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平成29年度 まちづくり研修事業視察報告書 創造的過疎から世界一 素敵 すてき な過疎へ 【川上村にて活躍する女性たちと】 平成29年11月7日(火)~11月10日(金)

平成29年度 まちづくり研修事業視察報告書 · ったという。 医師に反対されることもあったという。 それでも何故ここまで頑張れたのか。

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平成29年度

まちづくり研修事業視察報告書

創造的過疎から世界一素敵す て き

な過疎へ

【川上村にて活躍する女性たちと】

平成29年11月7日(火)~11月10日(金)

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平成29年度まちづくり研修事業視察概要

1.テーマ

創造的過疎から世界一素敵な過疎へ

2.目 的

本研修の視察は、共通してこれからの町の姿をどう考えるかがテーマになっ

ている。単に「移住」ということではなく、雇用の変化(テレワーク)による

移住や若い世代と高齢者の相互扶助によるマッチングシステム。そして、農業

分野と最先端技術(VR・AR)の融合による新たな可能性を探り、次世代に

繋げるまちの姿を考え、「創造的」に「世界一素敵な過疎のまち」の実現に向

けて、意義のある視察にすることを目的とする。

3.日 程

平成29年11月7日(火)~11月10日(金) 3泊4日

4.視察先

長野県川上村

1)カワカミスマートプロジェクトについて(2頁)

・地域で活躍する女性とのヒアリング

2)地域包括ケアシステム構築について(4頁)

・ヘルシーパークにて担当者とのヒアリング

東京都

1)シェアサミット 2017への参加(5頁)

東京都フジテレビ

1)農業分野等におけるVR活用について(6頁)

・フジテレビVR事業部にて担当者とのヒアリング及びVR体験

徳島県神山町

1)神山のまちづくりや創造的過疎について(8頁)

・NPO法人グリーンバレー

2)神山の農業を次の世代につなぐ「Food Hub Project」について(13頁)

・株式会社フード・ハブ・プロジェクト

3)「まちを将来世代につなぐプロジェクト」について(18頁)

・神山つなぐ公社

5.参加者

グループリーダー 保健福祉課生活環境係 主 事 木口 孝志

構成員 総務政策課政策振興係 主 事 三戸 康彰

構成員 保健福祉課健康増進係 保健師 菊池 麗奈

構成員 建設水道課建築係 主 事 蛯名 拓斗

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平成 29年 11月 7日(火)午後 3時~午後 5時

長野県川上村

<カワカミスマートプロジェクトについて>

・地域で活躍する女性とのヒアリング

※参加者~地域住民女性 5名、㈱パートナーエージェント田中淳一氏

川上村は標高 1100m以上の立地条件を活かした日本有数のレタス産地で、農家の平均年

収が約 2500万円という豊かな村である。しかし人口減少が進み現在は 4000人弱となってい

る。また、男性(農業後継者)の非婚率は約 40%であり、この状況を打破するため、結婚

支援サービスの㈱パートナーエージェントの田中氏と手を組み 2016年から結婚環境の向上

を目指した「KAWAKAMI SMART PROJECT」を推進した。

川上村では、「結婚環境の向上推進」により、「未婚女性に選ばれる地域」となって移住定

住者が増えることを事業目的とし、そのために制度の改革だけではなく、「文化の改革」を

必要不可欠とし、『女性こそ輝くまちづくり』を柱に掲げ改革を進めている。

◆そんな改革を進める中、川上村で活躍する女性たちとのヒアリングで見えてきたもの

1.現実(農家に嫁ぐ女性)

家族でレタス栽培を行っていることから、女性も収

穫などの労働に励み、家事や育児に忙しい。

女性の自己実現には程遠い…

2.2人のキーマン

農水省から出向し 30 歳という若さで副村長に就任

し、地方創生プロジェクトを担当している西尾副村長

と結婚支援のプロである㈱パートナーエージェントの

田中氏。官民タッグを組み課題解決に動き出した。

西尾副村長は、女性の力で村を変えるべく、女性た

ちの声を聴いた。ヒアリングでも印象的だったことは、

女性たちは皆、「西尾副村長はとにかく話を聞いてくれた。どんな話も否定することなく、

「おもしろそうですね。」「やってみましょう。」と肯定的に話してくれて、何より寄り添って

くれた。」と口を揃えていた。

村を変えたい気持ちを持っていた女性もいたことから、徐々に村の内側から変わり始め、

女性の自己実現に向けた取り組みが動き出した。

3.カワカミリブランディング

スマートプロジェクトを進めるにあたり『変わることは、希望』を事業コンセプトとして

いる。田中氏は言う。「変わることはリスクを伴う。しかし、進化・発展のない地域に未来は

ない。そんな町に誰が残るのか。リスクではなく希望に変えることが重要である。」と…。

カワカミリブランディング事業として、女性の社会参加促進を目的とし、地方の不便さを

解消するためのアイデアを募る「KAWAKAMI IDEA FOREST アイデアコンテスト」の実施や、女

性が自己実現の時間を確保するシェアリングエコノミーシステム「MAKETIME!」の実証実験

を導入した。

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4.まとめ

スマートプロジェクトを始める前は、村の女性も村役場の職員も誰もが川上村に自主的に

活動する女性がいるとは思いもしなかったという。官民主導となってプロジェクトを仕掛け

たことも大きなことだが、一番は村民に寄り添い村民の声を聞いたことが、大きな成果につ

ながっていると感じた。

村の女性も西尾副村長が就任する前は、役場に何か相談してもいい顔をしてもらえないこ

とが多かったと言う。

その土地の風土・文化・慣習を変えることは容易くない。旧世代の保守性による女性の自

由度の低さが課題であり、地元を出た女性すら戻ってこない場所に「お嫁にきてください」

というのは難しく、婚活イベントを行う前に「結婚後の幸せな未来」をイメージできる環境

を造り上げることが必要である。すなわち、女性の自由度が高く、自己実現可能な文化の醸

成である。

川上村では女性の活躍により、夫や祖父母の考え方も変わってきているという。

視察を行い「女性が輝くまちづくり」は大変魅力ある取り組みだと感じた。人口規模や基

幹産業、町の課題等類似する点が多く、これからの厚沢部町を次の世代につなぐことを考え

たとき、まだまだやれることはたくさんあると感じ、厚沢部町に大きな可能性を感じた。

まずは町民に寄り添い町民の声を聞く。小さなことではあるがこの積み重ねが「厚沢部町

の幸せにつながる」とこの視察を通して改めて感じた。

変わることは、希望。

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平成 29年 11月 7日(火)午後 5時~午後 6時

長野県川上村

<地域包括ケアシステム構築について>

・ヘルシーパークにて担当者とのヒアリンング

※説明者~川上村地域包括支援センター 由井千富美保健師、遠藤ゆかり看護師

参加者~川上村西尾友宏副村長、㈱パートナーエージェント田中淳一氏

川上村における地域包括ケア体制構築の経過と効果について説明を受けた。川上村の医療

福祉の課題として、休日夜間の医師不足や入院施設までの移動、また、在宅サービスの方針

は医師の意向で左右されること、医療福祉関係者は医師へ依存することなどが挙げられ、結

果、村民が入院を余儀なくされている現状があった。

平成 10年に村長の提唱により、「村民が住

みなれた自宅で安心して暮らせる医療介護

体制をつくる」という実践目的のもと、保健・

医療・福祉・介護の一元化を図りヘルシーパ

ークを拠点とした診療所訪問看護を開始し

た。現在は、自宅死亡率が全国で 6位という

成果が出ているが、開始当初は 2名による 24

時間 365日の訪問体制であり、相当な激務だ

ったという。

医師に反対されることもあったという。

それでも何故ここまで頑張れたのか。

担当者 2人の話を聞いていると、川上村で

活躍する住民女性とのヒアリングの時と同

じ、『住民に寄り添う気持ち』でしかないと感じた。村民が希望する「自宅で最期を迎えたい」

という思いに、時には反発を受けながらも、「自分たちが中心になって川上村の包括ケアを考

えよう!」と取り組んできたという。そこには村長の理解と行政の説明が必要不可欠なこと

は言うまでもない。

現在は第 6期の計画を進めており、2025年までに川上村独自の地域包括ケアシステムを構

築することを目指している。

担当者の熱い思いに胸打たれた視察であった。

★ヘルシーパークとは…

川上村保健福祉課、地域包括支援センター、社会福祉協議会が入所しており、関連施設として、

川上村鍼灸施術所、運動指導室(トレーニングルーム)、ヘルシーの湯、高齢者いこいの湯、喫茶

「こでまり」等も入所している。

また、川上村診療所を併設しており、保健・福祉・医療・介護の拠点となっている。

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平成 29年 11月 8日(水)午前 10時~午後 2時

東京都

<シェアサミット 2017へ参加>

『SHARE or DIE -まちの消滅が叫ばれる時代の、生き残りを賭けた“シェア”という都

市戦略-』と題し、世界を代表するシェアリングシティや業界のキーパーソンが一堂に集ま

り、都市づくりの最前線やシェアサービスが消費者のライフスタイルにどう変革をもたらし

ていくのか?などを共有し学ぶ場とすることを目的としたシェアリングエコノミー協会が主

催する『シェアサミット 2017』へ参加した。

少子高齢化や人口減少、子育て・教育環境の悪化、財政難など、これらの課題を公共サー

ビスだけに頼らず、住民ひとりひとりが「シェア」しあうことで解決し、自治体の負担を削

減しながら、暮らしやすいまちづくりを実現することが「シェアリングシティ」の目的とさ

れている。

また、シェアサミット 2017 では、全国 15 自治体を「シェアリングシティ」として認定を

行い、前日視察を行った「川上村」や北海道ではカーシェア(notteco)を行っている「天塩

町」も認定されていた。

時間の関係上 3講演のみの参加ではあったが、カーシェアの「Anyca」、個人の得意(知識・

スキル・経験)を売り買いできるオンラインフリーマーケット「ココナラ」、ブランドバック

が無限に使い放題になる「ラクサス」を手がけるベンチャー企業のパネルディスカッション

を聞くことができた。また、保育士・幼稚園教諭 100%のベビーシッターサービス「KIDNAキ

ズナシッター」は、有資格者の登録と利用する側がスマホアプリによりシッターを選択し、

保育士幼稚園教諭をベビーシッターとしてシェアするサービスとなっており、非常に興味深

い内容となっていた。

川上村でもそうだったように「シェア」ありきではなく、目的を達成するための方法・手

段として捉えることが重要であり、「自分たちのまちにあったシェア」をいかに造り上げてい

けるかが重要だと感じた。

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平成 29年 11月 8日(水)午後 3時~午後 5時

東京都フジテレビ

<農業分野等におけるVR活用について>

・フジテレビVR事業部にて担当者とのヒアリング及びVR体験

※説明者~㈱フジVR事業部 小寺尚氏、曽我部哲弥氏

フジテレビでは、昨年の 7 月から VR事業部を立ち上げ様々なコンテンツを作成し、また、

現在では自治体と VRを活用した地域活性化を進めている。

VRとはコンピュータ上に人工的な環境を作り出し、あたかもそこにいるかの様な感覚を体

験できる技術であり、次のようなことが可能となる。

フジテレビでは、全国自治体との連携も進めており、郡山市と日本遺産である「未来を拓

いた一本の水路」の VR化など進めている。

フジテレビの強みとしては、これまで培ってきたエ

ンターテイメントや放送局の持つ揺るぎない宣伝力

としており、フジテレビと組んだ番組展開など期待で

きるという。

また、エンターテイメント要素だけではなく、様々

な分野での VR活用を検討しており、当町の魅力をデ

ジタル化し全国全世界へ発信していくことも十分可

能である。

VRソフト制作としては、ヴァーチャル天守閣の制作も可能であり、当町のように館城の再

構築が難しい場合などデジタル再現することにより、あたかも実在するかのような仮想体験

を実現することができる。

また、VR機器についても紙媒体(ハコスコ)の物もあり、低価格で調達することも可能だ

という。

①現実には実現しづらいことを体験

②現実にはないことを体験

③現実を超える体験(VR 上で現実)

④実際はいない人と実在感の高い「共有」体験

簡単に組み立てることがで

きる「ハコスコ」

スマホでVR画像をダウン

ロードしセットすることで

簡単にVR体験することが

できる。

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厚沢部町においても農業分野等で VRを活用できないか提案した。

都会にいながら VR等を活用し農家の遠隔経営(または農業仮想体験)ができないかという

提案であり、VRソフトを制作しゲーム感覚で仮想農業体験を行い、実際には地域おこし協力

隊制度などを活用しながら別の人が農作業を行い、収穫した物を実際に手にすることができ

るという内容。厚沢部町の農業の魅力向上と販路拡大等につなげること、また、後継者問題

解決に向けた取り組みとなることを期待し、話をさせていただいた。

また、教育分野での VR等の活用も可能であり、例えば、厚沢部町の 8割を山林が占めるこ

とからも厚沢部の『木』についてふるさと教育の一環から、長い年月をかける「木の育ち」や

厚沢部に存在する樹木について学ぶことも VRを活用し行うことが可能ではないかと考え、話

をさせていただいた。

フジテレビとしても内容に興味を持っていただき、一度厚沢部町を訪問し今後の話を進め

ていければと話し、視察を終えた。

【フジ VR事業部での視察を終えて】

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平成 29年 11月 9日(木)午後 2時~午後 3時 30分

徳島県神山町

<神山のまちづくりや創造的過疎について>

※説明者~NPO法人グリーンバレー 大南信也氏

神山町は、徳島市中心部から車で 45 分ほど。山に囲まれた町の人口は約 5200 人、高齢化

率は 48%に達している。「消滅可能性が極めて高い」と宣告された過疎の町が、IT企業 16社・

移住者 161人を迎え入れた。このまちづくりを手がけてきた NPO 法人グリーンバレー理事長

の大南氏に話を伺った。

<神山プロジェクト>

①創造的過疎

過疎化の現状を受け入れ、数ではなく過疎の内容を変える。ICTインフラ等を活用し農林業

のみに頼らない多様な働き方を実現できる「ビジネスの場」として価値を高め、持続可能な

地域を目指すことをいう。

②過疎地の課題 … 雇用がない!仕事がない!

・移住者を呼び込めない。

・若者がふる里へ帰ってこられない。

・地域を担う後継人材が育たない。

③神山プロジェクト

・ワークインレジテンス(町の将来にとって必要な働き手や起業者の誘致)

→ビストロ、カフェ、パン屋、靴屋、かばん屋、総菜店、ゲストハウスなどが開業

→中山間における商店街モデルの誕生(商店街の再生化)

・サテライトオフィス(IT、映像、デザインなど働く場所を選ばない企業の誘致)

→平成 29年 9月現在、16社がサテライトオフィス設置

・神山塾(厚生労働省の基金訓練・求職者支援訓練による後継人材育成)

→独身女性、20代後半~30代前半、東京周辺出身、クリエイター系(デザイン等)

1学年あたりの人数(15で割る)

2010年…28.9人

2035年…12.5人(考える土壌)

1学年 20人を目標値に設定

モデル子育て世帯の移住施策

課題と政策… ①住居 ②仕事

(空き家)(WIR)

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<グリーンバレーの軌跡>

1991.3月 アリス里帰り推進委員会(青い目の人形の米国への里帰り)

1992.3月 神山町国際交流協会

1997転機 徳島県新長期計画…とくしま国際文化プロジェクト

1997.4月 国際文化村委員会

↓ 芸術(神山アーティスト・イン・レジデンス)環境(道路清掃ボランティア事業)

2004.12月 NPO法人グリーンバレー

アリスの里帰り計画メンバー数名が現在のグリーンバレーの主要メンバーとなっている。

1人 2人ではなく数名で成功体験できたことが大きいという。複数で取り組むことによっ

て、良くも悪くも色々な意見がでる。

≪アイデアキラーの出現≫

過去の失敗などを例に挙げながらアイデア

を破壊する人

★特徴…「難しい!」「無理だ!」

「できない!」「前例がない!」

時代の歯車を回すチャンス

変えられない事実に固執しない。

(山奥だから、島だから、雪国だから…)

大事なことは… できない理由より できる方法を! / とにかく始めろ! Just Do It!

合言葉は… 「やったらええんちゃうん!」

<アーティスト・イン・レジデンス> 1999年開始

①見学に訪れる観光客

→「評価のあるアーティストの作品」を集める!

→1)資金が潤沢でない。

2)専門家がいない。

→作品ではなく、人に焦点

②制作に訪れるアーティスト

→滞在満足度を上げ、神山町の持つ「場の価値」を高める。

→自費滞在するアーティストに対して宿泊・アトリエ等のサービスを有償提供すること

によってビジネス展開を模索。

→情報発信(ウェブサイト「イン神山」の制作)

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<ワーク・イン・レジテンス>

※町の将来にとって、必要と思われる

「働き手」「企業家」を逆指名

・パン屋さん開業しませんか?

・デザイナーさんいらっしゃい!

※事前に職を特定することにより、

『町のデザイン』が可能に!

【ビストロ】 【プラットイーズ】

カフェ・オニヴァ 蔵オフィス

【モノサス】 【プラットイーズ】

サテライトオフィス えんがわオフィス

※Webサイト制作運用事業 ※テレビの番組情報などを放送局に配信

※神山塾の運営

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<地域内経済循環>

●これまで取り組み(従来型)

文化・芸術の観点からまちづく

りを進め芸術家の移住、起業者の

移住(ワークインレジテンス)、サ

テライトオフィス(IT、デザイ

ン、映像等)の進出と新たな人の

流れができ、そこにサービス業

(ビストロやピザ屋等)が生まれ

た。結果、町の課題でもある農業

へ影響を与えてきた。そこで生産

された農産物はブランド化され都

市圏のレストランへと流れ価値を

高めるが域外でサービスが発生し

域外でのお金の循環が従来であった。

●これからの取り組み(地方創生型)

サービスを域内に作り上げることで農業が活性化する。農業の活性化は景観を作り上げ観

光を呼び込む。(地域内経済循環)

地方の経済がうまく回っていない原因の 1つとして、域内にサービスがなく域外でサービ

スを購入するためにお金が流出してしまう。結果、域内に留まるお金が少なくなる。そこを

補うのは観光の役目であり、観光による外貨を域内で循環させる必要がある。

そのためには、働き方や働く場所の自由度を高め、地方に「高度な職」「サービス」を生

み出し、地域経済の循環による自律的発展を図る必要がある。(循環のブランド化)

そんな中、町の地方創生総合戦略の一環として取り組む『フード・ハブ・プロジェクト』

は、「自分たちの農業は自分たちが食べて支える」というコンセプトのもと行われており、

その取り組みが注目されている。

<質疑等>

Q:グリーンバレーの活動に対して行政が果たしてきた役割は?つながりは?

A:役場はバリバリ仕事を進めていく感じではなかったが、一番はアクセルにもブレーキに

もならなかったこと。結果、役場が主導しない代わりに民間が育ってきたところはある。

これまでは民間と行政の両輪のうち民間が大きかったが、役場とグリーンバレーで立ち上

げた「神山つなぐ公社」ができたことでうまく歯車が回るようになってきた。これが正し

いと言うことではなく制約条件のある中で最適な状況を造り上げていく必要がある。

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<まとめ>

今回お話を伺った NPO法人グリーンバレーの大南さんのこれまでの活動は、自身の海外在

住経験も活かされており、また、役場職員ではなく一住民という立場から『まちづくり』に

参画し、大南さんが言う「結果にこだわるよりもそのプロセスを重要視する」という言葉の

賜物ではないかと感じた。アーティストから始まり多才な人の出会いがあり、そこにサービ

スが生まれる。「テレワーク」という言葉だけ切り取るのではなく、20年以上前からの取組

が今まさに実を結んでいる印象を強く受けた。「時間がない」と急いで物事を考えるのでは

なく、時間は掛かっても丁寧に積み上げることがしっかりとした土台の成果に繋がる。

また、農業に直接的ではない取組が結果的に農業の課題解決へ寄与しているなど、次世代へ

つなぐ厚沢部町のヒントをたくさん得ることができた。

最後に大南氏からこんな素敵な言葉をかけられました。

「 『すき』を『すてき』な厚沢部町に… 」

それぞれ好きな場所や好きな厚沢部がある。

好きな厚沢部を好きなままにしておくのではなく素敵な厚沢部にしましょう。

そのためには「て」を加える。

それはあなた達 4 人が行動するということ。

そうすることで厚沢部町がもっともっと素敵な町になる。

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平成 29年 11月 9日(木)午後 3時 30分~午後 4時 30分

徳島県神山町

<神山の農業を次の世代につなぐ「Food Hub Project」について>

※説明者~㈱フード・ハブ・プロジェクト 農業長 白桃薫氏

神山町では、「自分たちの町の農業は自分たちが食べて支える」というコンセプトのもと、

フード・ハブ・プロジェクトを進めている。当町においても農業を次の世代につなぐことは

喫緊の課題であり、役場職員でありながら「神山つなぐ公社」へ出向し現在はフード・ハブ・

プロジェクトの農業長である白桃氏に話を伺った。

<フード・ハブ・プロジェクト~地産地食~>

地域で育て、地域で一緒に食べることで、神山の「農と食」を次の世代につなぐ。

キーワード…「育てる」「つくる」「食べる」「つなぐ」

<きっかけ>

神山町地方創生戦略を考えるワーキンググループ。神山町役場と住民が一体となり 2015年

7 月~12 月末までの約半年間行われた。メンバーはよくある有識者による構成ではなく、役

場の若手と住民 20~40 歳代のこれまで計画等に携わることがなかったメンバーで構成され

た。その中で白桃氏とサテライトオフィスに勤務する真鍋氏がこの計画の素案を作成した。

<神山町農業の課題(全国的にも見られる課題)>

①農業者の平均年齢「71歳」

②担い手不足による「耕作放棄地」の増加

③農環境の悪化による「鳥獣被害」の増加

白桃氏の父は、機械等ない人のお米を作ることを担ってきたが、7年前に病で倒れ農作業を

行うことができなかった。白桃氏はそれまでは「農業は出来なくなれば代わりは誰かいるだ

ろう」と思っていたが、誰もでてこなかった。その時初めて町の農業の脆さに危機感を覚え

たという。自分が役場を辞めて農業を継げばいいと言うことではなく、担い手を育てる仕組

みが必要であると感じたという。

<みんなで農業を支える仕組みを考える>

●現 状

「田舎」で育てて「JA、市場、小売」を通して、

「都会の消費者:不特定多数」に届ける。

○小さな仕組

「神山」で育てて、「自分」たちで

「神山のみんな:特定多数」に届ける。

神山独自の

農業の担い手を育てる

「仕組み」が必要。

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<地域内経済循環~地方創生ミッション>

食の課題として、農業で黒字でも飲食料品などは県外に流出し赤字となっている。またパ

ンや外食などは、地域外でお金が使われており、地域で循環していないことが多い。

→地域内で育てて、調理して、食べることで 地域で循環させる仕組みが必要。

<そのための仕組みフードハブ>

神山の農業を食べて支える。農業の担い手を育てるために5つの取組を行う。

1.社会的農業…地域の農と景観、食文化を次につなぐ農業者をみんなで育てる農業

2.食堂&パン屋…収益の柱、地域の食材をふんだんに使った食事の提供

3.食品店…地産地食を楽しくする調味料やオリジナル商品(器など)の販売

4.加工品&テストキッチン…地域の人たちとつくる。オリジナル商品と地域に開かれた加

工場

5.食育…一緒に種から育てて調理して食べる。その種を次に受け継ぐ。大人も子どもも、

地域も学校も一緒に取り組む循環型の食育活動

<その仕組みを支えるチーム>

それぞれの取り組みを3つのチームが支える。メンバー18名のうち 10名は移住者であり、

㈱モノサス(SO)代表者や役場職員、料理人、管理栄養士、パン職人、もと教員、ダンサー

など多才なメンバー構成となっていることも魅力的である。また、他拠点な関わりとして会

議等リモートで行うことも今の神山では当たり前になってきているという。

1.育てる部門(農業チーム)…地域に実践する社会的農業を実践していく。

2.食べる部門(料理チーム)…収益の柱。一緒に食べることで農業の担い手を支える。

3.食 育 部 門(プロモーションチーム)…学校と地域の人と一緒に神山の食文化をつないでいく。

↓住民等へ説明するときに意識して伝えるようにしていること。

『人・物事・お金の流れ』

①育てる部門…農地等借り

受け生産を行い、食べる部

門へ野菜等を卸す。

②食べる部門…食堂、パン

屋を中心に神山の生活者へ

提供する。

③食育部門…これら取り組

みを周知する重要な役割。

食育のプロモーション。

※フードハブでは、役場出向者(農業長)の人件費以外は役場からの補助を受けていない。

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<㈱フード・ハブ・プロジェクトの構成>

神山町役場

30%

㈱モノサス

67%

神山つなぐ公社 ※スピード感を出すために民間出資を多く

3%

<合い言葉>

地産地食…育てる、つくる、食べる、つなぐ。

<農作物について>

米、もち米、小麦を軸とし「神山にあった昔ながらの農業を現代に合わせる形」を基準と

している。→特別栽培農産物…化学肥料不使用、農薬 50%低減

食堂であつかう野菜等の地域的優先順位は、神山町>徳島県>四国>四国外 としている。

<作付けの方針>

・少量多品目で、かま屋、かまパン(飲食店)の食材を多く担えるようにする。

・料理人が欲しがるサイズ感や品種を中心に作付けする。

・加工品の原材料となる品種を作付けする。

・試験、新たな品種、技術に挑戦する。

・在来種、固定種を作付け、自家採種していく。

・既に神山産でまかなえている(有機農家 12軒)品種については作付けない。

<農業研修制度>

●農業次世代人材投資資金(準備型)…フードハブが研修機関として国から認定を受ける。

※最長 2年、年間最大 150万円、年 2名の研修生を受け入れることが可能であり、

来年 4月から一期生の研修制度が開始される。

●農業次世代人材投資資金(経営開始型)

※最長 5年、年間最大 150万円の交付を受けながら就農開始。

※計 7年間国からのサポートを受けることができる。

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<フードハブの食育について>

子どもたちにとって「イベント」にならないように気をつけ、「ぐるぐる循環させる」を

テーマにしている。学校という小さな社会の中で様々なモノゴトを循環させている。

・種をつなぐ

・育てて、つくって、食べる

・地域とのつながりをもつ

・世代をこえる

・継続性

種をつなぐという視点から、小学校 5年生による田植え&授業を実施している。化学肥料・

農薬不使用でお米作りに挑戦し、神山と世界のお米について学ぶことも行っている。

また、田植えについては、昨年の 5年生からの種を今年の 5年生へつなぎ行っている。

※その他の取組としては…

・小学 3年生 国語「すがたをかえる大豆」を教材とした地域教育&食育

・城西高校生活科 お弁当開発プロジェクト

→オリジナル弁当を「神農祭」で発売 … 100食あっという間に完売

<産食率>

地産地食率の略であり、「地産地食」の食文化の普及と向上に役立てるため、食堂の料理に

使っている食材の割合を管理栄養士が計算し、毎週 Web等で公表している。

<かま屋・かまパン>

・地域の台所という意味を込めて、竈のある場所で「かま屋」と名付けている。

・食堂の家具は、神山町林業活性化協議会の協力により、椅子やトレイ、割り箸などを制作

している。また、地元大工さんや地元製材所などと協力し、神山の杉を使ったテーブルの天

板等作成している。

・地域の日常の「パン」を職人が作り、届ける場所。神山の地域の人たちと協力してつくる加

工品や徳島の食材を扱う食品店も併設している。

【かま屋】 【かまパン】

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<まとめ>

白桃氏はこのフード・ハブ・プロジェクトを考えていく中で、「役場を辞めてでもこの計

画を実行したい!」と強く思ったという。

また、フード・ハブ・プロジェクトの農業指導最高責任者でもある白桃氏の父は、フード

ハブの会議の中で「全国的に過疎が進み、この神山でも親から子への繋がりがなくなり地域

の仕組みが崩壊しているように思う。代々、先人から受け継いできた田畑も自分の代で終わ

ると思うと忍びないという話も聞こえてくるが、一人の力ではどうしようもすることができ

ず、心を痛めている。しかし、地域や家庭の中で何気なく伝えてきたことをつないでくれる

のがこの『フード・ハブ・プロジェクト』だと思う。5年後に今していることをやろうとし

ても遅すぎる。今しかないと思う。みなさん、このメンバーの目の色が違うのが分かります

か?私もこのメンバーのこの空気の中にいれることが嬉しい。」と訴えかけた。

町の農業を「次の世代につなぐ」ということに対して、これだけの思いと覚悟のもと取り

組むフード・ハブ・プロジェクトに感動した。と同時に当町におけるこれからの『まちづく

りの姿』をそこに見ることができた気がした。基幹産業である農業を自分たちが食べて支え

る。作る側も食べる側もお互いに尊敬と感謝の気持ちで農業を支える。その拠点となる食堂

が新たな地域の集える場として位置することで、町の活性化につながる可能性が大いにある

のではないかと感じた。

【かま屋にて夕食をいただきました!】

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平成 29年 11月 10日(金)午前 9時~午前 10時

徳島県神山町

<「まちを将来世代につなぐプロジェクト」について>

※説明者~一般社団法人 神山つなぐ公社 代表理事 栃谷学氏

神山つなぐ公社は、2015年 12月に策定した神山創生戦略「まちを将来世代につなぐプロ

ジェクト」を実現していくために設立された一般社団法人であり、役場から出向し神山つな

ぐ公社の代表理事である栃谷氏からプロジェクトの経緯や活動について話を伺った。

<最初に>

栃谷氏は、役場在職中の平成 16年に全国に先駆けて行政による光ファイバー網の整備を

担当し、都会との情報格差の解消に努めた。その 2年後には公共施設等への Wi-Fi整備を進

め現在のテレワーク事業等の基盤となっている。

<地方創生戦略会議>

創生戦略を策定する中で大切にしたことは、「実行のための計画をつくる」ということ。

いいアイデアがあっても実行できなければ意味がなく、「実行する意欲と力のある人が明確

に存在すること」が大切であり、そのアイデアを役場と住民(民間)の協働で実現していく

ことが重要であると栃谷氏は言う。

創生戦略での基本方針を「まちを将来世代へつなぐ」と定め、官民連携した「神山つなぐ

公社」を設立した。メンバー構成としては、役場からの出向として栃谷氏、白桃氏(フード

ハブ農業長)、グリーバレーの大南氏の他、一級建築士やアニメーターなど多種多才な構成

となっている。

<人口ビジョン> [日本創生会議消滅可能都市全国ランキング 20位]

※2060年総人口(子どもの数)

一学年の

●今のまま…

1145人( 3人)

○移住実績 年 24人転入…

1997人(11人)

◎創生戦略を実行…

3200人(21人)

『まちを将来世代につなぐ』

※何かやれば未来は変わることを実感。

※NPO法人グリーンバレーに頼るばかりでなく、町としても取り組みが必要。

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好循環

この掛け算を回しながら、

日々発信していく。

<必要な施策を考えるにあたって>

人は「可能性が感じられる」ところに集まる(来る 還る)

・人がいる

・いい住居がある

・よい学校と教育がある

・いきいきと働ける

・富や資源が流出していない

・安全性がある

・関係が豊かで開かれている

都会に出ていい大学に行き都会に就職することがある種ステータスになっていたが、今は

田舎であっても「いい取組」を行っている町に可能性を感じ移り住む人が増えてきている。

神山町は移住したいという人が増えているが、空き家とのマッチングや住むところの確保

が難しい。→ 民家改修プロジェクト・集合住宅プロジェクト

また、いきいきと働けることは、地域に働く場があり、そこで働く姿を子ども達が見られ

ることが大事だと考えている。

さらには地域内経済循環が重要と考えており、フード・ハブ・プロジェクトを行っている

が、消費の仕組みを変えることはなかなか難しい。役場においては、システム関係費用は地

域外へ流出することが多いことからシステム会社の誘致なども検討しているという。

<民家改修プロジェクト>

①コンセプト

地域の資源でつくりたい(木材・植栽・リサイクル)

地域の仕事でつくりたい(大工・解体・土木)

②背 景

町内に空き家は多数あるが、軽微な修繕で居

住可能な物件は既に使われている。伝統工法で

建てられている古民家は、最新の構造計算を含

む適切な修繕を行えばさらに 100 年以上使え

る社会資本になるが、中途半端な改修はむしろ

価値を損ねる。また、ハウスメーカー等による

新建材を多用した近代的な住宅への建て替え

も長い年月を重ねてきた集落景観を低くして

しまう。

③施策内容

古民家のリノベーションによる転入希望者用の「お試し住宅」を7つの地区に開発。

「お試し住宅」は、転入希望者・家族と、まちや地域のお見合い期間に供する場として、

まず各地区につくっていく。それらをモデルハウスとして、町外のハウスメーカー等に依

拠しない住宅改修工事の仕事が新たに増えることも期待する。

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<集合住宅プロジェクト>

①コンセプト

・移住者向けではない

地元の人も帰ってくる人も、移住する人も対象

・公営住宅ではない

公営住宅法に則った低所得者向けではない

・子育て世帯を中心に

高校生以下の子どもと同居している家族・親子(高校卒業後は退去~循環させる)

単身シェア棟も準備

②背 景

神山は町域が広いため、保育所や学校から家に帰ると近所に同世代の子どもが少なく、

育ち合いの機会を逸しかねない環境が近年生じている。新たに家を建てる土地の見つけに

くさや、移り住んでみたい人に貸し出せる家が不足している状況がある。

③施策内容

・神山の木で、まちの人が作る

建物は神山の木材で作ることとし、より地場産材の利用が進むように「町産材認証制度」

を整備した。この開発は分棟型の木造建築とし、かつ開発を 3 年間にわたらせることで、

町内の大工さん等が腕をふるいながら少しずつ完成させていくことを可能にしている。

大工等人材育成の機会でもあり地域内経済循環を高めることにも繋がるとされている。

また、植栽は町の高校生が山で集めた種から育てた苗木を中心に、地域の植物で構成して

いる。

空間と人がともに育ち、これまで離れ離れにあった地域資源をつなぎ直す、多義的な建

設プロジェクトとなっている。

【大埜地の集合住宅プロジェクト】

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<質疑等>

Q:民家改修プロジェクトは何件実施しているのか?

A:昨年実施した 1件のみ。改修中は 1件。毎年 1棟を予定。

Q:子育て住宅の賃貸料金はいくらに設定する予定か?

A:家賃は 4 万 5 千円で検討している。公営住宅法に基づき建築すると夫婦共働きの世帯は

入居できないことが多い。実際に隣町などへ入居者が流れている。建設の財源は過疎債の

みだが、町に人がいることの方がメリットは大きいと考えている。

Q:空き家はたくさんあるが個人の財産として行政が介入しにくい。民家改修の物件を集め

るスキームは?

A:この 1 件はたまたま貸してくれる人がいた。移住者と空き家のマッチングはグリーンバ

レーが行っているが、グリーンバレーは地元の人が多いことから公募等ではなく、人づて

で物件を集めている。物件は個人対個人の賃貸で行っている。

【神山町での視察を終えて】

<まとめ>

神山町ではこれまでグリーンバレーの活動が大きかったが、創生戦略策定をきっかけに、

行政と住民(民間)が寄り添いお互いに町の将来を次の世代にどう繋げるかを検討してきた。

「実行のための計画をつくる」。当たり前のようで実はこれが一番大事だと痛感した。住民も

巻き込み自分たちの町のこれからの姿や課題を共有し、実行する意欲のある人の存在を明確

にする。町民から意見を聴くことは容易ではない。様々な意見もあると思う。しかしそこで

侃々諤々かん か ん が く が く

議論を行いまちづくりの土台をつくることが将来世代へつなぐ一歩になると感じた。

住民が主導となったグリーンバレー、行政と民間(行政)が共に立ち上げた「つなぐ公社」、

それぞれが共通意識のもと地方創生に取り組む姿に、これからの厚沢部町のまちづくりの可

能性とヒントをたくさん得ることができ、とても充実した神山町の視察となりました。

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≪研修総括≫

今研修視察にあたり、視察先の選定や視察に至るまでの打合せ等、当町地方創生アドバイ

ザーである蒔田氏に多大なるご協力をいただきました。ありがとうございました。

川上村、神山町どちらも住民主導によるまちづくりであり、行政として住民とどのように

関わるべきか、また、役場職員としての姿勢を川上村で学びました。住民に寄り添う心。誰

のための自分で、自分は何のために仕事をしているのか。職員の意識改革も当然必要になっ

てくるのではないかと思います。小さな自治体であればあるほど、職員の意識・取り組みが

与える影響は大きいと、改めて海士町の視察を行った時と同じ気持ちを抱きました。

近い将来、厚沢部町も確実に自治体消滅の岐路に立たされると思います。フードハブの中

でもあったように何かを始めるには 5年後では遅いかもしれない。それくらいの危機感を持

つと同時に、これからの厚沢部町に希望と可能性を抱き「まちづくり」に取り組んでいかな

ければならないと強く感じました。

実際に視察を行い、厚沢部町では取り組んでいないこと、また取り組むべきことをたくさ

ん学ぶことができた今、厚沢部町の現状を嘆き悲しむよりもまだまだやれることが厚沢部町

にはあると、厚沢部町に大きな可能性を感じました。

創造的に過疎のまちづくりを進めることが「世界一素敵な過疎のまち」の具現化につなが

り、これからの厚沢部町を造り上げていくものと確信し、本研修を終えたいと思います。

本研修視察に参加させていただきありがとうございました。

創造的過疎から

世界一素敵な過疎へ

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三泊四日の強行日程で臨んだ視察研修 多

くのことを学び 感動し 時には笑い 貴重な時間となりました ~研修の思い出~

お酒を飲んでも話題はまちづくり!

集合写真はもちろん自撮りで!

神山町「雨乞いの滝」にて VRリーダー蛯名主事

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