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平成29年度産業経済研究委託事業 (我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討) 調査報告書 20183株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ

平成29年度産業経済研究委託事業 (我が国におけ …平成29年度産業経済研究委託事業 (我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討)

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平成29年度産業経済研究委託事業

(我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討)

調査報告書

2018年 3月

株式会社野村総合研究所コンサルティング事業本部

〒100-0004

東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティグランキューブ

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我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討調査の概要

調査の背景

近年、革新的なサービス提供の動きが世界中で見られている「FinTech」については、金融のあり方を大きく変え、人々の暮らしや企業の活動にも大きな変化をもたらすものとして世界中で議論されており、新しいFinTechサービスが誕生している。

経済産業省では2015年10月より「産業・金融・IT融合に関する研究会」、2016年7月より「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合」を開催して、FinTechに関する今後の政策の方向性等について包括的な検討を行い、総合的な報告・提言として「FinTechビジョン」を取りまとめた。その中では、目指すべき方向性として、FinTech普及に向けた前提条件を整えることを掲げている。

調査の目的

国内外での事例調査及び実態調査を通じて、キャッシュレス社会の実現を中心にFinTech普及の前提となる環境整備に向けた課題及び政策対応について調査・分析を行う。

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

(3)総括

付属資料

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

調査概要

目的

• FinTechサービスが普及した諸外国が実施した各施策について、①決済サービスを中心とするFinTechサービスの普及動向、②普及が進んだ背景、③普及策の具体的内容、④施策の狙い及び効果を整理する。

• これら諸外国の状況について、我が国での対応の方向性についての検討を行う際に資する情報として整理する。

調査のアプローチ

• 調査にあたり、各国のキャッシュレス化の進展具合等から、インド、イギリス、オーストラリア、韓国、シンガポール、スウェーデン、中国の7カ国を調査対象として選定し、そのキャッシュレス化政策の目的や具体的な施策等を文献・ウェブ調査と政府(中銀)へのアンケートによって調査した。

• インド、オーストラリア、シンガポール、スウェーデン、イギリス、韓国の政府(中銀)にはアンケートシートを送付し、関連取組状況等を確認した。これらの国の内、インド、オーストラリア、イギリスからは回答を得ることが出来た。

• また、上記の7カ国以外についても、各国における関連した特徴的な取組みに関する文献調査を行った。

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

調査結果サマリー

• 調査対象国において、キャッシュレス化そのものを政策目標においているのは、インド、シンガポールのみ。両国とも、現金決済と比べてデジタル決済が多くの点で優れているとし、デジタル決済の普及促進が経済成長に繋がるとの考えを有している。

• マネーロンダリング対策、偽札流通への対策、徴税効率化、現金の社会コスト削減、Fintech事業者育成といった政策は、各国で幅広く実施されている。

• 各政策を実現する為の具体的な施策として、インターチェンジフィー・サーチャージといった手数料関連の規制の他、現金支払いの上限金額設定、公的・交通機関でのキャッシュレス促進、規制緩和、キャッシュレス推進の主体設立、独自の決済インフラ整備が比較的多くの国で実施されている。

• 各国のキャッシュレス化に繋がる施策の主導形態としては、政府主導で決済に関連する官民協議会を設置する形で、決済インフラのステークホルダー間の利害調整および官民協調を図る国が多く見られている。

諸外国のFinTechサービス普及の環境整備に向け

た政府の取組み状況

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

キャッシュレス化の政策目標設定状況

調査対象国において、キャッシュレス化そのものを政策目標においているのは、インド、シンガポールのみ。

キャッシュレス化を政策目標としている背景は、インド・シンガポールともに、現金決済に比べて多くの面で優れているデジタル決済の普及促進が、経済成長に繋がると考えているからである。

また、キャッシュレス化の達成目標を定量的に設定している国は、インド以外にない。

キャッシュレスそのものを政策目標としているか

(目標設定している場合)その背景

(目標設定している場合)その定量目標値

韓国 NO ー ー

インド YES(現金決済に比べて)デジタル決済の方が、効率性、安全性、セキュリティ、コストなどのあらゆる点で優れており、こうした取引の促進は、経済成長に繋がると考えるから

電子決済トランザクション数:250億取引(17年~18年)

オーストラリア NO ー ー

シンガポール YES取引のデジタル化は、ビジネスプロセスのデジタル化促進、生産性向上、コスト削減につながり、結果として新たなビジネスモデルが生まれる可能性を高め、経済成長に資すると考えるから

イギリス NO ー ー

スウェーデン NO ー ー

中国 NO ー ー

*調査手法:インド、オーストラリア、イギリスについては、アンケート回答結果をベースに、一部未回答部分は文献・ウェブ調査によって内容を補完している。上記3カ国以外の国については、文献・ウェブ調査により状況を把握した。(以降の調査項目についても同様)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

キャッシュレス化及びその他の目標に繋がる政策動向

マネーロンダリング対策、偽札流通への対策、徴税効率化、現金の社会コスト削減、Fintech事業者育成といった政策は、各国で幅広く実施されている。

キャッシュレス化を政策目標としているインド、シンガポールでは、上記の他、金融包摂や事業者の効率改善といった目的も含めて、キャッシュレス化を進める背景となっている。

関連政策の実施状況とその目的

マネーロンダリング対策

偽札流通への対策

徴税効率化現金の社会コス

ト削減金融包摂

事業者の効率改善

金融機関のデータ利活用

Fintech事業者育成

その他

韓国 ▲ ▲ ▲ ▲ ー ー ー ▲ ー

インド ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ー ●+▲ ー

オーストラリア ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ▲ ー

シンガポール ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ●+▲ ー

イギリス ー ▲ ● ー ▲ ▲ ●+▲ ▲ ー

スウェーデン ー ー ▲ ▲ ー ー ー ▲ ー

中国 ▲ ▲ ー ー ー ▲ ー ▲ ー

凡例●+▲:キャッシュレス化とそれ以外の目的

で政策を実施●:キャッシュレス化を目的に

政策を実施▲:その他の目的の為に

政策を実施

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

キャッシュレス化に繋がる各種施策の実施状況(その①)

調査対象とした施策の中では、インターチェンジフィー・サーチャージといった手数料関連の規制を導入している国が多い。

また、現金支払いの上限金額が設定する国も多く、イギリス、インド、スウェーデンでは既に導入済み。

オーストラリアでも、導入を検討している。

施策内容

現金払いの際の上限設定

現金支払いを拒否できる法的手

当て

アクセプタンスへの強い要請

銀行カードの発行義務化

インターチェンジ・サーチャージ規制

紙幣・硬貨の流通停止

決済端末普及にかかる補助

韓国 ー ー ● ー ● ● ー

インド ● ー ー ● ● ● ●

オーストラリア 実施を検討 ー ー ー ● ー ー

シンガポール ー ー ー ー 実施を検討 ー ー

イギリス ー ー ー ー ● ー ー

スウェーデン ● ー ー ー ● ● ー

中国 ー ー ー ● ● ー ー

凡例●:政府が施策を実施

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

キャッシュレス化に繋がる各種施策の実施状況(その②)

公的・交通機関でのキャッシュレス促進、規制緩和、キャッシュレス推進の主体設立、独自の決済インフラ整備も比較的多くの国で実施されている。

デジタル決済使用に対する消費者向け税控除を行っている国は、調査対象国の中では韓国のみ。

施策内容

消費者税控除 事業者税控除公的・交通機関でのキャッシュレ

ス促進消費者教育 事業者教育 規制緩和

キャッシュレス推進の主体設立

独自の決済インフラ整備

その他

韓国 ● ー ー ー ー ● ー ー ー

インド ー ー ● ● ● ● ● ● ー

オーストラリア ー 実施を検討 ● ー ー ー ー ● ー

シンガポール ー ー ● ー ー ● ● ● ー

イギリス ー ー 民間で実施 ー 民間で実施 ● ● ● ー

スウェーデン ー ー ● ー ー ー ー ー ー

中国 ー ー ー ー ー ● ー ● ー

凡例●:政府が施策を実施

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

各国におけるキャッシュレス化に繋がる施策の主導形態

各国におけるキャッシュレス化に繋がる施策の主導形態には、政府単体型、官民協議会型、民間型の3パターンが存在している。

政府単体型:中央銀行や他監督官庁が、個別の立法等により、キャッシュレス化に繋がる施策を実施するパターン。

官民協議会型:決済インフラのステークホルダー間の利害調整および官民協調を図った上で、決済インフラの高度化・デジタル決済の普及を進めるために、官民協議会を設置するパターン。これらの協議会は、具体的には新しい決済手段の開発や決済規格の標準化などの施策を実施している。

民間自発型:銀行やカード会社、フィンテック事業者等が自社ビジネスを拡大させていることが、結果的にキャッシュレス化に繋がっているパターン。近年の中国におけるQR決済の爆発的な普及は、当該パターンに該当。

主導 形態 パターンの概要 国名 当該国における主な推進主体

政府主導

政府単体型政府(中銀)がキャッシュレス化に繋がる施策を実施しているパターン

スウェーデン韓国

中央銀行、国税庁等金融委員会、企画財政部等

官民協議会型政府・中銀が銀行協会等と共同で決済インフラに関する企画立案を担う官民協議会を設置して、キャッシュレス化に繋がる施策を実施しているパターン

イギリスシンガポールインドオーストラリア

Payment Strategy Forum Payments CouncilNational Payment Council of India(NPCI)Australian Payments Council(APC)

民間主導民間型

民間事業者が自社ビジネスを拡大させた結果、キャッシュレス化が進展したパターン

中国 Alipay,Wechatpay等の決済事業者

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

【参考】諸外国におけるキャッシュレス比率と現金流通高対名目GDP比率の変化

キャッシュレス比率(※)2007 2016 07年→16年

韓国 61.8% 96.4% +34.6%

イギリス 37.9% 68.7% +30.8%

オーストラリア 49.2% 59.1% +9.9%

シンガポール 43.5% 58.8% +15.3%

カナダ 49.0% 56.4% +7.4%

スウェーデン 41.9% 51.5% +9.6%

アメリカ 33.7% 46.0% +12.3%

フランス 29.1% 40.0% +10.9%

インド 18.3% 35.1% +16.8%

日本 13.6% 19.8% +6.2%

ドイツ 10.4% 15.6% +5.2%

中国(※※)

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」、 WorldBank「World Development Indicators」よりNRI作成

(※)キャッシュレス比率は、(カード決済(電子マネー除く)+E-money決済)/家計最終消費支出により算出(ともにUS$ベースで算出)(※※)中国については、Better Than Cash Allianceのレポートより参考値として記載

(参考値)約40%(2010年)⇒約60%(2015年)

現金流通高対名目GDP比2007 2016 07年→16年

日本 16.7% 20.0% +3.3%

ユーロ圏 7.7% 10.7% +3.0%

シンガポール 6.9% 10.4% +3.5%

インド 11.8% 8.8% ▲3.1%

アメリカ 5.9% 8.1% +2.2%

韓国 3.0% 5.9% +2.9%

オーストラリア 4.2% 4.7% +0.5%

カナダ 3.6% 4.2% +0.5%

イギリス 3.4% 3.9% +0.6%

スウェーデン 3.7% 1.4% ▲2.2%

中国 12.8%

ドイツ、フランス 上記ユーロ圏に包含

参考値なし

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

【参考】実店舗のキャッシュレス化に資する各国施策

消費者 加盟店 カード会社・銀行 Fintech企業

強制

推進

環境整備

※青字は実施している国名

※①電子商取引、②企業間決済(自動引落&口座振込等)③P2P電子決済、④実店舗でのキャッシュレス決済といった各種決済のうち、④に関する一覧表であることに注意

現金払の上限金額設定(印、他欧州各国等)手数料(IRF・MDR)水準規制

(中、韓、印、シンガポール、豪、他)

キャッシュレス決済時の減税措置(韓、他)

アクセプタンスへの強い要請(韓)

各種規制緩和:規制サンドボックスの実施等(韓、シンガポール、英、他多数)

(一部)紙幣・硬貨の流通停止(印、韓、他)

キャッシュレス推進の主体設立(英、シンガポール他多数)

消費者向け啓蒙・PR(印) 事業者向け啓蒙・PR(印)

公的・交通機関でのキャッシュレス促進(英、シンガポール)

施策のレベル

施策の対象

イシュイング義務化(中、印)

独自の決済インフラ整備(中、印、豪、シンガポール、英、他)

サーチャージ水準規制(豪、他多数)

アクセプタンス加盟店への減税措置(豪検討中)

端末導入補助(印)

キャッシュレス決済時の政府負担による割引(印)

公共料金のモバイルマネー等新たな決済手段での支払受入

(ケニア、ミャンマー)

社会保障給付のキャッシュレス化(南アメリカ、他途上国多数)

現金支払を拒否できる法的手当て(デンマーク)

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各国別調査:インド

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

インドのキャッシュレス化には、中銀と銀行協会が設立したNPCIが新たなリテール決済手段の提供を行う形で、重要な役割を果たしてきた。

国土が広く、人口が分散しているために現金輸送コストが大きいことや、偽造紙幣流通・不正取引への現金利用などを背景に、政府にとって全国民により効率的でかつ安全・便利なデジタル決済を普及させることが、政策上大きな課題となっていた。

デジタル決済へのアクセスが一部富裕層や外国人に限られる中で、2008年に中銀と銀行協会が共同でリテール決済システムの高度化を担うNPCI(National Payment Council of India)を設立し、2012年には国際ブランドに対抗して国産デビットカードRupayの立ち上げを行った。

近年では政府の「デジタルインド計画」のもと、キャッシュレス社会への移行を目指す中で、政府は銀行カードの発行義務化を行っているほか、NPCIは次々と新たなリテール決済手段の提供や規格の統一を行っており、インド国内のキャッシュレス決済の普及に大きな役割を果たしている。

更なる電子決済普及に向けて、中銀がMDR(加盟店手数料率)の上限規制を行う傍ら、政府も一定金額以下の電子決済について、加盟店が負担するMDRを政府が2年間の期間限定で負担するなど手数料関連での施策も行われている。

国土が広く、人口が分散

偽造通貨の流通、不正取引への現金利用

【施策】銀行カードの発行義務化

【施策】NPCIによるQRコード規格の統一

【施策】2008年に中銀と銀行協会がリテール決済高度化を担うNPCIを設立

環境要素

実施施策

【施策】中銀によるMDR上限規制の実施

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

全ステークホルダー

消費者消費者にとって利便性の高いサービスの実現

加盟店安価な加盟店手数料水準

全ステークホルダー

推進主体が明確になることにより、全国的な取り組みが可能に

NPCIによって開発されたデビットカードやその他決済手段が普及

キャッシュレス決済普及促進に向けてMDR上限規制を設定

権限集中による迅速な意思決定と政策実行力

キャッシュレス決済が普及し、新たなツールの導入にも積極的

加盟店にとって導入しやすい手数料水準の実現

利便性が高い、多様なサービスが提供される

キャッシュレス化の原動力として実現されている状況

リテール決済高度化に関連する権限の集中

NPCIがQR決済の本格的な普及前に、QRコードの規格を統一

新しい決済手段のスムーズな普及に向けた環境整備

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

インドでは、政府・中銀によるデジタル決済普及に向けた政策的な後押しやNPCIによる決済高度化に向けた取組みを背景に、キャッシュレス化が進展している。

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」、WorldBank「World Development Indicators」よりNRI作成

キャッシュレス年表

2008年

2010年2010年

2012年2012年7月2012年

2013年

2014年2014年2014年8月

2016年11月

2016年11月2016年12月

2017年2月

中銀と銀行協会がリテール決済システムの運営母体としてNational Payment Council of India(NPCI)設立

生体認証カード提供を目指すAadhaarプロジェクト始動24/7モバイル決済Immediate Payment Serviceローンチ

NPCIにより国産デビットカードRupayスタートデビットカード普及のため、加盟店手数料の上限を設定NPCIによりモバイル決済共通プラットフォームNUUP導入

(民)モバイル決済Paytmスタート

モディ政権下で、デジタルインド計画スタート中銀がペイメントバンク(決済専業銀行)の認可要件規定国民皆銀行プロジェクト導入を発表

高額紙幣の廃止宣言

NPCIがUnified Payment Interface(UPI)導入NPCIにより、UPIを活用した生体認証インストア決済AadhaarpayとBharat Interface for Moneyがスタート

NPCIが共通決済QRコードBharatQRを公表また、同時期に、MDR上限規制を公表

現金流通高対名目GDP比率の推移(2007年~2016年)

支払手段別キャッシュレス比率の推移(2007年~2016年)

政府・中銀がイニシアティブをとりながら、NPCIが強力にキャッシュレス化を推進

(%)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

NPCIは新たなリテール決済手段の開発を主導することで、インド国内のキャッシュレス化進展に大きく貢献している。

NPCIは、2008年にインド中銀とインド銀行協会により設立されたリテール決済高度化を担う組織である。

中国銀聯(Union Pay:2002年設立)をモデルとして立ち上げられた。

設立以降、NPCIはRupayを皮切りに、Immediate Payment Service(IMPS)やUnified PaymentInterface(UPI)といった主要なリテール決済システムの開発を行っているほか、Bharat Interface forMoney(BHIM)やAadhaar Payなどの決済アプリの開発にも取り組んでいる。

出所)NPCIのHPよりNRI作成

内容

正式名称 National Payments Corporation of India

組織概要 インド中銀(RBI)とインド銀行協会(IBA)により2008年に設立

されたリテール決済運営機関 大銀行等56のステイクホルダーにより組織(2016年現在)

特徴 ガバナンス上役員等の構成も設立に関与した銀行からは独立したメン

バーを選定

主な実績

Immediate Payment Serviceの開発(2010年) Rupayの開発(2012年) Unified Payment Interfaceの開発(2016年) Bharat Interface for Moneyの開発(2016年) BharatQRの開発(2017年) Aadhaar payの開発(2017年)

NPCIの組織概要と特徴、主な実績 NPCIが開発した主な決済システム・手段

決済システム・手段 概要

ImmediatePayment Service(IMPS)

携帯電話により24時間365日リアルタイムで決済できるシステム(テキストメッセージベース)

Unified Payment Interface(UPI)

スマホを用いて銀行口座からの送金・決済を行うことが出来る仕組みを持つシステム

支払リクエスト機能や割り勘機能等も搭載

Bharat Interface for Money(BHIM)

UPIをベースとした送金・決済アプリで、UPIに接続する銀行において使用可能

Aadhaar pay 指紋による決済が出来るサービス(Aadhaarは、生態認証を利用した国民IDシステムのこと)

※Rupay、BharatQRについては後述

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

国産デビットブランドRupayは、金融包摂を進めたい政府によるプロモーションや銀行口座開設時の付帯発行を受けて、国内で普及が進んでいる。

Rupayは、2012年にNPCIが主導して、VISAやマスターカードなどの国際ブランドに対抗するために開発した国産デビットブランドである。

Rupayは、政府のデジタルインド計画の一部である「国民皆銀行口座政策」のもと、プロモーション活動や銀行口座開設に伴う付帯発行が行われたことから、近年シェアを拡大させている。

Rupayの国内シェア

政府の広報活動例デジタルインド計画

Aadhaar

MobileJan-Dhan

施策名 概要

①国民皆銀行口座政策 銀行口座を持っていない所謂Unbanked層が、銀行口座を通

じた近代的な金融サービスを享受できるようにするための施策 銀行口座開設に伴いRupayの付帯発行を実施

②国民ID番号普及促進

2009年に設立された固有識別番号庁による貧困層や農村部への社会保障浸透を主目的としている国民ID番号(Aadhhar)導入の施策

全国民を対象に発行し、氏名、生年月日、性別、住所、顔写真や指の指紋、虹彩といった情報を中央DBに登録

③携帯電話の普及促進 近代的なサービスへのアクセスを可能とする携帯電話の利便性

向上のためのネットワークの増強等を行う施策

モディ政権が進めている行政サービスの電子化・効率化を目指す計画。行政効率化のためには以下3つを連結させるJAMトリニティの普及が重要とするもの。

①Jan Dhan Yojana:銀行口座

②Aadhaar:国民ID番号

③Mobile:携帯電話

296 349435 430

230

0.6%

34.9%

0

200

400

600

800

0%

10%

20%

30%

40%

0

FY12 FY14

2

FY13

17

4.1%

24.4%

FY15 9 Months of FY16

397

140

RuPay cards (mn) Mastercard/Visa/Others Market share

出所)JM Financial”Banking Update March 2016”

出所)インド財務省のホームページ

(取引量ベース)

銀行口座開設を勧める財務省のプロモーション。ATM使用方法やRupayのメリットなどを記載している。

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

中銀がキャッシュレス決済普及のためにMDR(加盟店手数料率)の上限を規制しているほか、政府も期間・取引規模を限定した上でMDRを負担する施策を実施している。

2012年6月までクレジットカードとデビットカードのMDRは同じ水準だったが、中銀はデビットカード促進を企図して同年7月にデビットカードのMDRを引き下げた。

高額紙幣廃止後、中銀は17年1月から3ヶ月の時限措置で大幅にデビットカードのMDRを引き下げた。

18年1月に中銀がMDRを再設定した翌週、政府が8年から2年間2,000ルピー以下の取引にかかるMDRを負担すると発表した。

政府は、負担額を2018年~19年はRs.1,050 crore、2019年~20年は Rs.1,462 crore 程度と見込む。

(日本円換算で、2018年~19年は約173億円、2019年~20年は約240億円 ※1ルピー=1.65円として計算)

出所)RBI、CabinetのプレスリリースよりNRI作成

内容

①2012年7月~ 2,000ルピーまでの取引については、取引金額の0.75%を超えないこと 2,000ルピー以上の取引については、取引金額の1%を超えないこと

②2017年1月~3月3ヶ月の時限措置 1,000ルピーまでの取引については、取引金額の0.25%を上限とすべきこと(shall be) 1,000ルピーから2,000ルピーの取引については、取引金額の0.5%を上限とすべきこと(shall be)

③2018年1月~

小規模事業者(※)のアクセプタンス拡大とQR決済の普及促進を企図小規模事業者向け POS:取引金額の0.40%を超えないこと(1取引あたり200ルピーが上限) QR:取引金額の0.30%を超えないこと(1取引あたり200ルピーが上限)それ以外向け POS:取引金額の0.90%を超えないこと(1取引あたり1,000ルピーが上限) QR:取引金額の0.80%を超えないこと(1取引あたり1,000ルピーが上限)

デビットカード等MDR規制の推移

(※)前年売上20lakhルピーを超えるか否かを基準に判断日本円換算で、約330万円程度の売上規模(1円=1.65円で計算)

③‘2018年1月~政府がデジタル決済の更なる促進を企図して、以下の2年間の時限措置を公表 2,000ルピー以下の取引にかかるMDRを政府が負担することを発表(対象はデビットカード、BHIM、UPI、Aadhaarで行われた取引)

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2016年11月8日に政府は、ブラックマネー対策として1,000ルピー紙幣と500ルピー紙幣の廃止を宣言した。

9日以降上記2紙幣は使用出来なくなり、消費者は、同年12月末までに銀行口座に預け入れるか、窓口で新2,000ルピー・新500ルピー紙幣に交換するかしなければならなくなった。また、当初窓口での交換可能額は4,000ルピーと設定されたほか、口座からの引き出しも一週間で上限20,000ルピーと設定された。

新紙幣への交換上限などにより、消費者への紙幣供給が一時的に追いつかなくなったことを受けて、特に宝石・自動車など高額商品を中心に買い控えが起こったが、経済への影響は限定的であった。

高額紙幣廃止後、モバイル決済インフラUPI経由の決済が急増した。(1ヶ月で件数ベースで約6倍、取引高ベースで約7倍)

2016年11月の高額紙幣廃止は、一時的な高額商品の買い控えを招いた。しかし経済への影響は限定的で、国民がデジタル決済に目を向ける契機となった。

(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

インド政府は、高額紙幣廃止後に、デジタル決済普及促進のため、POS端末導入サポートやデジタル決済時の割引を含む政策パッケージを発表した。

高額紙幣廃止後、政府はより一層デジタル決済を促進していく為に、2016年12月に政策パッケージを公表した。

具体的な政策パッケージの内容としては、地方におけるPOS端末の導入サポート、デジタル決済時の商品・サービスの割引やサービス税の控除などが盛り込まれている。

POS端末の導入サポートについて 商品・サービスの割引、サービス税の控除について

地方でのデジタル決済インフラ拡大の為に、人口1万人未満の村に対してPOS端末を導入した適格な銀行に対して資金援助を行う― 農業事業者が取引をデジタル決済で出来るようにするのが狙い

ガソリン・ディーゼル購入時に販売価格の0.75%を割引、準都市エリアの鉄道乗車時に、毎月の乗車賃もしくは季節チケットを0.5%割引等々― 公共寄りの支払いをデジタル化するのが狙い

公的銀行に対して、小規模事業者に対するPOS端末の月額レンタル費用が100ルピーを超えないようにという指導― レンタル料を低く抑え、小規模事業者に端末普及を促進する狙い

1取引2,000ルピー以下の取引に対しては、サービス税を課さない

出所)Cashless IndiaホームページよりNRI作成

インド政府より公表された政策パッケージ(一部抜粋)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

NPCIは乱立するQR規格を統一するためにBharatQRを開発し、QRコード決済の本格的な普及拡大向けた環境整備を実施した。

政府・中銀は、QRコード決済は普及にかかるコストが他の決済手段と比べて低いため、金融包摂を進める上で重要な決済手段と認識している。

2017年2月に、NPCIが国内で乱立する規格統一のため、VISA、MastercardとともにBharatQRを開発した。

Bharatは、ヒンディー語で“インド”の意味で、古代の英雄の名に由来している。

現時点では、BharatQRは国内デビットRupayやVISA、AMEX、Mastercardに対応している。

同国で普及しているQR決済サービス”Paytm”には、規格を開放していないことが特徴として挙げられる。

出所)NPCIのホームページ等よりNRI作成

BharatQRの対応ブランド一覧 BharatQRの支払ステップ

①QRコードを読み取る ②金額を入力 ③PINコード入力 ④支払完了

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(インド)

インドでは、2007年に制定されたPayments and Settlement System Actのもと、中銀が銀行間決済システムやデビットカード、電子マネー、送金などにかかる決済システムを規制している。

デジタル決済普及に伴い、決済インフラ高度化にかかる取組みが本格化するなかで、17年10月に中銀が電子マネーに関するガイドラインを改訂した。改訂ガイドラインでは、電子マネー事業者に要求されるKYCに関する規則や資本要件の規則が改められたほか、電子マネーの相互運用性への取組みも明記された。

不正取引防止などの観点から簡易KYCを要求する電子マネー上限額の引き下げを行ったほか、電子マネー事業者の最低純資産をこれまでの5千万ルピーから1億5千万ルピーに引き上げた。

特に、改訂ガイドライン内で、モバイルウォレット間、モバイルウォレット・銀行口座間の相互運用性実現に向けたロードマップが示された点が特徴的であった。

異なる種類のモバイルウォレットへの価値移転が出来ないことの不便さが従前より指摘されており、これに対応するもの。もっとも相互運用性が実現されるのは、KYC規則に準拠している電子マネーに限られる点に留意が必要。

具体的な相互運用性の実現は、同国のモバイル決済インフラであるUPIを通じて行う方針。まずガイドライン公表からの6ヶ月でモバイルウォレット間の相互運用性の実現を行い、その後モバイルウォレット・銀行口座間の相互運用性実現に取組む予定である。

時期は明記されていないが、カード形式の電子マネー(ex.ギフトカードや食事券)についても相互運用性が実現される見込み。

中銀は電子マネーに関するガイドラインを改訂し、モバイル決済の相互運用性実現に向けた取組みを始めている。

出所)RBIのプレスリリース等よりNRI作成

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各国別調査:イギリス

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(イギリス) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

政府が決済インフラの競争促進を図る施策を実施してきたことを背景に、キャッシュレス化が進展している。

都市部への人口集中や大手行の高いシェア、ロンドン五輪を背景に、加盟店開拓が効率的に行われたことにより、アクセプタンスが拡大した。

キャッシュレス社会に移行する中で、近年適切な競争環境の整備により金融イノベーションを促進する観点から、PSRによる決済改革(決済システムのガバナンス改革、決済システムへのアクセス改善)が進められている。

また、2015年にPSRによって設置された官民メンバーで構成されるPayment Strategy Forumでは、今後の決済インフラの高度化戦略が立案されており、今後は同Forumで議論・策定された戦略・それに対応するソリューションをベースに決済システムに関連する政策が実施される予定である。

都市部への人口集中

ロンドン五輪開催(2012年)

【施策】公共交通機関におけるキャッシュレスの推進

大手行の高いシェア

【施策】PSRによる決済インフラにかかる競争促進策

環境要素

実施施策

【施策】インターチェンジフィー、サーチャージ等の手数料規制

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

加盟店、アクワイアラ

効率的なアクワイアリング

消費者消費者にとって利便性の高いサービスの実現

加盟店安価な加盟店手数料水準

銀行、フィンテック事業者

銀行と決済事業者・フィンテック事業者との健全な競争環境

少数のアクワイアラによる加盟店開拓、五輪を契機としたキャッシュレス決済対応の必要性

デビットカードやクレジットカード、その他決済手段があらゆる場所で使用可能

加盟店に比して強いアクワイアラ・ブランドという関係性からの不公正・非効率を規制により是正

政府のイニシアティブのもと、民間事業者が連携して、多様なサービス基盤となる決済インフラを構築

全国規模でのアクセプタンスの確保

キャッシュレス決済が習慣化しており、新たなツールの導入にも積極的

加盟店にとって導入しやすい手数料水準の実現

利便性が高い、多様なサービスが提供される

キャッシュレス化の原動力として実現されている状況

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(イギリス)

イギリスでは、デビットカードを主としてキャッシュレス化が進展。政府の強いリーダーシップのもと、決済インフラの高度化が図られている。

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」、WorldBank「World Development Indicators」よりNRI作成

キャッシュレス年表

2007年

2008年

2012年

2012年

2013年

2014年

2016年

2017年

2018年1月

財務省と公正取引局により、イギリス決済協議会設立

Faster Payments Service稼動により24時間365日即時決済が可能に

ロンドン五輪に向けてキャッシュレス化に取り組む

カード決済時の、処理コストを超える消費者へのサーチャージ転嫁の禁止

決済システム分野の競争政策を担うPayment System Regulator設置

英国決済協議会が旗振り役となりモバイルP2P送金サービスPaymスタート

Financial Conduct Authority(FCA)がFintech企業育成のため、他国に先駆けてRegulatory Sandbox制度を導入

Payment Strategy Forumが今後の決済システムの高度化戦略を取りまとめた「21世紀のペイメントストラテジー」を発表

カード決済時の消費者へのサーチャージ転嫁を原則全面禁止

現金流通高対名目GDP比率の推移(2007年~2016年)

支払手段別キャッシュレス比率の推移(2007年~2016年)

イギリスは、決済協議会やPSRが主導し決済インフラの高度化に取り組んできた

(%)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(イギリス)

PSRは、イノベーション創出のための競争促進の観点から、決済インフラのガバナンス改革、アクセス改善に取り組んでいる。

PSR(Payment System regulator)設立以前は、財務省、イングランド銀行、FCA、OFT(公正取引庁)に加え、自主規制機関のPayments Councilがイギリスの決済関連の戦略策定を担当していた。

PSRは、従来主にOFTが担っていた決済システムに対する競争政策の役割を引き継ぐ形で2014年に設立された。

組織の目的:①ユーザーである企業・消費者の利益を重視した決済サービスの発展、②決済システムと決済サービス市場の競争促進、③決済インフラの発展とイノベーション促進、の3つ。

組織体系:FCAの下部組織として設置。FCAとの間にはチャイニーズウォールが設置され、指揮系統もFCAから独立。

権限:決済システムに関連するルールを規定する権限、決済インフラ参加者への命令権限、サービスのレベルやアクセスの価格、その他手数料等を修正させる権限、など多くの権限を有している。

現在PSRは、主に決済インフラのガバナンス改革・決済システムへのアクセス改善に取り組んでいる

競争の不十分さを背景に、銀行が大半の株式を保有している決済インフラ運営会社の持分売却を銀行に提言した。

また、間接参加者の決済システムへのアクセス改善を目的に、直接参加者の新規参入促進に取り組んでいる。

決済関連の規制当局 具体的な権限

財務省 金融システム上重要な決済システムの認定

イングランド銀行 決済システムの監督、RTGSサービスの提供

FCA 決済サービス提供業者の監督

PSR 決済システムに対する競争政策の企画・立案

イギリスの決済規制当局の具体的な権限 PSRが規制する決済システム

システム名 概要

Bacs 小口決済システム

CHPAS 大口決済システム

FPS 24時間365日即時決済の小口決済システム

Visa/Mastercard 国際ブランドカードのネットワーク

※その他、Cheque&Creditや、LINK、NICCも規制対象

出所)淵田康之『キャッシュフリー経済 日本活性化のFintech戦略』、PSRのHP等よりNRI作成

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(イギリス)

PSFは、決済インフラに関連する多様な関係者が参加する官民協議会で、イギリスの決済関連の戦略立案を担っている。

PSF(Payments Strategy Forum)は、PSRが2015年にイギリスの決済関連の戦略策定のために設置した官民協議会である。

同フォーラムへは政府関係者に限らず、決済サービスのユーザーやプロバイダーなどが委員として参加しており、独立性・公平性の観点から、決済業界から独立している人物を議長に選任。PSRのほか、BOEやFCAといった規制当局もオブザーバーとして参加。

PSFでは、イギリスの決済システムの将来計画、それに対応するソリューションについて、複数のWGに分かれて議論が行われ、その取り纏め結果として2016年11月に「21世紀のペイメントストラテジー」を発表。今後のイギリスにおける決済インフラ改革は、同報告書の内容に沿った形で進んでいくことが想定されている。

今後の大きな方向性としては、①エンドユーザーニーズへの対応、②決済システムの信頼性向上、③決済システムへのアクセス改善による競争促進、④新しい決済のアーキテクチャーの構築を掲げ、個々に対応するソリューション、対応時期にも言及。

決済インフラに関係する多様な参加者

大方針 ソリューション(例)

エンドユーザーニーズへの対応 支払要請を受けて支払う仕組み、支払完了を確認できる仕組み、支払関連データの送付

決済システムの信頼性向上 取引データのシェア、金融犯罪情報のシェア、KYCデータの共有、利用者の意識向上と教育

決済システムへのアクセス改善 中銀口座へのアクセス、リテール決済機関の統合、ISO20022採用、

新決済アーキテクチャの構築 シンプルな決済プラットフォームの構築(オープンAPIを通じたユーザー、PSP、サードパーティ間のシステム接続等)

21世紀のペイメントストラテジー

出所)淵田康之『キャッシュフリー経済 日本活性化のFintech戦略』、”A Payment Strategy for the 21st Century”よりNRI作成

デマンド・サプライ両サイドから参加

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(イギリス)

決済協議会と大手行が開発したPaymの普及に伴って、今後P2P取引のキャッシュレス化が進んでいくことが予想される。

Paymは、イギリス決済協議会(Payments Council)が中心となって開発に取り組んだモバイルP2P送金サービスで、2014年4月にサービス提供が開始された。

電話番号のみで送金が可能である。(即時送金、遅くても2時間以内)

国内大手行が多数参加しており、モバイルバンキングや銀行アプリとも連携が可能、16年以降インストア利用にも対応している。

Payments Councilが主体となり、電話番号と銀行口座を紐付けたデータベースを構築した。

利用状況は、過去1年半で取引件数ベースで約3倍、取引量ベースで約2.5倍と伸張している。

Paymのスキーム 取引件数(四半期)

取引量(四半期)

約2.5倍

約3倍

出所)PaymのHPよりNRI作成

(万件)

(万£)

Paymの使用手順

①アプリにログイン

②送金する人の番号を選択

③送金する金額を入力

④表示された名前を確認し、送金ボタンを押下

送金

送金(決済)

データベース

店舗

参加銀行 IBやアプリとの連

携、送金情報の送信

電話番号と口座の紐付け登録

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各国別調査:シンガポール

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(シンガポール) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

政府・中銀の強いイニシアティブのもと、近年決済協議会設立や規格の統一が実施されており、キャッシュレス社会実現に向けた環境整備が急速に進んでいる。

2014年からスタートした「スマートネーション構想」のもと、政府が強力に国家のデジタル化を推進しており、決済のデジタル化には1つの重要施策として注力している。

都市部への人口集中や大手行のシェアの高さを背景に、都市エリアでは加盟店開拓が効率的に行われており、アクセプタンスが拡大した。

都市部を中心にキャッシュレス社会に移行していく中で、引き続きホーカーやタクシーなどでは現金決済がメジャーな決済手段となっている。

こうした状況の中、中銀が決済戦略の企画立案を担うPayment Councilを設立したり、今後QR決済普及に伴って規格の乱立が予想されるQR規格の統一を行うなど、近年キャッシュレス社会の実現に向けた環境整備が急速に進んでいる。

大手行の高いシェア(地場系大手4社で総資産シェア6割程度)

都市部への人口集中

【施策】公共交通機関におけるキャッシュレス化促進

【民間動向】銀行協会によるモバイル送金サービスPayNow開発(地場・外資ともに参加)

【施策】スマートネーション構想の推進

環境要素

実施施策

【施策】中銀による決済戦略を担うPayments Councilの設立

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

銀行、フィンテック事業者

銀行と決済事業者・フィンテック事業者との連携容易化

政府・中銀の強いイニシアティブのもと、地場・外資系銀行が連携して、多様なサービス基盤となる決済インフラを構築

加盟店、アクワイアラ

効率的なアクワイアリング

消費者消費者にとって分かりやすく利便性の高いサービスの実現

少数のアクワイアラによる加盟店を開拓

銀行カードでのデビットやその他決済・情報連携が幅広く提供

全国規模でのアクセプタンスの確保

キャッシュレス決済が習慣化しており、新たなツールの導入にも積極的

利便性が高い、多様なサービスが提供される

キャッシュレス化の原動力として、実現されている状況

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(シンガポール)

シンガポールでは、クレジット・デビットカードを主としてキャッシュレス化が進展。近年政府がデジタル国家を目指して、デジタル決済普及に注力している。

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」、 WorldBank「World Development Indicators」よりNRI作成

キャッシュレス年表

2014年

2014年

2016年

2017年

2017年

2017年

国としての大方針「スマートネーション構想」を発表

24/7サービス「Fast and Secure Transfer(Fast)」スタート

MASが「Singapore Payments Roadmap」を公表

シンガポール銀行協会が開発を主導したモバイル決済サービスPayNowがスタート

MASがPayment Council を設立

MASとインフォコムメディア開発局が統一QR決済の規格を制定現金流通高対名目GDP比率の推移(2007年~2016年)

支払手段別キャッシュレス比率の推移(2007年~2016年)

シンガポールは、政府の強力なイニシアティブのもと、デジタル決済普及に注力

(%)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(シンガポール)

シンガポールは、現金決済ゾーンとキャッシュレス決済ゾーンに二分されている。

出所)「Singapore Payments Roadmap」よりNRI作成

各場面で消費者が選択している決済手段

ホーカーセンター、小規模店舗、タクシーでの現金比率の高さが目立つ

親から子へのお小遣いや、友人への支払のようなP2Pでは、現金に次いでeNETSの使用比率が高くなっている

シンガポールのキャッシュレス決済のメインは、クレジット・デビットカードで、ついでNETS・eNETSが使用されている

現状モバイル決済はオンラインショッピングを除いて殆ど使用されていない

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(シンガポール)

政府・中銀は「スマートネーション構想」のもと、戦略的にデジタル決済の普及拡大に取り組んでいる。

出所)SmartNation Singapore HP等よりNRI作成

◆基本コンセプトすべての人にシンプルでシームレスで、かつ安全な決済手段を提供すること

◆具体的なマイルストーン2017年~ Paynow開始 公共交通機関におけるAccount Based Ticketing(ABT※)開始2018年~ QRコードの統一2019年~ ホーカーセンターにおける電子決済普及 25,000台のPOS端末ロールアウト

リーシェンロン元首相が2014年8月の施策方針演説で「スマートネーション構想」を表明した。

スマートネーション構想とは、ICTを活用して国民生活をより豊かにすることを目的とした国家構想のことを指す。

首相府にSmart Nation Program Officeを設置し “輸送”、“住居と環境”、“ビジネス生産性”、“健康とエージング”、“公共サービス”を主な対象として、テクノロジー活用を推進するとし、国家デジタル身分証(NDI)システム構築、デジタル決済の普及拡大、国家センサーネットワーク設置(SNSP)などを戦略に掲げている。

MASも2015年にスマート金融センターを目指す方針を宣言、金融イノベーションを後押しする姿勢を明確にした。

既に着手している取組みとして、①金融セクターテクノロジーイノベーション、②デジタル決済、③規制報告と監視、④Fintechエコシステムの構築支援、⑤テクノロジー関連スキルとコンピテンシーの育成、の5点を挙げている。

スマートネーション構想の戦略マイルストーン

※ABTとは、個人アカウントの登録で、Mastercard等の非接触対応カードでの支払が可能になることを指す

電子決済にかかるマイルストーン

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(シンガポール)

電話番号やNRIC等で送金が可能なPayNowのサービス開始により、今後P2P取引のキャッシュレス化が進むことが予想される。

シンガポール銀行協会は、モバイル送金サービスPayNowを開発し、2017年7月にサービスが開始された。

地場系と外資系の7銀行が提携、他行との送金も無料で行うことができる。なお、送金は即時に行われる。

サービスローンチから5週間で50万人が登録し、約1,000万ドルが送金された。

電話番号、永住権取得者に付与されるNRIC、国内居住の外国人に付与されるFINを用いた送金が可能である。

Paynowは、今後QRコードを利用した送金サービスの提供も予定している。

17年11月にはタイ政府が後押しするモバイル送金インフラ”PromptPay”との提携を公表している。

MASとタイ中銀は、2017年7月に金融技術に関する協定を締結し、ASEAN内でシームレスで相互運用が可能な金融サービスが提供できる仕組みについて検討を行っており、その一環としての金融インフラ連携と位置づけられる。

出所)MAS、PaynowのHP等よりNRI作成

PayNow参加行

種類 概要

NRIC 永住権取得者に付与される9桁の英数字

FIN 国内居住外国人に付与される9桁の英数字

電話番号 8桁の数字

PayNowで送金に使用可能な番号

PayNowとPromptPayの提携について

2017年7月 MASとタイ中銀の間で、金融技術に関する協定締結同協定は、MASとBOTの間で新興国市場の金融動向と規制への影響についての情報共有およびFintech企業の相互紹介を可能とするもの。両国間だけの取組みにとどまらず、ASEAN市場における金融イノベーションの促進・Fintechエコシステムの基盤拡大をともに目指すとしている。

2017年11月 PayNowとPromptPayの提携公表タイの国民的な送金インフラPromptPayとPayNowの提携により、両インフラ間でP2P送金が出来るようになる模様。

シンガポールに拠点を置く地場系・外資系の計7行がPayNowを提供

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(シンガポール)

MASにより2017年8月に設立されたPayments Councilは、デジタル決済普及に向けた環境整備を急ピッチで進めている。

Payments Councilは、デジタル決済普及に関してMASに対して助言・勧告を行う機能を有しており、「全てのSingaporeansのために、デジタル決済をシンプルで、シームレスで、安全なものにすること」をミッションに掲げている。

同Councilは、Singapore Clearing House Assosiation(SCHA)のあらゆる役割を引き継ぐとしている。

決済サービスのプロバイダー・ユーザーの両方を参加させて、業界内の協調・競争を促進させる狙いがある。

具体的な役割としては、Paynowのような決済手段の企画、加盟店における統一POS端末の導入展開などが挙げられている。

また、Payments CouncilはSG QR(統一QR規格)を策定にも関与している。

SG QRは、MASとインフォコムメティ開発局が指揮するタスクフォースが開発した統一QR規格で、VISAなどの国際ブランドのQR規格にも準拠している。

出所)MASのHP、「Singapore Payments Roadmap」等よりNRI作成

内容

正式名称 Payments Council

組織概要

シンガポール中銀(MAS)により2017年8月に設立されたデジタル決済普及のための組織

委員は、銀行、決済サービス事業者、事業会社、業界団体のCEO・役員級から選ばれた計20名(※メンバーの任期は2年)

特徴 MASのManaging Diredtorが議長を務めている 決済システムのサプライ・デマンド両サイドから議員を選任

主な取組み SG QRの策定への関与(2017年)

Payments Councilの組織概要と特徴、主な取組み

・中央銀行(1名)MAS(議長)・銀行(5名)Citibank、DBS、OCBC、Standard Chartered、United Overseas・決済サービス事業者(4名)MasterCard、NETS、PayPal、Visa Worldwid・事業会社(5名)Grab、Lazada Singapore、Sea、Sheng Sinog Group、YCH Group・業界団体(5名)中小企業協会、商店協会、レストラン協会、ビジネス協会、小売協会・SCHA(顧問)

Payments Councilメンバーの出身母体

金融のみならず、事業会社からもメンバーが参加している

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各国別調査:スウェーデン

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(スウェーデン) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

国内銀行同士の協調的なスタンスのもとカード決済が幅広く普及している。近年P2P送金サービスSwishの普及により、一層キャッシュレス化が進んでいる。

銀行業界自体の協調的なスタンスや都市部への人口集中を背景に、早くから効率的な加盟店開拓が行われた結果、カード決済が幅広く普及している。

また公共交通機関での強盗対策を背景に、公共バスでの現金使用禁止対応も行われている。

このような要因によって、キャッシュレス社会に移行する中で、銀行や商店が現金取扱いを停止する動きが至る所で見られている。

近年国内大手行が共同で立ち上げたP2Pモバイル送金アプリSwishが急速に普及しており、今後更にキャッシュレス化が進むことが想定されている。

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

加盟店、アクワイアラ

効率的なアクワイアリング

商店、銀行

現金を取扱うインセンティブ低減

消費者カード決済のハードル低下

銀行、フィンテック事業者

銀行と決済事業者・フィンテック事業者との競争促進

少数のアクワイアラによる加盟店開拓

現金の利便性低下、現金取扱いコストの増加、新紙幣への対応コスト

消費者へのサーチャージ転嫁を規制により是正

大手銀行が連携して、共同でモバイル決済アプリケーションを開発

全国規模でのアクセプタンスの確保

銀行や商店における現金の取扱い停止の動き

消費者にとって、よりカード決済を行う動機づけに

利便性が高い、多様なサービスが提供

キャッシュレス化の原動力として実現されている状況

大手行の高いシェア

都市部への人口集中

【施策】強盗対策を背景とした公共交通機関(バス)での現金使用禁止

【民間動向】国内大手行によるモバイル送金アプリSwishスタート

環境要素

実施施策

【施策】消費者へのサーチャージ転嫁の禁止

テクノロジーに明るい国民性

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(スウェーデン)

スウェーデンでは、デビットカード中心でキャッシュレス化が進展してきた。近年ではモバイル送金・決済の普及を背景に、現金流通高が一段と減少している。

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」WorldBank「World Development Indicators」よりNRI作成

キャッシュレス年表

2003年

2006年

2010年

2011年

2012年

2012年

2014年

Bank IDと呼ばれる個人認証IDサービスがスタート

公共バスでの現金使用が禁止に

税務当局が、商店は当局から承認を得たキャッシュレジスターを使わなければならない法律を制定(規則違反の場合には、罰金)

カード決済時の消費者へのサーチャージ転嫁を原則禁止に

24/7(即時振込みの24時間365日化)サービス「Payments in Real Time(PRT)」スタート

個人間モバイル送金サービスSwish誕生

Swishのインストア利用が可能に

現金流通高対名目GDP比率の推移(2007年~2016年)

支払手段別キャッシュレス比率の推移(2007年~2016年)

政府がキャッシュレスを目指す中で、民間サービス中心にキャッシュレス化が進展

(%)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(スウェーデン)

中央銀行は店舗・銀行での現金取扱い停止に対して、事前に消費者への意思表示があれば構わないとの立場であったが、足もと銀行には現金を取扱うよう勧告を出している。

同国中央銀行であるリクスバンクは、HPに店舗・銀行における現金取扱い拒否についてのスタンスを表明している。

店舗については、現金はlegal tenderであるため使用できることが望ましいとしながらも、消費者に店頭での掲示や口頭での「現金取扱い拒否」の旨意思表示があれば構わないとしている。

銀行については、中央銀行としては現金の取扱いを義務付けるマンデートはなく、口頭等で「現金を取り扱わない」旨消費者に伝えれば構わないとしている。(契約自由の原則)

(※)2017年には、中銀が行き過ぎたキャッシュレス化を懸念して、銀行は現金を取り扱うべきと勧告。現在、法的な手当ても検討されている模様。

リクスバンクのホームページに掲載されている現金に関するQ&A

現金取扱いに対する質問に、リクスバンクが公式回答(回答内容は上記参照)

出所)リクスバンクのホームページよりNRI作成

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(スウェーデン)

2000年代前半に複数の大手行により整備されたBankIDは、現在国民の大半が利用しているP2P送金アプリSwishを技術的にサポートしている。

スウェーデンでは、出世時に10桁の個人識別番号(パーソルナンバー)が付与されている。

パーソルナンバー制度は、1947年にスタート。1966年以降は電子的な管理もスタートした。

2003年に、複数の国内大手銀行が、個人識別番号に氏名・電子証明書を統合したBankIDの運用を開始した。

BankIDは、人口約1,000万人のスウェーデンで約750万人以上が利用している国民的なサービスとなっており、BankID上の電子署名は法的な拘束力も持つ。

同IDは、電子納税申告などの行政サービス、インターネットバンキングやeコマースなど民間サービスで幅広く活用されており、国内で広く普及しているP2Pモバイル送金サービスSwishにもBankIDが活用されている。

Swishは、2012年に国内の大手銀行が共同で開発したサービスで、携帯電話番号とBankIDを紐付けて、相手の電話番号を指定するだけで即時送金・インストア決済が可能なアプリ。現在人口の半数以上が利用している。

Swishアプリ内の表示画面

出所)BankID,SwishのHP等よりNRI作成

送り先の電話番号入力

送金する金額入力

メッセージ記入

送金ボタン押下

BankIDの取得手順

アプリ上でBankID取得が可能 個人識別番号の入力

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各国別調査:中国

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(中国) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

中国では、銀聯(ChinaUnionPay)のデビットカードから、AlipayやWechantpayといった第三者支払手段にキャッシュレスの担い手が変遷。

国内向け決済ネットワーク兼ブランドである中国銀聯が02年に事業開始した事が、中国のキャッシュレス化の先駆けとなった。

普及に際して、同ネットワークの利用やデビットカードへのブランド付与を義務化する事を中央銀行が通達することも行われ、他の国際ブランドと比して有利な立場が担保された。

また、手数料については、加盟店種別ごとに明確な規定が存在し、市場の透明性を高めている。なお、同手数料水準については、政府が調査・見直しを適時行う事も規定されている。

近年は、AlipayやWechatpayといった民間IT企業の第三者支払手段がキャッシュレスの拡大に大きく貢献。

民間主導の拡大であり、政府として大きく後押しするような施策は行っていない。

システミックリスクを避ける為、資金管理等の規制を新たに導入している。

消費市場の拡大が著しく、良好な市場環境

環境要素

実施施策

【施策】政府主導での金融インフラ銀聯の構築と規制による同インフラへの誘導

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

消費者消費者のキャッシュレス決済手段の高い認知・利用

アクセプタンスの拡大

銀行、加盟店

コスト効率的な基盤・インフラ

キャッシュレス化の原動力として実現されている状況

【施策】銀聯スキームの手数料について、配分も含めて、明確に規定

分かりやすく、誰でも保有しているツール(銀行カード、スマホアプリ)での決済サービス

規制による協調的なアクワイアリング市場

単一の決済基盤を構築し、同インフラを共用する事によるコスト効率化

全国規模でのアクセプタンスの確保

キャッシュレス決済が習慣化しており、新たなツールの導入にも積極的

低コストな基盤により、各主体のキャッシュレス推進を底上げ

加盟店【民間動向】資金力があり、オンライン上で高いシェアを持つインターネット企業による第三者支払手段決済事業への進出

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(中国)

政策的後押しによる銀聯ブランドのデビットカードスキームが00年代のキャッシュレス化の原動力。近年はAlipayやWechatpayといった民間の第三者決済サービスが台頭。

キャッシュレス年表

1999年

2001年

2002年

2008年

2011年

2013年

2015年

「银行卡业务管理办法(銀行カード業務管理弁法)」が公布。クレジットカード決済の提供に係る制度環境が整備加盟店手数料率やその分配についても規定が存在

「2001年银行卡联网联合工作实施意见的通知(2001年銀行カードネットワーク連合事業実施意見を発行することに関する中国人民銀行の通知)で中国銀聯カード仕様への準拠とネットワーク加盟を義務付け

中国銀聯のローンチ

北京オリンピックを契機に、全国規模でのアクセプタンス拡大

インターチェンジフィーとスイッチングフィーの上限やプレーヤ間の配分比率の規定が見直し。以降、手数料率は適時見直すこととされる

「银行卡收单业务管理办法(銀行カードアクワイアリング業務管理弁法)」によって第三者決済機関が、オフラインでも銀行口座と接続して決済事業が可能となる規制緩和

第三者決済サービス関連の規制が相次いで発表

銀聯(ChinaUnionPay)スキームは政府主導で普及。近年のオフラインQR決済は民間主導

中国銀聯の日次取扱金額・件数の推移

出所)China UnionPay Data Services ホームページよりNRI作成

3,963

10.98

20082003 2004

151.55

20072005 2006 2009 2011 2012 2013 2014 2015

291

2016

0.092

244.74

0.0002

40.14

0.39

712

0.0654 0.28

489

25.7 82.3

1.08 6.78

2010

21017.12 24.81

60.76

166

107.63

1,641

2,647

199.78

1,108

平均日次取引金額(億RMB)

平均日次取引件数(万件)

2017年Q1第三者決済サービスにおける取引シェア

Alipay31%

Tenpay(wech

atpay含む)

22%

銀聯商務16%

快錢7%

匯付天下7%

中金支付5%

易宝支付3%

宝付3%

その他6%

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(中国)

02年に設立された中国銀聯が00年代には中国のキャッシュレス化を推進する原動力となっていた。

中国銀聯は、それまでに相互接続が不十分であった銀行間の共通ネットワークとして02年に設立された。

その設立にあたって解決すべき課題として、①効率的な資源利用、②全国範囲でのネットワーク利用の実現、③秩序だった競争による加盟店網の拡大が挙げられている (出所:万 建華『金融e時代』)

また、WTO加盟による金融事業の自由化を前に、国内決済ブランドを育成するという観点も当時存在した。

銀聯ネットワーク、ブランドを民間の各銀行が利用する、各種の規制や通達がなされ、中国の決済手段としてのデジュールスタンダード化が行われ、国家をあげての普及促進が行われた。

通知・規定 その内容

中国人民银行关于印发《2001年银行卡联网联合工作实施意见》的通知

銀行カード業務を行う銀行に対して銀聯の設置する銀行間決済ネットワークに加入することを求める中国人民銀行の通知

中国人民银行关于统一启用“银联”标识及其全息防伪标志的通知

イシュイングされる銀行カードに「銀聯」標識を付すこと求める中国人民銀行の通知

銀聯の活用に向けた通知・規定の例

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(中国)

銀聯カードの手数料及びその分配については、消費者・事業者への影響度や市場の競争状態に基づき、政府が基準を設定している。

銀聯カードの手数料水準及びその分配については、99年の银行卡业务管理办法(銀行カード業務管理弁法)に引き続き、12年の「中国人民银行关于切实做好银行卡刷卡手续费标准调整实施工作的通知(中国人民銀行の銀行カード使用手数料基準の調整を実施することに関する通知)」、13年の「国家发展改革委关于优化和调整银行卡刷卡手续费的通知(国家発展改革委員会の銀行カード使用手数料の改善及び調整に関する通知)」にて、加盟店種別ごとに手数料水準に明確な規定が設定されている。

2014年の商业银行服务价格管理办法(商業銀行サービス価格管理弁法)において、手数料設定の項目及び基準は、商業銀行のサービスコスト、サービス対価が個人又は企業・事業単位に影響を与える程度、市場の競争状況に基づき、国務院の価格主管部門と中国銀行業監督管理委員会が共同で定めるものとされている。

その際には、①商業銀行等の関連機関に対してコスト調査を行う、②関連する顧客、商業銀行及び関連各方面の意見を聴取する、③関連するサービス価格を制定又は調整する決定を行い、社会に公布する、というプロセスを踏むものとされている。

加盟店類別 イシュイングサービス料銀行カード決済組織ネットワークサー

ビス料アクワイアリングサービス料

1. 飲食・娯楽類:飲食、ホテル、娯楽、貴金属、工芸美術品、不動産及び自動車販売

0.9%(そのうち不動産及び自動車販売については60元を上限とする)

0.13%(そのうち不動産及び自動車販売については10元を上限とする)

0.22%(そのうち不動産及び自動車販売については10元を上限とする)

2.一般類:百貨店、卸売、社会訓練、仲介サービス、旅行社及び観光地入場券等

0.55%(そのうち卸売類は20元を上限とする)

0.08%(そのうち卸売類は20元を上限とする)

0.15%(そのうち卸売類は20元を上限とする)

3.民生類:スーパーマーケット、大型アウトレット、水・電気・光熱費、ガソリン、交通運輸チケット

0.26% 0.04% 0.08%

4.公益類:公立病院及び公立学校

0 0 サービス受託に従い徴収

国家发展改革委关于优化和调整银行卡刷卡手续费的通知(国家発展改革委員会の銀行カード使用手数料の改善及び調整に関する通知)に基づいた手数料設定

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(中国)

AlipayやWechantpay等の第三者決済機関の店頭QRコード決済は、政府による後押しではなく、民間企業が独自に発展させてきたという傾向が強い。

AlipayやWechapayはもともとは、中国におけるインターネット事業者のオンライン決済事業であった。

13年の「银行卡收单业务管理办法(銀行カードアクワイアリング業務管理弁法)」によって、そうした事業者は、オフラインでもアクワイアリング・決済事業を行う法的制度が明確化し、 AlipayやWechapayといった第三者決済機関は急速にその事業を拡大した。

拡大にあたっては決済事業者が、消費者向けインセンティブを独自に付与する等が行われた。そうした事業者は、決済外の事業が中核事業であり、決済単体で利益を上げる必然性が乏しく、また、取得した決済関連情報をマーケティング等に活用する事で新たな収益を得ることもできる為、自らコストを負担する事が可能であったと考えられる。

その後の市場の急拡大の一方で、中国人民銀行は14年3月にはQRコード決済業務の一時停止、16年4月には第三者決済機関の新規ライセンス発行を停止する等、その社会的影響を鑑みて規制強化傾向にある。その後も、「バーコード決済業務規範」では、取引限度額やその決済データの流通に対する規制が行われている。

第三者モバイル決済取引規模の推移(2011年~2019年)Wechatpayによる消費者向けインセンティブのイメージ

タクシー利用時に、Wechatpayを利用する事で割引が受けられる事を訴求

テンセントが投じた販促費用は4億元に上った

出所)Wechatpayアプリ画面よりNRI作成

出所) iResearch 「2017年中国第三方移动支付行业研究报告」よりNRI作成

0.1 0.2 1.2 6.0

12.2

38.5

55.0

72.1

89.8

36.3%89.2%

707.0%

391.3%

103.5%

215.4%

43.0% 31.1% 24.4%0.0%

100.0%

200.0%

300.0%

400.0%

500.0%

600.0%

700.0%

800.0%

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

取引金額(兆元) 成長率

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各国別調査:韓国

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(韓国) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

00年前後からのクレジットカード産業振興策を矢継ぎ早に投入。特に、クレジットカード支払いの場合の減税措置(TIETP)が消費者向けインセンティブとして機能。

97年の通貨危機後の景気浮揚策として、消費者向け与信付与と消費拡大の為、00年ごろにクレジットカード市場振興策が多数導入された。

99年のキャッシング上限の大幅緩和、00年のくじ制度の導入等

特に99年には、クレジットカードを利用した場合の消費者向けの包括的な税控除スキームであるTIETP(tax incentives for electronically traceable payments)が開始された他、税法上で一定規模の売上規模の加盟店にはクレジットカードのアクセプタンスを強く要請。

当施策導入の背景には、事業者側の売上を把握し、脱税を防止するという目的も大きかった。

クレジットカード主体でのキャッシュレスが進んでいたが、過剰な消費者債務の拡大とその急激な信用収縮による経済的混乱も発生しており、近年ではクレジットカードより税控除水準を高くすることによる、デビットカードへの誘導も行われている。

キャッシュレス比率の高まりを受け、韓国銀行は、 「コインレス社会」に向けた活動を開始し、実証実験等を実施。

97年の通貨危機後の景気浮揚の為、00年ごろには消費者信用を拡大する事に対する政策的合意が存在

【施策】加盟店におけるアクセプタンスへの強い要請(カード決済拒否時のペナルティ含む)

環境要素

実施施策

【施策】税控除スキームTIETPの導入による消費者向けインセンティブの付与

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

消費者消費者の高いキャッシュレス意向

アクセプタンスの拡大

銀行、フィンテック事業者、加盟店

政府と民間協同での基盤・インフラ整備

キャッシュレス化の原動力として実現されている状況

【施策】クレジットカードの利用控を活用したくじ制度による消費者向けインセンティブの付与

消費者がキャッシュレスに移行する事に、経済的なメリットを付与

政府による加盟店拡大に向けた強権的な活動

中央銀行と民間事業者が連携して、キャッシュレス決済の受け皿となる基盤を構築

全国規模でのアクセプタンスの確保

キャッシュレス決済が習慣化しており、新たなツールの導入にも積極的

(将来的に)キャッシュレス移行時の社会的負負担を軽減

加盟店

【施策】硬貨廃止に向けた中央委銀行の計画発表と電子マネースキームの導入

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(韓国)

韓国では、クレジットカード中心でキャッシュレス化が進展している。

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」WorldBank「World Development Indicators」、 1999年~2006年のクレジットカードデータはBank of Korea, Financial Supervisory Service of KoreaよNRI

作成

キャッシュレス年表

1997年

1998年

1999年

2000年

2002年頃

2012年

2016年

2017年

通貨危機の発生

一定規模・種別の事業者へのクレジットカードネットワーク参加の強い要請

包括的な税控除スキームであるTIETP(tax incentives for electronically traceable payments)の導入(以降、その水準等は適時見直し)キャッシングサービスの貸出限度額大幅緩和

クレジットカード利用時に抽選で消費者に当選金があたるくじ制度の導入

業界の健全な発展に向けた規制強化の実施(以降、規制緩和と強化が繰り返される)

加盟店手数料に係る規制を開始改正信用金融法(Credit Finance Law)において、金融委員会の指定する規模以下の事業者については、特別な(低廉な)加盟店手数料とする事が規定された※17年7月以降、売上4-5億ウォンの事業者で1.3%売上2-3億ウォンの事業者で0.8%

韓国中央銀行はコインレス社会に向けた施策発表

コイン廃止に向けた試験(釣銭のカードチャージ)開始

現金流通高対名目GDP比率の推移(2007年~2016年)

支払手段別キャッシュレス比率の推移(1999年~2016年)※1999年から2006年はクレジットカードのみ

韓国は、00年頃から減税等のクレジット決済普及策を強力に推進

(%)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(韓国)

97年の通貨危機対策として、99年頃から各種のクレジットカード決済振興策が打ち出され、同国においてクレジットカード中心のキャッシュレス化が進むきっかけとなった。

通貨危機による経済縮小への対策として、消費者向け与信を拡大する事で個人消費を拡大する方針に基づき、様々なクレジットカード振興策が取られた。

具体的な内容としては、キャッシングに関する規制緩和、消費者向けインセンティブの付与、事業者におけるアクセプタンスの誘導の3つがある。

特に、キャッシングに関する規制緩和は、カード事業者にとっては大きな事業チャンスとなり、契約拡大の原動力になった一方で、貸倒の増大といった社会問題の原因ともなった。

同施策はキャッシングによる現金引出の拡大を発生させた為、キャッシュレス決済の拡大には直結していない。

韓国における主なクレジットカード振興策

消費者向けの所得税控除スキームTIETPの導入(1999年):詳細次ページ

一定規模・種別の事業者へのクレジットカードネットワーク参加を強く要請(1998年) 付加価値税法(Value-Added Tax Act)、会社税法(the

Corporation Tax Act)、所得税法(Income Tax Act)にて対応が強く要請される

要請対象は適時拡大している。例えば、小売、レストラン・宿泊業及び関連サービスでは、99年1月では年間売上1.5憶ウォン、08年1月では年間売上0.24億ウォン以上の事業者が対象

クレジットカード支払の拒絶の場合の事業者へのペナルティの付与(2007年) 支払時に、クレジットカードを適正に処理し、取引控を発行する事ができ

なかった事業者について、その際の5%(最低額5000ウォン)の懲罰課税を徴収している

くじ制度の導入(2000年) クレジットカード利用時の取引控に抽選番号を付与。毎月当選金があたる

くじを実施

事業者におけるアクセプタンスへの誘導

消費者向けインセンティブの付与

キャッシングに関する規制緩和

キャッシングサービスの貸出限度額大幅緩和(1999年) キャッシングサービスの限度額を70万ウォンから1000万ウォンに大幅な規

制緩和

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(韓国)

所得税控除スキームであるTIETP(tax incentives for electronically traceable payments)がは、利用者がカード決済を行う強い動機となっている

カード決済による消費分の一定額について、所得税からの控除が受けられるTIETPは、99年に開始された。

消費者向けインセンティブの強化に加えて、売上の把握による事業者の脱税防止も大きな目的。

所得控除可能な割合は、利用決済手段や利用先によって適時見直されている。

控除可能率を決済手段や対象事業者の性質等で変える事で、消費者の購買行動を調整する手段としても機能している。

控除の申請は、①消費者が自らの勤務先にカード会社から発行された取引レポートを提出、または②カード会社から国税当局に送付された取引データに基づき自動入力された国税当局のインターネット上のフォームで、消費者自身が申請する、という2つの方法がある。

クレジットカード

デビットカード

伝統的商店

公共交通機関

1999 10% 10%

2001 20% 20%

2003 20% 30%

2004 20% 20%

2006 15% 15%

2008 20% 25%

2012 20% 30% 30%

2013 15% 30% 30% 30%

TIETPを利用した支払の内、所得控除が可能な割合の推移

出所)WorldBank “Can Tax Incentives for Electronic Payments Reduce the Shadow Economy?”

TIETPの基本的なスキーム

アクワイアラカード会社

国税当局NTS

カード加盟店

消費者 決済

消費者の勤務先

給与

イシュアカード会社

支払 精算

給与及び控除情報

取引データの送付

精算

取引レポート

取引レポートを勤務先に提出または取引内容のインターネット上での入力(NTS側で内容は自動入力されている)

※控除上限等の条件も別途存在※※2005年からは現金利用時も、国税当局発行のカードを提示する事で税控除の対象となる

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(韓国)

韓国の中央銀行である、韓国銀行は、硬貨の流通停止に向けた方針を打ち出しており、17年には釣銭を電子マネーにチャージするパイロットプログラムを開始。

16年1月に韓国中銀は、“Payment System Policy Roadmap - Vision 2020”を発表し、コインレス社会の実現に向けたフィージビリティスタディを16年の重要施策とした。

16年4月にタスクチームを結成し、コインレス化に対する意識調査等を行い、「コインレス社会」に向けた活動を開始した。

また、17年4月からはキャッシュ支払時の釣銭を電子マネーへチャージするモデルのパイロットプロジェクトを実施しており、18年から20年にかけて、その対象範囲を拡大する予定である。

出所)韓国中央銀行Action Plan for ‘Coinless Society’

韓国銀行が実施する、釣銭支払の電子マネーチャージのスキーム図

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各国別調査:オーストラリア

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(オーストラリア) キャッシュレス化進行の主要要因のまとめ

中銀・民間協同による決済インフラeftposが歴史的に重要な役割を果たしてきた。また、効率性・公正性が担保された競争環境実現に向け、近年は手数料規制を重視している。

それまで分散していたATM、決済ネットワークを相互接続・共通化した全国区の決済インフラeftposが1983年に稼働を開始した。eftposはブランドとしても機能し、諸外国に比べても早い段階で銀行カードでの店頭決済機能が自動付与され、幅広い国民へのキャッシュレス決済の普及が開始された。

また、接続先がeftposに限定されていることに加えて、都市部への人口集中や大手行へのシェア集中傾向により、加盟店開拓が効率的に行われたことも、アクセプタンスの拡大に有利であった。

このような要因によって、キャッシュレス社会に移行する一方で、多数の加盟店と極めて少数のアクワイアラとブランドという業界構造による非効率や不公正が発生する事に対し、政府は強い注意を払っており、特に手数料関連規制は関連政策の中でも重要であると当局は認識している。

次世代決済ネットワークNPP(New Payment Platform)を中央銀行と民間銀行のコストシェアにより構築・運営されており、2018年2月のローンチ以降、多様なサービスが提供される基盤となる予定である。

大手4行の高いシェア(12年の家計ローンシェア80%)

都市部への人口集中(13年の都市人口比率89.15%)

【施策】地方での交通系マネーの導入

【施策】中央銀行と民間銀行での次世代決済ネットワークNPP(New Payment Platform)の構築

【施策】1983年に国内銀行共通決済NW eftposを開始

環境要素

実施施策

【重要施策】インターチェンジフィー、サーチャージ等の手数料規制

キャッシュレス化に主要な影響を与えた施策と環境要素

*太字・下線は特に重要と考えられる事項

高いキャッシュレス比率

加盟店、アクワイアラ

効率的なアクワイアリング

消費者消費者にとって分かりやすく利便性の高いサービスの実現

加盟店適正な加盟店手数料水準

銀行、フィンテック事業者

銀行と決済事業者・フィンテック事業者との連携容易化

ネットワークを共通化した少数のアクワイアラによる加盟店を開拓

銀行カードでのデビットやその他決済・情報連携が幅広く提供

加盟店に比して強い銀行・ブランドという関係性からの不公正・非効率を規制により是正

中央銀行と民間事業者が連携して、多様なサービス基盤となるインフラを構築

全国規模でのアクセプタンスの確保

キャッシュレス決済が習慣化しており、新たなツールの導入にも積極的

加盟店にとって導入しやすい手数料水準の実現

利便性が高い、多様なサービスが提供される

キャッシュレス化の原動力として実現されている状況

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(オーストラリア)

オーストラリアでは、クレジットカードの他、国内独自スキームであるeftposデビットカードがキャッシュレスの重要な手段となっている。

出所)BIS「Statistics on payment, clearing and settlement systems in the CPMI countries」、WorldBank「World Development Indicators」よりNRI作成

キャッシュレス年表

1983年

2002年

2003年

2018年

決済ネットワークeftposの稼働開始銀行カードへの同ブランドの決済機能付与され、キャッシュレス拡大の基盤となる。

オーストラリア中央銀行と競争・消費者委員会によって、オーストラリアにおける決済市場構造に伴うベンチマーク調査が実施

ベンチマーク調査に基づいて、インターチェンジフィー規制が開始

同年に、ノーサーチャージルールについても撤廃が義務付けられる

以降、定期的にベンチマーク調査とインターチェンジフィー規制水準の見直しを実施

次世代決済ネットワークであるNPP (New Payment Networkが稼働開始)

現金流通高対名目GDP比率の推移(2007年~2016年)

支払手段別キャッシュレス比率の推移(2007年~2016年)

オーストラリアは、政府が、決済ネットワーク構築や競争環境の健全な発展に取組み、成果を上げている

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(オーストラリア)

市場の効率性・公平性を担保する為、オーストラリアでは、インターチェンジフィーやサーチャージといった手数料に関する規制が存在している。

オーストラリア中央銀行(Reserve Bank of Australia)が、決済システム(規制)法(Payment Systems (Regulation) Act 1998) に基づき、決済ネットワークが満たすべき基準の設定及び指定に加えて、インターチェンジフィー規定の基準及び、算定の根拠となるベンチマーク調査結果を公表している。

競争政策主体である競争・消費者委員会 (Australian Competition and Consumer Commission)とオーストラリア中央銀行は98年にMOUを締結し、決済ネットワークに関して一貫性あるアプローチを行うことを同意、関連する政策はRBAが実務を実施。

実際のベンチマーク調査は02年8月から実施、03年10月からはインターチェンジフィー規制を導入した。

なお、カードブランドは同規制に反対し、連邦裁判所に提訴を行ったが、03年9月に敗訴している。

また、No-surcharge rule(NSR)の撤廃を03年1月より義務付け、決済手数料の消費者負担禁止を制限している。

現行のインターチェンジフィー規定内容

決済手段種別 インターチェンジフィー―上限

クレジットカード 0.800 %

デビットカード(EFTPOS含む)

0.200 % (または15.0 セント)

サーチャージ規定内容

加盟店がサーチャージを消費者から取得可能。ただし、実際のコストを上回る金額の取得は禁止

業界のコスト構造等実態の

ベンチマーク調査

規定水準の見直し

ベンチマーク調査の例(加盟店手数料率の調査結果)

手数料水準は定期的なベンチマーク調査により見直される

出所)オーストラリア中央銀行

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査(オーストラリア)

中央銀行と民間銀行が主導し、次世代の決済インフラであるNPP(New Payment Platform)を構築・運用している。

NPPは24/7稼働を実現した決済サービスであり、個人間での送金にも活用可能なインフラとして2018年に提供開始。

同インフラを活用した多様なサービスが提供できる事を志向しており、NPPは決済の基盤レイヤーとして機能する。

18年2月には、最初の商用サービスとして、請求送付・支払サービス事業者であるBpay社より提供されている。

NPPのシステム構造サービスレイヤは“Overlay Services”として基板から切り離され多様なサービスを受け入れる

NPP上で送受信可能なメッセージタイプ

出所)NPP Australia “New Payments Platform Technical Introduction”

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その他の事例

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査 その他の事例 カナダ

カナダでは、銀行主導で加盟店のEMV対応と並行してNFC対応が進み、消費者利便性が向上。直近でも、店頭でのクレジット決済が拡大する傾向にある。

クレジットカードに加えて、非接触型の少額支払が多くの店舗で使えることで、幅広い消費者ニーズに対応する事が可能となっている。

非接触型の端末が普及した要因として、2011年ごろのライアビリティシフト*に伴う決済端末のEMV対応に合わせて、加盟店のNFC対応も進んでいた事が大きい。

同タイミングはNFCの本格実用化時期にあたり、EMVとNFC対応が同時に行われた事で、二重投資にならず、加盟店での導入が進みやすかった要因。

カードブランドと銀行がプロジェクトマネジメントオフィスを設立し、端末の更改・普及の推進主体となった。

カナダは主要6銀行の合計シェアが9割以上であり、そうした銀行が主導する事で、全国区での対応が容易であったことも指摘される。

POS決済における決済手段別の取扱額の推移

出所)Payments Canada “Canadian Payment Methods and Trends”

*ライアビリティシフト:IC(EMV)対応を行っていない加盟店における、カード不正利用に伴う損害債務責任(ライアビリティ)をカード発行会社から加盟店に移転(シフト)する業界ルールの変更

100万カナダドル100万カナダドル

非接触型決済の決済額と決済件数

100万件

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査 その他の事例 南アフリカ・米国等

Mastercardは、南アフリカでSASSA(South African Social Security Agency)と協業で、社会助成金受給者向けの生体認証機能付きSASSA Debit MasterCard Cardを提供している。

指紋、音声、その他の識別子によって本人確認を行い、受給者本人しか利用できないようにすることで、不正受給を抑制している。その結果、政府のコストは50%削減されたとのこと。

MasterCardのSub-Saharan Africaを管轄しているDaniel Monehinは、アフリカにおける成長戦略のキーになるのは政府であるとし、金融包摂(基本的金融サービスへのアクセスへの問題の解消)を実行可能な形で、持続的に行っていくための官民のパートナーシップがビジネスにとって重要であるとしている。

先進国においても、米国ハリケーン『カトリーナ』被災者への義捐金支給 、伊国『ラクイラ地震(イタリア中部地震)』被災者義捐金として、 MasterCardによる政府給付金の支給は、で使用されている。

南アフリカ等の途上国では、金融包摂のツールとして、社会助成金の受給にデビットカードを使用している。米国等でも災害者義捐金支給でデビットカードが活用されている。

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査 その他の事例 ケニア

M-PESAは、身分証明書を確認の上、口座を開設後に、ケニアの通信会社Safaricomがサービス提供。

同社の拠点または9万を越える代理店で、現金を口座にデポジットして使用することになる。

送金時は、携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)をベースにしたアプリケーション上で、相手先・送金額を指定し、その内容を通信すると、口座間で残高の移動が行われる仕組みとなっている。

この仕組みを用いて、公共料金等の支払代行も可能となっている。

M-PESAサービスはアフリカ諸国を中心に複数国で展開されている。

ケニア等で展開される携帯電話上で管理される電子マネーM-PESAでは、公共料金の支払が携帯電話上のマネーから支払可能。

タンザニアのM-PESAサービスで対応している支払代行先

赤字は、政府機関・公共料金への支払

出所) Vodacom Tanzaniaホームページ

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査 その他の事例 ミャンマー

ミャンマーにおいては、銀行と協業したモバイルマネー(電子マネー)サービスが急速に勃興。

地域小売店頭で現金をチャージし、携帯電話上のアプリで送金等を可能としている。

EC利用やP2P送金だけでなく、給与振込や公共料金の収納代行のニーズを訴求する事業者も存在している。

ミャンマーのモバイル電子マネーサービスでも、公共料金の支払が可能となっている。

ミャンマーInnwa bankとベンチャーが協業したMyanmar Mobile Money

出所) Myanmar Mobile Moneyホームページ

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査 その他の事例 デンマーク

デンマークでは、2018年より一定の条件を満たした場合には、小売店が消費者による現金支払いを拒否することが法的に可能となっている。

デンマークでは、決済サービス法(Payment Services Act)の規定により、対面店舗においては原則、現金による支払いを拒否することができなかった。

一方、2009年のデンマーク中銀の調査では、現金による購買は、同国の独自デビットスキームであるDankort利用の場合と比べ、2倍の社会コストが発生しているとされた。特に、店舗事業者には現金の取扱に係る人件費やセキュリティ対策費用が発生していた。

2015年に、社会における現金の役割を調査するワーキンググループが設立され、同ワーキンググループでは消費者や事業者に対する調査の他、規制緩和の方針についても議論され、(強盗被害が多くセキュリティ関連費用が事業者に発生しやすい)夜間時間帯について現金支払を拒否する事を可能とすることが、社会コスト削減と消費者の利便性のトレードオフのバランスが適切であると、ワーキンググループメンバーの多くが合意した。

その後、デンマーク議会は現金支払いの受付を強制する規制を緩和する事を議決し、2018年からは、原則的に午後10時から午前6時までは小売店舗において現金支払いを拒否することが可能になった。

治安に問題がある地域については、午後8時から現金支払いの拒否が可能である。

また、社会的な影響も考慮した上で、24時間営業の薬局などの商務・金融省が指定する形態の店舗については、引き続き現金での支払いを受け入れることが義務付けられている。

出所)Danmarks National Bank”Danish households opt out of cash payments”よりNRI作成

社会コスト全体10億クローネ/年

決済1回あたり社会コストクローネ/回

現金 5.8 7.36

Dankort (独自デビットスキーム) 2.5 3.15

国際ブランドデビットカード 0.5 11.89

国際ブランドクレジットカード 0.4 21.17

2009年のデンマーク中銀の分析による決済手段別の社会コスト

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Agenda

(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

① FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算

②小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査

③我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

(3)総括

付属資料

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(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

調査概要

目的

① FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算• キャッシュレス化が進展した際の社会全体での既存コストの削減や新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果について、要素を網羅的に整理した上で、各要素について定量的に試算する。

②小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査• キャッシュレス化に向けて必要となる小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応読取機等の導入コストについて実態調査を行う。

調査のアプローチ

• 現金を取り扱う事業者(金融機関、警送会社等)による公表資料や、統計情報を活用した文献調査

• 法人向けアンケート調査を通じた、現金取扱い業務の定量的調査

• 現金を取り扱う事業者(流通業、金融機関等)に対するインタビュー調査による定性的調査

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

① FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算

②小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査

③我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

(3)総括

付属資料

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FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算 調査サマリー

FinTechサービス普及の前提条件である「キャッシュレス化」を進めることが、日本の社会課題の解決に寄与する。

超高齢・人口減少社会に突入し労働力が不足している

高密度・高信頼のATM網が現金の利便性を高めている一方、金融機関によるATM維持

に大きな社会コストを要している

家計金融資産に占める株式・投信比率が低く、国際金融市場での

適切なリターンが得られていない

日本の経済環境(社会課題) キャッシュレス化による恩恵

【現金決済の社会コスト削減】セルフレジの普及促進や、現金取扱事務の削減により、労働力不足の緩和が可能

【現金決済の社会コスト削減】消費者の現金支払が減少すれば、ATMの需要が抑制され、設置台数(≒社会コスト)の削減が可能

【経済効果(家計所得増)】キャッシュレス決済利用者における家計ストック・フロー情報の見える化が進むことで、投資促進のきっかけとなる

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FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算 調査サマリー

キャッシュレス化により、現金決済の社会コスト削減と、家計や事業者に対する経済効果が期待できる。

現金決済の社会コスト キャッシュレス化による潜在的経済効果

現金決済による現在の社会コスト

約1.6兆円/年

キャッシュレス化による潜在的経済効果

約6兆円/年

ATM警送会社委託費

1,400億円

ATM機器費・設置費

4,120億円

ATM事業運営経費

1,460億円

現金関連業務人件費

(レジ締め等)

5,000億円

(約35万人相当)

現金関連業務窓口人件費

1,000億円

【消費支出】外国人観光客

による消費支出増

1.2兆円増

【家計所得】株式・投信保有比率増による

家計所得増効果

2.7兆円※増

【事業者収益】電子決済の手数料収入

1.3兆円増

【事業者収益】経理担当者の

業務時間

2200億円※減

※潜在的経済効果全体のうち、キャッシュレス決済による寄与分の推計結果

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現金決済の社会コスト

現金決済インフラを維持するために、年間約1.6兆円を超える直接コストが発生している。

日本銀行 銀行店舗銀行ATM/

コンビニATM

法人

印刷局

個人

ATM

ユーザー

法人

代金支払

ATM補填

窓口預入・引出収納代行売上金回収

現金供給引渡し・交付

ATM

預入・引出 店舗

現金輸送

給与支払

印刷局・造幣局

流通・サービス業

銀行券製造委託費

500億円

貨幣製造コスト

150億円ATM

警送会社委託費

1,400億円

ATM事業運営経費

1,460億円

現金関連業務人件費(レジ締め等)

5,000億円

現金決済インフラの直接的な社会コスト(年間)

キャッシャー等設備投資

600億円

偽造紙幣被害

0.1億円

現金関連業務窓口人件費

1,000億円

店頭設備投資

760億円

警送会社委託費

500億円

財産犯のうち現金被害額

900億円

ATM機器費・設置費

4,120億円

造幣局

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現金決済の社会コスト

現金決済インフラの直接的な社会コスト 算出方法

コスト発生プロセス 現金関連コスト費目年間社会コスト

(億円)出所、算出方法

印刷局・造幣局銀行券製造委託費 500 日本銀行「損益計算書」

貨幣製造コスト 150 造幣局「貨幣に関するデータ 年銘別貨幣製造枚数」

銀行店舗

店頭設備投資 760NRI推計。グローリー社金融機関向け売上高533億円(2017年3月期)÷同社推定シェア70%≒760億円

現金関連業務窓口人件費

1,000

NRI推計。職員数45.5万人(全国銀行職員数 30万人(全国銀行協会)、郵便局職員数 10万人(日本郵政)、JA信用職員数5.5万人(農林水産省「総合農協統計表」))×店頭窓口業務従事者率 40%(金融機関ヒアリングよりNRI推計)×窓口業務における現金関連作業比率 20%(金融機関ヒアリングよりNRI推計)×1人あたり人件費 300万円/年 ≒1000億円

銀行ATM/コンビニATM

ATM警送会社委託費 1,400NRI推計。国内ATM設置台数 20万台× 警送会社業務委託費 70万円/台 (ALSOK社IRデータよりNRI推計) ≒1400億円

ATM事業運営経費 1,460NRI推計。国内ATM設置台数 20万台×その他役務取引等費用・営業経費 73万円/台 (セブン銀行IRデータよりNRI推計)≒1460億円

ATM機器費・設置費 4,120

NRI推計。ATM機器費 2500億円(主要ATM機器製造業者の売上高より推計)ATM設置費 1620億円=国内ATM設置台数 20万台×ATM設置支払手数料 81万円/台(セブン銀行IRデータよりNRI推計)

流通・サービス業

現金関連業務人件費(レジ締め等)

5,000

NRI推計。売上高は経済センサス対象業種を選定し算出。現金関連コスト比率は現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)より。従業者数50人未満の企業 売上高60兆円×現金関連コスト0.51%≒3000億円従業者数50人以上100人未満の企業 売上高11兆円×現金関連コスト0.27%≒300億円従業者数100人以上の企業 売上高124兆円×現金関連コスト0.14%≒1700億円

キャッシャー等設備投資 600NRI推計。グローリー社金融機関向け売上高426億円(2017年3月期)÷同社推定シェア70%≒600億円

警送会社委託費 500NRI推計。入金機サービス利用料70万円/年×導入台数7万台(警送会社IR資料等よりNRI推計)≒500億円

ユーザー財産犯のうち現金被害額 900 警察庁「犯罪白書」

偽造紙幣被害 0.1 警察庁「偽造通貨の発券枚数」よりNRI推計

合計 16,390

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1日に3

回より多い

1日に3

回程度

1日に2

回程度

1日に1

回程度

2~3日

に1回程

1週間に

1回程度

1ヶ月に

1回程度

行っていな

い回答数

レジ現金残高の確認作業(レジ1台あたり) 11% 17% 33% 33% 0% 0% 1% 4% 529

売上データの集計作業 5% 5% 12% 70% 0% 1% 3% 3% 528

銀行などでの現金両替作業 0% 0% 3% 28% 24% 24% 9% 12% 525

つり銭をレジに準備する作業 2% 3% 13% 68% 3% 3% 2% 5% 528

売上金(現金)を銀行口座に入金する作業 0% 1% 0% 56% 21% 12% 2% 9% 530

その他 5% 0% 5% 21% 5% 0% 2% 63% 43

現金決済の社会コスト <現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果より>

95%の企業において、毎日1回/台以上のレジ現金残高確認作業が発生している。

レジで現金を取り扱う業務の現状

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

1.9

1.3

0.4

1.1

0.7

0.5

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

レジ現金残高の確認作業

売上データの集計作業

銀行などでの現金両替作業

つり銭をレジに準備する作業

売上金(現金)を銀行口座に入金する作

その他

1日あたり平均回数

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現金決済の社会コスト <現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果より>

「レジ現金残高の確認作業」に、最も時間が費やされている。

レジで現金を取り扱う業務の現状

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

0分以上5分未満

8%

18%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

19%

10分以上15分未満

10%

120

分以上

1%

60分以上120

分未満

8% 9%

30分以上60分未満

27%

レジ現金残高の確認作業(レジ1台・1日あたり)

平均値 25分/日・台

中央値 20分/日・台

0分以上5分未満

14%

11%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

14%

10分以上15分未満

6%

120

分以上

15%

60分以上120

分未満

2%

18%

30分以上60分未満

20%

レジ現金残高の確認作業(1店舗・1日あたり)

平均値 153分/日・店

中央値 30分/日・店

(N=456)(N=456)

0分以上5分未満

20%

18%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

8%

10分以上15分未満

10%

120

分以上

4%

60分以上120

分未満

12%

8%

30分以上60分未満

20%

売上データの集計作業(1店舗・1日あたり)

平均値 23分/日・店

中央値 15分/日・店

(N=456)

レジ台数を加味

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現金決済の社会コスト <現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果より>

(参考)その他の現金関連業務にかかる作業時間

レジで現金を取り扱う業務の現状

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

0分以上5分未満

55%

12%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

6%

10分以上15分未満

3%

120

分以上

0%

60分以上120

分未満

16%

2%

30分以上60分未満

7%

銀行などでの現金両替作業(1店舗・1日あたり)

平均値 8分/日・店

中央値 4分/日・店

0分以上5分未満

24% 24%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

9%

10分以上15分未満

6%

120

分以上

0%

60分以上120

分未満

29%

1%

30分以上60分未満

7%

つり銭をレジに準備する作業(1店舗・1日あたり)

平均値 10分/日・店

中央値 6分/日・店

(N=456)(N=456)

0分以上5分未満

33%

18%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

8%

10分以上15分未満

9%

120

分以上

1%

60分以上120

分未満

16%

2%

30分以上60分未満

13%

売上金(現金)を銀行口座に入金する作業

(1店舗・1日あたり)

平均値 14分/日・店

中央値 10分/日・店

(N=456)

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現金決済の社会コスト <現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果より>

企業規模が小さいほど、現金関連作業コストの負担割合は大きく、従業者50人未満の企業では、現金関連の作業人件費が売上全体の0.51%を占める。

従業者数100人以上の企業(N=227) 0.14%

従業者数50人以上100人未満の企業(N=105) 0.27%

従業者数50人未満の企業(N=90) 0.51%

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート(2018年1月)よりNRI推計

売上高に占める現金関連作業コスト(人件費)の割合 (従業者数規模別)

(前提条件)・作業時間×作業頻度の積和(アンケート回答)を人件費換算し算出。・対象とした現金関連作業は以下。-レジ現金残高の確認作業-売上データの集計作業-銀行などでの現金両替作業-つり銭をレジに準備する作業-売上金(現金)を銀行口座に入金する作業

・単純平均ではなく売上高加重平均による算出値。

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現金決済の社会コスト

業務が100%キャッシュレス化されるまで無くならない固定コストも存在する。

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

80%20%

キャッシュレス比率

60%40%

コスト減衰率

100%0%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

キャッシュレス比率

100%20%0% 80%60%40%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

120%

140%

キャッシュレス比率

100%80%60%40%20%0%

(1)キャッシュレス比率とコストがほぼ比例するコスト

(3)業務が100%キャッシュレス化すれば無くなる固定コスト

(2)固定コストと変動コストのハイブリッド型

• 警送会社委託費(現金輸送・ATM現金補填、ATM監視)

• 金融機関窓口人件費(接客・伝票処理・出納)

• レジ締め作業• ATM機器(ハード/ソフト)• ATM設置手数料• 銀行券製造委託費• 貨幣製造コスト

• 紙幣鑑別機• 出納機・システム• レジ(キャッシャー)• 自動券売機• 計数機• ATM事業運営経費• 警送会社委託費(売上回収)• 偽造紙幣損害

キャッシュレス比率とコストの連動性 (1企業や1店舗におけるコスト連動性のイメージ)

コスト項目

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現金決済の社会コスト

現金決済のコストに関する事業者からのコメント

• キャッシュレス化の効果として、「セルフレジの普及による人手不足解消」が流通業からは期待されている。

• 加えて、警送会社に委託している入金機サービス(売上金集金、つり銭手配)の費用減もキャッシュレス化の効果となる。同サービスを利用している企業では、コスト負担が大きくとも従業員の安全を守るために必要な投資としてみなされている。

インタビュー結果

• キャッシュレス化には、人手不足の解消効果を期待している。例えば新店舗のオープン時には十数人のアルバイトが必要になるが、現在の環境では7~8人しか集まらず、労務面で店長に大きな負担がかかっている。ピーク時間帯に必要となる人員数に合わせて総スタッフ数(採用数)が決まるため、ピーク時の業務が減らせればインパクトは大きい。キャッシュレス化が十分進めばセルフレジを普及せることができ、この問題点の解消に寄与すると考えている。(小売業)

• 現金がなくなるのは、非常によいことと考えている。理由は、入金機サービスの利用コストがなくせることと、つり銭の間違いが無くなること。当社は繁華街の店舗が多いため、夜間金庫は従業員の安全のために使わないようにし、警送会社と契約し、入金機を設置している。利用料は1店舗あたり月間3万円。つり銭準備サービスもこの費用に含まれている。 自分達でやると1時間はかかるので、入金機サービスの効果は大きい。現金の取扱いが減れば、つり銭準備の頻度が減り、契約金額も抑えることができる。現在警送会社に来てもらう頻度は週3回だが、この頻度を減らすこともできるだろう。(飲食業)

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新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果

キャッシュレス化による経済効果項目

# キャッシュレス化の効果分類 成長(創造)・効率化される市場(経済効果項目)

1 少額の決済・送金(マイクロペイメント)が低コストで可能となる<経済性>

電子決済市場の成長 CtoC送金市場の成長

2 その場ですぐに支払が完了する<迅速性>

3 犯罪被害を避けやすい<安全性>

盗難・特殊詐欺・横領被害の減少

4 家計・法人のフロー・ストック情報が可視化される<透明性><情報収集性>

家計資産運用の活性化 会計・経理業務の効率化 広告、販売促進業務の高度化 法人融資の高度化 脱税の抑制

5 使い道等の管理統制が可能<コントロール性>

社会給付(生活保護や災害支援等)の効率化

6 両替が不要となる<国際性>

外国人観光客による消費支出増

出所)キャッシュレス化の効果分類は『キャッシュレス革命2020』をもとにNRI作成

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新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果

想定される経済効果の推計結果

経済効果項目キャッシュレス化が寄与する経済効果項目

経済効果分類

キャッシュレス化が寄与する経済効果の推計ロジック

経済効果推計額

参考市場規模

企業

1.電子決済市場の成長 電子決済事業者収入 事業者収益 電子決済事業者収入(1.3兆円)×キャッシュレス化比率の成長余地 (20%→40%の2倍に成長)=約1.3兆円

約1.3兆円 ・電子決済取扱高(口座振替、振込除く):73兆円(2017

年,NRI)・クレジットカード業務,割賦金融業務の営業収入額約1.3兆円(平成27年特定サービス産業実態調査)・口座振替取扱高:数十兆円規模。事業者収入:数百~千億円規模(推計値)

2.CtoC送金市場の成長 銀行送金の代替 消費者余剰 銀行送金手数料 324円×既存利用者10億件/年×新手段移行率80%

=約2600億円

約2600億円 ・銀行間送金件数 14.7億件/年(全国銀行協会,2016年度)⇒自行内送金の追加、BtoB送金の控除を行い、CtoC銀行送金は10億件/年と推計(NRI)・銀行を介さない送金は2兆円(推計値)

3.広告、販売促進の高度化

広告投資対効果の向上 事業者収益 (広告宣伝費 5.7兆円×デジタル化割合 50%

+販売促進費 4.8兆円×デジタル化割合 20%)×投資対効果向上効果 30%

×キャッシュレス化の寄与割合10%

=約1100億円

約1100億円 ・広告宣伝費 5.7兆円(2016年度,日経広告研究所)・販売促進費 4.8兆円(2016年度,日経広告研究所)

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新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果

想定される経済効果の推計結果

経済効果項目キャッシュレス化が寄与する経済効果項目

経済効果分類

キャッシュレス化が寄与する経済効果の推計ロジック

経済効果推計額

参考市場規模

企業

4.法人融資の高度化 借り手の金利低下 消費者余剰(法人)

短期運転資金融資規模(80兆円)×平均金利(1%)×トランザクションレンディングによる金利削減率(20%(20bp))×キャッシュレス化寄与割合(10%)=約160億円

約160億円 ・銀行・信金による法人貸出残高約500兆円(2017年3月,日本銀行) ⇒金利収入は約5兆円・新たな融資モデル(トランザクションレンディング等)の現状市場は微小

5.法人会計・経理業務の効率化

経理業務削減 費用削減 経理部門人員 148万人×1人あたり労務費 500万円×業務のシステム化による削減ポテンシャル(30%)×キャッシュレス化の寄与割合(10%)=約2200億円

約2200億円 ・会計業務従事者148万人(2015

年,国勢調査)⇒人件費 7.4兆円(1人あたり労務費500万円換算)

6.外国人観光客による消費支出増

訪日外交人による消費支出

消費支出 訪日外国人4000万人(2020年目標)×キャッシュレス化による消費額増効果(271ドル,VISA調査)=約1.2兆円

約1.2兆円 ・訪日客旅行消費額 4.4兆円(2017年,観光庁)

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新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果

想定される経済効果の推計結果

経済効果項目キャッシュレス化が寄与する経済効果項目

経済効果分類

キャッシュレス化が寄与する経済効果の推計ロジック

経済効果推計額

参考市場規模

家計 7.家計資産運用の活性化

株式・投信保有比率増による家計所得増効果

家計収支向上

家計金融資産 1845兆円×株式・投信保有比率 19%

×期待リターン 2.94%

×キャッシュレス化による活性化効果 26%増(1.26倍)=約2.7兆円

約2.7兆円 現状の株式・投資信託による家計の期待リターン 10兆円(NRI

推計)

行政 8.社会給付(生活保護や災害支援等)の効率化

意図しない生活保護支出の削減(適切な支出への振替)

消費支出 -(※右記の参考市場規模の提示のみ)

・生活保護費 3.8兆円(H29予算)・生活保護不正受給 170億円(H27実績,厚生労働省)

9.盗難・特殊詐欺・横領被害の減少

盗難・特殊詐欺・横領被害額の削減

家計収支向上

財産犯のうち現金被害額が、ネットバンキングの不正送金被害額(十数億円規模)に減少=約900億円

約900億円 ・財産犯の被害額のうち、現金被害額 911億円(2016年,警察庁)・クレジットカード不正利用額142億円(2016年,日本クレジット協会)・ネットバンキングの不正送金被害額 14億円(2016年,警察庁)

10.脱税の抑制 申告漏れ所得税の削減 税収増 -(※右記の参考市場規模の提示のみ)

事業所得(営業所得+農業所得)の補足率は69%(「真の課税対象所得」12.8兆円に対して、「実際の課税対象所得」は8.8兆円(JRIレビュー 2016 Vol.5))

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新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果

経済効果の推計における前提条件

キャッシュレス化が主たる要因ではないと想定される経済効果項目のうち下記の項目については、キャッシュレス化の寄与割合として10%を乗じた金額を、キャッシュレス化の経済効果として算出した。

広告、販売促進の高度化

▪ 広告、販売促進の業務やチャネルをデジタル化させる情報技術が主たる要因になる経済効果項目であり、キャッシュレス化は主たる要因ではない。

法人融資の高度化

▪ 新たな融資モデル(トランザクションレンディング等)の確立が主たる要因になる経済効果項目であり、キャッシュレス化は主たる要因ではない。

法人会計・経理業務の効率化

▪ インターネットバンキングの利用拡大や、事業者が提供する法人会計・経理業務サービスの利便性向上が主たる要因になる経済効果項目であり、キャッシュレス化は主たる要因ではない。

キャッシュレス化が主たる要因ではないと想定される経済効果項目のうち下記の項目については、キャッシュレス化の寄与による効果を個別推計した。

家計資産運用の活性化

▪ 資産運用経験者の割合(NRI生活者一万人アンケート(金融編))は、キャッシュレス決済利用者(28.3%)が全体平均(22.4%)と比べて1.26倍高くなっていることから、キャッシュレス決済による寄与分は「資産運用経験者を現状の1.26倍にする効果」であると推計した。

上記以外の項目については、潜在的経済効果の全量がキャッシュレス化によるものであるという前提で算出を行った。

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新たなサービス展開を踏まえた将来的な経済効果

経済効果に関するその他の参考事例

Moody’s Analytics社による研究事例では、日本におけるキャッシュレス決済比率が1%増加することで、GDPが0.0170%増加、消費支出が0.0281%増加する弾力性があると推計されている。(”The Impact of Electronic Payments on Economic Growth” Moody’s Analytics, 2016)

上記の推計結果から、日本の名目GDPおよび消費支出に対するキャッシュレス化の経済効果は、

キャッシュレス決済比率が1%増加する毎に・名目GDP 約930億円増加・消費支出 約840億円増加

と推計される。※名目GDP は546兆円(2017年実績)、消費支出は297兆円(2017年民間最終消費支出実績)を基準として算出

出所) ”The Impact of Electronic Payments on Economic Growth” (Moody’s Analytics, 2016)よりNRI推計

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

① FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算

②小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査

③我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

(3)総括

付属資料

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査 調査サマリー

アンケート回答企業の約9割がキャッシュレス決済を導入している一方、利用者のキャッシュレス決済比率は40%に留まっている。

キャッシュレス決済が導入されている店舗であっても、現金を選択する消費者の方が多い実態にあることがアンケート調査から確認された。

消費者の利用状況(現金・キャッシュレス決済の売上高構成比)

小売・サービス事業者の導入状況

現金決済比率

キャッシュレス決済比率(カード決済・電子マネー等の合計値)

約60%

約40%

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

※事業者からのアンケート回答(519社)における単純平均値※キャッシュレス決済未導入企業による回答も含む

※事業者からのアンケート回答(519社)における比率

キャッシュレス決済“未導入”企業

キャッシュレス決済“導入”企業

約10%

約90%

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査 調査サマリー

導入企業(アクセプタンス)拡大の障壁は、決済手数料が最も大きい。

アンケート調査による検証結果キャッシュレス決済導入(アクセプタンス拡大)

の障壁仮説

仮説1「決済手数料が高い」

キャッシュレス未導入の理由は「決済手数料が高いから(31%)」が最も多かった。

仮説2「端末導入コストが高い」

アンケート回答企業の大半(7割超)において、決済端末の導入費用は0円であった。

カード会社や決済代行会社による端末コストの負担が広く行われている状況とみられる。

仮説3「支払後の資金化までのタイムラグ」

キャッシュレス決済未導入の理由として資金回収サイクルが遅い点を挙げる企業は5%に留まり、大きな導入障壁とはなっていない

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

アンケート調査回答企業の9割がキャッシュレス決済を導入。

キャッシュレス決済の導入状況(N=575)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

85%

45%

51%

26%

37%

38%

8%

カード決済

商品券・プリペイドカード(自社発行型)

商品券・プリペイドカード(第三者発行型)

J-debit(Jデビット)

電子マネー

銀聯

QRコード決済

上記のキャッシュレス決済手段を1種類以上導入している企業の比率:89%

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

カード決済が売上高に占める割合は平均22%。現金が6割を占めている。

現金・キャッシュレス決済の売上高構成比(N=519) ※回答社数での単純平均値

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

61%

22%

3%

3%

2%

6%

2%

1%

現金

カード決済

商品券・プリペイドカード(自社発行型)

商品券・プリペイドカード(第三者発行型)

J-debit(Jデビット)

電子マネー

銀聯

QRコード決済

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

カード決済導入企業における手数料率の平均値は3.09%、中央値は3.00%。

カード決済の手数料率(N=304)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

平均値 3.09%中央値 3.00%

1%

8%

17%

20%

25%

7%

11% 11%

1% 0.3%0.3%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

キャッシュレス決済の導入によって、一部企業では客数・客単価増効果が得られている。

キャッシュレス決済の導入よる店舗の売上増効果(N=440)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

客数の増効果 客単価の増効果

平均増効果 +2.1% 平均増効果 +1.6%

38%

5%

3%

5%

1%

2%

2%

45%

客数は変わっていない

客数が1%~2%程度増えている

客数が3%~4%程度増えている

客数が5%~6%程度増えている

客数が7%~9%程度増えている

客数が10%~19%程度増えて…

客数が20%以上増えている

効果は分からない

39%

7%

3%

3%

1%

2%

1%

45%

客単価は変わっていない

客単価が1%~2%程度増えている

客単価が3%~4%程度増えている

客単価が5%~6%程度増えている

客単価が7%~9%程度増えている

客単価が10%~19%程度増…

客単価が20%以上増えている

効果は分からない

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

未導入理由は「決済手数料が高いから(31%)」が最も多い。

キャッシュレス決済を導入していない理由 (N=62)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

キャッシュレス決済を導入した決め手(理由) (N=513)

64%

31%

27%

11%

11%

9%

6%

5%

4%

2%

2%

0%

お客様のニーズがあったから(日本人)

売上向上効果が見込めるから

同業他社も導入しているから

お客様のニーズがあったから(外国人)

現金支払いに関する作業・費用を減らしたいから

レジで支払いにかかる時間が現金より早いから

システム投資が安い(不要)であるから

セキュリティ面で安心であると判断できたから

理由はわからない

決済手数料が安いから

キャッシュレス決済に興味・関心があったから

現金支払いが不衛生であるから

31%

23%

19%

16%

10%

5%

5%

5%

3%

3%

3%

2%

2%

0%

決済手数料が高いから

自社の商品や取引の形態と合わないから

お客様のニーズが少ないから(日本人)

初期投資(端末、システムなど)が高いから

売上向上が見込めないから

資金回収サイクルが長いから

キャッシュレス決済に興味・関心がないから

理由はわからない

売上向上効果が不透明であるから

レジで支払いにかかる時間が現金より遅いから

キャッシュレス決済のことが分からないから

お客様のニーズが少ないから(外国人)

セキュリティに不安があるから

決済端末の操作が分からない/覚えられないから

※最大3つを選択 ※最大3つを選択

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

【サンプル数少(N=23)のため参考】カード決済「未導入」企業が求める手数料率水準

「どのくらいの決済手数料率であれば、導入してもよいとお考えか、お答えください。」(N=23)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

平均値 1.2%中央値 1.0%

13%

0%

65%

0%

9%

13%

0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

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小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査<アンケート調査分析>

決済専用端末の保有企業は、その大半が端末を無償で導入している。

決済端末保有企業における1台あたり機器購入費用 ※周辺機器費用やキャッシュバック等も考慮した実質的な初期費用

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

平均値 4.5万円中央値 0万円

82%

3% 0%

9%2% 2% 2% 2%

電子マネー決済端末(N=66)

73%

9% 9% 7%1% 1% 0% 0%

カード決済端末(INFOX、JET-S端末等)(N=164)

平均値 2.0万円中央値 0万円

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

① FinTechサービス普及の前提条件の改善による経済効果の試算

②小売等店舗におけるキャッシュレス決済対応に係るコスト構造の調査

③我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

(3)総括

付属資料

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(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査調査概要

目的

• 産業界から金融事業への進出やそこからの派生的な取組など、我が国における広義のFinTechとして捉えうる事例について調査を行い、産業界がデジタル化(情報技術活用等)によって実現を目指す金融サービスの将来像を導出するとともに、将来像の実現に向けた課題や制度面への期待事項を明らかにする。

調査のアプローチ

• 国内の主要産業を代表する事業者へのインタビューを通じて、各社がデジタル化(情報技術活用等)によって目指す将来像や、その実現に伴って想定される「金融機能」の変化、実現に向けた課題を分析した。

• 具体的には、小売業、製造業、通信業、決済代行業、保険業の各業種における主要事業者において、新たな金融サービスの企画・戦略立案等を行っている担当者に対してインタビューを行い、そこで得られたコメントをもとに取りまとめを行った。

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

調査結果サマリー

• 主要産業を代表する事業者は、「顧客基盤、顧客接点、および顧客に紐づく情報を事業に活用することが、戦略上重要な位置づけにある」という共通の見解を持っている。

• 非金融業の事業者にとっての「金融サービス」は、経営戦略上現在も重要な位置づけにあり、今後、新たな金融サービスを開発・推進していく将来像が展望されている。

情報技術の活用を通じて目指す将来像

将来像の実現に向けた課題

①規制へ対応するためのコスト軽減• 各種業法の登録事業者となるために要する期間の縮小• 商品開発の認可における規制当局との調整期間・工数の縮小

②金融インフラの利用コスト軽減• 金融機関とのAPI接続にかかる投資負担コストの低減

③消費者意識の変化• 便利や安心など、新たな消費者体験の創出• パーソナルデータの活用に対する消費者の許容

④金融サービスおよび関連する周辺サービスの規制緩和• 依拠による本人確認の多様化(犯罪収益移転防止法)• 少額の金融商品提供に関する規制(金融商品取引法)• 保険業における商品規制(保険業法)• 景品表示法における20%ルール(景品表示法)• 自動車検査登録制度の手続き簡素化・デジタル化

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

情報技術の活用を通じて目指す将来像

• 主要産業を代表する事業者は、「顧客基盤、顧客接点、および顧客に紐づく情報を事業に活用することが、戦略上重要な位置づけにある」という共通の見解を持っている。

インタビュー結果

• お客様に安全、安心、便利の価値を提供するためには、自社独自でサービスを開発していきたい。お客様に関するデータの活用は、サービスの開発・提供上においても重要となる。(決済代行業)

• 自動車を所有する時代からシェアする時代に移り始めている中で、自社・自グループで収集可能な情報の価値と活用方法の検討を行っている。サービスの提供内容は、他社との協調よりも、自社ビジネスの将来の全体像を固めることが先と考えている。規格統一などの、インフラ部分での協調は考えられる。(製造業)

• 顧客データの活用については、大きく2つ行いたいことがある。1つは購買データと外部データからお客様の嗜好性を分析し、商品提案を1to1で行っていくこと。当面はスマートフォンデバイス上でのプロモーションが中心になると考えている。もう1つは、通常のPOSデータからは見えない、その店のお得意様にとって重要度が高い商品(いつも購入するもの)を特定し、その商品の陳列を維持することで顧客離反を避けること。(小売業)

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

情報技術の活用を通じて目指す将来像

• 非金融業の事業者にとっての「金融サービス」は、経営戦略上現在も重要な位置づけにあり、今後、新たな金融サービスを開発・推進していく将来像が展望されている。

インタビュー結果

• 大手のAmazon,楽天,ヤフーなどは既に決済機能を自前化し決済代行サービスが不要な環境にあり、決済代行業としては厳しい事業環境にある。そのため、当社も会員サービスを通じた独自の経済圏を作る必要があると考えている。(決済代行業)

• 店舗という場の提供だけではなく、自前で金融サービスを仕掛けていくことを想定。投資、保険、決済領域に着目して検討している。(小売業)

• 自動車から収集したデータを活用し、サービス事業者が必要な機能をAPIで提供するといった事業アイディアを検討している。たとえば、保険商品の開発などでの領域が活用が候補になる。(製造業)

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

将来像の実現に向けた課題

①規制へ対応するためのコスト軽減• 各種業法の登録事業者となるために要する期間の縮小• 商品開発の認可における規制当局との調整期間・工数の縮小

インタビュー結果

• 各金融サービスの業法について、1つ1つの規制が非常に重たいということはないが、登録制であっても実質は許認可制に近い状況で、ライセンスを取るために半年から1年といった期間を要してしまう点は問題。(小売業)

• 保険商品を開発していく中で、従来商品にはないカテゴリーの商品、新しいスキームの商品を導入しようとする場合、認可申請にあたっては、金融庁向けにどのような商品であるか、保険業法との関係で抵触しないのか十分な説明が必要となり、相当の期間を要することがある。先進技術に対応した商品のように、スピード感を持って「まずやってみる」ことが難しいケースもありうる(保険業)

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

将来像の実現に向けた課題

②金融インフラの利用コスト軽減• 金融機関とのAPI接続にかかる投資負担コストの低減

インタビュー結果

• 銀行APIの利活用も行いたいと考えているが、金融機関と1社1社個別の契約をしないと利用ができず、接続のためのコストもかかることから、API利用企業にとって、コスト競争力が出せない仕組みなってしまっている。この1つのシステムに接続すればよいという、社会インフラが整備されれば良いが、現在はそのようになっていない。金融機関が自社独自のデータを開放したくないというは尤もであり、小売業の立場としてもPOSデータの社外提供はしたくない。難しい問題だが、例えば、お客様がインターネットバンキング等で現在取得できている範囲の情報に限って、(顧客の同意を前提に)全ての事業者が等しく利用できるような社会インフラが整うと、金融サービスの作りやすさは大きく向上する。(小売業)

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

将来像の実現に向けた課題

③消費者意識の変化• 便利や安心など、新たな消費者体験の創出• パーソナルデータの活用に対する消費者の許容

インタビュー結果

• 来店客の8割は現金決済。キャッシュレス化が徐々に進んでいる実感はあるが、税金面等でのインセンティブがあると、キャッシュレス化はより加速していくと考えている。キャッシュレス決済は、心理的ハードルを越えて1回使ってみることが大事だと考えている。(小売業)

• Alipayの事業モデルは大いに参考になり、これを国内でも展開していきたい。一方で、日本はマイナンバー普及率がまだ低く、個人番号が広く使われている中国と比べて、顧客データの利活用に対して国民の心理的障壁は大きい。「サービスが便利だから、自分のデータを企業が利活用することも許容する」という風に、お客様の理解が得られるようにならなければいけない。(小売業)

• 自動車から得られるカーナビ情報では、「あと何分で目的地(具体的な場所)につく」という情報が得られることから、当該情報を用いて、お客様に喜ばれる情報提供を行うことが考えられる。一方で、実務レベルの話となると、個人情報関連の規制が制約になり、なかなか難しい。(製造業)

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我が国での広義のFinTechの潜在的市場に関する調査

将来像の実現に向けた課題

④金融サービスおよび関連する周辺サービスの規制緩和• 依拠による本人確認の多様化(犯罪収益移転防止法)• 少額の金融商品提供に関する規制(金融商品取引法)• 保険業における商品規制(保険業法)• 景品表示法における20%ルール(景品表示法)• 自動車検査登録制度の手続き簡素化・デジタル化

インタビュー結果

• 犯罪収益移転防止法の規制により、別会社であれば別々に本人確認をすることが求められていることから、弊社通信事業で実施した本人確認に依拠して金融事業者が本人確認作業を効率化する、ということができない(通信業)

• 当社のように、多くの店舗と顧客接点(来店者)を実店舗でもつ業態が、「まず一度金融サービス利用する」体験をお客様に提供することには価値があると考えている。一方で、金融商品は少額に限定した投資であっても金融商品取引業の登録が必要であるため、実現には至っていない(小売業)

• 日本における損害保険の団体契約は、第1類から第4類までの類型があるが、最も規制が少ない第4類でも、会長と会費が存在している団体であることが必須要件となっており、Friendsurance社が提供しているグループ保険サービスは、現行の団体契約の枠組みでは認められない。(保険業)

• 今後、サイバーセキュリティに関する保険商品ニーズに対応していく上では、保険商品を単体で提供するのではなく、ウィルス対策ソフトやサイバーセキュリティサービスに保険を付帯することが有望と考えられる。その一方で、景品表示法上、商品に付随するおまけとしての補償サービスは商品価格の20%相当が上限となる。サイバー保険とウィルス対策ソフトの価格比率から考えると、付帯保険サービスの提供をした際に景品表示法に抵触する懸念があると認識している。(保険業)

• 自動車検査登録制度においては、リース契約変更のたびに使用者の名義変更が必要で、その都度各地の運輸局に出向かなければならない。シェアリングエコノミーの流れの中で、カーシェア等の利活用が増えていくと考えられるので、名義変更周辺も柔軟な手続きが求められるようになる。(製造業)

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

(3)総括

付属資料

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総括

• わが国において、現金決済に関する社会コストは1兆円超と推計され、また、キャッシュレス化の推進による潜在的経済効果(家計所得の向上、消費者余剰、電子決済関連産業の成長等)は、6兆円以上に上ると推計される。

• わが国における非金融事業者にとって、経営戦略上「金融サービス」は現在も重要な位置づけにあり、今後、新たな金融サービスを開発・推進していく将来像が展望されている。

• このような中、FinTech普及の前提となる環境整備に向け実現すべき課題として「①規制へ対応するためのコスト軽減」「②金融インフラの利用コスト軽減」「③消費者意識の変化」「④金融サービスおよび関連する周辺サービスの規制緩和」が挙げられる。

わが国におけるFinTech普及の前提となる環境整備

に向けた課題

• キャッシュレス化を主導する国単位での体制としては、政府が主導しながら、協議体等の形態で決済インフラのステークホルダー間の利害調整および官民協調を図ったものが多く、上記課題の解決に向けて、わが国においても同様の取り組みを実施・継続していくべきである。

• また、金融インフラ(システム等)に関する仕様の共通化や政府主導による共同利用基盤の構築など、諸外国において政府機関が強い関与を行っている事例は、わが国においても参考にすべきである。

諸外国の政府取組状況からみた、わが国の課題解

決へ向けた示唆

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

(3)総括

付属資料

現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果

事業者インタビュー結果

参考市場データ

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

現金・キャッシュレス決済に関する調査 調査概要

調査対象企業小売流通業、主要サービス業(外食業、レジャー・宿泊業、その他サービス業)

調査対象サービス店舗を通じて行われる物品販売およびサービス提供(電子商取引など、非対面の決済は含まない)

調査方法 郵送アンケート調査

調査実施期間 2017年12月~2018年1月

送付先数 4000社

回収サンプル数 575社

3%

23%

18%

32%

9%10%

4%2%

0%

22%25%

29%

8% 7% 7%

1%

24%21% 21%

14%

11%

5%4%

売上高(N=559)

従業者数(N=564)

店舗数(N=548)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)※アンケート送付先条件は従業者数30人以上

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1日に3

回より多い

1日に3

回程度

1日に2

回程度

1日に1

回程度

2~3日

に1回程

1週間に

1回程度

1ヶ月に

1回程度

行っていな

い回答数

レジ現金残高の確認作業(レジ1台あたり) 11% 17% 33% 33% 0% 0% 1% 4% 529

売上データの集計作業 5% 5% 12% 70% 0% 1% 3% 3% 528

銀行などでの現金両替作業 0% 0% 3% 28% 24% 24% 9% 12% 525

つり銭をレジに準備する作業 2% 3% 13% 68% 3% 3% 2% 5% 528

売上金(現金)を銀行口座に入金する作業 0% 1% 0% 56% 21% 12% 2% 9% 530

その他 5% 0% 5% 21% 5% 0% 2% 63% 43

現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

95%の企業において、毎日1回/台以上のレジ現金残高確認作業が発生している。

レジで現金を取り扱う業務の現状

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

1.9

1.3

0.4

1.1

0.7

0.5

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

レジ現金残高の確認作業

売上データの集計作業

銀行などでの現金両替作業

つり銭をレジに準備する作業

売上金(現金)を銀行口座に入金する作

その他

1日あたり平均回数

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

「レジ現金残高の確認作業」に、最も時間が費やされている。

レジで現金を取り扱う業務の現状

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

0分以上5分未満

8%

18%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

19%

10分以上15分未満

10%

120

分以上

1%

60分以上120

分未満

8% 9%

30分以上60分未満

27%

レジ現金残高の確認作業(レジ1台・1日あたり)

平均値 25分/日・台

中央値 20分/日・台

0分以上5分未満

14%

11%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

14%

10分以上15分未満

6%

120

分以上

15%

60分以上120

分未満

2%

18%

30分以上60分未満

20%

レジ現金残高の確認作業(1店舗・1日あたり)

平均値 153分/日・店

中央値 30分/日・店

(N=456)(N=456)

0分以上5分未満

20%

18%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

8%

10分以上15分未満

10%

120

分以上

4%

60分以上120

分未満

12%

8%

30分以上60分未満

20%

売上データの集計作業(1店舗・1日あたり)

平均値 23分/日・店

中央値 15分/日・店

(N=456)

レジ台数を加味

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

(参考)その他の現金関連業務にかかる作業時間

レジで現金を取り扱う業務の現状

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

0分以上5分未満

55%

12%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

6%

10分以上15分未満

3%

120

分以上

0%

60分以上120

分未満

16%

2%

30分以上60分未満

7%

銀行などでの現金両替作業(1店舗・1日あたり)

平均値 8分/日・店

中央値 4分/日・店

0分以上5分未満

24% 24%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

9%

10分以上15分未満

6%

120

分以上

0%

60分以上120

分未満

29%

1%

30分以上60分未満

7%

つり銭をレジに準備する作業(1店舗・1日あたり)

平均値 10分/日・店

中央値 6分/日・店

(N=456)(N=456)

0分以上5分未満

33%

18%

5分以上10分未満

15分以上20分未満

20分以上30分未満

8%

10分以上15分未満

9%

120

分以上

1%

60分以上120

分未満

16%

2%

30分以上60分未満

13%

売上金(現金)を銀行口座に入金する作業

(1店舗・1日あたり)

平均値 14分/日・店

中央値 10分/日・店

(N=456)

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

店舗の売上規模が大きいほど、現金関連作業のコスト効率が良い。

0.001

0.010

0.100

1.000

10.000

1,000,000100 10,000

売上高(百万円)

現金関連作業コスト 売上高比(%)相関係数 r = -0.50

0.001

0.010

0.100

1.000

10.000

1,000,00010,0001001

現金関連作業コスト 売上高比(%)

1店舗あたり売上高(百万円)

相関係数 r = -0.72

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート(2018年1月)

売上規模×「現金関連作業コスト 売上高比」 の関係性(N=426)

(注)現金関連作業は以下の合計。-レジ現金残高の確認作業-売上データの集計作業-銀行などでの現金両替作業-つり銭をレジに準備する作業-売上金(現金)を銀行口座に入金する作業

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

レジ1台あたりの現金残高確認作業時間は、売上規模・店舗規模と無相関である。

店舗のコスト(作業時間)削減のためには、現金を取り扱わない(または残高確認の必要がない)レジを増やすなど、現金確認作業自体を減らすことが必要。

0.1

1.0

10.0

100.0

1,000.0

1 100 10,000 1,000,000

レジ1台あたりの現金残高確認作業時間(分/日・台)

売上高

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート(2018年1月)

相関係数 r = -0.01

0.1

1.0

10.0

100.0

1,000.0

1,000,00010,0001001

レジ1台あたりの現金残高確認作業時間(分/日・台)

1店舗あたり売上高(百万円)

相関係数 r = 0.05

売上規模×現金関連作業コスト の関係性(N=426)

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

企業規模が小さいほど、現金関連作業コストの負担割合は大きく、従業者50人未満の企業では、現金関連の作業人件費が売上全体の0.51%を占める。

従業者数100人以上の企業(N=227) 0.14%

従業者数50人以上100人未満の企業(N=105) 0.27%

従業者数50人未満の企業(N=90) 0.51%

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート(2018年1月)よりNRI推計

売上高に占める現金関連作業コスト(人件費)の割合 (従業者数規模別)

(前提条件)・作業時間×作業頻度の積和(アンケート回答)を人件費換算し算出。・対象とした現金関連作業は以下。-レジ現金残高の確認作業-売上データの集計作業-銀行などでの現金両替作業-つり銭をレジに準備する作業-売上金(現金)を銀行口座に入金する作業

・単純平均ではなく売上高加重平均による算出値。

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

回答企業全体の約9割がカード決済を導入。加えて、プリペイドカード・電子マネー・銀聯など複数の決済手段が導入されている。

キャッシュレス決済の導入状況

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

1.現在導入

している2. 知らない

3.知っている

が、導入を検討

したことはない

4.導入を検

討したが、契約

条件(手数料

など)の確認は

していない

5.導入検

討、契約条件

(手数料な

ど)の確認をし

たが、導入しな

かった

6. 過去に導

入していたが、

現在は導入し

ていない

回答数

カード決済

(VISA,MasterCard,JCB,A

MEXなど)

88% 1% 7% 0% 3% 1% 555

商品券・プリペイドカード

(自社発行型) 46% 5% 38% 1% 5% 3% 543

商品券・プリペイドカード

(第三者発行型) 53% 3% 35% 1% 6% 2% 548

J-debit(Jデビット)

27% 8% 52% 1% 5% 3% 541

電子マネー

(Suica,Edy,iD,QUICPay,

nanaco,WAONなど)

38% 3% 44% 4% 10% 1% 548

銀聯

40% 21% 33% 1% 4% 1% 548

QRコード決済(Alipay(アリ

ペイ)、WeChatPay(ウィー

チャットペイ)など)

8% 24% 57% 4% 4% 0% 542

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

カード決済が売上高に占める割合は平均22%。現金が6割を占めている。

現金・キャッシュレス決済の売上高構成比(N=519) ※回答社数での単純平均値

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

61%

22%

3%

3%

2%

6%

2%

1%

現金

カード決済

商品券・プリペイドカード(自社発行型)

商品券・プリペイドカード(第三者発行型)

J-debit(Jデビット)

電子マネー

銀聯

QRコード決済

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

カード決済導入企業における手数料率の平均値は3.09%、中央値は3.00%。

カード決済の手数料率(N=304)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

平均値 3.09%中央値 3.00%

1%

8%

17%

20%

25%

7%

11% 11%

1% 0.3%0.3%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

キャッシュレス決済の導入によって、一部企業では客数・客単価増効果が得られている。

キャッシュレス決済の導入よる店舗の売上増効果(N=440)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

客数の増効果 客単価の増効果

平均増効果 +2.1% 平均増効果 +1.6%

38%

5%

3%

5%

1%

2%

2%

45%

客数は変わっていない

客数が1%~2%程度増えている

客数が3%~4%程度増えている

客数が5%~6%程度増えている

客数が7%~9%程度増えている

客数が10%~19%程度増えて…

客数が20%以上増えている

効果は分からない

39%

7%

3%

3%

1%

2%

1%

45%

客単価は変わっていない

客単価が1%~2%程度増えている

客単価が3%~4%程度増えている

客単価が5%~6%程度増えている

客単価が7%~9%程度増えている

客単価が10%~19%程度増…

客単価が20%以上増えている

効果は分からない

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

未導入理由は「決済手数料が高いから(31%)」が最も多い。

キャッシュレス決済を導入していない理由 (N=62)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

キャッシュレス決済を導入した決め手(理由) (N=513)

64%

31%

27%

11%

11%

9%

6%

5%

4%

2%

2%

0%

お客様のニーズがあったから(日本人)

売上向上効果が見込めるから

同業他社も導入しているから

お客様のニーズがあったから(外国人)

現金支払いに関する作業・費用を減らしたいから

レジで支払いにかかる時間が現金より早いから

システム投資が安い(不要)であるから

セキュリティ面で安心であると判断できたから

理由はわからない

決済手数料が安いから

キャッシュレス決済に興味・関心があったから

現金支払いが不衛生であるから

31%

23%

19%

16%

10%

5%

5%

5%

3%

3%

3%

2%

2%

0%

決済手数料が高いから

自社の商品や取引の形態と合わないから

お客様のニーズが少ないから(日本人)

初期投資(端末、システムなど)が高いから

売上向上が見込めないから

資金回収サイクルが長いから

キャッシュレス決済に興味・関心がないから

理由はわからない

売上向上効果が不透明であるから

レジで支払いにかかる時間が現金より遅いから

キャッシュレス決済のことが分からないから

お客様のニーズが少ないから(外国人)

セキュリティに不安があるから

決済端末の操作が分からない/覚えられないから

※最大3つを選択 ※最大3つを選択

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

【サンプル数少(N=23)のため参考】カード決済「未導入」企業が求める手数料率水準

「どのくらいの決済手数料率であれば、導入してもよいとお考えか、お答えください。」(N=23)

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

平均値 1.2%中央値 1.0%

13%

0%

65%

0%

9%

13%

0%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

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現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査分析

決済専用端末の保有企業は、その大半が端末を無償で導入している。

決済端末保有企業における1台あたり機器購入費用 ※周辺機器費用やキャッシュバック等も考慮した実質的な初期費用

出所)現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査(2018年1月)

平均値 4.5万円中央値 0万円

82%

3% 0%

9%2% 2% 2% 2%

電子マネー決済端末(N=66)

73%

9% 9% 7%1% 1% 0% 0%

カード決済端末(INFOX、JET-S端末等)(N=164)

平均値 2.0万円中央値 0万円

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

(3)総括

付属資料

現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果

事業者インタビュー結果

参考市場データ

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金融機関における現金関連する窓口業務の実態インタビュー結果(大手金融機関A社)

金融機関における現金関連の業務コスト

現金関連業務コスト削減に向けた課題

インタビューコメント

• 現金取扱い業務がなくなることでの店舗人件費削減効果は、大規模店舗では最大20%程度~小規模店舗では最大50%程度と見込む。

• 現金取扱い事務としては、預入・引出、出納、ATMへの現金補填作業等がある。• 現金を扱わない窓口業務(融資、口座開設、相談など)はキャッシュレス化の恩恵を直接受ける

ものではない。また、お客様への対応以外の内部事務量も多い。

• 「職員が現金を取り扱わない(お客様と機械の間でのみ取り扱う)」ようになれば、管理職のコスト削減が行え、大きなコスト削減効果が得られる。不祥事の大半は、匿名性が高い現金を介して行われているため、不祥事リスク対策のために、複数の管理職員を店舗に配置し牽制を利かせている。そのため、小規模店舗の場合は、窓口事務員よりも管理職員コストの方が大きくなっている。

• 当面は現金がなくならないと想定し、現金取扱い業務を効率化するための機器導入・システム化を推進する。

• 一定以上の大きさの店舗ではオープン出納システム、小型店舗では紙幣硬貨入出金機を用いて現金事務の効率化を図っている。

• わざわざ入出金を窓口で行うお客様は、ATMに不慣れなケースに加え、ATMではできないことを窓口で依頼したいという理由も多い。例えば、振込や入出金による現金の使い道を「コメント」としてお客様が記帳時に申し出て、窓口事務員が通帳の摘要欄に入力し、お客様は家計簿代わりに通帳を利用している。このようなお客様に対しては、通帳を代替するサービス・ソリューションを提供しなければ窓口事務量の削減は見込めない。

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金融機関における現金関連する窓口業務の実態インタビュー結果(大手金融機関B社)

金融機関における現金関連の業務コスト

現金関連業務コスト削減に向けた課題

インタビューコメント

• 標準的な支店規模(15人程度)において、入出金、両替、現金装填、ATMメンテナンス業務を合計し、概ね3人換算(全体の2割)程度が現金に関する業務に従事している。

• 現金、手形・小切手、税金は伝統的な金融機関店舗の3大業務であり、業務コストの観点から極力なくしていきたい。また、業務自体をなくせない場合は、銀行員が業務を行わないよう、外部委託等の変動費化を進めたい。

• B2Bでの現金ニーズは両替用途を除き、極めて限定的。現在、夜間金庫を置いている支店はほとんどなく、主要なターミナル程度。

• 出納システムは、通常の支店には1台ずつ存在する。出納システムのハードとしてのコストは、通常のもので800-900万円/台程度。約3割の店舗ではそれよりも小型の機種を導入しており、600万円/台程度。

• 現金輸送業務に関してもコストがかかっているが、全体的なコストとしては、輸送に比べて窓口業務が圧倒的に多い。

• キャッシュレスと直接つながらないが、手形・小切手についても、コストと手間がかかっており、なるべく電子化したい領域である。

• 日本はATMが至るところにあるため、消費者にとって現金以外を持つ動機付けが弱い。• キャッシュレスを進めるには、一定の規格に合わせることで「店舗側が現金決済を断れるようにする」ことが必

要であろう。• 銀行のサービスにコストがかかるということが、世間でなかなか認知されていない。例えば、通帳の再発行は

無償対応しており顧客にコストを転嫁していない。両替サービスについても、一定枚数以下は当行口座保有者以下であれば無償である。

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金融機関における現金関連する窓口業務の実態インタビュー結果(現金出納機器メーカーC社)

現金関連の業務コスト

キャッシュレス化に向けた課題

インタビューコメント

• 個人商店であれば直接金融機関に現金を持ち込むだろうが、チェーン店の流通は多くが警送会社への委託を行っている。コストが高いという声は聞くが、警送業者が多数の事業者のニーズに対応することで一定のスケールメリットが効いていると考えている。

• 日銀では支店別受払高を公表しているが、警送業者のセンターの場所が変わるとこの受払高が大きく変動する。警送業者が現金流通に与えている影響は大きいと考えられる。

• 入金機について、昔は大型だけだったのが、いまは小型への買い替えが進んでいる。オートキャッシャー(紙幣効果入金機)についても、標準機だけではなく、小型のものを近年つくるようになっている。

• 両替機について、両替手数料の有料化を進める金融機関や、両替機を置かない金融機関が増えている。

• 通貨流通高に占める1万円札の金額割合は88%を占めている。仮に1万円札を廃止したら、キャッシュハンドリングコストが上がることでキャッシュレス化が進むだろう。

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小売・サービス業における現金・キャッシュレス決済の実態

酒場,ビヤホール/キャッシュレス決済未導入/従業員数:160人 店舗数:8店舗

お客様の決済手段が現金からキャッシュレス決済に変化していくことは望ましいか

キャッシュレス決済を導入していない理由

インタビューコメント

• 現金がなくなるのは、非常によいことと考えている。理由は、「入金機サービスの利用コストがなくせることと、つり銭の間違いが無くなること。」

• 繁華街の店舗が多いため、夜間金庫は従業員の安全のために使わないようにし、警送会社と契約し、入金機を設置している。利用料は1店舗あたり月間3万円。つり銭準備サービスもこの費用に含まれている。自分達でやると1時間はかかるので、入金機サービスの効果は大きい。

• 現金の取扱いが減れば、つり銭準備の頻度が減り、契約金額も抑えることができる。現在警送会社に来てもらう頻度は週3回だが、この頻度を減らすこともできるだろう。

• メインバンクの系列カード会社や飛び込み営業が、2,3年に1回程度来訪する。• 決済手数料が最大の障壁。営業担当者からは3%といわれるが、1%の水準である必要がある。カード会

社の営業担当者からは7,8%程度客単価があがる と説明を受けるが、当社は低価格を強みにサービス提供しているため、利益率水準的に、決済手数料をカバーすることはできない。

• その他の未導入理由としては、以下のものが挙げられる。・客単価が1000円程度の店舗形態なので、クレジットカードを使うニーズは少ないのではないかと感じている。・設置場所がなかなか取れない。・機器トラブルになった際に解消に時間がかかると、お客様の回転率が命の業態のため、大きな問題となる。

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小売・サービス業における現金・キャッシュレス決済の実態

総合スーパー/キャッシュレス決済導入/従業員 2500人 店舗数 60店

お客様の決済手段が現金からキャッシュレス決済に変化していくことは望ましいか

キャッシュレス決済に対する不満点、要望

インタビューコメント

• キャッシュレス決済のコストを考慮すると、企業の立場としては現金の方がよい。• ただし、レジのオペレーションはキャッシュレスの方が優れているし、高齢のお客様によっては、カード決済の方

が待たずに良いという意見も頂いている。• クレジットカード利用はこの1年で15%増加。一昨年度は25%増加していた。時代の流れだと感じてい

る。• 現在、セミセルフレジを導入しているが、クレジット決済の比率がそのおかげで上がっている実感はない。

元々使っていた方がセミセルフレジでも使っていると認識している。• 入金機による売上金回収と両替準備サービスを、各店舗に導入。1店舗あたり5万円/月程度を要して

いるが、売上高に占める割合はキャッシュレス決済よりもずっと低く、大きなコスト負担とは感じていない。銀行に売上金を持っていくことはリスクが高く、従業員を危険にさらさないために必要経費として入金機を導入している。

• 現金に関連するコストとしては、レジ締め等の業務時間の他、つり銭が万一不足した際に銀行に両替にいく工数などがある。そのほかに、決済スピードやレジ待ち時間によるお客様をお待たせしている点も隠れたコストであると考えている。

• 電子マネーについては、交通系電子マネーしか導入できていないが、クレジットカード決済よりも手数料率が高い。チャージ機、ポイント交換機の機器導入費も当社負担であり大きい。

• カード決済の手数料率は、クレジットカード会社に見直しを依頼して下げてもらっている。他業種と比べるとスーパーマーケットは手数料率が安いといわれるので、大きな不満はない。

• お客様の動向に関すること(データ分析や販売促進、協同キャンペーン提案など)や、IC化に関する制度関連の情報提供など、色々な提案と情報提供をカード会社には期待している。

• カード決済導入に対して売り上げ増のメリットは期待していないが、お客様あたりの単価が若干増えた効果は認識している。

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小売・サービス業における現金・キャッシュレス決済の実態

そば・うどん店/キャッシュレス決済導入/従業員 80人 店舗数 3店舗

お客様の決済手段が現金からキャッシュレス決済に変化していくことは望ましいか

キャッシュレス決済に対する不満点、要望

インタビューコメント

• 特にキャッシュレス決済が良い・悪いというほどの差異はない。• カード決済は繁栄会(商店街組合)からの紹介があって、平成6年に導入した。現在は、クレジット決済

と銀聯を導入しているが、決済手数料は、当社にとってはそこまでの負担ではないし、訪日外国人への対応上、カード決済は必須と考えている。

• カード決済の利用は確実に増えてきている。特に、海外のお客様がここ2年間増えてきていることが要因となって、昨年度と今年度で客数ベースのカード決済はほぼ倍増している。

• 入金機は導入しておらず、全て当社で売上金を管理して銀行に入金を行っている。現金の扱いに関して目立った支出はない。

• あまり金額の割合が多くなると、レジの2度打ちがなくなるようにしたい。時間がかかることよりも打ち間違いが起きることが問題。

• 現在は決済専用端末を導入しているが、大手事業者のPOSのように、金額を自動連動させるには、システム投資費用がかかるが、これがもっと安くなって欲しい。

その他の経営課題

• 海外旅行者の予約(ホテル経由含む)は、以前は半数近くはキャンセルとなっていたので、大きな問題であり、席の確保も実質的に行わないようにしていた。当社の業態(蕎麦屋)の場合は、コース料理のような事前準備はないので、キャンセル料を頂く必要はないため、幸い大きな問題とはなっていない。現在は、予約可能な時間帯を短くして、予約無しの来店客を優先するようにしている。

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小売・サービス業における現金・キャッシュレス決済の実態

美容業/キャッシュレス決済導入/従業員 40人 店舗数 5店舗

お客様の決済手段が現金からキャッシュレス決済に変化していくことは望ましいか

キャッシュレス決済に対する不満点、要望

インタビューコメント

• カード決済は手数料がかかるため、正直なところ利用をして欲しくない。• 導入当初は、カード決済の利用額は月間30万~40万円程度だったが、徐々に現在は売上の約25%、

月に300万円~400万円程度の利用がある。お客様にはポイント還元もされるため、良いサービスになっているが、加盟店としての手数料負担は気になっている。

• 現金による売上は、メインバンク(地方銀行)の営業担当者が直接受け取りに来てくれるため、当社としては事務負荷がかかっていない。また、おつりの手配は、銀行店舗や郵便局で行っているが、大きな事務負荷とはなっていない。

• 今後、日本はキャッシュレス化の方向に進んでいくだろうと感じている。スウェーデンの取り組みにあるような、生体認証による支払が将来的には実現されるのではないだろうか。

• 店舗に現金を置く必要がなくなる世界に一挙に移行できるのであれば、業務負荷も軽減され、お客様も便利になると考えている。

• カード決済の機能・サービスは、現在提供されているもので十分。• 手数料負担が最も大きな不満である。期待する手数料水準は1%。カード決済の利用率が高いほど手数

料が安くなる仕組みがあれば、お客様へ利用を促しやすくなるだろう。• カード名義人情報がレシートに印字されないカードが稀にあり、予約者氏名とカード決済の伝票の突合せ

を行う際にやや不便を感じている。

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小売・サービス業における現金・キャッシュレス決済の実態

旅館,ホテル/キャッシュレス決済導入/従業員:50人 店舗数:1店舗

お客様の決済手段が現金からキャッシュレス決済に変化していくことは望ましいか

キャッシュレス決済に対する不満点、要望

インタビューコメント

• 総じて、カード決済は手数料分の価値があり、現金決済よりもカード決済の方が望ましい。• 現金のお支払をもらうと、レジの締め処理作業や、銀行から集金に来てもらう手間がかかっている。また、金額の差

異があった場合、なぜ差異があったのかを調査する作業を行っているため、これに工数がかかっている。カード決済では、金額を二度手打ちしているが、お客様にも確認をいただいているので、金額の間違いはほぼ起きていない。

• 現金売上の入金は、週1回、銀行の方が集金に来てくれているが、先方にもこちらも対応する工数がかかるし、経理担当者等限られた人間でしか対応できない点が問題である。

• カード決済は、JTB協定旅館ホテル連盟の一括契約を通じて加盟している。カード決済された代金も、入金確認後に銀行口座の移動をする処理は発生しているが、銀行員による集金とは異なり、「この時間にやらなければいけない」業務ではないため、日々の空き時間に作業できていることから、負荷には感じていない。

• カード決済は、10年ほど前に導入したが、この5年間ほど、利用が急に伸びている。特に、一昨年リニューアルに伴って客単価が上がったため、ここ1,2年は年間倍増のペースで増えてきている。

• 決済端末は、JTB旅行連から1台を無償貸与されている。2台目は実費負担があり数万円で購入をした。

• 不満点は、決済処理にかかる時間である。通信処理時と、お客様が暗証番号入力・サインをする工程で時間がかかっている。「暗証番号入力の依頼を案内し、お客様が暗証番号を忘れてしまっているためサインへの誘導をする」ケースがよくあるが、この時間のロスが大きく、お客様の行列ができてしまいやすい。一定金額以下なら暗証番号入力やサインが不要になることが望ましい。

• また、カード伝票を売上と突合し、定期的にカード会社に送る作業に手間がかかっている。データ通信をしているのだから、控え伝票を送付するというアナログの処理は、不要なのではないかと思っている。

• インターネットでの事前決済がされれば、追加料金がない限り現地での精算が不要になるため、お客様にとっても我々にとってもスマートに決済ができる。インターネットでの事前決済は増えているので、一層利用が拡大して欲しい。

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(1)諸外国におけるFinTechサービス普及の環境整備に関する事例調査

(2)我が国におけるFinTechサービス普及の環境整備等に関する調査

(3)総括

付属資料

現金・キャッシュレス決済に関するアンケート調査結果

事業者インタビュー結果

参考市場データ

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銀行券製造コスト

銀行券の製造費は約500億円/年である。

平成28年度の日本銀行の銀行券製造費は518億円、銀行券製造計画量(国立印刷局納入量)は30億枚。

銀行券製造経費は銀行券製造計画量と概ね相関がみられる(相関係数は、0.783)。

出所)日本銀行「損益計算書(各年度)」国立印刷局「事業報告書(各年度)」

日本銀行の銀行券製造費と銀行券製造計画量の推移

518517515480483499502509

527531556

617647641

30.030.030.031.531.5

33.033.033.033.033.035.0

40.840.8

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

550

600

650

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

26年度 28年度27年度19年度 25年度23年度 24年度21年度 22年度20年度18年度16年度 17年度

34.0

15年度

(億円) (億枚)

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貨幣製造コスト

貨幣製造コストは約150億円/年である。貨幣製造枚数の減少とほぼ比例して減少する。

平成28年度の貨幣製造経費は148億円。

固定費、変動費を合わせた貨幣製造経費は貨幣製造枚数と概ね相関があり(相関係数は、0.861)、平成15

年比で7割程度に落ち込んでいる。

(百万枚)(百万円)

出所)財務省「貨幣の製造に係る事業の概要」造幣局「貨幣に関するデータ 年銘別貨幣製造枚数」

※貨幣製造経費は年度別、年銘別貨幣製造枚数は年別であることに留意

貨幣製造経費と貨幣製造枚数

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

22,000

24,000

26,000

28,000

15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度

変動費(原材料費)

変動費(その他)

固定費(労務費)

固定費(経費)

固定費(その他)

1,318 1,288

1,205 1,189 1,172

1,043

853

813

738

951

849

1,002 990 962

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1,000

1,100

1,200

1,300

1,400

年銘別貨幣製造枚数

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現金のライフサイクルと主体毎のコスト

ATMの設置運営に係る費用(市場規模)は年間約7000億円の規模

コスト項目 社会コスト推計(暫定値)

出所

ATM機器(ハード/ソフト) 年間2500億円 主要ATM機器製造業者の売上高をもとにNRI推計。

ATM設置料 年間1620億円 NRI推計。国内ATM設置台数 20万台×ATM設置支払手数料 81万円/台 (セブン銀行IRデータよりNRI推計)

ATM事業運営経費(人件費含む)

年間1460億円 NRI推計。国内ATM設置台数 20万台×その他役務取引等費用・営業経費 73万円/台 (セブン銀行IRデータよりNRI推計)

警備会社委託費(現金補填、ATM監視)

年間1400億円 NRI推計。国内ATM設置台数 20万台×警備会社業務委託費 70万円/台 (ALSOK社IRデータよりNRI推計)

合計 年間6,980億円

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現金のライフサイクルと主体毎のコスト

国内金融機関における平均的なATM関連コストは、1台あたり約400万円/年と推計。

4,070

1,830

700

810730

ATM関連費用(合計)

その他役務取引等費用・営業経費(人件費など)

ATM設置支払手数料

警備会社業務委託費

ATM機器購入・保守費用

国内金融機関 ATM1台あたり収支(2015年度,千円)

出所)全銀協 決済統計年報における銀行ATM設置台数 136,749台(ゆうちょ銀行含む)と各社決算データよりNRI推計ATM機器購入・保守費用:主要ATM機器メーカー決算情報よりNRI推計警備会社業務委託費:ALSOK社IRデータより、契約1台あたり売上ATM設置支払手数料:セブン銀行IRデータよりその他役務取引等費用・営業経費(人件費など):セブン銀行IRデータより

人件費等除く費用

334万円/台・年 総費用

407万円/台・年

損益分岐ライン

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家計資産運用の活性化効果試算

資産運用活性化による所得増の潜在余地(ポテンシャル)は14兆円、うちキャッシュレス決済が寄与可能な分は、2.7兆円と推計される。

キャッシュレス決済による家計資産運用の活性化(所得増)の余地

資産運用活性化による家計所得増の潜在余地

14.1兆円/年

キャッシュレス決済が寄与可能な家計所得増余地

2.7兆円/年

試算の前提潜在余地:家計金融資産に対する株式・投信比率が19%(現状)から45%(米国同等水準)に成長金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」(第1回)」をもとにNRI試算

キャッシュレス決済が寄与可能な所得増効果:家計金融資産に対する株式・投信比率が19%(現状)から24%に成長キャッシュレス決済未利用者⇒利用による資産運用活性化効果をNRI生活者一万人アンケート(金融編)より推計

所得増効果は、期待リターンを2.94%(税引前)として算出日本国債・日本株式・先進国国債・先進国株式 各25%のポートフォリオを仮定各資産の期待リターン値はJPモルガン・アセット・マネジメント 「Long-Term Capital Market Assumptions」(2017年版)より

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資産運用の活性化効果試算

資産運用が米国並みに活性化した際の所得増効果は約14兆円/年と推計される。

家計金融資産

1845兆円

株式・投信比率向上ポテンシャル

26%(米国現状45%-日本現状19%)

株式・投信残高向上ポテンシャル

480兆円

資産運用の活性化効果試算 (保険・年金による間接保有を含む)

× =

株式・投信残高向上ポテンシャル

480兆円

期待リターン

2.94%/年× =

所得増効果(金融機関手数料控除前)

14.1兆円/年(株式・投信比率 19%⇒45%)

出所)家計金融資産・・・日本銀行資金循環統計株式・投信比率向上ポテンシャル・・・金融庁「家計の安定的な資産形成に関する有識者会議」(第1回)」をもとにNRI試算。期待リターン・・・日本国債・日本株式・先進国国債・先進国株式 各25%のポートフォリオを仮定した例。各資産の期待リターン値はJPモルガン・アセット・マネジメント 「Long-Term Capital Market Assumptions」(2017年版)より

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資産運用の活性化効果試算

キャッシュレス決済の利用者ほど資産運用経験者である割合が顕著に高い

資産運用経験者の割合(キャッシュレス決済利用有無別)

回答者数分布

「キャッシュレス決済利用者」:下記決済手段のいずれかを半年いないに利用した回答者クレジットカードデビットカードビットコインなどの仮想通貨電子マネー・プリペイド(カード)電子マネー・プリペイド(携帯・スマートフォン)インターネットで利用できる電子マネー・プリペイドカード

キャッシュレス決済利用 なし

キャッシュレス決済利用 あり

全体

10代 0.4% 0.0% 0.4%

20代 2.7% 9.3% 6.6%

30代 4.7% 18.2% 15.1%

40代 8.9% 26.7% 22.1%

50代 10.6% 35.1% 28.3%

60代 18.9% 45.8% 34.3%

70代 23.5% 50.0% 33.2%

全年代 12.1% 28.3% 22.4%

資産運用経験 なし

資産運用経験 あり

資産運用経験者割合

10代キャッシュレス決済利用 なし 143 0%キャッシュレス決済利用 あり 117 1 1%

全体 260 1 0%20代

キャッシュレス決済利用 なし 378 7 2%キャッシュレス決済利用 あり 933 86 8%

全体 1311 93 7%30代

キャッシュレス決済利用 なし 291 13 4%キャッシュレス決済利用 あり 1264 263 17%

全体 1555 276 15%40代

キャッシュレス決済利用 なし 322 22 6%キャッシュレス決済利用 あり 975 347 26%

全体 1297 369 22%50代

キャッシュレス決済利用 なし 323 33 9%キャッシュレス決済利用 あり 796 409 34%

全体 1119 442 28%60代

キャッシュレス決済利用 なし 529 114 18%キャッシュレス決済利用 あり 578 463 44%

全体 1107 577 34%70代

キャッシュレス決済利用 なし 522 151 22%キャッシュレス決済利用 あり 234 225 49%

全体 756 376 33%

全年代キャッシュレス決済利用 なし 2508 340 12%キャッシュレス決済利用 あり 4897 1794 27%

全体 7405 2134 22%1.26倍

「全員がキャッシュレス決済利用者」となった場合に、「資産運用経験者を現状の1.26倍」にする押し上げ効果が最大で想定される 出所)NRI生活者一万人アンケート(金融編)2016

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資産運用の活性化効果試算

家計の株式・投信保有比率は19%。米国(45%)の半分未満の水準にある。

家計の株式・投信保有比率(2016年)

14.9%

29.0%

11.6%

29.3%

31.4%

58.8%

51.9%

13.7%

24.4%

25.8%

現金・預金 その他

英国

日本 3.9%

株式・投信 保険・年金

5.2%

米国

枠部分の数値は、間接保有を含めた株式・投信投資割合出所)FRB、BOE、日本銀行資料より、金融庁作成

45.4%

35.7%

18.8%

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リテール金融関連市場規模の比較

464

661

4,500

683

16,778

89,000

726

787

48,000

17,000

2,500

181

68

1,772

800

73

25,000

1,600

少額短期保険 ※少額短期保険業者85社

損害保険

生命保険 520,000

デリバティブ(FX)※大手6社

投資信託

カードローン/キャッシング (銀行+貸金業)

海外送金

後払い※大手1社

個品割賦(ショッピングクレジット) ※大手2社

コンビニ収納代行

オートローン ※大手2社

アパートローン

住宅ローン

口座振替

ネット決済代行

電子マネー

国際ブランドデビット

クレジットカード ※大手19社

コンビニATM ※大手3社

リテール金融市場規模比較(営業収益ベース、2015年度、億円)

決済・販売信用

融資

保険

運用

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各市場規模の定義・算出方法は以下の通り

市場 市場規模(2015年,億円)

数値の出所・算出方法

決済・販売信用 コンビニATM 1,600 大手3社売上高

クレジットカード 25,000 大手19社売上高

国際ブランドデビット 73 決済取扱高3672億円×2%

電子マネー 800 決済取扱高4兆円×2%

ネット決済代行 1,772 ミック経済研究所(主要事業者売上高より拡大推計)

コンビニ収納代行 464 主要事業者(電算システム、ウェルネット)売上高

個品割賦(ショッピングクレジット) 661 主要事業者(オリコ、セディナ)売上高

後払い 68 主要事業者(ネットプロテクションズ)売上高

海外送金 181 NRI推計

口座振替 2,500 NRI推計。50億件/年×50円/件

融資 住宅ローン 17,000 住宅ローン貸出残高(184兆円)よりNRI推計

アパートローン 4,500 全国銀行協会アパートローン残高(2017.10末 22.5兆円)よりNRI推計

オートローン 683 主要事業者(オリコ、ジャックス)

カードローン(銀行+貸金業)、カードキャッシング

16,778金融庁 貸金業関係資料集、日本銀行 個人用カードローンによる貸出金額における貸付残高より。11兆1854億円×15%

運用 投資信託 48,000純資産総額98兆円×平成28年の売れ筋5商品(純資産額ベース)の平均手数料(金融庁ワーキンググループ資料)より

デリバティブ(FX) 787 大手6社の売上高

保険 生命保険 520,000 生命保険協会 損益状況の推移より

損害保険 89,000 金融庁 主要損害保険会社の平成 28 年3月期決算の概要

少額短期保険 726 少額短期保険業者85社の売上高

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二次利用未承諾リスト

平成29年度産業経済研究委託事業(我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討)調査報告書

委託事業名 平成29年度産業経済研究委託事業 (我が国におけるFinTech普及に向けた環境整備に関する調査検討

受注事業者名 株式会社野村総合研究所

頁 タイトル

16政府の広報活動例16Rupayの国内シェア

20BharatQRの対応ブランド一覧

20BharatQRの支払ステップ

26決済インフラに関係する多様な参加者

27Paymの使用手順

31各場面で消費者が選択している決済手段

32スマートネーション構想の戦略マイルストーン

38リクスバンクのホームページに掲載されている現金に関するQ&A

39BankIDの取得手順

39Swishアプリ内の表示画面42中国銀聯の日次取扱金額・件数の推移422017年Q1第三者決済サービスにおける取引シェア

45第三者決済サービス取引規模の推移

51韓国銀行が実施する、釣銭支払の電子マネーチャージのスキーム図

55ベンチマーク調査の例(加盟店手数料率の調査結果)

56NPPのシステム構造

56NPP上で送受信可能なメッセージタイプ

58POS決済における決済手段の取扱額の推移

58非接触型決済の決済額と決済件数

60タンザニアのM-PESAサービスで対応している支払代行先

61ミャンマーInnwa bankとベンチャーが協業したMyanmar Mobile Money