.

挿管可能となった時間は用量依存的に短縮し,0.3 mg/kg群で他の 2 群と比較して有意に長かった(表

2.7.6-186).

表 2.7.6-186 挿管可能時間

初回投与量 n 挿管可能時間(秒)(範囲)

0.3 mg/kg 22 243.9±108.5 (100~470)

0.6 mg/kg 27 167.8±104.1* ( 50~460)

0.9 mg/kg 24 116.6± 63.9* ( 29~300) 数値は平均±標準偏差(範囲) 群間比較:Tukey 型多重比較, *:0.3 mg/kg 群に対して有意(P<0.05)

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9242 試験)

252

大遮断率は,0.3 mg/kg群 27 例中 6 例,0.6 mg/kg群 27 例中 24 例及び 0.9 mg/kg群の全例で 100%に

達した.作用発現時間は用量依存的に短縮し,作用持続時間は用量依存的に延長した(表 2.7.6-187).

表 2.7.6-187 筋弛緩作用

初回投与量 大遮断率 (%)

作用発現時間 (秒)

作用持続時間 (分)

0.3 mg/kg 83.7±18.13 (n=27)

269.5±97.93 (n=27)

17.2±6.84 (n=18)a)

0.6 mg/kg 99.5±1.46 (n=27)

176.9±123.13* (n=27)

37.0±11.22* (n=27)

0.9 mg/kg 100.0

(n=24) 108.2±38.86*§ (n=24)

54.5±15.75*§ (n=23)b)

数値は平均±標準偏差 群間比較:対数変換後 Tukey 型多重比較 *:0.3 mg/kg 群に対して有意(P<0.05), §:0.6 mg/kg 群に対して有意(P<0.05) a):0.3 mg/kg の補充投与が行われた 8 例及び 大遮断率が 75%未満であった 1 例を除外した. b):使用禁止薬剤を使用した 1 例を除外した.

T1 がコントロール値の 25%に回復した時点で維持用量として本剤 0.1 mg/kg を追加投与したところ,

各症例で追加投与の反復による作用の蓄積はみられなかった.

自然回復時間及び拮抗剤投与による回復時間については,各用量群間で差は認められなかった(表

2.7.6-188).

表 2.7.6-188 自然回復時間または拮抗剤による回復時間(分)

初回投与量 回復方法

0.3 mg/kg 0.6 mg/kg 0.9 mg/kg

自然回復 16.8±8.27 (n=7)

12.4±5.44 (n=9)

16.4±6.66 (n=10)

拮抗剤投与 4.2±0.97 (n=13)

5.6±2.33 (n=10)

5.7±2.18 (n=10)

数値は平均±標準偏差

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考 CV-9242 試験)

253

2.7.6.15.4 安全性

安全性評価対象 80 例中 6 例で有害事象 8 件(血圧上昇 4 件,心拍数増加 2 件,心電図の二段脈 2 件)

がみられたが,いずれも本剤との因果関係は認められなかった.また,本剤との因果関係を否定できな

い臨床検査値異常変動が 6 例 11 件(0.3 mg/kg群:1 例 1 件,0.6 mg/kg群:2 例 2 件,0.9 mg/kg群:3 例

8 件)でみられた(表 2.7.6-189).なお同一症例で複数回同じ有害事象が発現しても 1 件として集計し

た.

表 2.7.6-189 臨床検査値異常変動症例(因果関係不明)

初回投与量 被験者番号 臨床検査値異常変動

0.3 mg/kg 203 ALP 増加

205 白血球数減少 0.6 mg/kg

806 総ビリルビン上昇

207 血小板数増加

208 白血球数増加,血小板数減少,ASAT 増加,ALP 減少 0.9 mg/kg

608 ALAT 増加,ASAT 増加,総コレステロール上昇

2.7.6.15.5 結論

初回投与量として,本剤 0.3,0.6,0.9 mg/kg の 3 群を気管挿管時に投与し,本剤の至適用量を検討し

た.本剤 0.6 mg/kg 投与によって補充投与することなく気管挿管も可能であり,手術中の筋弛緩作用も

充分であった.また,継続して筋弛緩作用が必要な場合,追加投与として本剤 0.1 mg/kg が適当であり,

蓄積性もなく,安全性にも問題はなかった.

したがって,本剤の至適用量として,初回投与 0.6 mg/kg,追加投与量 0.1 mg/kg が適当と判断した.

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2.7.6 個々の試験のまとめ(参考文献一覧)

254

2.7.6.16 参考文献一覧

1 Ahmed AA, Kumagai M, Otake T, Kurata Y, Amaki Y. Sevoflurane exposure time and the neuromuscular

blocking effect of vecuronium. Can J Anaesth. 1999;46(5 Pt 1):429-32.

2 Lorenz W, Doenicke A, Schoning B, Ohmann Ch, Grote B, Neugebauer E. Definition and classification of the histamine release response to drugs in anaesthesia and surgery: studies in consious human subjects. Klin Wochenschr 1982;60:996-13.