72
4.社会的養育について 121

4.社会的養育について - mhlw.go.jp...1. 新しい社会的養育 ビジョンの 意義 虐待を受けた子どもや、何らかの 情により実の親が育てられない子どもを含め、

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

  • 4.社会的養育について

    -121-

  • 1. 新しい社会的養育ビジョンの意義

    虐待を受けた子どもや、何らかの事情により実の親が育てられない子どもを含め、

    全ての子どもの育ちを保障する観点から、平成 28 年児童福祉法改正では、子どもが

    権利の主体であることを明確にし、家庭への養育支援から代替養育までの社会的養

    育の充実とともに、家庭養育優先の理念を規定し、実親による養育が困難であれば、

    特別養子縁組による永続的解決(パーマネンシー保障)や里親による養育を推進す

    ることを明確にした。これは、国会において全会一致で可決されたものであり、我が国

    の社会的養育の歴史上、画期的なことである。

    本報告書は、この改正法の理念を具体化するため、「社会的養護の課題と将来像」

    (平成 23年7月)を全面的に見直し、「新しい社会的養育ビジョン」とそこに至る工程を

    示すものである。新たなビジョン策定に向けた議論では、在宅での支援から代替養育、

    養子縁組と、社会的養育分野の課題と改革の具体的な方向性を網羅する形となった

    が、これらの改革項目のすべてが緊密に繋がっているものであり、一体的かつ全体と

    して改革を進めなければ、我が国の社会的養育が生まれ変わることはない。

    このビジョンの骨格は次のとおりであり、各項目は、工程に基づいて着実に推進さ

    れなければならない。

    2. 新しい社会的養育ビジョンの骨格

    地域の変化、家族の変化により、社会による家庭への養育支援の構築が求められ

    ており、子どもの権利、ニーズを優先し、家庭のニーズも考慮してすべての子ども家

    庭を支援するために、身近な市区町村におけるソーシャルワーク体制の構築と支援

    メニューの充実を図らなければならない。

    例えば、多くの子どもがその生活時間を長く過ごしている保育園の質の向上および

    子ども家庭支援として、対子ども保育士数の増加やソーシャルワーカーや心理士の

    配置等を目指す。さらに、貧困家庭の子ども、障害のある子どもや医療的ケアを必要

    とする子どもなど、子どもの状態に合わせた多様なケアを充実させるとともに、虐待

    や貧困の世代間連鎖を断ち切れるライフサイクルを見据えた社会的養育システムの

    確立、特に自立支援や妊産婦への施策(例えば、産前産後母子ホームなど)の充実

    を図る。

    中でも、虐待の危険が高いなどで集中的な在宅支援が必要な家庭には、児童相談

    所の在宅指導措置下において、市区町村が委託を受けて集中的に支援を行うなど在

    宅での社会的養育としての支援を構築し、親子入所機能創設などのメニューも充実さ

    せて分離しないケアの充実を図る。

    他方、親子分離が必要な場合には、一時保護も含めた代替養育のすべての段階

    において、子どものニーズに合った養育を保障するために、代替養育はケアニーズに

    応じた措置費・委託費を定める。代替養育は家庭での養育を原則とし、高度に専門

    的な治療的ケアが一時的に必要な場合には、子どもへの個別対応を基盤とした「でき

    -123-

    SJNQTテキストボックス○新たな社会的養育の在り方に関する検討会

    「新しい社会的養育ビジョン」(平成29年8月2日)※要約編抜粋

  • る限り良好な家庭的な養育環境」を提供し、短期の入所を原則とする。また、里親を

    増加させ、質の高い里親養育を実現するために、児童相談所が行う里親制度に関す

    る包括的業務(フォスタリング業務)の質を高めるための里親支援事業や職員研修を

    強化するとともに、民間団体も担えるようフォスタリング機関事業の創設を行う。代替

    養育に関し、児童相談所は永続的解決を目指し、適切な家庭復帰計画を立てて市区

    町村や里親等と実行し、それが不適当な場合には養子縁組といった、永続的解決を

    目指したソーシャルワークが児童相談所で行われるよう徹底する。中でも、特別養子

    縁組は重要な選択肢であり、法制度の改革を進めるとともに、これまで取組が十分と

    はいえなかった縁組移行プロセスや縁組後の支援を強化する。

    3.新しい社会的養育ビジョンの実現に向けた工程

    平成 28 年改正児童福祉法の原則を実現するため、①市区町村を中心とした支援

    体制の構築、②児童相談所の機能強化と一時保護改革、③代替養育における「家庭

    と同様の養育環境」原則に関して乳幼児から段階を追っての徹底、家庭養育が困難

    な子どもへの施設養育の小規模化・地域分散化・高機能化、④永続的解決(パーマ

    ネンシー保障)の徹底、⑤代替養育や集中的在宅ケアを受けた子どもの自立支援の

    徹底などをはじめとする改革項目について、速やかに平成 29 年度から改革に着手し、

    目標年限を目指し計画的に進める。なお、市区町村の支援の充実により、潜在的ニ

    ーズが掘り起こされ、代替養育を必要とする子どもの数は増加する可能性が高いこと

    に留意して計画を立てる。

    また、これらの改革は子どもの権利保障のために最大限のスピードをもって実現す

    る必要がある。その改革の工程において、子どもが不利益を被ることがないよう、十

    分な配慮を行う。

    (1) 市区町村の子ども家庭支援体制の構築

    市区町村子ども家庭総合支援拠点の全国展開と、人材の専門性の向上により、

    子どものニーズにあったソーシャルワークをできる体制を概ね5年以内に確保する

    とともに、子どもへの直接的支援事業(派遣型)の創設やショートステイ事業の充実、

    産前産後母子ホームなどの親子入所支援の創設、児童家庭支援センターの配置

    の増加と質の向上などの支援メニューの充実を平成 30 年度から開始し、概ね5年

    後までに各地で行える体制とする。児童相談所の指導委託措置として行われる在

    宅措置、通所措置が適切に行える手法を明確にして、支援内容に応じた公的な費

    用負担を行う制度をできるだけ早く構築する。

    (2) 児童相談所・一時保護改革

    児童相談所職員への各種の研修の実施とその効果の検証を行い、平成 28 年改

    正法附則に基づき、施行後5年を目途に中核市・特別区による児童相談所設置が

    可能となるような計画的支援を行う。

    また、通告窓口の一元化を行うため、情報共有を含めた制度改正を行い、調査・

    -124-

  • 保護・措置に係る業務と支援マネージメント業務の機能分離を計画的に進める。

    さらに、一時保護に関する改革として、機能別に2類型に分割(緊急一時保護と

    アセスメント一時保護)し、閉鎖空間での緊急一時保護の期間を数日以内とする。

    一時保護時の養育体制を強化し、アセスメント一時保護における里親への委託推

    進・小規模化・地域分散化、一時保護里親類型の創設に早急に着手し、概ね5年

    以内に子どもの権利が保障された一時保護を実現する。

    パーマネンシー保障のための家庭復帰計画、それが困難な時の養子縁組推進

    を図るソーシャルワークを行える十分な人材の確保を概ね5年以内に実現する。

    (3) 里親への包括的支援体制(フォスタリング機関)の抜本的強化と里親制度改革

    里親とチームとなり、リクルート、研修、支援などを一貫して担うフォスタリング機

    関による質の高い里親養育体制の確立を最大のスピードで実現し、平成 32年度に

    はすべての都道府県で行う体制とし、里親支援を抜本的に強化する。これにより、

    里親への支援を充実させ、里親のなり手を確保するとともに里親養育の質を向上さ

    せる。

    また、フォスタリング機関事業の実施のため、平成 29 年度中に国によるプロジェ

    クトチームを発足しガイドラインの作成や自治体への支援を開始する。

    ファミリーホームを家庭養育に限定するため、早急に事業者を里親登録者に限

    定し、一時保護里親、専従里親などの新しい里親類型を平成 33年度を目途に創設

    して、障害のある子どもなどケアニーズの高い子どもにも家庭養育が提供できる制

    度とする。併せて「里親」の名称変更も行う。

    (4) 永続的解決(パーマネンシー保障)としての特別養子縁組の推進

    実家庭で養育ができない子どもや、家庭復帰に努力をしても実家庭に戻ることが

    困難な代替養育を受けている子どもの場合、児童福祉法第3条の2における家庭

    養育原則に基づき、永続的解決としての特別養子縁組は有力、有効な選択肢とし

    て考えるべきである。

    しかし、現行の制度では、子どもの年齢要件や手続き上の養親の負担などのた

    め、必要な子どもに特別養子縁組の機会が保障されず、健全な養育に不可欠な愛

    着形成の機会を重要な発育時期に確保できていない現状がある。

    このため、厚生労働省では「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組

    制度の利用促進の在り方に関する検討会」において6月 30 日に「特別養子縁組制

    度の利用促進の在り方について」報告書がまとめられた。一刻も早く子どもの権利

    保障を行うために、報告書に沿った法制度改革(年齢要件の引き上げ、手続きを二

    段階化し児童相談所長に申立権を付与、実親の同意撤回の制限)を速やかに進め

    るとともに、その新たな制度の下で、一日も早く児童相談所と民間機関が連携した

    強固な養親・養子支援体制を構築し、養親希望者を増加させる。概ね5年以内に、

    現状の約2倍である年間 1000 人以上の特別養子縁組成立を目指し、その後も増

    加を図っていく。

    (5) 乳幼児の家庭養育原則の徹底と、年限を明確にした取組目標

    特に就学前の子どもは、家庭養育原則を実現するため、原則として施設への新

    -125-

  • 規措置入所を停止する。このため、遅くとも平成 32 年度までに全国で行われるフォ

    スタリング機関事業の整備を確実に完了する。

    具体的には、実親支援や養子縁組の利用促進を進めた上で、愛着形成等子ど

    もの発達ニーズから考え、乳幼児期を最優先にしつつ、フォスタリング機関の整備

    と合わせ、全年齢層にわたって代替養育としての里親委託率(代替養育を受けて

    いる子どものうち里親委託されている子どもの割合)の向上に向けた取組を今から

    開始する。これにより、愛着形成に最も重要な時期である3歳未満については概ね

    5年以内に、それ以外の就学前の子どもについては概ね7年以内に里親委託率

    75%以上を実現し、学童期以降は概ね 10年以内を目途に里親委託率 50%以上を

    実現する(平成 27年度末の里親委託率(全年齢)17.5%)。

    ただし、ケアニーズが非常に高く、施設等における十分なケアが不可欠な場合は、

    高度専門的な手厚いケアの集中的提供を前提に、小規模・地域分散化された養育

    環境を整え、その滞在期間は、原則として乳幼児は数か月以内、学童期以降は1

    年以内とする。また、特別なケアが必要な学童期以降の子どもであっても3年以内

    を原則とする。この場合、代替養育を受ける子どもにとって自らの将来見通しが持

    て、代替養育変更の意思決定プロセスが理解できるよう、年齢に応じた適切な説明

    が必要である。養育の場を変える場合には、さらに十分な説明のもと、子どもとのコ

    ミュニケーションをよくとり、子どもの意向が尊重される必要がある。また、移行にあ

    たっては、子どもの心理に配慮した十分なケアがなされる必要がある。

    これらを、まず乳幼児から実現するためには、これまで乳児院が豊富な経験によ

    り培ってきた専門的な対応能力を基盤として、今後はさらに専門性を高め、一時保

    護された乳幼児とその親子関係に関するアセスメント、障害等の特別なケアを必要

    とする子どものケアの在り方のアセスメントとそれに基づく里親委託準備、親子関

    係改善への通所指導、産前産後を中心とした母子の入所を含む支援、家庭復帰に

    向けた親子関係再構築支援、里親・養親支援の重要な役割を地域で担う新たな存

    在として、機能の充実が不可欠である。その際、一時的な入所は、家庭養育原則

    に照らし、限定的、抑制的に判断すべきである。今後、これまでの乳児院は多機能

    化・機能転換し、こうした新たな重要な役割を担う。国はそのための財政的基盤を

    できるだけ早く構築するとともに、乳児院をその機能にあった名称に変更する。

    (6) 子どもニーズに応じた養育の提供と施設の抜本改革

    子どものニーズに応じた個別的ケアを提供できるよう、ケアニーズに応じた措置

    費・委託費の加算制度をできるだけ早く創設する。同様に、障害等ケアニーズの高

    い子どもにも家庭養育が行えるよう、補助制度の見直しを行う。

    また、家庭では養育困難な子どもが入所する「できる限り良好な家庭的環境」で

    ある全ての施設は原則として概ね 10 年以内を目途に、小規模化(最大6人)・地域

    分散化、常時2人以上の職員配置を実現し、更に高度のケアニーズに対しては、迅

    速な専門職対応ができる高機能化を行い、生活単位は更に小規模(最大4人)とな

    る職員配置を行う。

    施設で培われた豊富な体験による子どもの養育の専門性をもとに、施設が地域

    支援事業やフォスタリング機関事業等を行う多様化を、乳児院から始め、児童養護

    施設・児童心理治療施設、児童自立支援施設でも行う。

    -126-

  • (7) 自立支援(リービング・ケア、アフター・ケア)

    代替養育の目的の一つは、子どもが成人になった際に社会において自立的生活

    を形成、維持しうる能力を形成し、また、そのための社会的基盤を整備することに

    ある。

    そのため、平成 30年度までにケア・リーバー(社会的養護経験者)の実態把握を

    行うとともに、自立支援ガイドラインを作成し、概ね5年以内に、里親等の代替養育

    機関、アフターケア機関の自立支援の機能を強化するとともに、措置を行った自治

    体の責任を明確化し、包括的な制度的枠組み(例えば、自治体による自立支援計

    画の策定など)を構築する。

    これにより、代替養育の場における自律・自立のための養育、進路保障、地域生

    活における継続的な支援を推進する。その際、当事者の参画と協働を原則とする。

    これら自立支援方策を具体化するための検討の場を設ける。

    (8) 担う人材の専門性の向上など

    今年度より行われている児童福祉司等の研修や市区町村の要保護児童対策地

    域協議会の専門職研修等の実施状況の確認とその効果判定を行い、国による研

    修の質の向上を図る。

    また、子どもの権利擁護のために、早急に児童福祉審議会による権利擁護の在

    り方を示して、3年を目途にその体制を全国的に整備し、平成 30 年度に一時保護

    の専門家による評価チームの構成から始めて、概ね5年以内には社会的養護に係

    わる全ての機関の評価を行う専門的評価機構を創設するとともに、アドボケイト制

    度の構築を行う。

    すべての制度構築の根拠となる業務統計の整備、国際的な比較にも耐えられる

    虐待関連統計の整備を概ね5年以内に行い、長期の成果を判断したり、情報を共

    有するためのデータベースの構築も概ね5年以内に行う。また、子どもの死を無駄

    にせず、検証して、防げる死から子どもを守る制度や技術の向上を目指し、Child

    Death Reviewの制度を概ね5年以内に確立する。

    (9) 都道府県計画の見直し、国による支援

    従来の「社会的養護の課題と将来像」(平成 23 年7月)に基づいて策定された都

    道府県等の計画については、この「新しい社会的養育ビジョン」に基づき、平成 30

    年度末までに見直し、家庭養育の実現と永続的解決(パーマネンシー保障)、施設

    の抜本的改革、児童相談所と一時保護所の改革、中核市・特別区児童相談所設

    置支援、市区町村の子ども家庭支援体制構築への支援策などを盛り込む。これら

    を実現するため、国は必要な予算確保に向けて最大限努力し、実現を図る。

    以上

    -127-

  • 「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」の開催について

    1.趣旨

    平成 28 年5月 27 日に成立した「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平成 28 年

    法律第 63 号)により新設された児童福祉法第3条の2において、児童が家庭において

    健やかに養育されるよう、保護者を支援することを原則とした上で、家庭における養育

    が困難又は適当でない場合には、まずは養子縁組や里親等への委託を進めることとし、

    それが適当でない場合には、できる限り、児童養護施設等における小規模グループケア

    などの良好な家庭的環境で養育されるよう、必要な措置を講ずることとされている。

    また、平成 28 年3月に取りまとめられた新たな子ども家庭福祉の在り方に関する専

    門委員会の報告(提言)において社会的養護の利用者等に対する継続的な支援の仕組み

    の整備が必要とされており、具体的な制度の検討について言及されている。

    このため、厚生労働大臣の下に検討会を開催し、改正児童福祉法等の進捗状況を把握

    するとともに、「新たな子ども家庭福祉」の実現に向けた制度改革全体を鳥瞰しつつ、

    新たな社会的養育の在り方の検討を行うこととし、併せて、これを踏まえ「社会的養護

    の課題と将来像」(平成 23 年7月)を全面的に見直す。

    2.検討事項

    次に掲げる事項を含め、社会的養育の在るべき姿を検討。「社会的養護の課題と将来

    像」(平成 23 年 7 月)を全面的に見直すことにより、新たな社会的養育の在り方を示

    す。

    (1)改正児童福祉法等の進捗状況を把握するとともに、「新たな子ども家庭福祉」の

    実現に向けた制度改革全体を鳥瞰

    (2)改正児童福祉法を踏まえた社会的養育の考え方、家庭養護と家庭的養護の用語の

    整理・定義の明確化

    (3)(2)を踏まえた地域分散化も含めた施設機能の在るべき姿

    (4)里親、養子縁組の推進や、在宅養育支援の在り方、これらを踏まえた社会的養育

    体系の再編

    (5)(2)~(4)を踏まえた都道府県推進計画への反映の在り方

    (6)児童福祉法の対象年齢を超えて、自立支援が必要と見込まれる 18 歳以上(年齢

    延長の場合は 20 歳)の者に対する支援の在り方

    3.構成等

    (1)構成員は、別紙のとおり。

    (2)座長は、必要に応じ意見を聴取するため、関係者を招聘することができる。

    4.運営

    (1)厚生労働大臣が、学識経験者及び実務者等の参集を求めて開催する。

    (2)庶務は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課において行う。

    (3)原則として公開とする。

    (参考資料1)

    -128-

  • 新たな社会的養育の在り方に関する検討会構成員名簿

    (五十音順、敬称略)

    相澤 仁 大分大学福祉健康科学部 教授

    井上 登生 医療法人井上小児科医院 院長

    ◎ 奥山 眞紀子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター

    こころの診療部長

    加賀美 尤祥 社会福祉法人山梨立正光生園 理事長

    山梨県立大学人間福祉学部 特任教授

    上鹿渡 和宏 公立大学法人長野大学社会福祉学部 教授

    塩田 規子 社会福祉法人救世軍世光寮 副施設長

    伊達 直利 社会福祉法人旭児童ホーム 理事長

    西澤 哲 山梨県立大学人間福祉学部長

    林 浩康 日本女子大学人間社会学部 教授

    藤林 武史 福岡市こども総合相談センター 所長

    ○ 松本 伊智朗 北海道大学大学院教育学研究院 教授

    山縣 文治 関西大学人間健康学部人間健康学科 教授

    ◎:座長、○:座長代理

    (合計12名)

    別紙

    -129-

  • 「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」開催経過

    第1回 7月 29日 (1)検討会の開催について (2)改正法施行に向けたロードマップと進捗の確認 (3)「社会的養育」についての議論のポイントと進め方 (4)その他

    第2回 9月 16日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況の報告及び法改正後の進捗状況の確認

    (2)関係団体等からのヒアリングの進め方 (3)関係団体からのヒアリング ・全国児童養護施設協議会 ・全国乳児福祉協議会 ・全国母子生活支援施設協議会 ・全国情緒障害児短期治療施設協議会 ・全国児童自立支援施設協議会

    (4)その他

    第3回 10月7日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況の報告及び法改正後の進捗状況の確認

    (2)論点の中の社会的養護に関する議論 (3)関係団体等からのヒアリング ・全国保育協議会 ・大阪市 ・公益社団法人 家庭養護促進協会 ・全国自立援助ホーム協議会 ・「非行」と向き合う親たちの会(あめあがりの会) ・CVV(Children’s Views and Voices) ・特定非営利活動法人 IFCA(International Foster Care

    Alliance) (4)その他

    第4回 10月 21日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況の報告 (2)論点の中の社会的養護に関する議論 (3)関係団体等からのヒアリング ・全国児童相談所長会 ・公益財団法人 日本知的障害者福祉協会 ・全国児童家庭支援センター協議会 ・公益財団法人 全国里親会 ・一般社団法人 日本ファミリーホーム協議会 ・特定非営利活動法人 キーアセット

    (4)その他

    第5回 11月 18日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況の報告及び法改正後の進捗状況の報告

    (2)本検討会の成果としてまとめるべき事項 (3)論点の中の社会的養護に関する議論 (4)その他

    第6回 11月 30日 (1)関係団体等からのヒアリング (2)論点の中の社会的養護に関する議論 (3)その他

    (参考資料2)

    (平成 28年)

    -130-

  • 第7回 12月 28日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況の報告及び法改正後の進捗状況の報告

    (2)論点の中の社会的養護に関する議論 (3)その他

    第8回 1月 13日 (1)平成 29年度児童虐待防止対策関係予算案の概要等について (2)論点の中の社会的養護に関する議論 (3)在宅支援に関する議論 (4)その他

    第9回 2月1日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況等について (2)在宅支援に関する議論 (3)児童家庭支援センターに関する議論 (4)その他

    第 10回 2月 24日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況等の報告 (2)改正児童福祉法第3条の2の解釈に基づく社会的養護(狭

    義)(案)について (3)在宅支援に関する議論 (4)自立支援に関する議論 (5)その他

    第 11回 3月 30日 (1)各検討会・ワーキンググループの開催状況等及び法改正後の進捗状況の報告について

    (2)関係者からのヒアリング ・社会福祉法人慈愛会

    (3)自立支援に関する議論 (4)その他

    第 12回 4月 21日 (1)関係者からのヒアリング ・認定 NPO 法人 Living in Peace

    (2)一時保護に関する議論 (3)その他

    第 13回 4月 28日 (1)関係者からのヒアリング ・花園大学 和田一郎准教授

    (2)一時保護に関する議論 (3)その他

    第 14回 5月 26日 (1)施設の在り方に関する議論等 (2)子どもの権利擁護に関する取組等 (3)その他

    (構成員によるとりまとめ(案)の分担執筆)

    第 15回 7月 31日 (1)とりまとめに向けた議論 (2)その他

    第 16回 8月2日 (1)新しい社会的養育ビジョン(案)について (2)その他

    (平成 29年)

    -131-

  • -132-

  • -133-

  • -134-

  • -135-

  • -136-

  • -137-

  • -138-

  • -139-

  • -140-

  • -141-

  • -142-

  • -143-

  • 子どもを育てたいと願うあなたに

    「特別養子縁組制度」があります。

    親を必要としている子どもたちがいます。

    自分の子どもとして

      

    あなたの家庭に迎え入れる制度です。

    厚生労働省

    詳しくは児童相談所に、お尋ねください。189い ち  は や   く

    ☎ 全国共通全国共通ダイヤル-144-

  • 成立件数

    の推移

    児童相談所

    「特別養⼦縁組」とは、⼦どもの福祉の増進を図るために、養⼦となるお⼦さんの実親(生みの親)との法的な親⼦関係を解消し、実の⼦として、新たな親⼦関係を結ぶ制度です。

    「特別養⼦縁組」は、養親になることを望むご夫婦が家庭裁判所に請求を⾏い、下記の要件を満たした場合に、家庭裁判所から決定を受けることで成⽴します。

    児童相談所全国共通ダイヤル『189』で お住まいの地域の児童相談所につながります。

    相談窓口のご案内

    「特別養子縁組制度」のご案内

    子どもを育てたいと願うあなたに

    成立の要件 「特別養子縁組」の成立には、 以下のような要件を満たす必要があります。

    ① 養⼦となるお⼦さんの⽗⺟(実⽗⺟)の同意がなければなりません。ただし、実⽗⺟がその意思を表⽰できない場合⼜は、実⽗⺟による虐待、悪意の遺棄その他養⼦となるお⼦さんの利益を著しく害する事由がある場合は、実⽗⺟の同意が不要となることがあります。

    ② 養親となるには配偶者のいる⽅(夫婦)でなければならず、夫婦共同で縁組をすることになります。また、養親となる⽅は25歳以上でなければなりません。ただし、養親となる夫婦の⼀⽅が25歳以上である場合、もう⼀⽅は20歳以上であれば養親となることができます。

    ③ 養子になるお子さんの年齢は、養親となる⽅が家庭裁判所に審判を請求するときに6歳未満である必要があります。ただし、お⼦さんが6歳に達する前から養親となる⽅に監護されていた場合には、お⼦さんが8歳に達する前までは、審判を請求することができます。

    ④ 縁組成⽴のためには、養親となる⽅が養子となるお子さんを6ヵ⽉以上監護していることが必要です。そのため、縁組成⽴前にお⼦さんと⼀定の期間を⼀緒に暮らしていただき、その監護状況等を考慮して、家庭裁判所が特別養⼦縁組の成⽴を決定することになります。

    ◆「特別養子縁組制度」に関心を持たれた⽅は、児童相談所にお問い合わせください。

    インターネットからは で検索してください。

    実親の 同意

    養親の 年齢

    養子の 年齢

    半年間 の監護

    ◆ 「特別養子縁組」が成立すると、お子さんと実⽗⺟との法的な親族関係 が終了し、お子さんと養親との間で実親子と同様の親族関係が⽣じます。

    【参考】 出典:司法統計年報

    平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

    成立件数 325 374 339 474 513 542

    全国児童相談所一覧 検 索

    -145-

  • 厚生労働省

    思いがけない妊娠に

       

    とまどうあなたへ

     

    あなたの出産と産後を応援する

             

    多くの人たちがいます。

    ひとりで悩まないで、まずは、相談してください。

     

    どうしても育てられない場合は、かけがえのない命を、

     

    あなたに代わって大切に育ててくれる

    「特別養子縁組制度」があります。

     

    どうしても育てられない場合は、かけがえのない命を、

     

    あなたに代わって大切に育ててくれる

    「特別養子縁組制度」があります。

    まずは児童相談所に、お電話ください。189い ち  は や   く

    ☎ 全国共通全国共通ダイヤル-146-

  • 「女性健康支援センター」では、保健師等による妊娠に悩む方に対する相談等、女性のライフステージに応じた相談支援を行っています。

    →→→ で検索してください。

    かけがえのない命です。 あなたの出産と産後を応援できるサポート体制があります。

    ひとりで悩み、抱え込まずに、まずは 相談 を!! どうしても育てられない場合には、生まれてくる命を、あなたに代わって

    大切に育ててくれる「特別養子縁組制度」があります。

    児童相談所

    児童相談所では、特別養子縁組に関する相談のほか、子育ての悩み相談など幅広く対応しています。児童相談所全国共通ダイヤル『189』でお住まいの地域の児童相談所につながります。

    連絡は匿名で行うことが可能です。連絡者や連絡内容に関する秘密は守られます。

    下のセンターでも相談を受け付けています。

    「子育て世代包括支援センター」

    「子育て世代包括支援センター」は、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援のために、保健師等によるきめ細かな相談支援等を行っています。

    →→→ お住まいの市町村役場にご連絡ください。

    「女性健康支援センター」

    全国女性健康支援センター一覧 検 索

    まずは相談。児童相談所の全国共通ダイヤルは『189』

    「特別養子縁組」とは、何らかの理由で生みの親が育てられない子どものために、生みの親との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)との新たな親子関係を始める制度です。

    あなたが子どもをどうしても育てられない場合は、あなたの代わりに家族になって、子どもを育ててくれるご夫婦に、大切な命を託すことができます。

    「特別養子縁組」ってなに?

    思いがけない妊娠に戸惑い、悩んでいるあなたに

    (注)全国1,741市区町村のうち、296市区町村で実施されています。(平成28年4月1日現在)

    -147-

  • 「特別養子縁組」とは、子どもの福祉の増進を図るために、実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、養親(育ての親)との新たな親子関係を始める制度です。 ○「特別養子縁組」は、養親(育ての親)となる方による請求に対し、家庭裁判所が決定を与えることで成立します。

    ○「特別養子縁組」の成立には養子となるお子さんの父母(実父母)の同意がなければなりません。ただし、実父母がその意思を表⽰できない場合⼜は、実父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となるお子さんの利益を著しく害する事由がある場合は、実父母の同意が不要となることがあります。

    ○「特別養子縁組」が成立すると、お子さんと実父母との法的な親族関係が終了し、新たに養親との親族関係が生じます。

    <「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の違い>

    普通養子縁組 特別養子縁組

    縁組の成立 養親と養子の同意により成立 養親の請求に対し家庭裁判所の決定により成立

    要件 ○養親:成年に達した者

    ○養子:尊属⼜は養親より年長でない者

    ○養親:原則25歳以上(夫婦の一方が25歳以上であれば、一方は20歳以上で可) 配偶者がある者(夫婦双方とも養親)

    ○養子:原則、6歳に達していない者

    実父母との親族関係

    実父母との親族関係は終了しない 実父母との法的な親族関係が終了する

    監護期間 特段の設定はない 6月以上の監護期間(注)を考慮して縁組 (注)「監護期間」とは、愛着形成に向けて、子どもと同居し

    て生活する期間を言います。

    戸籍の表記 実親の名前が記載され、養子の続柄は「養子(養女)」と記載

    実親の名前が記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」等と記載

    【 思いがけない妊娠に戸惑い、悩む妊婦さんにお伝えください 。】

    思いがけない妊娠など、出産後の養育に不安がある妊婦さんが来院された場合、

    心身の状況(妊娠、出産についての葛藤)に配慮しつつ、下記の情報をお伝えください。

    ① 妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援や、妊娠に悩む方が相談できる窓口があります。

    ② どうしても子どもを育てられない場合、「特別養子縁組制度」があります。

    ③ 養子縁組に関することなど児童相談所への相談は、匿名でも行えます。⇒ 児童相談所の全国共通ダイヤルは『189(イチハヤク)』※裏面参照

    ② 「特別養子縁組制度」について

    ○「子育て世代包括支援センター」「子育て世代包括支援センター」は、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援のために、

    保健師等によるきめ細かな相談支援等を行っております。

    お住まいの市町村役場にご連絡ください。

    ○「女性健康支援センター」「女性健康支援センター」では、保健師等による妊娠に悩む方に対する相談等、女性のライフ

    ステージに応じた相談支援を行っております。

    全国女性健康支援センター 一覧 で検索してください。検索

    ① 妊娠や子育てに関する保健師等による相談窓口

    (注)全国1,741市区町村のうち、296市区町村で実施されています。(平成28年4月1日現在)

    医療関係者の皆様へお願い~特別養子縁組制度について~

    -148-

  • 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年 平成27年

    325 374 339 474 513 542

    ○特別養子縁組の成⽴件数 (出典)司法統計年報

    虐待死事例(44人)のうち、 0歳児が61.4%(27人)と最も高い割合を占める。 (0歳児死亡事例(27人)のうち、⽉齢0か⽉児が55.6%(15人))

    また、54.5%(24人)の子どもの実⺟が「予期せぬ妊娠(望まない妊娠/計画していない妊娠)」だった。

    ○虐待死事例 (注)平成26年度に厚生労働省が把握した虐待死事例(心中以外)

    統計データ

    国としては、昨年成⽴した以下の法律を着実に実施していくことにより、養子縁組の利用推進を図るとともに、特定妊婦等への支援の強化を図るためのモデル事業を実施することとしています。

    ○ 社会的養護が必要な子どもが、心身ともに健やかに養育されるよう、より家庭に近い環境での養育の推進を図ることが必要です。このため、平成28年の児童福祉法改正により、国・地方公共団体(都道府県・市町村)の責務として、「家庭と同様の環境における養育の推進」等を明確化しました。

    ○ 具体的には、児童相談所が要保護児童の養育環境を決定するときは、

    ・ まずは、児童が家庭において健やかに養育されるよう、保護者の支援を行い、

    ・ 家庭における養育が適当でない場合は、児童が「家庭における養育環境と同様の養育環境」において継続的に養育されるよう、必要な措置を講じ、

    ・ これらの措置が適当でない場合、児童が「できる限り良好な家庭的環境」で養育されるよう、必要な措置を講じることとしました。

    ※ 特に就学前の児童については、通知等において、原則、「家庭における養育環境と同様の養育環境」での措置を講じることとしました。

    平成28年改正児童福祉法における「家庭と同様の環境における養育の推進」について

    ○ 平成29年度から、特定妊婦等への支援の強化を図るため、産科医療機関や⺟子生活支援施設等にコーディネーターを配置し、特定妊婦や思いがけない妊娠により出産後の育児に不安を抱える妊婦に対する支援について、都道府県等への補助事業としてモデル的に実施しています。

    「産前・産後⺟子支援事業」(モデル事業)について

    ○児童相談所

    児童相談所全国共通ダイヤル『189(イチハヤク)』でお住まいの地域の児童相談所につな

    がります。

    児童相談所では、養子縁組に関する相談のほか、子育ての悩み相談など幅広く対応しています。

    ※連絡は匿名で行うことが可能です。連絡者や連絡内容に関する秘密は守られます。

    ○ 近年、民間の養子縁組あっせん事業者による養子縁組の成⽴件数は増加しており、その事業運営の透明化や適正化がますます重要になっています。このため、議員⽴法として「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」が、平成28年12月9日に成⽴しました。

    「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律」について

    ③ 児童相談所のご照会

    参 考

    -149-

  • (1)月額

    ※1 社会的養護を必要とする学生・生徒は、「自宅外通学」の月額。※2 国立の大学等の授業料の全額免除を受ける場合には、給付金額が減額されます。

    自宅外通学:3万円→2万円、自宅通学:2万円→0円

    (2)一時金

    社会的養護を必要とする学生・生徒は、入学時に、一時金として「24万円」が「月額」と併せて振り込まれます。

    4.推薦基準と選考・推薦

    ○ 各高等学校等において、「給付奨学生採用候補者の推薦に係る指針(ガイドライン※3)」に基づき、推薦基準を策定し、策定した基準により選考されます。

    ※3 ガイドライン(抜粋)

    学力及び資質について

    社会的養護を必要とする生徒等であって、次のいずれかの要件を満たしていること

    ・特定の分野において特に優れた資質能力を有し、進学後特に優れた学習成績を収める見込みがある者・進学後の学修に意欲があり、進学後特に優れた学習成績を収める見込みがある者

    ○ 各高等学校等は、機構が示す推薦枠の範囲内で基準を満たす者を推薦します。

    ○ ただし、社会的養護を必要とする生徒は、推薦基準を満たす者全員が推薦可能となっています。

    5.申込先・申込期間

    在学する高等学校 概ね5月~7月(各高等学校等において設定)

    日本学生支援機構 給付奨学金の概要

    1.制度の趣旨

    日本学生支援機構の給付型奨学金制度は、意欲と能力のある若者が経済的理由により進学を断念することのないよう、返還不要の奨学金を給付することにより、進学を後押しすることを目的としています。

    2.対象

    ① 住民税非課税世帯(家計支持者が住民税(市町村民税)所得割を課されない)の生徒

    ② 生活保護世帯(家計支持者が生活保護を受給)の生徒

    ③ 社会的養護を必要とする生徒

    3.給付金額

    進学先国立 公立 私立

    自宅通学 自宅外通学 自宅通学 自宅外通学 自宅通学 自宅外通学

    大学短期大学

    高等専門学校(4年生)専修学校(専門課程)

    2万円 3万円 2万円 3万円 3万円 4万円

    社会的養護を必要とする生徒等の場合は、以下の施設等に入所等していること(又は18歳時点で入所等していたこと)・児童養護施設 ・自立援助ホーム(児童自立生活援助事業を行う者)・児童心理治療施設 ・ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業を行う者)・児童自立支援施設 ・里親

    詳細は、日本学生支援機構ホームページへhttp://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/index.html

    -150-

  • 民間

    あっせ

    ん機

    関による養

    子縁

    組の

    あっせ

    んに係

    る児

    童の

    保護

    等に関

    する法

    律(概

    要)

    一目

    的・養子縁組あっせん事業を行う者について許可制度を導入

    ・業務の適正な運営を確保するための規制

    →養子縁組のあっせんに係る児童の保護、民間あっせん

    機関による適正な養子縁組のあっせんの促進

    ⇒児童の福祉の増進

    二定

    義「養子縁組のあっせん」:養親希望者と18歳未満の児童と

    の間の養子縁組をあっせんすること

    「民間あっせん機関」

    許可を受けて養子縁組のあっせんを業として行う者

    三児

    童の

    最善の利益等

    民間あっせん機関による養子縁組のあっせんは、

    ①児童の最善の利益を最大限に考慮し、これに適合す

    るように行われなければならない。

    ②可能な限り日本国内において児童が養育されることと

    なるよう、行われなければならない。

    四民

    間あっせん機関及び児童相談所の連携及び協力

    五個

    人情

    報の取扱い

    民間の事業者が養子縁組のあっせんを業として行うことについて、

    (これまで)第二種社会福祉事業の届出

    ↓(新法)

    許可

    制度を導入

    許可基準(営利目的で養子縁組あっせん事業を行おうとするもの

    でないこと等)、手数料

    、帳簿の備付け・保存・引継ぎ、第三者評価、

    民間あっせん機関に対する支援等について定める。

    一相

    談支

    援二

    養親

    希望者・児童の父母等による養子縁組のあっせんの申

    込み

    等三

    養子

    縁組のあっせんを受けることができない養親希望者

    (研修の修了の義務付け等)

    四児

    童の

    父母等の同意

    養親希望者の選定、面会、縁組成立前養育の各段階での同意

    (同時取得可)

    五養

    子縁

    組のあっせんに係る児童の養育

    六縁

    組成

    立前養育

    七養

    子縁

    組の成否等の確認

    八縁

    組成

    立前養育の中止に伴う児童の保護に関する措置

    九都

    道府

    県知事への報告

    (あっせんの各段階における報告義務)

    十養

    子縁

    組の成立後の支援、

    十一

    養親

    希望者等への情報の提供

    十二

    秘密

    を守

    る義務等、

    十三

    養子

    縁組あっせん責任者

    一(厚生労働大臣が定める)指

    針二

    (都道府県知事から民間あっせん機関に対する)指

    導及

    び助

    言、報告及び検査

    三(国・地方公共団体による)養

    子縁組のあっせんに係る制度

    の周

    無許可で養子縁組あっせん事業を行った者等について、罰

    則を規定

    施行期日(原則公布の日から2年以内)、経

    過措

    置、検討

    第一

    総則

    第二

    民間あっせん機関の許可等

    第三

    養子縁組のあっせんに係る業務

    第四

    雑則

    第五

    罰則

    第六

    その他

    -151-

  • 被措

    置児

    童等

    虐待

    事例

    の分

    析に

    関す

    る報

    平成

    28

    年3

    社会

    保障

    審議

    会児

    童部

    会社

    会的

    養護

    専門

    委員

    被措

    置児

    童等

    虐待

    事例

    の分

    析に

    関す

    るワ

    ーキ

    ング

    グル

    ープ

    -152-

  • 目次

    はじめに ・・・・・・・・・・・・・・ 1

    Ⅰ 分析方法

    ・・・・・・・・・・・・・・ 2

    Ⅱ 個別事例の分析と対応策の検討 ・・・・・・・・・・・・・・ 3

    事例

    1 児童養護施設(小規模グループケア)における身体的虐待 ・・・ 3

    事例

    2 養育里親による身体的虐待① ・・・ 7

    事例

    3 養育里親による身体的虐待② ・・・ 11

    事例

    4 児童養護施設(大舎制)におけるネグレクト ・・・ 15

    事例

    5 児童養護施設(大舎制)における性的虐待 ・

    ・・ 21

    個別事例の分析と対応策の検討 まとめ ・・・ 25

    Ⅲ 平成

    21年度から平成

    25年度までの被措置児童等虐待調査結果の分析 ・・ 33

    1 平成

    21年度から平成

    25年度までの各都道府県市の調査結果 ・・・ 33

    2 平成

    24年度及び平成

    25年度における被措置児童等虐待

    158事例への

    各都道府県市の対応について

    ・・・ 40

    Ⅳ 課題と提言 ・・・・・・・・・・・・・ 48

    おわりに ・・・・・・・・・・・・・ 53

    1

    はじめに

    「児童の権利に関する条約」第19条には、「児童が父母、法定保護者又は児童を監護する他の

    者による監護を受けている間において、あらゆる形態の身体的若しくは精神的な暴力、傷害若し

    くは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取(性的虐待を含む。)からその児

    童を保護する」ことが規定されている。また、国連総会採択決議「児童の代替的養護に関する指

    針」では、「児童はいかなる時も尊厳と敬意をもって扱われなければならず、いかなる養護環境

    においても、養護提供者、他の児童又は第三者のいずれによるかを問わず、虐待、ネグレクト及

    びあらゆる形態の搾取から効果的な保護を受けなければならない。」とされている。

    児童福祉法に基づき施設等に措置された児童等(以下「被措置児童等」という。)への虐待は

    あってはならず、国や都道府県市の職員、施設職員や里親などの社会的養護に関わる関係者すべ

    てが被措置児童等虐待の根絶に向け不断の努力を行うことが必要である。

    このため、国は、すべての関係者が子どもの最善の利益や権利擁護の視点を十分に踏まえ、被

    措置児童等虐待の発生予防から早期発見、迅速な対応、再発防止等のための取組を総合的に進め

    るよう、平成21年3月に「被措置児童等虐待対応ガイドライン」を作成し、平成21年4月より被

    措置児童等虐待に関する届出等制度を施行した。その後、被措置児童等虐待の防止について事案

    とその対応における透明性を確保し、子どもの権利擁護を徹底するため、毎年度都道府県市から

    前年度の事例について報告を受け、取りまとめの上公表しているところである。

    今般、同制度の施行から約5年が経過し、事案とその対応に関する事例が集積されてきたこと

    を踏まえ、あらためて被措置児童等虐待の防止、並びに事案発生時及び発生後の対応の適正の確

    保の徹底を図るため、施設等及び都道府県等における今後の取組の向上に資するよう、社会的養

    護専門委員会に「被措置児童等虐待事例の分析に関するワーキンググループ」(以下「WG」と

    いう。)を設置することとした。

    WGでは、個別事例につき、都道府県市から既に提出された報告を基に、今後の虐待予防や適

    切な対応の確保に資する具体的な方策等を専門的な観点から分析した。併せて、平成21年から5

    年間の被措置児童等虐待調査結果をまとめた。その上で、これらを踏まえて、今後の被措置児童

    等虐待の発生予防から早期発見、迅速かつ適切な対応、再発防止等の取組を促進する対応策を探

    ることとした。

    -153-

  • 2

    Ⅰ 分析方法

    本WGは、社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会委員から、委員長が指名した委

    員によって構成される。

    被措置児童等虐待事例の分析方法は次のとおりである。

    まず、「

    Ⅱ 個別事例の分析と対応策の検討」においては、平成24年度に起こった被措

    置児童等虐待71事例のうち、都道府県市に報告書のある事例の中から、虐待が3ヶ月以上

    に渡って発見されなかった事例として、特徴的な5事例を選び出した上で、都道府県市に資

    料提供を依頼し、提供された資料の範囲で分析を行った。

    5事例の施設等種別は、児童養護施設が3事例、里親が2事例である。

    虐待種別で見ると、児童養護施設の3事例は、身体的虐待(1事例)、ネグレクト(1事

    例)、

    性的虐待(1事例)である。里親事例の2事例は、どちらも身体的虐待である。

    生活形態別で見ると、児童養護施設の3事例は、小規模ユニット1事例、大舎制2事例で

    ある。

    第1回WG会議において、どのような基準で、何事例選ぶかが議論され、虐待が発見され

    るまでに長期間を要した事例について、なぜ発見が遅れたのか、どのような経緯で発見され

    たかという視点での分析を含めることとともに、小規模グループケアの事例、里親の事例、

    性的虐待事例を選ぶことも提案され、それらを事例選定の条件とした。

    実際の事例分析においては、なぜ発見が遅れたのかという視点だけでなく、児童養護施設

    (小規模グループケア)や児童養護施設(大舎制)などの事例の特性に応じた視点に基づく

    分析がなされた。

    次に「Ⅲ 平成

    21年度から平成

    25年度までの被措置児童等虐待調査結果の分析」におい

    ては、平成

    21年4月の児童福祉法改正により、被措置児童等虐待について都道府県市等の

    公表制度等が法定化されたことを機に、国では全国

    47都道府県、20

    指定都市及び2児童相

    談所設置市(69

    都道府県市・平成25年度末現在)を対象に、届出・通告、事実確認等があ

    った被措置児童等虐待に関する事例に係る各都道府県市の対応状況等について調査を行い、

    その分析結果に対して、さらに詳細な分析を行った。

    これらの分析結果に基づき、被措置児童等虐待の防止、並びに事案発生時及び発生後の適

    切な対応の確保と、その徹底を図るための施設等及び都道府県等における今後の取組の向上

    に資する課題の整理と提言を行った。

    なお、本報告書では、児童福祉法第

    33条の

    10に基づき、小規模住居型児童養育事業に従

    事する者、里親若しくはその同居人、乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児

    短期治療施設若しくは児童自立支援施設の長、その職員その他の従業者、指定発達支援医療

    機関の管理者その他の従業者、一時保護所を設けている児童相談所の所長、当該施設の職員

    その他の従業者又は一時保護委託を受けて児童に一時保護を加える業務に従事する者を「施

    設職員等」と総称する。

    3

    Ⅱ 個別事例の分析と対応策の検討

    ここでは、選択された5事例について、以下の3点から分析している。

    1.事例の概要

    自治体から国へ報告された内容を、虐待内容、発見の経緯、背景等の検証、対応策に

    分けて整理し、まとめた。

    2.検討の視点

    WG委員による検討の視点を記載した。

    3.対応策の検討

    WG委員による対応策の検討内容を記載した。

    その上で、個別事例の分析と対応策の検討全体を通してのまとめを行った。

    事例1

    児童養護施設(小規模グループケア)における身体的虐待

    1.事例の概要(自治体報告からのまとめ)

    (1)虐待の概要

    内容:児童養護施設内の小規模グループケア(小学生低学年から高校生までの男女7名)

    において、新任職員(加害職員)が、小学生4名に対し、生活上の注意に従わなかったとし

    て、大声で怒鳴る(心理的虐待)、

    平手で頭を叩く、髪の毛を引っ張る(身体的虐待)など

    した。このような行為が、約4ヶ月間、断続的に行われた。

    発見の経緯:児童相談所の児童福祉司が当該施設へ電話連絡した際の加害職員の対応に違

    和感を覚え、同じグループ内の担当児童の面接時に被害児童に対する虐待内容を確認した。

    続けて被害児童に面接を行い、虐待を申告したため、通告として受理した。

    事例1 イメージ図

    ※報告された内容をもとに作成

    威圧、騒ぐと暴言

    張・プレッシャー

    抱え込み

    葛藤 抱

    え込み、

    対応しづらさ 個

    人的心労

    高校生

    高校生

    中学生

    中学生

    加害職員

    (新任)

    ベテラン職員

    注意、怒鳴る

    (叩く)

    小学生

    低学年

    非行、指導無視

    ちょっかい、挑発が多い

    小学生

    小学生

    小学生

    けんか・トラブル絶えない、

    職員が怒鳴るまで止めない

    -154-

  • 4

    (2)虐待発生の要因、背景の検証

    ① 子どもの権利擁護教育が十分でない等、加害職員に対する教育が不徹底であった。

    ② 加害職員が児童に対する知識や理解、権利擁護の視点を欠いていた。

    ③ 支援困難児童が多く、単独勤務時間の多い小規模ユニットに新任である加害職員を配置

    した。

    ④ 施設内の権利擁護システムが十分に機能しなかった。

    (3)報告された被措置児童等虐待への対応

    ◆ 児童への対応

    ① 加害職員からの謝罪

    ② 児童心理司による個別ケアの実施

    ◆ 加害職員への対処

    ① 施設長による厳重注意

    ② 被害児童と分離するための配置転換

    ③ 再教育・再研修の実施

    ◆ 再発防止策

    ① 新任職員教育システムの徹底

    ・ OJTを含め新任職員教育内容の全面的な見直しを行い、OJTについては経験ある

    職員から新任職員への養育の伝承を行う。

    ・ 新任職員による支援困難児童の抱え込み防止を図る。

    ・ 新任職員研修について、権利擁護や体罰防止、組織内相談支援体制の周知徹底を図る。

    ② 子どもの権利擁護の徹底と専門性の強化

    ・ 暴力は絶対に許さないという姿勢を子どもたちに示す。

    ・ 新任職員には専門的子育てプログラムの受講を課す。

    ③ 小規模化に対応した職員の連携とフォロー体制の構築

    ・ 経験の浅い職員が単独勤務になる時間帯を最小限に留める。

    ・ 担当児童を持たないフリーの職員を小規模棟に配置し、職員が孤立しないよう、また、

    ユニットが密室化しないようにする。

    ・ 特別な支援や配慮が必要な子どもについて、全棟の職員で把握し、支援方法について

    のコンセンサスを図る。

    ④ 権利擁護システムの徹底

    ・ 子どもの言動、表情などを観察し、子どものSOSを聞き逃さない。

    ・ 日常生活での会話を大切にし、子どもの生活や精神状態を把握する。

    ・ 個別かつ定期的に子どもたちからの聞き取り調査を実施し、施設内での暴力や不満に

    ついての把握を行う。

    2.検討の視点

    (1)小規模グループケアにおける人員体制

    小規模グループケアについて一定の経験や知見を有する施設であっても、職員の配置状

    況等によっては、被措置児童等虐待が発生しうることを意識すべきではないか。

    また、新任職員が経験を積んで支援スキルを向上させることができる体制づくりが重要

    5

    ではないか。

    (2)小規模グループケアにおける子どもの構成

    小規模グループケアの目的である個別化による家庭的養護として「あたりまえの生活」

    を提供するにあたって、子どもの構成には十分な配慮が必要ではないか。

    (3)小規模グループケアにおける子どもの人数

    生活単位の小規模化において、現行では8人以下とされている人数について、子どもの

    状況に応じた対応が必要ではないか。

    3.対応策の検討

    (1)小規模化に対応した職員の連携とフォロー体制の構築への対応

    本事例で提出された資料にある再発防止策は、被措置児童等虐待の発生を機に、虐待の

    発生要因や背景の分析と再発防止に取り組まれたものであるが、発生予防においても、他

    の施設における取り組みに資するものと考えられる。それらを含めて、以下の点が重要と

    考えられる。

    ① 経験の浅い職員が単独勤務になる時間帯を最小限に留めるよう、余裕のある人員配置を

    行うこと。

    ② 担当児童を持たないフリーの職員を小規模棟に配置するなど、職員が孤立しないよう、

    また、ユニットが密室化しないようにすること。

    ③ 特別な支援や配慮が必要な子どもについて、全棟の職員で把握し、支援方法についての

    コンセンサスを図ること。

    ④ より専門的な観点から状況を理解でき、また、第三者であることで職員間の関係に関わ

    らず助言できることから、外部の専門家をスーパーバイザーとして活用すること。

    ⑤ 特に、新任職員には早期に社会的養護の基本的なスキルを学べる教育システムの構築を

    行うこと。

    例えば、

    ・ OJTを含め新任職員教育内容の全面的な見直しを行い、経験ある職員から新任職員

    への養育の伝承を行うこと。

    ・ 新任職員による支援困難児童の抱え込みを防止するため、組織内相談支援体制の周知

    徹底を図ること。

    ・ 権利擁護や体罰防止についての研修を実施すること。

    ・ 専門的子育てプログラムの受講を課すこと。

    等が考えられる。

    (2)小規模グループケアにおける子どもの構成の検討

    小規模グループで生活を共にすることは、子ども間の相互作用を活かし、子どもの自主

    性を尊重することによって、子どもが家庭や我が家のイメージを持ち、将来家庭を持った

    ときのイメージができることを期待するものである。しかしながら、本事例では子どもの

    年齢や課題特性により、相

    互の影響がマイナスに作用し、不安定な状況が生み出される中、

    新任職員は、支援を受ける機会が少ないまま、対応することになっていた。

    -155-

  • 6

    検証においては、加害職員と被害児童との関係やその行為だけではなく、生活を共にす

    る全ての子どもたちの状況や相互の関係なども含めて、子ども達の生活全体を把握した中

    で検討することが必要である。

    子どもの年齢や性別、課題などが良い刺激となる構成になるよう、少なくともトラウマ

    を抱える子どもにとって刺激となることのない構成に配慮することが望ましい。例えば、

    音などの刺激に敏感な子どもと、落ち着きなく物音を立てがちな子どもが生活すれば、互

    いの行動が不満の原因となってトラブルの引き金になるなどが考えられる。好ましい相互

    作用を生み出すためにはどのような子どもの構成とするかなど、小規模グループケアにお

    ける養育実践の事例検討を通し、児童相談所(措置機関)も含めて、研究を積み重ねる必

    要がある。

    (3)小規模グループケアにおける適正な子どもの人数についての検討

    生活単位の小規模化において、現行では8人以下とされているが、これに対してファミ

    リーホームでは6人までとされている。6人と8人とでは、コミュニケーションパターン

    の差は人数の差以上に大きく、そこに働く力動も複雑化する。当該事例では、当時生活し

    ていた8人の子どもたちの多くが、それぞれに様々な課題を持っていると同時に、相互に

    影響し合い、時にはサブグループを作って、対立や牽制し合うといった状況が生じており、

    新任職員にとって過度な負担となっていた可能性がある。このような状況下では、8人と

    いう人数は負担が大きく、養成課程において支援法について学んだ職員であっても、混乱

    した状況等にどう対処してよいかわからず、表

    面的かつ一時的に効果があるかに見える「

    による抑止」が行われるリスクが高まるのではないか。

    そのため、児童相談所からの入所依頼があった際に、小規模グループ内の構成や状況を

    考慮してさらなる入所が難しいと判断した場合には、状況が改善した後に子どもの状態に

    合わせて新たな子どもを受け入れるといったマネジメントを行うことも重要である。

    加えて、小規模グループケアの適正な人数についても、養育事例の検討や被措置児童等

    虐待の検証などを通して研究を重ね、より家庭的な養育の実現に向けて取り組むことが必

    要ではないか。

    7

    事例2

    養育里親による身体的虐待①

    1.事例の概要(自治体報告からのまとめ)

    (1)虐待の概要

    内容:加害里親は、何度も注意したにもかかわらず、被措置児童が同じ失敗をしたことを

    厳しく口頭で叱責した。加害里親は、被害児童から謝罪の言葉があっても反省の様子が見え

    ないと感じ、被害児童を家から閉め出したところ、被害児童は団地の屋上で数日生活した(ネ

    グレクト※)。

    ただ、被害児童は事前に衣類・寝具・金銭等を用意し、その間友人と遊ぶな

    ど、家出の要素も含まれる。その後、加害里親が被害児童を家の中に入れて再び叱責したが、

    加害里親には被害児童の謝罪の言葉が本心によるものとは感じられず、罰として平手で背中

    などを複数回叩いた(身体的虐待)。

    ※ 本事例ではネグレクトとするが、寒暖による身体への影響、また、生活の場から外へ閉め出すという

    積極的加害行為を考慮し、身体的虐待とする場合もあり得る。

    発見の経緯:児童相談所の担当児童福祉司との面接で、被害児童が加害里親による身体的

    虐待を話し、加害里親宅に戻りたくない、伯母も加害里親の暴力をあおっていたとの訴えが

    あり、痣も確認されたため、通告として受理後、速やかに被害児童を一時保護した。

    事例2 イメージ図 ※報告された内容をもとに作成

    (2)虐待発生の要因、背景の検証

    ・ 被害児童は実母の養育困難により施設入所し、実母が行方不明となってからは長期休み

    等に伯母宅に外泊し、伯母宅の近隣に住む女性とも交流を持つようになり、当該女性が里

    親として受託した。

    ・ 加害里親は里親認定登録後に離婚したが、被害児童が加害里親との生活を希望したため、

    委託を継続した。

    ・ 伯母は、加害里親と旧知の関係であり、施設入所中から対応困難な行動が多くみられて

    いた児童の養育に加害里親が困っていたため、加害里親と伯母が助け合いながら加害里親

    里親登録後に離婚

    母親(行方不明)

    被害児童

    (中学生)

    学校は休まず

    夜間コンビニ勤務

    旧知の仲

    体罰で協働

    母方伯母

    -156-

  • 8

    への委託を継続した。

    ・ 児童相談所は、家庭訪問や児童の来所面接等を毎年複数回行い、生活状況を確認すると

    ともに、電話等により頻回に連絡を取り、支援や指導を継続していた。

    ・ 被害児童への聞き取りにより、伯母が虐待の現場におり、体罰を指示したこと、以前か

    ら加害里親、伯母からの暴力や締め出しが継続していたことが判明した。

    (3)報告された被措置児童等虐待への対応

    ◆ 児童への対応

    ・ 被害児童からの訴えと痣の確認により速やかに被害児童の一時保護を実施。

    ◆ 加害里親への対処

    ・ 加害里親も体罰を認めたことから、被害児童は児童養護施設へ措置変更。

    ・ 加害里親について里親認定登録取消手続き。

    ◆ 再発防止策

    養育状況の把握に関しては、以下のような従来からの対策を徹底する。

    ・ 里親研修において、私的養育ではなく公的養育であることを必ず説明。

    ・ 里親研修において、「

    里親が行う養育に関する最低基準」を示し、その第

    6条「虐待等

    の禁止」も説明。

    ・ 里親認定にあたっての家庭調査の際、里父母の夫婦関係、勤務の状況、申請動機等の各

    調査項目について、詳細に聞き取ることを徹底する。その中で暴力を容認する価値観が認

    められたときには、暴力容認の価値観は許されないこと、公的養育の中で暴力が行われれ

    ば委託解除がありうることを、説明。

    ・ 自立支援計画の策定等のほか、委託後の里親支援機関による家庭訪問等により、里親の

    養育状況を把握し、支援につなげる。

    ・ 養育状況に変化が生じた際は、里父母に対し速やかな届出を促すとともに、状況変化に

    よる養育環境の変化を把握し、委託継続の是非について検討。

    ・ 第三者の情報源として委託児童の通う学校等との連携を重視。

    2.検討の視点

    (1)里親家庭における養育について

    委託機関としての責任を有する児童相談所や支援機関は、里親の基本的な情報に加え、

    養育観についても事前に把握し、そ

    の上で、どのような考え方に基づいて子どもを養育し、

    子どもを中心にどう支援するべきか認識を共有する必要があるのではないか。里親のニー

    ズに沿って支援をしているものの、里親が行う養育そのものは里親に一任される傾向にあ

    るのではないか。

    (2)児童相談所による里親家庭の養育状況の把握

    虐待が長期にわたって継続された要因は、児童相談所が、里親家庭の養育状況を十分に

    把握していなかったためではないか。

    (3)血縁者ではないが、子どもがこれまでに信頼関係を築いている大人による里親養育につ

    いて

    子どもの最善の利益の観点から、子どもがこれまでに信頼関係を築いている大人を里親

    として認定するなど柔軟な対応が必要ではないか。

    9

    3.対応策の検討

    (1)里親家庭における養育への対応

    本事例において、発生要因の一つは、体罰を肯定する養育観によると考えられる。家庭

    養護においては、養育者の養育観が大きな影響を持つとの認識に基づき、里親認定前の段

    階から研修等において、里親の意義に鑑み、里親を希望するものとして自らの養育観を見

    直し、子どもの最善の利益の観点から必要に応じて修正する姿勢と、それを促進する自己

    理解の場を確保することが大切である。里親養育が公的養育である社会的養護と位置づけ

    られていることはどういうことか、児童相談所と里親が改めて認識を共有し、具体化する

    必要があるのではないか。

    児童相談所や支援機関等は、養育を里親だけに任せるのではなく、支援者や地域の資源

    を含めた「チーム養育」を概念化・内実化・具体化することにより、里親の孤立を防ぎ、

    養育観の偏りを修正する機会を提供することで開かれた養育につながる。開かれた養育を

    とおして、さまざまな支援者や同じ立場の人々等とも出会える機会を保障することの重要

    性を、児童相談所や支援機関も十分に認識して対応することが必要である。

    (2)児童相談所による里親家庭の養育状況の把握の徹底

    本事例において、伯母と加害里親が旧知の仲ということで、チーム養育の可能性がある

    反面、同様の養育観を持つ相手の暴力に加担するという諸刃の剣になっていたと言える。

    里親と子どもの基本的人間関係はどうだったのか。伯母と旧知の仲であることと、子ども

    との関係がよいことが同じとは限らない。児童相談所や支援機関等は、訪問時などの機会

    を活かして、児童との対話を積極的に行い、子どもの意向や状態の把握に努めることが重

    要である。

    里親家庭は、普段から児童相談所や支援機関とつながっていないと、子どもに課題が生

    じた場合に閉鎖的になり、孤立しやすい。児童相談所が委託後の里親家庭とどのようなつ

    ながりをもち、支援を提供すべきか、方針を示す必要がある。

    里親が単親で夜間長時間勤務し、児童のみで過ごしていた時間が長いなど、里親として

    子どもを適切に養育することができる状況であったのか、単親の場合にどういった対応を

    すべきかを検討する必要があったのではないか。

    里親委託においては、里親の養育観だけでなく、その家族との関係性が子どもに大きな

    影響を与える。また、里親家庭に、子どもがメンバーとして迎えられたとき、里親の実子

    等や家族メンバー相互の関係などに生じる変化も十分把握し、これらが子どもに与える影

    響を把握することが里親支援において重要である。

    (3)血縁者ではないが、子どもがこれまでに信頼関係を築いている大人による里親養育につ

    いて

    子どもの成長には、家庭での安心・安全感を基礎として、社会での安心・安全感を育成

    していくことが重要である。子どもにとって、施設入所や里親委託は保護者からの分離を

    経験することであるため、早期に安心・安全感が持てるよう十分な配慮が必要である。

    家庭内で愛着の対象に恵まれなかった子どもが、家庭外でそうした対象を見い出してい

    る場合は、そのつながりが子どもにとって重要となる。こうした貴重なつながりが継続で

    きるように、里親委託率が相対的に高い国々では、委託以前から児童とも交流のあった者

    を里親として認定するなど、近隣の方への委託を「キンシップ・ケア(親族里親)」

    の範疇

    -157-

  • 10

    で捉え、非親族である里親への委託より優先順位を高く設定している。

    本事例で、子どもと里親との関係を考慮して、里親夫婦の離婚後も措置を継続したこと

    も大切なことである。不適切事例の発生をもって、こういった柔軟な対応を抑制するべき

    ではないが、配慮すべき事項を十分に検討した上で、子どもが安心・安全感を持てるよう

    な適切な運用を拡げることが必要ではないか。

    現在、里親登録は、夫婦単位ではなく個人を単位として登録するものとなっている。た

    だし、里親が離婚に至る例の場合には、児童相談所は、措置を継続する前提として、里親

    が離婚に至ることになった経緯などについて、里親夫婦の双方から十分な聞き取りを行う

    だけでなく、子どもがそれをどのように感じているかなどを聞き取り、子どもの養育にど

    う影響をするかなどについて十分にアセスメントを行った上で、里親の離婚が子どもに与

    える影響や離婚後の生活がどのようなものになるかなどについて里親と話し合うことが不

    可欠ではないか。

    11

    事例3

    養育里親による身体的虐待②

    1.事例の概要(自治体報告からのまとめ)

    (1)虐待の概要

    内容:4人きょうだいのうちの3人(小学生長男:A、小学生長女:B、小学生次男:C)を委

    託された加害里父は、長男が一日に何度も泣きわめき、物を蹴飛ばすなどの行動に対し、し

    つけとして、おもちゃの剣で叩いた。長男のパニックは委託当初(虐待発覚の5年前)から

    あり、加害里父の行為も委託当初から継続していた(身体的虐待)。

    長女、次男は叩かれる

    ことは少ないが、長期間にわたって長男が激しく叩かれるのを目撃してきた(心理的虐待)。

    また、3人とも家から閉め出されることがあった。

    発見の経緯:児童相談所における面接において、長女が「長男が里父に叩かれる」との話

    があり、通告として受理。一時保護を行い、事実確認を行った。

    事例3 イメージ図 ※報告された内容をもとに作成

    (2)虐待発生の要因、背景の検証

    ・ 児童から事情を聞いた母方祖母(以下「祖母」という。)

    より虐待を疑わせる情報が寄

    せられ、児童相談所が里親宅を訪問して調査し、小学校へも電話による調査を行ったが、

    虐待を発見できなかった。児童へのヒアリングは行っていなかった。

    ・ 長男は、児童相談所での面接の際にも虐待について語ることがなく、長女の訴えによっ

    父親 母親

    里母 60

    代前半

    保育室等自営

    委託時

    50代後半

    里父 60

    代後半

    社会的信頼が高い職業

    委託時

    60代前半

    長男(A)

    小学生

    主に体罰を受ける

    委託時 幼児

    里親宅の比較的近くに居住

    子どもたちの外泊を定期的に実施

    通告の

    2年前に里親の養育に心配があると表明

    子どもたちの引取について、母親の希望を代弁

    長女(B)

    小学生 体罰は少ない

    長男への体罰を見続ける

    経過判定の時に児相に訴え

    委託時 幼児

    三男(D)

    幼児

    父母と生活

    母方祖母

    次男(C)

    小学生 体罰は少ない

    長男への体罰を見続ける

    委託時 乳児

    他県在住

    ABCの家庭引取希望

    -158-

  • 12

    て虐待が発覚した。その後初めて、長男も口を開くに至った。

    ・ 加害里親は、養育里親研修を受講していた。

    (3)報告された被措置児童等虐待への対応

    ◆ 児童への対応

    ・ 発覚後、児童3人を一時保護し、事実を確認するとともに、心理カウンセリングを実施

    した。

    ◆ 加害里親への対処

    ・ 里親より登録辞退の意向が示された。

    ◆ 再発防止策

    ・ 委託中に里親からの具体的な養育方法の窮状の訴えはなかったものの、3人の幼い子ど

    もの養育の困難性に鑑み、里親からの委託状況の把握や委託児童からの聞き取りを手厚く

    行う必要があるため、児童相談所として一層里親家庭の状況把握に努める。

    2.検討の視点

    (1)里親家庭にきょうだいなど複数の子どもを一度に委託する場合の配慮

    きょうだいを分離せずに委託することの必要性とともに、一時に複数の子どもを受け入

    れる里親家庭の負担について、十分に考慮した対応が必要ではないか。

    (2)里親の育成及び里親の自己啓発について

    里親を認定する児童相談所においては、里親認定前の研修で、被措置児童等虐待が発生

    する構造や具体的にどのような行為等が虐待に該当するのかを十分に伝えることが必要

    ではないか。また、里親も自ら子どもの権利擁護に関する意識を高めていくことが重要で

    はないか。

    (3)子どもの状態把握の重要性

    里親認定や虐待事実の確認等において、里親の職業や地域での社会的な活動等に関する

    情報以上に、実際に子どもにどのように関わっているか、どのような状況が生じているか

    を把握することが重要ではないか。

    3.対応策の検討

    (1)里親家庭にきょうだいなど複数の子どもを一度に委託する場合の配慮

    比較的高齢で新規に登録された里親に対して、複数の幼児を委託した場合に、里親家庭

    に生じる負担の大きさを考慮すべきであり、特に委託初期において、子どもの状況、里親

    家庭に生じている変化、里親が行っている養育の実際等を確認するために、定期的に里親

    家庭を訪問するなどの支援が不可欠である。

    養育に困難を感じ、試行錯誤を繰り返すなかで、表面的には効果があるように見える方

    法がいったん選択されると、それが不適切であっても日常的に繰り返されるようになるお

    それがある。このような状�