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1
4.日本の景気循環と構造変化
経済統計分析
(2014年度春学期)
2
日本の景気循環と構造変化
(統計分析手法)
指数(DI, CI) 成長率、要因分解
平均、分散、標準偏差、相関係数
仮説検定(平均値の検定、平均差の検定)
(経済理論等との関連)
景気循環の類型と要因
在庫循環、設備投資循環
成長率の変動: 循環要因と構造要因
潜在成長率
2
0
50
100
85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13
一致指数
景気回復
景気後退
景気回復
景気後退
0
50
100
85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13
先行指数
景気回復
景気後退
0
50
100
85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13
遅行指数
景気回復
景気後退
3
景気動向指数(DI)の推移
(注)景気に感応的な指標のうち、拡大している指標の割合を示す (データ)内閣府「景気動向指数」
4
景気動向指数の採用系列
先行指数
最終需要財在庫率指数鉱工業生産財在庫率指数新規求人数(学卒除く)実質機械受注新設住宅着工床面積消費者態度指数
日経商品指数(42種統合)長短金利差東証株価指数投資環境指数(製造業)中小企業売上見通しDI
一致指数
生産指数(鉱工業)鉱工業生産財出荷指数大口電力使用量耐久消費財出荷指数所定外労働時間指数投資財出荷指数
商業販売額(小売業)商業販売額(卸売業)営業利益(全産業)中小企業出荷指数(製造業)有効求人倍率(学卒除く)
遅行指数
第3次産業活動指数(対事業所サービス業)常用雇用指数実質法人企業設備投資
家計消費支出法人税収入完全失業率
3
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
70
80
90
100
110
120
130
140
150
CI(2010年=100)
GDP成長率(右目盛)
(前年同期比、%)
0
50
100
85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13
DI
5
景気動向指数(DI, CI)、GDP成長率の推移
(データ)内閣府「景気動向指数」「国民経済計算」
-80
-60
-40
-20
0
20
40
60
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
不況期
全産業
製造業
非製造業
「良い」超
「悪い」超
(%ポイント)
6
日銀短観・業況判断DIの推移
(データ)日本銀行「短期経済観測調査」
4
7
景気循環の種類
(短期)
キチン循環(3~4年)・・・在庫循環
(中期)
ジュグラー循環(約10年)・・・設備投資循環
クズネッツ循環(約20年)・・・建築投資循環
(長期)
コンドラチェフ循環(約50年)・・・技術革新
-10
0
10
20
30
40
50
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
不況期
全産業
製造業
非製造業
「過剰」超
「不足」超
(%ポイント)
8
在庫水準判断DIの推移
(データ)日本銀行「短期経済観測調査」
5
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
-10% -5% 0% 5% 10%出
荷(前
年同
期比
)
在庫(前年同期比)
13Q1
12Q2
14Q1
9
在庫循環図
(データ)経済産業省「鉱工業生産・出荷・在庫指数」
45°
回復局面
在庫積増し
在庫積上り
在庫調整
在庫
出荷
鉱工業
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
不況期
全産業
製造業
非製造業
「過剰」超
「不足」超
(%ポイント)
10
生産設備判断DIの推移
(データ)日本銀行「短期経済観測調査」
6
11
設備投資循環(資本ストック循環)図
(データ)内閣府「民間企業資本ストック」
45°
過剰設備の発生~資本ストック調整
資本ストック
設備投資
回復~設備増強
全産業
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
0.5% 1.5%設
備投
資(前
年同
期比
)
資本ストック(前年同期比)
14Q1
12Q1
13Q1
-50
-40
-30
-20
-10
0
10
20
30
40
50
80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
不況期
全産業
製造業
非製造業
「過剰」超
「不足」超
(%ポイント)
12
(参考)雇用判断DIの推移
(データ)日本銀行「短期経済観測調査」
7
需要項目別成長率の分散と相関①
13
民間需要 公的需要
(データ)内閣府「国民経済計算」
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
20%
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
GDP
民間消費
住宅投資
設備投資
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
20%
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
GDP
政府消費
政府投資
GDP 民間消費 住宅投資 設備投資 在庫投資平均 2.07% 2.02% -0.44% 2.66% -分散 0.00064 0.00028 0.00598 0.00518 -標準偏差 2.52% 1.67% 7.73% 7.20% -GDP成長率との相関 1.00 0.83 0.49 0.82 -
政府消費 政府投資 政府在庫 輸出 輸入平均 2.73% -0.24% - 4.76% 4.15%分散 0.00022 0.00453 - 0.00665 0.00483標準偏差 1.5% 6.7% - 8.2% 6.9%GDP成長率との相関 0.32 0.03 - 0.63 0.64
需要項目別成長率の分散と相関②
14
海外需要
需要項目別成長率の分散と相関
(データ)内閣府「国民経済計算」
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
20%
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
GDP
輸出
輸入
8
-8.0%
-6.0%
-4.0%
-2.0%
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
10.0%
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
外需寄与
公需寄与
民需寄与
GDP成長率
15
GDP成長率の要因分解(再掲)
(データ)内閣府「国民経済計算」
-8.0%
-6.0%
-4.0%
-2.0%
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
在庫投資
設備投資
住宅投資
民間消費
GDP成長率
民需寄与
16
民需寄与の内訳(再掲)
(データ)内閣府「国民経済計算」
9
GDP成長率 民需寄与 公需寄与 外需寄与
平均 2.07% 1.47% 0.44% 0.09%
分散 0.000636 0.000488 0.000037 0.000059標準偏差 2.52% 2.21% 0.61% 0.77%成長率との相関 1.00 0.95 0.12 0.32
民需寄与民間消費 住宅投資 設備投資 在庫投資
平均 1.15% -0.01% 0.35% -0.02%
分散 0.000089 0.000013 0.000109 0.000022標準偏差 0.94% 0.37% 1.04% 0.47%成長率との相関 0.84 0.46 0.82 0.60
公需寄与 外需寄与政府消費 政府投資 政府在庫 輸出 輸入
平均 0.44% -0.02% 0.02% 0.45% -0.36%
分散 0.000005 0.000019 0.000003 0.000121 0.000044標準偏差 0.23% 0.43% 0.17% 1.10% 0.67%成長率との相関 0.27 0.05 -0.04 0.58 -0.59
17
需要項目別寄与度の分散および景気との相関
(データ)内閣府「国民経済計算」
18
成長率と要因分解から見た日本の景気循環の特徴
本格的な景気の回復には 民需の回復 が必要
消費は景気の変動に対して 比較的安定した 動き(cf. 恒常所得仮説) =景気の変動を抑えるアンカー的役割(ただし98年や08~09年にはマイナスの寄与(cf. 予備的貯蓄仮説))
設備投資は、景気と 同方向に激しく変動 (cf. 加速度原理)=日本の景気変動の 最大の犯人
在庫投資は、GDPに占めるシェアは極小だが、その変動は時に成長率に無視できない影響を与える
公需は、90年代は比較的景気と 反対方向への 動き(cf. ケインズ政策)、00年代は若干のマイナス寄与(cf. 財政再建)
外需は、輸入が景気と 同方向に 動く(※なぜ?)⇒景気回復のきっかけとはなり得るが 持続的回復 の要因とはなりにくい
10
-6.0%
-4.0%
-2.0%
0.0%
2.0%
4.0%
6.0%
8.0%
81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13
81-90年の
成長率の平均
4.64%
91-02年の
成長率の平均
1.00%
03-07年の
成長率の平均
1.85%
19
日本経済の構造変化?
(データ)内閣府「国民経済計算」
バブル崩壊後、日本経済の成長力は(構造的に)
低下したのか?構造改革によって、日本経済の成長力は上昇したのか?
20
構造変化の検定
母集団(Population) 標本(Sampe)
バブル崩壊前の成長力〔潜在成長率〕 m 81-90
バブル崩壊後の成長力〔潜在成長率〕 m 91-02
実際に観察された成長率
81年 4.18%82年 3.38%
::
91年 3.32%92年 0.82%
::
81-90年平均4.64%
91-02年平均1.00%
::
::
仮説H0: m 81-90 = m 91-02 ?
or H1: m 81-90 ¹ m 91-02 ?
統計学的検定
(平均差の検定)
11
構造改革の効果の検定
[91-02年] vs [03-07年] t-検定: 等分散を仮定した2標本による検定
[91-02] [03-07]平均 1.00% 1.85%分散 0.000208 0.000018観測数 12 5プールされた分散 0.000158仮説平均との差異 0自由度 15t -1.263P(T<=t) 片側 0.113t 境界値 片側 1.753P(T<=t) 両側 0.226t 境界値 両側 2.131
バブル崩壊後の構造変化の検定
[81-90年] vs [91-02年] t-検定: 等分散を仮定した2標本による検定
[81-90] [91-02]平均 4.64% 1.00%分散 0.000205 0.000208観測数 10 12プールされた分散 0.000207仮説平均との差異 0自由度 20t 5.913P(T<=t) 片側 0.000t 境界値 片側 1.725P(T<=t) 両側 0.000t 境界値 両側 2.086
21
構造変化の検定結果
有意水準1%でも棄却=構造変化あり
有意水準10%でも棄却されない=効果があったかどうかは不明
22
潜在成長率の仮説検定
政府文書における潜在成長率の想定
「日本再興戦略(アベノミクス成長戦略)」(2013年6月) 「今後10 年間の平均で名目GDP 成長率3%程度、実質GDP 成
長率2%程度の成長を実現することを目指す」
「新成長戦略」(2010年6月) 2020 年度までの年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成
長を目指す
「経済財政改革の基本方針2008」 「(経済成長)戦略の実行によって、今後10年間程度の間、人口
減少下にあっても、実質2%以上の経済成長が視野に入る」
現在の日本経済は、これらの成長率を実現するだけの実力があるのか?・・・仮説検定
12
仮説値 m 0 t値 自由度 n -1 P値1.5% -1.3032 22 0.20602.0% -2.4895 22 0.02082.5% -3.6758 22 0.0013
23
潜在成長率の仮説検定結果
バブル崩壊後(91-07年)の潜在成長率の検定
÷øö
çèæ=
-=
-
標準誤差
仮説値標本平均
nsxt
x2
0m
5%水準で棄却
1%水準でも棄却
現在の日本の成長力が2%あるとの仮説は棄却
⇒2%以上の潜在成長率を確実に実現するためには、何らかの成長力強化が必要
[91-12年]標本数 n 23成長率の平均 0.95%標準誤差 0.42%分散 0.000409標準偏差 s x 2.00%
xnsx
2
2xs
24
日本経済の構造変化(まとめ)
バブル崩壊後、日本経済の成長力を低下させる構造変化が発生
※ 要因は何か?
バブルの後遺症、不良債権問題?
少子高齢化? 環境問題による制約?
キャッチアップの終焉?(日本型経済システムの時代への不適合?)
小泉政権以後の「構造改革」が日本経済の成長力を回復させたとは、はっきりとは言えない
現在の日本の(潜在)成長力が2%あるとの仮説は棄却される ⇒ 2%以上の潜在成長率を確実に実現するためには何らかの成長力強化が必要※ 対策は?(規制改革? 成長分野支援? 少子化対策? TPP?)