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3章 前線の通過と天気の変化 〔1〕前線 ①前線面と前線 教258 資106-1A 図1 前線面と前線 冷たい空気(寒気)と暖か い空気(暖気)の間に仕切り 版をおいて、仕切り版を外 すと、寒気が暖気の下へ潜 り込む。 図1のように、性質の異なる空気が接すると、簡単に混ざることはなく境の面を つくる。 前線面;寒気と暖気が接している面。(多少の厚みはある) ;前線面が地表と交わるところ。 一般的に寒気は北極付近で発生するので、北側に分布し、 暖気は赤道付近で発生するので、南側に分布する。 ②停滞前線 教259 資106-1B 図2 停滞前線 図3 梅雨,秋雨前線 停滞前線;寒気と暖気の勢力が同じで、前線が移動せず同じ場所にある。 勢力:寒気暖気→前線が移動しない天気:曇りや雨が降り続いたり、ぐずついた天気が続く。 夏前後の梅雨秋雨特徴:温暖,寒冷前線に続き、東西に延びる。 寒気が強くなる。→寒冷前線へ変化。 暖気が強くなる。→温暖前線へ変化。

3章前線の通過と天気の変化2020/04/22  · 3章前線の通過と天気の変化 〔1〕前線 ①前線面と前線教258資106-1A 図1前線面と前線 冷たい空気(寒気)と暖か

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  • 3章 前線の通過と天気の変化〔1〕前線

    ①前線面と前線 教258 資106-1A

    図1 前線面と前線

    冷たい空気(寒気)と暖か

    い空気(暖気)の間に仕切り

    版をおいて、仕切り版を外

    すと、寒気が暖気の下へ潜

    り込む。

    図1のように、性質の異なる空気が接すると、簡単に混ざることはなく境の面を

    つくる。

    前線面;寒気と暖気が接している面。(多少の厚みはある)

    前 線;前線面が地表と交わるところ。

    一般的に寒気は北極付近で発生するので、北側に分布し、

    暖気は赤道付近で発生するので、南側に分布する。

    ②停滞前線 教259 資106-1B

    図2 停滞前線 図3 梅雨,秋雨前線

    停滞前線;寒気と暖気の勢力が同じで、前線が移動せず同じ場所にある。

    勢力:寒気=暖気→前線が移動しない。

    天気:曇りや雨が降り続いたり、ぐずついた天気が続く。

    夏前後の梅雨や秋雨。

    特徴:温暖,寒冷前線に続き、東西に延びる。

    寒気が強くなる。→寒冷前線へ変化。

    暖気が強くなる。→温暖前線へ変化。

  • ③寒冷前線 教259 資106-1B

    図4 寒冷前線

    寒冷前線;寒気の勢力が強く、暖気の下に潜り込みながら進むため、暖気を押し上

    げ、急激な上昇気流を生じる。そのため垂直方向に発達する雲(積状雲)

    ができる。

    勢力:寒気>暖気

    気温:前線の通過後、寒気の中に入るため急に下がる。

    気圧:前線の通過後、高くなる。

    風向:前線の通過後、南から北へ変化する。

    気流:急激な上昇気流を生じる。

    雲 :積乱雲,積雲

    天気:前線の接近で急に天気がわるくなり、雷を伴い狭い範囲に短時間に激しい

    降水がある。前線の通過後しばらくしてから天気が回復する。

    特徴:低気圧の中心から南西に延びる。

    [1]①~③の確認問題

    64-基本,65ー6

  • ④温暖前線 教259 資106-1B

    図5 温暖前線

    前線が近づくにつれて。

    A:巻雲

    B:巻層雲

    C:巻積雲

    D:高積雲

    E:高層雲と変わり、

    乱層雲によって降水。

    温暖前線;暖気の勢力が強く、寒気の上にはい上がりながら進むため、穏やかな

    上昇気流を生じる。そのため水平方向に発達する雲(層状雲)ができる。

    勢力:暖気>寒気

    気温:前線の通過後、暖気の中に入るため上がる。

    気圧:前線の通過後、低くなる。

    風向:前線の通過後、東から南へ変化する。

    気流:ゆるやかな上昇気流を生じる。

    雲 :乱層雲

    天気:前線の接近でゆっくり天気がわるくなり、広い範囲に長時間に穏やかな降

    水がある。前線の通過後すぐに天気が回復する。

    特徴:低気圧の中心から南東に延びる。

    図6 低気圧と寒冷前線,温暖前線

    [1]④の確認問題

    64-4

  • ⑤閉塞前線 教259 資106-1Bへい そく

    閉塞前線;温暖前線に比べて寒冷前線は移動する速さが速いため、

    寒冷前線が温暖前線に追いついたもの。

    暖気が両側の寒気に押し上げられるために、上昇気流を生じて風雨が強

    くなる。

    閉塞前線ができると、低気圧は消滅して前線もなくなる。

    図7 閉塞前線

    [1]⑤の確認問題

    64-5,72ー4

  • 〔2〕低気圧と高気圧

    ①温帯低気圧 教260~263 資107-2

    温帯低気圧;温帯地域で発生し、南東に温暖前線,南西に寒冷前線を伴う。

    偏西風の影響で、東や北東へ1日で500~1000㎞移動する。

    低気圧といった場合は温帯低気圧のことを示し、低気圧が接近する

    と上昇気流により雲が発生して天気がわるくなる。

    図8 温帯低気圧1

    図9 温帯低気圧の移動

    [2]①の確認問題

    68-7,70ー5

  • ②前線と温帯低気圧の一生 教259 資107-2

    図10 前線と温帯低気圧の一生

    ①寒気と暖気が接して停滞前線ができる。

    ②寒気が強い場所に寒冷前線,暖気が強い場所に温暖前線ができ、その中心に低気

    圧が発生する。

    ③低気圧が発達して、寒冷前線が温暖前線に次第に近づく。

    ④寒冷前線が温暖前線に追いつき閉塞前線ができ、低気圧は消滅する。

    ③熱帯低気圧 教274 資112-1

    熱帯低気圧;熱帯地域で発生し、前線を伴わない。

    暖かい海面から蒸発した水蒸気が凝結するときの熱をエネルギー源

    として、発達すると中心に直径20~100㎞の「目」と呼ばれる雲のない

    領域をもつ。

    地域によって、タイフーン,サイクロン,ハリケーンなど、呼び名

    が異なり、日本では、中心付近の最大瞬間風速が17.2m/秒以上のも

    のを台風と呼ぶ。

    日本付近までは北西へ進み、その後偏西風にのり北東へ進む。

    小笠原高気圧とシベリア高気圧の影響で、季節によって進路が変わ

    る。→日本付近には9~10月に接近する。

    台風は巨大な低気圧なので、中心へ向けて左回りに風が吹く。そのため、台

    風の進路の右側では、台風の進行方向と台風の中心へ吹く風が同じ方向となる

    ので、被害が大きくなる。

    進行方向右側:東風→南風→西風 …被害が大きい。

    進行方向左側:西風→北風→東風 …被害は小さい。

    図11 台風の構造と進路

    [2]③の確認問題

    67-5,68-6

  • ④気団 教264・265 資110-2

    気 団;気温や湿度などが広い範囲にわたり一様な大気の塊。

    大陸や海洋でできる。

    巨大な高気圧を形成する。

    ⓐ気団の性質

    大陸でできる。[乾 燥] 高緯度でできる。[寒 冷]

    海洋でできる。[湿 潤] 低緯度でできる。[温 暖]

    のように4つの性質をもつ。

    ⓑ日本付近の気団の特徴

    シベリア気団(冬),小笠原気団(夏)は、長期間のわたり日本列島を覆うので、冬

    と夏は同じような天気が続く。

    気 団 名 性 質 季 節 天 気 の 特 徴

    シ ベ リ ア 乾燥寒冷 冬 北西季節風 日本海側…豪雪

    太平洋側…乾燥晴天

    オホーツク海 湿潤寒冷 梅雨 北東風→やませといい東北地方に冷害

    秋雨 太平洋高気圧との間に停滞(梅雨・秋雨)前線

    日本列島全体を覆うことはない

    揚 子 江 乾燥温暖 春・秋 移動性高気圧を形成し、乾燥晴天のよい天気

    日本列島全体を覆うことはない

    小 笠 原 温暖湿潤 夏 南東季節風→夏季の高温多湿

    図12 日本付近の気団1 図13 日本付近の気団2

    [2]④の確認問題

    64-3,65ー1

  • ⑤移動性高気圧 教272 資110-1B

    移動性高気圧;春と秋にシベリア気団(高気圧)と小笠原気団(高気圧)の間の低圧

    部を移動する揚子江気団の一部。→温暖乾燥のよい天気になる。

    温帯低気圧と交互に、→晴れの日と雨の日が交互におこる。

    偏西風の影響で、東や北東へ1日で500~1000㎞移動する。

    図14 移動性高気圧

  • 4章 日本の気象〔1〕日本の天気の特徴と大気の動き

    ①日本の天気の特徴 教204~267 資109-3・4

    日本はユーラシア大陸の東端に位置しており、大陸と海洋の影響で気温や湿度の

    大きく異なる気団(巨大な高気圧)が季節ごとに勢力を変えるため、四季の変化が明

    瞭である。特に、冬と夏は異なる異なる気団が日本列島を覆い、季節風が吹き、安

    定した天気が続く。

    冬はシベリア気団に覆われ、北西季節風が吹く。この空気は、元々大陸で乾燥し

    た性質をもっていたが、日本海上を渡るときに暖流の影響で、水蒸気を大量に含む。

    これが日本海側に雪を降らせ、再び乾燥した空気が太平洋側に流れ込むので、日本

    海側と太平洋側では異なった天気となる。

    一方、夏は小笠原気団に覆われ、南東季節風が吹く。この空気は高温多湿の性質

    をもつために、とても蒸し暑い日が続く。

    春と秋は、大陸の揚子江気団から分かれた移動性高気圧と温帯低気圧が偏西風に

    流され、西から北東へ移動してくるために、天気が西から周期的に変化する。また、

    台風も小笠原気団の端を通りながら、偏西風に流されて移動する。

    このように偏西風も日本の天気に大きな影響を与えている。

    図1 季節風と偏西風

  • ②大気の動き 教269~271 資108-2

    図2 大気の構造

    地球の周囲には、上空1000㎞ほどの

    大気の層が(大気圏)があるが、そのう

    ち気象の変化が起こるのは対流圏(地表

    から上空10数㎞の範囲)だけとなる。

    低緯度地方では太陽からの熱の大量

    に受けるが、極地方ではあまり受けな

    い。低緯度地方も極地方も同じように

    熱を宇宙へ放出するため、熱を低緯度

    地方から極地方へ運ぶ必要がある。そ

    の熱を運んでいるのが、海流(暖流)と

    大気(風)である。

    図3 熱の移動と風

    ①極は常に低温のため高気圧(①極高圧部),赤道は常に高温のために低気圧(④

    赤道低圧帯)ができる。よって、赤道で暖まった空気は上空を極へ向かって流

    れ、極で冷やされて地表付近を赤道へ向かって流れる。

    ②実際には途中で大気の圧縮や膨張が起こり、低気圧(②高緯度低圧帯)と高気圧

    (③中緯度高圧帯)ができて、a:高緯度循環,b:中緯度循環,c:低緯度循環

    の3つの循環がおこる。(転向力によって北半球では右に傾く)

    ③そのとき①から②へ吹く風(X)が極東風

    ③から②へ吹く風(Y)が偏西風→日本の上空で南西から北東へ吹く。

    ③から④へ吹く風(Z)が北東貿易風となる。

  • 〔2〕四季の天気

    ①冬の天気 教275 資110-1A

    図4 冬の天気図

    シベリア高気圧の支配下

    →西高東低の気圧配置

    等圧線は縦じま

    →北西季節風

    日本海側…降雪

    太平洋側…乾燥晴天

    シベリア高気圧が衰えると、低気圧が太平洋岸を進み(南岸低気圧)、太平洋側で

    も降雪。

    さらに衰えると、低気圧が日本海を進み、それに向かって強い南風(春一番)が吹

    き、春になる。

    [2]①の確認問題

    72-3

    ②春・秋の天気 教272 資110-1B

    図5 春・秋の天気図

    揚子江気団から離れた移動性高気圧が交互の通過→周期的に天気が変化する。

    温帯低気圧

    秋は強い北風(木枯らし1号)が吹いて、冬になる。

    [2]②の確認問題

    66-基

  • ③梅雨の天気 教272・273 資111-1C

    図6 梅雨の天気図

    オホーツク海高気圧(寒冷湿潤)の間に停滞前線を形成→長雨

    小笠原高気圧(温暖湿潤)

    小笠原高気圧の勢力が強くなり、南から梅雨が明ける。

    晩夏に小笠原高気圧の勢力が弱まり秋雨となる。

    ④夏の天気 教273 資111-1D

    図7 夏の天気図

    小笠原高気圧の支配下

    →南高北低の気圧配置

    等圧線は横じま

    →南東季節風

    高温多湿の晴天

    日本海側でフェーン現象

    図8 四季の天気と気団

    [2]③,④の確認問題

    66-3,67ー4