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31年度税制改正大綱等について (国際課税) 平成 30 年 12 月 20 日(木) 財務省主税局参事官室 参事官補佐(総括) 齊藤 郁夫 引用不可 意見にわたる部分は個人の見解です。

31年度税制改正大綱等について (国際課税) · 2018. 12. 25. · 行動11beps関連のデータ収集 ・分析方法の確立 行動12 タックス ・プランニングの義務的開示

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  • 31年度税制改正大綱等について(国際課税)

    平成 30 年 12 月 20 日(木)

    財務省主税局参事官室

    参事官補佐(総括) 齊藤 郁夫

    引用不可

    ※意見にわたる部分は個人の見解です。

  • 1.「BEPSプロジェクト」最終報告書の概要・・・・・・・・・・ 1

    2.過大支払税制の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

    3.移転価格税制の見直し・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

    4.外国子会社合算税制の見直し・・・・・・・・・・・・・・・13

    5.電子経済の課税上の課題への対応・・・・・・・・・・・・・17

    6.2019年のG20財務プロセス・・・・・・・・・・・・・21

    目次

  • 1

    1.「BEPSプロジェクト」最終報告書の概要

  • 伝統的な国際基準(モデル租税条約・移転価格ガイドライン)が近年の多国籍企業のビジネスモデルに対応できていないことから、「価値創造の場」において適切に課税がなされるよう、国際基準の見直しを図った。

    行動6 条約濫用の防止 → 租税条約の拡充(含行動⑮)の中で対応

    行動7 人為的なPE認定回避 → 租税回避の防止等のためPEの範囲を見直し(30年度改正)。租税条約の拡充(含行動⑮)の中で対応

    行動8-10 移転価格税制と価値創造の一致 → 特に無形資産の取扱いについて、31年度税制改正において見直し予定

    C. 企業の不確実性の排除 〔予見可能性〕

    多国籍企業による租税回避を防止するため、国際的な協調のもと、税務当局が多国籍企業の活動やタックス・プランニングの実態を把握できるようにする制度の構築を図った。

    行動5 ルーリング(企業と当局間の事前合意)に係る自発的情報交換

    行動11 BEPS関連のデータ収集・分析方法の確立

    行動12 タックス・プランニングの義務的開示 → 法改正の要否を含め検討

    行動13 多国籍企業情報の報告制度

    (移転価格税制に係る文書化) → 28年度改正で対応済み

    (4) 透明性の向上

    BEPS対抗措置によって予期せぬ二重課税が生じる等の不確実性を排除し、予見可能性を確保するため、租税条約に関連する紛争を解決するための相互協議手続きをより実効的なものとすることを図った。

    行動14 より効果的な紛争解決メカニズムの構築 → 租税条約の拡充(含行動⑮)の中で対応

    (5) 法的安定性の向上

    BEPS行動計画を通じて策定される各種勧告の実施のためには、各国の二国間租税条約の改正が必要なものがあるが、世界で無数にある二国間租税条約の改定には膨大な時間を要することから、BEPS対抗措置を効率的に実現するための多数国間協定を2016年末までに策定する。

    行動15 多数国間協定の開発 → 参加(30年9月に受諾書を寄託)

    (6) BEPSへの迅速な対応

    B. 各国政府・グローバル企業の活動に関する

    透明性向上 〔透明性〕

    A. グローバル企業は払うべき(価値が創造される)ところで

    税金を支払うべきとの観点から、国際課税原則を再構築

    〔実質性〕

    電子経済に伴う問題への対応について、海外からのB2B取引及びB2C取引に対する消費課税のあり方等に関するガイドラインをそれぞれ策定した。

    行動1 電子経済の課税上の課題への対応 → 国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税方式を見直し(27年度改正)

    (1) 電子経済の発展への対応

    各国間の税制の隙間を利用した多国籍企業による租税回避を防止するため、各国が協調して国内税制の国際的調和を図った。

    行動2 ハイブリッド・ミスマッチの無効化 → 27年度改正で対応済。また、租税条約の拡充(含行動⑮)の中で対応

    行動3 外国子会社合算税制の強化 → 租税回避リスクを外国子会社の個々の活動内容により把握するよう見直し(29年度改正)

    行動4 利子控除制限 → 24年度に導入した過大支払利子税制について、31年度税制改正において見直し予定

    行動5 有害税制への対抗 → 既存の枠組みで対応

    (2) 各国制度の国際的一貫性の確立

    (3) 国際基準の効果の回復

    「BEPSプロジェクト」最終報告書の概要

    2

  • 3

    2.過大支払利子税制の見直し

  • 平成31年度与党税制改正大綱(抄)

    6 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制

    (前略)

    平成31年度税制改正においては、過大支払利子税制及び移転価格税制について、「BEPSプロジェクト」の合意事項等に沿って諸外国において対応が進んでいることを踏まえ、

    企業実態にも配慮しつつ、必要な制度改正を行う。過大支払利子税制については、利子

    の損金算入制限に関し、対象利子の範囲の拡大及び損金算入限度額の算定方法の見

    直し等により税源浸食リスクに応じた強化を行う。また、移転価格税制については、独立

    企業間価格の算定方法を整備するとともに、一定の価値評価の困難な無形資産の取引

    に関して税務当局が取引後の事実関係を参照して取引価格の適切性を検証することが

    可能となるよう、OECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえた見直しを行う。

    (後略)

    4

  • BEPS最終報告書では、支払利子の損金算入を制限する制度の導入を勧告。

    利子は、国際的なタックスプランニングで利用できる利益移転技術のうち、最も簡単なものの一つ。

    利子を用いた税源浸食・利益移転が生ずる場合として、関連者間借入を用いて過大な利子の損金算入を生じさせるケースや、企業

    グループ内の高課税法人に第三者借入を集めるケースなどが挙げられる。

    上記の問題に対抗するため、企業の、第三者への支払も含めた純支払利子について、その損金算入を調整所得の10~30%に制限す

    る、利子控除制限制度の導入を勧告。

    過大支払利子税制の見直し(案)

    日本の「過大支払利子税制」は、勧告と同様の考え方に基づく制度であるが、①対象とする利子、②調整所得の定義、③基準値について勧告内容と異なっている。

    通常の経済活動に与える影響(国内銀行からの借入等)に配慮しつつ、BEPS(税源浸食・利益移転)リスクに的確に対応できるよう、勧告を踏まえた見直しを行う。

    調整所得(②)

    当期の課税所得金額(税引前所得)

    その他(減価償却等)

    純支払利子額(①)※受領者において日本の

    課税所得に含まれる利子等は除く

    損金算入限度額

    調整所得×

    20%

    損金算入可

    (③)

    過大支払利子税制の概要(見直し案)

    ※損金不算入とされた支払利子等の額は、7年間繰り越して損金算入可能

    ②調整所得

    利子・税・減価償却前所得(国内外の受取配当益金不算入額を加算)

    ①対象とする利子

    関連者純支払利子等のみ(受領者において日本の課税所得に含まれる利子等は対象外)

    ③基準値

    50%

    適用除外

    関連者純支払利子等の額が1000万円以下

    関連者への支払利子等の額が総支払利子等の額の50%以下

    純支払利子等(第三者を含む)(受領者において日本の課税所得に含まれる利子等は対象外)

    利子・税・減価償却前所得(国内外の受取配当益金不算入額を加算しない)

    20%

    純支払利子等の額が2000万円以下

    国内企業グループ(持株割合50%超)の合算純支払利子等の額が合算調整所得の20%以下

    過大支払利子税制の主な見直し内容(案)

    損金不算入(※)

    現行制度 見直し案

    施行:平成32年4月

    見直し案

    BEPS行動4最終報告書のポイント

    5

  • 外国子会社

    ①貸付(100)

    ③利子(10)

    ②出資や、関連会社株式の譲渡対価等の形で資金移転

    (100)

    • 国際企業グループにおいて100の資金需要があり、10の資金コスト(利子)を支払う事例。

    法人A 外国子会社

    A国(税率30%) B国(税率10%)

    法人A

    【事例1】 【事例2】

    所得(△10)税負担(△3)

    所得 0税負担(0)

    所得(△10)税負担( △ 1)

    ①貸付(100) ②利子

    (10)

    • 第三者借入であっても、それをいずれの国の法人が行うかの選択により、所得移転を生じさせ、グループ全体の税負担を引き下げることができる。

    第三者負債

    第三者負債

    100の資金需要

    【参考】第三者への利子の支払いにおけるBEPS(行動4最終報告書パラ3をもとに作成)

    100の資金需要

    ⇒ 事例1と比較し 、グループ全体で税負担減(△2)

    A国(税率30%) B国(税率10%)

    第三者第三者

    6

  • 【参考】主要国における利子控除制限制度の概要

    【利子控除制限制度を巡る動向】

    EUは、調整所得金額の30%までに限り純支払利子を損金算入できる旨の利子控除制限ルールを含む、租税回避防止指令を採択。これにより、EU加盟国は2018年12月31日(同ルールと同等に有効なルールを有するEU加盟国は、遅くとも2024年1月1日)までに、同ルールを立法・公布しなければならない。

    なお、フランスは、同EU指令に基づく利子控除制限ルールを導入するための税制改正案が2019年予算法案に盛り込まれ、本年9月に国会提出されている。

    国名日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス

    項目

    通称(導入年)

    過大支払利子税制(2012年)

    利子控除制限制度(2018年)(注1)

    利子控除制限制度(2017年)

    利子控除制限制度(2008年)

    過少資本税制(1991年)

    基本的な仕組み

    法人の関連者等への純支払利子のうち、調整所得の一定割合の額を超える部分は、損金不算入

    調整所得の一定割合を超える純支払利子は、損金不算入

    調整所得の一定割合を超える純支払利子は、損金不算入

    調整所得の一定割合を超える純支払利子は、損金不算入

    調整所得の一定割合等を超える関連者等への純支払利子は、損金不算入

    損金不算入の対象となる利子の支払先

    ・原則として関連者 限定なし 限定なし 限定なし ・原則として関連者

    調整所得の定義

    課税所得に、純支払利子、償却費、受取配当益金不算入額等を加算

    課税所得に、純支払利子、償却費等を加算(注2)

    ただし、2022年1月1日以降開始する課税年度は償却費等を加算しない(EBIT相当額)

    課税所得に、純支払利子、償却費等を加算

    課税所得に、純支払利子、償却費等を加算

    課税所得に、純支払利子、償却費等を加算

    損金不算入額

    関連者純支払利子等の額(※)のうち調整所得金額の50%を超える部分の金額

    ※日本で課税対象とならない関連者等に対する支払利子等の額から一定の受取利子等を控除したもの

    純支払利子の額のうち調整所得の30%を超える部分の金額

    純支払利子の額のうち調整所得の30%を超える部分の金額(注3)

    純支払利子の額のうち調整所得の30%を超える部分の金額

    関連者等への支払利子が調整所得の25%超であり、かつ、出資/負債比率等にかかる基準等を超える場合に、これらの基準を超える部分の金額

    (注1)2017年まではアーニング・ストリッピング・ルール(1989年導入)に基づき、対象となる利子の支払先が関連者等に限定されていたが、2018年1月1日以降開始する課税年度より、対象範囲を含め、全面的に制度が改編された(負債資本比率(1.5: 1以下)による適用除外も撤廃)。

    (注2)調整所得の計算にかかる財務省規則は現時点で未公表。改正前のルール(Treasury regulation§1.163(j)-2(f))においては、100%益金不算入とされる持株比率80%超の株式以外の株式配当の益金不算入額に限り加算されることとされていた。

    (注3)グループ全体による外部に対する純利子費用額のグループ調整所得に対する比率を、固定比率(30%)の代替比率として使用することも可能(グループ比率ルール)。いずれも、控除できる利子費用の額をグループ全体の純利子費用の額に制限する修正デット・キャップ・ルールの対象となる。

    (注4)各国とも、負債資本比率や純支払利子額等に基づいて、一定の適用除外要件が設けられている。

    2018年11月1日現在(未定稿)

    7

  • 8

    3.移転価格税制の見直し

  • 平成31年度与党税制改正大綱(抄)

    6 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制

    (前略)

    平成31年度税制改正においては、過大支払利子税制及び移転価格税制について、「BEPSプロジェクト」の合意事項等に沿って諸外国において対応が進んでいることを踏まえ、

    企業実態にも配慮しつつ、必要な制度改正を行う。過大支払利子税制については、利子

    の損金算入制限に関し、対象利子の範囲の拡大及び損金算入限度額の算定方法の見

    直し等により税源浸食リスクに応じた強化を行う。また、移転価格税制については、独立

    企業間価格の算定方法を整備するとともに、一定の価値評価の困難な無形資産の取引

    に関して税務当局が取引後の事実関係を参照して取引価格の適切性を検証することが

    可能となるよう、OECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえた見直しを行う。

    (後略)

    9

  • 移転価格税制の見直し(案)

    * その他所要の措置を講ずる。上記の各見直しは、平成32年4月1日以後開始事業年度分の法人税から適用する。

    A’社(A国)

    特許ノウハウ

    多額の研究開発費を投下、特許等を開発

    適切な対価を収受しなければ課税機会を喪失

    するおそれ

    ・知の海外流出のおそれ・知財収支への影響

    A社(日本)

    特許ノウハウ

    無形資産

    【勧告①】比較対象取引が特定できない場合、無形資産の使用から得られる予測キャッシュ・フロー等の割引現在価値を用いた評価テクニック(デ

    ィスカウント・キャッシュ・フロー法:DCF法)により無形資産取引に係る独立企業間価格を算定。

    【勧告②】一定の評価困難な無形資産取引への対応として、当初の価格算定の基礎となる予測と実際の結果が大きく乖離した場合には、税務当局は

    当初の価格が適切に算定されていなかったと推定し、実際の結果を勘案して当初の価格を再評価。

    (注)上記のほか、広範かつ明確な無形資産の定義の採用が勧告されるとともに、税務当局が評価困難な無形資産取引に係る価格算定の適切性を検証する場合

    の更正期間制限に伴う困難性が問題提起された。これらの内容は移転価格税制に係る国際スタンダードであるOECDの移転価格ガイドラインに反映済。

    BEPS行動8最終報告書・OECD移転価格ガイドライン改訂のポイント

    OECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえ、次の見直しを行う。

    1.独立企業間価格の算定方法の整備独立企業間価格の算定方法として、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF

    法)を追加する。

    2.評価困難な無形資産取引に係る価格調整措置の導入・ 予測キャッシュ・フロー等の額を基礎として独立企業間価格を算定するものであること等の要件を満たす評価困難な無形資産取引について、予測と実際の結果が相違した場合には、税務当局が実際の結果を勘案して当初の価格を再評価できるようにする(但し、再評価後の価格が当初の価格の20%を超えて相違した場合のみ)。

    ・ また、予測と結果が相違する原因となった事由が、取引時点で予測困難であったこと(災害等)、又は、取引時点においてその事由の発生可能性を適切に勘案して当初の価格を算定していたことを納税者が証明した場合等においては、上記の再評価は行われない。

    3.その他・ 移転価格税制上の無形資産の定義の明確化を図る。

    * 移転価格税制上の無形資産:有形資産・金融資産(現預金、有価証券等)以外の資産で独立の事業者間で譲渡・貸付け等が行われるとした場合に対価の支払が行われるもの

    ・ 移転価格税制に係る更正期間等を7年(現行:6年)に延長する。

    ・ 比較対象取引に係る差異調整方法として統計的手法に基づく方法を認める。

    見直し案

    10

  • BEPS行動8:評価困難な無形資産(Hard-To-Value Intangibles:HTVI)への対応(案)

    <BEPSプロジェクトにおけるHTVIへの問題意識及び対応策>

    ● 無形資産取引に係る価格設定の適切性の検証に関しては、納税者は広範な情報を有しているのに対し、税務

    当局は納税者が提供する情報に依存せざるを得ないという情報の非対称性が課題。

    ● そのため、一定の評価困難な無形資産(HTVI)取引については、価格算定に用いた予測と結果が大きく乖離

    した場合、当初の移転価格が適切に算定されていなかったと推定し、税務当局が事後の結果を勘案して当初の

    移転価格算定を評価することを認める「評価困難な無形資産アプローチ」(HTVIアプローチ)の導入を勧告。

    参考①:HTVIアプローチに係る補足ガイダンス(2018年6月公表)の指摘

    ○ 税務当局は、更正期間制限等によりHTVIアプローチの適用に関し困難に直面する場合がある。本ガイダンスは、その対策の一案

    として、各国がHTVI取引の早期把握のための報告義務の導入や更正期間制限の延長等の措置を検討することを妨げない。

    参考②:国際的な動向

    ○ HTVIアプローチは2017年7月の改訂でOECDの移転価格ガイドラインに反映済。BEPSプロジェクト以前から類似の事後的調整制度

    を導入済の米・独に加え、 現在、HTVIアプローチは英・蘭・豪・ニュージーランド等においても適用可能となっている。

    <HTVIアプローチの適用対象等>

    ● HTVIアプローチの適用対象は、取引時点において①信頼できる比較対象取引が存在せず、②移転された無形

    資産から生じる将来キャッシュ・フロー等についての予測や評価の前提が非常に不確かな無形資産取引。

    ● 但し、当初の価格設定に用いた予測と事後の結果の乖離が取引時点で予見不可能な事象によるものであるこ

    とを納税者が証明した場合など一定の適用免除要件を満たす場合には、HTVIアプローチは適用しない。

    11

  • 【参考】評価困難な無形資産(HTVI)アプローチに係る移転価格ガイドライン等の関連規定(抄・仮訳)

    <HTVIアプローチの適用要件>

    ● 評価困難な無形資産(HTVI)は、関連者間での取引時点における次の無形資産を対象とする。[パラ6.189]

    ・ 信頼できる比較対象取引が存在しない、かつ、

    ・ 取引開始時点において、移転された無形資産から生じる将来のキャッシュ・フロー若しくは収益についての予測、又は無形資産の評

    価で使用した前提が非常に不確かで、移転時点で当該無形資産の最終的な成功の水準に係る予測が難しいもの。

    <HTVIアプローチの適用免除要件>

    ● 上記に当てはまるHTVIの譲渡又は使用に関する取引について、以下の適用免除規定のうち一つでも当てはまる場合には、この措置は適

    用されない。[パラ6.193]

    ⑴ 納税者が次の証拠を提出する場合

    ① 価格設定のためにどのようにリスクを計算したか(例えば可能性のウェイト付)、合理的に予見可能な事象又は他のリスク及びそ

    の発生の可能性に関する検討の適切性を含む、価格設定取決めを決定するために、移転時点で使用された事前の予測の詳細、及び

    ② 財務上の予測と実際の結果の大きな乖離が、(a)価格設定後に生じた予見不可能な進展又は事象であって、取引時点では関連者が予

    想することはできなかったもの、又は、(b)予見可能な結果の発生可能性が実現し、その可能性が取引時点で著しく過大評価でも過少

    評価でもなかったことによるものであるという信頼性のある証拠

    ⑵ 当該HTVIの移転に係る関連者間取引が、二国間又は多国間のAPAによってカバーされている場合

    ⑶ 取引時点における財務上の予測と実際の結果の大きな乖離が、当該HTVIの対価を、取引時点で設定した対価の20%を超えて減少又は増

    加させる効果を持たない場合

    ⑷ 取引時点における財務上の予測と実際の結果の大きな乖離が、予測の20%を超えず、当該HTVIに係る第三者からの収入が初めて生み出

    された年から5年の商業期間が経過した場合

    <HTVIアプローチに係る補足ガイダンスの指摘>

    ● HTVIアプローチの性質上、必然的に、タイミングの問題についてある程度考慮する必要がある。…この問題は…長期のインキュベーシ

    ョン期間(すなわち、移転後の期間、及び無形資産が商業的に利用可能となり、収益が発生し得る前の期間)を有する無形資産に関する

    取引において、HTVIアプローチに基づく調整が適切である場合に一層深刻となる(パラグラフ6.190参照)。[補足ガイダンスパラ11]

    ● …一部の国では、HTVIアプローチを適用する際、例えば、短い監査サイクル又は短い出訴期限のために、困難に直面する場合がある。

    本ガイダンスは、そうした困難の克服を目的とした法律の採用を各国に要求はしていないが、各国が手続き又は法律に対する特定の変更

    (HTVIの定義に当てはまる無形資産の移転若しくはライセンスを迅速に知らせるための要件の導入、又は通常の出訴期限法の修正等)を

    検討することを妨げるものではない。[補足ガイダンスパラ15] 12

  • 13

    4.外国子会社合算税制の見直し

  • 外国子会社合算税制の仕組み

    ◆ 納税義務者の範囲イ 直接及び間接の保有割合が

    10%以上である居住者・内国法人株主

    ロ 直接及び間接の保有割合が10%以上である同族株主グループに属する居住者・内国法人株主

    ハ 実質支配関係がある居住者・内国法人等

    B 実体基準本店所在地国に主たる事業に必要な事務所等を

    有すること

    経済活動基準

    全てを満たす

    居住者又は

    内国法人

    特殊関係者(個人・法人)

    同族株主グループ

    会社単位の合算課税

    ペーパー・カンパニー/事実上のキャッシュ・ボックス/ブラック・リスト国所在のもの

    20%未満租

    税負担割合

    C 管理支配基準本店所在地国において事業の管理、支配及び運営

    を自ら行っていること

    居住者・内国法人等が合計で50%超を直接及び間接に

    保有又は実質的に支配

    D 所在地国基準(下記以外の業種)主として本店所在地国で事業を行っていること

    又は

    非関連者基準(卸売業など8業種)主として関連者以外の者と取引を行っていること

    A 事業基準主たる事業が株式の保有、無形資産の提供、

    船舶・航空機リース等でないこと(※)一定の要件を満たす統括会社、金融持株会社

    及び航空機リース会社は除外

    租税負担割合

    20%未満

    いずれかを

    満たさない

    受動的所得

    の合算課税

    一般事業

    子会社

    居住者又は

    内国法人

    [特定外国関係会社]

    外国金融

    子会社等

    [

    外国金融

    子会社等]

    対象外国関係会社

    [

    部分対象外国関係会社]

    租税負担割合

    受動的所得の

    合算課税

    20%未満

    租税負担割合

    30%未満

    〇 外国子会社等の実質的活動のない事業から得られる所得に相当する金額について、内国法人等の所得に合算して課税。

    〇 ただし、事務負担に配慮し、外国子会社等の租税負担割合が一定以上の場合には、本税制の適用を免除。

    14

  • ペーパー・カンパニーの範囲の見直し(案)

    〇 海外のビジネス上、一般的に用いられる実態があり、かつ租税回避リスクが限定的であると考えられる一定の外国関係会社をペーパー・

    カンパニーの範囲から除外する。

    ① 持株会社である一定の外国関係会社

    一定の子会社からの配当が収入の太宗を占めている外国関係会社

    ② 不動産保有に係る一定の外国関係会社

    同一国内の実体のある会社の事業の遂行上不可欠な同一国内不動産の保有のみを目的とする一定の外国関係会社

    ※ 当該実体のある会社に管理支配されており、当該同一国内不動産の賃貸料等が収入の太宗を占めている等、一定の要件を満たすもの

    ③ 資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社

    同一国内の実体のある会社が行う同一国内資源開発等プロジェクトの遂行上不可欠な機能を果たす一定の外国関係会社

    ※ 当該実体のある会社に管理支配されており、当該同一国内資源開発等プロジェクトに係る配当等が収入の太宗を占めている等、一定の要件を満たすもの

    外国関係会社

    25%以上

    外国関係会社(管理支配会社)

    ※ 不動産業以外の事業を行う管理支配会社が自ら使用する不動産を保有する外国関係会社についても対応。

    10%以上

    共同管理支配会社

    資源開発等プロジェクト

    ①持株会社である一定の外国関係会社 ②不動産保有に係る一定の外国関係会社 ③資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社

    外国関係会社(被管理支配会社)

    子会社

    ・経済実態あり・不動産業を行う

    特定子会社

    資源開発等プロジェクト遂行上不可欠な機能

    【要件】・子会社株式等の保有・収入の95%超が同一国所在子会社の配当等

    ・資産要件

    ※ 子会社株式の譲渡が生じた場合には、②の被管理支配会社に類する一定の要件を満たしているものについてのみ対応。

    内国法人 内国法人 内国法人

    外国関係会社(被管理支配会社)

    不動産

    A

    B

    C管理支配会社の事業遂行上不可欠な同一国に所在する不動産を保有

    特定子会社(外国関係会社C)の株式を保有

    外国関係会社(被管理支配会社)

    管理支配等

    配当等

    外国関係会社(管理支配会社)

    A

    C

    D

    ・経済実態あり

    ・同一国内の資源開発等プロジェクトを行う

    管理支配等

    外国関係会社(被管理支配会社)

    Bと共同で管理支配等 B

    Aと共同で管理支配等

    配当

    【要件】

    ・管理支配会社の事業遂行上不可欠な機能

    ・同一国所在・収入の95%超が不動産貸付・譲渡対価、特定子会社の配当・株式譲渡対価等

    ・資産要件等

    【要件】

    ・管理支配会社の事業遂行上不可欠な機能

    ・管理支配会社と同一国所在・収入の95%超が不動産貸付・譲渡対価(、特定子会社の配当・株式譲渡対価)等

    ・資産要件等

    ・管理支配会社の資源等プロジェクト遂行上不可欠な機能

    ・同一国所在・収入の95%超が特定子会社の配当・譲渡対価等(不動産貸付・譲渡対価、

    ・資産要件等

    【要件】

    ・資源開発等プロジェクト遂行上不可欠な機能

    ・管理支配会社と同一国所在・収入の95%超が特定子会社の配当・譲渡対価(、不動産貸付・譲渡対価)等

    ・資産要件等

    10%以上

    資源開発等プロジェクト遂行上不可欠な不動産保有会社を含む。

    配当等

    配当等

    Bにとっては特定子会社に該当

    Cにとっては特定子会社に該当

    15

  • 3 外国子会社合算税制の見直し

    内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)について、次の見直しを行う。

    (1) 特定外国関係会社

    ③ 事実上のキャッシュ・ボックスの範囲に、次のいずれにも該当する外国関係会社を加える。

    イ 当該事業年度における非関連者等からの一定の収入保険料(ロにおいて「特定収入保険料」という。)の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が10%未満である外国関係会社

    ロ 当該事業年度における収入保険料(特定収入保険料を除く。ロにおいて同じ。)に係る非関連者等に対する一定の支払再保険料の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が50%未満である外国関係会社

    (5) 部分合算課税制度における部分適用対象金額

    ①に掲げる金額から②に掲げる金額を減算した金額について、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除く。)に係る部分合算課税の対象となる特定所得の金額に加える。

    ① 収入した保険料の合計額から支払った再保険料の合計額を控除した残額

    ② 支払った保険金の額の合計額から収入した再保険金の額の合計額を控除した残額

    (注1)上記により特定所得の金額に加えられる金額は、部分適用対象金額の計算上、損益通算グループ所得の金額に該当することとする。

    (注2)特定所得の金額である異常所得の金額は、上記①に掲げる金額から上記②に掲げる金額を減算した金額がないものとした場合の各事業年度の所得の金額を基礎として計算することとする。

    16

    平成31年度与党税制改正大綱(抄)

  • 17

    5.電子経済の課税上の課題への対応

  • 6 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制

    (前略)

    100か国以上が参加する非居住者の金融口座情報の自動的交換(共通報告基準に基づく情報交換)が本格的に始まるなど透明性の向上に向けた取組みも進んでいる。今後も国際協調において主導的な役割を果たすため、わが国も引き続き国際合意に則った制度の整備を進める必要がある。特に、共通報告基準に関する法制については、国際的な議論を踏まえて見直しの要否を検討する。また、義務的開示制度については、「BEPSプロジェクト」における勧告や諸外国の制度・運用実態等を踏まえ、制度導入の可否等につき引き続き検討を進める。

    経済の電子化に伴い、物理的な拠点なく事業を行う外国企業の事業所得に十分な課税が行えないといった現行の国際課税原則の問題が顕在化している。このような課題に対して各国が各々に対応すれば、企業のビジネス展開上の不確実性を増加させ、経済活動に負の影響をもたらすことから、グローバルかつ長期的に持続可能な解決策を2020年までにとりまとめるべく、来年のG20の議長国として国際的な議論を主導していく必要がある。

    (後略)

    第三 検討事項

    5 経済の国際化・電子化への課税上の対応については、企業活動や各種取引の実態、国際的な議論、諸外国における対応等を踏まえつつ、適正な課税を確保するための方策について引き続き検討を行う。

    18

    平成31年度与党税制改正大綱(抄)

  • ○ BEPSプロジェクトでは、主に以下について対応。

    国境を越えて提供される電子サービスに対する消費課税(27年度税制改正で対応) 倉庫等でも一定の要件の下でPE認定できるようにPEの定義拡大(30年度税制改正で対応)(参考)恒久的施設(PE: Permanent Establishment)とは、事業を行う一定の場所(支店等)・代理人をいう。例えば、外国企業

    が日本国内で事業を行う場合、日本国内にその企業のPEが無ければ、その企業の事業利得に課税できない(「PE無ければ課税無し」の原則)。

    ○ 2018年3月16日、OECDが「電子化に伴う課税上の課題に関する中間報告書」を公表。

    長期的解決策の取りまとめに向けて、「PE無ければ課税無し」等の国際課税原則の見直しの実施に合意 長期的解決策が合意に至るまでの暫定的措置の導入に伴う課題、導入する場合のガイダンスを提示

    (参考) EUでは、同月21日、欧州委員会(EC)が、以下の2本柱から成る提案(EU指令案)を公表。

    長期的解決策として、「重要な電子的プレゼンス」という新たな概念(売上・ユーザー数・オンライン契約数に着目)を導出し、課税根拠とする

    暫定的措置として、3つのサービス(オンライン広告・プラットフォーム提供・データ販売)に係る収入に対して3%の税率で課税

    これまでの取組み

    国際的な議論の状況

    ○ 2020年までに長期的解決策の取りまとめに向けて作業を進める(2019年にG20に進捗報告)。

    今後の対応

    電子経済の課税上の課題への対応

    19

  • キー・コンセプトに係る国際課税原則の見直し

    Nexus

    非居住者に対する課税の有無を決めるルール

    (PE無ければ課税なし)

    Profit allocation

    課税対象利得の算定及び配分を決定(独立企業原則)

    Nexus及びProfit allocationに係る国際課税原則の見直し:経済活動と価値創造に利益を一致させるという原則に関し、経済の電子化が与える影響を検討

    2020年までに長期的解決策の取りまとめに向けて作業を進める(2019年にアップデートを行う)

    合意事項

    20

  • 21

    6.2019年のG20財務プロセス

  • 22

  • 23

    31年度税制改正大綱等について�(国際課税)スライド番号 2スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5平成31年度与党税制改正大綱(抄)スライド番号 7スライド番号 8スライド番号 9スライド番号 10平成31年度与党税制改正大綱(抄)スライド番号 12スライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16スライド番号 17平成31年度与党税制改正大綱(抄)スライド番号 19スライド番号 20スライド番号 21キー・コンセプトに係る国際課税原則の見直しスライド番号 23スライド番号 24スライド番号 25