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平成30年度 省エネルギー政策立案のための調査事業 (工場等におけるエネルギーの使用状況及び 管理実態に関する調査事業) 調査報告書 平成31年3月

平成30年度 省エネルギー政策立案のための ... · 由を分析し、改善案についてまとめた。 ③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

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平成30年度

省エネルギー政策立案のための調査事業

(工場等におけるエネルギーの使用状況及び

管理実態に関する調査事業)

調査報告書

平成31年3月

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目 次 第1部 調査の概要 ·························································· 1

第1章 概要 ································································ 1

1.1 調査の目的と内容 ·················································· 1

1.2 調査実施件数 ······················································ 1

1.3 調査期間 ·························································· 2

1.4 調査結果の概要 ···················································· 2

第2章 調査対象の選定 ······················································ 3

2.1 調査対象の選定方法 ················································ 3

2.2 調査実施件数 ······················································ 6

第2部 工場等現地調査の結果 ················································ 7

第1章 調査の方法 ·························································· 7

1.1 事前準備 ·························································· 7

1.2 現地調査 ························································· 10

1.3 判断基準の遵守状況の評価 ········································· 10

1.4 現地調査のまとめ ················································· 12

第2章 調査の結果 ························································· 13

2.1 判断基準の遵守状況(総合評価点) ································・ 13

2.2 判断基準の遵守状況(項目別) ····································· 21

2.3 原単位の推移と悪化要因 ··········································· 29

2.4 原単位の改善策 ··················································· 34

2.5 原単位の算定方法 ················································· 39

2.6 省エネルギー活動状況 ············································· 44

2.7 調査結果の推移 ··················································· 48

第3章 フォローアップ調査の結果 ··········································· 50

3.1 原単位の改善状況の比較 ··········································· 50

3.2 Bクラス停滞又はSクラス転換の直接的な要因 ······················· 50

3.3 Bクラス停滞又はSクラス転換の理由及び背景 ······················· 52

3.4 Bクラス停滞又はSクラス転換の理由のまとめとBクラス停滞の改善策 ・ 54

第4章 原単位管理についての考察 ··········································· 55

4.1 原単位の分母設定の基本的な考え方 ································・ 55

4.2 業種別の原単位の分母の設定方法 ··································· 59

4.3 原単位の分母の見直しの考え方 ····································· 62

第5章 AIを活用した省エネ行動分析 ······································· 64

5.1 AIを活用した分析の目的 ········································· 64

5.2 AI分析のための前提事項 ········································· 64

5.3 AI分析の結果 ··················································· 68

5.4 AI分析結果に基づく今後に向けての検討課題 ······················· 77

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第3部 調査後のまとめ ····················································· 82

第1章 現地調査に関するアンケート調査結果 ································・ 82

1.1 アンケート調査の方法 ············································· 82

1.2 アンケートの回答結果 ············································· 84

第2章 登録調査機関の活用状況に関するアンケート調査結果 ··················· 90

第3章 エネルギー管理士の教育ニーズに関するアンケート調査結果 ············· 94

3.1 アンケート調査の方法 ············································· 94

3.2 アンケートの回答結果 ············································· 95

第4章 調査対象事業者からの意見・ 要望 ····································· 99

4.1 意見・ 要望の集計・ 分析 ··········································· 99

4.2 意見・ 要望の集計・ 分析 ·········································· 100

第5章 判断基準に関する意見の集計・ 分析 ·································· 102

5.1 事業者の意見の集計・ 分析結果 ···································· 102

5.2 調査員の意見の集計・ 分析結果 ···································· 106

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平成30年度省エネルギー政策立案のための調査事業 (工場等におけるエネルギーの使用状況及び管理実態に関する調査事業)

調査報告書

第1部 調査の概要

第1章 概要

1.1 調査の目的と内容

エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下「省エネ法」という。)に基づき指定を受け

た特定事業者又は特定連鎖化事業者(以下「特定事業者等」という。)の中から、平成28年度に

開始された事業者クラス分け評価制度により「Bクラス」に位置づけられた特定事業者等が設置

する第一種及び第二種エネルギー管理指定工場等(以下「指定工場等」という。)を対象として、

「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(以下「判断基準」

という。)の遵守状況及びエネルギー消費原単位(以下「原単位」という。)の悪化要因等を調

査し、指定工場等におけるエネルギー管理及び省エネルギー活動の実態を把握した。

また、過去に工場等現地調査を実施した指定工場等を設置する特定事業者等のうち、事業者ク

ラス分け評価制度により「Bクラス」に位置付けられた特定事業者等が設置する指定工場等及び

過去に「Bクラス」であったが平成29年度提出の定期報告書において「Sクラス」に転じた特定

事業者等に対し、フォローアップ調査を実施し、Bクラス停滞要因等又はSクラスへの転換要因

等の分析等を行った。

更に、事業者クラス分け評価制度により「Bクラス」に位置付けられた事業者で指定工場等を

持たない特定事業者等のうち、省エネ法定期報告書において、工場等判断基準の遵守項目を「整

備(配置、実施)していない」と報告した事業者に対して、工場等判断基準の遵守状況及びエネ

ルギー消費原単位の悪化要因等を調査し、エネルギー管理及び省エネルギー活動の実態を把握し

た。

これらの訪問調査を行うことにより、工場等判断基準等に関する理解を深め、当該事業者に省

エネルギー活動の促進を図った。

さらに、当該調査結果に基づき、指定工場等及び指定工場等を持たない特定事業者等における

エネルギー管理の実態について分析及び評価を行い、今後の省エネルギー施策を検討するための

基礎資料を作成した。

本事業は資源エネルギー庁からの委託により一般財団法人省エネルギーセンター(以下「セン

ター」という。)が実施した。

1.2 調査実施件数

(1)指定工場等

平成 29 年度提出の定期報告書でBクラスとなった特定事業者等の指定工場等のうち、指定第 8

表の評価結果が低いものを中心に選定された指定工場等(325 件)

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(2)フォローアップ調査(指定工場等)

①フォロー(B)

過去に調査を受けた指定工場等を設置する特定事業者等で、平成 29年度提出の定期報告書で

Bクラスとなった事業者の指定工場等(51件)

②フォロー(S)

過去にBクラスであった特定事業者等のうち、平成 29年度提出の定期報告書でSクラスに転

じた事業者の指定工場等(51件)

(3)指定工場等を持たない特定事業者等

平成 29 年度提出の定期報告書でBクラスとなった特定事業者等のうち、指定工場等を持たな

い事業者の原単位の悪化に最も影響を与えた事業所(以下「非指定工場等」という。)(103

件)

総合計 (530 件)

1.3 調査期間

平成30年7月23日~平成31年3月29日

1.4 調査結果の概要

調査結果の概要は以下のとおりである。

①判断基準の遵守状況について評点化した結果は、全工場等の平均で 91.4 点であり、判断基準

は概ね遵守されている。

②判断基準の項目別にみると、事業場(専ら事務所)では「照明設備、昇降機、動力設備」、工場

では「廃熱の回収利用」が他の項目に比べて比較的遵守されていない状況であった。その理

由を分析し、改善案についてまとめた。

③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

工場で 26.0%であった。原単位の悪化要因を分析し、改善案についてまとめた。

④原単位に関する事業者の意識は高く、現地調査において、原単位の算定方法、悪化要因及び

改善策について意見交換を行った。また、原単位の算定方法については、エネルギーの使用

量と密接な関係を持つ値を見直したことがあるかという問いに対して、検討中であると回答

した事業者もあった。

⑤フォローアップ調査の結果、Sクラスに転じた事業者は、Bクラスに停滞している事業者に

比べ、判断基準の遵守状況が改善されており、原単位の見直しや省エネ活動の活性化を図る

とともに、設備の劣化等に対応して高効率設備への更新等の対策を行っていることがわかっ

た。

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第2章 調査対象の選定

2.1 調査対象の選定方法

2.1.1 指定工場等

(1)調査対象

平成 29 年度に提出された省エネ法定期報告書において事業者全体のエネルギー消費原単位の

平成 24~28 年度の 5年度間平均原単位変化が以下のいずれかの要件に合致するため、事業者クラ

ス分け評価制度においてBクラスに位置づけられた特定事業者等を対象とした。

要件 1:事業者全体のエネルギー消費原単位の 5年度間平均原単位が 99%を超えており、かつ、

平成 27 年度及び 28年度の原単位が対前年度比で増加しているもの。

要件 2:事業者全体のエネルギー消費原単位の 5年度間平均原単位が 105%を超えているもの。

(2)調査先の選定方法

上記(1)の特定事業者等、並びに特定事業者等が設置する指定工場等に関する平成 29年度の

省エネ法定期報告書指定第 8 表の報告内容(判断基準の遵守状況)をあらかじめ評価し、その評

価結果が低いエネルギー管理指定工場等を中心に選定された指定工場等を対象とした。

< 備考 >

1. 平成 30年 3月 31 日時点で指定されている指定工場等を抽出対象とした。

2. 平成 28年度、平成 29年度に登録調査機関による適合書面の交付を受けている工場等は抽

出対象外とした。

3. 平成 28年度、29 年度に本現地調査を実施し、調査結果の評価点が 90 点以上であった工場

等を設置する特定事業者等は抽出対象外とした。

4. 1 つの特定事業者等の中で、複数の指定工場等が現地調査対象となる場合、評価点が悪い

上位 5工場等までを調査対象とした。

2.1.2 フォローアップ調査

(1)調査対象

①フォロー(B)

過去に工場等現地調査を受けた指定工場等を設置する特定事業者等のうち、平成 29 年度に提

出された省エネ法定期報告書において、事業者クラス分け評価制度においてBクラスに位置

づけられた特定事業者等を調査対象とした。

②フォロー(S)

過去にBクラス評価であった特定事業者等のうち、平成 29 年度に提出された省エネ法定期報

告書において、事業者クラス分け評価制度においてSクラスに転じた特定事業者等を調査対

象とした。

(2)調査先の選定方法

①フォロー(B)

上記(1)①については、過去に実施した工場等現地調査の評価結果が低い指定工場等を中

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心に選定された指定工場等を対象とした。

< 備考 >

1. 平成 30年 3月 31 日時点で指定されている指定工場等を抽出対象とした。

2. 平成 28 年度、平成 29 年度に登録調査機関による適合書面の交付を受けている工場等は抽

出対象外とした。

3. 平成 28 年度、平成 29 年度に本現地調査を実施し、調査結果の評価点が 90 点以上であった

工場等を設置する特定事業者等は抽出対象外とした。

4. 平成 28年度、平成 29年度に本現地調査を実施し、法執行(立入検査等)を受けた特定事業

者等は抽出対象外とした。

5. 1 つの特定事業者等の中で、複数の指定工場等が現地調査対象となる場合、評価点が悪い上

位 5工場等までを調査対象とした。

②フォロー(S)

上記(1)②については、過去に工場等現地調査を実施したことのある特定事業者等も含め、

BクラスからSクラスに転じた特定事業者等が設置する指定工場等を中心に選定された指定

工場等を調査対象とした。

< 備考 >

1. 平成 30年 3月 31 日時点で指定されている指定工場等を抽出対象とした。

2. 平成 29 年度に登録調査機関による適合書面の交付を受けている工場等は抽出対象外とし

た。

3. 平成 28年度、平成 29年度に本現地調査を実施し、法執行(立入検査等)を受けた特定事

業者等は抽出対象外とした。

4. 1 つの特定事業者等の中で、複数の指定工場等が現地調査対象となる場合、評価点が悪い

上位 5工場等までを調査対象とした。

2.1.3 指定工場等を持たない特定事業者等(非指定工場等)

(1)調査対象

平成 29 年度に提出された省エネ法定期報告書において、事業者クラス分け評価制度においてB

クラスに位置づけられた特定事業者等のうち、指定工場等を持たない特定事業者等を対象とした。

(2)調査先の選定方法

上記(1)の特定事業者等のうち、平成 29年度の省エネ法定期報告書特定第第 8表の報告内容

(判断基準の遵守状況)の中で、「整備(配置、実施)していない」と報告した項目を有する事

業者の中から、特定 8 表の評価が低い事業者、5 年度間平均原単位の悪化率が大きい事業者、複

数年Bクラスの事業者等評価結果が低い特定事業者等を中心に選定された特定事業者等を調査対

象とし、原単位の悪化に最も影響を与えた事業所を事業者に選定していただき、訪問対象とした。

< 備考 >

1. 平成30年3月31日時点で指定されている特定事業者等のうち指定工場等を持たない事業

者を抽出対象とした。

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2. 平成28年度及び平成29年度に登録調査機関による適合書面の交付を受けている特定事業

者等は抽出対象外とした。

3. 平成 29年度に本現地調査を実施し、調査結果の評価点が 80 点以上であった工場等を設置

する特定事業者等は抽出対象外とした。

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2.2 調査実施件数

調査を実施した件数を表 1.2.1 及び表 1.2.2 に示す。

全体で 530 件の事業所の調査を実施した。複数の事業所が対象となった特定事業者等もあるの

で、特定事業者数は 466 件である。

表 1.2.1 調査の実施件数(調査区分別)

調査区分 事業場 注 1、注 2 工場 注 1、注 2 合計

注 3 第一種 第二種 非指定 合計 第一種 第二種 非指定 合計

指定工場等 25 53 - 78 88 159 - 247 325 (271)

フォロー(B) 0 2 - 2 13 36 - 49 51 ( 48)

フォロー(S) 2 4 - 6 10 35 - 45 51 ( 44)

非指定工場等 - - 58 58 - - 45 45 103 (103)

合計 27 59 58 144 111 230 45 386 530 (466)

注 1:「事業場」は、判断基準の「1.専ら事務所その他これに類する用途に供する工場等における

エネルギーの使用の合理化に関する事項」が適用されている事業所、「工場等」は「2.工場

等(1 に該当するものを除く。)におけるエネルギーの使用の合理化に関する事項」が適用

されている事業所を示す。

注 2:「第一種」、「第二種」、「非指定」はエネルギー管理指定工場の指定区分を示す。

注 3:( )は特定事業者数を示す。

表 1.2.2 調査の実施件数(経済産業局別)

経済産業局 指定工場等 フォローアップ

非指定工場等 合計

注1 フォロー(B) フォロー(S)

北海道経済産業局 9 0 1 7 17 ( 17)

東北経済産業局 33 9 1 8 51 ( 44)

関東経済産業局 140 14 29 44 227 (198)

中部経済産業局 46 8 6 11 71 ( 61)

近畿経済産業局 48 7 9 13 77 ( 67)

中国経済産業局 14 4 2 5 25 ( 24)

四国経済産業局 9 2 1 3 15 ( 11)

九州経済産業局 21 6 2 9 38 ( 35)

内閣府沖縄総合事務局 5 1 0 3 9 ( 9)

合計 325 51 51 103 530 (466)

注 1:( )は特定事業者数を示す。

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第2部 工場等現地調査の結果

第1章 調査の方法

1.1 事前準備

1.1.1 技術調査員の選定及び指導

(1)技術調査員の選定方法

センターは、エネルギー管理士又はこれと同等の省エネに関する知識及び経験を有する専門家

をエネルギー使用合理化専門員として登録している。

本調査では、事業所を訪問して現地調査を実施する者として、このエネルギー使用合理化専門

員又は同等の技術と経験を有する者の中から、省エネ法に精通し、かつ工場やメーカー等で 5年

以上の実務経験を持つ者を、遵守事項・禁止事項等を定めた技術調査員規約への同意を得た上で

技術調査員として選定して委嘱し、センター職員とともに現地調査を実施した。

技術調査員の支部別人数を表 2.1.1 に示す。

(2)技術調査員の指導方法

調査実施の公平性・統一性を確保するため、「技術調査員の現地調査実施要領」を、また、判断

基準の解釈の統一性を保持するため、「工場等判断基準の解釈に関する留意点」及び「工場等判

断基準の遵守状況の評価判定方法」等の解説資料を整備した。

これらの内容を周知徹底するため、技術調査員を対象に、工場調査実施説明会をセンターの支

部毎に表 2.1.1 に示す日程にて開催して、説明及び質疑応答を行った。

表 2.1.1 技術調査員数

経済産業局等 センター支部 技術調査員数 技術調査員向け

説明会開催日

北海道経済産業局 北海道支部 6 平成 30 年 9 月 14 日

東北経済産業局 東北支部 8 平成 30 年 9 月 12 日

関東経済産業局 本部 42 平成 30 年 9 月 4 日

中部経済産業局 東海支部 7 平成 30 年 9 月 6 日

北陸支部 7 平成 30 年 9 月 11 日

近畿経済産業局 近畿支部 8 平成 30 年 9 月 13 日

中国経済産業局 中国支部 8 平成 30 年 9 月 14 日

四国経済産業局 四国支部 8 平成 30 年 9 月 6 日

九州経済産業局 九州支部 6 平成 30 年 9 月 21 日

内閣府沖縄総合事務局

合計 100 -

1.1.2 現地調査の協力依頼、日程調整及び事前調査書の作成依頼

(1)事業者への協力依頼

調査対象の事業者に対し、センターから以下の書類を送付して調査への協力を依頼し、調査の

了解を得るとともに、現地調査日の日程の調整を実施した。

①センターからの協力依頼

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②資源エネルギー庁からの協力依頼

③現地調査の対象に選定された事業所

④現地調査日程調査書

⑤現地調査についての事前説明会の開催のご案内

⑥参考資料(事業者クラス分け評価制度、工場等現地調査の実施方針)

(2)事前調査書の記入依頼

調査対象の事業者に対し、以下の事前調査書等の書類を送付し、事前に記入して送付してもら

うよう依頼した。

①現地調査事前調査書

②現地調査事前調査書添付書類(総括表・個票)

③事前調査書記入方法

④参考資料(総括表・個票の記入例、グロス値の考え方、判断基準項目番号記載例等)

⑤調査に当たってのお願い事項

⑥現地調査の進行予定表等

⑦管理標準の例

⑧工場等判断基準の遵守事例集及びよくあるご質問

(3)事前調査書の様式及び記入方法の書類のホームパージへの掲載

事前調査書の記入に関する上記(2)項の書類及び下記1.1.3項の事前説明会の説明用資

料をセンターのホームページに掲載し、閲覧及びダウンロード出来るようにした。

1.1.3 事前説明会の開催

現地調査業務を円滑に進めるために、表 2.1.2 に示すように調査対象の事業者に対して事前説

明会を全国 10ヶ所で合計 11回開催(出席率 93%)し、調査の趣旨、内容及び事前調査書の作成

方法等に関して説明し、質疑応答を行った。

表 2.1.2 事前説明会の開催日及び参加者

地区 開催日 対象事業

者数 注1

出席

事業者数 出席率

出席

人数

北海道 平成 30 年 9 月 13 日 17 14 82% 19

東北 平成 30 年 9 月 11 日 36 33 92% 54

関東(第 1回) 平成 30 年 8 月 30 日 185 162 88% 304

関東(第2回) 平成 30 年 8 月 31 日

中部(東海地区) 平成 30 年 9 月 5 日 53 49 92% 84

中部(北陸地区) 平成 30 年 9 月 10 日

近畿 平成 30 年 9 月 12 日 60 53 88% 105

中国 平成 30 年 9 月 13 日 20 17 85% 26

四国 平成 30 年 9 月 5 日 9 9 100% 19

九州 平成 30 年 9 月 20 日 30 27 90% 44

沖縄 平成 30 年 9 月 18 日 8 8 100% 17

合計 418 372 89% 672

注 1 過去に現地調査を実施したフォロー(B)を除く事業者が対象

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1.1.4 事前調査書等の確認修正

事業者から提出された事前調査書及び総括表・個票については、センターの職員が記載内容を

確認し、必要に応じて修正し、現地調査用の資料とした。なお、記入方法等についての調査先か

らの問合せには、考え方や具体的な計算方法等、詳細に対応することによって、相互理解を図っ

た。

1.1.5 現地調査日程年間スケジュールの作成及び調査員の選定

現地調査日程の年間スケジュールを作成の上、変更の都度、資源エネルギー庁省エネルギー・

新エネルギー部省エネルギー課(以下「省エネルギー課」という。)へ送付し、関係官庁の同行者

を確認した。

現地調査を実施する調査員については、技術調査員 100 名及びセンター職員 17名の合計 117 名

の中から、第一種エネルギー管理指定工場等を中心に、エネルギー使用量や設備の種類が多い工

場等については原則として調査員 2名、それ以外は原則として 1名を選定した。

調査先には現地調査の日時、調査員氏名及び同行者氏名を通知するとともに、調査員及び同行

者には事前調査書及び関連書類を予め送付して事前に内容を確認した上で、現地調査を実施した。

調査員の派遣数を表 2.1.3 に示す。530 件の調査に対し、延べ 582 名が調査員として従事した。

表 2.1.3 調査件数と調査員派遣数

調査対象 調査件数 調査員

派遣数

第一種エネルギー管理指定工場等 138 178

第二種エネルギー管理指定工場等 289 299

非指定工場等 103 105

合計 530 582

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1.2 現地調査

現地調査は、調査員が調査対象の工場等を訪問し、原則としてエネルギー管理企画推進者、指

定工場等の場合はエネルギー管理者(又はエネルギー管理員)及び実務担当者を主体に、都合が

つけばエネルギー管理統括者及び工場等の責任者等の応対により、原則として 10 時から 17 時ま

での間で実施した。

現地では、あらかじめ提出を受けた事前調査書等に基づき、必要に応じて調査先の書面や記録

紙等を閲覧の上、以下の内容についてヒアリングにより調査した。

①全般(工場等の概要、主要エネルギー使用設備等)

②判断基準遵守状況

③原単位の変化状況、悪化又は良化の理由、改善策及び取組状況

④省エネルギー活動の状況

⑤省エネ改善策及び原単位管理等に関する情報提供

⑥意見交換

なお、②判断基準の遵守状況については、主要設備の総括表及び個票に基づいて確認し、総合

評価点算出表によって評点化した。調査範囲は、全エネルギー使用量の概ね 80%程度、又は個票

10 枚程度を目安(ただし原則として予定時間内に調査出来る範囲)とした。

1.3 判断基準の遵守状況の評価

現地調査の結果から、指定工場等の判断基準の遵守状況について、以下のとおり評点化した。

1.3.1 設備ごとの個票による評価

設備ごとの個票により、エネルギー使用設備に適用する判断基準の項目毎に管理標準の設定状

況と遵守状況を以下の基準により「○」、「△」、「×」で評価した。(図 2.1.1 の①参照)

(1)設定状況の評価

当該設備に関係する判断基準の項目が管理標準に反映されているかどうかについて評価

○:反映されている

△:一部反映されている

×:反映されていない

(2)遵守状況の評価

管理標準に定められているとおりに実行されているかどうかについて評価

①「管理又は基準」

○:管理標準で定められている管理又は基準に基づいて行われている

△:一部行われている

×:行われていない

②「計測及び記録」及び③「保守及び点検」

○:管理標準で定められている頻度の 80 パーセント以上の頻度で実施

△:50 パーセント以上 80 パーセント未満の頻度で実施

×:50 パーセント未満の頻度で実施

④「新設に当たっての措置」

前年度に新設・更新された設備について、判断基準で留意事項の規定がある場合に評価

○:当該事項を遵守している

×:遵守していない

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11

1.3.2 個票ごとの評点化

個票ごとに、「○」は 2点、「△」は 1点、「×」は 0点として合計し、当該設備の工場等全体に

対するエネルギー使用割合を掛けて重み付け評価点を計算した。また、同様に、全て○であった

場合の重み付け満点を計算した。(図 2.1.1 の②参照)

図 2.1.1 設備ごとの個票

1.3.3 全体集計

全ての個票の重み付け評価点の合計を、重み付け満点の合計により除して 100 を乗じた値を総

合評価点とした。(図 2.1.2 の①参照)

図 2.1.2 総合評価点算出表

(工場用)

評価点(A) 満点(B)重み付け評価点(D)

重み付け満点(E)

総合評価点

A×C B×C (D/E)×100

(1) 2 24 24 15.4% 369.6 369.6 100.0燃料の燃焼 9 15 16 33.6% 504.0 537.6 93.7

11 7 8 18.3% 128.1 146.4 87.50.0 0.0 #DIV/0!

小計 46 48 67.3% 1001.7 1053.6 95.0

(2-1) 2 15 16 15.4% 231.0 246.4 93.7加熱・冷却 9 23 24 33.6% 772.8 806.4 95.8伝熱 10 24 24 8.6% 206.4 206.4 100.0

11 34 34 18.3% 622.2 622.2 100.012 32 32 1.5% 48.0 48.0 100.0

事業所名:○○会社□□工場 指定工場番号:*******

判断基準の項目設備若しくは

設備群名又は個票番号

エネルギー使用割合(C)

総合評価点算出表 (調査機関用)

11 21 24 18.3% 384.3 439.2 87.512 17 20 1.5% 25.5 30.0 85.0

0.0 0.0 #DIV/0!小計 195 212 97.4% 1807.6 1947.4 92.8

(6-2)  1 14 14 1.9% 26.6 26.6 100.0照明・昇降機 0.0 0.0 #DIV/0!

0.0 0.0 #DIV/0!小計 14 14 1.9% 26.6 26.6 100.0

合計 551 574 5961.9 6218.6 95.8

①全ての個票の重み付け評価点の合計を、重み付け

満点の合計により除して 100 を乗じた値を総合評

価点とした。

合  計 ー ー 24 22 46

2.判断基準の大項目別の評価(調査機関使用欄)

項目番号 評価点小計 満 点 重み付け満点

(1) 24 24 369.6

(2-1) 15 16 246.4

(2-2) 0 0 0.0(3) 23 24 369.6

(4-1) 0 0 0.0(4-2) 0 0 0.0(5-1) 6 6 92.4(5-2) 0 0 0.0(6-1) 21 22 338.8(6-2) 0 0 0.0

合 計 89 92 1416.8

369.6

重み付け評価点

012

80

0.0354.2

0.0

0 0.092.4

0 0.03

46 1370.6

0.00

11 323.4

231.0

該当判断基準項目数

12

個票 (工場用)

個票番号

2

管理標準整理番号

1.判断基準遵守状況の評価

①管理又は基準番 号 設定状況 遵守状況 備     考

(1)①ア 空気比の設定 ○ ○ ○ ○ 管理標準1.24~1.40/実測1.35

(1)①イ 基準空気比の設定 ○ ○ ○ ○ 基準空気比に合致

(1)①ウ 複数の燃焼設備の負荷配分、効率等 ○ ○ ○ ○ 自動制御

(1)①エ 燃料の性状に合わせた燃焼管理 △ △ ○ ○ LPG成分表で管理されている

(2-1)①ア 加熱機器用蒸気の圧力、温度、流量設定等 ○ ○ 非該当 給水余熱なし

(2-1)①キ ボイラー給水の水質管理 ○ ○ ○ ○ 管理表による。管理範囲外値あり

(2-1)①コ 被加熱側熱媒体の圧力・温度・量の設定 ○ ○ ○ ○ 基準0.75~0.8MPa以下

管理標準****,ボイラーメーカー点検表,日報,作業手順書

蒸気ボイラー 430 15.4

内容(管理標準・基準の項目名) 調査員チェック

指定工場番号:*******

エネルギー使用量(kl) エネルギー使用割合(%)設備又は設備群名

②○△×の点数を合計し、エネルギー使用割合を掛

けて重み付け評価点を計算。同様に重み付け満点

を計算。

①判断基準項目

毎に○△×で

評価

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12

1.4 現地調査のまとめ

1.4.1 現地調査報告書の作成

現地調査を実施した調査員が所定の様式及び評価欄に記入した個票等にて報告書案を作成し、

センターが精査の上、現地調査報告書を作成した。

作成した報告書は、月毎にまとめて省エネルギー課へ提出した。

1.4.2 調査先への通知

調査結果については、「総合評価点」、「判断基準遵守状況の評価コメント(優れていると考えら

れる点、改善が望ましい点等)」及び「原単位に関するコメント」等を記入した通知書を作成し、

調査先に送付した。その後、調査先から通知書について問い合わせがあった場合は、対応した。

また、全ての現地調査が終了後、調査結果の概要をまとめ、調査先に送付した。

1.4.3 アンケート調査

(1)調査後のアンケート

調査後、アンケートを実施し、今回の調査による調査先の省エネルギー取り組みへの効果(影

響)及び調査の今後の実施方法に役立つ意見等を確認した。

(2)エネルギー管理士の教育ニーズ調査

エネルギー管理士の資格でエネルギー管理企画推進者、エネルギー管理者又はエネルギー管理

員に選任された者は資質向上講習を受けないので、彼らの教育の機会やニーズを把握し、今後の

省エネルギー施策の基礎資料とするためのアンケートを行うことにより調査した。

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第2章 調査の結果

2.1 判断基準の遵守状況(総合評価点)

2.1.1 総合評価点の概要

現地調査により、判断基準の遵守状況について評点化を実施した事業所 529 件の総合評価点の

結果を表 2.2.1~表 2.2.2 及び図 2.2.1~図 2.2.3 に示す。結果は以下のとおりである。

①全体の平均点は 91.4 点であり、判断基準は概ね遵守されていると考えられる。

②調査区分別にみると、図 2.2.1 のとおり、フォロー(S)が 95.1 点と高く、Sに転じた特定

事業者等の指定工場等は判断基準の遵守状況が良好であった。また、過去に調査を実施して

90 点未満であったフォロー(B)は、92.7 点であり、調査実施後に遵守状況が向上したと考

えられる。一方、非指定工場等は 86.6 点と相対的に低い結果であった。

③事業場と工場の区分では、図 2.2.2 のとおり、事業場が 89.1 点、工場が 92.3 点と工場の方

がやや高かった。

④エネルギー管理指定工場の指定区分では、図 2.2.3 のとおり、事業場、工場とも第一種が第

二種より高く、非指定は相対的に低かった。

表 2.2.1 調査区分別の総合評価点

調査区分 件数 注 1 総合評価点

事業場 工場 全体 事業場 工場 全体

指定工場等 78 247 325 90.7 92.6 92.1

フォロー(B) 2 49 51 93.9 92.7 92.7

フォロー(S) 6 45 51 97.3 94.8 95.1

非指定工場等 57 45 102 85.8 87.6 86.6

合計 143 386 529 89.1 92.3 91.4

注 1:判断基準の遵守状況の評点化を実施した 529 件

図 2.2.1 調査区分別の総合評価点

92.1 92.795.1

86.6

91.4

80

85

90

95

100

総合評

価点

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14

表 2.2.2 指定区分別の総合評価点

指定区分 件数 注 1 総合評価点

事業場 工場 全体 事業場 工場 全体

第一種 27 111 138 93.5 94.0 93.9

第二種 59 230 289 90.2 92.4 91.9

非指定 57 45 102 85.8 87.6 86.6

全体 143 386 529 89.1 92.3 91.4

注 1:判断基準の遵守状況の評点化を実施した 529 件

図 2.2.2 事業場/工場別の総合評価点

図 2.2.3 指定区分別の総合評価点

93.5

90.2

85.8

89.1

94.0 92.4

87.6

92.3

80

85

90

95

100

第一種 第二種 非指定 事業場 第一種 第二種 非指定 工場

事業場 工場

総合評

価点

89.192.3

91.4

80

85

90

95

100

事業場 工場 全体

総合評

価点

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2.1.2 エネルギー使用量と総合評価点

総合評価点のエネルギー使用量に対する分布を図 2.2.4 に示す。また、エネルギー使用量と総

合評価点の範囲ごとの件数を表 2.2.3 に示す。

指定工場等、フォロー(B)及びフォロー(S)については、エネルギー使用量が多いほど、

総合評価点が高い範囲に分布し、エネルギー使用量が少ないほど、総合評価点が低い範囲に分散

している傾向がみられた。

一方、非指定工場等については、エネルギー使用量にかかわらず、総合評価点は分散していた。

図 2.2.4 調査対象事業所の総合評価点のエネルギー使用量に対する分布

表 2.2.3 調査対象事業所の総合評価点のエネルギー使用量に対する分布

年間エネルギー 使用量

点数範囲 1.5千kL未満

1.5千kL以上

3千kL未満

3千kL以上

5千kL未満

5千kL以上

1万kL未満 1 万 kL 以上 合計

90点以上100点未満 67 196 59 37 19 378

80点以上90点未満 36 57 13 5 0 111

70点以上80点未満 10 10 1 0 1 22

60点以上70点未満 14 2 0 0 0 16

60点未満 0 1 1 0 0 2

合計 127 266 74 42 20 529

2.1.3 総合評価点の分布

総合評価点の分布状況を、5 点ごとに区分した範囲の件数により、調査区分ごとの分布を図

2.2.5 に、事業場と工場ごとの分布を図 2.2.6 及び図 2.2.7 に示す。結果は以下のとおりである。

①調査区分別では、全般に 95点以上 100 点未満の範囲に入る件数が最も多く、点数が低くなる

にしたがって件数が減少する同様の傾向を示した。また、点数が高めに分布する傾向はフォ

ロー(S)が最も高かった。

30

40

50

60

70

80

90

100

110

10 100 1,000 10,000 100,000

総合

評価

エネルギー使用量 kL/年

指定工場等・フォロー(B)

・フォロー(S)

非指定工場等

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16

②事業場と工場では、事業場の方が工場よりも点数が低い方に分布しており、その傾向は特に

事業場の非指定にみられた。

図 2.2.5 総合評価点の分布(調査区分別)

図 2.2.6 総合評価点の分布(事業場の指定区分別)

図 2.2.7 総合評価点の分布(工場の指定区分別)

13

136

99

3624

2 8 2 3 1 1

21 188 2 1 15

29

10 4 1 1 14

2815 15 21

4 5 4 6

0

20

40

60

80

100

120

140

160件数

指定工場等

フォロー(B)

フォロー(S)

非指定工場等

数値は件数

1

16

5

12

1 1

4

20

16

68

1 1 1 1 1

4

13

97

12

13 3

5

0

5

10

15

20

25件数

事業場(一種)

事業場(二種)

事業場(非指定)

数値は件数

6

56

33

8 62

7

94

73

33

112

61 3

156 8 9

3 2 1 10

102030405060708090

100件数

工場(一種)

工場(二種)

工場(非指定)

数値は件数

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17

2.1.4 業種別の総合評価点

総合評価点の業種別の平均点及び点数範囲を表 2.2.4 に示す。

平均点は業種により異なり、80.1 点から 97.1 点まで分布している。全体の平均点である 91.4

点よりも平均点が低い業種は最低点が 40 点台や 60 点台等の低いものを含んでいる場合が多く、

平均点が 97.1 点と最も高い「タ.ガス業・水道業」は最低点でも 87.8 点と高めの範囲にあった。

ただし、平均点が低い業種でも最高点は全部の業種で 97 点以上であるので、判断基準を良好に

遵守している工場等は業種によらず存在している。

また、業種ごとの総合評価点の分布状況を、5点ごとに区分した範囲の件数により図 2.2.8 に

示す。多くの業種は 95 点~100 点の範囲が最も件数が多いが、業種によってはそれより低い範囲

に分布している場合もあった。低い範囲への分散の程度は、業種によってやや異なり、概ね、ア

~タの製造部門に比べてチ~ノの業務部門の業種の方が低い範囲に分散する傾向があった。

表 2.2.4 指定工場等の業種別の総合評価点

業 種 注1 業種中分類

番号

件数

注 2

総合評価

点平均

範囲

最低点~最高点

ア.食料品製造業 09 51 90.0 63.4~99.0

イ.飲料・たばこ・飼料製造業・農業 01,10 8 87.7 70.3~97.1

ウ.繊維工業 11 16 90.8 75.3~98.7

エ.木材・木製品・家具・装備品製造業 12,13 5 91.0 80.7~99.7

オ.パルプ・紙等製造業 14 18 92.8 63.9~99.7

カ.印刷・同関連業 15 9 87.2 72.1~98.0

キ.化学工業・石油製品・石炭製品製造業 16,17 48 94.5 72.6~100

ク.プラスチック製品・ゴム製品製造業 18,19 35 92.8 76.1~99.8

ケ.窯業・土石製品製造業・採石業・設備工事業 05,08,21 26 92.1 80.6~99.5

コ.鉄鋼業 22 16 92.7 64.0~100

サ.非鉄金属製造業 23 18 90.7 70.6~98.8

シ.金属製品製造業 24 24 91.9 70.2~100

ス.機械器具・その他の製造業 25,26,27,32 22 93.4 81.2~100

セ.電子部品・電気機械器具等製造業 28,29,30 21 92.4 63.7~100

ソ.輸送用機械器具製造業 31 32 93.6 81.6~100

タ.ガス業・水道業 34,36 10 97.1 87.8~100

チ.情報通信業 37,38,39,41 5 95.1 91.1~99.2

ツ.運輸業 44,47,48 4 96.4 94.7~99.5

テ.卸売業・小売業 52,56,58,60 11 80.1 61.6~99.3

ト.金融業・保険業・不動産業 63,67,69 15 93.7 80.4~99.8

ナ.宿泊業・飲食サービス業 75,76 29 82.4 40.4~100

ニ.生活関連・複合サービス業・娯楽業 78,79,80,87 24 88.3 61.5~99.7

ヌ.教育・学習支援業・学術研究 71,74,81,82 21 92.9 80.3~100

ネ.医療業 83 24 92.4 62.8~99.7

ノ.サービス業(他に分類されないもの) 88,92,95 20 94.1 80.7~100

ハ.公務(他に分類されないもの) 97,98 17 90.0 61.9~100

合計 - 529 91.4 10.4~100

注 1:日本標準産業分類の中分類による。なお、件数が少ない業種は類似業種にまとめた。

注 2:判断基準の遵守状況の評点化を実施した 529 件。

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図 2.2.8(1) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(1)

図 2.2.8(2) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(2)

図 2.2.8(3) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(3)

18

1311

42 2

12

32

1

4 4

7

1

02468

101214161820件数

ア.食料品製造業

イ.飲料・たばこ・飼料製造業・農業

ウ.繊維工業

数値は件数

1

3

1

9

6

21

32 2 2

0123456789

10件数

エ.木材・木製品・家具・装備品製造業

オ.パルプ・紙等製造業

カ.印刷・同関連業

数値は件数

3

28

11

41 1

18

9

3 41

8

12

42

0

5

10

15

20

25

30件数

キ.化学工業・石油製品・石炭製品製造業

ク.プラスチック製品・ゴム製品製造業

ケ.窯業・土石製品製造業・採石業・設備工事業

数値は件数

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図 2.2.8(4) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(4)

図 2.2.8(5) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(5)

図 2.2.8(6) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(6)

3

54

21 1

76

21

22

10

3

6

12

0

2

4

6

8

10

12件数

コ.鉄鋼業

サ.非鉄金属製造業

シ.金属製品製造業

数値は件数

1

9 9

3

1

9

7

21 1

2

12 12

5

12

7

1

0

2

4

6

8

10

12

14件数

ス.機械器具・その他の製造業

セ.電子部品・電気機械器具等製造業

ソ.輸送用機械器具製造業

タ.ガス業・水道業

数値は件数

32

3

12

1

3

12

1 1

9

21

3

0123456789

10件数

チ.情報通信業

ツ.運輸業

テ.卸売業・小売業

ト.金融業・保険業・不動産業

数値は件数

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20

図 2.2.8(7) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(7)

図 2.2.8(8) 指定工場等の業種別の総合評価点の分布(8)

1

7

3

4 4

1

3

2 2

1 1

7 7

1

6

1 1 1

3

8

4

3 3

0123456789

件数

ナ.宿泊業・飲食サービス業

ニ.生活関連・複合サービス業・娯楽業

ヌ.教育・学習支援業・学術研究

数値は件数

11

7

32

12

9

6

122

5 5

12

1 1

0123456789

101112件数

ネ.医療業

ノ.サービス業(他に分類されないもの)

ハ.公務(他に分類されないもの)

数値は件数

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21

2.2 判断基準の遵守状況(項目別)

2.2.1 事業場の判断基準の項目別の遵守状況

事業場の判断基準の項目別の評価点の平均点を、指定区分別に表 2.2.5 及び図 2.2.9 に示す。

結果は以下のとおりである。

(1)全般的な傾向

①指定区分別にみると、概ね各項目とも、評価点が高い順に、第一種、第二種、非指定の順で

あった。

②項目別にみると、「(4)受変電設備、BEMS」、「(5)発電専用設備、コージェネ設備」及び「(6)

事務用機器、民生用機器」が 93 点以上で、比較的遵守されていた。

③一方、「(3)照明設備、昇降機、動力設備」が 82.5 点と最も低く、次いで、(7)業務用機器の

85.6 点が 90 点未満であった。

表 2.2.5 事業場の項目別の評価点

調査区分

判断基準項目

第一種 第二種 非指定 事業場全体

評価件数 平均点 評価件数 平均点 評価件数 平均点 評価件数 平均点

(1)空気調和設備、換気設備 27 94.5 59 91.4 57 82.8 143 88.6

(2)ボイラー設備、給湯設備 16 96.0 47 87.6 15 82.6 78 88.4

(3)照明設備、昇降機、動力設備 27 87.5 55 84.7 55 77.8 137 82.5

(4)受変電設備、BEMS 15 98.0 27 94.5 22 89.8 64 93.7

(5)発電専用設備、コージェネ設備 7 96.4 9 96.3 0 - 16 96.3

(6)事務用機器、民生用機器 2 100.0 5 100.0 20 92.1 27 94.1

(7)業務用機器 10 85.0 24 83.1 27 88.0 61 85.6

注 1:評価件数は、その項目が該当した調査先の件数

注 2:平均点は、各項目における各調査先の評価点の相加平均値

図 2.2.9 事業場の項目別の評価点

50

60

70

80

90

100

評価点

事業場(一種)

事業場(二種)

事業場(非指定)

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22

(2)平均点が高い項目の状況

① (4)受変電設備

・受変電設備は、この設備のもとに事業所の各設備が接続されていることから重要設備であ

り、各事業所とも遵守状況は良好であった。

② (5)発電専用設備、コージェネ設備

・重要な設備であり、遵守状況は良好であった。大震災以降に管理を強化した事業者もあっ

た。

③ (6)事務用機器、民生用機器

・これらの機器は従事者が日常使用する機器であり、不要時の停止等の管理も徹底されてい

ることから遵守状況は良好であった。

(3)平均点が低い項目の状況

① (3)照明設備、昇降機、動力設備

・この項目の評価が低かった事業所では、その理由はほぼ、照度の管理がなされていないこ

とによる。

・また、照度の設定はあっても、計測・記録が不十分であり、実際の照度が把握されていな

い場合も多かった。

・不要時の消灯などは多くの事業場で実施されていたが、JIS の照度基準等を考慮した管理

にまでは意識が及んでいないものと考えられる。

【管理不十分な場合の改善対策】

・JIS では、事務所、商業施設、学校などの施設や作業の種類等に応じた推奨照度が詳細に

規定されているので、これに準じた管理標準を設定し、定期的な計測・記録によって実際

の照度を確認し、過剰な照明を防ぐことで省エネを図ることが出来る。

② (7)業務用機器

・業務用機器は、医療機器、実験装置、厨房機器及びその他の多様な機器を含んでおり、こ

れらは医療、研究、外食提供等の業務の遂行が最優先される傾向が強いので、省エネ管理

まで意識が及ばない場合がある。

・また、エネルギー使用割合が比較的低い事業所では調査対象から除外された場合もあった

ので、実際の遵守状況は調査結果よりも低い可能性がある。

【管理不十分な場合の改善対策】

・業務用機器の省エネを進める方策は、それを使用する部門における省エネの重要性の認識

や機器管理のルール化がまず必要との認識が、調査した多くの事業場で示された。

・そこで、省エネ意識を事業所内で共有することがまず重要である。

・また、具体策として、業務用機器をリスト化して最低限の使用ルールを定めることや、機

器が多数ある場合には、対象機器を選定して管理を徹底する等の方策が考えられる。

(4)その他の項目

① (1)空気調和設備、換気設備

・事業場では主要設備の一つであり、室温の設定等の基本的な管理については、比較的遵守

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23

されていた。

・しかし、空調構成設備の総合効率の管理及び計測・記録等については不十分な場合があっ

た。

・特に、熱源設備について、外気条件の季節変動等に応じた冷温水温度の設定等が不十分な

場合があった。

【管理不十分な場合の改善対策】

・日々の温度管理等も重要であるが、季節変動等を考慮した熱源設備の管理等により、年間

を通じた効率的な運転が可能となるので、省エネの観点からの管理や計測・記録が必要で

ある。

・また、総合効率は老朽化や空調設備内の汚れの進行によっても悪化するので、計測・記録

の結果の推移を把握することも、適切な保守や更新につながることになる。

・老朽化更新を経済的な理由で先送りしている場合でも、効率の低下の進行が定量化出来れ

ば、設備更新の採算性が評価出来る。

・市販の空調設備は年々効率が向上しているので、実際に更新した事業所では省エネに効果

的だったとの意見が多かった。

① (2)ボイラー設備、給湯設備

・空気比の管理標準が未設定の場合や、設定されていても判断基準の別表に記載された基準

空気比を満たしていない場合があった。

・また、管理標準が設定されていても、実測値が設定値を超えたまま処置されていない場合

が散見された。その理由は、保守メーカー任せで無関心、管理値の認識が不十分、老朽化

等のため空気比の調整が困難等である。

・ボイラー設備は保守管理を保守メーカー等の外部業者に委託している場合が多く、保守点

検は実施されているが、管理の主体が外部業者任せとなって、管理する意識が薄くなって

いる傾向がある。

【管理不十分な場合の改善対策】

・空気比の管理値(判断基準の別表に該当する場合はその値)を定め、定期的な計測・記録

によって実際の値を確認し、管理値を外れている場合は燃焼設備を調整することで、過剰

な空気を削減して過剰に使用していた燃料を削減することが出来る。

・老朽化等で空気比の調整が困難である場合には、点検及び必要に応じた補修又は更新が必

要となる。調査先によっては、老朽化更新の機会を利用して最新の高効率ボイラーに更新

することによって、省エネの成果をあげた事例もあった。

・また、保守点検を外部業者に委託している場合は、点検結果等を確認し、管理に役立てる

ことが重要である。

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2.2.2 工場の判断基準の項目別の遵守状況

工場の判断基準の項目別の評価点の平均点を、指定区分別に表 2.2.6 及び図 2.2.10 に示す。

結果は以下のとおりである。

(1)全般的な傾向

①指定区分別にみると、概ね各項目とも、評価点が高い順に、第一種、第二種、非指定の順で

あった。

②項目別にみると、「(2-1)加熱設備等」が 96.5 点「(4-2)コージェネ設備」が 96.9 点と高かっ

た。

③一方、「(3)廃熱の回収利用」が 82.5 点と最も低く、次いで低い順に、「(6-2)照明・昇降機、

事務用・民生用機、「(4-1)発電専用設備」、「(2-2)空調・給湯設備」、「(5-1)放射・伝導等によ

る熱損失防止」が 90 点未満であった。

表 2.2.6 工場の項目別の評価点(平均点)

調査区分

判断基準項目

第一種 第二種 非指定 工場全体

評価

件数 平均点

評価

件数 平均点

評価

件数 平均点

評価

件数 平均点

(1)燃料の燃焼の合理化 97 95.1 185 90.9 34 84.9 316 91.5

(2-1)加熱設備等 105 97.8 207 96.9 37 90.8 349 96.5

(2-2)空調・給湯設備 49 89.0 128 89.5 27 78.9 204 88.0

(3)廃熱の回収利用 94 87.1 160 80.5 24 78.6 278 82.5

(4-1)発電専用設備 6 91.0 3 77.8 1 100.0 10 87.9

(4-2)コージェネ設備 7 100.0 6 93.3 0 - 13 96.9

(5-1)放射・伝導等による熱

損失防止 103 89.8 216 90.0 36 88.5 355 89.8

(5-2)抵抗等による電気損

失防止 32 95.7 64 94.0 16 75.7 112 91.9

(6-1)電動力応用・電気加熱

設備 110 94.0 229 92.5 45 87.8 384 92.4

(6-2)照明・昇降機、事務用・

民生用機器 46 89.6 111 87.3 31 69.4 188 84.9

注 1:評価件数は、その項目が該当した調査先の件数

注 2:平均点は、各項目における各調査先の評価点の相加平均値

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25

図 2.2.10 工場の項目別の評価点

(2)平均点が高い項目の状況

① (2-1)加熱設備等

・概ね遵守されていた。この項目は蒸気などの媒体による加熱等についての温度や量等の管

理が主体であり、製造工程でも重要な因子であることから、比較的管理が出来ていると考

えられる。

・ただし、管理温度の上限値と下限値の両方が明確になっていない場合もあった。省エネの

観点から管理範囲を設定すると、蒸気等の削減につながる可能性がある。

② (4-2)コージェネ設備

・概ね遵守されていた。発電専用設備は工場の各設備に電気を供給する重要設備であるので、

十分管理されていたものと考えられる。ただし、設備があったのは評点化を実施した工場

386 件のうちの 13件と少なかった。

(3)平均点が低い項目の状況

① (2-2)空調・給湯設備

・作業場や工場内事務所で空調設備の管理が不十分である場合があった。また、作業場では

管理は実施しているが、工場内事務所の管理は不十分である場合もあった。

・一方、クリーンルーム等が設置されている場合には、温度、湿度等の項目を細かく管理さ

れていることが多く、工場により差があった。

・また、作業環境の確保の観点から温度は管理されていても、空調設備の総合効率の管理等

が実行されていない場合もあった。

・特に、熱源設備について、外気条件の季節変動等に応じた冷温水温度の設定等が不十分な

場合が散見された。

・また、総合効率を管理するための計測・管理が不足していることもあった。

【管理不十分な場合の改善対策】

50

60

70

80

90

100

評価点

工場(一種)

工場(二種)

工場(非指定)

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・日々の温度管理等も重要であるが、季節変動等を考慮した熱源設備の管理等により、年間

を通じた効率的な運転が可能となるので、省エネの観点からの管理や計測・記録が必要で

ある。

・また、総合効率は老朽化や空調設備内の汚れの進行によっても悪化するので、計測・記録

の結果の推移を把握することも、適切な保守や更新につながることになる。

② (3)廃熱の回収利用

・廃ガスの温度又は回収率の管理標準の設定及び計測・記録が不十分である場合が多かった。

・廃ガスの温度等が設定されていても判断基準の別表に記載された基準温度等を満たしてい

ない場合があった。

・なお、上記の管理不十分な例は、廃熱回収設備が付帯していることが多いボイラーよりも、

工業炉の方が多かった。工業炉は構造が業種や工程により多様であって、設置コスト、設

置スペース又は廃ガスの性状等の制約で廃熱回収設備を設置していない場合もあり、廃熱

回収の視点がやや不足しているためと思われる。

・また、蒸気ドレンの廃熱の回収利用の範囲が未検討で設定されていない場合も散見された。

・廃ガスや蒸気ドレン等の廃熱は熱損失に直結する項目であるが、管理が不十分であった理

由は、燃焼や加熱設備における製品側の管理に主眼が置かれているために、廃ガスや蒸気

ドレン等の付帯項目の管理にまで意識が及んでいないためである。

【管理不十分な場合の改善対策】

・廃ガスについては、廃熱回収設備がある場合には、廃ガスの温度又は回収率の管理値(判

断基準の別表に該当する場合はその値)を定め、定期的に計測・記録することによって、

廃熱を十分回収することが出来るとともに、汚れや老朽化の進行状況が把握出来るので、

適切な保守や老朽化更新につなげることが出来る。

・廃ガスの廃熱回収設備がない場合には、管理値と計測・記録の結果を照合することによっ

て、廃熱回収設備の新設等の改善策を検討する基本データが把握出来る。

・蒸気ドレンの回収利用についても、管理及び計測・記録によって、回収設備がある場合に

は適切な保守や老朽化更新につなげることが出来、回収設備がない場合には、回収利用す

る範囲を検討するための基本データが把握出来る。

③ (4-1)発電専用設備

・発電専用設備を稼働させているのは評点化を実施した工場 386 件のうち 9件と少なく、多

くの工場では遵守されていたが、一部の工場で不十分であったために平均点が低下した。

【管理不十分な場合の改善対策】

・発電専用設備は効率よく稼働させることが重要であり、判断基準に則って管理標準を設定

し、発電効率等を監視しながら最適運転を図れば、省エネの効果も大きい。

④ (5-1)放射・伝導等による熱損失防止

・熱の損失を防止するための炉壁の温度の計測・記録等が不十分な場合があった。

・また、配管等の断熱保温の保守点検が不十分な場合があり、調査時に、配管の断熱保温が

一部損傷したままとなっていた事例もあった。

・スチームトラップの保守点検についても不十分な場合もあり、調査時に、故障したままの

スチームトラップから蒸気が漏れていた事例もあった。

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27

・管理が不十分である理由は、前述の「(3)廃熱の回収利用」と同様に、加熱設備の管理の観

点が製品側中心で、断熱部分の熱損失防止管理にまで及んでいないためと考えられる。

【管理不十分な場合の改善対策】

・炉壁の温度管理については、管理値を定め、定期的に計測・記録することで、炉壁の耐火

物等の劣化状況が把握出来、熱損失を最小限にすることが出来る。

・断熱保温やスチームトラップについては、保守点検の管理標準を定めて、定期的に実施す

ることで、保温外れやスチームトラップ故障による熱損失を防止することが出来る。

⑤ (6-2)照明・昇降機、事務用・民生用機器

・事業場と同様に、照度管理が実施されていない場合があり、特に JIS 等に準ずる照度基準

による管理標準が設定及び遵守されていないことがあった。

・また、照度の計測・記録が不十分であり、実際の照度が把握されていない場合もあった。

・不要時の消灯などは多くの工場で実施されていたが、JIS の照度基準等を考慮した管理に

までは意識が及んでいないものと考えられる。

【管理不十分な場合の改善対策】

・JIS では、工場の作業の種類等に応じた推奨照度が詳細に規定されているので、これに準

じた管理標準を設定し、定期的な計測・記録によって実際の照度を確認し、過剰な照明を

防ぐことで省エネを図ることが出来る。

(4)その他の項目

① (1)燃料の燃焼の合理化

・比較的遵守されていたが、空気比の管理値が設定されていない場合や、実測値が基準値を

超えている場合があった。その理由は、燃焼管理の主体が不完全燃焼の防止と被加熱物の

品質管理にあり、過剰空気の管理までは考慮されていないためと考えられる。

【管理不十分な場合の改善対策】

・空気比の管理値を定め、定期的な計測・記録によって実際の値を確認して調整することで、

過剰に使用していた燃料を削減することが出来る。

・工業炉の改造や更新が出来れば大きな省エネ成果が得られるが、設備投資コストが大きい

ために先送りしていることも多い。しかし、小ロット多品種化や新製品の増加等のニーズ

に対応するために最新式の炉への更新を実施し、省エネとなった事例もあった。

② (5-2)抵抗等による電気損失防止

・比較的遵守されていたが、力率が成り行き任せとなっている等の、管理が不十分な場合が

あった。受変電設備の管理は電気の専門家に任せきりのところも多く、操業の現場では管

理の意識が薄い場合も見られた。

【管理不十分な場合の改善対策】

・受変電設備は、この設備のもとに事業所の各設備が接続されていることから重要設備であ

り、力率の維持等の管理の充実によって、電気損失を防止することが出来る。

③ (6-1)電動力応用・電気加熱設備等

・工場ではモーター等の多くの電動力応用設備があり、多くの電気を使用していることが多

いので重要な項目であり、比較的遵守されていた。

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・ただし、電圧・電流等の電気の損失低減のための管理及び計測・記録について、電圧と電

流の両方又は片方の管理及び計測・記録を実施していない場合があった。

【管理不十分な場合の改善対策】

・電動力応用設備は大小の設備が多数使用されているので、工場の実態に応じて管理の範囲

を定める等の実際的な管理標準の設定及び遵守が必要である。

・また、計測機器が個々の設備には設置されていない場合も多かったが、設備の電源盤での

集中管理や、臨時の計測機器を用いる方法等を工夫すれば、管理は可能である。

・計測機器の恒久的な設置には投資が必要であるが、測定機器とデータ処理システムを導入

して電気使用を「見える化」し、大きな省エネ成果を上げた事例もあった。

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29

2.3 原単位の推移と悪化要因

2.3.1 原単位の推移

(1)調査区分別原単位の推移

現地調査を実施した事業所の原単位の 5年度間(平成 25 年度~平成 29 年度)のデータが得ら

れた 487 件について、5年度間平均で 1%以上改善した件数を表 2.2.7 及び図 2.2.11 に示す。

結果は以下のとおりである。

①5年度間平均で 1%以上改善した件数の割合は、フォロー(S)が 58.8%と最も多く、他の

調査区分の 2倍以上であった。フォロー(S)は平成 29 年度提出の定期報告書(平成 28年

度までの実績)でSクラスに転じており、原単位改善が平成 29年度実績にも継続されている

傾向があることを示している。

②一方、フォロー(B)は 14.6%と全体平均よりもかなり低かった。これらは、フォロー(B)

とは逆に、Bクラスに停滞する傾向があることを示している。

表 2.2.7 事業所の原単位の改善状況(5年度間平均)

調査区分

事業場 工場 全体

全件数 1%以上

改善 割合 全件数

1%以上

改善 割合 全件数

1%以上

改善 割合

指定工場等 75 21 28.0% 230 54 23.5% 305 75 24.6%

フォロー(B) 1 0 0.0% 47 7 14.9% 48 7 14.6%

フォロー(S) 6 4 66.7% 45 26 57.8% 51 30 58.8%

非指定工場等 44 16 36.4% 39 7 17.9% 83 23 27.7%

合計 126 41 32.5% 361 94 26.0% 487 135 27.7%

注:5年度間の原単位が得られた事業所 487 件の結果

図 2.2.11 事業所の原単位の改善状況(5年度間平均)

(5年度間の原単位が得られた事業所 487 件)

(2)事業場及び工場の原単位の推移

事業場及び工場の区分による、5年度間平均で 1%以上改善した件数を図 2.2.12 に示す。

結果は以下のとおりである。

24.6

14.6

58.8

27.7

27.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

指定工場等

フォロー(B)

フォロー(S)

非指定工場等

全体

割合1%以上改善 1%改善未達成

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30

①事業場の方が工場よりも改善した割合が 6.5 ポイント多かった。

②この理由の一つとして、事業場は空調のエネルギー使用割合が比較的高いので、図 2.2.13 に

示したように、平成 29 年度の夏期の気温が平成 25 年度に比べて、特に東日本で低かったこ

とにより空調用のエネルギー使用量が減少した影響があると考えられる。

図 2.2.12 事業場・工場別の原単位の改善状況(5年度間平均)

図 2.2.13 全国の気温(8月) (日平均気温の月平均値:気象庁)

(3)特定事業者等

調査した事業所を設置している特定事業者等の事業者単位での原単位の改善の状況について、5

年度間(平成 25 年度~平成 29年度)のデータが得られた 466 件について、5年度間平均で 1%以

上改善した件数を表 2.2.8 及び図 2.2.14 に示す。

結果は以下のとおりである。

①事業者単位の原単位を 5 年度間平均で 1%以上改善した事業者は、フォロー(S)が 70.5%

と最も多い一方、フォロー(B)は 8.3%とかなり低かった。

②この傾向は、2.3.1(1)項の事業所の傾向と同様である。すなわち、平成 29 年度提出

の定期報告書(平成 28 年度までの実績)Sクラスに転じた事業者は、その翌年度(平成 29

年度)も原単位の改善が継続されるが、Bクラスに停滞した事業者は、翌年度も停滞が継続

する傾向にあった。

③調査対象の事業者と事業所の原単位は、図 2.2.15 に示すように相関係数 0.56 の相関が見ら

32.5

26.0

27.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

事業場

工場

合計

割合1%以上改善 1%改善未達成

札幌 仙台 東京 長野名古

屋富山 大阪 広島 高松 福岡 那覇

全国

平均

H25年度 23.1 25.6 29.2 25.4 29.3 27.9 30 29.5 29.8 30 29.6 28.1

H29年度 21.7 23 26.4 24.9 28.1 26.7 29.2 29 29.4 29.5 30.4 27.1

10

15

20

25

30

35

気温℃

全国の気温(8月)H29/H25

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31

れたことから、事業所の原単位が事業全体にも強く影響しているといえる。

④したがって、本調査で詳細に調査した工場等の原単位悪化の要因は、事業者の原単位悪化の

要因にも当てはまると考えられる。

表 2.2.8 特定事業者等の原単位の改善状況(5年度間平均)

調査区分 事業者数 1%以上改善 割合

指定工場等 271 42 15.5%

フォロー(B) 48 4 8.3%

フォロー(S) 44 31 70.5%

非指定工場等 103 15 14.6%

合計 466 92 19.7%

注:5年度間の原単位が得られた事業者 466 件の結果

図 2.2.14 特定事業者等の原単位の改善状況(5年度間平均)

図 2.2.15 調査対象の事業者と事業所の相関

15.5

8.3

70.5

14.6

19.7

0% 20% 40% 60% 80% 100%

指定工場等

フォロー(B)

フォロー(S)

非指定工場等

事業者

割合1%以上改善 1%改善未達成

70

80

90

100

110

120

130

140

150

70 80 90 100 110 120 130 140 150

事業

所の

5年度

間平

均原

単位

変化

事業者の5年度間平均原単位変化

相関係数:0.56

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32

2.3.2 原単位を改善出来なかった要因

原単位を 5 年度間平均で 1%以上改善出来なかった要因は、大きく分類すると事業場と工場で

は異なることから、調査結果を事業場と工場に分けて整理し、以下に示す。

(1)事業場

原単位を 1%以上改善出来なかった事業場 85 件について、その要因を分類した結果を図 2.2.16

に示す。結果は以下のとおりである。

①「利用者数の増加」が 30.6%と最も多く、次いで「業務規模の拡大」であった。これらは 4

番目の「利用時間の変更」及び「設備の増強」とともに、事業場の利用内容(人数、時間及

び利用設備等)の拡大によるものである。利用内容の拡大は、経営上は望ましいことである

が、原単位の分母を床面積等としていると、原単位は悪化することになる。

②3 番目に「設備の劣化」が 28.2%あり、設備の老朽化によって、効率の低下や慢性的な不具

合を生じていることを示している。一方で、原単位を改善した事業場では、設備更新によっ

て最新の高効率設備を導入して省エネ効果が得られた場合もあった。

③「原単位設定の不備」が 16.5%あった。その多くは、①のように、エネルギーの使用量と原

単位の分母が関連していない事例であった。

図 2.2.16 事業場の原単位を 5年度間平均で 1%以上改善出来なかった要因(複数回答)

(「割合」はその要因が該当する事業場の割合%を示す。)

(2)工場

原単位を 5 年度間平均で 1%以上改善出来なかった工場 267 件について、その要因を分類した

結果を図 2.2.17 に示す。結果は以下のとおりである。

①「製品構成の変化」が 41.9%と最も多かった。これは、付加価値が高く、そのため製造過程

でエネルギーを多く使用する必要がある製品に移行しているためである。

②次いで「生産の減少」が 41.2%あった。

③これらは、いずれも市場ニーズの変化等が背景にあり、変化に合わせて製品仕様や工場の操

業を対応させていることによると考えられる。

④「設備の劣化」も 17.6%あった。ただし、割合は事業場より低く、設備の更新や老朽化に合

30.6 28.2 28.2

20.0 20.0 17.6 16.5

14.1 10.6

7.1 2.4 2.4 2.4 2.4 2.4 2.4 1.2

3.5

0

10

20

30

40割合 %

事業場数:85

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33

わせた使用方法の改善が、事業場よりも実行されていると考えられる。

図 2.2.17 工場の原単位を 5 年度間平均で 1%以上改善出来なかった要因(複数回答)

(「割合」はその要因が該当する工場の割合%を示す。)

41.9 41.2

23.6 22.1

15.410.9 10.1 9.0 8.6 8.2 7.9 7.5 6.0 3.7 3.7 3.0 3.0 1.1 0.7 1.5

0

10

20

30

40

50割合 %

工場数:267

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2.4 原単位の改善策

現地調査では、原単位の改善策について、悪化要因を基に調査先と意見交換を行った。その結

果抽出された改善策を分類し体系化してまとめた。分類結果を表 2.2.9 に示し、その内容を以下

に記述する。

表 2.2.9 工場等現地調査に基づく原単位の改善対策の項目

改善策の項目

(1)判断基準の遵守による改善策

(2)老朽化等に伴う更新による改善策

(3)主な外的要因に対する改善策

(4)原単位の運用管理の見直しによる改善策

(5)工場等の管理標準の整備及び活用による改善策

(6)事業者全体の判断基準の遵守による改善策

(7)その他の改善策

また、改善策の例として、センターが実施した中小企業等の省エネ診断で提案した事例(出展:

一般財団法人省エネルギーセンター「省エネ診断事例集」)を四角枠内に記した。

凡例を下記に示す。なお、設備費用は一般的な概算値である。

事例:改善のタイトル (業種:原油換算エネルギー使用量)

内容:改善提案の内容

削減効果:削減量の原油換算値(使用量に対する削減率)

設備費用:一般的な概算値(設備投資不要の場合は省略)

設備概要:該当する設備の概要

(1)判断基準の遵守による改善策

2.2項で記述したように、判断基準の各項目の遵守が不十分である場合には、その項目の管

理標準を整備及び遵守することにより、無駄なエネルギー使用をなくすことが出来る。具体的な

改善策は以下のとおりである。

①空気調和設備

・季節変動等を考慮した熱源設備の管理等により、年間を通じた効率的な運転を行う。

・空調稼働の必要性を再検討し、設定温度、稼働時間帯及び稼働場所を見直す。

・総合効率は老朽化や空調設備内の汚れの進行によっても悪化するので、計測・記録の結果

の推移を把握し、適切な保守や更新を行う。

事例:冬期以外の中央給湯方式の給湯停止(事務所ビル:1,800kL/年)

内容:中央給湯方式と湯沸室の電気温水機を常時併用していたので、冬期以外の中央方式

停止を提案

削減効果:11.5kL/年(削減率 0.6%)

設備概要:給湯用ボイラー(1.5t/h)、循環ポンプ(0.4kW×2 台)

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事例:非作業時の設定温度適正化(印刷用マスク製造工場:1,200kL/年)

内容:クリーンルームの設定温度は、夜間などの非作業時(12時間)も日中と同じとなっ

ているので、22℃から 24℃の設定にする(冷房期間の 7か月)ことを提案

削減効果:10.5kL/年(削減率 0.9%)

設備概要:チラー(85.4kW、76.8kW)

②照明設備の管理

・不要時及び不要場所の消灯を基本に立ち返って実行する。東日本大震災直後は、事業場を

中心に実行されたが、調査では、その後時間の経過とともに守られなくなったとの声も聞

かれた。

・JIS では、事務所、商業施設、学校、工場等の施設や作業の種類等に応じた推奨照度が詳

細に規定されているので、これに準じた管理標準を設定し、定期的な計測・記録によって

実際の照度を確認し、過剰な照明を防ぐ。

事例:事務室の昼休み時間及び残業時間帯の部分消灯(事務所ビル:1,800kL/年)

内容:事務室において昼休みの消灯や残業時間帯に部分消灯を行うことで、電力消費量を

削減することを提案

削減効果:35.1kL/年(削減率 2.0%)

設備概要:蛍光灯 約 4,200 台

③燃焼設備(ボイラー、工業炉等)

・空気比の管理値を定め、定期的な計測・記録によって実際の値を確認し、管理値を外れて

いる場合は燃焼設備を調整することで、過剰な空気を削減して過剰に使用していた燃料を

削減する。

事例:ボイラー空気比の適正化(化学工業:740kL/年)

内容:燃焼空気を現状の 1.49 から 1.3 に低減し、熱損失の削減を図ることを提案

削減効果:3.3kL/年(削減率 0.4%)

設備概要:ボイラー(150kW)

④廃熱の回収利用(燃焼設備等の廃ガス、蒸気ドレン等)

・廃ガスの廃熱回収設備がある場合には、廃ガスの温度又は回収率の管理値を定め、定期的

に計測・記録することによって、汚れの進行や老朽化が把握出来、適切な保守や老朽化更

新につなげられる。廃熱回収設備がない場合には、管理値と計測・記録の結果を照合する

ことによって、廃熱回収設備の新設等の改善策を検討する。

・蒸気ドレンの回収利用について、管理及び計測・記録によって、回収設備がある場合には

適切な保守や老朽化更新を実施し、回収設備がない場合には回収利用する範囲を検討する。

事例:廃温水の利用(プラスチック製品製造工場:530kL/年)

内容:成形機の廃温水を地下タンクに回収し、ボイラー給水予熱に活用している。更に休

日の乾燥室(65℃、現状は蒸気加熱)熱源として有効活用し、蒸気の削減を図る。

削減効果:10.8kL/年(削減率 2.0%)

設備費用:300 千円(回収 0.4 年)

設備概要:成形機(油圧モーター5.5kW×3台、3.7kW×17 台)

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⑤放射・伝導等による熱損失防止

・工業炉等の炉壁温度について、管理値を定め、定期的に計測・記録することで、炉壁の耐

火物等の劣化状況を把握し、補修等によって熱損失を最小限にする。

・断熱保温やスチームトラップについては、保守点検の管理標準を定めて、定期的に実施す

ることで、保温外れやスチームトラップ故障による熱損失を防止する。

事例:成形機・押し出し機への保温カバーの設置(住宅建材製造工場:2,628kL/年)

内容:成形機及び押し出し機のシリンダー部に保温カバーを設置し、放熱を防止すること

を提案

削減効果:116kL/年(削減率 4.4%)

設備費用:600 千円(回収 0.1 年)

設備概要:生産設備(プラスチック成形機)

(2)老朽化等に伴う更新による改善策

①空調設備の高効率設備への更新

・老朽化による効率低下が進んでいる場合には、補修又は更新によって効率向上を図る。老

朽化更新は、設備稼働に支障が無い場合は予算化が先送りされることも多いが、総合効率

に関するデータの経時変化を把握することで、現在のエネルギー損失を推定して採算性を

考慮した検討が出来ると考えられる。

・また、一般に最新の空調機器は効率が向上しているので、更新により大きな省エネ効果が

得られた事例も多い。

事例:空調機の更新、暖房器具の高効率化(卸売市場:640kL/年)

内容:昭和 49 年製の温水ボイラー及び電動圧縮機による冷温水を循環し、床置エアコンに

より空調している。高効率の天吊型パッケージ空調に更新することを提案

削減効果:9.1kL/年(削減率 1.4%)

設備費用:300 千円(回収 4.6 年)

設備概要: 空調機(17.5kW)、温水ボイラー(A重油消費 9kL/年)⇒高効率空調機

②照明設備の高効率設備への更新

・LED等の高効率照明に更新する。段階的に実施している事例は多い。

事例:高効率照明への更新(病院:400kL/年)

内容:新館病室廊下照明及びナースステーション照明をLED照明に交換することを提案

削減効果:5.2kL/年(削減率 1.3%)

設備費用:2,706 千円(回収 9.3 年)

設備概要:蛍光灯 162 台

③ボイラー、その他の装置の更新

・老朽化更新等の機会をとらえて、最新の高効率の設備に更新する。

・ボイラーの場合は、これまでの省エネ活動の成果で蒸気の使用量が減っている場合も多く、

小型化することが出来れば、更に省エネとなる。

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事例:高効率ボイラーへの更新(食料品製造工場:320kL/年)

内容:現状の炉筒煙管ボイラーは設置後 26年が経過し更新時期に当たるので、効率の高い

都市ガス焚小型貫流ボイラーに更新することを提案(熱効率 87%⇒97%)

削減効果:12.1kL/年(削減率 3.8%)

設備費用:2,200 千円(回収 2.2 年)

設備概要:A重油焚炉筒煙管ボイラー(年間使用量 120kL)

(3)主な外的要因に対する改善策

(3-1)工場の場合(生産量の減少、製品構成の変化、小ロット多品種化に対する改善策)

①固定的なエネルギーの分析と削減

・生産量の減少により原単位が悪化している場合には、固定的なエネルギー使用の影響が大

きいので、固定エネルギーの現状を把握し、その削減に努める。

・具体策として、ボイラー及び空気圧縮機の圧力低下、適正台数管理及び更新等がある。

事例:コンプレッサー吐出圧力の低減(木材・木製品製造工場:1,152kL/年)

内容:吐出圧力 0.75MPa で運転されており、使用機器の必要圧力等を考慮すると余裕があ

るので、0.1MPa 低下させることを提案

削減効果:5.9kL/年(削減率 0.5%)

設備概要:コンプレッサー5.5kW~55kW×8台

・また、固定的に使用している空調や照明の運用管理や高効率機器への更新も考えられる。

改善策は前述の(1)~(2)項に示した通りである。

②製品構成の変化の対策

・製品又は工程によってエネルギーの使用状況を把握することが重要であり、その分析結果

によって、改善策を検討する。

・なお、製品構成の変化が原単位に与える影響が大きい場合には、後述のように原単位の分

母が適切かどうかを検討することも考えられる。

③小ロット多品種化の対策

・品種の入れ替え時の生産に寄与しないエネルギー消費の増加や稼働効率の低下等の悪化要

因が考えられるので、これらについて分析し、その結果によって改善策を検討する。

(3-2)事業場の場合(利用者数や業務規模の拡大に対する改善策)

①固定的なエネルギーの分析と削減

・空調や照明などの固定的なエネルギー使用の影響が大きいので、現状を把握して、必要最

小限の管理を図る。具体的な改善策は前述の(1)~(2)項に示したとおりである。

②関係者の省エネ意識の共有化

・業務用ビル、商業施設及び病院等の施設では、オーナー、管理者、テナント及び一般利用

者等が省エネについて共通意識を持つことが重要であるので、連絡会の設置や共通の管理

標準の整備等により、省エネに対する意識と方法を共有化する。

(4)原単位の運用管理の見直しによる改善策

①原単位の推移の詳細な分析と改善テーマの検討

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・単なる推移確認だけではなく、固定的なエネルギーの寄与、設備や工程ごとのエネルギー

使用状況、定常的又は突発的な悪化(良化)要因の分析等を実施することによって、今後

の省エネ対策のテーマの発掘と検討を行う。

②原単位の算出方法の見直し

・現在の原単位の分母に用いている項目が適切ではないために、原単位がエネルギー使用状

況を適切に表せていないと考えられる場合が、調査では散見された。例として、省エネ対

策を実施しているにもかかわらず、市場ニーズ対応でエネルギー多消費型の製品の割合が

大きく増加したため、生産量単純合計を分母として算定している原単位が悪化している場

合等があった。この場合、エネルギー使用量に相当する重み付け係数による換算生産量に

分母を見直す等の対応が考えられる。

・ただし、分母の見直しは、原単位改善の解決策ではなく、適切に省エネ推進状況を評価す

るための手段であるので注意が必要である。

(5)工場等の管理標準の整備及び活用による改善策

①管理標準の現場で活用されるマニュアル体系化

・調査では、管理標準は作成されていても管理部門での運用に留まり、実際に操業している

現場では別の作業手順書を使用しているため、現場では省エネの観点が薄くなっている事

例が見られた。そこで、これらの規定類の関連付けを明確にして体系化することによって、

省エネを意識した操業管理を行うことで省エネを図ることが出来る。

②管理標準の管理値等の見直し

・調査では、管理標準が長期間見直されていないこともあった。また、管理内容があいまい

で管理値の上限・下限等が設定されていない場合や、管理幅が広すぎて実際には役立って

いない場合もあった。そこで、必要な管理値を設定し、定期的または必要時に見直すこと

が、継続的に省エネを図っていくためには重要である。

(6)事業者全体の判断基準の遵守による改善策

①取組方針・目標の設定、遵守及び評価を実施するための取り組み

・取組方針を、例えば「原単位を年間 1%削減」と設定していても、それを実行するための

取り組みの具体的な方法が設定されてないために、省エネが進んでいない場合もあった。

・省エネの成果を上げている例として、事業者の取組方針を受けて工場等の目標を設定し、

更に各部門の個別目標に展開して、担当者、スケジュール及び評価方法を決めて実行する

システムを回すことによって、持続的な省エネ改善を実行している事例があった。このよ

うに、取組方針を実現するための具体的な方策を立てることが重要である。

②中長期計画に設定した高効率化設備への更新や業務効率化等の省エネ対策の確実な実行

・計画された省エネ対策を、具体的な実施計画を立てて、実行に移すことが重要である。経

営状況などによって、投資案件が先延ばしされることもあるが、実施計画を立てていれば、

時機を見てすぐに復活させることが出来る。

(7)その他の改善策

その他、各工場等での個別の設備について、調査での意見交換により摘出された個別の改善

案を実行する。

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2.5 原単位の算定方法

原単位の算定では、エネルギー使用量と密接な関係を持つ値を計算式の分母として用いるが、

採用した分母によって原単位は影響を受け、エネルギーの使用とは関係なく原単位が変動する場

合や、省エネ改善の成果を上げているにもかかわらず原単位に反映されない場合等がある。

調査では、原単位の分母の内容や採用理由、また、見直しの実績や検討の有無等を調査し、事

業者からも多くの意見が出されたので、その結果をまとめて、以下に記述する。

2.5.1 現状の原単位の分母

(1)事業場

原単位の算定式に使用されている分母の種類を図 2.2.18 に示す。

①「床面積」を分母としている場合が 74.3%と多かった。その理由は、建て増ししても対応出

来ることや、同種の他の施設との比較が出来るためとの意見が多かった。また、事業場では

床面積とすることが一般的なので従来から使用しているとの声もあった。

②一方で、現在は「床面積」を分母にしているが、原単位が利用人数や稼働時間の変化により

変動するので、エネルギーの使用状況の把握が的確に出来ない場合があるとの意見もあった。

③次いで「利用人数」が 6.9%あり、エネルギーの使用量が利用人数によって変化する事業場

等で使用されていた。

④「金額」は、飲食店や娯楽業等で使用されており、エネルギー使用量が、利用者が施設の利

用に対して支払う金額と関連していると考えているためである。

⑤また、「床面積」×「稼働時間」等、二つの項目を掛け合わせた値としている事業場も 4.2%

あった。これは、エネルギー使用量と密接な関係を持つ項目が一種類ではないことを示して

いる。

原単位の算定方法についての関心は高く、後述のように、見直しを実施済み又は検討中である

事業場もあった。

図 2.2.18 原単位の算定に使用している分母の種類(事業場)

事業場数:43

1.床面積74.3%

2.利用人

数 6.9%

3.金額4.2%

4.床面積

×稼働時

間 4.2%

5.稼働時

間 2.1%6.生産量

(単純合

計) 2.1%

7.その他6.3%

事業場数:144

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(2)工場

原単位の算定式に使用されている分母の種類を図 2.2.19 に示す。

①「生産量(単純合計)」を分母としている場合が 53.1%と多かった。

②しかし、生産品目によって単位製品当たりのエネルギーの使用量が異なる場合には、前記の

原単位の悪化要因にもあったように、市場ニーズの変化によって生産構成が変わることも多

く、原単位の変動要因となる。

この対策としては、「生産量(重み付け合計)」を用いる方法がある。単位製品当たりのエ

ネルギーの使用量が大きく異なる生産品目又は生産品目群ごとに重み付け換算係数を設定し

て各換算生産量を求めて合計する方法である。この分母を採用している工場は9.3%あった。

また、単純合計からの見直しを検討している工場もあったので、今後増加すると考えられる。

③「金額」が 2番目に多く、21.0%あった。その理由は、付加価値の高い製品(エネルギー消

費量も多い)は製品単価も高いので、製品ごとの重み付けが出来るため、また、設置する工

場等で統一することによって、工場間の比較が出来るためである。また、付加価値の高い製

品比率を増やすという経営方針と合致しているとの意見もあった。

④しかし、金額では、顧客との関係で製品単価がエネルギー消費量とは無関係に変動する場合

があるとの意見もあった。

この対策としては、生産量等の他の値への変更もあるが、金額の設定方法として取引先との

価格設定に左右される売上額ではなく、社内で設定した固定価格による生産評価額を用いる

等の工夫も見られた。

⑤「原料・中間製品量」を分母としているのは、水道業や廃棄物処理業等の製造業ではない工

場の他、製品の大きさや形状の種類が多い製造業の工場等である。

⑥「床面積」を採用しているのは、クリーンルームがある場合等である。

⑦事業場と同様に原単位の算定方法についての関心は高く、後述のように、見直しを実施済み

又は検討中である工場もあった。

図 2.2.19 原単位の算定に使用している分母の種類(工場)

工場数:367

1.生産量

(単純合

計) 53.1%

2.金額21.0%

3.原料・中

間製品量10.6%

4.生産量

(重み付け

合計) 9.3%

5.床面積3.9%

6.稼働時

間 0.8%7.その他

1.3%

工場数:386

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2.5.2 原単位の分母別の改善状況

(1)事業場

原単位の分母別に、5 年度間平均で 1%以上改善した事業場の割合を図 2.2.20 に示す。

①改善した事業場の割合は、「床面積」が最も多く、次いで「床面積×稼働時間」と「生産量」

であった。

②「床面積」を含む分母の場合に、改善した割合が多かったのは、2.3.1(2)項のとお

り、東日本を中心として夏期の気温が低かったことも一因であると考えられる。

③「生産量」は飲食店の場合の「食数」等であり、エネルギー使用量との相関は比較的良好と

考えられる。

図 2.2.20 原単位の分母別の改善状況(事業場)

(2)工場

原単位の分母別に、5 年度間平均で 1%以上改善した工場の割合を図 2.2.21 に示す。

①改善した工場の割合は、「その他」が最も多かった。「その他」に分類された分母は、工場独

自に設定したものが多く、エネルギーの使用量とよく相関しているため、省エネ改善の成果

が表わせたものと思われる。(例:クリーンルームの使用割合が大きい場合の「空調面積」×

「稼働時間」、工程が多様な場合の「換算工程数合計」、等)

②次いで、生産量(重み付け合計)が多く、生産量(単純合計)の 2倍以上あった。エネルギ

ー使用量が多い製品の構成比率の増加は全般的な傾向であるため、重み付け等による補正が

原単位管理に有効であることを示している。

図 2.2.21 原単位の分母別の改善状況(工場)

35.125.025.0

33.30.0

33.322.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1.床面積

2.利用人数

3.金額

4.床面積×稼働時間

5.稼働時間

6.生産量(単純合計)

7.その他

割合1%以上改善 1%改善未達成

事業場数:126

19.332.030.8

41.235.7

0.050.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1.生産量(単純合計)

2.金額

3.原料・中間製品量

4.生産量(重み付け合計)5.床面積

6.稼働時間

7.その他

割合1%以上改善 1%改善未達成

工場数:361

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2.5.3 原単位の算定方法の見直し

(1)見直しの状況

事業者のクラス分け制度がスタートしてから原単位に関する意識は高まってきており、算定方

法についても、エネルギーの使用量と密接な関係を持つ値として原単位の分母に用いる項目の設

定について見直しを実施または検討中の工場等があった。その状況を図 2.2.22 に示す。

①事業場では見直しを実施したのは 6.3%で、検討中は 18.8%あった。

②工場では見直しを実施したのは 18.9%で、検討中は 22.0%あった。

③見直しの理由は、分母が不適切である場合、エネルギーを適切に管理していても、管理状況

とは関係の薄い項目の影響を大きく受けて原単位が変動する場合があるので、これらの変動

分を極力除いて、省エネ努力の成果を原単位で適切に評価したいとの考えによるものである。

④更に、見直しは考えていないと当初回答した工場等であっても、調査時の意見交換において

今後検討するとの考えを示した場合もあるので、今後更に見直しが増加すると考えられる。

図 2.2.22 原単位の分母の見直しの状況

(2)見直しの内容

(2-1)事業場

原単位の分母の見直し実績がある事業場について、見直し前後での分母を図 2.2.23 に示す。見

直しの内容及びその理由は以下の通りである。

①見直しにより「稼働時間」及び「人数×床面積」が増加した。

②これらは、いずれも現状分析の結果によりエネルギー使用量との相関がより強い指標に見直

したものである。

図 2.2.23 原単位の分母の見直し前後での比較(事業場)

6.3

18.9

18.8

22.0

75.0

59.1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

事業場

工場

割合見直し実績あり 見直しを検討中 見直しは考えていない事業場数:144

工場数:386

33.3

33.3

22.2

22.2

22.2

11.1 11.1 11.1

22.2

11.1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

見直し前

見直し後

割合

床面積 利用人数 金額

稼働時間 人数×床面積 その他事業場数:9

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43

(2-2)工場

原単位の分母の見直し実績がある工場について、見直し前後での分母を図 2.2.23 に示す。見直

しの内容及びその理由は以下の通りである。

①見直し前は生産量(単純合計)が 64.4%と多かったが、見直し後は生産量(重み付け合計)

と金額がそれぞれ 38.4%、20.5%と大きく増加した。この理由は、生産量の単純合計では、

製品の種類や工程等の多様化に対応出来なくなっているためである。

②生産量(重み付け合計)に見直した理由は、より高品質を求める市場ニーズの変化への対応

や経営方針による高付加価値製品へのシフト等により、エネルギー多消費型の製品の生産割

合が増えてきていることへの対応である。

③また、「金額」への見直し理由についても、②の理由と同様であった。更に金額を用いるメリ

ットは、多種多様な製品を製造している場合にも数値の把握が確実に出来ることや、複数の

工場の比較が出来ることがある。ただし、金額が売上額である場合は、取引先との価格設定

の変化に左右されるとの欠点がある。この対策として、社内で設定した生産評価額を用いて

いる事例もあった。

図 2.2.24 原単位の分母の見直し前後での比較(工場)

(3)原単位の算定方法を見直した事業所の原単位の改善割合

原単位の改善状況を、分母の見直しを実施した事業所と実施していない事業所とで比較して図

2.2.25 に示す。結果は以下のとおりである。

①原単位を 5 年度間平均で 1%以上改善した割合は、分母を見直した事業所が 40.2%と見直し

ていない事業所よりも 15ポイント上回る結果であった。

②調査時のヒアリングでも、データを検証し、原単位の分母を見直した結果、省エネの成果に

よって原単位が削減出来たことが分かるようになったとの意見が聞かれた。

図 2.2.25 原単位の分母の見直し実績の有無による原単位の改善割合の比較

64.4

24.7

16.4

20.5

8.2

38.4

4.1

2.7

4.1

8.2

1.4

4.1

1.4

1.4

0% 20% 40% 60% 80% 100%

見直し前

見直し後

割合

生産量(単純合計) 金額

生産量(重み付け合計) 原料・中間製品量

床面積 稼働時間

その他工場数:73

40.2

25.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

見直し有

見直し無

割合1%以上改善 1%改善未達成

件数:487

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2.6 省エネルギー活動状況

2.6.1 指定工場等の省エネルギー活動状況

指定工場等(フォロー(B)及びフォロー(S)を含む)における省エネルギー活動について、

管理体制及び活動状況を調べ、原単位改善との関連を分析した。

(1)省エネの管理体制及び活動状況

管理体制及び活動状況を表 2.2.10 及び図 2.2.26 に示す。結果は以下のとおりである。

①「a」項の管理体制については、全体の 94.4%で設定されている。

②しかし、活動の実態をみると、「b」項のエネルギー使用状況等の検討会を実施しているのは

78.0%と低く、体制は整備していても活動の実態が伴っていない場合がある。

③また、「c」項の省エネルギーの目標設定や改善活動は 86.7%が実施されているが、「h」項

の推進体制や検討内容の定期的な精査が実施されているのは 53.9%に留まり、「i」項の管

理標準の随時見直しも 50.4%と低いことから、現状の省エネルギー活動がやや形骸化してい

る事業所が多いことも示唆している。

④その背景として、調査においても人手不足(募集しても応募がない)や業務多忙等の理由で

活動が停滞しているとの意見や、エネルギー管理者又はエネルギー管理員が孤軍奮闘してい

るとの実態があった。

⑤事業場と工場を比較すると、事業場の方が各項目とも低かった。特に「d」項の現場の小集

団活動や、「e」項の評価・表彰制度等で差があった。

表 2.2.10 省エネルギー体制及び活動状況

省エネルギー組織、体制及び活動の項目 実施している割合 % 注 1

事業場 工場 全体

a.関連部門が参加するエネルギー管理体制がある 88.4% 95.9% 94.4%

b.関連部門が参加するエネルギー使用状況及び原単位推移

等の検討会を実施している 65.1% 81.2% 78.0%

c.省エネルギーの目標が定められており、工場全体で改善活

動を実施している 75.6% 89.4% 86.7%

d.省エネルギー等に関して、現場従事者による小集団活動等

の改善活動(例:QC活動)を実施している 47.7% 67.7% 63.7%

e.省エネルギー等に関して、改善提案制度等の従業者に対す

る評価・表彰制度がある 19.8% 66.0% 56.7%

f.トップの省エネルギー推進に関する強い意識、指導がある 75.6% 88.0% 85.5%

g.省エネに関する研修会等への参加やOJTでの教育等を

実施している 65.1% 66.9% 66.5%

h.省エネルギー推進体制及び検討会の内容を定期的に精査

し、必要に応じ変更している 45.3% 56.0% 53.9%

i.管理標準の見直しを随時実施している 40.7% 52.8% 50.4%

j.設備・機器を省エネルギー等の計画に基づいて更新してい

る 79.1% 83.0% 82.2%

(事業所数) (86) (341) (427)

注 1:調査対象の件数に対する実施している件数の割合。

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図 2.2.26 省エネルギー体制及び活動状況

(2)省エネルギー活動状況と原単位の改善状況

各活動の実施状況と原単位の改善状況の関連について調べた。前項で記述した各活動項目ごと

に、それを実施していない事業所についての原単位の改善状況(5年度間平均で 1%以上改善)を

図 2.2.27 及び図 2.2.28 に示す。その結果は以下のとおりである。

①事業場では、各活動を実施していない場合は、原単位を改善した割合が事業場全体値の30.5%

を全ての項目で下回った。特に、「c」項の目標設定と改善活動を実施していない事業場は、

25.7 ポイント下回り、目標設定による改善活動の重要性がわかる。

②工場でも、各活動を実施していない場合は、原単位を改善した割合が工場全体値の 27.0%を

全ての項目で下回った。特に「a」項の推進体制の整備を実施していない工場は、12.7 ポイ

ント下回った。

③上記の推進体制の「a」及び「c」項は、省エネ推進の基本的な事項であり、2.6.1(1)

項のとおり、事業所全体ではよく実施されているが、実施されていない場合は、原単位の改

善未達の原因になっていると考えられる。

④以上の結果から、省エネの各活動は原単位の改善に効果を上げていると考えられる。

図 2.2.27 省エネルギー活動の各項目を実施していない場合の原単位の改善状況(事業場)

0%

20%

40%

60%

80%

100%割合

事業場

工場

12.517.9

4.828.629.2

10.011.113.6

22.417.6

30.5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

a.管理体制の整備無し

b.検討会の実施無し

c.目標設定と改善活動無し

d.現場の小集団活動等無し

e.評価・表彰制度無し

f.トップの意識・指導無し

g.研修・OJT等の教育無し

h.推進体制・方法の精査無し

i.管理標準の随時見直し無し

j.設備の計画的な更新無し

事業場全体

割合1%以上改善 1%改善未達成

事業場数:82

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図 2.2.28 省エネルギー活動の各項目を実施していない場合の原単位の改善状況(工場)

2.6.2 指定工場を持たない事業者の省エネルギー活動の状況

指定工場を持たない事業者では、事業所の規模が小さく事業者単位の活動例は少ない傾向にあ

るため、事業者全体の省エネルギー活動の状況を調査し、Bクラスとなった要因を調べた。

その結果として、事業者全体の判断基準に対応する各項目が、Bクラスとなった要因として当

てはまる事業者の割合を図 2.2.29 に示す。その結果は以下のとおりである。

①Bクラスとなった要因として、「ア.管理体制の整備」の「委員会の設置等」が不十分であっ

た事業者が 27.2%と最も多かった。委員会等を設置して定例会議等を行わなければ、活動は

始まらないことを示している。

②次いで、「カ.資金・人材の確保」の「資金確保」と「人材確保」が、各 24.3%、23.3%と

多かった。特に中小企業においては、これらは喫緊の課題である。調査では、経営層から「確

保に苦慮している。」との意見が出された事業者があった一方、担当者が「経営層の理解が欲

しい。」との声があった事業者もあった。

③「エ.取組方針の遵守状況の確認・評価」の各項目も概ね 10%以上あり、比較的多かった。

方針や目標を立てていても、遵守状況を確認・評価して必要に応じて改善しなければ、目標

達成は困難であろう。

④「オ.取組方針・評価手法の定期的精査」の「原単位の見直し検討」が 15.5%あり、原単位

の分母の設定が不備であったと考えていることを示している。

14.318.6

25.720.420.820.024.026.4

20.321.8

27.0

0% 50% 100%

a.管理体制の整備無し

b.検討会の実施無し

c.目標設定と改善活動無し

d.現場の小集団活動等無し

e.評価・表彰制度無し

f.トップの意識・指導無し

g.研修・OJT等の教育無し

h.推進体制・方法の精査無し

i.管理標準の随時見直し無し

j.設備の計画的な更新無し

工場全体

割合1%以上改善 1%改善未達成

工場数:322

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図 2.2.29 指定工場を持たない事業者のBクラスとなった要因

(「割合」は「不十分であった項目」がBクラス要因として該当する事業者の割合)

27.2 6.8 6.8

2.9 1.0

12.6 2.9 2.9

4.9 12.6

9.7 13.6

18.4 15.5

9.7 3.9

1.9 15.5

24.3 23.3

3.9 7.8

2.9 4.9

3.9 0.0

0 10 20 30

委員会の設置等

統括者・企画推進者の責務遂行

委員会等の開催

小集団活動等の実施

管理統括者・企画推進者の配置

取組方針の策定

設備の運用、新設及び更新方針

中長期計画の策定

工場等の目標設定

管理標準の整備と管理実施

分析、課題抽出及び改善案の発掘

エネルギー使用量の定量的把握

データの見える化と情報の共有化

省エネ改善案の具体化と実施

取組方針の遵守状況の評価

取組方針・計画の定期的な見直し

評価手法等の定期的精査

原単位の見直し検討

資金確保

人材確保

各種補助金制度等の活用

取組方針の周知と省エネ情報提供

従業員教育の実施

全工場等の記録の作成・保管

体制・取組方針・遵守状況の文書化

取組方針の精査結果等の文書化

・ ・

・ ・

割合 %

イ.責任者の配置

ア.管理体制の

整備

ウ.取組方針の

設定

エ.取組方針の

遵守状況の

確認・評価

オ.取組方針・評価

手法の定期的

精査

カ.資金・人材の

確保

キ.周知・教育

ク.書面等の作成に

よる管理

不十分であった項目

事業者数:103

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2.7 調査結果の推移

事業者クラス分け評価制度が開始され、平成 28年度の調査から「Bクラス」に位置付けられた

事業者が設置する指定工場等が主に対象となったことから、この制度開始前の調査結果と比較し

て、どのような傾向があるか考察した。なお、過去の調査データは、ホームページに公表された

報告書に記載された内容を用いた。

2.7.1 調査の対象

本年度を含め、過去 5 年度の調査対象を表 2.2.11 に示す。

調査対象の主要条件は、平成 26 年度は無作為抽出の工場等、平成 27年度は原単位が 1%改善

未達の事業者の工場等、平成 28年度以降はこの条件に直近 2年度の前年度比悪化の条件が加わっ

ている。すなわち、平成 26 年度から平成 28年度にかけて、主要条件は、原単位がより悪化状況

にある事業者に年々シフトしてきた。

表 2.2.11 工場等現地調査の対象

年度 対象となる主要条件 調査件数

事業場 工場 合計

平成26年度 無作為抽出の指定工場等主体 90 298 388

平成27年度 原単位が5年度間平均で1%改善未達である事業者の指定

工場等主体 88 402 490

平成28年度 Bクラス(原単位が 5 年度間平均で 1%未達かつ直近 2

年連続で対前年度比増加)の事業者の指定工場等主体 54 422 476

平成29年度 同上 43 367 410

平成30年度

Bクラスの事業者の指定工場等(325)

Bクラス停滞の事業所の指定工場等(51)

Sクラスに転じた事業者の指定工場等(51)

指定工場を持たない事業者の事業所(103)

144 386 530

2.7.2 判断基準遵守状況の総合評価点の推移

過去 5年度間の総合評価点の推移を図 2.2.30 に示す。結果は以下のとおりである。

①総合評価点の平均値は、平成 26年度から平成 28 年度まで、選定の原単位条件がより悪化状

況にある事業者にシフトするごとに下がっており、Bクラスが主体となった平成 28 年度は事

業場と工場の差はあるものの、概ね横ばいとなっている。

②したがって、概ね、原単位が悪化している事業者は判断基準の遵守状況も不十分であること

がいえる。

③平成 30年度は、Sクラスに転じた事業者は総合評価点が高かったが、指定工場を持たない事

業者が低く、全体ではほぼ前年並みであった。

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49

図 2.2.30 総合評価点平均値の推移

2.7.3 原単位の改善状況の推移

原単位を 5年度間平均で 1%以上改善した事業所の割合の推移を図 2.2.31 に示す。推移の状況

は以下のとおりである。

①総合評価点の推移と同様、選定の原単位条件がより悪化状況にある事業者にシフトするごと

に、改善した割合は概ね低下している。

②これは、前項の判断基準の遵守状況の推移と同様の傾向である。

③平成 27年度に事業場の方が工場に比べて改善した割合が多い理由は、このときの原単位推移

の対象期間が平成 22 年度から平成 26 年度であるため、平成 26年度が冷夏・暖冬であった影

響が空調等の使用比率が大きい事業場で顕著に表れたためと、平成 23 年度以降の東日本大震

災後の事業場を中心とした大規模な節電対策の成果によると考えられる。

図 2.2.31 原単位を 5年度間平均で 1%以上改善した工場等の割合の推移

71.6%

48.7%

64.8%

20.6%

41.2%

23.1% 23.1%29.0%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

事業場 工場 事業場 工場 事業場 工場 事業場 工場

H26 H27 H28 H29

割合%

94.8 93.0 93.6 94.2

92.0 92.6

90.4 91.8

89.1

92.3

88

90

92

94

96

98

100

事業場 工場 事業場 工場 事業場 工場 事業場 工場 事業場 工場

H26 H27 H28 H29 H30

総合

評価

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第3章 フォローアップ調査の結果 本調査では、Bクラスに停滞している事業者の指定工場等(フォロー(B))とSクラスに転

換した事業者の指定工場等(フォロー(S))について調査し、両者を比較して停滞要因又は転

換要因を分析し、Bクラス停滞の改善策をとりまとめた。そのため、まず直接的な要因を整理

し、その要因が改善されていない理由や背景について考察した。その結果を本章に記載する。

3.1 原単位の改善状況の比較

原単位の改善状況について、調査区分ごとの比較を図 2.3.1 に示す。前述の2.3.1項で記

載したとおり、原単位を 5 年度間平均1%以上改善した割合は、フォロー(S)はフォロー(B)

の4倍以上あった。

図 2.3.1 事業所の原単位の改善状況(図 2.2.11 の再掲)

3.2 Bクラス停滞又はSクラス転換の直接的な要因

3.2.1 フォロー(B)のBクラス停滞の直接的な要因

フォロー(B)の事業所 51 件について、Bクラス停滞の直接的な要因を図 2.3.2 に示す。

図 2.3.2 フォロー(B)によるBクラス停滞要因(複数回答)

(「割合」はその要因が該当する事業所の割合を示す。)

31.427.5

23.5

13.7 11.8 9.85.9 5.9 3.9 3.9 3.9 3.9 3.9 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0

0

10

20

30

40

50割合 %

事業所数:51

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51

結果は、以下のとおりである。

①エネルギー多消費製品比率の増加等による「生産構成の変化」の割合が最も多く、「生産の

減少」、「小ロット多品種化」等の生産状況の変化が続いている。また、「設備の劣化」も

ある。

②これは、調査対象事業所全体の悪化要因(前述の2.3.2項)とほぼ同様であり、悪化要

因が解決されていないことを示していると考えられる。

3.2.2 フォロー(S)のSクラス転換の直接的な要因

フォロー(S)の事業所 51 件について、Sクラスへの転換の直接的な要因を図 2.3.3 に示す。

結果は、以下のとおりである。

①最も多い要因は、「原単位の算出方法の見直し」によるものであり 47.1%あった。これは、

原単位の悪化要因の多くの割合を占める「生産構成の変化」や「小ロット多品種化」等によ

る影響で省エネ効果が反映されていない場合、過去データも含めた分析により、エネルギー

使用量に関連する要素を絞り込み、原単位の分母を見直すことによって、省エネ活動の成果

を正しく反映できるようにしたものである。

②次に「設備改善による効率化、稼働率向上」が 23.5%あり、他の「高効率設備の導入」、「設

備改修・更新・統廃合」等も含めて実施することにより省エネを図っている。

③「生産の増加」、「エネルギー多消費製品の減少」等により悪化要因が解消された事業所も

あった。

④また、「省エネコンサル等の外部支援活用」を図った事例もあった。

図 2.3.3 フォロー(S)によるSクラスへの転換要因(複数回答)

(「割合」はその要因が該当する事業所の割合%を示す。)

47.1

23.5 21.6 19.6

13.7

5.9 3.9 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 2.0 3.9

0

10

20

30

40

50割合 %

事業所数:51

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52

3.3 Bクラス停滞又はSクラス転換の理由及び背景

前項で記述した直接的な要因がフォロー(B)で解消されていない理由及びフォロー(S)が

改善に至った理由を調べるため、フォロー(B)とフォロー(S)の相違点を比較し、考察した。

3.3.1 判断基準の遵守状況の比較

(1) 総合評価点の比較

フォロー(B)及びフォロー(S)の判断基準の遵守状況の総合評価点を他の区分も含めての

図 2.3.4 に示す。結果は以下のとおりである。

①フォロー(S)はフォロー(B)に比べてかなり総合評価点が高かった。

②この理由は、フォロー(S)は前回の調査時に指摘された判断基準の遵守内容にを見直し、

改善していたためである。

③一方、フォロー(B)は、改善の程度は相対的に低かった。

④判断基準の遵守が不十分であれば、設備の適切な運用が図られないこととなり、原単位の改

善の阻害要因になると考えられる。

図 2.3.4 調査区分別の総合評価点(図 2.2.1 の再掲)

3.3.2 省エネルギー活動状況の比較

省エネルギーを推進するためには、省エネルギー活動の推進が不可欠である。そこで、管理体

制及び活動を比較して表 2.3.1 及び図 2.3.5 示す。結果は以下のとおりである。

①ほとんどの項目で、フォロー(S)の方が高かった。

②「i」項の管理標準の随時見直しが最も差があった。管理標準が見直されているかどうかは、

直接的な操業管理だけでなく、事業所の全般的管理が実行されているかどうかを示すもので

もある。

③次に、「j」項の設備の計画的な更新も差があった。直接的に省エネに結びつくものであり、

原単位の改善に寄与する項目である。

④また、「f」項のトップの意識・指導、「h」項の推進体制・方法の精査及び「d」項の現場の小

集団活動も差があり、事業所の省エネ活動の活性化が、省エネ推進に影響していると考えら

れる。

92.1 92.795.1

86.6

91.4

80

85

90

95

100

総合評

価点

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53

表 2.3.1 省エネルギー体制及び活動状況

省エネルギー組織、体制及び活動の項目 実施している割合 % 注 1

フォロー(B)フォロー(S)差(S-B)

a.関連部門が参加するエネルギー管理体制が

ある 94.1% 94.1% 0.0

b.関連部門が参加するエネルギー使用状況及

び原単位推移等の検討会を実施している 78.4% 90.2% 11.8

c.省エネルギーの目標が定められており、工場

全体で改善活動を実施している 82.4% 94.1% 11.7

d.省エネルギー等に関して、現場従事者による

小集団活動等の改善活動(例:QC活動)を実

施している

54.9% 72.5% 17.6

e.省エネルギー等に関して、改善提案制度等の

従業者に対する評価・表彰制度がある 66.7% 66.7% 0.0

f.トップの省エネルギー推進に関する強い意

識、指導がある 74.5% 92.2% 17.7

g.省エネに関する研修会等への参加やOJT

での教育等を実施している 60.8% 70.6% 9.8

h.省エネルギー推進体制及び検討会の内容を

定期的に精査し、必要に応じ変更している 39.2% 56.9% 17.7

i.管理標準の見直しを随時実施している 27.5% 64.7% 37.2

j.設備・機器を省エネルギー等の計画に基づい

て更新している 58.8% 86.3% 27.5

(事業所数) (51) (51) -

注1:調査対象の件に対する実施している件数の割合。

図 2.3.5 省エネルギー体制及び活動状況

0%

20%

40%

60%

80%

100%

割合%

フォロー(B)

フォロー(S)

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54

3.4 Bクラス停滞又はSクラス転換の理由のまとめとBクラス停滞の改善策

上記の調査結果及び考察から、Bクラス停滞又はSクラス転換の理由をまとめると、以下のと

おりである。

3.4.1 Sクラス転換の理由

Sクラスに転換した事業者は、以下の事項がBクラスに停滞している事業者に比べて良好であ

ることによる。

①判断基準の遵守状況が良好で、前回調査から改善されている。

②生産構成の変化(エネルギー使用量が多い製品の割合が増加)等に対応して、原単位の算定

方法の見直し等の改善を行っている。

③設備の劣化等に対応して、設備改善、高効率設備の導入等の対策を行っている。

④省エネルギー体制及び活動が、活発に行われ、運用されている。

3.4.2 Bクラス停滞の理由と改善策

Bクラスに停滞している事業者は、上記と逆の状況であるため、原単位の改善が図られていな

い。したがって改善策としては、以下の事項が考えられる。

①判断基準の不十分なところを見直し、遵守することによって、運用改善を中心とした省エネ

を図る。

②生産構成の変化(エネルギー使用量が多い製品の割合が増加)等により、省エネ努力の成果

が原単位に反映されにくい場合は、原単位の算定方法(分母)の見直しを検討する。

③設備の劣化等に対応して、設備改善、高効率設備の導入等を計画的に実施する。

④省エネルギー体制を整備し活動を活性化させる。

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55

第4章 原単位管理についての考察

原単位の改善ができなかった要因については、2.3.1項で示したとおり、事業者では利用

者数の増加、工場では生産構成の変化が最も多く、利用者数や製品構成の変化による影響が原単

位の分母に適切に反映されていない場合があると考えられる。この場合、省エネの取り組みが原

単位の推移に適切に反映されないことになる。

そこで、原単位の分母を適切に設定又は見直しを行うため、①原単位の分母設定の基本的な考

え方を整理するとともに、②業種別の原単位の分母の設定方法や③原単位の分母の見直しの考え

方などについて考察してまとめた。

4.1 原単位の分母設定の基本的な考え方

4.1.1 原単位の定義と基本的な注意事項

省エネ法では、原単位は以下のように定義されている。

また、表 2.4.1 に示す注意事項が、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律 第 15条及び第

19 条の 2に基づく定期報告書記入要領(H30.3.30 改訂版)」に記載されている。

表 2.4.1 原単位の分母の設定にあたっての注意事項(定期報告書記入要領からの編集)

・ある期間については生産量、その他の期間については生産額といった選択ではなく、1年

間を通じて同一のものを選択する。

・前年度以前に本報告をした場合には、原則として、その際に用いた単位を用いる。(変更す

る場合には、その理由と、原則当該年度を含む過去5年度分の新旧単位による生産数量の

対比表を作成する。)

・原単位の計算結果が小さな数値になる場合は、密接な関係を持つ値を適宜桁上げする。

・ひとつの工場等において複数の製品を生産している場合等においては、当該工場等におけ

る主たる製品を定め、主たる製品の生産量を合計した値を工場等全体の生産数量等として

記入することができる。

・生産数量の代わりに生産額(付加価値生産額(例:生産額-原料))を用いる場合は単位と

して金額を使用する。

・2つの項目の積や回帰式の形で使用してもよい。

したがって、省エネ法における原単位の分母の要件は「エネルギー使用量と密接な関係を持つ

値」であり、事業所の設備や稼働状況によっては数式や換算数量を使用しても良いこととなって

おり、見直しも可能である。

ただし、一度設定した原単位分母はやむを得ない事情がない限り変更しないこととされており、

原単位の数値を下げるためだけに安易に変更することは適切でない。

事業者のエネルギー使用量-(販売した副生エネルギー+購入した未利用熱量)エネルギー使用量と密接な関係を持つ値(生産数量又は建物延床面積その他)

原単位=

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4.1.2 原単位の分母の設定方法

基本的な設定方法を以下に示す。データを適切に分析し、原単位に影響を与える項目を絞り込

み、その結果によって原単位を設定する方法である。

①現状のエネルギー使用量データの整理

・エネルギーの使用量を把握する。このとき、主要設備別又は主要製品別等の原単位に影響を

与えうる単位で把握することが望ましい。また、年度合計ではなく月別等が望ましいが、月

別データがない場合は入手可能なデータを用いる。

・常設の計測機がなくても、定格容量、稼働時間等から推定する方法や、臨時の計測機を使用

する方法もある。

②現状のエネルギー使用量データの分析

・使用量と関連データを整理し、推移グラフや相関図等を用いて分析する。

・推移と変化の要因について、特に外的要因に注意して考察する。

・工場の場合:製品構成の変化、製造方法等などの変化、生産量の変化、設備の老朽化・不

調、設備の増設、等

・事業場の場合:利用者数の増加、事業規模の拡大、設備の増強、等

③エネルギー使用量に関連する可能性のある項目の絞り込み

・相関図等を利用して項目を絞り込む

・工場の例:生産量、製品構成比率、原料使用量、金額、操業時間、工数、クリーンルーム

稼働率、等

・事業場の例:延床面積、稼働面積、営業時間、利用者数、売上高等

(図 2.4.1 に事業場で、相関図を用いて 4つの候補のうち「営業時間に絞り込んだ例を示す)

図 2.4.1 原単位の分母の設定のイメージ

(出展:省エネルギーセンター「月刊省エネルギー」Vol.68 No.12 2016)

④原単位の分母の設定

・単一の項目が見つかれば、それを原単位の分母に設定する。

売上げ、電気ガス等の

「月報」を集める

各候補「回帰分析」による○×評価

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⑤原単位の分母の設定(単一の項目に絞りきれない場合)

・相関がある項目が複数ある場合の項目設定の例を以下に示す。

【例1】重み付け生産量

・生産量と生産構成の変化が項目である場合等が該当する。基準年度を決めて、製品群ごと

の単位生産量当たりのエネルギー使用率から係数を決めて換算生産量を算出する。

【例2】床面積×利用者数(二つの項目の積)

・増築等の床面積の変化と利用者数の変化の両方がある場合等が該当する。他の項目の組み

合わせでもよい。

【例3】生産評価金額

・売上額が単価の変動影響を受ける場合等に、単価を販売価格ではなく生産評価額として固

定する方法である。

・単価は製品(群)ごとに設定してもよい。この場合は製品(群)ごとの係数を設定するこ

とと同じことになり、例 1の重み付け生産量と考え方は同じである。

【例4】生産量換算合計額

・主要製品と異なる単位の生産がある場合に、同一エネルギーを使用するときの両者の生産

量の比を係数として主要製品の単位に換算して合計する方法である。考え方は例 1 と同じ

である。

4.1.3 原単位の分母に用いられる項目

原単位の分母として用いられる項目は多数あり、適切なものを選定する必要がある。

ただし、各項目は長所と短所があり、それを理解した上で使用しなければならない。また、長

所は逆に短所ともなりうる。例として、原料を分母に設定した工場の場合、製品規格の引き上げ

により歩留まりが悪化した場合でも原単位は悪化しないが、設備老朽化による不具合で歩留まり

が悪化した場合にも原単位は悪化しないので、不具合に気づかないこともありうる。事業所の特

性にあった項目を分母として選定し、その特徴を理解して管理することが重要である。

事業場又は工場でよく用いられる項目を整理して表 2.4.2 に示した。

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表 2.4.2 原単位の分母に用いられる主な項目

項目

特徴 主な使用先

注 1

長所 短所 事業場 工場

生産量(単純合

計)

・算出方法がシンプルで、正確に把握で

きる。

・事業場でも飲食店の提供食数等に適用

できる。

・エネルギー使用量の多い製品比率

の増減の影響を受ける。

・減産すると、多くの場合原単位が

悪化する。

□ ■

生産量(重み付

け合計)

・エネルギー使用量の多い製品比率の増

減の影響を反映できる。

・計算が複雑になる場合がある。

・減産すると、多くの場合原単位が

悪化する。

原料・中間製品

・製品の種類が多い場合も適用できる。

・ごみ処理施設や水道業等の製品製造目

的でない事業所でも適用できる。

・歩留まりの悪化等の不具合が隠れ

てしまうことがある。 ■

金額

・付加価値の異なる製品を製造する場合

にも適用できる。

・多種多様な製品がある場合でも適用で

きる。

・サービスの提供など製品以外にも適用

できる。

・エネルギー使用量とは無関係の、

市場価格の変動等の影響を受ける場

合がある。

■ ■

床面積

・算出方法がシンプルで、正確に把握で

きる。

・他の項目の算出が困難な場合にも適用

できる。

・他の事業所との比較ができる。

・空調面積等のバリエーションがある。

・利用人数や利用内容の変化(特に

営業努力による利用者拡大等)によ

る影響が反映できない。

■ □

利用者数

・利用者の増減による影響が反映でき

る。

・事業場、工場を問わず広く適用できる。

・利用者人数の正確な把握が困難な

場合がある。

・利用者によって施設の利用方法が

大きく異なると、その影響が把握で

きない。

■ □

営業(稼働)時

・季節や繁忙期等で営業時間が異なる場

合に適用できる

・工場でも、時期により夜勤が発生する

場合などには適用できる。

・時間の変更が多い場合や作業時間

が個人で異なる場合などは、集計が

困難になる。 ■ □

稼働率

・ビル等でテナントの出退の影響が反映

できる。

・延床面積×稼働率とすれば、延床面積

の変更にも対応できる。

・利用人数や利用内容の変化による

影響が反映できない場合がある。 ■ □

注 1:主な使用先の表示 ■:多くの事業所で用いられる □:やや多くの事業所で用いられる

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4.2 業種別の原単位の分母の設定方法

エネルギーの使用状況は業種や施設によって異なるので、原単位の適切な分母もそれぞれ異な

る。そこで、代表的な業種について、本年度の調査結果から使用されている分母を集計分析して

表 2.4.3 及び表 2.4.4 に示す。

表 2.4.3 工場が主体の業種で使用されている分母(◎10 件以上、○3~9件、△2件以下)

業種(中分類)

生産量

(単純合

計)

生産量

(重み付

け合計)

原料・中

間製品

金額 床面積 稼働時

01 農業 △ △ △

05 鉱業,採石業,砂利採取業 △ △ △

08 設備工事業 △

09 食料品製造業 ◎ △ ○ ○ △

10 飲料・たばこ・飼料製造業 ○

11 繊維工業 ◎ △

12 木材・木製品製造業 △ △

13 家具・装備品製造業 △

14 パルプ・紙等製造業 ◎ △

15 印刷・同関連業 ◎ △ △

16 化学工業 ◎ ○ △ ○ △

17 石油製品・石炭製品製造業 ○

18 プラスチック製品製造業 ◎ ○ ○ ○ △

19 ゴム製品製造業 ○ △

21 窯業・土石製品製造業 ◎ ○ ○ △

22 鉄鋼業 ◎ △ ○

23 非鉄金属製造業 ◎ ○ △

24 金属製品製造業 ○ ○ △ ◎

25 はん用機械器具製造業 △ △ ○ △

26 生産用機械器具製造業 △ ○

27 業務用機械器具製造業 △ △

28 電子部品等製造業 ○ ○ △ ○ △

29 電気機械器具製造業 ○ △

30 情報通信機械器具製造業 △

31 輸送用機械器具製造業 ◎ △ ◎ △ △

32 その他の製造業 △ △

34 ガス業 △

36 水道業 ○ ○

78 洗濯・理容・美容・浴場業 ○ ○ △ △

88 廃棄物処理業 △ ◎ △

注:製造部門の事業所 382 件の結果

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表 2.4.4 事業場が主体の業種で使用されている分母(◎10件以上、○3~9件、△2件以下)

業種(中分類)

生産量

(単純

合計)

金額 床面積 入数 営業時

床面積

×営業

時間

37 通信業 △

38 放送業 △

39 情報サービス業 △

41 映像・音声・文字情報制作業 △

44 道路貨物運送業 △

47 倉庫業 △ △

48 運輸に附帯するサービス業

52 飲食料品卸売業 △

56 各種商品小売業 ○

58 飲食料品小売業 △

60 その他の小売業 ○ △

63 協同組織金融業 △

67 保険業 △

69 不動産賃貸業・管理業 ◎

71 学術・開発研究機関 △

74 技術サービス業 △ △

75 宿泊業 ◎ ○ △

76 飲食店 △ △ △ △

79 その他の生活関連サービス業 △ △

80 娯楽業 △ ○ △ ○

81 学校教育 ◎

82 その他の教育,学習支援業 △

83 医療業 △ ◎ △

87 協同組合 △ △

92 その他の事業サービス業 △ △

95 その他のサービス業 △

97 国家公務 △

98 地方公務 △ ◎ △ △

注:製造部門の事業所 148 件の結果

この結果から、主な業種別の分母の現状を踏まえ、設定方法をまとめた。

(1)工場が主体の主な業種

①全般に生産量(単純合計)が多い。算出方法がシンプルで、正確に把握できる等の長所があ

る一方、製品構成の変化等は反映できない。

②食料品製造業や飲料製造業では、生産量(単純合計)が多い。製品の種類が多いので金額を

設定する方法もある。また、原料を加工して食材を製造する工場では原料を設定することが

できる。

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③繊維工業及、パルプ・紙製造業及び印刷・同関連業では、生産量(単純合計)が多い。製品

の形状から、単位は長さ(m)や面積(m2)又は枚数(枚)等である。また、大きさが異なる

製品が多い場合には、主要製品の大きさに換算する方法もある。

④化学工業、石油製品製造業、プラスチック製品製造業及びゴム製品製造業などの化学製品を

製造する業種では、生産量(単純生産量)が最も多いが、製品の種類を考慮して生産量(重

み付け合計)、原料又は金額等も考えられる。

⑤窯業・土石製品製造業、鉄鋼業及び非鉄金属製造業も、④と同様、生産量(単純生産量)の

他、生産量(重み付け合計)や原料等が考えられる。

⑥金属製品製造業は、エネルギー使用量が大きく異なる製品を製造している場合が多く、この

ような工場では、金額や生産量(重み付け合計)が考えられる。

⑦はん用・生産用・業務用機械器具製造業、電子部品製造業及び輸送用機械器具製造業も⑥と

同様である。

⑧廃棄物処理業では、製造でなく処理が主体なので、処理量とするのが一般的である。

(2)事業場が主体の主な業種

①全般に床面積が多い。算出方法がシンプルで、正確に把握できるため、多くの事業場で従来

から使用されている。しかし、利用人数や利用内容の変化(特に営業努力による利用者拡大

等)による影響が反映できないとの短所もあり、その場合は人数や金額とすることが考えら

れる。

一方、他の事業所との比較ができるといった長所があり、公表されたデータもある。(その一

例を図 2.4.2 に示す。)

図 2.4.2 公表された事業所の原単位の例

(出展:「ビルの省エネルギーガイドブック 2018」(一般財団法人省エネルギーセンター)

②卸売業及び小売業では、床面積の他、営業時間が考えられる。利用者数については、外部利

用者の人数を把握しにくいことから使用しにくい。

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③不動産賃貸業・管理業では床面積が多い。

④宿泊業では床面積の他、人数や営業時間が考えられる。

⑤飲食店及び娯楽業では、床面積、金額、人数の他、提供食品が単一で種類が少ない飲食店で

は、提供食品を生産量と捉えることができる。

⑥学校教育では床面積が一般的である。

⑦医療業では床面積(病床数等も含む)の他、人数や金額(診療報酬)が考えられる。

⑧地方公務(病院、水道業、廃棄物処理業等の他の業種に分類されるものを除く)では、床面

積が主体である。

4.3 原単位の分母の見直しの考え方

原単位の分母が、「エネルギーの使用と密接に関係する値」になっておらず、事業者の省エネ取

組の結果等を適切に反映できないような場合等は見直しを検討する必要がある。

その方法をまとめ以下に記載する。

4.3.1 原単位の分母の見直しの必要性の検討

原単位は、種々の要因によって影響を受ける。これらの要因が一時的な要因や事業者の努力が

不十分なことに起因する場合は、安易に分母を変更することは不適切である。したがって、まず、

これらの要因を分析して原単位の見直しを実施すべきかどうかを確認する必要がある。

そこで、原単位に影響を与える要因を分類して表 2.4.5 に示す。

表 2.4.5 原単位の分母の見直し検討のための要因の分類

悪化要因分類 内容 想定される事例

1.影響が一

時的な要因

原単位への影響が一時的なもの

で、次年度以降は原単位の悪化

が解消されると考えられる要因

・生産量、品種の一時的な変更

・設備の利用方法の一時的な変更

・設備の一時的な不具合

・気候の一時的な変動、等

2.事業者が

努力すべき

要因

原単位へ影響を与えるが事業者

の努力等で解決すべき要因

・エネルギー管理の不備

・省エネの取組みの不備

・設備の劣化、故障の多発、等

3.見直しが

考えられる

要因

長期的に原単位へ影響を与え、

事業者の努力等では解決が困難

な要因

・製品構成の変更

・利用者数、営業時間、利用設備等の拡大

・工場の生産内容(製品、工程)の変更

・事業場の提供サービスの変更

以上の検討の結果、見直しが必要と判断される場合は、次項により見直しを実施する。

4.3.2 原単位の見直しの方法

見直しの方法は、基本的には新たに設定する場合と同様である。4.1項及び4.2項による

方法で見直しを行う。

少なくとも最新の定期報告書に記載する 5年度間のデータについて、見直し前と見直し後の原

単位を比較して、既に実施した省エネ改善の成果が反映されるかどうかを確認し、見直しの妥当

性を検証する必要がある。

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原単位の見直しの事例について、現地調査の結果等をまとめ、表 2.4.6 に示す。

表 2.4.6 原単位の見直しの事例

事業所の

種類 原単位に影響を与える要因等

原単位の分母

見直し前 見直し後

工場 景気が良くなり、工場の稼働率が向上 延床面積 生産量(単純合計)

工場 生産量当たりのエネルギー使用量が大きい

高付加価値製品の生産が増加

生産量(単

純合計) 生産量(重み付け)

工場 市場ニーズに合わせて小ロット品が増加し、

切り替え時のエネルギー消費が増加

生産量(単

純合計)

小ロットに対応した

生産量(重み付け)

工場 製品の単価の変更により、エネルギー使用量

と関係なく原単位が悪化 売上額 生産評価額

工場

重量単位と個数単位の2種類の製品があるた

め、共通評価が出来る売上額を分母とした

が、単価の下落で原単位が悪化

売上額 生産評価額

事務所 利用人数の拡大 延床面積 利用人数

貸事務所 テナント誘致による稼働率向上 延床面積 延床面積×稼働率

ショッピン

グセンター

増築による床面積拡大及びビル内施設の変

更による利用人数の変化 延床面積

延床面積×利用人

店舗 提供サービスが多様化し、設備が増加 延床面積 売上高、利用人数

病院 エネルギー消費が多い高度医療機器が増加 病床数 売上高

ホテル 宿泊者の増加や宴会などが増加 部屋数 利用人数、売上高

デ ー タ セ

ンター

サーバーの設置数や稼働率が増加し、エネル

ギー使用量が増加 延床面積

売上高、サーバー設

置数

4.3.3 原単位見直し後の原単位管理

原単位の見直し後は、定期的に推移を把握し、省エネ改善が計画通りに進んでいるかどうかを

確認のうえ、計画通りでない場合はその要因を分析して必要に応じて対策を講じる必要がある。

重要なのは、省エネを推進することである。原単位はその検証のために用いられるものであっ

て、原単位の数値だけを良くするためだけに分母を見直すべきではない。

原単位の見直しは、原単位管理のゴールではなく、新たなスタートである。

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第5章 AIを活用した省エネ行動分析

5.1 AIを活用した分析の目的

事業者がどのような判断材料により省エネ推進に対する活動内容を決定し、実際の省エネ行動

につなげ、省エネ効果を出していくのかを分析することを目的に、AIを活用した分析を実施し

た。

本分析では、AIによる機械学習の分析手法を用いて、エネルギーの使用に係る原単位が悪化

した状況において特定事業者が行う省エネに対する行動を標準化し、省エネ行動に関するどのよ

うな項目が原単位の改善(又は悪化)に寄与しているのかを評価した。

AIを活用した分析処理全体の模式図を図 2.5.1 に示す。

図 2.5.1 AIを活用した分析処理全体の模式図

5.2 AI分析のための前提事項

5.2.1 利用したデータ

本分析で利用した調査項目は、現地調査の事前調査書に追加して事業者に事前に回答してもら

い、現地調査でヒアリングにより確認した。

調査項目と本文内での表記等について表 2.5.1 に示す。(調査項目の詳細については本章末尾の

資料に示す。)

モデルは利用するデータの範囲と5.2.5項で後述する機械学習の手法のことを指している。

モデルについては5.2.6項で詳細を記述するが 3 種類ある。一方、省エネ行動を分析するス

テップについては5.2.6(3)項及び5.3.2(3)項で詳細を記述する。

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表 2.5.1 本分析に利用した調査項目

調査項目

(0~4 の番号は省エネ行動を分析するためのステップ) 本文内での表記

モデル

(1)(2)(3)

0.現状の省エネ活動に関する項目

0-1.業種*

0-2.エネルギーの使用に係る原単位の状況*

0-3.エネルギーの使用量*

0-4.事業者クラス分け評価状況

0-5.資質向上講習の受講状況*

0-6.省エネ活動状況*

工場の現状

業種[0-1]

原単位[0-2]

エネルギー使用量[0-3]

クラス分け評価[0-4]

資質向上講習[0-5]

省エネ活動状況[0-6]

○ ○

○ ○

○ ○

○ ○

○ ○

○ ○

1.原単位悪化時の対応に関する項目

1-1.原単位悪化時の対応

1-2.原単位悪化の要因

悪化要因の対応

悪化時の対応[1-1]

悪化要因特定[1-2]

○ ○ ○

○ ○ ○

2.省エネ活動検討理由と未実施制約に関する項目

2-1.検討して実施できた理由

2-2.検討したが実施できなかった制約

対策の実施条件

実施対策理由[2-1]

未実施対策制約[2-2]

○ ○ ○

○ ○ ○

3.原単位悪化時の省エネ活動実施のに関する項目

3-1.検討して実施した省エネ活動

3-2.検討したが実施できなかった省エネ活動

対策の決定

実施対策[3-1]

未実施対策[3-2]

○ ○ ○

○ ○ ○

力 4. 原単位の変動

原単位改善への効果

原単位の変動

○ ○ ○

*は従来の現地調査報告書にある項目を指す

5.2.2 入力の扱い

工場等現地調査の回答項目のうち、選択肢、数値を本分析に利用した。

5.2.3 出力の扱い

各事業所の原単位は分子・分母ともに固有の単位およびスケールを持つため、異なる事業所間

で共通した尺度を定める必要がある。そこで、平成 29 年度の原単位と、その事業所の平成 25 年

度から平成 28年度の過去 4 年度間で最悪の原単位との比率を「原単位の変動」として処理した。

(原単位の変動)=(平成 29年度の原単位)÷(過去 4年の原単位最悪値)

この値を機械学習モデルの出力として利用した。以下では、原単位の変動を「出力」とする。

5.2.4 前処理

機械学習を行うにあたっては、入出力のスケールが学習データ全体にわたって均等であるこ

とが望ましい。本作業では、入力、出力ともに、平均値・標準偏差がそれぞれ 0, 1 になるよう

に標準化処理を行った。

(モデルに与える入出力の値)=((実際の値)-(平均値))÷(標準偏差)

また、原単位の変動の差が極端に大きい事業所は外れ値であり、学習に悪影響を及ぼす可能

性が高いため、原単位の変動が 0.8 から 1.2 の範囲から外れる事業所等を分析データから除外

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66

した。その結果、分析対象事業所数は表 2.5.2 に示すとおり 345 件となった。

表 2.5.2 利用した分析対象事業所数

分析対象事業所数

345

5.2.5 利用した機械学習の手法

一般的に、機械学習の手法は「表現力」と「学習に必要なデータ量」で説明される。「表現力」

とは、複雑な入出力関係を再現する能力のことである。より表現力の高いモデルを利用すれば、

一見して規則を見出すことが困難な二組の量の間の関係を再現するような計算を統計的に学習

させることができる。学習については5.3①項で後述する。一方で、モデルの表現力が高く

なるほど、その学習を行うのに必要なデータ量も増加する。したがって、機械学習を現実の問

題に適用するにあたっては、問題に適した表現力の程度を見定めることと同時に、それに応じ

た量のデータを収集することが必要になる。

本分析では複数の機械学習の手法を利用した。何れも一般的に用いられる手法で、上記の前

提を踏まえ、表現力は高くないが学習の容易な Ridge 回帰、表現力を高めることができるがデ

ータ数が必要な Neural Network、その中間的性質を持つ Random Forest 回帰の 3種を用いた。

表 2.5.3 機械学習の手法

Ridge 回帰 Random Forest 回帰 NeuralNetwork

線形回帰と同じ構造

を持つが、学習時の目

的関数として、誤差に

関して二乗計算を行

った二乗誤差に加え

て重みを二乗したも

のの和を計算した二

乗和が大きくなりす

ぎないようにペナル

ティを加えたもの。

学習データの入出力関係を再現するよ

うな決定木を複数作成し、それらの出力

を平均したものを最終的な出力とする。

決定木とは、分類のために一定のしきい

値を基準として 2分する操作を繰り返し

て構築する木構造のグラフである。この

決定木は、「変数 A が X 以上」のような

基準で分岐する。分岐の末端には出力値

の候補が格納されており、決定木をたど

っていくと一つの出力値が得られる。

「層」と呼ばれる計算処理を複数

種類用意し、それを逐次適用する

ことで出力を得る。「層」は、線形

回帰と同様の計算を行ったのち、

活性化関数を適用する処理のこと

を指す。活性化関数とは、ニュー

ラルネットワークにおいて、ニュ

ーロン間の情報伝達に相当する処

理を数理的に表現した関数で、一

般に非線形関数を用いる。

5.2.6 利用した分析モデル

本分析では、利用するデータの範囲と機械学習の手法の性質から 3種類の分析モデルを定義し

た。利用する調査データ項目と分析モデルの関係は前述の表 2.5.1 の「モデル」欄のとおりであ

り、また、分析モデルと機械学習の手法の関係を表 2.5.4 に示す。

表 2.5.4 モデル(縦)と機械学習の手法(横)

Ridge 回帰 Random Forest 回帰 Neural Network

全項目 ○ ○

省エネ項目限定 ○ ○ ○

省エネ活動 ○

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(1)全項目から原単位を推定するモデル

本モデルは、調査書の全項目を入力とし原単位の変動を出力としたモデルで分析を行った。

調査書の全ての項目を利用し、予備調査的な意味合いも含むため、Ridge 回帰と Random Forest

回帰で行い Neural Network での分析は省略している。図 2.5.2 に本モデルの概念図を示す。

(2)省エネ活動に関連する項目のみから原単位を推定するモデル

調査書の全項目を入力とする場合、省エネ活動ではない情報も含まれる。これはどの省エネ

活動が原単位変動に寄与するかという主目的の妨げになる可能性がある。したがって、前述の

表 2.5.1 に示すように省エネ活動に該当しない「過去の原単位」等の項目は入力から除外した。

本モデルは Ridge 回帰、Random Forest 回帰、Neural Network を利用した。図 2.5.2 に本モ

デルの概念図を示す。

図 2.5.2 モデル概念図(全項目・省エネ活動に関連する項目のみ)

(3)ステップごとに推論を行うモデル

ステップごとに推論を行うモデルは Neural Network を利用している。図 2.5.3 のように、あ

るステップの入力を与えて推論を開始し、幾つかの層を経た段階での値を用いて次のステップ

の値を推定する。これを最終ステップ(原単位の変動)まで実行する。このモデルでは省エネ

活動にいたる前提事項として「業種」、「過去の原単位」に関連する項目等は含まれると考え、

またモデルを層として捉える Neural Network の性質より入力の絞り込みは行わなかった。

図 2.5.3 モデル概念図(ステップ)

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5.3 AI分析の結果

機械学習による分析は、「モデルの学習」、「モデルの分析」の 2つの段階を経て実現する。

①モデルの学習

機械学習モデルの作成の前提として、工場等現地調査の回答項目を入力とし原単位の変動を出

力とする。モデルの作成とは、入力と出力のペアを正しく再現するように行う作業のことである。

具体的にはモデルに対して入力データを与えたときの出力結果が真値となるように、モデル内の

パラメータを自動調整する処理を実装する。この処理を「学習」という。一方、この処理に利用

するデータ(入出力ペアの組)を以下では「学習データ」という。

②モデルの分析

学習が完了したモデルに対し、推論の過程でどの要素を重視しているか確認することで、原単

位の変動にどの要素がどれほど寄与しているか分析する。モデルの性能は、学習データに対する

当てはまりだけではなく、学習に使わなかったデータに対する当てはまりも考慮して評価する。

学習に利用せず、評価のみに利用するデータを以下では「テストデータ」という。このモデルを

利用して出力の値を推定する数値を「推定値」とし、その行為を以下では「推論」という。

5.3.1 モデルの学習結果

(1)全項目から原単位を推定するモデル

本節モデルの Ridge 回帰のモデルの学習結果を図 2.5.4 に、Random Forest 回帰のモデルの学

習結果を図 2.5.5 に示す。

図中の 2 枚のプロットは、横軸に原単位変動の真値、縦軸に原単位変動の推定値を取った散

布図である。赤い破線は y=x の直線を示しており、散布図の各点がこの直線に近い分布を取っ

ていればよい精度で推定できていると言える。

図の(a)は「学習データ」に対する当てはまりをプロットしたものである。すなわち、分析対

象データから取り出した一部であり、このデータの入出力を再現するように機械学習モデルの

最適化を行った。したがって、図の(a)は学習がうまくできているかを表す。

一方、図の(b)は「テストデータ」に対する当てはまりをプロットしたものである。すなわち、

同じく分析対象データから取り出した一部ではあるが、学習に用いなかったものへの当てはま

りを表している。したがって、学習した結果が、学習に使わなかった未知のデータに対してど

の程度通用するかを表すものである。学習データとテストデータの分割は、10 通り行っている

が、図にはすべての分割に対応する結果をプロットしている。すべてのデータがちょうど一度

テストデータに含まれるように分割を行っているため、(b)にはデータ数と同じだけの点がプロ

ットされている。逆に、すべてのデータが 10 通りの分割のうち 9 回は学習データに含まれるた

め、(a)にはデータ数の 9 倍の点がプロットされている。

各モデルの学習結果は、学習データとテストデータについて真値-推定値の相関係数でも評価し

ている。相関係数の値が高ければモデルの推論精度が良いことになる。

Ridge 回帰、Random Forest 回帰両モデルにおける真値-推定値の相関係数をまとめたものを表

2.5.5 に示す。テストデータの真値-推定値の相関係数は、Random Forest 回帰の推論精度の方が

高いことがわかった。ただし、どちらも相関係数が 0.5 未満であり、絶対的な尺度から見れば

高い推論精度ではない。

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①Ridge 回帰

図 2.5.4 Ridge 回帰の推論結果(全項目)

②Random Forest 回帰

図 2.5.5 Random Forest 回帰の推論結果(全項目)

表 2.5.5 真値-推定値の相関係数(全項目)

機械学習の手法 学習データの相関係数 テストデータの相関係数

Ridge 回帰 0.97 0.22

Random Forest 回帰 0.97 0.36

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(2)省エネ活動に関連する項目のみから原単位を推定するモデル

本節モデルの Ridge 回帰のモデルの学習の推論結果を図 2.5.6 に、Random Forest 回帰のモデ

ルの学習結果を図 2.5.7 に、Neural Network のモデルの学習の推論結果を図 2.5.8 に示す。

Ridge 回帰、Random Forest 回帰、Neural Network における真値-推定値の相関係数についてま

とめたものを表 2.5.6 に示す。(1)の全項目から原単位を推定するモデルと同様、各相関係数

は絶対的な尺度から見れば高い推論精度ではなかった。本節モデルのテストデータの相関係数

は機械学習の手法間で大きな差はなかった。

①Ridge 回帰

図 2.5.6 Ridge 回帰の推論結果(省エネ活動に関連する項目のみ)

②Random Forest 回帰

図 2.5.7 Random Forest 回帰の推論結果(省エネ活動に関連する項目のみ)

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③Neural Network

図 2.5.8 Neural Network の推論結果(省エネ活動に関連する項目のみ)

表 2.5.6 真値-推定値の相関係数(省エネ活動に関連する項目のみ)

機械学習の手法 学習データの相関係数 テストデータの相関係数

Ridge 回帰 0.89 0.20

Random Forest 回帰 0.97 0.24

Neural Network 0.93 0.22

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5.3.2 モデルの分析結果

本分析では、各機械学習の手法の変数が出力にどの程度寄与しているかを確認する指標とし

て「重要度」という呼称で評価する。表 2.5.7 のとおり、「重要度」は機械学習の手法ごとに異

なるが、おおよそ値の絶対値が大きいほど重要である。この値は推論の精度によらず算出でき

るが、精度が高いほどその信頼性も高いと考えられる。Ridge 回帰と Neural Network について

は重要度に正負の符号がつく。重要度が負の符号の場合は該当項目が原単位の改善に寄与して

いることを意味し、一方重要度が正の符号の場合は該当項目が原単位の悪化に寄与しているこ

とを意味している。Random Forestは正負の符号がつかないため重要度の値の大きさで評価する。

表 2.5.7 重要度の定義

Ridge 回帰 Random Forest 回帰 NeuralNetwork

重要度

その項目に対応する

重みパラメータの値

としている。重みが正

の値の場合原単位の

増加(悪化)に寄与し、

負の値の場合減少(改

善)に寄与することを

意味している。絶対値

の大きさが、寄与の度

合いを表している。

1つの決定木におけるある

項目の重要度は、その項目

に基準を設けることで学習

データにおける誤差がどれ

だけ減るかを表す値になっ

ている。これは符号のない

値であり、単に寄与の度合

いのみを表している。変数

の重要度は全決定木の重要

度の平均としている。

出力をある入力

項目で偏微分し

た値の平均値と

した。Ridge 回帰

の場合と同じく、

重要度は符号つ

きの値になる。

(1)全入力から原単位を推定するモデル

表 2.5.8 に Ridge モデル回帰モデル、表 2.5.9 に Random Forest 回帰モデルの主だった上位

20 の項目の重要度を示す。

前述の表 2.5.5 が示すとおり、本モデルの真値-推定値の相関係数は、Random Forest 回帰の

方が高い精度であった。

その Random Forest 回帰のモデルの分析結果は、表 2.5.9 が示すように Random Forest 回帰

の場合原単位に関連する項目が上位の大部分を占めている。入力として原単位に関連する項目

が出力として原単位の変動に他の項目より寄与することは納得できる結果である。そのため原

単位の変動の要因は、過去の原単位に関連する要因と、それに比して他の小さい要因に分ける

必要があることが示唆されている。

Ridge 回帰、Random Forest 回帰ともに、過去の原単位に関連する要因以外に、重要度が高い

項目は「悪化要因特定」、「悪化時の対応」、「実施対策理由/未実施対策制約」などの項目があ

がっている。出力が原単位の変動であるため、入力として「原単位悪化特定」の項目などが上

位にくるのは当然の結果と考えられる。「原単位悪化時、要因特定のために入手したデータ」に

ついては、本分析では省エネ活動の一行為として捉えているが、回答となるデータは外的要因

と捉えることもでき、出力としての原単位変動に影響を与えていることが示唆される。

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表 2.5.8 Ridge 回帰モデルの重要度(全項目)

No. 質問項目 回答項目 重要度

1 実施対策 [3-1] 高効率生産設備の導入 [5-c] -0.570

2 悪化要因特定 [1-2] 燃料等の構成の変動(燃料転換・廃棄物燃料等の割

合の増減等) [4-a] 0.515

3 悪化要因特定 [1-2] 気候の変動(猛暑、厳冬、渇水等) [7-a] -0.510

4 実施対策 [3-1] 取組方針の定期的な評価と、必要に応じて取組強化

[1-c] -0.494

5 悪化要因特定 [1-2] 試運転、試作品等の増加 [7-b] -0.494

6 悪化時の対応 [1-1] 価格 [3-c] 0.450

7 悪化要因特定 [1-2] 環境対策(公害防止、地域環境対策、作業環境対策

等) [6-a] 0.446

8 実施対策 [3-1] 稼働率の向上 [6-a] -0.434

9 未実施対策制約 [2-2] 投資資金 [b] 0.430

10 未実施対策制約 [2-2] 最終判断組織(役員会等)での判定 [g] 0.400

11 資質向上講習[0-5] 期限内に受講していない [c] 0.384

12 悪化要因特定 [1-2] 業務規模拡大・新たな業務の開始 [3-c] 0.377

13 未実施対策制約 [2-2] 自社での導入実績や参考となる他社の事例がない

[f] 0.371

14 悪化時の対応 [1-1] 製品構成 [2-b] 0.362

15 悪化要因特定 [1-2] 製品価格(販売額、出荷額、付加価値生産額等)の

減少 [1-b] -0.350

16 未実施対策 [3-2] その他高効率設備への更新:ボイラ、工業炉、コン

プレッサ他 [5-d] 0.340

17 悪化要因特定 [1-2] 生産単位の変化(小ロット化・多品種化等) [1-d] -0.321

18 実施対策 [3-1] 原単位の算出方法の見直し [2-b] -0.291

19 実施対策 [3-1] 操業方法の改善:不要時停止、待ち時間の短縮、運

転の集約化等 [3-b] -0.281

20 実施対策理由[2-1] CSR(企業の社会的責任)の遵守 [c] -0.279

※括弧内[]は添付資料の項目番号を指す

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表 2.5.9 Random Forest 回帰モデルの重要度(全項目)

No. 質問項目 回答項目 重要度

1 原単位 [0-2] 平成 28 年度(工場) 0.1707

2 原単位 [0-2] 平成 27 年度(工場) 0.0762

3 原単位 [0-2] 平成 26 年度(工場) 0.0557

4 原単位 [0-2] 平成 27 年度(事業場) 0.0461

5 原単位 [0-2] 平成 28 年度(事業場) 0.0432

6 工場使用量 [0-3] 原油換算(kL) [c] 0.0421

7 原単位 [0-2] 平成 26 年度(事業場) 0.0391

8 工場使用量 [0-3] 電気の使用量(GJ) [b] 0.0337

9 工場使用量 [0-3] 燃料及び熱の使用量(GJ) [a] 0.0334

10 悪化要因特定 [1-2] 燃料等の構成の変動(燃料転換・廃棄物燃料等の割

合の増減等) [4-a] 0.00690

11 実施対策理由[2-1] ISO14001・50001 の活動 [f] 0.00616

12 実施対策 [3-1] 稼働率の向上 [6-a] 0.00612

13 悪化要因特定 [1-2] 生産構成の変化(エネルギー多消費製品比率の増加

等) [1-c] 0.00543

14 実施対策 [3-1] 省エネ推進会議・環境会議等の設置、省エネパトロ

ール等の推進活動の実施 [1-a] 0.00497

15 実施対策 [3-1] 照明設備:消灯、間引き [4-a] 0.00440

16 実施対策理由 [3-1] 経営層の理解 [a] 0.00434

17 悪化時の対応 [1-1] 生産量 [2-a] 0.00394

18 悪化要因特定 [1-2] 製品価格(販売額、出荷額、付加価値生産額等)の

減少 [1-b] 0.00393

19 資質向上講習[0-5] 期限内に受講する予定[d] 0.00379

20 悪化要因特定 [1-2] 生産抑制、減産等による稼働率低下 [1-a] 0.00376

※括弧内[]は添付資料の項目番号を指す

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(2)省エネ活動に関連する項目のみから原単位を推定するモデル

前述の(1)項の全入力から原単位を推定するモデルの分析から、本調査の現地調査報告書

を利用した調査項目からは、原単位の変動の要因としては、原単位に直接関連する項目の方が

省エネ活動に関連する項目より重要度が高いことが示唆されたため、本節モデルでは省エネ活

動に関連する項目に限定して原単位を推定するモデルの分析を行った。本節モデルの分析は表

2.5.1 のステップ 1~4 が該当する。

本節モデルの機械学習の手法のテストデータの相関係数は、(1)項の全項目から原単位を推

定するモデルのような差はなかったため、各機械学習の手法で主だった上位 20 に入った重要度

の項目の中で複数の機械学習の手法で確認できる項目をより信頼性が高い項目と定義した。複

数の機械学習の手法で主だった上位 20 の重要度に入った項目は表 2.5.10 のとおりである。表

中の重要度の符号の項目に「-」があるものは、符号の正負が判別しない Random Forest 回帰に

よる分析結果が含まれる場合を指している。

表 2.5.10 複数の手法で重要と判定された項目(省エネ活動に関連する項目のみ)

質問項目 No 回答項目 重要度

の符号

資質向上講習

[0-4]

1 未受講 [c] 正

2 受講予定 [d] 正

悪化時の対応

[1-1]

1 生産量 [2-a] -

2 製品構成 [2-b] 正

原単位悪化要因

[1-2]

1 燃料等の構成の変動 [4-a] 正

2 気候の変動 [7-a] 負

3 業務規模拡大・新たな業務の開始 [3-c] 正

4 製品価格(販売額、出荷額、付加価値生産額等)の減少 [1-b] -

5 生産構成の変化(エネルギー多消費製品比率の増加等) [1-c] 正

実施対策理由

[2-1]

1 ISO14001・50001 の活動 [f] -

2 経営層の理解 [a] -

3 従業員の省エネ意識の向上 [b] -

未実施対策制約

[2-2]

1 投資資金 [b] 正

2 最終判断組織(役員会等)での判定 [g] 正

3 自社での導入実績や参考となる他社の事例がない [f] 正

実施対策

[3-1]

1 高効率生産設備の導入 [5-c] 負

2 取組方針の定期的な評価と、必要に応じて取組強化 [1-c] 負

3 稼働率の向上 [6-a] 負

4 照明設備:消灯、間引き [4-a] -

未実施対策

[3-2] 1 その他高効率設備への更新 [5-d] 正

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(3)ステップごとに推論を行うモデル

本節モデルの分析は、省エネ活動について更に細分化をし、ステップごとに推論を行うモデ

ルの分析をする。機械学習の手法は Neural Network を利用している。本節モデルが(1)項及

び(2)項のモデルと異なるのは、図 2.5.2 で示したように、入力の各項目と出力の原単位の

変動が一対一の関係で重要度を算出するが、本節モデルは、図 2.5.3 で示したようにステップ

間で区切るために、ステップ間の関係を考慮した原単位の変動の重要度について算出すること

ができる。本節では、各ステップの中でも省エネ行動に直結する「実施対策」及び「未実施対

策」(ステップ 3)に対するそれぞれの理由と制約(ステップ 2)に限定して推論の分析結果を

示す。

ステップ 2 からステップ 3 への推論結果についても、先述の(1)項及び(2)項のテスト

データの真値-推計値の相関係数と同様に絶対的な尺度からみると高い数値ではなかった。ここ

では本推論結果の相関係数の中で高かった相関係数の主だった項目を表 2.5.11 に示す。実施対

策については設備更新や、消灯、間引き等設備・機器に対するの項目が高いことがわかった。

一方、検討したが実施しなかった対策については設備・機器以外の項目が高かった。

表 2.5.11 ステップ 2からステップ 3への推論結果(ステップ)

項目 学習データ

の相関係数

テストデータ

の相関係数

実施対策 [3-1]

空調設備の高効率設備への更新 [5-a] 0.20 0.21

照明設備:消灯、間引き [4-a] 0.19 0.19

その他高効率設備への更新 [5-d] 0.11 0.16

設備改善・設備付加 [5-e] 0.11 0.13

高効率生産設備の導入 [5-c] 0.10 0.16

未実施対策 [3-2]

原単位の算出方法の見直し [2-b] 0.21 0.16

省エネルギーを推進するのに必要な資金・人材の確保 [1-e] 0.16 0.12

製造工程の改善 [6-c] 0.13 0.16

次に、表 2.5.11 の項目と表 2.5.10 のステップ 3 の項目の両項目に含まれる項目について分

析を行った。重要度が高かった主な項目について表 2.5.12 に示す。

「照明設備:消灯、間引き」については、実施した理由は「CSR(企業の社会的責任)の遵守」、

実施しなかった制約は「マンパワー」及び「対象設備の技術的な内容の理解」という結果になっ

た。「高効率生産設備の導入」については、実施した理由は「従業員の省エネ意識の向上」、実施

しなかった制約は「投資資金」という結果になった。最後に、「その他高効率設備への更新」に

ついては、実施しなかった制約が「マンパワー」と「投資資金」という結果になった。

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表 2.5.12 ステップ 2-3 分析(複数の手法で重要と判定された項目)

No. 回答項目

照明設備:消灯、

間引き [4-a]

実施対策理由 [2-1]

1 CSR(企業の社会的責任)の遵守 [c]

未実施対策制約 [2-2]

1 マンパワー [c]

2 対象設備の技術的な内容の理解 [d]

高効率生産設備の

導入 [5-c]

実施対策理由 [2-1]

1 従業員の省エネ意識の向上 [b]

未実施対策制約 [2-2]

1 投資資金 [b]

その他高効率設備

への更新 [5-d]

未実施対策制約 [2-2]

1 マンパワー [c]

2 投資資金 [b]

5.4 AI分析結果に基づく今後に向けての検討課題

本分析結果から、機械学習による原単位変動の推定は下記の現状であることがわかった。

① 今回の調査対象数では、モデルの学習の段階で推論精度が高くない。

② 原単位変動の要因に省エネ活動項目がある。

③ 原単位変動の要因に省エネ活動以外の外的要因がある。

一方、本分析を推進することには下記の利点があることがわかった。

① 学習したモデルを通して、原単位に寄与している要因を分析することができる。

② 現地調査書内の項目を網羅的に分析し、主要因がどこにあるのか自動的に検証することが

できる。

③ 複数のモデル、複数の機械学習の手法を用いて分析することで、主要因がどこにあるかを

探索的に検証することができる。

④ 省エネ活動の実施につながる理由や制約条件についても、原単位の変動に寄与する重要度

を把握することができる。

以上のことから、本分析に基づき今後の調査に対して以下の項目が検討課題となる。

① 調査規模の拡大

機械学習で信頼できる結果を得るには、数千件以上のデータが利用できることが望ましい。

機械学習で信頼できる結果を求めるべくデータ数の確保するとき、現状と同等の調査を大

規模に実施することが難しい場合は、より簡素な調査を実施することを提案する。

② 原単位の内訳についての調査の検討

原単位の変動要因には、省エネ活動は元より様々な要因があると考えられる。原単位自体

が事業者によって異なるため、原単位の構成要素を検討するフェーズを設け、原単位を構

成する分子・分母について調査を行うことが不可欠である。

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【資料】「原単位悪化後の対応についての省エネ活動について」調査項目一覧

1.調査項目一覧

0. 現状の省エネ活動に関する質問

0-1. 業種

0-2. エネルギーの使用に係る原単位の状況

0-3. エネルギー使用量

0-4. 事業者クラス分け評価状況

0-5. 資質向上講習の受講状況

0-6. 省エネ活動状況

1. 原単位悪化時の対応・分析に関する質問

1-1. 原単位悪化時の対応

1-2. 原単位悪化の要因

2. 省エネ活動検討理由と未実施制約に関する質問

2-1. 検討して実施できた理由

2-2. 検討したが実施できなかった制約

3. 原単位悪化時の省エネ活動検討実施状況に関する質問

3-1. 検討して実施した省エネ活動

3-2. 検討したが実施できなかった省エネ活動

2.各調査項目の選択肢

0. 現状の省エネ活動に関する質問と回答内容

0-1. 業種

細分類番号

0-2. エネルギーの使用に係る原単位の状況

H25-H29 の 5年度間の原単位

0-3. エネルギー使用量

a. 燃料及び熱の使用量(GJ)

b. 電気の使用量(千 kWh/GJ)

c. 原油換算(kL)

0-4. 事業者クラス分け評価状況

H27-H29 の 3 年度間 SABC 評価

0-5. 資質向上講習の受講状況(1つ選択)

a. 期限内に受講した

b. 受講したか不明

c. 期限内に受講していない

d. 期限内に受講する予定

e. 受講は不要(エネルギー管理士取得者として選任されている)

0-6. 省エネ活動状況(複数選択可)

a. 関連部門が参加する省エネルギー推進体制がある

b. 関連部門が参加するエネルギー使用状況及び原単位推移等の検討会を実施している

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c. 省エネルギーの目標が定められており、工場全体で改善活動を実施している

d. 省エネルギー等に関して、現場従事者による小集団活動等の改善活動(例:QC活動)を

実施している

e. 省エネルギー等に関して、改善提案制度等の従業者に対する評価・表彰制度がある

f. トップの省エネルギー推進に関する強い意識、指導がある

g. 省エネに関する研修会等への参加やOJTでの教育等を実施している

h. 省エネルギー推進体制及び検討会の内容を定期的に精査し、必要に応じ変更している

i. 管理標準の見直しを随時実施している

j. 設備・機器を省エネルギー等の計画に基づいて更新している

1. 原単位悪化時の対応に関する質問

1-1. 原単位悪化時に入手したデータ(複数選択可)

1. エネルギー使用量

1-a. 燃料・熱使用量

1-b. 電力量

2. 活動量

2-a. 生産量

2-b. 製品構成

2-c. 利用者数

2-d. 生産(利用)時間

2-e. 延床面積

3. 外部指標

3-a. 気温

3-b. 為替レート

3-c. 価格

1-2. 原単位悪化の要因(複数選択可最大 3つまで)

1.製品等に関する要因

1-a. 生産抑制、減産等による稼働率低下

1-b. 製品価格(販売額、出荷額、付加価値生産額等)の減少

1-c. 生産構成の変化(エネルギー多消費製品比率の増加等)

1-d. 生産単位の変化(小ロット化・多品種化等)

2.原材料に関する要因

2-a. 原材料等の構成の変動

2-b. 資源保護対策(原材料の再使用、再利用等)

3.建物の利用状況に関する要因

3-a. 利用者数の増加

3-b. 利用時間の変更

3-c. 業務規模拡大・新たな業務の開始

4.エネルギー源に関する要因

4-a. 燃料等の構成の変動(燃料転換、廃棄物燃料等の割合の増減等)

4-b. 蓄電池システムの導入等

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4-c. エネルギー種転換(熱⇔電気)

5.設備・操業に関する要因

5-a. 設備の劣化、効率の低下

5-b. 設備の増強

5-c. 設備の故障、トラブル

6.環境改善等に関する要因

6-a. 環境対策(公害防止、地域環境対策、作業環境対策等)

6-b. 生産性・安全性向上対策(自動化、作業省力化対策等)

7.臨時のエネルギー使用による要因

7-a. 気候の変動(猛暑、厳寒、渇水等)

7-b. 試運転、試作品等の増加

8.管理に関する要因

8-a. 管理ルール(管理標準等)の設定・遵守の不備

8-b. 省エネに関連する取組方針の設定・遵守の不備

8-c. 原単位の設定・運用管理の不備

2. 省エネ活動検討理由と未実施制約に関する質問

2-1. 検討して実施できた理由(複数選択可)

a. 経営層の理解

b. 従業員の省エネ意識の向上

c. CSR(企業の社会的責任)の遵守

d. マンパワーの確保(外部コンサル活用を含む)

e. ESCO 事業・補助金等の活用

f. ISO14001・50001 の活動

2-2. 検討したが実施できなかった制約(複数選択可)

a. 実施に対して制約は無いが未実施

b. 投資資金

c. マンパワー

d. 対象設備の技術的な内容の理解

e. 対策が多々あって選べない

f. 自社での導入実績や参考となる他社の事例がない

g. 最終判断組織(役員会等)での判定

3. 原単位悪化時の省エネ活動検討実施状況に関する質問

3-1. 検討して実施した省エネ活動(複数選択可最大 3つまで)

3-2. 検討したが実施できなかった省エネ活動(複数選択可最大 3つまで)

1.事業者全体の判断基準の遵守

1-a. 省エネ推進会議・環境会議等の設置、省エネパトロール等の推進活動の実施

1-b. 取組方針・目標の設定

1-c. 取組方針の定期的な評価と、必要に応じて取組強化

1-d. 取組方針及び遵守状況の評価方法の見直し

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1-e. 省エネルギーを推進するのに必要な資金・人材の確保

1-f. 取組方針の周知と省エネルギーに関する教育の実施

1-g. 省エネルギー活動に関する書類の厳正管理

2.原単位の運用管理の見直し

2-a. 原単位の詳細な分析(その推移、固定と変動エネルギー)、改善案の検討

2-b. 原単位の算出方法の見直し

3.工場等の管理標準の整備及び活用

3-a. 管理標準の現場で活用されるマニュアル体系化

3-b. 操業方法の改善:不要時停止、待ち時間の短縮、運転の集約化等

3-c. 管理標準の管理値等の見直し: 空調・給湯設備の設定値変更、台数制御の変更、

デマンドコントローラの設定値見直し等

4.工場等の判断基準の遵守

4-a. 照明設備:消灯、間引き

4-b. 空気調和設備・給湯設備:不要時停止、設定温度、フィルター・フィン洗浄頻度等

4-c. 燃焼設備(ボイラ、工業炉):空気比

4-d. 廃熱の回収利用:燃焼設備等の廃ガス、蒸気ドレン

4-e. 放射・伝導等による熱損失防止:工業炉、断熱保温、蒸気トラップ

5.設備更新や設備改善・設備付加

5-a. 空調設備の高効率設備への更新:パッケージ空調機、熱源機

5-b. 照明設備の高効率設備への更新:LED 照明器具、Hf 照明器具

5-c. 高効率生産設備の導入

5-d. その他高効率設備への更新:ボイラ、工業炉、コンプレッサ、ポンプ、ファン他

5-e. 設備改善・設備付加:廃熱回収装置・インバータ制御装置の追加

6.操業状況、建物利用状況の変化

6-a. 稼働率の向上

6-b. 操業日数、利用時間、営業時間の短縮

6-c. 製造工程の改善:原料・生産品目の変更、試運転・試作品の減少、工程移転等

6-d. 建物(テナント)の入居率変化、用途等の変更

6-e. 気候異変:冷夏、暖冬等

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第3部 調査後のまとめ

第1章 現地調査に関するアンケート結果

現地調査終了後に調査先に対してアンケートを実施し、調査を受けたことによる効果及びご意

見並びに登録調査機関の活用状況等についてお伺いしてその結果を整理した。

本章では現地調査に関する結果を記載し、登録調査機関の活用状況については第2章、判断基

準についての意見は第5章に記載する。

1.1 アンケート調査の方法

現地調査実施後に、表 3.1.1 のアンケートにより実施した。

表 3.1.1 アンケートの設問内容

1.調査による効果について

Q1.今回の調査は省エネを進める上で有意義であったとお考えですか。

a.大変有意義であった b.有意義であった

c.あまり役にたたなかった d.わからない

(Q1でa又はbとご回答された方に伺います。)(c又はdとご回答された方はQ6へ進んでください。)

Q2.どのような点が有意義であったとお考えですか。(複数回答可)

a.判断基準の遵守についての理解が深まった

b.管理標準の作成方法や運用方法がわかった

c.原単位を改善するヒントとなった

d.省エネ事例や原単位管理等の情報が参考になった

e.社内に省エネの必要性が認識されるきっかけとなった

f.支援策の情報が得られた

g.企画推進者の職務についての理解が深まった h.その他

Q3.調査を受けたことで、社内の意識等に変化があったとお考えですか。

a.大きな意識変化があった b.やや意識変化があった

c.特に変化はなかった

a又はbとご回答された場合は、どのような意識変化であったかご記入ください。

Q4.調査の実施後、既に取組の改善等を行った項目があればお答えください。

Q5.調査の実施後、今後取組の改善等を行う予定の項目があればお答えください。

(Q6とQ7は、Q1でc又はdとご回答された方に伺います。)

Q6.調査の効果が余りなかった又は不明であったのは、どのような点に要因があるとお考えですか。

Q7.調査の効果を高めるために、必要と考えられる措置等についてお考えがあればお答えください。

2.調査の実施方法について

Q8.訪問調査時の技術調査員の対応は適切でしたか。

a.適切であった b.どちらかといえば適切であった

c.どちらかといえば不適切であった d.不適切であった

c又はdとご回答された場合は、不適切であった内容をご記入ください。

Q9.調査依頼から訪問調査までの省エネルギーセンターの対応は適切でしたか。

a.適切であった b.どちらかといえば適切であった

c.どちらかといえば不適切であった d.不適切であった

c又はdとご回答された場合は、不適切であった内容をご記入ください。

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3調査全般について

Q10.省エネ法の工場等判断基準の条文についてご意見がありましたらご記入ください。

(管理の実態と乖離している内容、条文の削除・追加・修正を希望する内容等)

Q11.調査について、その他のご意見がありましたらご記入下さい。

4.省エネ診断について

Q12.非特定事業者、又は中小企業に該当する事業者の事業所を対象とした省エネ診断があります。

特定事業者等のエネルギー管理指定工場等も受診が可能となった場合、受診を希望しますか。

a.是非受診したい b.興味があり、受診を検討したい

c.診断の必要性を感じない d.内容がわからないので判断できない

(Q12でa又はbとご回答された方に伺います。)(c又はdとご回答された方はQ14へ進んでください。)

Q13.省エネ診断は無料ですが、有料となった場合にも受診を希望しますか。

a.全額自己負担でも受診したい

b.1/2~1/3 程度自己負担であれば受診したい

c.自己負担が不要な場合のみ受診したい

d.現時点では判断できない

5.登録調査機関の活用状況について

Q14.登録調査機関に確認調査申請書を提出し認定を受ければ、定期報告書の提出等が免除さ

れる確認調査制度があります。

このような制度をご存じですか。

a.はい b.いいえ

(いいえとご回答された方はQ17に進んでください)

Q15.(Q14はいとご回答された場合)登録調査機関の活用を検討したことはありますか。

a.はい b.いいえ

(いいえとご回答された方はQ17に進んでください)

Q16.(Q15ではいとご回答された場合)実際に活用したことはありますか。

a.はい b.いいえ

(いいえとご回答された方はQ16-2に進んでください)

Q16-1.実際に活用した場合、その際のご感想、またその後活用しなくなった理由 (費用が

高額 等)をお聞かせください。

Q16-2.活用しなかった場合、その理由を選択してください。(複数回答可)

a.制度(当該年度の定期報告書提出免除、合理化計画作成指示対象外)に魅力を感

じない

b.現運用(3年間工場等現地調査対象外等)に魅力を感じない

c.確認調査費用が高額

e.近くに登録調査機関がなかった

g.登録調査機関に依頼(相談)したが断られた →断られた理由:( )

d.指定工場等の数が多い(指定工場等を複数設置している場合)

f.複数の指定工場等が離れた場所にある等、1つの登録調査機関では対応が困難で

あった。(指定工場等を複数設置している場合)

h.その他:( )

Q17.登録調査機関制度に関するご意見ご要望等がありましたらご記入ください。

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a.判断基準の

遵守について

の理解が深

まった25.1%

b.管理標準の

作成方法や運

用方法がわ

かった23.9%

c.原単位を改

善するヒントと

なった17.8%

d.省エネ事例

や原単位管理

等の情報が参

考になった12.7%

e.社内に省エ

ネの必要性が

認識される

きっかけとなっ

た10.5%

f.支援策の情

報が得られた3.7%

g.企画推進者

の職務につい

ての理解が深

まった4.8%

h.その他1.6%

1.2 アンケートの回答結果

アンケートは調査対象の 530 件に対して送付し、484 件の回答(回収率 91.3%)を得た。

1.2.1 調査による効果について

(1)「Q1.今回の調査は省エネを進める上で有意義であったとお考えですか。」

回答結果を図 3.1.1 に示す。

「a.大変有意義であった」が 41.3%、「b.有意義であった」が 55.8%であった。合計 97.1%

が「有意義であった」と回答しており、この調査が多くの事業者にとって効果的であったことを

示している。

図 3.1.1 「Q1.調査が有意義であったか」への回答結果(回答数:484 件)

(2)Q1.で「a.大変有意義であった」又は「b.有意義であった」と回答した場合の継続

設問に対する回答

(2-1)「Q2.どのような点が有意義であったとお考えですか。」

回答結果を図 3.1.2 に示す。

「a.判断基準の遵守についての理解が深まった」が最も多く 25.1%、「b.管理標準の作成

方法や運用方法がわかった」の 23.9%と「c.原単位を改善するヒントとなった」の 17.8%が続

いた。調査では判断基準に基づく管理標準の設定と遵守及び原単位の管理と改善を大きなテーマ

にしていることから、その成果があったと考えられる。

図 3.1.2 「Q2.どのような点が有意義であったか」への回答結果

(Q1.で有意義と回答した事業者からの回答(複数回答で 1,341 件))

a.大変有

意義

41.3%

b.有意義55.8%

c.余り役

に立たな

かった

1.9%

d.はっき

りしない1.0%

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85

a.省エネ推

進・活動の重

要性の認識が

高まった53.7%

b.管理標準による管

理の重要性を認識し

た25.7%

c.原単位管理

の重要性の認

識が高まった9.4%

d.管理が不十分な

ところがあることを認

識した6.4%

e.上司や他部門の省エネ法に対

する遵法意識が高まった1.9%

f.その他2.9%

(2-2)「Q3.調査を受けたことで、社内の意識等に変化があったとお考えですか。」

回答結果を図 3.1.3 に示す。

「a.大きな意識変化があった」が 21.6%、「b.やや意識変化があった」が 55.7%で、合計

77.3%の事業者に意識の変化があった。

図 3.1.3 「Q3.意識変化があったか」への回答結果(回答数:467 件)

意識変化があった場合の内容について、自由記載欄の記載内容を集計し、分類した結果を図

3.1.4 に示す。

「a.省エネ推進の重要性の認識が高まった」が 53.7%で最も多かった。次に多かったのは、

「b.管理標準による管理の重要性を認識した」(25.7%)と「c.原単位管理の重要性の認識が

高まった」(9.4%)であった。

図 3.1.4 「Q3.意識変化の内容(自由記入)」への回答の分類結果(複数回答で 374 件)

(2-3)「Q4.調査の実施後、既に取組の改善等を行った項目があればお答えください。」

自由記入事項を集計し、分類した結果を図 3.1.5 に示す。結果は以下のとおりである。

①「a.管理標準等の見直しを実施した」が 51.3%と最も多かった。次いで「b.省エネ推進

活動等の見直しや強化を実施した」(24.1%)、「c.設備の運用改善又は更新等を実施又は決

定した」(17.9%)であった。最初に取り組むべき対策として管理標準を見直し、順次、省エ

ネ活動の強化、具体的な省エネ対策に移されたものである。

a.大きな

意識変化

あり21.6%

b.やや意

識変化あ

り55.7%

c.特に変

化なし22.7%

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86

a.管理標準等

の見直しを予

定している38.6%

b.省エネ推進活動等の見直しや強化を予定している27.3%

c.設備の運用

改善又は更新

等を予定して

いる18.4%

d.原単位算定方法等の見直しを予定している15.7%

a.管理標準等

の見直しを実

施した51.3%

b.省エネ推進

活動等の見直

しや強化を実

施した24.1%

c.設備の運用

改善又は更新

等を実施又は

決定した17.9%

d.原単位算定

方法等の見直

しを検討した6.7%

②また、「d.原単位算定方法等の見直しを検討した」も 6.7%あった。調査では製品構成の変

化等の外的要因の影響で、省エネの努力が原単位に表れていないため、原単位の分母の設定

が議論されたことも多く、早速検討に入った事例である。

図 3.1.5 「Q4.既に実施した項目(自由記入)」への回答の分類結果(複数回答で 195 件)

(2-4)「Q5.調査の実施後、今後取組の改善等を行う予定の項目があればお答えください。」

自由記入事項を集計した結果を図 3.1.6 に示す。分類した項目はQ4.の実施済み項目と同様

となった。結果は以下のとおりである。

①Q4.で既に実施した案件は 195 件であったが、Q5.で予定している案件は 451 件と 2.3

倍あり、まず出来ることから始め、徐々に拡大していく予定を立てていると思われる。

②「a.管理標準等の見直し」が 38.6%と最も多いが、Q4.の実施済の 51.3%よりは低くな

り、すぐに出来るところから着手したことが伺える。

図 3.1.6 「Q5.今後実施予定の項目(自由記入)」への回答の分類結果(複数回答で 451 件)

(3)Q1.で「c.あまり役にたたなかった」又は「d.わからない」と回答した場合の継続

設問に対する回答

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(3-1)「Q6.調査の効果が余りなかった又は不明であったのは、どのような点に要因がある

とお考えですか。」について

Q1.で、調査があまり役にたたなかった又は不明であったと回答した事業者による、その要

因についての意見を集約すると、以下のとおりである。

・既に判断基準の遵守や省エネ対策は実施しているので、更なる調査による効果は薄い。

・判断基準による管理面の調査が主体であり、具体的な省エネ改善の提案などが少なかった。

(3-2)「Q7.調査の効果を高めるために、必要と考えられる措置等についてお考えがあれば

お答えください。」

前設問の事業者による、調査の効果を高めるための必要措置についての意見を集約すると、以

下のとおりである。

・設備の消費エネルギーを減らすことを主眼とする調査で省エネ改善の提案を増やして欲しい。

1.2.2 調査の実施方法について

(1)「Q8.訪問調査時の技術調査員の対応は適切でしたか。」

回答結果のまとめを図 3.1.7 に示す。結果は以下のとおりである。

①「a.適切であった」が 88.2%で、「b.どちらかといえば適切であった」を加えると、99.4%

が適切との回答であった。

②一方、「c.どちらかといえば不適切であった」が 1 件(0.2%)、また、「d.不適切であっ

た」が 2件(0.4%)あった。今後の調査に生かすべき貴重な意見であり、その内容は以下の

通りである。

・対応が少し威圧的だった。(2件)

・工場設備の技術的理解度に疑問を感じた。(1件)

図 3.1.7 「Q8.調査員の対応」への回答結果(回答数 482)

(2)「Q9.調査依頼から訪問調査までの省エネルギーセンターの対応は適切でしたか。」

回答結果のまとめを図 3.1.8 に示す。結果は以下のとおりである。

①「a.適切であった」が 82.6%で、「b.どちらかといえば適切でああった」を加えると、

97.7%が適切との回答であった。

②一方、「c.どちらかといえば不適切であった」が 9 件(1.9%)、「d.不適切であった」が

2件(0.4%)あった。今後の調査に生かすべき貴重な意見であり、内容は以下の通りである。

・事前調査書の作成方法が分かりにくい。また、作成期間が短い。(6件)。

a.適切88.2%

b.どちら

かといえ

ば適切11.2%

c.どちら

かといえ

ば不適切0.2%

d.不適切0.4%

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88

a.工場調査に

関する意見・

感想37.1%

b.調査及び調査員への謝辞30.5%

c.省エネに関

するアドバイス

や情報提供の

希望12.6%

d.省エネ推進

等の意思表明11.3%

e.省エネ法に

関する意見・

要望6.6%

f.その他・感想

等2.0%

・事前に提出した関連書類の一部が、現地調査員に手渡されていなかった。(2件)

・事前調査書の修正依頼を電話で受け対応に苦慮したので、メールにすべきである。(1件)

・電話で日程を打ち合わせたのに、日程確定の返信依頼の督促ファックスが届いた。(1件)

・書類を郵送したとのことだが届かず、メールで対応した。(1件)

図 3.1.8 「Q9.省エネルギーセンターの対応」への回答結果(回答数 483)

(3)「Q11.その他のご意見がありましたらご記入ください」

自由記入事項を集計し、分類した結果を図 3.1.9 に示す。結果は以下のとおりである。

①「a.工場調査に関する意見・感想」が最も多く 37.1%を占めた。Bクラス指定を受けたこ

とから、工場調査への期待と関心が高まっている。その一方で、調査当日までには事前調査

書作成や閲覧資料の準備などが必要であり準備期間の不足を指摘する声や、現地調査方法の

簡略化・短縮化を望む声があった。また、省エネ改善策の提示を望むとの意見もあった。

②次いで「b.調査及び調査員への謝辞」が 30.5%あった。原単位を改善するために必要な省

エネルギー対策等に関して、これまで気づかなかったこと等に関する調査員のアドバイスや

説明が良かったとの意見が多かった。また省エネの意識が高まったことが「d.省エネ推進

等の意思表明」(11.3%)にも表れている。

③また、「c.省エネに関するアドバイス、情報提供の希望」が 12.6%あり、自社の省エネ改

善の指導や他社事例の収集等が出来る機会を求める意見が多かった。

④「e.省エネ法に関する意見・要望」(6.6%)の内容は、判断基準の内容を企業の規模や業

種によって区別して欲しいとの要望等であった。

図 3.1.9 「Q11.その他の意見」への回答結果

a.適切82.6%

b.どちら

かといえ

ば適切15.1%

c.どちら

かといえ

ば不適切1.9%

d.不適切0.4%

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1.2.3 省エネ診断について

省エネ診断についての設問への回答が得られた 473 件の結果を以下に示す。

(1)「Q12.特定事業者等のエネルギー管理指定工場等も受診が可能となった場合、受診を希

望しますか。」

回答結果のまとめを図 3.1.10 に示す。結果は以下のとおりである。

①「a.是非受診したい」が 6.6%で、「b.興味があり、受診を検討したい」の 47.4%を加え

ると、54.0%が受診に前向きな回答であった。

②「d.内容がわからないので判断できない」が 28.3%あり、この中には省エネ診断の内容が

わかれば受診希望となる可能性がある。

図 3.1.10 「Q12.省エネ診断受診希望」への回答結果(回答数 473)

(2)「Q13.省エネ診断は無料ですが、有料となった場合にも受診を希望しますか。」

前問で「a」又は「b」と回答した 255 件についての回答結果のまとめを図 3.1.11 に示す。結

果は以下のとおりである。

①「a.全額自己負担でも受診したい」が 2.4%で、「b.1/2~1/3 程度自己負担であれば受診

したい」の 9.0%を加えると、11.4%が有料であっても受診に前向きな回答であった。

②「d.現時点では判断できない」が 48.6%あり、有料化された省エネ診断の内容や費用対効

果によっては、前向きに検討される可能性がある。

図 3.1.11 「Q13.有料診断になった場合の受診希望」への回答結果(回答数 255)

(Q12.是非受診したい又は興味があり受診を検討したいと回答した事業者からの回答))

a.是非受

診したい6.6%

b.興味が

あり、受診

を検討し

たい47.4%

c.診断の

必要性を

感じない17.8%

d.内容が

わからな

いので判

断できな

い28.3%

a.全額自

己負担で

も受信し

たい2.4%

b.1/2~1/3程度自

己負担で

あれば受

診したい9.0%

c.自己負

担が不要

な場合の

み受診し

たい40.0%

d.現時点

では判断

できない48.6%

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90

a.知って

いる19.9%

b.知らな

い80.1%

a.検討し

たことが

ある24.0%

b.検討し

たことは

ない76.0%

第2章 登録調査機関の活用状況に関するアンケート調査結果

本アンケートは第1章の現地調査後のアンケートの設問の一部として実施し、調査対象の 530

件に対して 482 件の回答(回答率 90.9%)を得た。

(1)「Q14.登録調査機関に確認調査申請書を提出し認定を受ければ、定期報告書の提出等が

免除される確認調査制度があります。このような制度をご存じですか。」

回答結果を図 3.2.1 に示す。

「a.知っている」は 482 件中 96件で、

19.9%であった。

図 3.2.1 制度の認知(回答数:482 件)

(2)「Q15.(Q14ではいとご回答された場合)登録調査機関の活用を検討したことはありますか。」

回答結果を図 3.2.2 に示す。

「a.検討したことがある」は 96 件中 23 件

で、24.0%であった。

図 3.2.2 活用検討の有無(回答数:96件)

(3)「Q16.(Q15ではいとご回答された場合)実際に活用したことはありますか。」

回答結果を図 3.2.3 に示す。

「a.活用したことがある」は 23件中 1件で、

4.3%であった。

図 3.2.3 実際の活用の有無(回答数:23 件)

a.活用し

たことが

ある4.3%

b.活用し

たことは

ない95.7%

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(4)「Q16-1.実際に活用した場合、その際のご感想、またその後活用しなくなった理由 (費

用が高額 等)をお聞かせください。」

理由は「調査に必要な資料や書類の準備が大変である。」との回答であった。

(5)「Q16-2.活用しなかった場合、その理由を選択してください。(複数回答可)」

回答結果を表 3.2.1 及び図 3.2.4 に示す。その結果をまとめると、以下のとおりである。

①活用しなかった理由は、「a.制度(当該年度の定期報告書提出免除、合理化計画作成指示対

象外)に魅力を感じない」が最も多く 37.9%あった。また、「b.現行運用(3年間工場等現

地調査対象外等)に魅力を感じない」が 17.2%であり、魅力を感じていない場合を合計する

と 55.1%を占めた。

②「c.確認調査費用が高額」が 2番目に多く、24.1%であった。

③なお、「h.その他」の主な内容は以下のとおりである。

・定期報告書の作成もエネルギー管理活動の一環であり、自社で継続して行いたい。

・資料等を見ると指定工場を持たない特定事業者が対象となっていないため。

表 3.2.1 制度を活用しなかった理由(複数回答)

選択項目 選択件数 割合%

a.制度(当該年度の定期報告書提出免除、合理化計画作成指示対

象外)に魅力を感じない 11 37.9%

b.現行運用(3年間工場等現地調査対象外等)に魅力を感じない 5 17.2%

c.確認調査費用が高額 7 24.1%

d.近くに登録調査機関がなかった 1 3.4%

e.登録調査機関に依頼(相談)したが断られた 1 3.4%

f.指定工場数が多い 0 0.0%

g.複数の指定工場が離れた場所にある等、1つの登録調査機関で

は対応が困難であった 0 0.0%

h.その他 4 13.8%

合 計 29 100.0%

図 3.2.4 活用しなかった理由(複数回答で 29件)

a.制度に魅力

を感じない

37.9%

b.現行運用に

魅力を感じな

17.2%

c.費用が高額

24.1%

d.近くに登録調

査機関がな

かった

3.4%

e.登録調査機

関に依頼(相

談)したが断ら

れた

3.4%

h.その他

13.8%

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(6)「Q17.登録調査機関制度に関するご意見ご要望等がありましたらご記入ください。」

自由記入事項を集計し、同様の意見をまとめて分類した結果を表 3.2.2 及び図 3.2.5 に示す。

その内容は以下のとおりである。

①制度やメリットを理解していないため、「b.制度の詳細をもっと知りたい」が 20.3%と最

も多く、「a.制度の内容を調べて検討したい」も 20.3%あった。また、制度を調べるにあ

たり、「c.制度がわかりにくい」との意見が 9.4%あった。これらの制度やメリットをもっ

と知りたいとの意見は合わせて 42.2%あった。

【意見の例】(文末のアルファベットは分類の記号を表す。)

・制度の内容を調べて検討したい。(a.)

・調査費用がどれくらいなのかを知りたい。(b.)

・登録調査機関を利用するに当たって、利用者側の条件を知りたい。(c.)

・本制度活用は有料と認識しているが、利用者側にどのようなメリットがあるか、具体的な

事例を交えて知りたい。(c.)

②制度そのものを認知していなかったため、「d.制度をもっとPRしてほしい」が10.9%、「e.

制度を知らなかった」が 7.8%あった。

③制度を利用するための労力と費用が多大な割にメリットが少ないと考えたため、「f.制度や

現行運用に魅力を感じない」とした意見も 18.8%と比較的多かった。

【意見の例】

・定期報告書と同様の内容を記載する必要があり、有効期限も当該年度のみ、かつ有料とい

うこともあり、メリットが見つからない。業務量削減と経費の関係においてメリットがあ

れば検討したい。

④定期報告書を作成すること自体を省エネ推進活動の一部と捉え、「g.定期報告書は自社で作

成すべき」との積極的な意見も 6.3%あった。

【意見の例】

・自社で定期報告書を作成する過程で省エネに対する状況把握・確認ができるので、外部の

登録調査機関を利用するメリットが不明である。

・外部調査機関の力を借りるまでもなく、問題は自社にて解決することが先決と考えている。

⑤「h.制度の利用は考えていない」は 12.5%あった。

【意見の例】

・エネルギー使用について事前に把握していなければならないため、現時点では必要ないと

判断している。

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表 3.2.2 その他の意見の分類・集計結果(意見数 64 件)

件数 割合%

a.制度の内容を調べて検討したい 8 12.5%

b.制度の詳細をもっと知りたい 13 20.3%

c.制度がわかりにくい 6 9.4%

d.制度をもっと PRしてほしい 7 10.9%

e.制度を知らなかった 5 7.8%

f.制度や現行運用にに魅力を感じない 12 18.8%

g.定期報告書は自社で作成すべき 4 6.3%

h.制度の利用は考えていない 8 12.5%

i.その他 1 1.6%

合計 64 100.0%

図 3.2.5 その他の意見の分類・集計結果(回答数:64件)

a.制度の内容

を調べて検討

したい

12.5%

b.制度の詳細

をもっと知りた

20.3%

c.制度がわか

りにくい

9.4%d.制度をもっと

PRしてほしい

10.9%

e.制度を知ら

なかった

7.8%

f.制度や現行

運用にに魅力

を感じない

18.8%

g.定期報告書

は自社で作成

すべき

6.3%

h.制度の利用

は考えていな

12.5%

i.その他

1.6%

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第3章 エネルギー管理士の教育ニーズに関するアンケート調査結果

エネルギー管理企画推進者(以下「企画推進者」という。)、エネルギー管理者及びエネルギー

管理員(以下「管理者等」という。)の選任後の教育については、エネルギー管理講習「新規講習」

修了者(以下「エネルギー管理講習修了者」という。)に対しては、法令上、資質向上講習の受講

が義務付けられているが、エネルギー管理士の場合、免状取得後は、法令に定められた講習等の

機会が無く、選任後の教育等の状況は明らかではない。このため、エネルギー管理士の資格によ

り選任された企画推進者及び管理者等を対象に、今回の調査先に対してアンケートを実施し、教

育の現状やニーズを調査した。

3.1 アンケート調査の方法

調査先の企画推進者、管理者等に対し、表 3.3.1 のアンケートにより実施した。

表 3.3.1 アンケートの設問内容

①選任要件

a.エネルギー管理士 b.エネルギー管理講習新規講習修了者(以下の②~⑦は記入不要)

②現状1:組織として、教育(=講習会、講演会、OJT等)を受ける体制が整っていますか。

a.整っている b.やや整っている c.どちらともいえない

d.あまり整っていない e.整っていない

③現状2:現在、どのような内容について教育を受けていますか。(複数選択可)

a.省エネに係る政策動向 b.エネルギー管理(体制構築、着眼点等)

c.省エネ設備・機器の最新動向 d.他事業者の省エネルギー実施事例

e.判断基準の解説・管理標準の作り方 f.法定手続き(定期報告書等の書き方等)

g.具体的な省エネ実施方法 h.その他 i.特になし

具体的に :( )

④現状3:③の内容について、誰から教育を受けていますか。(複数回答可)

a.社外(の講師や専門家など) b.社内(の先輩社員や上司など)

c.その他

具体的に :( )

⑤現状4:年間にどの程度の頻度で教育を受けていますか。

a.1 回/年 b.2~6 回/年 c.7 回/年以上

d.不定期

⑥ニーズ1:今後、どのような内容について知識を習得したいと思っていますか。(複数選択可)

a.省エネに係る政策動向 b.エネルギー管理(体制構築、着眼点等)

c.省エネ設備・機器の最新動向 d.他事業者の省エネルギー実施事例

e.判断基準の解説・管理標準の作り方 f.法定手続き(定期報告書等の書き方等)

g.具体的な省エネ実施方法 h.その他

i.特になし

具体的に :( )

⑦ニーズ2:⑥の内容について、知識を習得する方法として希望する形態はどれですか。(複数選択可)

a.省庁等からのメールマガジン b.定期刊行物

c.企業・団体等が行う講習会への参加

d.国の制度(数年毎の受講義務)としての講習会への参加

e.その他

具体的に :( )

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3.2 アンケートの回答結果

3.2.1 アンケート回収率

調査対象工場の企画推進者及び管理者等の人数と、このうちのエネルギー管理士の資格で選任

された人数を表 3.3.2 に示す。アンケートはエネルギー管理士に依頼し、企画推進者の 86.3%、

管理者等の 81.5%及び合計では 83.3%の回収を得た。

表 3.3.2 調査対象事業者のエネルギー管理士数とアンケート回収率

名称 人数 エネルギー管理士 アンケート回答

人数 割合 回答有り 回収率

企画推進者 466 63 13.5% 52 82.5%

管理者等 427 130 30.4% 106 81.5%

合計 893 193 21.6% 158 81.9%

3.2.2 エネルギー管理士の現状の教育状況

(1)「②現状1:組織として、教育(=講習会、講演会、OJT等)を受ける体制が整っていま

すか。」

回答結果を図 3.3.1 に示す。「a.整っている」は合計では 31.6%にとどまった。企画推進者

の方が管理者等よりも 10.2 ポイント上回っていたのは、企画推進者は本社の勤務が多く、社内外

の多方面な省エネを含む教育の場が比較的あるためと推定される。

図 3.3.1 組織としての教育体制

(集計数:企画推進者 52、管理者等 106、合計 158)

(2)「③現状2:現在、どのような内容について教育を受けていますか。(複数選択可)」

回答結果を図 3.3.2 に示す。結果は以下のとおりである。

A.特に多い項目はなく、全般的に各テーマに分散していた。

B.合計では「c.省エネ設備・機器の最新動向]が 18.7%と最も多く、「d.他事業者の省エ

ネルギー実施事例」(14.4%)と「g.具体的な省エネ実施方法」(13.9%)と合わせて、省

エネ対策に直接つながる設備の更新や改造のための内容が多かった。

C.また、「a.省エネに係る政策動向」(12.8%)と「f.法定手続き(定期報告書等の書き方等)」

(13.6%)等の省エネ法に関わる内容もそれぞれ 10%以上あった。

38.5

28.3

31.6

32.7

31.1

31.6

13.5

25.5

21.5

13.5

11.3

12.0

1.9

3.8

3.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

企画推進者

管理者等

合計

割合

a.整っている b.やや整っている c.どちらともいえない

d.あまり整っていない e.整っていない

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D.具体例では、以下のような内容があった。

・経済産業局や省エネルギーセンター等開催の講習会での省エネ施策、省エネ技術等

・関連団体、メーカー等主催の展示会・見学会等での省エネ機器の動向、省エネ事例等

・社内やグループ会社の技術交流会等での省エネ実績等の情報

・省エネ診断等の省エネ改善事例と費用対効果等

図 3.3.2 現在の教育内容

(集計数:企画推進者 122、管理者等 252、合計 374(複数回答))

(3)「④現状3:③の内容について、誰から教育を受けていますか。(複数回答可)」

回答結果を図 3.3.3 に示す。結果は以下のとおりである。

A.社外講師が半分近くを占め、全体では 47.9%あった。

B.社内講師は、管理者等が企画推進者より 12.0 ポイント多く、工場内の上司や先輩を具体的に

あげた回答も多かった。

C.具体例では、社外では経済産業局、省エネルギーセンター、省エネコンサル及びメーカー等、

社内ではエネルギー管理事務局、管理者等、上司、先輩及び技術系社員等であった。

D.その他は、インターネットや雑誌等の媒体と、エネルギー管理指定工場地区会への参加が教

育と考えられる。

図 3.3.3 教育をする人(組織)(集計数:企画推進者 55、管理者等 114、合計 169(複数回答))

16.4

12.3

13.6

11.5

11.5

11.5

20.5

17.9

18.7

11.5

15.9

14.4

9.8

8.7

9.1

10.7

13.5

12.6

13.1

13.9

13.6

3.3

2.0

2.4

3.3

4.4

4.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

企画推進者

管理者等

合計

割合

a.省エネに係る政策動向 b.エネルギー管理(体制構築、着眼点等)

c.省エネ設備・機器の最新動向 d.他事業者の省エネルギー実施事例

e.判断基準の解説・管理標準の作り方 f.法定手続き(定期報告書等の書き方等)

g.具体的な省エネ実施方法 h.その他

i. 特になし

56.4

43.9

47.9

32.7

44.7

40.8

10.9

11.4

11.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

企画推進者

管理者等

合計

割合

a.社外(の講師や専門家など) b.社内(の先輩社員や上司など)

c.その他

Page 101: 平成30年度 省エネルギー政策立案のための ... · 由を分析し、改善案についてまとめた。 ③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

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(4)「⑤現状4:年間にどの程度の頻度で教育を受けていますか。」

回答結果を図 3.3.4 に示す。不定期が最も多く、合計では 56.0%であったことから、教育が常

態化していない事業者が多いと推察される。

なお、2~6回/年が 27.3%、1回/年が 16.7%であった。

図 3.3.4 教育の頻度

(集計数:企画推進者 48、管理者等 102、合計 150)

3.2.3 エネルギー管理士の教育のニーズ

(1)「⑥ニーズ1:今後、どのような内容について知識を習得したいと思っていますか。(複数

選択可)」

回答結果を図 3.3.5 に示す。結果は以下のとおりである。

図 3.3.5 教育のニーズ

(集計数:企画推進者 167、管理者等 321、合計 488(複数回答))

A.合計では「g.具体的な省エネ実施方法」が 20.3%と最も多く、次いで「c.省エネ設備・

機器の最新動向」(20.1%)と「d.他事業者の省エネルギー実施事例」(19.1%)であり、

省エネ対策に直接つながる設備の更新や改造のための内容が多かった。

B.この傾向は、前述の現状の教育と同様であるが、「g.具体的な省エネ実施方法」が現状より

も 6.7 ポイント多く、具体的で有効な方法を求める意向が強いことを表している。

18.8

15.7

16.7

27.1

27.5

27.3

0.0

0.0

0.0

54.2

56.9

56.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

企画推進者

管理者等

合計

割合a.1回/年 b.2~6回/年 c.7回/年以上 d.不定期

14.4

9.3

11.1

12.0

10.6

11.1

19.2

20.6

20.1

19.2

19.0

19.1

11.4

14.3

13.3

3.6

3.7

3.7

18.6

21.2

20.3

1.8

0.9

1.2

0.0

0.3

0.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

企画推進者

管理者等

合計

割合

a.省エネに係る政策動向 b.エネルギー管理(体制構築、着眼点等)

c.省エネ設備・機器の最新動向 d.他事業者の省エネルギー実施事例

e.判断基準の解説・管理標準の作り方 f.法定手続き(定期報告書等の書き方等)

g.具体的な省エネ実施方法 h.その他

i. 特になし

Page 102: 平成30年度 省エネルギー政策立案のための ... · 由を分析し、改善案についてまとめた。 ③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

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C.また、「a.省エネに係る政策動向」は 11.1%と現状よりやや少ないものの、具体例では法

改正や補助金に関する情報を求めるニーズは多かった。

D.具体例では、習得したい知識として、以下のような内容があった。

・各種補助金情報と補助金を活用した省エネ取組事例

・費用対効果の高い改善の実施方法や実例

・エネルギー管理・評価手法

・原単位の管理・改善方法、原単位の分母の考え方

・同業他社の省エネ事例

・定期報告書・中長期計画書、管理標準の作成

・IOT、AI の省エネ活用技術

(2)「⑦ニーズ2:⑥の内容について、知識を習得する方法として希望する形態はどれですか。

(複数選択可)」

回答結果を図 3.3.6 に示す。結果は以下のとおりである。

A.「c.企業・団体等が行う講習会への参加」が全体の 40.0%で最も多く、他は概ね 20%前後

であった。

B.具体例では、各種講習会への参加の他、定期刊行物掲載の同業他社の省エネ事例や管理標準

等が挙げられた。

C.また、講習会の開催方法については、任意出席形式の講習会を望む意見と、逆に、上司の許

可を得やすい等の理由から、「資質向上講習」のように義務化された講習会の定期的な開催を

望む意見の両方があった。

D.さらに、時間的・地理的な制約がない「eラーニング」等の学習形態を望む意見があった。

図 3.3.6 知識を習得する形態の希望

(集計数:企画推進者 91、管理者等 179、合計 270(複数回答))

19.8

17.9

18.5

16.5

20.1

18.9

44.0

38.0

40.0

15.4

21.8

19.6

4.4

2.2

3.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

企画推進者

管理者等

合計

割合

a.省庁等からのメールマガジン

b.定期刊行物

c.企業・団体等が行う講習会への参加

d.国の制度(数年毎の受講義務)としての講習会への参加

e.その他

Page 103: 平成30年度 省エネルギー政策立案のための ... · 由を分析し、改善案についてまとめた。 ③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

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A.省エネ推進目

標に対する意見・

要望36.3%

B.行政へのその

他の意見・要望14.3%

C.判断基準等に

関する意見・要望11.5%

D.各種情報提供

への意見・要望9.5%

E.省エネ補助金

の制度への意見・

要望8.1%

F.所管官庁への

書類提出等に関

する意見・要望7.9%

G.講習会、省エ

ネ診断等への意

見・要望2.6%

H.その他9.7%

第4章 調査対象事業者からの意見・要望

4.1 意見・要望の集計結果

現地調査で事業者から伺った意見・要望を内容によって分類し、表 3.4.1 及び図 3.4.1 に示す。

結果の概要は以下のとおりである。詳しい内容は4.2項に記述する。

①最も多かったのは、「A.省エネ推進目標に対する意見・要望」で 36.3%あり、原単位算定

方法や改善目標に関する意見等であった。

②また、「B.行政へのその他の意見・要望」(14.3%)、「C.判断基準等に関する意見・要望」

(11.5%)、「D.各種情報提供への意見・要望」(9.5%)と続き、省エネ施策に関する意見・

要望や、各種省エネに関する情報提供への意見・要望が寄せられた。

表 3.4.1 調査対象事業者からの意見・要望の集計

事業者からの意見・要望内容 件数 割合%

A.省エネ推進目標に対する意見・要望 165 36.3

B.行政へのその他の意見・要望 65 14.3

C.判断基準等に関する意見・要望 52 11.5

D.各種情報提供への意見・要望 43 9.5

E.省エネ補助金の制度への意見・要望 37 8.1

F.所管官庁への書類提出等に関する意見・要望 36 7.9

G.講習会、省エネ診断等への意見・要望 12 2.6

H.その他 44 9.7

合計 454 100.0

現地調査で意見・要望があった 385 事業者の内容を集計(複数意見あり)

図 3.4.1 調査対象事業者からの意見・要望の集計

Page 104: 平成30年度 省エネルギー政策立案のための ... · 由を分析し、改善案についてまとめた。 ③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

100

4.2 意見・要望の内容

意見・要望の具体的な内容については以下のとおりである。

A.省エネ推進目標に対する意見・要望

内容の多くは原単位改善目標に関するものであった。事業者の原単位の悪化によって、Bク

ラスに指定されたため、関心が高まったことによる。

主な意見・要望は以下の通りである。

・現在の原単位は生産構成の変化が反映されていないので、原単位の分母を見直すことを考

えている、教えて欲しい。(調査時に個別に回答した)(同様意見多数あり)

・外的要因により原単位の悪化を余儀なくされている。例えば、製品に対する要求品質の上

昇、公害対策の実施又は良好な作業環境の確保などである。原単位の評価ではその実情を

考慮して欲しい。(同様意見多数あり)

・中長期目標としての年平均原単位 1%の改善目標を継続することは、年を追うごとに困難

になり非常に厳しい状況になって来ている。政策的に緩和して欲しい。(同様意見多数あり)

B.行政へのその他の意見・要望

Bクラス指定の解除や条件緩和を望む意見も多く寄せられた。理由は先の「A. 省エネ推進

目標に対する意見・要望」に寄せられた内容と同じく、原単位の改善目標の達成が難しくなっ

て来ていることによる。

主な意見・要望は以下の通りである。

・原単位のみの評価でクラス分けするのではなく、事業特有の事情や事業者の努力の結果も

評価して欲しい。(同様意見多数あり)

・再生可能エネルギーを使用している点に関して、優遇措置をお願いしたい。

また、次のような行政の対応を期待する意見もあった。

・BM(ベンチマーク)制度の提供範囲を拡大して欲しい。事業所の位置付けがわかり、省エ

ネ活動推進の一助となる。

C.判断基準・管理標準に関する意見・要望

意見の多くは、「判断基準の内容の解釈が難しいので、自社設備の管理標準への具体的な適用

方法がわかりにくい」、「工場調査でアドバイスをうけ理解が深まった」との内容であった。

また、従業員が少ない中小零細企業向けに簡潔な判断基準の適用を望む声もあった。

D.各種情報の提供への意見・要望

「同業他社の省エネ対策の実施例や最新の技術的な改善事例の情報が欲しい」等の意見が多

数寄せられた。特に同業他社の改善事例や原単位の算定方法の事例の紹介を望んでいた。

一般的な省エネ改善事例については、資源エネルギー庁や当センターのホームページ等を紹

介し、また原単位の算定方法については、調査時に個別に説明した。

主な意見・要望は以下の通りである。

・同業他社の原単位の算定方法を教えて欲しい。(同様意見多数あり)

・同業他社の改善事例を教えてほしい。(同様意見多数あり)

・省エネ改善のアイディア情報が欲しい。(同様意見多数あり)

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101

E.省エネ補助金の制度への意見・要望

事業者が進める省エネ対策には費用面で限界があるので、国の補助金制度により支援して欲

しいとの意見が多くあった。

また、補助金を活用した省エネ投資は原単位改善に極めて効果的なものだと広く認識されて

おり、応募要件の緩和等の具体的な内容が多かった。主なものは以下の通りである。

・補助金の応募要件の緩和をして欲しい。(同様意見多数あり)

・募集枠について、大企業でも利用出来るチャンスを増やして欲しい。

・公募開始から応募締め切の期間が短いので延長して欲しい。

・申請手続きに多大な労力と費用を要しており、採択されないときのリスクが大変大きくな

っている。簡潔な補助金申請や申請書作成に係る支援等を望む。また、実施後の報告の簡

略化もお願いしたい。

F.所管官庁への書類提出等に関する意見・要望

省エネ法以外にも他の省庁や自治体に同様の報告書の提出があるので、一本化出来ないか、

また報告書作成ツールが毎年のように変更になるので、何年間か固定していただけないかとの

要望があった。

G.講習会、省エネ診断等への意見・要望

省エネ推進の新たな打開策を見つけるため、講習会や第3者による省エネ診断に関心を寄せ

る事業所が多かった。当センターで実施しているものやホームページで確認出来るもの等を紹

介した。

また、管理標準に関する講習会開催を望む声もあった。

H.その他

「省エネに向けて活動体制の強化をはかる。」といった内容の意思表明が、たいへん多く寄せ

られた。

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第5章 判断基準に関する意見の集計・分析

本調査では、判断基準について、遵守事項と実態との乖離や問題点及び見直し案等を、現地調

査の対象となった事業者及び現地調査を実施した調査員からヒアリングし、その結果を集計、分

析して、問題点及び見直し案をまとめた。

5-1 事業者の意見の集計・分析結果

調査対象の 530 事業所のうち、90事業所から意見が寄せられた。(回答率 17.0%)その集約結

果を5-1-1項に、また、具体的な意見を5-1-2項に記載する。

5-1-1意見の集計結果

事業者の意見を集計して表 3.5.1 及び図 3.5.1 に示す。結果は以下のとおりである。

①判断基準全般に関する意見が 62%を占めた。集約すると、判断基準は表現方法が難解で、実

装置への適用がわかりにくく、したがってガイドラインや要約版が望まれている。

判断基準は全ての設備をカバーするように設定されており、内容も難解なため、自社の設備

に具体的に適用させるのが困難になっているとの意見である。

②判断基準の事業場や工場の個別項目に関するものは 21%と比較的少なかった。現地調査を通

じて、個別項目に精通している事業者は少なく、具体的な個別項目まで言及しにくかったも

のと思われる(個別項目については5-2項参照)。

③その他の項目では、原単位の1%改善の目標に関するものがあり、継続が年々困難になって

いくとの意見や、環境施設の増強などの必要な設備改造による原単位悪化を考慮して欲しい

との要望があった。

表 3.5.1 判断基準に対する事業者の意見(複数回答)

意見の内容 件数 割合

1.判断基準全般に関する事項

A.表現方法が難解である 29 29.0%

B.実装置への適用が難解である 20 20.0%

C.ガイドライン・要約版の公開を要望する 13 13.0%

2.判断基準の個別項目に関する事項

A.「空気調和機、換気設備」に関する意見 5 5.0%

B.「燃料の燃焼」に関する意見 5 5.0%

C.「加熱及び冷却並びに伝熱」に関する意見 2 2.0%

D.「電気の動力・熱への変換」に関する意見 9 9.0%

3.その他の事項

A.原単位管理に関する意見 9 9.0%

B.判断基準遵守が省エネに役立つか不明 3 3.0%

C.その他 5 5.0%

合 計 100 100.0%

注:事業所 90件の集計結果

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図 3.5.1 判断基準に対する事業者の意見(複数回答)

5-1-2 具体的な意見

主な意見を以下に示す。

(1)判断基準全般に関する事項

A.「表現方法が難解である」の具体的な意見

・条文が難しい表現なので、もっと判りやすい表現を使ってほしい。(輸送用機械器具製造業)

・判断基準が言わんとしている内容の理解は難しく、その記載事項が「弊社の設備に該当す

ることなのか?」、「弊社が実施している内容がそれにマッチしているのか?」解釈に苦労

している。(非鉄金属製造業)

・エネルギーの管理者は専門的知識を備えた要員があたることが望ましいが、実際の運用に

は素人である従業員の協力が必要。(倉庫業)

B.「実装置への適用が難解である」の具体的な意見

・自社の個々の設備がどの判断基準に該当するのか、解りにくいところがある。(プラスチッ

ク製品製造業)

・設備全般に当てはまるように書かれており、印刷機のように設備の分類としては幾つかの

設備が組み合わさって構成されている場合、総括表や個票をどう分類してよいのか、また

どの判断基準が該当するのかわからない。(印刷・同関連業)

C.「ガイドライン・要約版の公開を要望する」

・条文は,一般向けの記述だと思うので、それを補う手段として,具体的な事例を複数紹介

していただけると理解が進むと思う。(電気機械器具製造業)

1-A 表現方法が難

29.0%

1-B 実装置への適

用が難解

20.0%1-C ガイドライン・要

約版の公開要望

13.0%

2-A 「空気調和

機、換気設備」に関

する意見5.0%

2-B 「燃料の燃焼」

に関する意見

5.0%

2-C 「加熱及び冷

却並びに伝熱」に

関する意見2.0%

2-D 「電気の動力・

熱への変換」に関

する意見9.0%

3-A 原単位管理に

関する意見

9.0%

3-B 判断基準遵守

が省エネに役立つ

か不明3.0%

3-C その他

5.0%

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・各判断基準の対象となる設備がどのような設備なのか明記された要約版(解説)のような

ものがあればより理解しやすい。(非鉄金属製造業)

・条文をどのように実態に反映すればよいのかガイドラインなどで目的をより詳しく示して

頂けると参考になる。(食料品製造業)

(2)判断基準の個別項目

A.「空気調和機、換気設備」に関する意見

・EHP・GHP 空調機の効率を計測することは非常に困難である。小さな空調機器が多数あり、

専門家がほとんどいない。(学校教育)

・「政府の推奨する設定温度を勘案した管理標準とすること」とあるが、業態上政府推奨の温

度設定をしても守れないのが現状。(不動産賃貸業)

B「燃料の燃焼」に関する意見

・炉体の構造上、空気比の設定の判断基準が出来ない箇所がある。(金属製品製造業)

・オフセット印刷機のドライヤーの部分は乾燥炉の項目にそぐわない。(印刷・同関連業)

C「加熱及び冷却並びに伝熱」に関する意見

・「断続的な運転」とあるが、文章がどのようにでも取れるので、もっとわかり易くしてほし

い。(プラスチック製品製造業)

D「電気の動力・熱への変換」に関する意見

・電圧についてはほとんど変動がないため、各種の電動力応用設備において、電流の管理を

行っていれば、管理項目に電圧を規定し計測管理を行う事は実態に合わない(プラスチッ

ク製品製造業)

・電圧・電流で、電気の損失を低減するよう管理できる設備は少ないと思う。(はん用機械器

具製造業)

・ほとんどの設備について電流・電圧の計測、管理標準の設定が謳われているが、現実的に

は、配電盤毎程度が妥当。(電子部品・デバイス・電子回路製造業)

(3)その他の事項

A.原単位管理に関する意見

・建物を賃貸借で借りている場合にビルオーナーでの機器等の取り組み改善を行わないと数

字の改善が中々はかれない。テナント側であればやることに限りがある。(宿泊業)

・再生重油がA重油に変わったことにより、地道に行っている対策が、あまり評価されない。

(非鉄金属製造業)

・改善がある程度進んでくると、継続的な 1%/年の削減は困難になってくると思われる。(鉄

鋼業)

・環境施設の増強をしたことが、生産性に結びつかず、省エネを意識しても評価されない懸

念がある。(農業)

B.判断基準遵守が省エネに役立つか不明

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・作成した基準が本当に省エネを進めていく上で有益なのか、よく分からない部分も感じた。

(プラスチック製品製造業)

C.その他

・ベンチマーク対象の拡大業種の選定理由について明確にして欲しい。ある業界にはゴール

があり、ある業界にはゴールの見えない努力を強いることは不公平感がある。(繊維工業)

・工場規模による判断基準を簡素化できるようにして欲しい。工場の規模が小さい場合、適

用される判断基準を簡素化したい。(電子部品・デバイス・電子回路製造業)

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5-2 調査員の意見の集計・分析結果

事業者からの意見では、前項のとおり、判断基準の全般的な問題点と改善策が出されたが、専

ら事務所及び工場の各項目については件数が少なく、また改善策についての意見も少なかった。

そこで、現地調査に従事した調査員から意見を聴取した。調査員は、現地調査の判断基準の遵

守状況の調査の際、現場担当者からヒアリングし、意見交換した経験が蓄積されているので、多

くの具体的な問題点と見直し案についての意見が寄せられた。

調査員 117 名のうち 60名(回答率 51.3%)から述べ 374 件の意見があり、その集計結果を5

-2-1項に、また、具体的な問題点と見直し案を5-2-2項に記載する。

5-2-1 意見の集計結果

調査員の意見を集計して表 3.5.2 に示す。全般的な事項 36件は表中の 4項目に集約され、それ

以外は、専ら事務所が 83件、工場が 255 件あった。

表 3.5.2 判断基準に対する調査員の意見(複数回答)

分類項目 件数 割合

1.判断基準全般に関する事項 36 9.6%

(1)実装置への適用が難解 (18) -

(2)記載内容が難解 (11) -

(3)設備の管理対象範囲の記載がない (5) -

(4)項目の追加が必要 (2) -

2.専ら事務所に関する事項 83 22.2%

(1)空気調和設備、換気設備 (61) -

(2)ボイラー設備、給湯設備 (9) -

(3)照明設備、昇降機、動力設備 (13) -

(4)受変電設備、BEMS (0) -

(5)発電専用設備、コージェネ設備 (0) -

(6)事務用機器、民生用機器 (0) -

(7)業務用機器 (0) -

3.工場に関する事項 255 68.2%

(1)燃料の燃焼の合理化 (44) -

(2-1)加熱設備等 (59) -

(2-2)空調・給湯設備 (29) -

(3)廃熱の回収利用 (26) -

(4-1)発電専用設備 (0) -

(4-2)コージェネ設備 (0) -

(5-1)放射・伝導等による熱損失防止 (8) -

(5-2)抵抗等による電気損失防止 (13) -

(6-1)電動力応用・電気加熱設備 (54) -

(6-2)照明・昇降機、事務用・民生用機器 (22) -

合 計 374 100.0%

注:調査員 60名からの意見集約結果

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5-2-2 具体的な問題点と見直し案

各意見を集計分析し、判断基準の項目ごとに問題点と見直し案をまとめた。その結果を表 3.5.3

に示す。概要は以下のとおりである

①判断基準全般では、事業者の意見と同様、「実装置への適用」や「記載内容」の難解さが挙げ

られた。また、「管理対象範囲の設定」は、小型機器が多数ある場合などで管理標準の対象範

囲の自主基準を設定できるようにするとの案である。

②専ら事務所では、多くの事業所で設置している、空調、ボイラー、照明等の設備に関する事

項であった。

③工場では、加熱設備及び電気設備に関する項目を中心に、調査件数の少ない発電設備を除く

各設備に関する事項が挙げられた。

表 3.5.3 判断基準に関する問題点及び見直し案

1.判断基準全般に関する事項

項目 内容 問題点 判断基準見直し案

判断基準全般 A.実装置への

適用が難解

A.工場用において、実装置に

は判断基準のどの項目が概要す

るのかわかりにくい。(18 件)

A.実際の装置の管理に用

いるガイドラインや適用

事例を作成して公開する。

B.記載内容が

難解

B.内容が専門家でないとわか

らないような難解な部分や具体

的な内容が理解しにくいところ

が多い。(11 件)

B.実際の装置の管理に用

いるガイドラインや適用

事例を作成して公開する。

C.設備の管理

対象範囲の記載

がない

C.小型機器が多数ある場合は、

管理対象機器の裾切りを管理標

準で設定して運用してもよいと

考えられるが、告示にはその記

載がない。(5件)

C.個別項目の適用範囲を

明記、又は、自主基準を定

めて管理範囲を決めても

よいことを記載する。

D.項目の追加

が必要

D.「(4)の熱の動力等への変換」

には蒸気駆動ポンプ等も含まれ

ると思われるが、発電設備のみ

が対象となっている。(2件)

D.「(4)の熱の動力等への

変換」に、「蒸気駆動ポン

プ等」も適用できるように

する。

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2.専ら事務所に関する事項

番号・項目 各項目の内容 問題点 判断基準見直し案

(1)空調

設備、換

気設備

①管理

または

基準

(1)①ア 室内温度、換気回

数、湿度、外気の

有効利用等の設

A.室温の管理以外の換気

回数、湿度及び外気の有効

利用等の管理は設備的に

管理が困難である場合が

多い。(7件)

A.「室内温度及び設定が

可能であれば換気回

数、・・・」等と室内温度

と他の項目を区別した記

載とする。

(1)①イ 燃焼する熱源機

の空気比の設定

A.空気比の管理はGHP

や小型機の場合は困難で

ある。(4件)

A.空気比の管理はGH

Pや小型機は、除外する。

(1)①ウ 空調を構成する

設備の季節変動

に応じた総合的

なエネルギー効

率の向上

A.「総合的なエネルギー

効率」が理解されていない

場合が多い(5件)

A.「総合的なエネルギー

効率」の意味又は管理す

べき具体的な項目の例を

記載する。

(1)①オ 複数台のポンプ

の負荷変動への

対応

A.自動制御や 1台のケー

スが多く、複数台の管理ま

では不要である。(3件)

A.この項目を削除する。

(1)①カ 同一区画で複数

の空調機の負荷

配分

A.同一区画の具体的な説

明が無く、範囲が不明。(4

件)

A.「同一区画」の範囲な

どの説明を記載する。

(1)①キ 換気設備の換気

量、運転時間

A.換気設備は単独設備で

はなく、空調と一体化して

いる場合が多い。また、ト

イレの排気等も含まれる

のか、範囲がわかりにく

い。(7件)

A.(1)①アに含め、キは

削除する。

②計

測・記

(1)②ア 室温、湿度等 A.室温、湿度以外の「そ

の他の・・・事項」の内容

が不明。(3件)

A.「その他の・・・事項」

の事例を入れるか、この

文言を削除する。

(1)②イ 機器効率・総合効

率関連

A.総合効率の計測記録

は、何を計測すればいいか

わかりにくい。(8件)

B.GHPやPACは総合

効率の計測は困難。(5件)

A.総合効率の計測記録

の具体的な項目の例を示

す。

B.GHPやPAC等は

除外する。

(1)②ウ 換気区画ごとの

温度、CO2 濃度

A.換気の状態をみるのに

温度は不要ではないか。(3

件)

A.温度はアに含まれる

ので、この項目からは除

く。

③保

守・点

(1)③イ 自動制御設備の

保守点検

A.「自動制御設備」の定

義と範囲が不明確。PAC

の温度設定も含むのであ

れば、アの点検で事足り

る。(12 件)

A.この項目を削除する

か、適用設備を明確にす

る。

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(2)ボイラ

ー設備、

給湯設

①管理

または

基準

(2)①ア 空気比の設定 A.アとイの違いが文面か

らはわかりにくい。(4 件)

A.イの表現をアに含め

「・・別表・・に該当す

るボイラーは・・・」等

とする。

(2)①イ 基準空気比の設

A.アとイの違いが文面か

らはわかりにくい。(3件)

A.イの表現をアに含め

「・・別表・・に該当す

るボイラーは・・・」等

とする。

②計

測・記

(2)②イ 給湯設備の給水

量、給湯温度等

A.小容量の電気湯沸かし

器の計測記録は現実的で

はない。(2件)

A.小容量の電気湯沸か

し器は適用除外とする。

(3)照明

設備、昇

降機、動

力設備

①管理

または

基準

(3)①ア 照度基準の設定、

減光・消灯の実施

A.照度設定を、「JIS

により○○ルクス以上」と

し、上限値を設定していな

い事業者が多い。(1件)

A.省エネのため、上限

値を設定することを入れ

る。

②計

測・記

(3)② 照度の計測・記録 A.省エネのための定期的

な照度測定結果を記録す

るのは現実的ではない。(3

件)

A.設置時や更新時等、

測定頻度は事業者が決め

られるようにする。

③保

守・点

(3)③ア 照明器具・ランプ

の清掃、光源の交

換等の点検

A.「定期的な保守点検」

とされているが、玉キレや

汚れ時に保守することが

現実的である。(5件)

A.「定期的」を削除する。

④新設

での措

(3)④イ Hf・HIDラン

プの採用、保守容

易化、効率向上措

A.「LED」の記載がな

い。(4件)

A.「LED」を追加する。

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3.工場に関する事項

番号・項目 各項目の内容 問題点 判断基準見直し案

(1)燃料

の燃焼

の管理

①管理

または

基準

(1)①ア 空気比の設定 A.開放型炉、乾燥炉、焼

却炉等、空気比で燃焼管理

することが困難な炉が多

くある。(10 件)

B.アとイの違いが文面か

らはわかりにくい。(5 件)

A.「空気比」以外にも、「火

炎の形状や色等の燃焼状

態の管理」等の適切な管理

方法を選択できるように

する。

B.イの表現をアに含め

「・・別表・・に該当する

ボイラーは・・」等とする。

(1)①イ 基準空気比の

設定

A.別表の乾燥炉は、空気

大過剰で運転されており、

バーナー燃焼部での管理

は無意味である。(2件)

B.アとイの違いが文面か

らはわかりにくい。(5 件)

A.別表から乾燥炉を除外

する。

B.イの表現をアに含め

「・・別表・・に該当する

ボイラーは・・」等とする。

(1)①ウ 複数の燃焼設

備の負荷配分

A.加熱炉内の複数バーナ

ーと混同している場合が

ある。(3件)

A.複数の「加熱炉やボイ

ラー等の」燃焼設備と明記

する。

(1)①エ 燃料の性状に

合わせた燃焼

管理

A.都市ガスや灯油等の一

般に広く供給されている

燃料は、性状が一定で、燃

焼管理する余地は少ない。

(19件)

A.この項目を削除する

か、都市ガスや灯油等の一

般に広く供給されている

燃料は適用除外とする。

(2-1)加

熱設備

①管理

または

基準

(2-1)①

加熱(冷却)側

熱媒体の温

度・圧力・量

A.コと熱媒体の温度など

が重複しており、区別がわ

かりにくい。(11 件)

B.熱量の過剰な供給の防

止という目的に対し、前段

の文言が複雑で、意味がと

りにくい。(4件)

A.コからは熱媒体の部分

を削除する。

B.事例などを挙げて、わ

かりやすくする。

(2-1)①

ヒートパター

A.ヒートパターンの意味

がわかりにくい。設定して

いる場合でも、品質上の必

要性から設定している場

合がほとんど。(8件)

A.ヒートパターンの意味

と改善方法、事例などを加

え説明するか、又は項目自

体を削除する。

(2-1)①

反復工程の場

合、待ち時間

の短縮

A.「反復工程」の具体的

な説明がなく、どのような

工程を指すのかわかりに

くい。(12件)

A.「反復工程」の事例や

意味などを追記する。

(2-1)①

断続的運転の

集約化

A.「断続的運転」の具体

的な説明がなく、どのよう

な工程を指すのかわかり

にくい。(9件)

A.「断続的運転」の事例

や意味などを追記する。

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(2-1)①

不要時のバル

ブ閉止

A.当然行う操作である。

(2件)

A.項目を削除する。

(2-1)①

被加熱(冷却)

物の温度・圧

力等

A.アと熱媒体の温度など

が重複しており、区別がわ

かりにくい。(13 件)

A.コからは熱媒体の部分

を削除する。

(2-2)空

調設備、

給湯設

備等

①管理

または

基準

(2-2)①

製品製造等の

為の空調条件

(運転時間、温

度、換気回数、

湿度等)の設

A.温度以外の換気回数や

湿度等の管理は設備的に

管理が困難である場合が

多い。(2件)

A.「温度及び設定が可能

であれば換気回数、・・・」

等と温度と他の項目を区

別した記載とする。

(2-2)①

工場内事務所

の空調条件

(運転時間、室

内温度、換気

回数、湿度、

外気の有効利

用等)の設定

A.温度以外の換気回数や

湿度等の管理は設備的に

管理が困難である場合が

多い。(3件)

A.「温度及び設定が可能

であれば換気回数、・・・」

等と温度と他の項目を区

別した記載とする。

(2-2)①

総合的なエネ

ルギー効率の

向上(冷温水

温度、冷却水

温度、圧力等)

A.PAC等は「総合的な

エネルギー効率」の管理は

困難(3件)

B.「総合的なエネルギー

効率」が理解されていない

場合が多い(4件)

A.PAC等は適用除外と

する。

B.「総合的なエネルギー

効率」の意味や具体的な管

理指標を記載する。

②計

測・記録

(2-2)②

機器効率・総

合効率関連

A.総合効率の計測記録

は、何を計測すればいいか

わかりにくい。(5件)

B.GHPやPACは総合

効率の計測は困難。(3件)

A.総合効率の計測記録の

具体的な項目の例を示す。

B.GHPやPAC等は除

外する。

③保

守・点検

(2-2)③

空調、給湯の

自動制御設備

の保守点検

A.「自動制御設備」の定

義と範囲が不明確。PAC

の温度設定も含むのであ

れば、アの点検で事足り

る。(9件)

A.この項目を削除する

か、適用設備を明確にす

る。

(3)廃熱

の回収

利用

①管理

または

基準

(3)①ア 排熱の回収利

用について、

廃ガス温度、

廃熱回収率

A.小規模炉やGHP等で

は、費用対効果が悪いこと

は明らかで、設置されてい

ない。(7件)

A.小規模炉やGHP等

は、適用対象外とする。

(3)①イ 基準廃ガス温

度、基準廃熱

回収率

A.アとイの違いが文面か

らはわかりにくい。(2 件)

A.イの表現をアに含め

「・・別表・・に該当する

ボイラーは・・・」等とす

る。

(3)①ウ 蒸気ドレンの

廃熱回収範囲

A.小規模設備では、現実

的でない場合が多い。(4

件)

A.理由が明確であれば、

実施しなくてもよいもの

とする。

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(3)①エ 加熱物からの

熱回収範囲

A.個体製品など、熱回収

は非現実的である場合が

多い。(5件)

A.個体製品等は適用除外

とする。

②計

測・記録

(3)② 廃熱の温度、

熱量、成分等

A.小規模なドレン回収等

では、定期的な計測は現実

的ではない。(8件)

A.小規模ドレン回収設備

等は除外する。

(5-1)放

射、伝熱

による

熱損失

防止

③保

守・点検

(5-1)③

断熱の保守管

A.断熱保温の保守点検

は、定期的ではなく、破損

や剥がれの都度実施する

方が適切である。(4件)

A.「定期的に」を削除す

る。

(5-1)③

蒸気トラップ

の保守点検

A.トラップの保守点検

は、定期的ではなく、故障

の都度実施する方が適切

である。(4件)

A.「定期的に」を削除す

る。

(5-2)抵

抗等に

よる電

気の損

失防止

①管理

または

基準

(5-2)①

変圧器・無停

電電源装置の

部分負荷時の

効率維持、稼

動台数の調整

A.大幅な設備改編でなけ

れば、日常運転で負荷配分

の見直しは現実的ではな

い。(4件)

A.新設・改造時等と明記

する等の実行可能な内容

とするか、削除する。

(5-2)①

受変電設備の

適正配置、配

電経路の短縮

化、電圧の適

正化

A.受変電設備の適正配

置、配電経路の短縮化は既

設では管理する項目とし

ては不適当。(9件)

A.「④新設時の措置」に

移動する。

(6-1)電

動力応

用設備、

電気加

熱設備

①管理

または

基準

(6-1)①

電動力応用設

備の不要時の

停止

A.生産設備の不要時の停

止は通常実施されており、

工場等に多数ある小型機

器や補機等の起動・停止ま

で管理標準に設定するの

は不要である。(8件)

A.補機や小型機器等、操

業に合わせて起動・停止さ

れる機器は除く。

(6-1)①

複数電動機の

部分負荷にお

ける効率を考

慮した稼動台

数の調整及び

負荷の適正配

A.適用範囲がわかりにく

く、電動機が複数あれば全

て該当すると理解してい

る事業者が多い。(9件)

A.同一ヘッダーで複数の

空気圧縮機を使用する場

合など、適用例等を記載す

る。

(6-1)①

流体機械の流

量、圧力の適

正調整

A.小型機器や補機等、フ

ァンなど低圧機器は調整

ができない構造等である

場合が多い。(4件)

A.小型機器や補機、ブロ

ワー等は除くなど、適用範

囲を定める。

(6-1)①

電気使用設備

ごとの、電圧、

電流等電気の

損失を防止す

るために必要

A.工場内に大小多数ある

電気使用設備の全てにつ

いて、電圧・電流等を管理

するのは現実的ではない。

(9件)

A.対象を「主要設備」と

する等、管理範囲を事業者

が決められるようにする。

また、電圧等は設備ごとで

はなく電源盤での管理も

Page 117: 平成30年度 省エネルギー政策立案のための ... · 由を分析し、改善案についてまとめた。 ③原単位を5年度間(平成25年度~平成29年度)平均で1%以上改善した件数は事業場で32.5%、

113

な事項の管理 B.電流計は無いが電力計

がある場合がある。(4件)

C.電気の損失の防止のた

めに、電圧、電流等をどの

ように管理するのかわか

りにくい(3件)

可能とする。

B.電流又は電力量とす

る。

C.電気の損失を防止する

具体的な方法を追記する。

②計

測・記録

(6-1)② 電圧、電流等 A.工場内に大小多数ある

電気使用設備の全てにつ

いて、電圧・電流等を計

測・記録するのは現実的で

はない。(8件)

B.電流計は無いが電力計

がある場合がある。(6件)

A.対象を「主要設備」と

する等、管理範囲を事業者

が決められるようにする。

B.電流又は電力量とす

る。

③保

守・点検

(6-1)③

電気加熱設

備、電気炉、

電解設備の配

線接続部・開

閉器接触部

A.この部分のみの点検を

規定するのは不自然。(3

件)

A.この項目を削除する。

(6-2)照

明設備、

昇降機、

事務用

機器、民

生用機

器等

①管理

または

基準

(6-2)①

照度基準の設

定、減光・消

灯の実施

A.照度設定を、「JIS

により○○ルクス以上」と

し、上限値を設定していな

い事業者が多い。(3件)

A.省エネのため、上限値

を設定することを入れる。

②計

測・記録

(6-2)② 照度の計測・

記録

A.省エネのための定期的

な照度測定結果を記録す

るのは現実的ではない。(5

件)

A.設置時や更新時等、測

定頻度は事業者が決めら

れるようにする。

③保

守・点検

(6-2)③

照明器具・ラ

ンプの清掃、

光源の交換

A.「定期的な保守点検」

とされているが、玉キレや

汚れ時に保守することが

現実的である。(7件)

A.「定期的」を削除する。

(6-2)③

事務用機器の

保守点検

A.事務用機器を省エネの

ために定期的に保守点検

する必要性は極めて薄い。

(5件)

A.この項目を削除する。

④新設

での措

(6-2)④

高効率照明設

備の採用の考

A.「LED」の記載がな

い。(2件)

A.「LED」を追加する。

以上