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5 章「特 性 関 数 の 導 出 - その 2に引き いて, Brown 2 して される める する. ,そ ため 3 うち,2 について したが, 3 ある Fredholm アプローチについて する. 5.1 Fredholm アプローチ める第 3 Fredholm Fredholm プローチ にする. 1 扱った えよう. f (t)= λ 1 0 K (s, t)f (s) ds (1) ここ ,核 K (s, t) [0, 1] × [0, 1] された ,対 ある する. が, f (t) つよう λ (= 0) K あり,対 する f (t) る. お, λ に対 する 1 λ 重複度 れる( しく Courant-Hilbert (1953) および ). K (s, t) が対 ある. き,K 退化核 ある いい, にある き,K 非退化核 ある いう. がす K 正値定符号 ある いい,す 負値定符号 ある いう.また, いて K ほぼ定符号 ある いう.退 に,ほぼ ある. ,ほぼ に対して よう ある. 定理 5.1 (Mercer の定理 - その 2) [0, 1] × [0, 1] された対 ,ほぼ K (s, t) ように される. K (s, t)= n=1 1 λ n f n (s) f n (t) (2) ここ λ n (1) f n (t) λ n に対 する あり, λ n だけ されている. s, t して,一 する.また, K (2) (s, t)= 1 0 K (s, u) K (u, t) du = n=1 1 λ 2 n f n (s) f n (t) (3) ち,こ する. 4.1 (Mercer -そ 1) した核 をゆるめた ある.以 扱う ,核 ずし ある ,こ える 割を たす. R = 1 0 1 0 K N (s, t) dW (s)dW (t) 1 0 1 0 K D (s, t) dW (s)dW (t) を扱う る.ここ K D K N 退 ある.R ように変 して える. P (R x)= P 1 0 1 0 [xK D (s, t) K N (s, t)] dW (s)dW (t) 0 1

5 章「特性関数の導出-その20130021/ecmr/chap5-2013.pdf第5 章「特性関数の導出-その2」 前章に引き続いて,本章ではBrown 運動の2 次汎関数として表現される統計量の分布の特

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  • 第 5 章「特 性 関 数 の 導 出 - その 2」

    前章に引き続いて,本章では Brown 運動の 2 次汎関数として表現される統計量の分布の特性関数を求める方法を議論する.前章では,そのための代表的な 3 つの方法のうち,2 つの方法について説明したが,本章では 3 番目の方法である Fredholm アプローチについて議論する.

    5.1 Fredholm アプローチ特性関数を求める第 3 の方法は,Fredholm 型積分方程式の理論を使うので,Fredholm ア

    プローチと呼ぶことにする.前章 1 節で扱った次の積分方程式を再度考えよう.

    f(t) = λ∫ 10K(s, t)f(s) ds (1)

    ここで,核関数 K(s, t) は,[0, 1]× [0, 1]上で定義された関数で,対称,連続であると仮定する.この積分方程式が,自明でない連続解 f(t) をもつような λ ( �= 0) が K の固有値であり,対応する f(t) が固有関数となる.なお,固有値 λ に対応する 1 次独立な固有関数の最大個数は λの重複度と呼ばれる(詳しくは Courant-Hilbert (1953) および後述参照).核関数 K(s, t) が対称ならば,固有値はすべて実数である.固有値の数が有限個のとき,K

    は退化核であるといい,無限にあるとき,K は非退化核であるという.固有値がすべて正ならば,K は正値定符号であるといい,すべて負ならば,負値定符号であるという.また,有限個を除いて同符号ならば,K は,ほぼ定符号であるという.退化核は,常に,ほぼ定符号である.対称,連続,ほぼ定符号の核関数に対しては,次のような固有値展開が可能である.

    定理 5.1 (Mercer の定理 - その 2)  [0, 1]× [0, 1] 上で定義された対称,連続,ほぼ定符号の関数 K(s, t) は,次のように展開される.

    K(s, t) =∞∑

    n=1

    1

    λnfn(s) fn(t) (2)

    ここで,λn は式 (1) の積分方程式の固有値,fn(t) は λn に対応する正規直交固有関数であり,各 λn は重複度の分だけ繰り返されている.和は,s, t に関して,一様に絶対収束する.また,次の展開

    K(2)(s, t) =∫ 10K(s, u)K(u, t) du =

    ∞∑n=1

    1

    λ2nfn(s) fn(t) (3)

    も成り立ち,この和も一様に絶対収束する.

    この定理は,前章の定理 4.1 (Mercer の定理 - その 1) で仮定した核関数の正値定符号条件をゆるめたものである.以下で扱う統計量の中には,核関数が必ずしも定符号でないものがあるので,この条件は,分布を考える上で重要な役割を果たす.例えば,比の形の統計量

    R =

    ∫ 10

    ∫ 10 KN(s, t) dW (s)dW (t)∫ 1

    0

    ∫ 10 KD(s, t) dW (s)dW (t)

    の分布を扱う場合に必要となる.ここで,KD は正値定符号,KN は退化核である.R の分布は,次のように変形して考える.

    P (R ≤ x) = P(∫ 1

    0

    ∫ 10

    [xKD(s, t) −KN(s, t)] dW (s)dW (t) ≥ 0)

    1

  • このとき,核関数 K = xKD −KN は,ほぼ定符号となる.さて,核関数 K(s, t) を,対称,連続,ほぼ定符号であるとして,次の統計量を考えよう.

    Q =∫ 10

    ∫ 10K(s, t) dW (s) dW (t) (4)

    この形の統計量は,Bm に関する Riemann-Stieltjes 重積分として,第 2 章以降,何度か出てきており,前章 1 節でも扱ったものである.ただし,今までは,核関数の定符号性を仮定していたが,以下では,必ずしも仮定しない.この統計量は,あとで定理 5.2 で述べるように,ある条件をみたせば,通常の 2 次形式統計量の極限となっていることがわかる.統計量 Q は,定理 5.1 により,次のように変換することができる.

    Q =∫ 10

    ∫ 10

    ( ∞∑n=1

    1

    λnfn(s) fn(t)

    )dW (s) dW (t)

    =∞∑

    n=1

    1

    λn

    (∫ 10fn(t) dW (t)

    )2 D=

    ∞∑n=1

    1

    λnZ2n, {Zn} ∼ NID(0, 1) (5)

    この関係が示唆することは,連続バージョンの 2 次形式統計量の分布は,積分方程式の固有値をウェイトとする χ2(1) 確率変数の無限個の加重和の分布に等しいということである.この点も,通常の 2 次形式統計量の場合の拡張となっている.このような統計量 Q は,ある条件をみたせば,離散的な 2 次形式統計量の極限となる.実

    際,次のことが成り立つ(Nabeya-Tanaka (1988)).

    定理 5.2 次の 2 次形式統計量を考える.

    QT =1

    Tz′BT z =

    1

    T

    T∑j=1

    T∑k=1

    BT (j, k) zj zk, {zj} ∼ i.i.d.(0, 1) (6)

    ここで,BT = ((BT (j, k))) は対称行列であり,次のような一様極限の関数 K(s, t) が存在する.

    limT→∞

    max1≤j,k≤T

    ∣∣∣∣∣BT (j, k) −K(j

    T,k

    T

    )∣∣∣∣∣ = 0 (7)関数 K(s, t) は,[0, 1]× [0, 1] 上で定義された対称,連続,ほぼ定符号となる関数である.このとき,次の分布収束が成り立つ.

    QT ⇒ Q =∫ 10

    ∫ 10K(s, t) dW (s) dW (t) (8)

    定理が成り立つためには,条件 (7) は本質的であり,2 次形式を構成する行列 BT が密であることが必要である.最も簡単な例は,BT (j, k) = 1 の場合で,このとき,K(s, t) = 1 となる関数が存在して,Q =

    ∫ 10

    ∫ 10 dW (s)dW (t) = W

    2(1) となる.定理 5.2 の別の応用例として,{yj} がランダム・ウォークyj = yj−1 + εj, y0 = 0, {εj} ∼ i.i.d.(0, σ2)

    に従う場合の統計量 Q1T =∑T

    j=1 y2j/T

    2 の分布収束を考えよう.第 3 章で議論した FCLT とCMT により,明らかに,

    Q1T ⇒ σ2∫ 10W 2(t) dt (9)

    2

  • が成り立つが,ここでは定理 5.2 を使って分布収束を求めよう.そのために,

    Q1T =1

    T 2y′y =

    1

    T 2ε′C ′Cε =

    1

    T 2

    T∑j=1

    T∑k=1

    (T + 1 − max(j, k)) εj εk

    =σ2

    T

    T∑j=1

    T∑k=1

    (1 +

    1

    T− max

    (j

    T,k

    T

    ))zj zk =

    σ2

    T

    T∑j=1

    T∑k=1

    B1T (j, k) zj zk

    と変形する.ここで,C は T × T のランダム・ウォーク生成行列(第 3 章 2 節参照)で,その (j, k) 要素 C(j, k) は,j ≥ k のとき 1,j < k のとき 0 となる下三角行列である.また,{zj} = {εj/σ} ∼ i.i.d.(0, 1),B1T (j, k) = 1 + 1/T −max(j/T, k/T ) である.このとき,B1T の一様極限として,関数 K1(s, t) = 1−max(s, t) が存在して,条件 (7) と同様の関係が,B1T とK1 の間に成り立つ.そして,行列 C ′C が正値定符号であることから,K1 も定符号となる.このことから,

    Q1T =1

    T 2

    T∑j=1

    y2j ⇒ σ2∫ 10

    ∫ 10

    (1 − max(s, t)) dW (s) dW (t) (10)

    を得る.もちろん,式 (9) と (10) から,∫ 10W 2(t) dt

    D=∫ 10

    ∫ 10

    (1 − max(s, t)) dW (s) dW (t)

    が成り立つ.なお,この関係はすでに説明したように,平均 2 乗の意味でも成立することに注意されたい.式 (4) の統計量 Q に戻って,その特性関数について議論しよう.そのために,次の定理は

    基本的なものである (Anderson-Darling (1952)).

    定理 5.3 式 (4) の統計量 Q において,核関数 K は,対称,連続,ほぼ定符号とする.このとき,Q の特性関数は,

    φ(θ) = E(eiθQ) = E[exp

    {iθ∫ 10

    ∫ 10K(s, t) dW (s) dW (t)

    }]= (D(2iθ))−1/2 (11)

    で与えられる.ここで,D(λ) は,K の Fredholm 行列式である.

    この定理により,統計量 Q の特性関数を導出するには,Fredholm 行列式を求めればよいことがわかった.そこで,Fredholm 行列式について説明するために,積分方程式 (1) の離散近似

    fT =λ

    TKT fT , fT =

    ⎛⎜⎝f(1/T )

    ...f(T/T )

    ⎞⎟⎠

    を考えよう.ここで,KT は,(j, k) 要素が K(j/T, k/T ) であるような T × T の対称行列である.これは,行列における固有値と固有ベクトルを与える式である.ただし,この場合の固有値は,通常の場合の逆数で定義されている.固有値は,次の方程式の根となる.

    DT (λ) =

    ∣∣∣∣∣IT − λT KT∣∣∣∣∣ = 0 (12)

    このとき,DT の T → ∞ のときの極限が K の Fredholm 行列式となる(Hochstadt (1973)).すなわち,次のことが成り立つ.

    D(λ) = limT→∞

    DT (λ) (13)

    3

  • DT (λ) = 0 の解は,行列 KT/T の固有値(の逆数)を与えるから,D(λ) = 0 の解は,積分方程式における K の固有値を与えることが予想される.実際,Fredholm 行列式は,次のような性質をもっている.

    Fredholm 行列式の性質

    (a) D(0) = 1 となる整関数であり,次のように級数展開される.

    D(λ) =∞∑

    n=0

    (−1)nλnn!

    ∫ 10· · ·∫ 10

    ∣∣∣∣∣∣∣∣K(t1, t1) · · · K(t1, tn)

    ......

    K(tn, t1) · · · K(tn, tn)

    ∣∣∣∣∣∣∣∣ dt1 · · · dtn (14)

    ここで,右辺は,すべての λ に対して収束する.

    (b) D(λ) = 0 の根は,K の固有値である.逆に,K の固有値は,すべて,D(λ) = 0 の根である.なお,D(0) = 1 �= 0 であるから,λ = 0 は固有値とはならない.

    (c) D(λ) が,対称,連続,ほぼ定符号の関数 K(s, t) の Fredholm 行列式ならば,次のような無限乗積展開が可能である.

    D(λ) =∞∏

    n=1

    (1 − λ

    λn

    )ln

    ここで,λn は固有値,ln は重複度である.

    問題は,いかにして Fredholm 行列式を求めるかということである.式 (14) の定義に従って求めることは,一般に困難である.実行可能な 1 つの方法は,D(λ) の候補となるものを見つけ,それが Fredholm 行列式となることを確かめることである.次の定理は,そのための十分条件を与えている(Nabeya-Tanaka (1988), (1990a)).

    定理 5.4  [0, 1]× [0, 1]で定義された関数K(s, t)が,対称,連続,ほぼ定符号とする.また,関数 D̃(λ) は,D̃(0) = 1 であるような整関数とする.このとき,次の条件をみたすならば,D̃(λ)は,K の Fredholm 行列式となる.

    i) D̃(λ) = 0 の根は,すべて K の固有値である.逆に,K の固有値は,すべて D̃(λ) = 0の根である.

    ii) D̃(λ) は,次のように無限乗積展開可能である.

    D̃(λ) =∞∏

    n=1

    (1 − λ

    λn

    )ln(15)

    ここで,λn は K の固有値,ln は λn の重複度である.

    4

  • この定理を使うためには,まず,Fredholm 行列式の候補を見つける必要がある.そのためには,積分方程式を扱うよりも,同値な微分方程式(および境界条件)に変換した上で,固有値がみたすべき条件から候補を見つける方が簡単である.その上で,無限乗積展開が (15) のように固有値の重複度を使って表現できることを確かめればよい.

    5.2 さまざまな FD - 無限乗積展開が容易な場合本節では,定理 5.4 において,FD となるための十分条件の 1 つとして述べた無限乗積展開

    が容易に得られるような場合に限定して,FD を導出する方法について説明する.

    (例 5.1) K1(s, t) = 1 − max(s, t) の場合を考えよう.積分方程式は,

    f(t) = λ∫ 10

    [1 − max(s, t)] f(s) ds

    = λ[∫ 1

    0f(s) ds− t

    ∫ t0f(s) ds−

    ∫ 1ts f(s) ds

    ](16)

    となる.最左辺と最右辺を t で微分して,

    f ′(t) = −λ∫ t0f(s) ds, f ′′(t) = −λ f(t)

    を得る.この結果,積分方程式 (16) から,次の 2 つの境界条件をもつ微分方程式が得られる.

    f ′′(t) + λ f(t) = 0, f(1) = f ′(0) = 0 (17)

    式 (16) と (17) が同値であることを示そう.そのためには,(17) から (16) が得られることを示せばよい.式 (17) の微分方程式から,λ f(t) = −f ′′(t) であり,これを (16) の最右辺に代入すると,(17) の 2 つの境界条件を使って,次の結果を得る.

    式 (16) の最右辺 =∫ 10

    (−f ′′(s)) ds− t∫ t0

    (−f ′′(s)) ds−∫ 1

    ts (−f ′′(s)) dt

    = −(f ′(1) − f ′(0)) + t(f ′(t) − f ′(0)) + sf ′(s)|1t −∫ 1

    tf ′(s) ds

    = f(t) = 式 (16) の最左辺

    さて,(17) の微分方程式の一般解は,

    f(t) = c1 cos√λ t+ c2 sin

    √λ t (18)

    で与えられる.ここで,c1, c2 は,任意の定数である.このとき,2 つの境界条件より,次のことが成り立つ.

    f(1) = c1 cos√λ+ c2 sin

    √λ = 0, f ′(0) = c2

    √λ = 0

    したがって,第 2 の境界条件より,c2 = 0 となる(λ �= 0)ので,固有関数は f(t) = c1 cos√λ t

    という形になる.これが自明でない解をもつための必要十分条件は,c1 �= 0 である.そのためには,第 1 の境界条件より,cos

    √λ = 0 となることが必要十分であり,これが固有値となる条

    件を与える.すなわち,固有値は λn = (n− 1/2)2π2 (n = 1, 2, · · ·) で与えられる.このことから,Fredholm 行列式の候補は,D̃(λ) = cos

    √λ となる(D̃(0) = 1).また,固

    有値 λn に対応する固有関数は,正規直交性より,fn(t) =√

    2 cos(n− 1/2)πt となり,各固有値の重複度は 1 となる.そして,D̃(λ) = cos

    √λ は,

    cos√λ =

    ∞∏n=1

    (1 − λ

    (n− 1/2)2π2)

    5

  • のように無限乗積展開できることが知られているので,cos√λが FDとなることが確認できる.

    (例 5.2) K2(s, t) = min(s, t) の場合を考えよう.この場合の固有値は,前節で説明した理由から,(例 5.1) と同一となるが,ここでは,実際にそのことを確かめてみよう.まず,積分方程式は,

    f(t) = λ∫ 10

    min(s, t) f(s) ds

    = λ[∫ t

    0s f(s) ds+ t

    ∫ 1tf(s) ds

    ](19)

    となり,これは,次の微分方程式,および境界条件と同値であることがわかる.

    f ′′(t) + λ f(t) = 0, f(0) = f ′(1) = 0 (20)

    このことから,f(t) = c1 cos√λt + c2 sin

    √λt が得られ,第 1 の境界条件から,c1 = 0 と

    なる.固有値となるための必要十分条件として,第 2 の境界条件から cos√λ = 0 が得られ

    る.以上から,固有値および FD は,例 1 の場合と同一となる.ただし,正規直交固有関数は,fn(t) =

    √2 sin(n− 1/2)πt となり,(例 5.1) の場合とは異なる.

    異なる核関数が同一の FD をもたらす別の例を挙げよう.

    (例 5.3) K3(s, t) = min(s, t) − st の場合を考えよう.前章 1 節で見たように,この核関数は,W (t) − tW (1) の共分散関数であることから,次のことが成り立つことに注意しよう.

    ∫ 10

    ∫ 10

    [min(s, t) − st] dW (s)dW (t) D=∫ 10

    (W (t) − tW (1))2 dt (21)

    このとき,積分方程式は,

    f(t) = λ[∫ t

    0sf(s) ds+ t

    ∫ 1tf(s) ds− t

    ∫ 10sf(s) ds

    ](22)

    となり,次の微分方程式および境界条件と同値になる(問題 1).

    f ′′(t) + λf(t) = 0, f(0) = f(1) = 0 (23)

    このことから,FD と正規直交固有関数は,次のようになる.

    D(λ) =sin

    √λ√

    λ, fn(t) =

    √2 sin nπt, λn = n

    2π2

    前章で述べた理由から,この例と同一の FDをもたらす核関数は,1/3−max(s, t)+(s2+t2)/2である.ただし,同値な微分方程式(および境界条件)は,次のように非同次となることがわかる.

    f ′′(t) + λf(t) = λ∫ 10f(s) ds, f ′(0) = 0, f ′(1) = 0

    微分方程式が非同次となる場合の FD の求め方については,次節で統一的に議論することにしたい.

    6

  • 次に,前章で議論した Girsanov アプローチでは解くことができない例を考えよう.

    (例 5.4) 前章の式 (52) で定義した次の統計量を考えよう.

    ∫ 10t2δ W 2(t) dt =

    ∫ 10

    ∫ 10

    1

    2δ + 1

    [1 − (max(s, t))2δ+1

    ]dW (s)dW (t)

    D=

    ∫ 10

    ∫ 10

    (st)δ min(s, t) dW (s)dW (t) (δ > −1/2) (24)

    この統計量も,上のように重積分による表現を 2 つもっている.ここでは,K4(s, t) =(1 − (max(s, t))2δ+1

    )/(2δ + 1) の固有値を求めることにしよう.この核関数をもつ積分方程

    式は,次の微分方程式および境界条件と同値になることがわかる(問題 2).

    f ′′(t) − 2δtf ′(t) + λt2δf(t) = 0, lim

    t→0f ′(t)t2δ

    = 0, f(1) = 0 (25)

    ここで得られた微分方程式は,次の Bessel の微分方程式の特別な場合である(Abramowitz-Stegun (1972)).

    y′′(x) − 2α− 1x

    y′(x) +

    (β2γ2x2γ−2 +

    α2 − ν2γ2x2

    )y(x) = 0 (26)

    この微分方程式の一般解は,ν が整数でない場合,次のように与えられる(Abramowitz-Stegun(1972)).

    y(x) = xα (AJν(βxγ) +BJ−ν(βxγ)) (ν : 非整数) (27)

    ここで,A と B は,任意の定数である.また,Jν(z) は,階数 ν の第 1 種 Bessel 関数であり,次のように定義される.

    Jν(z) =∞∑

    k=0

    (−1)k (z/2)2k+νk! Γ(k + ν + 1)

    (28)

    以下の議論では,階数 ν が非整数の第 1 種 Bessel 関数 Jν(z) を使うことになる.その主要な性質は,次の通りである (Watson (1958)).

    (a) 無限に多くの零点をもち,z = 0 以外はすべて単根である.零点は,ν > −1 ならばすべて実数であり,ν < −1 ならば高々有限個の複素数を含む.そして,an が零点ならば −anも零点となり,次の無限乗積展開が成り立つ.

    Jν(z) =(z/2)ν

    Γ(ν + 1)

    ∞∏n=1

    (1 − z

    2

    a2n

    )(29)

    (b) 次の漸化式が成り立つ.

    Jν(z) =z

    2 ν(Jν−1(z) + Jν+1(z)) (30)

    J ′ν(z) =1

    2(Jν−1(z) − Jν+1(z)) (31)

    7

  • (c) 階数 ν が特別な値に対して,次の表現をもつ.

    J1/2(z) =(

    2

    π z

    )1/2sin z, J3/2(z) =

    (2

    π z

    )1/2 (sin zz

    − cos z)

    (32)

    J−1/2(z) =(

    2

    π z

    )1/2cos z, J−3/2(z) =

    (2

    π z

    )1/2 (− sin z − cos z

    z

    )(33)

    式 (25) の微分方程式に戻ろう.この方程式は,(26) の Bessel の微分方程式において,

    α =2δ + 1

    2, β =

    √λ

    δ + 1, γ = δ + 1, ν =

    2δ + 1

    2(δ + 1)

    の場合であり,δ > −1/2 の条件のもとで,ν は非整数 (0 < ν < 1) となるから,その一般解は,次のように与えられる.

    f(t) = t(2δ+1)/2{c1Jν

    (2ξtδ+1

    )+ c2J−ν

    (2ξtδ+1

    )}

    = c1∞∑

    k=0

    (−1)k ξ2k+ν t2k(δ+1)+2δ+1k! Γ(k + ν + 1)

    + c2∞∑

    k=0

    (−1)k ξ2k−ν t2k(δ+1)k! Γ(k − ν + 1)

    ここで,ξ =√λ/(2(δ + 1)), ν = (2δ + 1)/(2(δ + 1)) である.このことから,

    f ′(t) = c1ξν2δ + 1

    Γ(ν + 1)t2δ [1 + t× {t の多項式 }]

    を得る.したがって,(25) の第 1 の境界条件より,c1 = 0 となる.このことと,第 2 の境界条件より,

    f(1) = c1Jν(2ξ) + c2J−ν(2ξ) = c2J−ν(2ξ) = 0

    を得るので,λ ( �= 0) が固有値となるための必要十分条件は,J−ν(2ξ) = 0 となる.この解は明示的に求めることはできないが,式 (29) の無限乗積展開より,次のことが成り立つ.

    J−ν(2ξ) =ξ−ν

    Γ(1 − ν)∞∏

    n=1

    (1 − 4ξ

    2

    a2n

    )=

    (√λ/(2(δ + 1))

    )−νΓ(1 − ν)

    ∞∏n=1

    (1 − λ

    (δ + 1)2 a2n

    )(34)

    ここで,±a1,±a2, · · · は,J−ν(z) = 0 の根であり,−1 < −ν < 0 であることから,すべて実数である.したがって,a1, a2, · · ·は,J−ν(z) = 0 の正根としても一般性を失わない.他方,各固有値 λn に対する固有関数は,

    fn(t) = c2t(2δ+1)/2 J−ν

    (√λn t

    δ+1/(δ + 1))

    という形となり,重複度は 1 となる.以上から,核関数 K4 の FD として,

    D(λ) =

    ( √λ

    2(δ + 1)

    )νΓ(1 − ν) J−ν

    ( √λ

    δ + 1

    )=

    ∞∏n=1

    (1 − λ

    (δ + 1)2 a2n

    )(35)

    を得る.固有値は,λn = (δ + 1)2a2n (n = 1, 2, · · ·) である.

    8

  • 上の結果において,δ = 0 ならば,(例 5.1) の場合に帰着するはずである.実際,δ = 0 ならば,ν = 1/2, ξ =

    √λ/2 となり,(33) の第 1 式の関係より,

    ξ1/2 Γ(1/2) J−1/2(2ξ) =(√

    λ/2)1/2 √

    π J−1/2(√λ) = cos(2ξ) = cos

    √λ (36)

    が成り立つことから,この場合の FD は,cos√λ となる.

    次の例も,Girsanov アプローチが適用できない場合を扱っている.

    (例 5.5)  Ito 積分を含む次の統計量を考えよう.∫ 10tτW (t) dW (t) =

    ∫ 10

    ∫ 10

    1

    2(max(s, t))τ dW (s)dW (t) − 1

    2(τ + 1)(τ > 0) (37)

    ここで,右辺との同値関係は,すでに前章の式 (57) で示されている.したがって,左辺の統計量の特性関数を求めるには,右辺の表現にある核関数 K5(s, t) = (max(s, t))

    τ /2 の FD を求めればよいことになる.ところで,K5 は,今までの例と異なり,定符号ではない.実際,K5 は,負値定符号の核関数 −(1 − (max(s, t))τ )/2 と退化核 1/2 の和となっている.この点については,またあとで触れることにする.

    K5 を核とする積分方程式と同値な微分方程式および境界条件は,次のように与えられる(問題 3).

    f ′′(t) − τ − 1t

    f ′(t) − λτ2tτ−1 f(t) = 0, lim

    t→0f ′(t)tτ−1

    = 0, f ′(1) = τ f(1) (38)

    この微分方程式は,式 (26) の Bessel の微分方程式において,

    α =τ

    2, β =

    √−2τλτ + 1

    , γ =τ + 1

    2, ν =

    τ

    τ + 1

    の場合であり,τ > 0 の条件のもとで,ν は非整数となるから,その一般解は,次のように与えられる.

    f(t) = tτ/2{c1Jν

    (2ξt(τ+1)/2

    )+ c2J−ν

    (2ξt(τ+1)/2

    )}

    = c1∞∑

    k=0

    (−1)k ξ2k+ν t(τ+1)k+τk! Γ(k + ν + 1)

    + c2∞∑

    k=0

    (−1)k ξ2k−ν t(τ+1)kk! Γ(k − ν + 1) (39)

    ここで,ξ =√−2τλ/(2(τ + 1)), ν = τ/(τ + 1) である.このことから,

    f ′(t) = c1ξν τ

    Γ(ν + 1)tτ−1 [1 + t× {t の多項式 }]

    を得る.したがって,(38) の第 1 の境界条件より,c1 = 0 となる.このとき,式 (31) の関係を使うと,

    f ′(t) = c2[τ

    2tτ/2−1J−ν(2ξzt) +

    1

    2ξ(τ + 1)tτ−1/2 {J−ν−1(2ξzt) − J−ν+1(2ξzt)}

    ]

    となる.ただし,zt = t(τ+1)/2 である.したがって,式 (30) の関係を使って,次の結果を得る.

    f ′(1) =c22

    [τJ−ν(2ξ) + ξ(τ + 1) (J−ν−1(2ξ) − J−ν+1(2ξ))]

    =c22

    [2ξτ

    −2ν (J−ν−1(2ξ) + J−ν+1(2ξ)) + ξ(τ + 1) (J−ν−1(2ξ) − J−ν+1(2ξ))]

    = −c2 ξ(τ + 1)J−ν+1(2ξ)

    9

  • このことから,(38) の第 2 の境界条件は,再度,(30) の関係を使って,次のように表すことができる.

    f ′(1) − τ f(1) = −c2 [ξ(τ + 1)J−ν+1(2ξ) + τ J−ν(2ξ)]= −c2

    [ξ(τ + 1)J−ν+1(2ξ) +

    2ξτ

    −2ν (J−ν−1(2ξ) + J−ν+1(2ξ))]

    = c2ξ(τ + 1)J−ν−1(2ξ)

    したがって,固有値は,

    J−ν−1(2ξ) = J−ν−1

    (√−2τλτ + 1

    )= 0

    の根となる.今,J−ν−1(z) = 0 の根を ±b1,±b2, · · · とすれば,次の無限乗積展開が成り立つ.

    J−ν−1

    (√−2τλτ + 1

    )=

    (√−2τλ/(2(τ + 1)))−ν−1Γ(−ν)

    ∞∏n=1

    (1 +

    2τλ

    (τ + 1)2 b2n

    )(40)

    このことから,K5 の FD は,

    D(λ) =

    (√−2τλ2(τ + 1)

    )ν+1Γ(−ν) J−ν−1

    (√−2τλτ + 1

    ),

    (ν =

    τ

    τ + 1

    )(41)

    となる.式 (40) から,固有値は λn = −(τ + 1)2b2n/(2τ) と表すことができる.固有値はすべて実数であることと,−2 < −ν − 1 < −1 であることから,bn の高々有限個は純虚数で,それ以外は実数となる.その結果,高々有限個の固有値は正で,その他はすべて負となることがわかる.

    上の簡単な例として,τ = 1 の場合を考えよう.このとき,ν = 1/2 となり,(33) の第 2 の関係式より,

    D(λ) =

    (√−2λ4

    )3/2(−2√π) J−3/2

    (√−2λ2

    )=

    √−λ2

    sin

    √−λ2

    + cos

    √−λ2

    を得る.今の場合,無限個の固有値のうち,1個だけが正で,それ以外はすべて負である(問題4).

    5.3 さまざまな FD - 重複度が 2 の場合今までは,重複度が 1 の場合を扱ってきたが,今度は,重複度が 2 以上の例について考え

    よう.その場合,重複度の決定方法が問題になる.次の定理は,そのための方法を与えている(Tanaka (1996)).

    定理 5.5 核関数 K をもつ (1) の積分方程式が,ある微分方程式の一般解および境界条件と同値で,これらが次のように表されているとする.

    f(t) = c1φ1(t) + · · ·+ crφr(t), M(λ)c = 0 (42)ここで,前者は微分方程式の解であり,φ1(t), · · · , φr(t) は,1 次独立な連続関数である.また,後者は境界条件に関する方程式であり,M(λ) は,c = (c1, · · · , cr)′ に関する同次連立方程式のr × r の係数行列である.このとき,K の固有値 λn の重複度 ln は,次のように与えられる.

    ln = r − rank (M(λn)) (43)

    10

  • この定理から,ln は,M(λn)c = 0 をみたす零化空間の次元に等しく,取りうる値は,1 ≤ln ≤ r となる.次の例を考えよう.

    (例 5.6) 核関数が K6(s, t) = [1 − 2|s− t|]/4 の場合を考える.この核関数は,正値定符号であり,積分方程式は次の条件と同値になる(問題 5).

    f ′′(t) + λf(t) = 0, f(0) + f(1) = 0, f ′(0) + f ′(1) = 0 (44)

    さらに,次の条件と同値になる.

    f(t) = c1 cos√λt+ c2 sin

    √λt, M(λ)c =

    (1 + cos

    √λ sin

    √λ

    −√λ sin√λ √λ(1 + cos√λ))

    c = 0

    このとき,λ ( �= 0) が固有値となるための必要十分条件は,

    |M(λ)| = 2√λ(1 + cos

    √λ) = 4

    √λ

    (cos

    √λ

    2

    )2

    が 0 となることである.したがって,固有値は,λn = ((2n− 1)π)2 (n = 1, 2, · · ·) となる.このとき,M(λn) は零行列となるので,零化空間の次元は 2 となり,重複度も 2 となる.このことより,K6 の FD は,次の形で与えられる.

    D(λ) =

    (cos

    √λ

    2

    )2=

    ∞∏n=1

    (1 − λ

    ((2n− 1)π)2)2

    なお,重複度が 2 となることは,次の関係式∫ 10K6(t, t) dt =

    ∞∑n=1

    1

    λn

    において,

    左辺 =∫ 10

    1

    4dt =

    1

    4, 右辺 =

    ∞∑n=1

    1

    ((2n− 1)π)2 =1

    8

    となるので,右辺の無限和においては,固有値は重複度(= 2)の分だけ,繰り返されなければならない.

    上の例は,前章 3 節の (例 4.9) で取り上げた Lev́y の確率面積

    S =1

    2

    ∫ 10

    [W1(t) dW2(t) −W2(t) dW1(t)]

    に関連している.実際,{W1(t)} を与えたときの S の条件付き分布は,平均 0, 分散

    E [S| {W1(t)}] =∫ 10

    (W1(t) − 1

    2W1(1)

    )2dt =

    ∫ 10

    ∫ 10

    1

    4[1 − 2|s− t|] dW1(s)dW1(t)

    となる.したがって,S の特性関数は,次のようになる.

    E(eiθS) = E

    [exp

    {− θ

    2

    2

    ∫ 10

    ∫ 10

    1

    4[1 − 2|s− t|] dW (s)dW (t)

    }]

    =(D(−θ2)

    )−1/2=

    (cosh

    θ

    2

    )−1(45)

    11

  • (例 5.7) 重複度が 2 となる別の例としては,Watson (1961) により提案された円周上における適合度検定統計量の核関数

    K7(s, t) = min(s, t) − 12(s+ t) +

    1

    2(s− t)2 + 1

    12(46)

    がある.実際,この核関数の FD は,次の形で与えられる(問題 6).

    D7(λ) =

    (sin

    √λ

    2

    / √λ

    2

    )2(47)

    K7 の固有値は,√λ/2 = nπ (n = 1, 2, · · ·) より,λn = 4n2π2 となる.重複度が 2 となるこ

    とは,∫ 10K7(t, t) dt =

    1

    12,

    ∞∑n=1

    1

    4n2π2=

    1

    24

    となることからも類推できよう.

    なお,核関数 K7(s, t) をもつ Watson 統計量は,Riemann 積分で次のように表すことができる(問題 7).

    ∫ 10

    ∫ 10K7(s, t) dW (s)dW (t)

    D=∫ 1

    0

    (W̄ (t) −

    ∫ 10W̄ (u) du

    )2dt

    ただし,W̄ (t) = W (t) − tW (1) は Bb (Brown 橋) である.

    5.4 さまざまな FD - 無限乗積展開が容易でない場合核関数の FD であることを確かめるには,定理 5.4 の式 (15) にあるような無限乗積展開が

    可能かどうかが重要なポイントとなる.今までの例では,三角関数や Bessel 関数に関して,よく知られた展開を使うことができた.しかし,そうでない場合は,無限乗積展開が可能かどうかは定かでない.次の Weierstrass の無限乗積表示に関する定理は,そのための条件を与えるものである (Whittaker-Watson (1958)).

    定理 5.6 関数 h(z) は h(0) = 0 となる整関数で,h(z) = 0 となる無限個の単根 a1, a2, · · · をもつとする.また,{Cm} は単一閉曲線の列で,m → ∞ のとき,h′(z)/h(z) が Cm 上で有界となるものとする.このとき,関数 h(z) は,次のように展開できる.

    h(z) = exp{h′(0) z}∞∏

    n=1

    {(1 − z

    an

    )exp

    (z

    an

    )}(48)

    次の例は,この定理の応用である.

    (例 5.8) 核関数が K8(s, t) = 1 − max(s, t) + b となる場合を考えよう.ここで,b は 0 でない任意の定数である.この核関数をもつ積分方程式と同値になる条件は,次の通りである.

    f ′(t) + λf(t) = 0, f(1) = λ b∫ 1

    0f(s) ds, f ′(0) = 0

    12

  • したがって,次の連立方程式が得られる.

    M(λ) c =(

    cos√λ− b√λ sin√λ sin√λ+ b√λ (cos√λ− 1)

    0√λ

    ) (c1c2

    )= 0

    このことから,FD の候補として,

    D̃(λ) = cos√λ− b

    √λ sin

    √λ, D̃(0) = 1 (49)

    を得る.明らかに,各固有値 λn に対して,rank(M(λn)) = 1 であるから,重複度は 1 となる.あとは,D̃(λ) の無限乗積展開が可能かどうかを見ればよい.今,z =

    √λ とおいて,

    h(z) = D̃(z2) = cos z − b z sin z, h(0) = 1を考えよう.関数 h(z) は,偶関数であり,h(z) = 0 の根はすべて単根である.これらの根を ±a1,±a2, · · · とする.また,Cm を複素平面上の正方形で,頂点が (2m + 1/2)π(±1 ± i)(m = 1, 2, · · ·) となるものとする.このとき,次の関数

    h′(z)h(z)

    =−bz cos z − (b+ 1) sin z

    cos z − bz sin zは,正方形 Cmの各辺上で有界となることがわかる.したがって,関数 h(z)は,対称で h′(0) = 0であることに注意すると,定理 5.6 より,次のように展開できる.

    h(z) =∞∏

    n=1

    {(1 − z

    an

    )exp

    (z

    an

    )(1 +

    z

    an

    )exp

    (− zan

    )}

    =∞∏

    n=1

    (1 − z

    2

    a2n

    )=

    ∞∏n=1

    (1 − λ

    a2n

    )

    以上より,(49) の D̃(λ) は,核関数 K7 の FD となることがわかった.なお,K8 は対称関数なので,a2n はすべて実数であり,定数 b が非負ならば a

    2n はすべて正,したがって,固有値も

    すべて正となる.他方,b が負ならば a2n は 1 つを除いてすべて正,したがって,固有値の 1つは負,その他はすべて正となる(問題 8).

    5.5 さまざまな FD - 非同次微分方程式の場合今まで扱ってきた積分方程式は,対応する微分方程式が同次のものであった.本節では,非

    同次な微分方程式をもたらすような核関数の例を扱う.そのために,特に,核関数が次の形で与えられる場合を考えよう.

    K(s, t) = min(s, t) +r∑

    k=1

    ξk(s)ψk(t) (50)

    ここで,

    i) ξk(s) と ψk(t) (k = 1, · · · , r) は,連続で,それぞれが,C[0, 1] 上で 1 次独立である.ii) ψk(t) (k = 1, · · · , r) は,2 回連続微分可能で,ψ′′k(t) は,q 個が 1 次独立で,残りの r− q個 (0 ≤ r − q ≤ 2) は 0 となる.この最後の点は,ψk(t) が定数あるいは 1 次関数を含む場合を考慮している条件である.

    13

  • 式 (50) の形の核関数に対する FD の導出方法は,Nabeya-Tanaka (1988) で議論されている.まず,積分方程式

    f(t) = λ∫ 10

    [min(s, t) +

    r∑k=1

    ξk(s)ψk(t)

    ]f(s) ds

    に対して,次の微分方程式が得られる.

    f ′′(t) + λf(t) = λq∑

    k=1

    ak ψ′′k(t)

    境界条件としては,次の 4 つが得られる.

    f(0) = λr∑

    k=1

    ak ψk(0), f(1) = λ

    [∫ 10sf(s) ds+

    r∑k=1

    akψk(1)

    ]

    f ′(0) = λ

    [∫ 10f(s) ds+

    r∑k=1

    akψ′k(0)

    ], f ′(1) =

    r∑k=1

    ak ψ′k(1)

    ここで,定数 ak は,次のように定義される.

    ak =∫ 10ξk(s) f(s) ds, (k = 1, · · · , r)

    上で得られた微分方程式は非同次となっており,一般解は次の形で与えられる.

    f(t) = c1 cos√λt+ c2 sin

    √λt+

    q∑k=1

    akgk(t)

    ここで,gk(t) は,次の微分方程式の特殊解である.

    g′′k(t) + λgk(t) = λψ′′k(t)

    特殊解を求めるには,演算子法を使うことができる.この点については,微分方程式の本を参照されたい.以上により,積分方程式は,微分方程式の一般解,境界条件および ak に関する方程式に変

    換されたことになる.同値関係については,4 つの境界条件の中から適切な 2 つを選べばよい.このことから,結局,c = (a1, · · · , ar, c1, c2)′ に関する連立方程式 M(λ) c = 0 が得られる.このとき,λ ( �= 0) が固有値となるための必要十分条件として,|M(λ)| = 0 が得られ,固有値の重複度を求めることにより,FD の候補を見つけることができる.具体例を 2 つ考えよう.

    (例 5.9) ここでは,核関数が

    K9(s, t) = 1/3 − max(s, t) + (s2 + t2)/2 = min(s, t) − (s+ t) + (s2 + t2)/2 + 1/3= min(s, t) + ξ1(s)ψ1(t) + ξ2(s)ψ2(t) (51)

    の場合を考えよう.ここで,

    ξ1(s) = 1, ξ2(s) =1

    2s2 − s + 1

    3, ψ1(t) =

    1

    2t2 − t, ψ2(t) = 1

    である.(例 5.3) で述べたように,K9 の固有値は,K3(s, t) = min(s, t)− st の場合と同一であり,λn = n2π2 となるが,ここでは,そのことを確かめてみよう.

    14

  • まず,K9 を核関数とする積分方程式から,次の微分方程式および境界条件が得られる.

    f ′′(t) + λf(t) = λa1

    f(0) = λa2, f(1) = λ[∫ 1

    0sf(s) ds− 1

    2a1 + a2

    ], f ′(0) = 0, f ′(1) = 0

    ここで,

    a1 =∫ 10f(s) ds, a2 =

    ∫ 10

    (1

    2s2 − s + 1

    3

    )f(s) ds

    である.この微分方程式の一般解は,f(t) = c1 cos√λt + c2 sin

    √λt + a1 である.境界条件に

    ついては,4 つのうち,第 3,第 4 の 2 つの境界条件を使えばよい.第 3 の条件より,c2 = 0となる.したがって,第 4 条件から,固有値は,sin

    √λ = 0 の解となる.このことから,(例

    5.3) と同様に,FD は,D(λ) = sin√λ/

    √λ となる.固有関数は,fn(t) = c1 cos

    √λnt + a1 の

    形であり,正規直交性から,c1 =√

    2, a1 = 0 となる.

    もう 1 つの例として,核関数がやや複雑になった場合を取り上げよう.

    (例 5.10) 核関数が次の場合を考えよう.

    K10(s, t) = min(s, t) − 25st16

    +9st(s4 + t4)

    16− 9s

    5t5

    16= min(s, t) + ξ1(s)ψ1(t) + ξ2(s)ψ2(t) (52)

    ここで,

    ξ1(s) = −s5 + s, ξ2(s) = 9s5 − 25s, ψ1(t) = 916t5, ψ2(t) =

    t

    16

    である.このとき,次の微分方程式

    f ′′(t) + λf(t) =45

    4λa1t

    3

    が得られ,境界条件は次のようになる.

    f(0) = 0, f(1) = 0, f ′(0) = λ[∫ 1

    0f(s) ds+

    1

    16a2

    ], f ′(1) =

    λ

    16(45a1 + a2)

    ここで,

    a1 =∫ 10

    (−s5 + s) f(s) ds, a2 =∫ 10

    (9s5 − 25s) f(s) ds

    であり,微分方程式の一般解は,次の形で与えられる.

    f(t) = c1 cos√λt+ c2 sin

    √λt+

    45a14

    (t3 − 6

    λt)

    ここで,右辺第 3 項の特殊解 g(t) は,微分演算子 D = d/dt を定義して,演算子法により,次のように得られる.

    (D2 + λ) g(t) =45

    4λa1t

    3 ⇔ g(t) = 45λa1t3

    D2 + λ=

    45a14

    (t3 − 6

    λt)

    15

  • 上の一般解に対して,4 つの境界条件のうち,f(0) = f(1) = 0 を選べば,a2 に関する条件は不要となることがわかる.そして,f(0) = 0 より,c1 = 0 となるので,あとは,c = (a1, c2)′

    に関する 2 本の方程式 M(λ)c = 0 を得る.ここで,

    M(λ) =

    (454

    (1 − 6

    λ

    )sin

    √λ

    − 907λ

    M22(λ)

    )

    M22(λ) =4

    λ3

    [−5

    √λ(λ− 6) cos

    √λ− (λ2 − 15λ+ 30) sin

    √λ]

    以上より,M(λ) の行列式は次のようになる.

    |M(λ)| = −45√λ

    7λ4

    [35(λ2 − 12λ+ 36) cos

    √λ

    + (5λ3 − 147λ2 + 840λ− 1260)sin√λ√

    λ

    ]

    この表現から,K10 の FD の候補として,

    D̃(λ) = |M(λ)|/√λ

    = − 457λ4

    [35(λ2 − 12λ+ 36) cos

    √λ

    + (5λ3 − 147λ2 + 840λ− 1260)sin√λ√

    λ

    ](53)

    を得る.ここで,D̃(0) = 1 であり,h(z) = D̃(z2) は定理 5.4 の条件をみたすことから,K10 のFD となることがわかる(問題 9).

    本節で議論した核関数の他の例については,Tanaka (1996) を参照されたい.

    5.6 さまざまな FD - 積分 Bm の場合本節では,第 2 章で定義した積分 Bm の 2 次汎関数

    Qg =∫ 1

    0F 2g (t) dt =

    ∫ 10

    ∫ 10Kg(s, t) dW (s) dW (t) (54)

    を考えよう.ここで,{Fg(t)} は,g 重積分 Bm であり,

    Fg(t) =∫ t

    0Fg−1(s) ds =

    1

    g!

    ∫ t0

    (t− s)g dW (s), F0(t) = W (t) (g = 1, 2, · · ·)

    により定義される.このことから,核関数 Kg は,次の形で与えられる.

    Kg(s, t) =1

    (g!)2

    ∫ 1max(s,t)

    ((u− s)(u− t))g du

    =1

    (g!)2

    g∑j=0

    g∑k=0

    (gj

    )(gk

    )(−1)j+kj + k + 1

    [1 − (max(s, t))j+k+1

    ]sg−jtg−k (55)

    Kg(s, t) は,t の関数として,次数 2g + 1 の多項式である.以下,Kg の FD を導出することを考えよう.この場合,任意の g に対して Kg の FD を

    求めることは不可能であり,g の値ごとに考える必要があることがわかる.

    16

  • まず,積分方程式

    f(t) = λ∫ 10Kg(s, t)f(s) ds

    から,次の微分方程式と 2g + 2 個の境界条件が導かれる(問題 10).

    f (2g+2)(t) + (−1)g λ f(t) = 0 (56)

    f(1) = f (1)(1) = · · · = f (g)(1) = f (g+1)(0) = · · · = f (2g+1)(0) = 0 (57)

    式 (56) の微分方程式に対する固有方程式の根 xn (n = 0, 1, · · · , 2g + 1) は,

    xn =

    ⎧⎪⎪⎨⎪⎪⎩λ1/(2g+2)

    (cos nπ

    g+1+ i sin nπ

    g+1

    )(g : 奇数のとき)

    λ1/(2g+2)(cos (2n+1)π

    2g+2+ i sin (2n+1)π

    2g+2

    )(g : 偶数のとき)

    で与えられる.このことから,一般解は,

    f(t) = c′1ex0t + · · ·+ c′2g+1ex2g+1t

    = c1 cos(−ix0t) + · · ·+ cg+1 cos(−ixgt)+cg+2 sin(−ix0t) + · · ·+ c2g+2 sin(−ixgt) (58)

    と表すことができる.以下,g = 1, 2, 3 の場合について,実際に FD を求めてみよう.

    (例 5.11)  g = 1 の場合,核関数は 3 次の多項式となり,次の形で与えられる.

    K1(s, t) =

    ⎧⎪⎨⎪⎩

    16(1 − t)2(t+ 2 − 3s) (s ≤ t)

    16(1 − s)2(s+ 2 − 3t) (s > t)

    このとき,(56) の微分方程式の一般解は,(58) の表現から,

    f(t) = c1 cosαt+ c2 cosβt+ c3 sinαt+ c4 sin βt, α = −iλ1/4, β = λ1/4

    となる.そして,4 個の境界条件から,

    M(λ)c =

    ⎛⎜⎜⎜⎝

    cosα cosβ sinα sin βi sinα − sin β −i cosα cosβ

    1 −1 0 00 0 −i −1

    ⎞⎟⎟⎟⎠⎛⎜⎜⎜⎝c1c2c3c4

    ⎞⎟⎟⎟⎠ = 0

    を得る.λ が固有値となるための必要十分条件は,

    |M(λ)| = 2 i (1 + cosα cosβ)が 0 となることである.このことから,K1 の FD として,

    D1(λ) =|M(λ)|

    4i=

    1

    2

    (1 + cosλ1/4 cosh λ1/4

    )(59)

    が得られる.

    17

  • ところで,Kg の固有値を 0 < λ1(g) < λ2(g) < · · ·,{Zn} ∼NID(0,1) とすれば,次のことが成り立つ.

    Qg =∫ 1

    0F 2g (t) dt =

    ∫ 10

    ∫ 10Kg(s, t) dW (s) dW (t)

    D=

    ∞∑n=1

    1

    λn(g)Z2n

    ここで,Qg の期待値は g とともに減少する.実際,次のことが成り立つ.

    E(Qg) =∫ 1

    0Kg(t, t) dt =

    ∫ 10

    1

    (g!)2

    (∫ 1t

    (u− t)2g du)dt

    =1

    (g!)2 (2g + 1)(2g + 2)(g = 0, 1, 2, · · ·)

    K1 の固有値は,D1(λ) = 0 の根であり,小さい方から 6 個の根は,次のようになる.

    λ1(1) = 12.36236, λ2(1) = 485.5188, λ3(1) = 3806.546

    λ4(1) = 14617.27, λ5(1) = 39943.83, λ6(1) = 89135.41

    このことから,最小固有値の相対的ウェイトは,

    E(Z21/λ1(1))

    E(Q1)=

    12

    12.36236= 0.9707

    となって,約 97 % のウェイトをもつことになり,Q1 の分布は,Z21/λ1(1) で近似できることが期待される.この点については,第 6 章で,実際に計算結果を示すことにする.

    (例 5.12)  g = 2 の場合,核関数は 5 次の多項式となり,次の形で与えられる.

    K2(s, t) =

    ⎧⎪⎨⎪⎩

    1120

    (1 − t)3(t2 + 3t+ 6 − 5st+ 10s2 − 15s) (s ≤ t)1

    120(1 − s)3(s2 + 3s+ 6 − 5st+ 10t2 − 15t) (s > t)

    このとき,(56) の微分方程式の一般解は,(58) の表現から,

    f(t) = c1 cosαt+ c2 cosβt+ c3 cos γt+ c4 sinαt+ c5 sin βt+ c6 sin γt

    となる.ただし,

    α = λ1/6 ω, β = λ1/6, γ = −λ1/6 ω2, ω = 1 −√

    3i

    2

    である.そして,(57) の 6 個の境界条件から,M(λ)c = 0 を得る.ただし,

    M(λ) =

    ⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝

    cosα cosβ cos γ sinα sin β sin γ−ω sinα − sin β ω2 sin γ ω cosα cosβ −ω2 cos γ−ω2 cosα − cosβ ω cos γ −ω2 sinα − sin β ω sin γ

    0 0 0 1 −1 1−ω 1 ω2 0 0 00 0 0 −ω2 1 ω

    ⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠

    |M(λ)| = 3 [2 (1 + cosα+ cos β + cos γ) + cosα cosβ cos γ]

    18

  • である.このことから,K2 の FD として,

    D2(λ) =|M(λ)|

    27=

    1

    9[2 (1 + cosα + cosβ + cos γ) + cosα cos β cos γ]

    が得られる.この計算には,数式処理のソフトである Mathematica を利用した.K2 の固有値は,D2(λ) = 0 の根であり,最小根として,λ1(2) = 121.259 を得る.このこと

    から,最小固有値の相対的ウェイトは,

    E(Z21/λ1(2))

    E(Q2)=

    120

    121.259= 0.9896

    となり,約 99 % のウェイトをもつことになる.したがって,Q2 の分布は,Z21/λ1(2) で近似され,Q1 の場合よりもよりよく近似できることが期待される.

    (例 5.13) g = 3 の場合,核関数は 7 次の多項式となり,s ≤ t のとき,次の形で与えられる.

    K3(s, t) =(1 − t)45040

    (t3 + 4t2 + 10t+ 20 − 35s3 + 84s2 + 21s2t− 70s− 28st− 7st2

    )このとき,(56) の微分方程式の一般解は,(58) の表現から,

    f(t) = c1 cosαt+ c2 cosβt+ c3 cos γt+ c4 cos δt+ c5 sinαt+ c6 sin βt+ c7 sin γt+ c8 sin δt

    となる.ただし,

    α = −iλ1/8, β = λ1/8ω, γ = λ1/8, δ = −λ1/8ω3, ω = 1 − i√2

    である.そして,(57) の 8 個の境界条件から,M(λ)c = 0 を得る.ただし,

    M(λ) =

    ⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝

    cosα cosβ cos γ cos δ sinα sin β sin γ sin δi sinα −ω sin β − sin γ −iω sin δ −i cosα ω cosβ cos γ iω cos δcosα i cosβ − cos γ −i cos δ sinα i sin β − sin γ −i sin δi sinα −iω sin β sin γ −ω sin δ −i cosα iω cosβ − cos γ ω cos δ

    1 −1 1 −1 0 0 0 00 0 0 0 −i −ω 1 −iω1 −i −1 i 0 0 0 00 0 0 0 −i −iω −1 −ω

    ⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠

    |M(λ)| = 16i [3 + 3 cosα cosβ cos γ cos δ + 2 cosα cosβ + 2 cosβ cos γ+2 cos γ cos δ + 2 cos δ cosα + cosα cos γ + cosβ cos δ

    +√

    2 {sinα sin β(1 + cos γ cos δ) + sin β sin γ(1 + cosα cos δ)+ sin γ sin δ(1 + cosα cos β) − sinα sin δ(1 + cosβ cos γ)}]

    である.このことから,K3 の FD として,

    D(λ) =|M(λ)|256i

    =1

    16[3 + 3 cosα cosβ cos γ cos δ + 2 cosα cos β + 2 cosβ cos γ

    +2 cos γ cos δ + 2 cos δ cosα + cosα cos γ + cosβ cos δ

    +√

    2 {sinα sin β(1 + cos γ cos δ) + sin β sin γ(1 + cosα cos δ)+ sin γ sin δ(1 + cosα cosβ) − sinα sin δ(1 + cosβ cos γ)}] (60)

    19

  • 上記の方法で,g = 4, 5, · · · の場合の FD についても,同様の手続きにより求めることは可能であるが,g が大きくなるにつれて実際の計算は非常に複雑となることが了解されよう.例えば,g = 4 の場合には 10 個の境界条件に基づいて,要素が数式からなる 10× 10 の行列式を計算する必要がある.

    5.7 さまざまな FD - 反復核がある場合本節で扱う特性関数は,検定統計量を局所対立仮説のもとで評価した際に現れる統計量に

    関連したものである(第 9 章を参照).この統計量は次の形をしている.

    S =∫ 10

    ∫ 10

    [K(s, t) + c2K(2)(s, t)

    ]dW (s) dW (t) (61)

    ここで,K(s, t) は連続,対称,正値定符号の核関数,c は定数である.他方,

    K(2)(s, t) =∫ 10K(s, u)K(u, t) du

    であり,K(2) は,K の反復核と呼ばれる.K の固有値を λn,正規直交固有関数を fn(t) とすれば,Mercer の定理より,次の展開が得られることに注意されたい.

    K(s, t) =∞∑

    n=1

    fn(s) fn(t)

    λn, K(2)(s, t) =

    ∞∑n=1

    fn(s) fn(t)

    λ2n(62)

    このことから,上の統計量 S は,次のように表現することもできる.

    S =∫ 10

    ∫ 10

    ∞∑n=1

    [1

    λn+c2

    λ2n

    ]fn(s)fn(t) dW (s) dW (t)

    D=

    ∞∑n=1

    [1

    λn+c2

    λ2n

    ]Z2n

    ここで,{Zn} ∼ NID(0,1) である.したがって,この最後の表現から,S の特性関数を次のように求めることができる.

    φ(θ) = E(eiθS) = E

    [exp

    {iθ

    ∞∑n=1

    [1

    λn+c2

    λ2n

    ]Z2n

    }]

    =∞∏

    n=1

    [1 − 2iθ

    (1

    λn+c2

    λ2n

    )]−1/2

    =∞∏

    n=1

    [1 − 1

    λn

    (iθ +

    √−θ2 + 2ic2θ

    )]−1/2 [1 − 1

    λn

    (iθ −

    √−θ2 + 2ic2θ

    )]−1/2

    以上の結果から,次の定理が成り立つ.

    定理 5.7 式 (61) で定義される統計量 S において,K は正値定符号,K(2) は K の反復核,cは定数とする.このとき,S の特性関数は,次のようになる.

    E(eiθS) =[D(iθ +

    √−θ2 + 2ic2θ

    )D(iθ −

    √−θ2 + 2ic2θ

    )]−1/2(63)

    ここで,D(λ) は,K の Fredholm 行列式である.

    (例 5.14) MA(1) モデル yj = εj − αεj−1 において,{εj} ∼NID(0, σ2) として,MA 単位根検定問題 H0 : α = 1 vs. H1 : α < 1 を考える.このとき,統計量

    ST =1

    T

    y′Ω−2yy′Ω−1y

    , y = (y1, · · · , yT )′, Ω = V(y)/σ2 (H0 のもとで評価)

    20

  • が大きいときに H0 を棄却する検定は,LBIU (Locally Best Invariant and Unbiased) となり,局所対立仮説 H1 : α = 1− c/T のもとで,T → ∞ のとき,次のような分布収束をする(第 9章 2 節を参照).

    ST ⇒ S =∫ 10

    ∫ 10

    [K(s, t) + c2K(2)(s, t)

    ]dW (s) dW (t), K(s, t) = min(s, t) − st

    したがって,極限の統計量 S の特性関数として,次の表現を得る.

    E(eiθS) =

    ⎡⎣sin

    √iθ +

    √−θ2 + 2ic2θ√iθ +

    √−θ2 + 2ic2θsin

    √iθ −√−θ2 + 2ic2θ√

    iθ −√−θ2 + 2ic2θ

    ⎤⎦−1/2

    この結果は,検定の局所検出力を計算する場合に重要となるものである.

    5.8 レゾルベントと FD今までは,Bm の 2 次汎関数を考えてきたが,ここでは,1 次の項も含むような統計量を

    扱って,その特性関数の導出方法を議論する.まず,次の統計量を考えよう.

    S =∫ 10

    ∫ 10K(s, t) dW (s)dW (t) + a

    ∫ 10K(0, t) dW (t) (64)

    ここで,核関数 K は連続,対称,ほぼ定符号であるとする.また,a は定数である.このとき,Mercer の定理より,S は次のように表現することができる.

    S =∞∑

    n=1

    1

    λn

    [(∫ 10fn(t) dW (t)

    )2+ afn(0)

    ∫ 10fn(t) dW (t)

    ]

    D=

    ∞∑n=1

    Yn

    (Yn =

    1

    λn

    (Z2n + a fn(0)Zn

    ))

    ここで,λn と fn(t) は,それぞれ,K の固有値と正規直交固有関数である.また,{Zn} ∼NID(0,1) である.この最後の表現において,Yn の特性関数は,次のようになる.

    E(eiθYn) = E

    [exp

    {iθ

    λn

    (Z2n + a fn(0)Zn

    )}]

    =1√2π

    ∫ ∞−∞

    exp

    [−1

    2

    {x2 − 2iθ

    λn

    (x2 + afn(0) x

    )}]dx

    =1√2π

    ∫ ∞−∞

    exp

    ⎡⎣−1

    2

    (1 − 2iθ

    λn

    )(x− iaθfn(0)

    λn − 2iθ)2

    +(iaθ)2

    2

    f 2n(0)

    λn(λn − 2iθ)

    ⎤⎦ dx

    =

    (1 − 2iθ

    λn

    )−1/2exp

    {ia2θ

    4

    (f 2n(0)

    λn − 2iθ −f 2n(0)

    λn

    )}

    したがって,統計量 S の特性関数は,次のように表すことができる.

    E(eiθS) =∞∏

    n=1

    ⎡⎣(1 − 2iθ

    λn

    )−1/2exp

    {ia2θ

    4

    (f 2n(0)

    λn − 2iθ −f 2n(0)

    λn

    )}⎤⎦

    =

    ⎡⎣ ∞∏

    n=1

    (1 − 2iθ

    λn

    )−1/2⎤⎦ exp{ia2θ

    4

    ( ∞∑n=1

    f 2n(0)

    λn − 2iθ −∞∑

    n=1

    f 2n(0)

    λn

    )}

    = (D(2iθ))−1/2 exp

    {ia2θ

    4

    ( ∞∑n=1

    f 2n(0)

    λn − 2iθ −K(0, 0))}

    21

  • ここで.D(λ) は K の FD である.しかし,この最後の表現は,まだ最終形ではなく,

    A =∞∑

    n=1

    f 2n(0)

    λn − 2iθ (65)

    をいかに求めるかという問題が残っている.この問題を解決するために,非同次積分方程式

    f(t) = λ∫ 10K(s, t) f(s) ds+ g(t)

    を考えよう.ここで,g(t) は [0,1] 上で連続な関数である.この方程式を f(t) に関して解くと,次の表現が得られる.

    f(t) = g(t) + λ∫ 10

    Γ(s, t; λ) g(s) ds

    この表現に現れた関数 Γ(s, t; λ) は,核関数 K のレゾルベントと呼ばれる.レゾルベントは,次のような表現をもつことが知られている (Courant-Hilbert (1953), Hochstadt (1973)).

    Γ(s, t; λ) =∞∑

    n=1

    1

    λn − λ fn(s) fn(t) (66)

    = K(s, t) + λ∫ 10

    Γ(s, u; λ)K(u, t) du (67)

    式 (66) の表現から,レゾルベントは固有値を単一の極とするような有理型関数であることがわかる.また,Γ(s, t; 0) = K(s, t) となることは明らかである.レゾルベントを使うことにより,式 (65) の量 A は,(66) より,A = Γ(0, 0; 2iθ) となるこ

    とがわかり,次の定理を得る.

    定理 5.8 式 (64) で定義された統計量 S の特性関数は,次の形で与えられる.

    E(eiθS) = (D(2iθ))−1/2 exp

    {ia2θ

    4(Γ(0, 0; 2iθ) −K(0, 0))

    }(68)

    ここで,D(λ) は K の FD,Γ(s, t; λ) は K のレゾルベントである.

    レゾルベント Γ(0, 0; 2iθ) の求め方については,次の例で示そう.

    (例 5.15) 次の統計量を考えよう.

    S1 =∫ 10t2δ (W (t) + κ)2 dt

    =∫ 10

    ∫ 10K1(s, t) dW (s)dW (t) + 2κ

    ∫ 10K1(0, t) dW (t) + κ

    2K1(0, 0) (69)

    ここで,κ は既知の定数である.また,

    K1(s, t) =1

    2δ + 1

    (1 − (max(s, t))2δ+1

    )(δ > −1/2)

    である.統計量 S1 は,κ = 0 ならば,(例 5.4) の場合に帰着する.そして,K1 の FD は,式(35) で与えられていることに注意しよう.また,δ = 0,κ �= 0 の場合については,Girsanov アプローチを使って,すでに第 4 章 3 節の(例 4.4)で扱っている.

    22

  • Γ(0, 0; λ) を求めるために,h(t) = Γ(0, t; λ) とおいて,式 (67) の関係を使うと,次の方程式が得られる.

    h(t) = K1(0, t) + λ∫ 10h(s)K1(s, t) ds

    この方程式は,次の微分方程式および境界条件と同値になることがわかる.

    h′′(t) − 2δth′(t) + λ t2δ h(t) = 0, lim

    t→0h′(t)t2δ

    = −1, h(1) = 0

    この微分方程式は,(例 5.4) で扱った式 (25) と同一である.ただし,境界条件は異なっており,非同次の条件となっている.一般解は,

    h(t) = t(2δ+1)/2{c1Jν

    (2ξtδ+1

    )+ c2J−ν

    (2ξtδ+1

    )}, ν =

    2δ + 1

    2(δ + 1), ξ =

    √λ

    2(δ + 1)

    であり,境界条件より,次の 2 つの方程式が得られる.

    c1ξν(2δ + 1)

    Γ(ν + 1)= −1, c1Jν(2ξ) + c2J−ν(2ξ) = 0

    したがって,

    c1 = −ξ−ν Γ(ν + 1)

    2δ + 1, c2 =

    ξ−ν Γ(ν + 1)2δ + 1

    Jν(2ξ)

    J−ν(2ξ)

    となる.以上より,

    Γ(0, 0; λ) = h(0) =c2 ξ

    −ν

    Γ(1 − ν) =ξ−2ν Γ(ν + 1)

    (2δ + 1) Γ(1 − ν)Jν(2ξ)

    J−ν(2ξ)

    が得られるので,結局,(69) の統計量 S1 の特性関数は,次の形で与えられる.

    E(eiθS1) = (D1(2iθ))−1/2 exp

    {iκ2θ (Γ(0, 0; 2iθ) −K1(0, 0))

    }eiκ

    2K1(0,0)

    = (D1(2iθ))−1/2 exp

    ⎧⎨⎩ iκ

    2θ Γ(ν + 1)

    (2δ + 1) Γ(1 − ν)Jν(√

    2iθ/(δ + 1))

    J−ν(√

    2iθ/(δ + 1))( √

    2iθ

    2(δ + 1)

    )−2ν⎫⎬⎭

    ここで,D1(λ) は,式 (35) で定義された K1 の FD である.δ = 0 の場合には ν = 1/2 となり,この場合の特性関数は,第 4 章 3 節の式 (41) において,α = 0 とした場合と一致することを確認されたい.

    もう 1 つ別の例を取り上げよう.

    (例 5.16)  {X(t)} を O-U 過程として,次の統計量を考えよう.

    S2 =∫ 10X2(t) dt, X(t) = κ e−αt + e−αt

    ∫ t0eαs dW (s) (70)

    ここで,{X(t)} は,X(0) = κ(定数)から出発する O-U 過程であるとする.これは,第 4 章3 節の(例 4.4)で取り上げた例であり,そこでは,Girsanov アプローチを使って特性関数を求めることができた.ここでは,Fredholm アプローチにより求めてみよう.

    23

  • まず,S2 は次のように表現することができる.

    S2 =∫ 10

    {κe−αt + e−αt

    ∫ t0eαs dW (s)

    }2dt

    =∫ 10

    ∫ 10K2(s, t) dW (s)dW (t) + 2κ

    ∫ 10K2(0, t) dW (t) + κ

    2K2(0, 0)

    ここで,

    K2(s, t) =e−α|s−t| − e−α(2−s−t)

    であり,K2 の FD は,

    D2(λ) = e−α(

    cos√λ− α2 + αsin

    √λ− α2√

    λ− α2)

    となる.この結果については,第 4 章の式 (41) からも類推できるであろう.他方,K2 のレゾルベント Γ(s, t; λ) については,次のことが成り立つ(問題 11).

    Γ(0, 0; λ) =sin

    √λ− α2√

    λ− α2/(

    cos√λ− α2 + αsin

    √λ− α2√

    λ− α2)

    以上のことから,S2 の特性関数は,式 (68) から,次のようになる.

    E(eiθS2) = exp

    2+

    iκ2θ(sin ν/ν)

    cos ν + α(sin ν/ν)

    )(cos ν + α

    sin ν

    ν

    )−1/2 (ν =

    √2iθ − α2

    )

    式 (64) の統計量 S を少し拡張して,次の統計量を考えよう.

    S̃ =∫ 10

    ∫ 10K(s, t) dW (s)dW (t) + aZ

    ∫ 10K(0, t) dW (t) + bZ2 (71)

    ここで,a と b は定数,Z は N(0,1) で,{W (t)} の増分とは独立な確率変数である.したがって,次のことが成り立つ.

    S̃D=

    ∞∑n=1

    1

    λn

    (Z2n + a fn(0)Zn Z

    )+ b Z2

    ここで,λn と fn(t) は,それぞれ,K の固有値と正規直交固有関数である.また,{Zn} ∼NID(0,1) であり,Z とは独立である.このことから,S̃ の特性関数は,条件付き期待値の演算を使うことにより,今までの結果から次のように求めることができる.

    E(eiθS̃) = E

    [E

    [exp

    {iθ

    ∞∑n=1

    1

    λn

    (Z2n + a fn(0)Zn Z

    )+ iθb Z2

    }∣∣∣∣∣Z]]

    = (D(2iθ))−1/2 E

    [exp

    {ibθZ2 +

    ia2θZ2

    4(Γ(0, 0; 2iθ) −K(0, 0))

    }]

    この最後の表現から,次の定理が得られる.

    定理 5.9 式 (71) で定義された統計量 S̃ の特性関数は次の形で与えられる.

    E(eiθS̃) =

    [D(2iθ)

    {1 − 2ibθ − ia

    2(Γ(0, 0; 2iθ) −K(0, 0))

    }]−1/2

    24

  • ここで,D(λ) は K の固有値,Γ(s, t; λ) は K のレゾルベントである.

    この定理の応用として,次の例を考えよう.

    (例 5.17)  {X̃(t)} を O-U 過程として,次の統計量を考えよう.

    S̃2 =∫ 10X̃2(t) dt, X̃(t) =

    1√2αZ e−αt + e−αt

    ∫ t0eαs dW (s) (α > 0) (72)

    ここで,{X̃(t)} は,X̃(0) = Z/√2α ∼ N(0, 1/(2α)) から出発する定常な O-U 過程である.これは,(例 5.15) の初期値が定数の場合を確率変数としたものである.S̃2 は,

    S̃2 =∫ 10

    ∫ 10K2(s, t) dW (s)dW (t) +

    2Z√2α

    ∫ 10K2(0, t) dW (t) +

    1 − e−2α4α2

    Z2

    と表現できるから,式 (71) において,

    a =2√2α, b =

    1 − e−2α4α2

    として,(例 5.16) と定理 5.9 より,次の結果を得ることができる.

    E(eiθS̃2) =

    [e−α

    (cos ν + α

    sin ν

    ν

    ){1 − 2iθ1 − e

    −2α

    4α2

    −iθα

    (sin ν/ν

    cos ν + α sin ν/ν− 1 − e

    −2α

    )}]−1/2

    = eα/2[cos ν +

    (α− iθ

    α

    )sin ν

    ν

    ]−1/2 (ν =

    √2iθ − α2

    )

    (例 5.17) の結果は,(例 5.16) の結果を使えば,より簡単に得られる.すなわち,(例 5.16)の E((eiθS2) の表現において,κ2 = Z2/(2α) とおいて,次のように計算すればよい.

    E(eiθS̃2) = E[E(eiθS2 |Z)

    ]

    = E

    [exp

    2+

    iZ2θ(sin ν/ν)

    2α (cos ν + α(sin ν/ν))

    )(cos ν + α

    sin ν

    ν

    )−1/2]

    = eα/2[cos ν +

    (α− iθ

    α

    )sin ν

    ν

    ]−1/2 (ν =

    √2iθ − α2

    )

    なお,この考え方については,すでに,第 4 章の (例 4.4) において,Girsanov アプローチを使って説明している.今まで の議論では,Bm の 1 次汎関数の形に制約をつけたが,次にそのような制約をはず

    した場合を考えよう.今,{Y (t)} を平均 0 の正規過程,m(t) を連続な関数として,統計量

    U =∫ 10

    {Y (t) +m(t)}2 dt (73)

    の特性関数を求めよう.以下の方法は,Nabeya (1992) で提案されたものである.

    25

  • まず,次の諸量を定義しよう.

    Y (t) =∞∑

    n=1

    fn(t)√λn

    Zn, {Zn} ∼ NID(0, 1)

    cn√λn

    =∫ 10m(t) fn(t) dt, q(t) =

    ∞∑n=1

    cn√λn

    fn(t), r(t) = m(t) − q(t) (74)

    ここで,λn は核関数 K(s, t) = Cov(Y (s), Y (t)) の固有値,fn(t) は正規直交固有関数である.このとき,次のことが成り立つ.

    ∫ 10m(t) q(t) dt =

    ∫ 10q2(t) dt =

    ∞∑n=1

    c2nλn,

    ∫ 10q(t) r(t) dt =

    ∫ 10Y (t) r(t) dt = 0

    したがって,式 (73) の統計量 U は次の表現に書き換えることができる.

    UD=

    ∫ 10

    (Y (t) + q(t) + r(t))2 dt

    =∫ 1

    0

    { ∞∑n=1

    fn(t)√λn

    (Zn + cn)

    }2dt+

    ∫ 10r2(t) dt

    =∞∑

    n=1

    1

    λn(Zn + cn)

    2 +∫ 10m2(t) dt−

    ∞∑n=1

    c2nλn

    この最後の表現に基づいて,U の特性関数を求めてみよう.まず,

    E

    [exp

    {iθ

    λn(Zn + cn)

    2

    }]=

    (1 − 2iθ

    λn

    )−1/2exp

    (iθc2n

    λn − 2iθ)

    が成り立つことに注意して,次の結果を得る.

    E(eiθU) =∞∏

    n=1

    (1 − 2iθ

    λn

    )−1/2exp

    { ∞∑n=1

    iθc2nλn − 2iθ + iθ

    ∫ 10m2(t) dt− iθ

    ∞∑n=1

    c2nλn

    }

    = (D(2iθ))−1/2 exp

    {iθ∫ 1

    0m2(t) dt− 2θ2

    ∞∑n=1

    c2nλn(λn − 2iθ)

    }

    ここで,D(λ) は,K(s, t) = Cov(Y (s), Y (t)) の FD である.さらに,式 (66) のレゾルベントの関係式と (74) の第 1 式より,次のことが成り立つ.

    ∫ 10

    ∫ 10

    Γ(s, t; λ)m(s)m(t) dsdt =∞∑

    n=1

    1

    λn − λ∫ 1

    0

    ∫ 10fn(s)fn(t)m(s)m(t) dsdt

    =∞∑

    n=1

    c2nλn(λn − λ)

    以上より,統計量 U の特性関数は次のように表現できる.

    定理 5.10 次の統計量を考える.

    U =∫ 10

    (Y (t) +m(t))2 dt

    26

  • ここで,{Y (t)} は平均 0 の正規過程,m(t) は通常の連続関数である.このとき,U の特性関数は次の形で与えられる.

    E(eiθU) = (D(2iθ))−1/2 exp{iθ∫ 10m2(t) dt− 2θ2

    ∫ 10

    ∫ 10

    Γ(s, t; 2iθ)m(s)m(t) dsdt}

    (75)

    ここで,D(λ) は核関数 K(s, t) = Cov(Y (s), Y (t)) の FD,Γ(s, t; λ) は K のレゾルベントである.

    問題は,レゾルベントを含む積分の計算方法である.そのために,式 (67) の両辺に m(s)をかけて積分すると,次の表現が得られる.

    h(t) =∫ 10K(s, t)m(s) ds+ λ

    ∫ 10K(s, t)h(s) ds (76)

    ここで,h(t) は,

    h(t) =∫ 10

    Γ(s, t; λ)m(s) ds (77)

    で定義される.さらに,式 (77) の両辺に m(t) をかけて積分すると次の結果を得る.∫ 10h(t)m(t) dt =

    ∫ 10

    ∫ 10

    Γ(s, t; λ)m(s)m(t) dsdt (78)

    以上より,定理 5.10 の式 (75) に含まれるレゾルベントの積分は,式 (76) の h(t) に関する非同次の積分方程式を解くことにより,式 (78) の左辺の積分を計算すれば求められることになる.次に,具体例で見てみよう.

    (例 5.18) 次の統計量を考えよう.

    U1 =∫ 10

    (W (t) + a + bt)2 dt

    ここで,a と b は定数であり,b = 0 ならば,(例 5.15) で取り上げた制約のある場合となるので,b �= 0 と仮定する.式 (76) の積分方程式は,K(s, t) = Cov(W (s),W (t)) = min(s, t),m(t) = a+ bt とおくと,次の微分方程式および境界条件と同値になる.

    h′′(t) + λh(t) = −(a + bt), h(0) = h′(1) = 0この微分方程式の一般解は,

    h(t) = c1 cos√λt+ c2 sin

    √λt− 1

    λ(a+ bt)

    となり,境界条件 h(0) = h′(1) = 0 より,次の 2 つの方程式が得られる.

    c1 − aλ

    = 0, −c1√λ sin

    √λ+ c2

    √λ cos

    √λ− b

    λ= 0

    したがって,c1 と c2 は,

    c1 =a

    λ, c2 =

    a√λ sin

    √λ+ b

    λ√λ cos

    √λ

    27

  • となる.また,式 (78) の左辺は,

    ∫ 10h(t)m(t) dt =

    ∫ 10

    (a

    λcos

    √λt+

    a√λ sin

    √λ+ b

    λ√λ cos

    √λ

    sin√λt− a + bt

    λ

    )(a+ bt) dt

    =a2

    λ√λ

    tan√λ− 2ab

    λ2

    (1 − 1

    cos√λ

    )+b2

    λ2

    (tan

    √λ√

    λ− 1

    )− 1λ

    ∫ 10m2(t) dt

    となる.以上より,U1 の特性関数は,(75) を使って,次のように求めることができる.

    E(eiθU1) =(cos

    √2iθ)−1/2

    exp[1

    2

    {a2√

    2iθ tan√

    2iθ

    −2ab(

    1 − 1cos

    √2iθ

    )+ b2

    (tan

    √2iθ√

    2iθ− 1

    )}]

    式 (73) の統計量 U を,次のように拡張しよう.

    Ũ =∫ 10

    (Y (t) +m(t)Z)2 dt (79)

    ここで,{Y (t)}は平均 0の正規過程,m(t)は通常の連続関数,Z は {Y (t)}とは独立で,N(0,1)に従う確率変数である.統計量 Ũ の特性関数は,前と同様に,条件付き期待値と定理 5.10 の結果を使って,次のよ

    うに求めることができる.

    E(eiθŨ) = E[E[exp

    {iθ∫ 10

    (Y (t) +m(t)Z)2 dt}∣∣∣∣Z

    ]]

    = (D(2iθ))−1/2 E[exp

    {iθZ2

    ∫ 10

    ∫ 10m2(t) dt

    −2θ2Z2∫ 10

    ∫ 10

    Γ(s, t; 2iθ)m(s)m(t) dsdt}]

    この最後の表現から,次の定理が得られる.

    定理 5.11 次の統計量を考える.

    Ũ =∫ 10

    (Y (t) +m(t)Z)2 dt

    ここで,{Y (t)}は平均 0の正規過程,m(t)は通常の連続関数,Z は {Y (t)}とは独立で,N(0,1)に従う確率変数である.このとき,Ũ の特性関数は,次の形で与えられる.

    E(eiθŨ) =[D(2iθ)

    {1 − 2iθ

    ∫ 10m2(t) dt+ 4θ2

    ∫ 10

    ∫ 10

    Γ(s, t; 2iθ)m(s)m(t) dsdt}]−1/2

    ここで,D(λ) は,核関数 K(s, t) = Cov(Y (s), Y (t)) のFD,Γ(s, t; λ) は K のレゾルベントである.

    上の定理の応用として,次の例を考えよう.

    28

  • (例 5.19) 次の統計量を取り上げよう.

    Ũ1 =∫ 10

    (W (t) + (a + bt)Z)2 dt

    これは,(例 5.18) で扱った統計量を拡張したものであり,そこでの議論から,次のことが成り立つ.

    ∫ 10

    ∫ 10

    Γ(s, t; λ)m(s)m(t) dsdt =a2

    λ√λ

    tan√λ− 2ab

    λ2

    (1 − 1

    cos√λ

    )

    +b2

    λ2

    (tan

    √λ√

    λ− 1

    )− 1λ

    ∫ 10m2(t) dt

    このことと定理 5.11 から,次の結果を得ることができる.

    E(eiθŨ1) =[cos

    √2iθ

    {1 − a2

    √2iθ tan

    √2iθ

    +2ab

    (1 − 1

    cos√

    2iθ

    )− b2

    (tan

    √2iθ√

    2iθ− 1

    )}]−1/2

    =

    [(b2 + 2ab+ 1) cos

    √2iθ −

    (a2√

    2iθ +b2√2iθ

    )sin

    √2iθ − 2ab

    ]−1/2

    5.9 比の統計量に関連する FD本章の最後のトピックとして,比の形の統計量 R = U/V に関連する FD を考えよう.こ

    こで,U と V は Bm の 2 次汎関数で,V は正値であるとする.比の統計量については,前章で Girsanov アプローチによる方法を説明したが,ここでは

    Girsanovアプローチでは解けない,あるいは解きにくいような場合を扱う.以下,統計量 R の分布関数は,次のように表現されるものと仮定する.

    P (R ≤ x) = P(U

    V≤ x

    )= P (xV − U ≥ 0)

    = P(∫ 1

    0

    ∫ 10K(s, t; x) dW (s)dW (t) ≥ 0

    )(80)

    ここで,核関数 K(s, t; x) は,対称,連続,ほぼ定符号である.以上のことから,統計量 R の分布関数を求めるためには,

    Q =∫ 10

    ∫ 10K(s, t; x) dW (s)dW (t)

    の特性関数を求めればよいことになる.応用例として,次の統計量を考えてみよう.

    Rg =

    ∫ 10 Fg(t) dFg(t)∫ 1

    0 F2g (t) dt

    =F 2g (1)/2∫ 10 F

    2g (t) dt

    (g = 1, 2, · · ·) (81)

    ここで,{Fg(t)} は,g 重積分 Bm である.統計量 Rg は,第 3 章 7 節で議論した多重単位根モデルにおける係数推定量の漸近分布である.具体的には,次のモデル

    yj = ρyj−1 + vj , (1 − L)gvj = εj, {εj} ∼ i.i.d.(0, σ2), (j = 1, · · · , T )

    29

  • において,g を自然数として,ρ の LSE を ρ̂ とするとき,ρ の真値が 1 ならば,T (ρ̂− 1) の分布は Rg に分布収束する.この結果は,上のモデルの誤差項が従属的な線形過程となっても不変である.もちろん,g = 0 の場合は通常の単位根分布となり,その場合には異なる結果をもたらすことに注意されたい.通常の単位根モデルおよびランダム・ウォーク近接モデルにおける単位根分布に関連した特

    性関数は,すでに第 4 章において Girsanov アプローチによる方法で求めており,その有用性を再度確認されたい.他方,ここで取り上げる多重単位根モデルの場合には,Fredholm アプローチが有用である.まず,Fg(t) =

    ∫ t0 (t− u)g dW (u)/g ! であることから,

    Rg =F 2g (1)/2∫ 10 F

    2g (t) dt

    ≤ x ⇐⇒ Qg =∫ 10

    ∫ 10Kg(s, t; x) dW (s)dW (t) ≥ 0

    Kg(s, t : x) =1

    (g !)2

    [x∫ 1max(s,t)

    ((u− s)(u− t))g du− 12

    ((1 − s)(1 − t))g]

    (82)

    を得る.以下,g = 1 と g = 2 の場合について考えよう.

    (例 5.20) 統計量 R1 を取り上げよう.R1 に対応する核関数 K1 は,式 (82) より,s ≤ t のとき,次の形となる.

    K1(s, t; x) =x

    6(1 − t)2(t+ 2 − 3s) − 1

    2(1 − s)(1 − t)

    このとき,K1 を核とする積分方程式と同値な微分方程式および境界条件は次のように与えられる(問題 12).

    f (4)(t) − λxf(t) = 0, f(1) = f ′′(0) = f ′′′(0) = 0, f ′(1) = −λ2

    ∫ 10

    (s− 1)f(s) ds (83)

    微分方程式の一般解は,

    f(t) = c1 cosAt+ c2 cosBt+ c3 sinAt+ c4 sinBt(A = (λx)1/4, B = iA

    )であり,4 つの境界条件から方程式 M(λ)c = 0 を得る.ただし,

    M(λ) =

    ⎛⎜⎜⎜⎝

    cosA cosB sinA sinBM21 M22 M23 M24−1 1 0 00 0 −1 i

    ⎞⎟⎟⎟⎠

    M21 = −A3 sinA+ λ2(cosA− 1), M22 = B3 sinB − λ

    2(cosB − 1)

    M23 = A3 cosA+

    λ

    2(sinA− A), M34 = −B3 cosB − λ

    2(sinB − B)

    である.このことより,

    |M(λ)| = 2B3 + 2B3 cosA cosB − iλ cosB sinA+ λ cosA sinBとなるので,K1 の FD は,次のようになる.

    D(λ) =|M(λ)|4B3

    =1

    2(1 + cosA cosB) +

    1

    4x(A cosB sinA+B cosA sinB) (84)

    30

  • (例 5.21) 統計量 R2 を取り上げよう.R2 に対応する核関数 K2 は,式 (82) より,s ≤ t のとき,次の形となる.

    K2(s, t; x) =x

    120(1 − t)3(t2 + 3t+ 6 − 5st+ 10s2 − 15s) − 1

    8(1 − s)2(1 − t)2

    このとき,K2 を核とする積分方程式と同値な微分方程式および境界条件は次のように与えられる(問題 13).

    f (6)(t) + λxf(t) = 0 (85)

    f(1) = f ′(1) = f ′′′(0) = f (4)(0) = f (5) = 0, f ′′(1) = −λ4

    ∫ 10

    (s− 1)2f(s) ds (86)

    微分方程式の一般解は,

    f(t) = c1 cosAt+ c2 cosBt+ c3 cosC + c4 sinAt+ c5 sinBt+ c6 sinC

    である.ここで,

    A = (λx)1/6, B = Aω, C = Aω2, ω =1 −√3i

    2

    であり,6 つの境界条件から方程式 M(λ)c = 0 を得る.ただし,

    M(λ) =

    ⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝

    cosA cosB cosC sinA sinB sinC− sinA −ω sinB −ω2 sinC cosA ω cosB ω2 cosCM31 M32 M33 M34 M35 M360 0 0 1 −1 11 −ω ω2 0 0 00 0 0 1 −ω2 −ω

    ⎞⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎟⎠

    M31 = M31(A) = −A2 cosA + λ4

    (2

    A2− 2A3

    sinA)

    M34 = M34(A) = −A2 sinA+ λ4

    (1

    A− 2A3

    +2

    A3cosA

    )

    M32 = M31(B), M33 = M31(C), M35 = M34(B), M36 = M34(C)

    である.このことより,

    |M(λ)| = 32A3

    [λ(cosA sinA+ ω cosB sinB + ω2 cosC sinC

    +2(sinA + ω sinB + ω2 sinC))

    +A5 (4(1 + cosA+ cosB + cosC) + 2 cosA cosB cosC)]

    となるので,K2 の FD は,次のようになる.

    D(λ) =|M(λ)|27A2

    =1

    18

    [A

    x

    (cosA sinA + ω cosB sinB + ω2 cosC sinC

    +2(sinA+ ω sinB + ω2 sinC))

    +4(1 + cosA+ cosB + cosC) + 2 cosA cosB cosC] (87)

    31

  • 以上,式 (81) の統計量 Rg の分布に関連する核関数 Kg の FD を g = 1 と g = 2 の場合について Fredholm アプローチにより求めた.g が 3 以上の場合にも同様の方法を使うことができるが,計算は非常に複雑となることが了解されよう.なお,ここでは,g が自然数の場合だけを考えているが,実数に拡張することも可能である.その場合の議論については,第 11 章で行うことにする.

    32

  • 第 5 章 練 習 問 題

    1. 核関数 K(s, t) = min(s, t) − st をもつ積分方程式は,次の微分方程式および境界条件と同値であることを示せ.

    f ′′(t) + λf(t) = 0, f(0) = f(1) = 0

    2. 核関数 K(s, t) =[1 − (max(s, t))2δ+1

    ]/(2δ+ 1) (δ > −1/2) をもつ積分方程式は,次の微

    分方程式および境界条件と同値であることを示せ.

    f ′′(t) − 2δtf ′(t) + λt2δ f(t) = 0, lim

    t→0f ′(t)t2δ

    = 0, f(1) = 0

    3. 核関数 K(s, t) = (max(s, t))τ /2 (τ > 0) をもつ積分方程式は,次の微分方程式および境界条件と同値であることを示せ.

    f ′′(t) − τ − 1t

    f ′(t) − λτ2tτ−1 f(t) = 0, lim

    t→0f ′(t)tτ−1

    = 0, f ′(1) = τ f(1)

    4. 次の FD の零根は 1 つだけが正で,他はすべて負であることを示せ.

    D(λ) =

    (√−2λ4

    )3/2(−2√π) J−3/2

    (√−2λ2

    )=

    √−λ2

    sin

    √−λ2

    + cos

    √−λ2

    5. 核関数 K(s, t) = [1− 2|s− t|]/4 は正値定符号であることを示せ.また,この核関数をもつ積分方程式は,次の微分方程式および境界条件と同値であることを示せ.

    f ′′(t) + λf(t) = 0, f(0) + f(1) = 0, f ′(0) + f ′(1) = 0

    6. 核関数 K(s, t) = min(s, t) − (s + t)/2 + (s− t)2/2 + 1/12 の FD は,次の形で与えられることを示せ..

    D(λ) =

    (sin

    √λ

    2

    / √λ

    2

    )2

    7. K(s, t) = min(s, t)− (s+ t)/2 + (s− t)2/2 + 1/12 とするとき,次の関係が成り立つことを示せ.

    ∫ 10

    ∫ 10K7(s, t) dW (s)dW (t)

    D=∫ 10

    (W̄ (t) −

    ∫ 10W̄ (u) du

    )2dt

    ただし,W̄ (t) = W (t) − tW (1) は Bb (Brown 橋) である.8. 核関数 K(s, t) = 1 − max(s, t) + b の固有値は,b が非負ならばすべて正,b が負ならば

    1 つは負で,他はすべて正であることを示せ.

    33

  • 9. 核関数

    K(s, t) = min(s, t) − 25st16

    +9st(s4 + t4)

    16− 9s

    5t5

    16

    の FD は,次の形になることを確かめよ.

    D(λ) = − 457λ4

    [35(λ2 − 12λ+ 36) cos

    √λ

    + (5λ3 − 147λ2 + 840λ− 1260)sin√λ√

    λ

    ]

    10. 関数

    Kg(s, t) =1

    (g!)2

    ∫ 1max(s,t)

    ((u− s)(u− t))g du

    =1

    (g!)2

    g∑j=0

    g∑k=0

    (gj

    )(gk

    )(−1)j+kj + k + 1

    [1 − (max(s, t))j+k+1

    ]sg−jtg−k

    を核とする積分方程式は,次の微分方程式および 2g + 2 個の境界条件と同値になることを示せ.

    f (2g+2)(t) + (−1)g λ f(t) = 0

    f(1) = f (1)(1) = · · · = f (g)(1) = f (g+1)(0) = · · · = f (2g+1)(0) = 0

    11. 核関数

    K(s, t) =e−α|s−t| − e−α(2−s−t)

    のレゾルベントを Γ(s, t; λ) とするとき,次のことが成り立つことを示せ.

    Γ(0, 0; λ) =sin

    √λ− α2√

    λ− α2/[

    cos√λ− α2 + αsin

    √λ− α2√

    λ− α2]

    12. [0, 1] × [0, 1] 上の対称関数 K1(s, t; x) が,s ≤ t のとき,

    K1(s, t; x) =x

    6(1 − t)2(t+ 2 − 3s) − 1

    2(1 − s)(1 − t)

    で定義されているとき,K1 を核とする積分方程式と同値な微分方程式および境界条件は次のように与えられることを示せ.

    f (4)(t) − λxf(t) = 0, f(1) = f ′′(0) = f ′′′(0) = 0, f ′(1) = −λ2

    ∫ 10

    (s− 1)f(s) ds

    34

  • 13. [0, 1] × [0, 1] 上の対称関数 K2(s, t; x) が,s ≤ t のとき,

    K2(s, t; x) =x

    120(1 − t)3(t2 + 3t+ 6 − 5st+ 10s2 − 15s) − 1

    8(1 − s)2(1 − t)2

    で定義されているとき,K2 を核とする積分方程式と同値な微分方程式および境界条件は次のように与えられることを示せ.

    f (6)(t) + λxf(t) = 0

    f(1) = f ′(1) = f ′′′(0) = f (4)(0) = f (5) = 0, f ′′(1) = −λ4

    ∫ 10

    (s− 1)2f(s) ds

    35