35
経済産業省 平成 28 年度 製造基盤技術実態等調査 (産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 最終報告書 株式会社 大和総研 アジア事業開発本部

28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

経済産業省

平成 28年度 製造基盤技術実態等調査

(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

最終報告書

株式会社 大和総研

アジア事業開発本部

Page 2: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

<目次>

はじめに .................................................................................... 1 1. 調査の背景、目的、内容 ............................................................ 1 2. 調査の実施方法 .................................................................... 1 (1) 調査方法の概要 .................................................................... 1 (2) 有識者事前ヒアリング .............................................................. 2 (3) 仮説・質問項目の設定 .............................................................. 2 (4) 企業ヒアリング .................................................................... 3 (5) 有識者会議開催 .................................................................... 4

第1章 工作機械産業について .............................................................. 5 1. 世界の工作機械産業の現状・市場動向 ................................................ 5 (1) 世界主要国における工作機械市場の動向 .............................................. 5 (2) 世界主要国における工作機械生産の動向 .............................................. 6 (3) 海外メーカーの市場戦略・事業戦略 .................................................. 8

2. サプライチェーンの概要 ............................................................... 11 第2章 サプライチェーンのリスク分析 ..................................................... 12 1. サプライチェーンリスクの評価 ..................................................... 12 2. 工作機械業界の強靱化に向けて ..................................................... 12 (1) NC業界の BCP対策強化 ............................................................ 12 (2) 共同購買による海外外注先の確保 ................................................... 12 (3) 鋳物コンソーシアムの形成 ......................................................... 13 (4) ユニット化、標準化を通じたユニットメーカー育成へ向けて ........................... 13 (5) 知能化技術のさらなる開発や IoT対応へ向けて ....................................... 13 (6) NCや NC オプションソフトウェアに関する人材開発に向けて ............................ 14

3. 調査手法に関する課題 ............................................................. 14 (1) 分析手法に関する課題 ............................................................. 14 (2) さらなる調査に向けて ............................................................. 14

4. 最後に ........................................................................... 15 [参考文献リスト] ........................................................................... 16

Page 3: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

1

はじめに

1. 調査の背景、目的、内容

我が国の技術力の向上や市場のグローバル化に伴い、日本企業が有する先端技術に

対して諸外国からの注目度が高まっている。またそれに伴い、海外企業との共同研究

に加えて企業の M&A(合併・買収)や提携を通じてビジネス構造は一層多様化し、サプ

ライチェーン構造も複雑化してきている。しかし、官民とも必ずしもサプライチェー

ン構造の全容や脆弱性について十分に把握しているわけではないのが現状である。

サプライチェーン構造の変化は、時にはビジネスの活性化を促進するなど、日本企

業に恩恵をもたらす場合もある。とはいえ、国際的に競争力を有する重要な技術やノ

ウハウが国外に流出したり、一定市場を有する製品を構成する部品の国内供給が断絶

されたりすれば、国益の損失につながることも危惧される。また、東日本大震災等の

発生の際にみられたように、部品供給の遅れの原因ともなることも考えられる。

このような中、本調査の目的は、我が国企業の高い技術力の結集である工作機械を

対象として、国内外のサプライチェーンの実態調査を通じ、サプライチェーン調査・

分析手法を確立することであり、工作機械のケースにて、日本のメーカーの有する技

術優位性の更なる維持・強化に加え、我が国企業の技術・ノウハウの保護の観点でサ

プライチェーンを脅かす各種リスクを調査・分析した上で、当該技術の事業化・商業

化において必要不可欠な原材料から最終製品に至るサプライチェーンの維持・強化に

資する対応策を提案することである。

本サプライチェーンの調査・分析手法(作業手順書)により、他産業のサプライチ

ェーンの分析が効率的に行うことができ、上記の国益損失リスクや部品供給リスクの

低減が期待される。さらに、企業ヒアリングを通じて検討された支援策により、工作

機械業界が求めるサプライチェーンの強化支援策を提示できる。

2. 調査の実施方法

(1) 調査方法の概要

本調査は、まず有識者へのヒアリングを実施して工作機械サプライチェーンに関す

る仮説を設定し、その仮説を基に、国内企業及び中国における企業への聞き取り調査

を実施した。また、その分析結果を基に作成した調査結果(ストーリー)を有識者会

議において提示し、有識者より意見・コメントを得て、最終報告書として取りまとめ

た(詳細は、作業手順書参照)。

日本技術への海外の

関心が高まる中、サプ

ライチェーン構造は

多様化・複雑化

本調査の目的は、分析

手法の確立、工作機械

サプライチェーンの

実態調査

重要技術の国外流出

やサプライチェーン

断絶のリスクがある

調査手順書により、他

産業のサプライチェ

ーン分析への展開が

可能に

仮説設定から企業ヒ

アリングへ

Page 4: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

2

図表 1:調査方法の概要

(4)国内企業

ヒアリング

(5)中国にお

ける企業ヒアリ

ング

(6)報告書ドラ

フト作成

(7)有識者会

議開催

省重要技術整理

(仮)作成

訪問先意見提示

面談アポ取得

同行訪問

面談メモの確認

同行訪問

面談メモの確認

有識者へのコン

タクト.・日程調

議論に参加

会議録の確認

1.訪問候補先

の選定

●企業一覧

2. 取材依頼

●貴省依頼

フォームの利用

●貴省より依頼

3. 取材実施

●貴省主導

5. 面談メモ作

●A4で2~4枚

1.訪問候補先

の選定

●企業有報、

HP情報等

3. ロジ対応

●旅行会社利

4. 取材(北京、

上海等)実施

●大和総研主

5. 面談メモ作

●A4で2~4枚

(8)最終報告

書完成(1)事前準備

調査の進め方

(案)作成

調査の進め方

について意見提

1.業界情報収

●各種文献(協

会冊子等)

2. 貴省と調査

方針の確認

●提案書、調査

の進め方(案)

2. 取材依頼

●貴省依頼

フォームの利用

●主に貴省より

依頼

1.サプライ

チェーン等の情

報整理・分析

●全ての面談メ

モ、企業情報等

2. 原稿執筆

●全ての面談メ

モ、各種文献等

3. 上席による

品質チェック

●10月中旬

1.有識者のコ

メント反映・加筆

●有識者会議メ

2. 原稿最終見

直し

●有識者会議メ

1.説明資料の

作成

●報告書ドラフ

3. 会議録作成

●A4で2枚程

2. 会議開催

●大和総研より

説明

3. 貴省へ納品

●100ページ

程度

最終成果物の

検収

4. 貴省のコメン

ト反映・加筆

●10月下旬

5. 貴省へ納品

●10月末

分析内容や進捗

状況につき、適宜

チェック

1.有識者の選

●提案書等

(2)有識者事

前ヒアリング

2. 取材依頼

●貴省依頼

フォームの利用

3. 取材実施

●貴省主導

4. 面談メモ作

●A4で2~4枚

同行訪問

面談メモの確認

(3)仮説の設

1.仮説設定

●重要技術整

理(仮)、有識者

メモ、各種文献

2. 企業ヒアリン

グを踏まえ仮説

見直し

●面談メモ

4. 中国での面

談事前依頼(適

宜)

●貴省主導

(出所)大和総研作成

(2) 有識者事前ヒアリング

本調査を進めるに際し、工作機械分野の有識者(大学教授、協会、証券アナリスト)

9 名(6 組織)にコンタクトを取り、工作機械をとりまく現状及び将来予測を踏まえて、

①現状認識がずれていないか、②問題意識、着眼すべき点がずれていないか、他にな

いか、③調査手法が適切であるかなどについて、ご助言いただいた。②の問題意識に

ついては、何を「強み」とするか、急速に技術力をつけている新興国企業とどう差別

化を図るか、生産拠点のグローバル化が進む中、国内にとどめるべき技術・生産プロ

セスはあるか、といった点に着目した。

有識者ヒアリングは、調査期間が短期間である本調査においては、最初に一定の方

向性を決めてから企業ヒアリングを開始できるという点で効率的であった。複数の有

識者へのヒアリングを通じ、理解が深まるとともに、仮説を設定し企業ヒアリングに

臨むうえで役に立った。調査の方向性をなるべく早急に固められるよう、有識者への

ヒアリングは調査の初期に実施することが重要である。

(3) 仮説・質問項目の設定

仮説の設定に際しては、既存文献情報に加えて有識者ヒアリングの結果を考慮し、

「工作機械分野における重要技術整理」を作成した。企業ヒアリング時に本資料を提

示(多くの場合、依頼時に事前送付)することで、ヒアリング担当者(当方)が工作

機械分野の基本的知識と専門用語を理解していると先方に認識してもらうことができ、

結果的に、より深い議論を行うことが可能になった。さらに、仮説は企業ヒアリング

有識者より、現状認

識、問題意識、手法に

ついて助言を求めた

調査初期の有識者ヒ

アリングは効果的で

あった

有識者ヒアリングに

基づく仮説設定は企

業ヒアリングに効果

Page 5: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

3

を進めながらもその結果を踏まえて見直しを加え、次の企業ヒアリングに用いた。

「工作機械分野における重要技術整理」では、工作機械の 5 部品を主要部品として

特定し、その調達方法、サプライヤーの種類、競合先との差別化因子、課題を整理し

た。主要部品としては、主軸ユニット、数値制御(NC)装置、軸受(ベアリング)、

ボールねじ、リニアガイドを挙げた。従って、本調査は主にこれらの主要部品に着目

したうえで、その調達状況(自社開発か、外部調達か、外部調達であれば国内か国外

か等)、サプライヤーの状況(企業数等)、サプライチェーン上の各種課題について

のヒアリングを実施し、その結果を分析した。

図表 2:調査方法の概要仮説の設定~重要技術整理

(出所)経済産業省作成

(4) 企業ヒアリング

本調査においては、国内外の工作機械関連企業へのヒアリング調査を実施した。日

本においては、工作機械関係企業約 200 社のうち、事業期間内で実施可能な規模とし

て 19 社(工作機械メーカー14社、部品メーカー5社)にヒアリングを行った。訪問先

企業の選定にあたっては、事業規模の大きな企業やニッチな技術を有する企業に加え、

有識者からのコメントを参考に決定した。

さらに、中国に製造拠点を持つ日系企業(工作機械メーカー、主要部品メーカー)7

社を訪問し、生産体制、調達先、技術保護対策などについてヒアリングを実施した。

中国での面談アポは、主に国内企業ヒアリング時に依頼した。

なお、本調査結果は、主にこれらのヒアリング結果を基に分析したものであり、必

国内19社にヒアリン

グ実施

主要5部品に着目して

サプライチェーンを

分析

中国にて7工場にヒア

リング実施

Page 6: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

4

ずしも工作機械業界全体の傾向を反映した分析結果になっていない点については留意

する必要がある。

(5) 有識者会議開催

既存文献による調査と国内外の工作機械関連企業へのヒアリング結果及びそれらに

基づく分析結果を取りまとめて最終報告書ドラフトを作成後、有識者会議を開催し、

調査・分析結果についてご助言をいただいた。証券アナリストを除く有識者 8 名中 4

名の有識者が会議にご出席いただき、様々な専門分野の有識者より有意義な示唆・ご

意見を得ることができた。また、有識者会議での議論に加え、当該 8名の有識者の方々

から本調査報告書に関する各種助言・ご意見もいただき、これらを踏まえて本調査の

最終報告書を取りまとめた。

有識者会議でストー

リーを提示し意見交

Page 7: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

5

第1章 工作機械産業について

1. 世界の工作機械産業の現状・市場動向

(1) 世界主要国における工作機械市場の動向

米国の調査会社 Gardner Business Media の報告書「Gardner Research」によると、

世界における工作機械(Machine Tool)の市場規模 1は 2003 年頃から急成長し、世界

金融危機による落ち込みを経て、2011 年に最高値(943 億ドル)を記録した。しかし、

その後は 2014 年を除き毎年縮小し、2015 年は前年比 11.4%減の 789.7 億ドルであっ

た。

市場規模を国別にみると、2015年は中国 275.0 億ドルと世界の市場規模の 34.8%を

占めた。これに続き、米国が 73.6億ドル(同 9.3%)、ドイツが 63.6億ドル(同 8.1%)、

日本 58.0億ドル(同 7.4%)であった。一方、地域別にみると、2015年はアジアが 56.2%

で最大、欧州が 22.1%、北米が 13.6%を占めた。地域別ではアフリカを除く全ての地

域で減少となった。市場規模の減少には、中国を含むアジアにおいて消費が大きく落

ち込んだことが影響している。

図表 1-1:工作機械の市場規模の国構成比(2015 年)

中国

35%

米国

9%ドイツ

8%

日本

7%韓国

5%

イタリア

4%

メキシコ

3%

ロシア

3%

台湾

2%

インド

2%

その他

22%

出所:Gardner Research, “World Machine Tool Survey 2016”より大和総研作成

1 市場規模=生産+純輸入(輸入-輸出)

世界の工作機械の市

場規模は2011年をピ

ークに縮小

中国が世界の市場規

模の35%を占め首位

Page 8: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

6

図表 1-2:工作機械の市場規模(地域別)

金額 構成比 金額 構成比

アジア 50,581 56.8% 44,416 56.2% -12.2% -6,165

欧州 19,136 21.5% 17,435 22.1% -8.9% -1,701

北米 12,095 13.6% 10,753 13.6% -11.1% -1,341

中東・ロシア 4,979 5.6% 4,378 5.5% -12.1% -602

南米 1,448 1.6% 1,088 1.4% -24.8% -360

アフリカ 563 0.6% 607 0.8% 7.9% 45

豪州 316 0.4% 292 0.4% -7.7% -24

全世界 89,117 100.0% 78,970 100.0% -11.4% -10,148

差分2014 2015

伸び率

注:金額の単位は 100万ドル

出所:Gardner Research, “World Machine Tool Survey 2016”より大和総研作成

(2) 世界主要国における工作機械生産の動向

世界における工作機械の生産額は、上記の市場規模と概ね同様の傾向を示し、2003

年頃から急成長して 2011 年に最高値を記録し、その後は 2014 年を除き毎年減少して

いる。2015年の世界における工作機械生産額は、前年比 12.4%減の 801.9億ドルであ

った。

生産額を国別にみると、2015 年における世界最大の工作機械生産国は中国である。

日本は連続 27年間世界一位の生産国であったが、世界 2位に転落した。また地域別で

も、消費と類似の傾向を示した。

国別に消費国と生産国を比べると、日本、ドイツ、台湾、イタリア、スイスなどに

おいて生産が消費を大きく上回り、中国、米国、メキシコ、ロシアなどで消費が生産

を大きく上回っている。

図表 1-3:工作機械の生産国構成比(2015 年)

中国

27%

日本

17%

ドイツ

15%

イタリア

7%

韓国

6%

米国

6%

台湾

5%

スイス

4%その他

13%

出所:Gardner Research, “World Machine Tool Survey 2016”より大和総研作成

工作機械の生産額

生産額首位は中国、日

本は2位に転落

日本、ドイツ等が生産

超過、中国、米国等が

消費超過

Page 9: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

7

図表 1-4:工作機械の生産(地域別)

金額 構成比 金額 構成比

アジア 52,401 57.3% 46,415 57.9% -11.4% -5,986

欧州 30,891 33.8% 26,743 33.3% -13.4% -4,148

北米 6,183 6.8% 5,253 6.6% -15.0% -930

中東・ロシア 1,464 1.6% 1,338 1.7% -8.7% -127

南米 401 0.4% 312 0.4% -22.2% -89

豪州 125 0.1% 110 0.1% -12.2% -15

アフリカ 27 0.0% 20 0.0% -26.2% -7

全世界 91,492 100.0% 80,190 100.0% -12.4% -11,302

差分2014 2015

伸び率

出所:Gardner Research, “World Machine Tool Survey 2016”より大和総研作成

一般に、工作機械は対象産業ごとに求められる技術水準が異なる。例えば、航空・

宇宙、医療関連分野では高級機(ハイエンド)、自動車、電機・電子部品向けでは中

級機(ミドルレンジ)、一般機器部品、日用品などでは低級機(ローエンド)が用い

られる傾向にある。ただし、実際には特定産業においてもそれぞれぞれの部品の加工

度により高級機から低級機まで様々なものが用いられる。国ごとでも特徴があり、例

えば、高級機はドイツやスイスなどの欧米メーカー、中級機から低級機にかけては台

湾、中国、韓国、インドなどのメーカーが強い。日本の工作機械メーカーの場合は、

中級機から高級機が多い。今後、新興国市場における需要開拓が課題となる中、日本

や米国など成熟国では高級機の需要が増える一方、新興国向けの中級機においては競

争環境が激化する可能性がある。

図表 1-5:国・地域別メーカーが持つ工作機械の現状イメージ図

高級機

中級機

低級機

欧米メーカー

日本メーカー

中国・台湾・インド等メーカー

出所:工作機械工業会「工作機械産業ビジョン 2020」を基に大和総研作成

国ごとに得意とする

工作機械の技術水準

が異なる

Page 10: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

8

(3) 海外メーカーの市場戦略・事業戦略

欧州(ドイツ、スイス等)、北米(米国)、アジア(韓国、台湾、中国)の工作機

械メーカーの戦略について概説する。

① 欧州(ドイツ、スイス)メーカーの戦略

欧州の工作機械メーカーは、開発・生産効率重視の観点から、主軸などのユニット

を専門のユニットメーカーから調達し、組み立てる方式を採用しており、日本の工作

機械メーカーが自社で主要ユニットを設計・製造しているのと大きく異なる。

ユニットメーカーは、一定の基準(仕様・寸法)に従ってモジュラー設計を行い、

ユニットを設計している。このため、ユニットメーカーの専門性が高まり、設計・開

発力向上につながっている。

工作機械メーカーにとってユニットを利用するメリットとしては、開発時間の短縮、

外注化による固定費の削減などが挙げられる。一方、デメリットとして、自社の製品

に最適化するのが難しかったり、過剰な仕様になったりする点が挙げられる。

欧州メーカーは小規模な企業が多い。分野としては、5 軸機・複合加工機・カスタ

ム機が強く、これらの技術は日本よりも進んでいる。

主なターゲット市場は中国を含むアジア新興国であり、低級機よりも高級機のニー

ズを取り込む戦略である。一方で、今後新興国においてニーズ拡大が予想される中級

機以下を強化することで、新興国での需要拡大を狙う動きもみられる。特に中級機メ

ーカーについては、台頭するアジア諸国の工作機械メーカーとの価格競争力を高める

ため、製品価格の低減を目的にアジアへの生産移管が進められる可能性があろう。

② 北米(米国)メーカーの戦略

米国の工作機械メーカーは、かつて、生産額や技術力で大きな存在感を有していた。

しかし、NC 化の遅れなどによる技術開発力の低下や、一般需要向け製品展開の失敗な

どにより、1980 年頃から急激に衰退していった。統廃合を経て残っている企業は、主

要ユニットを内製化し、中価格帯の価格に焦点を当てた機器を製造する戦略で、高い

国内シェアを有している。

③ アジア(韓国・台湾)メーカーの戦略

韓国の工作機械メーカーは、日本の工作機械メーカーとの提携や先進諸国からの技

術導入などにより、自動車産業の発展とともに成長してきた。2016年の生産額は約 48

億ドルで、世界第 3位(シェア 5.9%)。主要製品は、立形マシニングセンタ(MC)、

NC 旋盤である。韓国メーカーは多くの部品を内製化する一方でボールねじをはじめと

する主要部品は輸入し、組み付けて製品化している。市場は、主にアジア、欧州、北

米で需要を開拓している。多くの韓国メーカーは、外注や OEM(相手先ブランドによる

生産)などの積極活用で価格競争力を強化し、低価格を志向した商品を開発する戦略

をとっている。(「工作機械産業ビジョン 2020」41ページ参考)

台湾の工作機械メーカーの 2016 年の生産額は約 40 億ドルで、世界第 7 位の規模で

ある(世界生産額に占めるシェアは、5.0%)。主要製品は、立形 MC、NC旋盤である。

韓国企業と同様に低価格戦略を採っているが、中国への輸出が約 5 割を占めるなど中

ユニットを外部調達

モジュラー設計でユ

ニットを設計

固定費削減効果など

5軸機、複合加工機、

カスタム機に強み

中国等の高級機ニー

ズを取り込む戦略

最盛期から衰退した

ものの、国内シェア高

韓国は低価格指向戦

台湾メーカーは低価

格で中国市場をター

ゲットに

Page 11: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

9

国市場をターゲットとしている点が特徴的である。大手メーカーの多くは中国にも生

産拠点を構えている。(「工作機械産業ビジョン 2020」41ページ参考)

台湾の工作機械メーカーである友嘉実業集団は、これまで積極的に M&A(合併・買

収)を展開し、世界各地の生産拠点への資本投入やブランド拡大などのグローバル戦

略を進めている。日本企業に対しても 2014年に超大型旋盤の世界最大手である池貝へ

資本参加、2016 年には中堅メーカーである新日本工機を買収している。前者は、池貝

の得意領域である大型工作機械を取り込み、ブランド獲得や製品ラインナップの拡充

が狙い、後者は、新日本工機の得意領域である航空機産業向けの大型工作機械を取り

込むことで、製品ラインナップや販路を拡充する狙い 1。どちらのケースも、背景に対

象企業の経営不振があった。

このように、世界の工作機械業界において、韓国、台湾の工作機械メーカーは近年、

急速に力をつけてきている。背景には、すでに述べた先進国メーカーとの技術提携や

買収戦略の他、日本の熟練技術者の引き抜きなどもある。

④ アジア(中国)メーカーの戦略

中国の工作機械メーカーは技術力が低く安価な一般工作機械を主に製造しており、

宇宙航空、自動車、船舶などの産業用の高級機のほとんどや一部の中級機は輸入に依

存している。しかし近年は、一部の大手企業においてではあるが、先進国との合弁事

業や M&A(合併・買収)による先進技術や設備の導入により技術力を着実に高度化し、

国際的な競争力を高めてきている。

合弁事業の例として、売上ランキング第4位の北京北一機机は、2002年に提携相手

であるオークマと MC 及び NC 旋盤を生産する合弁企業設立、さらにはフランスや韓国

の企業などとも合弁事業を展開し、競争力を高めてきた。

企業買収としては、売上高最大手である瀋陽机床のドイツ Shiess 買収、売上高第2

位の大連机床のドイツ Zimmermannの買収などが代表例であり、中国工作機械メーカー

は 5軸制御技術の獲得に向け、欧州の老舗工作機械メーカーの買収を続けてきた。

先述の北京北一機机も、2005 年にドイツの Waldrich Coburgを完全買収して技術力

を強化し、その後は 2011 年に MC やレーザー加工機のメーカーであるイタリアの

C.B.Ferrari を、2012年には大型 NCメーカーであるイタリアの SAFOPをいずれも完全

買収している。

中国は世界最大の工作機械市場(275.0 億ドル)であり、景気減速が鮮明となる中

においても、自動車産業をはじめとする様々な産業分野で大きな需要がある。

1 日刊工業新聞(2016年 10月 6日付)

友嘉実業集団が日本

企業を含めたM&Aでグ

ローバル戦略推進

急成長の背景には、

MA&Aや技術者引き抜

きがある

企業買収などを背景

に国際競争力を強化

している

欧州老舗工作機械メ

ーカーの買収

北京北一機机は各国

との合弁事業で競争

力強化

北京北一機机は欧州

メーカーを次々と買

Page 12: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

10

図表 1-6:中国工作機械メーカーの主な欧米企業買収事例

買収した中国企業企業名 企業名 国

2003年 上海明精机床有限公司 Wohlenberg ドイツ2004年 瀋陽机床集団 Schless ドイツ2004年 大連机床集団 Zimmermann ドイツ2005年 北京第一机床 Waldrich Coburg ドイツ2006年 杭州机床集団 Anaz&b ドイツ2008年 天水星火机床 SOMAB フランス2011年 臥龍電気集団株式有限公北 ATB オーストリア2011年 広東巨輪金型株式有限公司 OPS-INGERSOLL社 ドイツ2012年 北京第一机床 C.B.Ferrari イタリア2013年 重慶機電集団公司 Tooling&Equipment International Corp 米国2014年 日発精密機械株式有限公司 MCM社 イタリア2015年 重慶機床(集団)有限責任公司 KAPP GmbH&Co.KG ドイツ2016年 大連機床集団有限責任公司 GAZDEVICE社 ロシア

時期買収された企業

(出所)各種資料より作成

図表 1-7:中国工作機械メーカーの欧米企業買収事例(模式図)

ドイツ 中国 米国

イタリア

JV     子会社

オーストリア

 

JV ロシア

フランス JV

SOMAB

C.B.Ferrari

FIDA

SAFOP

大連机床集団

北京第一机床

四川普什寧江机床

天水星火机床

Schiess

Zimmermann

OPS-INGERSOLL

日発精密機械株式有限公司

KAPP GmbH&Co.KG

大連機床集団有限責任公司 GAZDEVICE

瀋陽机床集団 Tooling&EquipmentInternational Corp

MCM

ATB

臥龍電気集団株式有限公司

広東巨輪金型株式有限公司

重慶機電集団公司

重慶機床(集団)有限責任公司

Waldrich Coburg

(出所)各種資料より作成

Page 13: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

11

2. サプライチェーンの概要

工作機械のサプライチェーンは他業界と比べて短いのが特徴である。工作機械の主

要部品は主軸ユニット(そしてそれを構成するベアリング、主軸、ハウジング、ビル

トインモータなど)、ボールねじ、リニアガイド、NC(サーボモータ含む)、鋳物、

スケール、計測器などである。また、部品ではないが、コア技術を含む作業工程とし

て、主軸ユニットにおける冷却技術や研磨・組立、キサゲ加工、NC ソフトなどが挙げ

られる。これらは工作機械メーカーから直接調達される部品、工程である(もちろん

内製されるものも多い)。

1 次部品の構成要素である 2 次部品として、ベアリングに注目すると鋼球、リテー

ナー、リング、そしてそれらの素材である特殊鋼、主要技術として熱処理、研磨・組

立工程などが挙げられる。またボールねじでは、鋼球、ねじ、ナット、シール、そし

てベアリングと同じく特殊鋼、熱処理、研磨・組立が挙げられる。リニアガイドはボ

ールねじとほぼ同様で、ねじをレールに置き換え、ナットをボックスに置き換えれば

よい。

2 次部品はほとんどが鋳物や樹脂加工品であり、3次部品の段階で特殊鋼、樹脂素材

といった素材に行きつく。

図表 1-8:工作機械業界のサプライチェーンの概要

(出所)大和総研作成

工作機械のサプライ

チェーンは短い

Page 14: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

12

第2章 サプライチェーンのリスク分析

1. サプライチェーンリスクの評価

工作機械の国内サプライチェーンにおいて、NC装置と鋳物が課題になり得るとの指

摘があった。

NC 装置については、海外メーカーもあるものの、国内の主要メーカーが少数である

ことから、例えば災害によるサプライチェーン寸断の可能性があるかどうかについて

十分精査されていないのではないかという懸念が示された。鋳物については、生産拠

点が中国に移ってきていることから、コスト競争力及び人材維持の観点で国内鋳物業

界の事業継続性が指摘された。

このようなサプライチェーン上のポテンシャルリスクへの対応を含めて、工作機械

業界を如何に強化するかという観点で、具体的な提言案を述べる。

2. 工作機械業界の強靱化に向けて

(1) NC 業界の BCP対策強化

NC 装置の調達先がファナックと三菱電機に集中していることから、災害等、有事の

際の調達リスクがあるという見方もあるため、サプライヤーの分散化や複数工場での

生産可能性など、リスク回避に向けたオプションの検討が求められる。

一方、ユーザーの視点では、工作機械メーカーによる表示画面も含めたカスタマイ

ズが功を奏して、どのメーカーの NC 装置を採用しても姿も形も同じ NC 装置として使

えるようにすることが可能になってきている。したがって、工作機械メーカー各社が

努力して、NC装置メーカー各社の NCを搭載できるようにすることで、リスク分散とな

り得る。

(2) 共同購買による海外外注先の確保

鋳物の場合、コストダウンの観点から中国での鋳物調達の事例が散見される。一方

で、品質管理が課題となっており、調達を仲介する国内鋳物メーカーや商社による品

質管理などの対応策が聞かれた。特に国内鋳物メーカーでは月 1~2回と定期的に現地

工場を訪問し技術指導し、定期的な監査も実施しているところもある。それでもなお、

中国製鋳物の品質の安定性は課題として指摘されているのが現状である。特に鋳物を

日本に持ち帰り加工する場合、万が一品質不足が発生すると大幅な手戻りとなってし

まう。

現地工場を有するメーカーの中には、中国へ技術者を派遣することで品質管理をし、

うまく機能しているケースもあるようである。しかし、小規模メーカーを中心に海外

工場を持たないメーカーも多く存在する。

中小規模の工作機械メーカーのサプライチェーンを強靭化するための一案として、

海外外注先からの共同購入することにより、品質管理の確保を行うことができないだ

ろうか。共同購買によるコストダウンも副次的効果として期待することができるだろ

う。

NC装置のサプライチ

ェーンリスクへの対

特に困難な品質管理

を共同実施する

Page 15: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

13

(3) 鋳物コンソーシアムの形成

品質や特性が求められる部材用の職人技を国内に残すためには、鋳物産業を維持・

活性化する必要がある。参考になるのは、やる気のある若手経営者が、国際市場獲得

に向けたコンソーシアム「リーディング・ジャパン・ファンドリー」の事例である。

共同でのプロモーションを通じて、海外需要の獲得に向けて活動をしている。

さらに踏み込んだコンソーシアムとして、後継者不足で困っており、廃業を考えて

いる鋳物メーカーを束ねて、より近代的な鋳物工場を建設する仕組みづくりを提案す

る。コンソーシアムの枠を超えて、参加企業が資金と技術を出し合うジョイントベン

チャーのような枠組みも考えられるのではないか。

(4) ユニット化、標準化を通じたユニットメーカー育成へ向けて

コア部品を含めてユニット化、標準化を進め、ユニットメーカーを育成する必要が

ある。同様の議論はビジョンでも提言されているが、工作機械メーカーはコア部品の

ユニット化、標準化に否定的である。差別化要因の技術をユニット化、標準化は、技

術の模倣を容易にし、新興国メーカーに技術を与えてしまうことになりかねないため

である。

そこで、ユニット化、標準化へ向けた自由参加型の協議会を創設し、ユニット化、

標準化を必要としている(あるいは潜在的に必要と考えられる)中小規模のメーカー

を中心に参画してもらい、標準化を進めることによりコストダウンにつながる技術を

仕分ける議論を進めてはどうか。実際には、同一の部品でも価格帯(高級機向けか否

か)に応じて技術の重要性は変わってくる。大まかに言えば、中級機用の主軸ユニッ

ト、テーブルユニット、フィードユニットなどがユニット化、標準化の候補となるの

ではないだろうか。

(5) 知能化技術のさらなる開発や IoT対応へ向けて

知能化技術とは熱変位抑制や幾何誤差補正、振動制御、主軸への過負荷抑制、衝突

回避、加工面改善、生産効率等の改善を指すが(「工作機械産業ビジョン 2020」p.88)、

この知能化技術のさらなる開発も重要な課題の 1 つである。例えば、加工プロセスや

工作機械の状態を最善に保つための自己診断機能が挙げられる。

知能化技術のさらなる開発のためには、モニタリングで必要となる計測器メーカー

と、NC メーカー、工作機械メーカーの連携が求められる。特に日本国内に計測器の大

手メーカーが存在しないことから、まずは計測器メーカーの育成が求められよう。

知能化技術のさらなる開発をネットワーク化すれば、IoT に直結する。なぜなら、

知能化技術のさらなる開発は IoTの 3つの特徴、①センシングによってデータ収集し、

②ネットワークを介してデータ蓄積し、③分析結果をフィードバックし自己制御する

のうち、①と③の 2 つを満たすからである。計測器メーカーの育成や工作機械メーカ

ーの連携は、IoT対応へ向けた布石にもなり、効率的な開発にも寄与すると考えられる。

リーディング・ジャパ

ン・ファンドリーが参

考に

ユニット化、標準化は

技術の模倣を容易に

する恐れ

中小規模のメーカー

を軸とする協議会を

設立

さらなる知能化技術

の開発

計測器メーカーの育

成が求められる

IoT対応にも寄与

Page 16: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

14

(6) NCや NCオプションソフトウェアに関する人材開発に向けて

各社が NCオプションソフトウェア開発に注力する一方、人材獲得が課題とされてい

る。機電融合的な人材を、国を挙げて育成することが選択肢のひとつだろう。「工作

機械産業ビジョン 2020」でも p.171-173で人材育成について触れられているが、機電

融合の人材については、ほとんど触れられていない。まずは機電融合の人材の要件を

定め、必要な知識・スキルを同定することから始める必要があるだろう。

3. 調査手法に関する課題

2016年 10月 14 日に本報告書ドラフトを基に、有識者会議を実施した。そこで頂戴

したコメントを踏まえ、本調査手法等に関する課題を整理する。

(1) 分析手法に関する課題

企業ヒアリングをベースとした分析であることから、着目したリスクに偏りがある

との意見があった。サプライチェーンリスクは、「製品の市場ニーズへのフィット不

全リスク」、「サプライチェーンのオペレーション上でのリスク(作りすぎ、欠品、

不良品など)」、そして「災害などの BCP リスク」に分けて考えることが多い。本調

査は、上述の視点で言えば、BCP リスクへフォーカスしすぎている。

(2) さらなる調査に向けて

本調査は既存の製品構成および技術をベースにしたため、調査結果はこの先数年程

度のレンジに収まる。長期的な競争力強化への支援調査にはなりにくい。つまり、近

い将来に予想される製品構造やサプライチェーン構造の変化の特定と、その影響分析

が必要だろう。例えば自動車の EV化などがこれに該当する。

また、3D プリンタ(金属積層造形)についても、本調査ではほとんど触れられてい

ないが、切削加工とは全く異なる概念であり、その技術的可能性から、今後の調査対

象とすべき重要な技術である。3D プリンタについては、日本はかなり遅れをとってい

る。市場ニーズの拡大も期待されることから、この分野の詳細なサプライチェーンも

検討すべきではないだろうか。例えば、レーザーユニット供給や、材料となる金属粉

末の提供などがサプライチェーンの核となるだろう。

本調査では主要な切削加工機械メーカーを調査対象としたが、その他に研削盤メー

カーなども特徴的なサプライチェーンを形成している可能性があるため、調査すべき

対象として名が挙がった。

また、今回の分析結果は主にヒアリング内容に基づいているため、ヒアリング先企

業によっては分析結果が変わっていただろうというコメントがあった。

本調査において、課題が見出された鋳物については、鋳物メーカーへのヒアリング

調査は時間の都合上、1社しか実施できなかった。鋳物メーカーの事情を勘案するた

め、より現実的な提言案を検討するためにも鋳物メーカーへのヒアリング調査は必須

となろう。

まずは必要な知識・ス

キルの同定から

もう少し広い枠組み

でのサプライチェー

ンリスクの考え方

将来ニーズや先端技

術へフォーカスを

3Dプリンタの調査も

重要

さらなる工作機械メ

ーカー調査

Page 17: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

15

日本工作機器工業会にもヒアリング調査すべきであろう。当工業会は軸受、ボール

ねじ、リニアガイド、ツーリングシステム(チャック、取付具)を担当しており、当

該部品について、より業界横断的な示唆を得られる可能性がある。

このようなサプライチェーンの中・上流に位置する技術については、その技術的優

位性が失われたり、企業が買収されたりすることにより、我が国の経済や日系企業の

業績にどのようなインパクトを生じるのかといった大局的な分析することも必要だろ

う。

本調査では有識者との事前の意見交換をもとに、特に重要と考えらえるコア部品・

技術に的を絞って調査を進めた。しかし、当然ながら工作機械の部品はそれに限られ

たものではない。次第にアウトソースが増えつつある、ツールマガジン、工作物マガ

ジン、切りくず処理装置、クーラント供給装置、工作物ハンドリングシステムなどロ

ボット適用システム、各種ソフトウェアなどのサプライチェーンについても調査が必

要となろう。

4. 最後に

本調査は、我が国の高度な技術の結集である工作機械を対象として、国内外のサプ

ライチェーンの実態調査を行うとともに、その調査を通じてサプライチェーンの調

査・分析手法を確立するものであった。本調査においては、工作機械のサプライチェ

ーンリスクの可能性を指摘するとともに、工作機械業界の強靭化に向けた対策案をま

とめた。本調査では、工作機械業界全体のサプライチェーン上のリスクを分析する上

で十分な情報が得られたとは言い切れないが、実態調査からリスク分析までの手法を

確立し、課題を特定したという点で意義は大きかった。

今後、このような調査を同じ分野(工作機械分野)での定点観測(継続調査)と他

分野への応用(新規調査)において、継続的に実施するための礎となったのではない

だろうか。

また、今回、本調査の進め方を「作業手順書」として簡潔にまとめており、これに

倣った調査手順を踏むことで、効率的かつ短期間に、他分野におけるサプライチェー

ンの実態を把握することが可能になると思われる。その際には、企業戦略に応じたサ

プライチェーンリスク分析や、もう少し広い枠組みでのサプライチェーンの考え方な

どを踏まえると、さらに業界特有の分析が可能になろう。

このように、本調査で得られた知見・考え方を基に、継続調査が行われ、なおかつ

提言案に基づいた官等の支援が得られれば、工作機械のみならず様々な分野において、

今後国際的に競争力を有する重要技術やノウハウの国外流出を事前に食い止め、国内

供給の遅れや断絶を最小化することで、国益の向上につながるものと考えられる。

その他の部品の調査

Page 18: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

平成 28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

16

[参考文献リスト]

[書籍・文献]

1 日刊工業新聞(2016年 10月 6日付)

2 日本工作機械工業会(2012年)「工作機械産業ビジョン 2020」

3 日本精工株式会社(2016年)『NSKレポート』

4 安田工業(2016 年)「2015 年度環境活動レポート」

5 Gardner Research,(2016年) “World Machine Tool Survey 2016”

6 (各社)有価証券報告書

7 (各社)決算説明会資料

[ウェブサイト]

1 一般社団法人 日本工作機械工業会

www.jmtba.or.jp/

2 一般社団法人 日本鋳造協会

http://www.foundry.jp/casting.html

3 マグネスケール

http://www.magneサプライチェーン ale.com/mgサプライチェーン ompany/development.html

Page 19: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

0

平成28年度 製造基盤技術実態等調査

(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究)

2016年10月31日

株式会社大和総研

アジア事業開発本部

作業手順書

Page 20: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

1

目次

1.作業手順書概要

2.各作業工程と留意点

2-1. 有識者事前ヒアリング

2-2. 仮説・質問項目の設定

2-3. 国内企業ヒアリング

2-4. 中国における企業ヒアリング

2-5.有識者会議開催

2-6.報告書作成

Page 21: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

2

1.作業手順書概要

Page 22: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

(4)国内企業

ヒアリング

(5)中国にお

ける企業ヒアリ

ング

(6)報告書ドラ

フト作成 (7)有識者会

議開催

作業手順書概要

重要技術整理

(仮)作成

訪問先意見提示

面談アポ取得

同行訪問

面談メモの確認

同行訪問

面談メモの確認

有識者へのコン

タクト.・日程調

整 議論に参加

会議録の確認

1.訪問候補先

の選定

●企業一覧

2. 取材依頼

●貴省依頼

フォームの利用

●貴省より依頼

3. 取材実施

●貴省主導

5. 面談メモ作

●A4で2~4枚

1.訪問候補先

の選定

●企業有報、

HP情報等

3. ロジ対応

●旅行会社利

4. 取材(北京、

上海等)実施

●大和総研主

5. 面談メモ作

●A4で2~4枚

(8)最終報告

書完成 (1)事前準備

調査の進め方

(案)作成

調査の進め方

について意見提

1.業界情報収

●各種文献(協

会冊子等)

2. 貴省と調査

方針の確認

●提案書、調査

の進め方(案)

2. 取材依頼

●貴省依頼

フォームの利用

●主に貴省より

依頼

1.サプライ

チェーン等の情

報整理・分析

●全ての面談メ

モ、企業情報等

2. 原稿執筆

●全ての面談メ

モ、各種文献等

3. 上席による

品質チェック

●10月中旬

1.有識者のコ

メント反映・加筆

●有識者会議メ

2. 原稿最終見

直し

●有識者会議メ

1.説明資料の

作成

●報告書ドラフ

3. 会議録作成

●A4で2枚程

2. 会議開催

●大和総研より

説明

3. 貴省へ納品

●100ページ

程度

最終成果物の

検収

4. 貴省のコメン

ト反映・加筆

●10月下旬

5. 貴省へ納品

●10月末

分析内容や進捗

状況につき、適宜

チェック

1.有識者の選

●提案書等

(2)有識者事

前ヒアリング

2. 取材依頼

●貴省依頼

フォームの利用

3. 取材実施

●貴省主導

4. 面談メモ作

●A4で2~4枚

同行訪問

面談メモの確認

(3)仮説の設

1.仮説設定

●重要技術整

理(仮)、有識者

メモ、各種文献

2. 企業ヒアリン

グを踏まえ仮説

見直し

●面談メモ

4. 中国での面

談事前依頼(適

宜)

●貴省主導

3

Page 23: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

4

2.各作業工程と留意点

Page 24: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

実施時期:2016年4月

工作機械分野の有識者(大学教授、協会、証券アナリスト)にコンタクト(合計6組織・9名、次ページ参

照)を取り、コア技術の考え方、企業ヒアリングで確認すべき事項などを確認した

(1)実施事項

予算と期間(4~10月)が限られている中、最初に一定の方向性を決めてから企業ヒアリングを開始でき、

効率的な調査ができた

複数の有識者へのヒアリングを通じ、理解が深まるとともに、仮説を設定し企業ヒアリングに臨むうえで役に

立った

(2)効果・役立った点

有識者の選定にあたっては、意見が偏らないよう、なるべく様々な分野の専門家に話を伺うようにした。メ

リットは様々な視点での意見を得られること。だたし、多すぎると全員のコメントを取りまとめるのが難しく

なる点には留意が必要(今回は9名で適度であった)

当初大学教授へのヒアリングを主に想定していたが、教授より推薦を受けて訪問した協会(日本工作機械工業

会)においても有意義なコメントが得られた。調査において、協会への訪問は重要

調査の方向性をなるべく早急に固められるよう、有識者へのヒアリングは調査の初期に実施することが重要

(3)コメント・留意点

2-1. 有識者事前ヒアリング

5

Page 25: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

工作機械のサプライチェーン(以下、SC)の実態調査を進めるに当たり、工作機械をとりま

く現状及び将来予測を踏まえて、

①現状認識がずれていないか

②問題意識、着眼すべき点がずれていないか、他にないか

③調査手法が適切であるか

などについて、ご助言いただいた

2-1. 有識者事前ヒアリング~ヒアリングの視点

1.現状認識

2.問題意識

• 何を“強み”とするか。

• 急速に技術力をつけている新興国企業とどう差別化を図るか。

• 生産拠点のグローバル化が進む中、国内にとどめるべき技術/生産プ

ロセスはあるか。

3.対象技術の絞り込み

6

Page 26: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版 2-1. 有識者事前ヒアリング~対象技術の絞り込み案

主要構造 構成物 着目パーツ 視点

主軸基幹部材類

主軸ユニット、主軸冷却装置、主軸ベアリング 主軸ユニット

生命線。各パーツは精密加工。超高速回転するため耐熱性の高いベアリグが必要であり、競争力の高いベアリンギメーカーとの摺り合わせが重要。

数値制御装置類 NC装置 NC装置

NC装置及び送りモーターがファナックが世界的にも圧倒的競争力を有する。工具経路、テーブル等の位置決めにおいて制御装置の効率と精度が関係。

送り駆動系部材類

リニアガイド、ボールねじ、送りモーター、プーリー・タイミングベルト

リニアガイド、ボールねじ、送りモーター

リニアガイド:生産に当たっては超高精度の工作機械が不可欠。すべり摺動の位置精度はキサゲの出来に左右される。 ボールねじ:剛性が高く精密な微動送りを可能とするには技術力が必要。ベアリングメーカーの競争力が高く、一部の工作機械メーカーは内製。

機械構造本体

ベッド鋳物、コラム鋳物、サドル鋳物、テーブル鋳物 鋳物

キサゲ等の仕上げ工程は、マザーマシンの性能を支える重要な工程であり、匠の技を持つ職人の伝承に依るため、熟練工の流出防止が重要。

機能関係機器類

自動工具交換装置、電装盤、油圧シリンダ、潤滑油供給装置、切削水供給・回収装置

油圧シリンダ 耐久性を持った精密作業が不可欠。国内には世界的に競争力のあるメーカーが集積。

7

Page 27: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

氏名 ご指摘ポイント

有識者A ・(森精機のような)世界シェアの拡大を追求する戦略なのか、(トヨタのような自動車業界大手企業仕様の)特殊なカスタムメイド技術で売っていく戦略なのか、どちらを重視するかによって調査方針が変わってくる。 ・「その技術がなくなることによる”波及効果”」を何らか定量的な形で評価できると良いのではないか。

有識者B

・企業ヒアリングで協力を得るにためは、ゴールとなる政策を企業に示す必要がある。具体案として、国際規格や海外からの受注支援など。 ・工作機械メーカーは輸出規制のためにビジネスチャンスを失っており、日本企業の相対的な技術力の低下及び新興国台頭の一因ともなっている。規制強化にならないよう留意すべき。

有識者C

・景気変動に大きく左右される工作機械メーカーは、顧客の何の価値を高めるかを見極め、サービスを提供することが重要であり、「強み」を先に設定すべきではない。 ・製品によって市場戦略は異なり、今後需要が見込まれるローエンド・ミドルレンジの市場に参入するには、製品開発と製品市場戦略が重要。

有識者D 海外ではIndustry4.0等でソフト面でのシステム化が必須となりつつあるが、大部分を占める中小企業には資金不足で規格・インターフェースの対応は難しいし、大手工作機械メーカー間では互換性に欠ける。

有識者E

・きさげ加工などの高度な技術は、確かにハイエンド製品の製造に不可欠であるが、ローエンド製品においては自動化されていたり、外国人の職人が行っていたりするので、“日本しかできない”コア技術ではない。また、データ化できる技術はコア技術とは言えないという整理もある。各社がどの程度まで秘密にしたいのか。 ・日本メーカーは遅れているが、機械設計や構造設計技術は重要。 ・工作機械のサプライチェーン構造は、部品数が少なく納期が長い点で、自動車と大きく異なる。SC分断のリスクとして、中国の部品が日本に運べない事態が生じるリスク、工具メーカーの供給が分断されるリスクがある。 ・なお、近年の製造拠点の海外移転により、国内でSCを再構築することは難しい。海外拠点を有する企業には、SCの状況、技術者の確保等について確認すべき。

有識者F ・中国など新興国メーカーの技術レベルは上がっているが、「耐久性」や「品質の安定性」といった点で日本は優位性を保っている。国内の工作機械使用者は、用途により新興国メーカーと日本メーカーを使い分けている。 ・日本企業間で規格の標準化が進んでいないことは課題として認識されている。

2-1. 有識者事前ヒアリング~指摘ポイント(抜粋)

8

Page 28: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

有識者へのヒアリング結果を踏まえ、「工作機械分野における重要技術整理(仮)」(次ページ参照)を作成

した。本資料は、企業ヒアリング依頼時に先方に提示した

上記資料の内容は、工作機械の5部品を主要部品として特定し、その調達方法、サプライヤーの種類、競合先

との差別化因子、課題を整理しているものである

(1)実施事項

企業ヒアリング時に提示(多くの場合、事前送付)することで、ヒアリング担当者(当方)が工作機械分野の

基本的知識と専門用語を理解していると先方に認識してもらうことができ、結果的に、より深い議論を行うこ

とが可能になったので効果的であった。この手法は他の産業におけるSC調査の際にも有効と考える。

(2)効果・役立った点

仮説の設定に際しては、既存文献情報のみならず、有識者ヒアリングの結果を考慮して作成した

さらに、仮説は企業ヒアリングを進めながらもその結果を踏まえて見直しを加え、次の企業ヒアリングに用い

入念に練られた仮説の設定とそれを簡潔に示した資料を事前に準備したことは、企業ヒアリングにおいて知り

たい情報を的確かつ最短時間で入手する上で非常に効果的であり、本調査の肝とも言えるものであった

(3)コメント・留意点

2-2. 仮説・質問項目の設定

9

Page 29: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

10

2-2. 仮説の設定~重要技術整理

Page 30: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

実施時期:2016年5~9月

国内企業約20社に訪問(工作機械メーカーとそのサプライヤー)し、主要部品・コア技術、調達状況、課題

等についてヒアリングを実施した(次ページ以降の候補先、質問票例、面談メモ例を参照)

(1)実施事項

主要部品・コア技術、SCの実態等について情報収集でき、事前に設定した仮説を検証できた

国内ヒアリングの中で、中国拠点への面談アポを取り付けることができた

(2)効果・役立った点

国内企業訪問時に海外拠点への面談アポの依頼を行う場合、企業へのヒアリングは現地出張(9/5~9)の遅

くとも1ヵ月前(8月上旬)までに終わらせる必要あり。ヒアリング時期は、企業の繁忙期である決算時期

(e.g. 4月下旬~5月上旬、7月下旬~8月上旬)や休暇時期(e.g. 8月中旬の盆休み)を避けるのが好ましい

日本企業が民間コンサルの取材にどの程度協力的かについては限界があるため、貴省が全ての取材を主導した

(製造産業技術戦略室、産業機械課の担当者)。実際、民間コンサルの同行が認められないケースもあった。

また、企業の面談アポは貴省を通じて行った

訪問先は、工作機械メーカと主要部品メーカを中心に候補企業をリストアップし、その後必要に応じて追加

ヒアリングを行う中で、着目点に広がりが生じ、前半と後半の訪問先で質問内容に若干の差が生じた。このよ

うな場合には、前半に取材した企業に対し、追加質問等で補足する必要あり

(3)コメント・留意点

2-3. 国内企業ヒアリング

11

Page 31: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

12

2-3. 国内企業ヒアリング~質問項目の設定

「工作機械のサプライチェーン調査」へのご協力のお願い

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 経済産業省は、株式会社大和総研への委託により、次項の問題意識の下、工作機械のサプライチェーン調査を実施しております。調査の趣旨についてご理解いただきましたら、ご担当者様よりご知見やご見解を賜りたく、面談の機会を頂きたいと考えております。

問題意識 グローバル市場において海外企業との共同研究やビジネスが活発化する中で、日本企業の先端技術は、海外から高い注目を受けております。そのような技術については、我が国の技術優位性の更なる維持・強化に加え、サプライチェーンを脅かす各種リスク(シングルソース等)を調査・分析した上で、当該技術の事業化・商業化において必要不可欠な原材料~最終製品に至るサプライチェーンの維持・強化への対処についても視野に入れた政策検討が必要であると考えております。 今回、日本企業の高い技術力の結集である工作機械に着目し、工作機械産業を支える主要技術の課題について、別添の通り仮説を立てて整理しました。別添資料をベースとして、下記の事項について、差し支えない範囲でご教示いただきたく存じます。 ご提供いただきました情報の取扱いにつきましては、守秘義務に基づき十分に注意いたしますので、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

お伺いしたい事項 1. 貴社の技術的強み

1-1. 競合他社と差別化するための強み(コア技術、ノウハウ) 1-2. 具体的技術とその差別化要因(例:ベアリング、ボールねじ、リニアガイド)

2. 貴社のサプライチェーン戦略 2-1. 1-2.につながるキーサプライヤー(内製化、外部調達の別) 2-2. サプライチェーン上の課題(構造の脆弱性と分断時の対策) 2-3. 海外進出の有無(特に中国への進出状況)と困難(進出していない場合はその理由)

※企業から問合せがあった場合は、ブレークダウンした質問項目を作成の上、送付した。

Page 32: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

実施時期:2016年9月5日~9日

中国に製造拠点を持つ日系企業(工作機械メーカー、主要部品メーカー)約10社に訪問し、生産体制、調達

先、技術保護対策などについてヒアリングを実施した

(1)実施事項

国内ヒアリングの内容を補足できた

SCの現状と課題について実態を把握でき、また事前に設定した仮説を検証できた

(2)効果・役立った点

仕様書では中国に2~3回出張することになっていたが、国内企業へのヒアリングに時間を割くことを優先す

る必要があり、事業スケジュール上厳しいことから1回とした

中国の地場企業や政府系研究機関等については、経験上必ずしも日本企業の取材に協力的ではないことから、

面談取得のハードルは高い。このため、今回は、日系企業の中国製造拠点を中心に訪問した

主要企業の中国拠点は集積しておらず、複数訪問する際には十分に余裕をみた移動時間を確保する必要あり

中国での面談アポは、主に国内企業ヒアリング時に依頼した

貴省が事前に作成した「ヒアリングのポイント」を踏まえながら、ヒアリングを実施した

日本企業が民間コンサルの取材にどの程度協力的かについては限界があるため、貴省にも取材に同行いただい

た(製造産業技術戦略室、産業機械課の担当者様)

(3)コメント・留意点

2-4. 中国における企業ヒアリング

13

Page 33: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

実施時期:2016年10月14日

有識者8名中、4名が出席

最終報告書の内容を紹介し、意見交換を行う

(1)実施事項

有識者から有益なコメント・指摘を受けることができた

残された疑問点について、確認することができた

(2)効果・役に立った点

有識者会議開催前に日本工作機械工業会と事前会議を開催し(9月28日)、ストーリーを提示し意見交換し

有識者会議開催に際しては、貴省が有識者の日程調整を行った。大学関係者は授業等もあることから、余裕を

みた日程調整が必要

他社の未公開情報を当該企業に提供されることを防ぐため、会議開催前に有識者全員に対して「情報の取扱い

に関する誓約書」の提出を求めた

(3)コメント・留意点

2-5. 有識者会議開催

14

Page 34: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

公開版

実施時期:2016年8~10月

Wordにて報告書(ドラフト)を作成。有識者のコメントを反映し最終版とした

(1)実施事項

本調査を通じて収集した情報や分析結果まとめた

(2)効果・役立った点

最終報告書のまとめ方としてWord形式、ppt形式があるが、今回は前者で執筆した。前者のほうがオーソ

ドックスであるが、後者は貴省が今後プレゼンする際に使いやすいといったメリットあり

報告書の作成に際しては、章立て・各章の内容・ストーリーについて、貴省と複数回打ち合わせを実施

(3)留意点

2-6. 報告書作成

15

Page 35: 28平成28年度製造基盤技術実態等調査(産業競争力上重要な技術のサプライチェーン把握に関する調査研究) 2 図表1:調査方法の概要

(様式2)

頁 図表番号11 1-8

委託事業名  製造基盤技術実態等調査

報告書の題名 最終報告書

受注事業者名 株式会社大和総研

タイトル工作機械業界のサプライチェーンの概要

二次利用未承諾リスト